パンッパンッパンッ。
音が――した。
丸い尻に、僕の腰をうちつける音。
そして。
ぬちゅ、ぬちゅ・・・じゅぶ・・・。
淫らな水音が寝室内に響き渡る。

――腰を振る。
「あ・・・あっ・・・ん・・・んっ・・・!」
僕はただ一心不乱に。
「ふああっ・・・ああ、はああん・・・」
目の前の肉体を貪る為だけに。

「く・・・うんっ・・・・!」
嬌声に混じって聞こえる、じゅぼじゅぼという音が僕の快感を否応無く引き上げる。

「う・・・もう、出そう・・・!」
僕の呻きに。
「は・・・出せ・・! 中に・・・そのまま・・・」
彼女はそう告げた――。

閃光が脳を白熱させる。
「・・・う・・・・・ルイ・・・さん・・・・・・」
――そして僕は彼女の名を呼んだ。


                        ◇


「春留(ハル)」
朝。
駅から学校に向かい歩いている途中で。
「よ。っはよ」
そう声をかけてきたのは、同じクラスメートで悪友の東屋刻彦(あずまやときひこ)だった。
「刻彦か、おはよう」
「どした、いつにもまして冴えねぇツラしてんな」
と、刻彦は相変わらずの明るい笑いを浮かべながら言った。
「ちょっとね・・・。あんまり寝てないんだ」
欠伸を噛み殺しながら答える。
「あン? また例の美人の師匠か?」
「うん・・・。なんか仕事が行き詰ってて、ストレスが溜まってるらしくてね・・・。朝まで」
制服の袖で眼鏡を拭きつつ、言う。
「うひゃあ・・・。お前良くそんなんで体保つなぁ。・・・枯れて死ぬなよ?」
「そうは言ってもねぇ。・・・こっちは養ってもらってる身なワケで。タダで住まわせてもらってる上に学費も食費も全部、ルイさんが出してくれてるんだから」
「ふーん、じゃあ世話になってるからSEXしてんのか? ギブ&テイクの関係って事か?」
「あ、イヤ・・・そういう訳でも・・・ないと思う。・・・うん、やっぱり僕もしたいからしてる」
「かー! 羨ましいねぇ。あんなクールな美人とよぉ・・・。ムカツクッ、かーーーーーPeッ」
刻彦はそう言って唾を吐き捨てた。
こいつは僕がルイさんと同棲していることが、どうにも納得いかないらしい。
「・・・というか前から聞きたかったんだけどよ」
「うん、何?」
刻彦が声のボリュームを落として聞いてきた。
「結局のところ、あの美人さんとはどういう関係な訳?」
「・・・む。それは前に言った。 僕の拳法の師匠(センセイ)で、バイト先の雇い主・・・」
「ああ、それは前にも聞いた。・・・・つかそこじゃなくてだな。何でお前の拳法の師匠がお前と一緒に住んでて、尚且つ肉体関係にあるのかっつー根本的な事を聞きたい」
「・・・・・・どうなんだろうな?」
僕は首を傾げた。
正直、自分でもなんでこんな状態になったのかよく分かってない。
「知るかっ。テメーの事だろが。・・・そもそもさぁ、なんで一緒に住んでるんだよ」
「うーん・・・僕に身寄りがない事、刻彦は知ってるよね?」
「ん。ガキん時、両親死んだんだろ?」
コクリと頷く。
僕の両親は小さい頃に、交通事故で死んだらしい。
それから僕は父と親交の深かった人に引き取られた。
「この人――神楽蒼玄(かぐらそうげん)っていうんだけど――この人が古武術の道場を経営してるんだ」
「ほう、初耳だな」
「それで一応、僕も手習い程度に、そこの術理を学ばせてもらってたんだけど・・・これがどうにも出来が悪くってさ」
「おう、だろうな」
刻彦は当然のように言う。
僕は苦笑した。
刻彦は大抵、歯に衣着せない物言いをする。
・・・それが逆に心地良くも有るのだが。
「ま、それで。そこのウチには僕より年上の子が、上から長女、長男、次女と3人いたんだけど、その子らにしょっちゅうズタボロにされてた」

――思い出す。
彼女たちは間違いなく天才だった。
才能の欠片もない僕では一撃まともに入れることすら至難の業だった。
笑ってしまうが。
当時それでも僕は、どうやらいつか彼女達に勝ってやろうと。

――そんな事を考えていたらしかった。

「で、ある時、道場に一人の女の人が訪ねてきたんだ。・・・目を奪われたよ・・・とても・・・冷たく・・・綺麗な――同じ人間とはとても思えなかった」
それが僕の師匠。
朱瑞月(チュウ・ルイユィエ)との初めての出会い。
「彼女は日本で仕事を始めるにあたって、使える人材を紹介して欲しいと蒼玄さんを訪ねてきたようだった。――要するにリクルートだね。そして蒼玄さんは彼女に僕を紹介したんだ」
「あん? お前を?」
「うん――今は使い物にならないかも知れないが、育ててみてはどうか? ついでに鍛えてやって欲しい――ってね」
当時、ルイさんは20歳で僕は12。
そんな事を言い出す蒼玄さんも蒼玄さんだが、あっさりと了解するルイさんもルイさんだ。
・・・今、思い返すと、まるっきり人身売買である。
「そんな訳で・・・僕もいい加減、周りの天才と比べられるのも嫌になってたし。ルイさんのところで内弟子として世話になる事にしたんだ」
「じゃあ家族みたいなもんか」
「そういう事。それ以来、僕は中国拳法の達人だったルイさんに拳を学びながら、彼女の仕事も手伝ってるんだ。・・・まぁ、アシスタントみたいなものかな」
「なるほど。一緒に住む事になった理由はわかった。・・・でもアレだ。・・・その、肝心の。どうして肉体関係にあるのかっつー部分がさっぱりだ」
「肝心なのはそこなのか。・・・まぁ、いいけど。・・・押し倒されたんだよ、16の誕生日に」
「お、押し倒されたぁ!?」
「うん」

あの時のルイさんの言葉――。
”そろそろ女を知ってもいい頃だろう。なに気にするな、これも武の鍛錬だ。それに私は春留(キミ)を愛しているし、キミも私を好いてくれているだろう? ならば問題ないな”
全く情緒の欠片もない台詞である。
その後、僕は一晩かけて女の肉体(カラダ)を覚えさせられ。
――そしてそれ以来。僕は彼女の弟子でありながら、同時に恋人ともなった。

「マジかよぉ・・・。オレも経験豊富な年上の美人に色々教えてもらいてぇ・・・」
刻彦が頭を抱えて呻いた。
「うーん、でも経験豊富だったかどうかは怪しいよ? 当時は分からなかったけど、今、考えるとそんなに巧くなかった。ただ強引って感じで。だからもしかしたら、ルイさんも処女だったのかも」
最近では、ルイさんはただ単にチャンスを窺ってたんじゃないか? と、僕は考えている。・・・というか、そう考えて間違いないっぽかった。

「うおおおおおおっ、こ、殺す!」
刻彦が突然、激昂してわめきだした。
「お、おい、どうした」
「るせー、テメーなんか! そんなにツラが良いワケでもねーくせにっ! オレのがイケメンなのに!!」
「な、なんだ、刻彦! く、狂ったか!?」
「うっせー、死にやがれぃ! くらえ、世界を制した数見肇(かずみはじめ)の下段蹴り!」
「痛っ! 何すんだ! てか、誰だそれ!」
「ググレカス!」
「こ・・・の・・・!」
意味の分からない事をわめき散らしながら、放ってくるローを踏み込みと同時。足で捌きながら、そのままボディに中段突きを打ち込む。
「げふぅ!」
ついでに、そのまま身体を捻り、腕を螺子(ねじ)った体勢で、ヒジを鋭角に叩き込んでやった。
「んが!」
どう、と地面に倒れる刻彦。
僕は地面に落とした鞄を拾うと、パン、と汚れを払った。
「・・・学校、遅れるぞ」
それだけ告げて通学路を再び歩き出す。
刻彦はもぞもぞと体を動かしていたが、立ち上がる気配はなかった。

「やっほー! 今日も派手にやってるねぇ!」
しばらく歩いた所で、女子生徒が、隣に走ってきて並んだ。
とても可笑しそうに笑っている。
「バカが絡んでくるんだ」
「はははっ、でも裡門(りもん)は流石にやりすぎなんじゃないかと」
そう言って、彼女――木村玲(きむられい)はクラスでも可愛いと評判の笑顔で。にぱー、と笑った。
若干ウェ−ブがかった長めの黒髪が揺れて、ふわり、といい匂いが漂う。

「随分、格闘技に詳しいんだな。木村さん」
「んー? そんな事ないよ? あれだよ、格闘ゲーム」
「ふーん。今はそんなのあるのか」
「うん、神楽くんはあんまりゲームとかしない?」
「余りしないかな。麻雀とかポーカーとか花札とか・・・そういうのならやるけど」
「うわ〜〜、それってお金賭けるヤツ?」
「まぁ、賭ける時もあれば、そうじゃない時も」
「そうなんだぁ」
クラスのメンツでやる時は、大概、刻彦も入ってくるので気が抜けなくなる場合が多い。
もっとヤバイのはルイさんで、モグリのマンション雀荘みたいなトコに連れてかれて、デカリャンピンで打たされたりするのだ・・・!
もっとも、中国人は麻雀に強いというのは本当だったらしく、ルイさんもその例に漏れず鬼のように強い。
その上、荒事にも強いので、サマした相手と周りのヤクザを半殺しにしたり・・・など、こちらの寿命が縮まるような展開になる事も多かったり・・・する。
(本当・・・何でも屋なんかじゃなく、ヤクザの代打ちでも食っていけるよな、あの人は・・・)
そんな事を呆、と考えていると。
「どうしたの? 神楽くん」
僕が急に黙ったせいか、木村さんが不思議そうな顔で聞いてきた。
「あ、いや、何でもない」
「ふーん・・・・」
木村さんは何故かつまらなさそうに僕を見ていた。
「・・・何?」
「・・・ううん。・・・・・・神楽くんって本当に強いなーって思って」
「・・・そんな事ないよ。きっと本気で喧嘩したら、刻彦の方が強いんじゃないかな」
嘘ではない正直な気持ちだった。
「ううん、神楽くんは強いよ。・・・憶えてる? 一年の時の事・・・」
「・・・?」
「神楽くんさ、私の事、助けてくれたんだよ。 夜の街で。私が男の人に絡まれてた時に、”ねぇ、ちょっと”ってさ」
「そんな事あったっけ?」
「うん!・・・私、凄い怖かったんだ。男の人達に囲まれて、誰も助けてくれなくて・・・どうしよう、ってずっと思ってて・・・」
「・・・・・・」
「だから」
そこで言葉を切り、彼女はひとつ深呼吸した。
「だから・・・”ねぇ、ちょっと。その娘、嫌がってるよ?”って・・・止めてくれた人が現れた時、凄く嬉しかった」

・・・憶えていない。・・・それ本当に僕か?
と思ったが、彼女の美しい思い出を壊すのも何なので、黙っておく事にする。
誰だか知らないが、奇特なヤツもいたものだ。
「それから、怒った男の人達を一瞬でばばばーって・・・・・・私、感激したんだ。・・・ああ、世の中にはこういう人もいるんだ、強くて綺麗な人がいるんだ、って」
そこまで言うと、木村さんは突然止まって、僕の方を向いた。
僕もつられて、足を止める。
木村さんが口を開いた。
「だから・・・ね。神楽くん」
「・・・・・・」
「それからずっと・・・神楽くんは・・・私のヒーローなんだよ?」
それだけ言うと、彼女は顔を真っ赤にして、すぐ近くにまで見えていた校門を走ってくぐりぬけていった。
僕はというと、あまりの衝撃展開に頭の回転がついてゆかず。
――ただ呆然と、その場に立ち尽くしていた。
「おうおう、顔真っ赤にしちゃって、可愛いねぇ」
――不意に。
いつのまに追いついたのか、横から刻彦の声がした。
「どさくさまぎれで告白たぁな。やるね、木村も」
「いつのまに復活したんだ」
「ついさっき。・・・・・・しっかし・・・なぁ」
「何」
「・・・なぁ、それ本当にお前か? 話聞く限りじゃとても信じられん。・・・そもそもお前が面倒ごとに首を突っ込むなど」
「奇遇だな・・・僕もそう考えてた」

流石に刻彦は僕の性格を把握している。
面倒な事はとにかく避けて生きる――。
それが僕の――神楽春留という男のスタイルだった。

「記憶には?」
「ない」
はぁ・・・と溜め息をつく刻彦。
「やっぱり人違いか・・・可哀相に。初恋の人は勘違いで、あげく年上好きときたもんだ」
オレならよかったのによー、そう猛(たけ)る刻彦をほうって、僕は校舎へと入っていった。

(――ヒーローなんだよ?)

・・・頭の中には。
――木村玲の恥ずかしそうな表情と、最後のセリフがいつまでも繰り返されていた。


                             ◇


「ただいま」
作っていた夕食のメニューがほぼ完成した頃、ちょうどルイさんは帰ってきた。

「お帰りルイさん。ご飯できてるよ」
今日のメニューは”ぶり大根”に”鮎の塩焼き”、それから”ハマグリのお吸い物”に、”ナスのぬか漬け”である。
それらを見て、ルイさんは子供のように目を輝かせた。
「ふむ、今日は和食の日か。相変わらず手が込んでいるな」
そう言って服も着替えないまま、上着をソファに投げ捨てると、食卓のイスに座る。

ちなみに今日のルイさんの服は黒のスーツに白のYシャツ。
下はスカートではなくパンツタイプだから、もしかしたら男物なのかも知れない。
背が高く、スタイルもモデル並のルイさんは、基本的に何を着ても似合うのだが、こういったメンズファッションを着ると、これがまた恐ろしく似合う。
男に見える・・・・と云うのではない。より華やかで、クールな感じが強まるのだ。
使い古した言葉で云うなら。

男装の麗人――といった表現が、正にしっくりくるのである。

「まったく・・・フランス料理なんて、ゴミだ」
まっすぐ背中まで伸びる、切り揃えられた艶やかな黒髪。
それを後ろで縛りながら、ルイさんはそう毒づいた。
「何? 今日のお昼、フランス料理だったの?」
茶碗にご飯をよそりながら尋ねる。
「いや、ついさっきだ。仕事の関係でフルコースにつき合わされた・・・全く・・・何が世界三大料理だと言うのだろうな? 世界の三大料理はトルコ料理、中華料理、そして日本料理に決まっている」
と、和食至上主義の中国人は大根を口に放り込んだ。
「・・・うん、これは旨い」
舌鼓をうつルイさん。

「僕も食べたかったな、フランス料理」
「もふもぐ・・・やめておけ。・・・キミの作った料理の方が何倍も美味しい」
「・・・イヤ、そう云ってくれるのは嬉しいんですけどね・・・」
フランス料理など自分では作れない。当然、比較にならなかった。

二人分のご飯をよそって、僕もテーブルにつく。
ルイさんは先程フルコースを食べてきたとは思えない勢いで、食卓の料理を平らげている。
一体、この人の胃袋はどうなってるのだろう。
「それより・・・むぐ・・・ハル・・・・。キミ、何か私に話すことはないか?」
「え?」
「何か私に話さなければいけない事・・・・・・つまり隠し事をしているのではないか?」
「・・・・・・? 何の話です?」
頭を捻ってみるも、全く思い当たらなかった。
「とぼける気かな? キミは今朝、クラスメートに告白されたと聞いたが」
「ぶっ」
飲んでいた吸い物を、危うく吹き出しそうになる。
「な、ななな・・・なんでそれを・・・というかアレは告白なんかじゃないですよ! って何を言ってるんだ、僕は」
「ほう、図星か・・・。ハル、私はね・・・。今日の昼にその事を知って、もういてもたってもいられず、こうして今晩は早く帰ってきたんだ。・・・大事な仕事をすっぽかしてな」
「昼・・・? な、なんで・・・・・・って、そうじゃない! いくらなんだって、そんな事で仕事すっぽかしちゃダメでしょう!」
「そんな事・・・?」

途端にルイさんの目つきが鋭くなった。
なんだか足元から冷気が吹き出ているような錯覚を覚える。
「大事な愛弟子を愛しく想うのは、いけない事か? ハル」
「え・・・いや、そんな事は・・・別に・・・」

「私に・・・・・・飽きたか?」
「ま、まさか! そんな事は絶対にないですっ・・・い、いや本当に! た、ただ流石に仕事さぼっちゃマズいんじゃないかと・・・そう愚考してみた次第で・・・」
「構わないさ。どうせアテもなく夜の街をぶらつくしかないんだ。・・・手がかりを探してな」
「・・・・・・また犯罪絡みですか?」
少しだけ真剣な口調で聞いてみる。
「ああ、最近は警察やら法祇庁からの依頼がひっきりなしだ。・・・ほら最近この辺りで起きている連続婦女暴行殺人・・・アレだ・・・って、ええい、そんな事はどうでもいい!」
ちっ・・・もう少しで話を逸らせたのに。
舌打ちしたのが聞こえたのか、ルイさんの目に剣呑な光が増した。
「おい、ハル。キミ、ちょっと来い」
突然、立ち上がったルイさんに腕を掴まれた。
そしてそのまま、寝室へと連行される。

「ちょ、ちょっと、ルイさん! 痛い、痛いですよ」
「・・・全く。キミは相変わらず、ちょっとした事で痛い痛いと・・・ほら、これなら痛くないだろう?」
ルイさんが掴んでいた腕を離し、そして次の瞬間、僕は抱きしめられた。
大きな胸の感触が服の上から伝わってくる。
「いや・・・でも、まだご飯が・・・」
「そんなのは後だ・・・はむ・・・」
――いきなり唇を押し付けられた。
僕の口をこじ開けて舌が侵入してくる。
濡れた舌が僕の口腔内を蹂躙する。
「ル・・・イ・・・さ・・・」
「いいから・・・大人しくしていろ・・・ふあ・・・ずじゅ」
「ん・・・ちゅ・・・」
諦めてルイさんのキスを受け入れる。
「ふふ・・・ようやく・・・観念、したか・・・」
一旦唇を離してそう言うと、ルイさんは再び舌を差し出してきた。
僕も今度はそれに応える。
「ふ・・・んちゅ・・・」
「ちゅ・・・ちゅ・・・じゅる」
舌と舌を絡め合わせる。
ルイさんの唾液を嚥下(えんか)して、それが終わると今度は僕の唾液をルイさんの口に送り込む。
「う、む・・・ちゅ・・・ハル・・・」

ドサ、と。
二人でベッドにもつれ合って倒れた。
慣れたルイさんの匂い。
昔は自分の部屋で寝ていたのだが、今はもっぱらルイさんの寝室の――このダブルベッドで寝ている。
前に何度か、帰りが遅いので自分の部屋で寝ていたら、深夜に帰宅したルイさんがベッドに入り込んでくるという事があった。
僕のベッドはシングルなので、情事の後に二人で寝るにはいささか狭い。
なので最近ではルイさんの言いつけにより、この部屋で寝るのが習慣となっていた。

「・・・大きく・・・なってきたな・・・」
ルイさんは口を離すと、そう言って僕の股間をまさぐった。
僕もルイさんの二つの大きな双乳に両手を伸ばす。
Yシャツ越しに手に伝わる乳房の量感と、やわやわと股間に広がるわずかな刺激によって、僕のイチモツはまたたく間に膨らんでゆく。
「ルイさ・・・ん」
「ふふ・・・本当にキミは・・・おっぱい好きだな」
「服、脱いで・・・ルイさんの・・・おっぱいが見たい」
「ん・・・ちょっと待っていろ」
言って、ルイさんは体を起こした。
そして僕の上に跨り、服を脱いでゆく。
縛っていた髪を解き、Yシャツとズボンを脱ぎ捨てると、身に着けていた黒のブラジャーを外した。
素晴らしく形のいい美巨乳がぷるんっ、とまろび出る。
「・・・・・・!」
僕も仰向けに寝そべったまま、着ていたパーカーとTシャツを脱ぎ捨てた。
・・・視覚から入ってくる扇情的な光景に、僕のペニスはギンギンに勃起している。
ジーンズに押さえつけられているソレを早く解放しようとして、僕が動こうとすると。
その手をやんわりとルイさんに止められた。
「いいから。私がやる」
ルイさんの手が器用にジーンズとトランクスをずり下ろしてゆく。
さらけ出されたペニスは、既に先走りの汁でベチョベチョに濡れていた。

「ふふふ・・・相変わらず、濡れやすいなキミは・・・」
ルイさんが少しだけ位置をずらして、僕のペニスに顔を近づけた。
そして、くんくんと匂いをかぐ。
「・・・いい匂いだ・・・」
「まさか」
僕が苦笑すると、
「嘘じゃないさ」
そう言ってルイさんは僕の肉棒をその口に含んだ。
「・・・・・・ッッ」
「それに・・・・ずちゅ・・・ちゅ・・・ふあ・・・・・・美味しいぞ、ハルの我慢汁・・・・ちゅ」
先端から溢れたカウパーが舌先ですくい取られる。
「う・・・・く・・・」
「ふ・・・ずちゅ・・・くちゅ・・・」
本格的にルイさんの口唇による愛撫が開始された。
激しい快感が僕の脳髄を襲う。
「・・・ず・・・ずちゅ・・・ずちゅうう・・・」
濡れた口腔内で、ルイさんの舌が僕のペニスをなぶり。いたわり。そしてもてあそぶ。
「ふぐっ・・・ずず・・・ず・・・・・・んぐっ・・・・・」
ルイさんの責めがどんどんと激しくなってゆく。
「腰が・・・ぴくぴく・・・している・・・感じて・・んんっ・・・いるんだ、な・・・ずちゅ」
「くあ・・・」
「我慢しなくて・・・も・・・ずず・・・いいんだ・・・ぞ? ちゅぱ・・・好きな時に・・・たくさん・・・出して・・・じゅ・・・ずちゅるるる」
ペニスをしゃぶりながら嬉しそうに笑うルイさん。
口の端からは、ダラダラと透明な液体がこぼれている。
その淫蕩な笑みに。

――僕の我慢は限界に達した。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」
どびゅっ! どびゅう! びゅるるるるっ。

「!?・・・ふぐっ・・・んんっ!・・・んん・・・・・・!」
頭が真っ白くなる快感とともに、ルイさんの口中に大量の白濁をぶちまける。
ぶびゅっ! ぶびゅぶ・・・ぶびゅううう!
我ながら呆れるくらいの放出量なのが、ペニスから精液が吐き出される感触でわかる。
汚濁が輸精管を駆け抜け、ルイさんの口に注がれるたび、凄まじいまでの恍惚が僕の脳髄を穿つ・・・!
「く・・・あああ・・・」
「ふ・・・ぐふ・・・ごく・・・こく・・・・・・く・・・こふっ」
ルイさんは僕の射精が終わるまで、嫌な顔一つせず、精液を喉の奥で受け止めていた。
その量に少しむせながらも。
ごくり、と。一滴こぼさず、喉を鳴らしながら精液を飲んでゆく。
どぴゅ・・・びゅ・・・ぴゅ・・・。
「ふ・・・んぐ・・・ん・・・ぷはあっ」
ようやく射精が終わり、ルイさんは顔を上げた。
口元には何故か、微笑が浮かんでいる。
「はぁ・・・・・・」
僕は射精後の脱力感から、呆と、その様子を見つめていた。
「ふ・・・・・・ふふ・・・凄い量だったな・・・気持ちよかったか?」
こくこく、と頷く。
しゃべるのも億劫だった。
「そうか・・・私も・・・美味しかったぞ・・・? ハルの・・・精液・・・」
ペロリとまたペニスの先端を舐める。
残っていた精液が、ルイさんの舌とペニスの間に糸を引いた。
「なんで・・・」
「ん?」
「なんで・・・ルイさんは・・・ここまでしてくれるんですか?」

――そう、昔から不思議に思っていた疑問を。
・・・途切れ途切れの言葉で口に出した。


僕の質問に、ルイさんは少しだけ驚いたようだった。
けれど、すぐにまた微笑を浮かべ、
「フ、愚問だな。私がキミを愛しているからに決まっているだろう」
と言った。
「それは・・・僕がルイさんの弟子だから・・・ですか?」
「それもある。・・・だがそれはちょっとした事だ。核たる要因にはなりえない。・・・・・・というかだな、そもそも私は弟子をとる気など本当は微塵もなかったんだ」
「・・・え?」
そんな事は初耳だ。
僕の記憶では、ルイさんは僕の弟子入りを至極あっさりと認めてくれたように思う。
とてもルイさんが言うようには・・・・・・。
「それはアレだ。ハルだったから認めたんだ」
「へ?」
「私は最初断るつもりでいた。けれど蒼玄老が一度見てくれと云う。私もあの人には世話になっていたからな。会うだけは会ってみる事にした」
「・・・・・・・・・」
「そして、実際会ってみたんだが。・・・ふふ、その時の私の気持ちが分かるか? 体は稲妻に打たれ、魂はキミに囚われたような錯覚を覚えたよ」
くすくすと、笑いながら言う。
そして両手を僕の顔の左右につくと、上に覆いかぶさるように、真上から僕の顔を見下ろす位置に移動した。
上を見上げると、天井の代わりにルイさんの顔が見える。
長いストレートの黒髪が僕の顔に触れる。
電気もつけない薄暗い部屋で、けれどルイさんの双眸がハッキリと僕を見つめているのがわかった。

「それは・・・つまり僕に一目惚れしたとか・・・そういう事・・・?」
おずおずと尋ねてみる。

何故か、今のルイさんは肉食獣を思わせた。
――そして僕はガゼルとか。そんな感じ。

ニヤリと、ルイさんが笑った。
「一目惚れ? 冗談。そんな生易しいものじゃなかったさ。・・・言ったろう? 囚われた、と。目を合わせた瞬間に運命を決定付けられたんだ。・・・そうだな、ようやく見つけた、と云ってもいい」
「・・・・・・それは・・・その・・・何でそう思ったんです?・・・ルックスですか?・・・それとも、その・・・秘められた拳才・・・とか?」
「オイオイ・・・キミ、目が悪いんじゃないだろうな? 自分がハンサムだとでも? それとも極度のナルシストか?・・・悪いが私の審美眼はそこまで曇っちゃいない」
・・・なんかムチャクチャ言っている。
「それにキミに秘められた武の才なんてモノもない。・・・というかキミには才能の欠片もない。ハッキリ言えば無能だ」
「ぐっ」
言葉のナイフがグサグサと胸を抉る。
あー、そうですよ。どうせ僕は無能ですよ。・・・・・・ちぇ。
「・・・じゃ、じゃあ、なんでです?」
「そうだな・・・強いて云えば眼だ」
「眼?」
「ああ、眼だ――。キミの眼を見た時、キミという人間が全て理解できたし、同時に私がずっと求めていたモノだと解かったのさ」
そうルイさんは答えた。
・・・随分と大げさな話だ。
目を合わせただけで、他人の事が分かる。
――そんな都合のいい話なんてあるワケないだろ――そう考える。が、怖いので口には出さない。
「今、目を見たぐらいで、何が解かる――そう思ったな?」
うお、マジか、この人。・・・・・・・・・・・・エスパー?
「フン、キミは思ってる事が顔に出やすい」
呆れたように言うと、ルイさんは僕の隣に倒れこんだ。

「ハハ・・・じゃあ・・・その。僕は武術家として筋がいいから弟子にしてもらったんじゃないんですね」
「・・・何だ、随分とこだわるんだな。そんなに武術家として大成したかったのか、キミは」
「いや、そういう訳でもないですけど。・・・折角10年以上、修練してきたワケですし。・・・それなりの使い手にはなりたいな・・・と」
「諦めろ。それは無理だ」
にべなく告げるルイさん。
くっ、ムカつく。
「今、言ったろう? キミに拳才なんてモノはない。――いや、キミは何一つとして持ってるモノなどなかった。それがキミの本質だった」
その言葉に――。

――ドクン、と。

心臓が一度だけ大きく鼓動を鳴らした。
なん、だって――?
「何も持っていないからこそ、何物にも囚われない。だからこそ私はキミに強く惹かれた。キミを手元に置いて、決して離すまいと思ったんだ。けれど――」
ルイさんの目が僕を見据える。
僕の心を見透かそうとでもするように。
「――キミは何故、強くなりたいんだ? 前から疑問に感じていたが、キミは武道家向きのメンタリティを備えていない。・・・他人に勝利したい訳でもなく、自らの向上の為に道を極めようという求道的精神がある訳でもない」
「・・・・・・」
「なのにキミは強さを求める。ただ、純粋な強さ。敵を打ちのめすだけの、技術としての格闘を。それは何故だ」
「・・・・・・・・・そ、れは」
「私はキミを内弟子という名目で引き取ったがな。・・・キミを必ずしも後継者としようとは思ってなかったんだ。キミが望むなら好きな道を選ばせよう。そう考えていたし、これからもその意思は変わらない」

「え・・・」
「・・・別に鍛錬など続けなくとも良いし、仮に私の拳がこの先、世に残らなかったとして。それはそれで良いとも考えている」
「僕は・・・師匠(センセイ)の弟子です」
「ああ、そうだな。その事実は変わらない。・・・けれどキミが今の姿勢のまま力を求めたとして、それは決して叶わないだろう。・・・だからこそ。――私は師として春留が力を求める理由を知りたいと思う」

答えない。
――イヤ、答えられなかった。
その問いに対する、答えはおそらく自分で分かってはいたけれど。
それを認める事は――どうしても躊躇われた。

僕の沈黙をどう受け取ったのか。
「ふむ・・・まぁ、いいがね。・・・答えられる時がきたら教えてくれたらいい。・・・私は、ずっと側にいるさ」
それだけゆうと、ルイさんは僕の頭を撫でた。
「――――」
目の前にはルイさんのいつもの微笑。
(この人・・・は)
ルイさんはいつでも僕を愛していてくれる。
両親を失くし、感情を失くし、希望を失った僕でも。
それでもこの人は愛してくれていた――。
「ルイさん・・・」
ルイさんの胸に顔をうずめる。
空っぽの心をルイさんの温もりが満たす。
「何だ・・・ふふ・・・相変わらず甘えん坊だな」
「ルイさん・・・続き・・・犯りたい」
「え? あんっ・・・ハル?」
ルイさんの胸を両手でこねくりまわし、乳首を口に含む。
油断していたのか、ルイさんはひっ、と短く悲鳴をもらした。
「お・・・い・・・、そんな急に・・・!」
口に乳首を含んだまま、引っ張る。
ルイさんの形のいい胸が、変形する。
「んっ・・・はああァん・・・・く・・・んんっ」
ルイさんが眉根を寄せる。
ちゅぱちゅぱと、おっぱいを吸う。
「ん〜〜〜〜っ・・・あん・・・ハ・・・ル・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・そろそろ、ルイさん」
告げて、ルイさんの見につけていた最後の一枚を剥ぎ取った。
ショーツは既にぐしょぐしょに濡れていて、脱がす際に愛液がキラリと糸をひいた。
「・・・もう、こんなに濡れてる」
「バ、バカ・・・・・・キミのをずっと舐めてたんだぞ・・・私だって興奮する」
珍しく恥ずかしそうな表情をするルイさん。
「く」
「わ、笑うな」
「・・・ううん。凄く可愛い、ルイさん。・・・興奮した。――挿入(いれ)るよ?」
「・・・・・・・・・だろうな」
「?? 何、ルイさん?」
「浮気・・・しない・・・だろうな?」
ルイさんは顔をそむけ、ボソボソと喋っていた。
「・・・そ、その・・・さっきの話だ。・・・高校の、同級の子に・・・告白されたと・・・」
「・・・・・・ああ。その話か。・・・何度も言いますけど、アレは別に告白なんかじゃないんですって。・・・まぁ、好意はあるのかも知れませんけど」
「本当・・・か?」
「嘘言ってどうするんです。それに僕には大切な人が、もう、いますから。・・・いまさら告白されても無理ってもんです」
大体、アレは勘違いなのだ。
木村さんには悪いが、僕が彼女とどうこうなるなんて事、ありえなかった。

「そ、そうか」
「珍しいですね、ルイさんが慌てるのって」
彼女のこんな動揺を見るのは初めてだった。
とてもクールが売りのルイさんとは思えない。
「わ、私だって色々と考えるっ。・・・私はハルより8つも年上だし・・・やはり若い方が良いのではないか、とか・・・あ、飽きられてしまわないか・・・とか・・・その・・・と、とにかく、色々だ」
顔を真っ赤にして、拗ねるルイさん。

(ヤバ・・・・ツボ・・・)
――マズイ、久々にスイッチが入ったかもしれない。

思わず、口元を押さえる。
「・・・・う、ん? ど、どうしたハル?」
僕がおもむろに眼鏡を外したのを見て、ルイさんが怪訝な顔をする。
僕は努めて冷静に言葉を紡いだ。
「・・・証拠、見せてあげます」
「証拠?」
「僕がルイさんをどれだけ愛してるか――。・・・だから・・・今から、ルイさんを徹底的に犯す」
「――――」
「覚悟はいい? ルイさん」
ルイさんの目を見つめる。
ルイさんもやはり、僕の目をみつめていたが、ややあって、
「――ああ。私もキミに犯して欲しい。犯して、犯して、愛(おか)し抜いてくれ」
と言った。
「――うん。いくよ」
そして。

――ズン。

僕は前戯すらなく、彼女を貫いた。

「ひ、ぁああああああっ」
前戯の必要も無いほど濡れていたルイさんの秘所は、驚くほどたやすく僕のペニスを飲み込んだ。
「ふあ・・・んんんっ・・・」
ずちゅ、ずちゅ、ぐちゅ・・・・。
正上位でルイさんの肉壷を突き上げる。
「・・・・・・ルイさんの中・・・熱くって・・・濡れてて・・・柔らかくって・・・締めつけてきて・・・気持ち・・・いいよ」
「そ・・・そうか・・・・それ、は・・・はぅんッ・・・私も・・・ああんっ」
ルイさんは僕のピストンに早くも言葉が続かなくなっている。
ぬっちゃ・・・ぬりゅ・・・。
「くああ・・・ッ・・・ハ、ハルぅ・・・・・・」
責めやまぬ快感に、眉間に皺をよせて耐えている。
「気持ちいいんだね・・・。ルイさんのココ、きゅんきゅん締めつけてくるよ」
「バ、バカ。・・・そ、そんな事・・・・くあああああんんんッ」
「・・・・く・・・・・・」
じゅぼ・・・じゅぼ・・・じゅぽっ・・・!
「あんっ・・・あんっ・・・あんっ・・・ああっ」
「くぅ・・・スゲ・・・」
股間に送られてくる、ルイさんの肉の感触に、早くも僕の股間は暴発寸前だった。
「く・・・まだ、始めたばかりだっての!」
歯を食いしばり、アナルに力を入れて放出の欲求をこらえる。
同時に片手でルイさんの胸を揉む。
「あん・・・そんな・・・おっぱいとおま○こ・・・同時に・・・!?」
ルイさんの口から出た卑猥な単語に、ますます僕の興奮は高まっていく。
(・・・こんな事ゆうって事は・・・ルイさんも・・・大分キテる・・・な)
そう判断して、腰のテンポを上げる。

――これからが最高の宴。
こんなトコで果ててなどいられない・・・!


「はんっ・・・はんっ・・・んん・・・ひっ・・・」
ぐちゅ・・・ぶちゅ・・・ずちゃ・・・!
水音が段々と大きくなる。
僕はルイさんを貫いたまま、上半身だけ起こすと、視線を結合部へとやった。
(うっわ〜〜〜・・・・ぐちゃぐちゃ・・・・)
泡立ち混じりの白濁した粘液が、ペニスや膣口にまとわりついている。
「・・・・う・・・ん?・・・どう・・・した・・・ふ、くッ・・・」
「い、いや・・・・・・アソコが凄い事になってるなぁ・・・って・・・もう、ドロドロ」
「くっは・・・・そんな事・・・当たり・・・前、だろう・・・。ん・・・お互い本気で・・・感じてる証拠・・・だ」
「うん・・・そう・・・だね。・・・僕も、もうそろそろダメです」
「そ、そうか・・・いいぞ・・・ん・・・好きな時に出して、くれて・・・ワ、タシも・・・イ、く・・・」
息も絶え絶えで応じるルイさん。
「・・・え? で、でも、そろそろ・・・その危ない日なんじゃ・・・?」
突き上げながら問う。
ルイさんの周期は僕も知っていた。
「い、いいから・・・中で出して・・・くれ。・・・体が種を、欲しがって・・・いる」
「え・・・、それ・・・って」
「わ、私は・・・キミの子供が・・・欲しい・・・」
「!」
――思わず動きが止まった。
「ダ、メ・・・か?」
僕の戸惑いを感じ取ったのか、不安な眼差しで尋ねてくる。
「・・・本気、ですか?」
真剣な眼で僕を見つめたまま。
こくり、と。ルイさんは頷いた。


「どうして・・・? いいんですか?」
「好きな人の子供を産みたいと思うのは当然の事だろう?・・・それとも・・・キミは、イヤ・・・か?」
「まさか」
首を振る。
自分の最愛の人が自分の子供を産みたいと言ってくれる。
それが嫌だなんて筈はなかった。
「でもさ。僕は高校生だし。・・・今だって、その、ルイさんに養ってもらってる身なワケで・・・だから・・・」
「だから? 何だ」
「ルイさんにばかり負担をかける。・・・それは嫌だ」
「・・・ふ」
ルイさんが笑った。
「何を今さら。私はな、キミの人生を背負う覚悟など、とうの昔に出来ているんだ。それこそ5年前、キミを引き取った時にな」
「ルイさん・・・」
「それに・・・これは私の我儘(わがまま)だ」
「我儘・・・?」
「キミとの絆が欲しい」
「え・・・・・・」
ルイさんの手が僕の胸に伸びる。
そして心臓の辺りをさわ、とさすった。
「今日みたいな事があるとな?・・・おちおち仕事もできない」
「あ・・・」
「だから、な・・・。その・・・私が妊娠すれば・・・その・・・少しは安心かな、と」
「ルイさん・・・」
「む。な、何だ・・・」
「可愛すぎ」
「――――」

一瞬で、ルイさんの顔が朱に染まった。


「じゃあ・・・いいんだね? 出すよ、中で。・・・ルイさんを・・・孕ませる」
「ああ・・・中で・・・いっぱい出して欲しい・・・。キミに迷惑はかけない。全ての責任は私が取るから」
「まさか・・・ルイさんに全部押しつけるワケないじゃない。・・・結婚しよ? 僕が卒業したら」
「・・・・・・・・・・・・そ、れは・・・本当か?」
「嫌?」
ぶんぶんと、首を横に振るルイさん。
「嬉しい。夢のようだ」
僕は苦笑した。
「あのさ、僕を押し倒した人が何言ってるのさ」
「・・・む、昔の事を・・・」
「いいから。ほら、いくよ」

――ガツン、と。
突き上げを再開した。
「くああぁんッ」
再びルイさんが良い声で啼いた。
ずっちゅ・・・ずっちゅ・・・
両手でルイさんの細い腰を掴む。
そのまま、上下にシフトさせる。
その動きがペニスを摩擦して、僕の限界をどんどんと近づけてゆく。
「お、おああっ・・・ハ・・・ル・・・うひ!・・・・お、お○んこ・・・ズポズポし、てる・・・!」
「出すよ、ルイさんッ」
「出せっ! 中で! そのまま出して!」
「〜〜〜〜〜出るッ」
ルイさんの両足が、僕の体を挟み込んでロックした。
「孕ませ・・・ってぇッ」
びゅぶばっ!
二度目の射精が、ルイさんの膣内で弾けた。
どびゅ! びゅくく・・・びゅくくっ・・・・びゅるる・・・!
「お・・・ほう・・・あああっ・・・な、中で・・・おま○この中で・・・いっぱい・・・」
ルイさんはうつろな目で、膣内射精の快感を貪っている。
びゅくく・・・びゅ・・・
まだ、射精は終わらない。
気が遠くなるような快感に耐えながら、僕は再びルイさんの腰を両手で掴むとそのまま腰を突き上げた。


「くはあっ!!!・・・・・・は、ハ・・・ル?」
絶頂の最中にあったルイさんが、驚愕の表情で僕を見つめる。
そして僕はそのまま、腰を打ちつけた。
「まさか・・・この程度じゃ・・・終わりませんよ・・・・・・このまま更に・・・!」
「そ、そんな・・・ハルっ・・・駄目だッ!・・・いくらなんでも・・・」

――ガン!
「くはああっ・・・・ハ・・・ル・・・ひゅ」
制止の声を無視して、僕は腰を動かした。
ルイさんの体を抱き起こして、正面座位の形にする。
ぐちゅ・・・ぐちゅ・・・。
ズンとひと突きする毎に、ルイさんの股間から精液が溢れる。
「あ・・・ああ・・・ハ、ハルぅ・・・」
ルイさんが涙目で僕にすがりついた。

「・・・・・・! い、痛かった!?」
慌てて聞いてみる。――何せ、ルイさんの涙を見るのなんて初めてだった。
「・・・・う、ううん・・・気持ちよすぎて・・・イ、イキっぱなし・・・に」
ほっ、と僕は安心して溜め息をついた。
「なんだ・・・それなら何も問題ないじゃないですか」
「問題・・・ありまくりだ・・・・。キミ・・・私を・・・壊す気か・・・」
「人体はこれくらいじゃ、壊れませんよ。・・・ルイさんが教えてくれたんです」
「全く・・・キミってヤツは・・・はぅッ!」
ルイさんの言葉をさえぎって、剛直を撃ち込む。

二度の射精をしたペニスからは――。
硬度を失う前にムリヤリ刺激を与えて、勃起させたせいなのか、じんじんと鈍い痛みが発せられていた。
それでも構わずに、僕はルイさんの体を喰らう。

「く・・・うん・・・は、はぁぁぁ・・・」
「・・・・・・・・・はっ・・・はっ・・・・・・」
すぐに、三度目の射精が近づいてくる。
・・・限界は近い。流石に四度目はありそうになかった。


「は・・・くぅん・・・ああっ・・・」
もう、既にルイさんは僅かな反応しか返せなくなっている。
聞こえるのは軋むベッドの音と、ぐちゅぐちゅという水音と。荒い息遣いだけ。
そして、僕はルイさんの体を抱きしめると、フィニッシュとばかりに。

――ぐぐっ。

今までよりも更に深奥へ腰を送りこんだ。
「〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!」
ルイさんが大きく暴れた。
「起きた・・・かな? ルイさん」
「そこ・・・ち、がう・・・ひぃっ!!」
・・・僕の亀頭はコツコツとルイさんの深奥を擦りあげていた。
「嫌だった・・・?」
「ひ・・・い、嫌じゃ・・・ない・・・が」
「だったら」
ぐぅ〜〜〜〜ッ!
もっと奥へ奥へと。
亀頭がルイさんの子宮口をムリヤリこじあける。
「か・・・はっ・・・そこ・・・しきゅう・・・・・ん!」
「く・・・こ、ここで出したら・・・んっ・・・妊娠するかな? ルイさん」
「・・・・! は・・・う、ん・・・そ、そうかもな・・・くひっ」
そう云って顔をゆがめながら、それでも嬉しそうにルイさんは笑った。
「じゃあ・・・イクね?」
と僕は告げて。
ぐぐっ。と、腰を押し込むと。

最後の射精を開始した。

ぶばっ!
「ひっ! んんん〜〜〜〜〜ッ!!」
ルイさんが身体を限界まで反らし、四肢を伸ばして硬直した。


「くあ・・・る、ルイ・・・・」
びゅぶうぅ! びゅぶぶ、びゅぶぶうう!
「か・・・かはっ!・・・は、ハルぅ・・・・!」
圧倒的な量の精液が、ルイさんの子宮の中に噴出される。
ルイさんはその精の飛沫を深奥に浴びて、意識が飛びかけているように見えた。
「あ・・・ああ・・・お、おま○こが・・・イ、イク・・・また・・・イってしまう・・・!!」
「る、ルイ・・・」
「はあぁぁ・・・・い、いっぱい・・・・子宮の・・・中に・・・」
「る・・・ルイ・・・」
「・・・ん・・・な・・・んだ」
「愛してる――」
「――――!」

そして唐突に。

僕の意識はそこで途切れた――。


                      ◇

(――神楽くん)

――誰かが僕を呼ぶ声がした。

「おい・・・おい・・・」
「・・・ん」
「ハル、大丈夫か?」
ペチペチとルイさんが僕の頬を叩いていた。
「・・・ルイさん?・・・あ、れ?」
「起きたか。青い顔して寝てるから、大丈夫かと心配したぞ」
「あ・・・僕、どうしたんで、す?」
頭を振りながら、体を起こした。


「無理しないで大人しく寝ていろ。・・・・・・私もお前も、あの後、意識を失ったらしい」
「あ、そう・・・か。・・・今、何時です?」
「2時。・・・全く、無理しすぎだぞ。何もぶっ倒れるまでする事もあるまい」
「・・・あ。ルイさんは・・・その、大丈夫ですか?」
「誰かさんが、やんちゃするからな。なんだか体中軋むような気がするが。・・・ま、この程度なら大丈夫だろう。キミとは鍛え方が違う」
「・・・そうですか。良かった」
「・・・キミな。後で心配するくらいなら、最初(ハナ)からそんな事しなきゃいいだろう」
ルイさんは呆れたように言った。
「はは・・・そりゃ、そうなんですけど・・・さっきはスイッチ入っちゃってたから・・・ごめんなさい」
「ふむ。わかればよろしい」
ルイさんは鷹揚に頷いた。
そして、立ち上がる。
「ではな。私はこれから少し出かけてくる」
「仕事ですか?」
そう云えば、いつのまにかルイさんは黒のスーツを上下に身に纏っていた。
その上には黒のロングコートを羽織っている。
「ああ。今、この辺には頭のイカレた変質者が徘徊してるからな。そいつを捕まえなきゃならない」
「気をつけてくださいね」
「フ、私を誰だと思ってるんだ?・・・キミこそ夜のうちは外に出るんじゃないぞ? 危ないからな」
「はい」
「うん、じゃあ行って来る」
そう言うと、ルイさんは寝室のドアを開けた。
「あ・・・ルイさん」
「ん? 何だ」
振り返るルイさん。
「告白がどうの・・・って話なんですけど・・・どうして知ったんです?」
「・・・ああ、それか。・・・秘密だ」
「ルイさん」
「・・・分かった分かった・・・。そう怒るな。・・・本来ならソースを明らかにするのはルール違反なんだが・・・まぁ、いいか」
「・・・・・・・・・で。どうやって?」
「メールだ。メールでタレこみがあったのさ」


「メール? 誰から」
「発信元はキミの携帯だ」
「は?」
「心当たりないか? すぐ側でキミ達の様子を目撃していて、キミの携帯をわずかな隙に操作できた者。おそらくはキミとある程度、親しい人間と推測される」
――心当たり。あった。
というか、そんなのに該当する人間は一人しかいなかった。
「ま、そんなトコだ」
「刻彦のヤツ・・・、明日会ったら、思い知らせてやる」
とりあえず、今日より痛いコンボを叩きこむ、と決意する。
「程々にしておけ? 悪気があったわけじゃないだろうしな。私にとって有り難かったのも確かだ」
・・・いやいやいや、絶対、悪気ありまくりなんです、あいつは・・・。
あいつの面白がってる顔が目に浮かぶ。
「・・・ふ。それじゃあな、行って来る」
ルイさんがそう言ったので、
「あ、はい」
と慌てて玄関まで見送る。
――全身を黒い服に包んだルイさんは、そのまま溶けるように闇に消えて行った。

そうして。
独りになった僕は家の中に戻った。
眠気はない。
一度起きたせいで、目は完全に冴えてしまっていた。
(うーん。・・・何しようかな)
食いそびれた夕食もある・・・が、食欲も全くなかった。
久しぶりに作りかけのボトルシップでもイジろうか、そんな事を思案していると。

ちゃらららーーちゃらららー♪

と、突然、携帯からメールの着信音が鳴り響いた。
「こんな時間に・・・?」
不思議に思って、相手を確認する。
件名は無題、発信者は――。
「木村・・・さん?」
メール内容を確認する。
そこには――。

”たすけてがっこう”

――ただそれだけが。

――書かれていた。


「ハイ・・・ハイ・・・そうですか・・・ハイ・・・・・・じゃあ・・・やっぱりまだ・・・」

――時刻は午前2時20分。
僕は、木村玲の携帯が繋がらない事を確認した後、彼女の自宅に電話していた。

・・・電話には母親らしき人が出た。
木村さんはまだ家に帰ってないらしい。
彼女が連絡もなく外泊する事など、これまで一度もなかったらしく、僕の携帯にメールが送られてきた事を知ると、彼女の母親は急いで警察に連絡すると言った。
「ハイ・・・ハイ・・・それじゃ、夜分遅く失礼しました」
電話を切る。

「ふぅ・・・」
溜め息をつく。
・・・頭が重い。

”助けて、学校”――。

メールの内容が頭の中で何度も繰り返される。
「これ以上・・・どうしようもないよな・・・・・・」
そう、独りごちる。
ここから、僕の通う私立東泉(とうせん)高校まではどれだけ急いでも、一時間はかかる。
今の時間じゃ、電車もない。
タクシーを呼んでも、警察より早く到着できるとは思えなかった。
「何で僕なんだ・・・」
木村さんが何かトラブルに巻き込まれた事は想像に難くない。
でも最初から僕などではなく、警察に助けを求めていれば、無駄に時間を費やす事もなかっただろう。
それとも、メールしかできない状況に置かれていたのだろうか?
いすれにせよ、僕なんかより適切な相手があったハズだ。

(――ヒーローなんだよ?)

・・・脳裏に浮かぶのは、彼女の照れた表情。

「ち、馬鹿な事を・・・・・・」
・・・苛々する。
何故だか無性に苛立たしかった。
「あー、もう!」
外を見る。

――いつのまにか窓の外には雨が降っていた。


                          ◇

「う・・・」
苦悶の声がした。
絶望を含んだ、少女の声。

――埃とカビの。すえた匂いが充満する体育用具室。
「くはぁ・・・ああ・・・」
窓の外からは、ザァザァと雨の降る音が聞こえている。
ずこっ、ずこっ、ずこっ・・・。
小さな窓は雨に濡れ、あたりの街灯の光を映している。

「あ・・・やぁ・・・いや・・・イヤァ・・・」
「黙れ・・・」
ずちゅり。
女の秘芯には剛直が突きたてられている。
「う・・・」
「ひ・・・・! い、嫌・・・・・・」
どびゅっ! どぴゅぴゅ! びゅくくくっ!
男の肉棒から精液が。
女の子宮へと無理矢理に注ぎ込まれる。
「イヤァぁああああーーーーーーッ」
女――木村玲は、そう。
絶叫した。

「黙れよッッ!!!!!!!」

玲を後ろから犯していた少年が怒鳴った。

「ひっ」
ビクッ、と玲の体が竦む。
「黙っててよ・・・! お願いだから・・・・ッ」
「ひ・・・い、ぃ・・・い・・・」
玲は恐怖と痛みに、ガタガタと震えていた。
制服は破られ、髪は乱れている。
チャームポイントであった笑顔は、今や見る影もない。
そして。股間からは処女だった証である鮮血が、無残な彩りを与えていた。
「なんで・・・。なんでなんだよ・・・!」
少年がそう呟きながら腰を振る。
ぬちゃっ・・・ぬちゃっ・・・ぬちゃっ・・・。
ジッパーから丸出しになったペニスが、玲のヴァギナに何度も埋め込まれる。
「ひっ・・・んぐっ・・・んん〜〜っ」
ポロポロと涙を流し、玲は自分が犯される嫌悪感と痛みに必死になって耐えた。
(たすけて――)
歯の根が噛みあわず、カチカチという音を立てる。
「何でオレじゃないんだ・・・」
腰を前後に揺り動かしながら少年は繰り返した。
(たすけて、神楽くん――)
「何でなんだよ・・・ねぇっ・・・玲さん!」
ガン! と凶悪な肉槍が玲の花芯に乱暴に突き刺さる。
「んひぃっ!!」
「アイツは・・・・・・違うんだ・・・なのに・・・なのに・・・!!」

――ガツッ!
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜んッッ」
「どうしてオレを選ばないッ!?」
「きゃひぃんっ・・・! ひ・・・ひ、ひっく・・・な・・・なんの・・・事・・・?」
「とぼける気かよッ」

――ガツン!
「ぃ〜〜〜〜〜〜んぐッ・・・や・・・め・・・!」
「黙れッ」
「が・・・・・・・・ぃ・・・ッ」
ぐぐぐ・・・。
亀頭が玲の子宮にねじこまれる。
玲の口がぱくぱくと、動いた。

「オレは知ってるんだぞ・・・。玲さんが・・・アイツに告白した事を・・・今日の朝、校門で」
「・・・・・・!」
「ぎ・・・・ひぃ・・・・か・・・はっ・・・」
ずん! ずん! ずん・・・!
少年の乱暴な責めに玲が白目をむく。
つい数時間前まで、処女だった玲に子宮まで責められるSEXは拷問以外の何物でもない。
玲の体は既に限界に達しつつあった。
「・・・玲さんだって、感じてるんじゃないか・・・。嫌がってる振りしてても、やっぱりオレの事が好きなんでしょ?」
「・・・あ・・・・ああ・・・・」
「玲さん、言ってたでしょ? 朝、自分を助けてくれた人がいるって・・・。そいつがヒーローだって。・・・でもね、本当はアイツなんかじゃなく、この――」

「――ああ・・・か、神楽くん」

「・・・・・・・!!!」
「助けて――」
ギリ――と。
少年が歯を噛みしめる。
「・・・そうかよ。・・・そんなにアイツの方がいいのか・・・」
少年の端正な顔が醜悪に歪んだ。
「・・・か・・・神楽く、ん・・・」
「でも残念だったね・・・。玲さんのアソコはオレがもらったんだ。処女もオマ○コも子宮も!・・・それから初受精もね」
「・・・うう・・・」
「これから、玲さんが妊娠するまで精液を注ぎ込んであげるよ。嬉しいだろ? 愛したヤツ以外の子供を孕ませられるなんてさ・・・ハ・・・ハハハ!」
「・・・・・・・う・・・・」
ずじゅ、ずじゅ、ずじゅ・・・。
血と白濁のこびりつくヴァギナに、グロテスクな突起が出入りする。
「う・・・そろそろ出るぞ・・・また受け取ってよ・・・奥でさ・・・」
「ひ・・・やめて・・・・中はもう・・・・ホントに・・・子供できちゃう・・・」
「それが目的だよ。・・・・玲さんを孕ませる。――そして玲さんはオレのモノになるんだ」
ニヤリと少年が笑う。
「い・・・いや・・・・」
「そら・・・受け取れ・・・! ぐ、ぐううっ!!」
少年の体がびくん、と大きく震えた。
ぶぶぱっ!
肉棒がびくびく、と脈動し、亀頭が膨らむと。もう何度目になるか分からない膣内射精が行われる。
びゅく、びゅくく、ぶぶぶぶっ!

「あああ・・・・は、ああ・・・あぁぁ・・ら、らめぇぇ・・・」
白目をむきながら、玲は暴れた。
しかしその体は少年によって強引に押さえつけられ。
「う・・・いいよぉ・・玲さん・・・」
ゼリーのように濃厚な液体が、子宮の中を白く染めてゆく。
どぶぶぶっ、ぶぶるる・・・・・。
「ふぁ・・・ああああ・・・・入ってくる・・・入って・・・・。ダメ・・・妊娠・・・しちゃうう・・・」
「う・・・ほ、ほら・・・気持ちいいんだろ・・・玲さん・・・気持ちいいなら気持ちいいって・・・・言えよ・・・ッ」
玲のウェーブヘアを無造作につかみ、顔を後ろに向けさせ。かすれた声で怒鳴る。
「い、いや・・・・」

ゴキン。
鈍い音がして、玲の顔面に拳が下ろされた。
「なんだよ・・・素直じゃないなぁ・・・。もう一度だけ聞くよ?・・・ねぇ・・・気持ちいい?」
痛みと同時、玲は口元と鼻に血の匂いと味を感じたが。
しかし、それもすぐに薄れてゆく。
溢れる涙のしょっぱさと、精液を注がれるおぞましさと、そして――恐怖によって。
(あ・・・ああ・・・ダ、ダメ・・・もう・・・)
「ねぇ、気持ちいい・・・?」
少年が無表情に迫った。
「・・・・ひっ、ひぐっ・・・ふぁ、ふぁい・・・・き、気持ち・・・いいです・・・ふぇ・・・気持ちいいですぅ・・・」
「どこがさ」
「あ、あそこ、が・・・」
「オマ○コだろ?」
「・・・!!・・・・・・オ」
「お?」
「お、おま○こです・・・お、おま○こ気持ちイイッ・・・・・・す、すごく気持ちいぃ・・・です・・・・・・ウッ・・・ううう・・・」
泣きながら、玲が答える。
「そうだよ・・・オレの方がいいんだ・・・アイツなんかよりずっと」
玲の答えに少年は満足そうな笑みを浮かべた。
・・・玲の股間から、入りきらなくなった精液(ザーメン)がぶくぶくと溢れ出す。
玲はもはや。ぐったりと、身動きひとつしない。
(殺される)
玲は何処か――冷静に、自分の置かれた立場を考えていた。
どうしてかはわからない。
唯一つ。間違いなく言えることは。
自分はおそらく。このままこの男に殺される・・・!

「あひ・・・ひ・・・」
(嫌――)
「だから受精させてあげるんだ・・・。オレの優秀な遺伝子を・・・玲さんが」
「ひ・・・ひぐっ・・・うううう〜〜〜」
「ね・・・欲しいよね? ・・・オレの子供・・・」
(嫌!)
「う・・・く・・・」
「妊娠してよ・・・オレの子供・・・ねぇ、レ・・・イさ・・・?」
そこに至り、少年はある事実に気付いた――。

「――携帯がない」

彼が最初に奪い、彼女の荷物と共にいつでも目の届く位置――跳び箱の上に置いていたハズの携帯電話。
それが、今。
何処にも見当たらなかった。
「こ――の!」
「きゃあ!」
玲の髪を掴み、強引に投げ飛ばす。
カラララ・・・。
玲が倒れると同時、その手から携帯電話が飛び、コンクリートの床を滑ってゆく。
「ホント、やってくれるよねぇ・・・! 玲さんはさぁ!」
すぐに少年はその携帯を拾った。
発信履歴をチェックする。
「・・・神楽春留(かぐらはる)・・・またアイツか」
「・・・・・・・・・・!」

それは。
ほんの一瞬だった――。
拘束が解かれ。
少年の注意が逸れたほんの一瞬。

その一瞬の隙に玲は――。
限界ギリギリの体を奮い立たせ。
何の迷いもなく、倉庫の出入り口に飛びついていた――。

ひと息で戸を開けると、即座に駆け出す。
100M12秒台の俊足は、体育館をものの数秒で駆け抜けさせ――。
バァン!
扉を開け、雨の中、ぬかるんだ土の上を裸足で走る――!
(死なない――!)
心に愛しい人の面影を念じる。
(私はまだ神楽君に気持ちをハッキリと伝えてないから・・・)
ビシャ、ビシャと、顔まで跳ねる泥も意に介さず、玲は走った。
(だから――だから、神楽くんにもう一度会うまで・・・・・・・・・死ねない!)
そうして中庭を全速で抜ける。
「ハッ・・・ハッ・・・ハァ・・・!」
胸が痛い。
「ハァ・・・・ゼッ・・・」
呼吸が苦しい。
「〜〜〜〜〜ッッ」
しかし。
ここを抜ければ、大通りに面した校門までは目と鼻の先だった。
(ここの角を曲がれば――)

・・・ズチャ。

そこに。
――<絶望>が具現化していた。


「どう・・・し、て・・・・・・?」
・・・愕然とした表情の玲の口から、そんな声が漏れる。
ザァー・・・・。
雨は一向に止む気配もなく。
「・・・足速いな、玲さん。・・・でもさ、そのくらいでオレの”軽功”と”運足”から逃げられると思った?」
無防備に雨に打たれながら――そう、少年は無表情に問うた。
「あ・・・あ・・・」
「あーあ・・・。これで殺(バラ)さなきゃいけなくなっちゃった・・・」
言いながら、少年はゆっくりと間合いを詰める。

ベシャ・・・ビシャ・・・。
「い・・・や・・・」
それに合わせ、じりと、玲も後ずさる。
「玲さんが悪いんだよ。・・・アイツにメールなんかするから。・・・殺したくはなかったけど、これから警察が来るまでに、玲さんを別の場所に移すのは流石に骨が折れる」
そう言って、少年は笑った。
人懐っこい、あどけない笑み。
「・・・警察・・・」
「ン・・・? どうしたの? 不思議な顔して。もしかしてアイツ本人が来るとでも思った?」
「え・・・」
呆然とする玲。
「来るわけないよ。アイツはそんなヤツじゃない。オレには分かる。・・・アイツは冷静に時間を判断して、まず警察か君の自宅に電話する。・・・そして自分は来ない。そういうヤツだ」
「そんな・・・そんな事ない・・・! 彼は・・・神楽くんはっ! きっと私を助けに来てくれるっ」
ハ。と、少年は嘲笑した。
「ま、いいけどね。・・・でもさ、玲さん。ひとつ聞いていい? 玲さんはさぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アイツの”何を”知ってるのさ?」
「え・・・」
「オレには分かるよ。・・・・・・アイツはね。きっと冷静で酷薄で――真実、何も持ち合わせてない。・・・そのくせ淡々と。手に入れられないくせに、同じ事を繰り返すのさ
・・・分かるかい? あの男は自分が”そこ”に届かないと知っても、自分の在り方を変えないんだ」
「・・・・・・・・・?」
「つまりさ。存在の意味が希薄なんだ。・・・手に入れられないと知って諦めるのはわかる。認めずに希望にすがるのも。
・・・けれど。自分がそこに至らない事を完全に認めて尚、在り方をを変えないってさぁ・・・・・・それってどうなの?」
「・・・・・・」
少年はつまらなさそうに続ける。
「人間(ヒト)ってのはさ、絶対にできないなら、諦めて違う事するか、その事に気づかない振りして続けるか。どっちかしかないんだよ。それがヒトだ。
でも、アイツは違う。自分にはできないと認めた上で、表情ひとつ変えずにそれを続ける。届かない事を知ってて、笑えるんだ」
「――――」
「――まったく気持ち悪ぃ。イカレてるよ。・・・オレはこれから人殺しになるけれど。きっとオレの方が生き物としちゃまだ正しいさ」
そう吐き捨てる。

その言葉に。
・・・玲はある少年の事を思い出していた。

・・・いつも寂しげな目をしていた。
放課後、茜色に染まった誰もいない教室で。
窓際の席に座って、ただぼんやりと外を見つめていた少年。
彼はあの時、何を考えていたのだろう。

・・・自分が間違っていると知ってしまったら、それは正すか、気づかなかった事にするしかない。
それでも正さず、目をそらさず歩く彼。
・・・自分が足りないのなら、何かを積み重ねるか、希望にすがるしかない。
それでも足りないまま、希望も持たず、生きる彼。
・・・自分が許されない存在なら。死ぬか、狂気に身をゆだねるしかない。
それでも死なず。――そんな自分を受け入れる彼。

――それは。

――なんて救われない。

そして玲は。
この極限の状況下で――。
自らの為でなく。
ただ独りの少年の為に。

・・・ひとすじの涙を流した。

「ま、分かんないよね、オレの言ってる事。いいさ、それがフツー・・・」
「・・・・・・た」
「ふん?」
「・・・あなた・・・!あなたなんかに・・・! 彼を否定する資格なんかないっ」

「――――」
少年の言葉が遮られる。
さっきまでとは別人の様な強さに満ちた表情で、玲は少年を睨みつけていた。
それを見た少年が片眉を上げ、小莫迦にしたような風情で笑う。
「へぇ? アイツを侮辱されると怒るんだ。・・・可笑しいなぁ、オレの事は裏切ったくせに」
「え?」
「キミを助けた本当のヒーロー・・・・。まだ分からないのか・・・玲さんは。・・・・・・あーあ・・・、本当に。・・・うん、本当に好きだったんだけどな」
「・・・・・・? さっきから、何を・・・言っているの? あなた・・・は」
「まぁ、いいさ。もう終わった事だ」
「終わった・・・って」
「そうさ、玲さん。もう全部終わった。そして時間も――もうない」
少年の体が沈む。
「だから。そろそろさ――」

告げて。

――少年は10mもの距離を一瞬で詰めた。

「え?」

「――死んでくれ」


                            ◇


「ちっ、なんなんだ、こんな時間に」
開口一番。
玄関口に出た刻彦は、そう僕に文句を言ってくれた。
「悪いな、刻彦。・・・早速だけど、カブ貸してくれ」
「おー・・・しゃあねぇなぁ・・・。ほらよ、鍵だ」
そう言って、刻彦はキーを投げてよこした。
空中でそれをキャッチする。
雨に濡れたカッパから雫が飛び、頬に冷たい感触が走った。

「・・・サンキュ。さっき電話で言ったとおり、ガス満タンにして返すから」
「おぅ。ついでに王華軒のラーメンな」
「・・・刻彦。それは足元見すぎじゃないか?」
時刻は午前2時50分。
結局、僕は。
彼女――木村さんの事が気になって、家を出て来てしまっていた。
「バカ言えよ、こっちゃ寝てたトコ叩き起こされたんだぜ?」
――貴重な睡眠時間を奪ったんだから、これでも安いぐれーだ。そう言って笑う刻彦。
「・・・あのさ、僕は刻彦が今日した事、許したわけじゃないんだぜ?」
「あん?」
「今日の昼、僕の携帯、勝手にイジったろう?」
「・・・げ」
刻彦がバツが悪そうな表情を浮かべる。
「これで――チャラさ」
そうニヤリと笑って見せる。
「ちっ」
身を翻して後ろに――刻彦に手を振った。
そして、そのままカブを置いてある駐車場へと歩いて行こうとしたところで――。
「ハル」
・・・真剣味を帯びた刻彦の声に呼び止められた。
「ん」
振り向く。
前髪から垂れた雫に眼鏡が濡れた。

――刻彦が口を開いた。
「なんか面倒くせー事か」
「・・・そうだね。久しぶりに面倒かな」
「それでも行くんだろ?」
「うん」
そう答えると、刻彦は
「そか。気をつけてな」
と頷きながら言った。
「うん。じゃ」

こちらもそれだけ答えて、再びそのまま歩き出した。




                       ◇


そして、午前3時20分――。

東泉高校に着いた僕が目にしたモノは。

たくさんの点灯する赤色ランプの群れと――。


――変わり果てたクラスメートの姿だった。



                       ◇


ザァー・・・・。
雨の降りしきる中。
瑞月(ルイユィエ)は周りを6人の男に囲まれていた――。

――その距離およそ7m。
皆、同程度の距離を保ち、瑞月の四方を取り囲んでいる。
「6人か・・・。ちょっと多いな」
あくまで冷静なまま、瑞月はそう呟いていた。
男たちは一様に無表情のまま・・・・・・ただその目だけが赤く血走っている。
そしてその視線は例外なく、突き刺すように瑞月を見つめていた。

――深夜の公園脇、人気のない路上。
切れかけた街灯がジジ・・・と点滅を繰り返している。

「お前たち、そんなに私の事を犯したいか?」
瑞月が問いかけた。
「そんなに――私の子宮に精子を注ぎ込みたいのか?」
「・・・・・・・・・」
男たちは答えない。
「答えろ。・・・・お前たち、私を――孕ませたいんだろう?」
微笑をたたえ、嘲(あざけ)るように言う。
その言葉に。
初めて男たちに反応が起きた。
男のうちの一人――背広を着たサラリーマン風の男が、ニィ・・・と笑った。
「アンタのオマ○コにさぁ・・・チ○ポ突っ込んだらよ・・・。・・・・・・アンタ、どんないい声で啼くんだろなぁ」
ビシャ・・・。
ニタリ。と下卑た笑いを浮かべながら、もう一人――茶髪で鼻にピアスをした青年が、少しだけ距離を詰める。
「お姉さんみたいな人、マジ好みだわ・・・・・・今日はラッキーだね。・・・アンタの子宮にオレの臭い子種汁、たっくさん注ぎ込むからさぁ・・・オレの子供産んで欲しいなぁ」
「くく・・っ。そればかりは、運だろう。・・・なにせ、こんだけいるんだ」
眼鏡をかけたインテリ風の――医者か、教師と思わせる風貌の男が答えた。
”だな” ”ちげーね” ”バカ、オレの子種が強ぇーに決まってんだろ”
男たちが口々にそんな事を言い合う。
瑞月はそんな男たちを呆れた様子で見やりながら、
「やっぱりか・・・。全員、”侵(おか)されている”な」
と呟いた。
その言葉を聞きとがめたのか、サラリーマン風の男が怪訝な顔をする。
「・・・オイオイ、頭、大丈夫か? これから、犯されるのは”アンタ”、だろーが」
「・・・フ、貴様らに言っても理解できないさ。・・・それにな。私の体は悪いが”専用”だ。貴様らに弄ばれるつもりなど毛頭ない」


「へぇ・・・そいつはますます、つっ込みたくなったわ。アンタの彼氏の前で、中出し、しまくってやるよ」
茶髪が瑞月に近づく。

――瞬間。

ドン!
という音と共に、茶髪の体は弾け飛んでいた。
ドガッッ! ベシャッッ・・・・・・!
空中で回転し、数メートル離れた場所に落下する。
そのまま、水溜りのできたアスファルトの上を転がって、電柱下のゴミに激突。
「がっ」
呻いたきり動かなくなる茶髪の男。
ザァー・・・。
静まり返った場に雨の音だけが聞こえる。
・・・瑞月の手がロングコートから抜かれていた。
無造作な――踏み込みなどなく、横から来た相手に向け、ただ右手を突き出しただけのような掌打。
只の一歩も動かず、掌を打ち終えたままの姿勢で、瑞月はその場に立っていた。

――静寂は一瞬だけ。
すぐに男たちの間にざわめきが広がる。
「お、お前、一体・・・」
瑞月はそんな男たちの動揺など、全く意に介さない冷たい表情のままだった。
「・・・どうした? 私の事が欲しいんだろう?」
告げて。
瑞月は構えた。

「――来!」

ドカァッ!
最後の一人が渾身の掌打によって吹き飛ばされる。
「ふぅ・・・」
そしてようやく。瑞月は軽い溜め息をついて、構えを解いた。
辺りには数人の男たちが倒れている。
その内、数名は呻きを漏らし。数名は意識を彼方へと追いやっていた。
「さて・・・それじゃあ私の質問に――」
瑞月がニヤリと笑みを浮かべた。
「――答えてもらおうか」


                    ◇


何処をどう歩いたのか――。
雨の中をずぶ濡れになりながら辿り着いたのは、神楽の屋敷の前だった。

「あ――れ?」
チャイムを鳴らしてから疑問に思う。
・・・どうしてだろう。
此処には、今まで極力近づくのを避けてきたって云うのに――。
「ハ――。そんな事――」
そんな事、分かりきってるじゃないか。
自分で自分に呆れかえる。
(お前は――)
そう――神楽春留は。
(彼女のヒーローにはなれなかった)
――誰かに慰めてほしかった。

・・・ただそれだけの話だった。

「バカな事してるよな、僕も」
そう自分に苦笑する。
――帰ろう。
家に帰ってもルイさんはいない。
だからこの鬱な感情を紛らわす事は、当分できそうにないけれど。
かといって、ここでこうしてるよりはいいだろう。
インターフォンからは何も応答はなかった。
どうやら屋敷の住人は皆、深い眠りの中らしい。
――それも当然。まだ時刻は朝の4時前なのだ。
こんな時間に、いくらかつて世話になっていた家だからといって、訪ねる方がどうかしている。
そして、屋敷の木戸を後にしようとして。
――インターフォンから声が発せられた。

「ふぁいよぉ・・・。こんな時間に一体何処のどちら様・・・?」
眠そうな男性の声。
――一瞬、このまま帰ってしまおうかという想いが脳裏を掠める。
「・・・・ああん? 誰だ? おぉーい、いないのかー? イタズラかぁ?」
「・・・・・・・・・」
「ちっ、いねーんなら切るぞー?」
律儀にそう言ってから、
「ったく、いたずらとはね・・・」
相手はインタフォンの通話を打ち切ろうとした。
「あ・・・・・・・」
・・・反射的に。
声を出してしまっていた。
「ん・・・・? 何だ、いたのか。 で? こんな時間に何の御用ですか?」

「え・・・っと・・・そ、その・・・僕・・・」
・・・上手く言葉が出てこない。
「ん・・・その声・・・もしかして末っ子か?」
「あ・・・うん。・・・陽之介・・・兄さん?」
インタフォン越しに、相手――陽にぃの息を呑む気配が感じられた。
「ハル坊、お前、こんな時間にどした・・・・・・って外、雨じゃねーかっ・・・おい、すぐ行くからそのまま待ってろよ? オーイ、月ねぇ! 夜子(やこ)ぉー! 起きろ、末っ子が帰ってきた!」
陽にぃの大声が聞こえる。途端に気配が慌ただしくなった。
ドタドタと足音がして、通話が打ち切られる。
此処に来た事を、少しだけ。やはり後悔した。
「ハル!」
屋敷の方からガラガラと玄関の引き戸を開ける音がして、傘を差した二十歳くらいの和装の男性――おそらく陽にぃ、神楽陽之介(かぐらようのすけ)だろう――と、もう一人、背が高くスラリとした女性が走ってきた。
こちらは傘も差さず、Tシャツにキュロットというラフな恰好である。
「あ・・・ひ、久しぶりです」
木戸を開けてくれた陽にぃに頭を下げる。
「話はいいからよ、中入れ、な」
「はい・・・あ・・」
陽にぃの後ろ、強張った表情で僕を見つめる女性と目が合った。
「あ・・・月・・・子姉さんも、その・・・久しぶり・・・です」
月ねぇ――神楽月子(かぐらつきこ)は相変わらず綺麗な人だった。
昔の書生のような見た目の陽にぃに比べ、月ねぇはとても華やかで。
年は確か今年で24だったように思う。
ボリュームのある長い黒髪、ルイさんにもひけをとらないであろう素晴らしい体。
シャープで凛としたルイさんに比べ、柔らかさと母性を感じさせる――それでいて強さを内包した不思議なイメージ。
僕の初恋の相手は――数年経っても、やはり美しかった。

そうして、しばし、ボーッと見惚れていると。
月ねぇが前に出て、無言で僕の腕をぐぃ、と引っ張った。
「!・・・ちょ、ちょっと・・・月子姉さん?」
「いいから・・・ほら、来なさい。貴方、びしょ濡れじゃないの」
「あ・・・」
自分で自分の姿を見直す。
着ていた雨合羽のフードはいつのまにか外れ、襟元から決して少なくない量の水が流れこんできている。
頭もずぶ濡れで、もう既に体中が冷え切っていた。
ぐいぐいと庭の中を引っ張っていかれる。
陽にぃは雨がそれ以上かからないように、さりげなく傘をさしかけて、後について来てくれていた。

「夜子、もう起きてる!?」
玄関に入ると、月ねぇがそう怒鳴った。
廊下の奥から、パジャマ姿で眼鏡を掛けたショートカットの女の子が出てくる。
「ふぁぁ・・・・何、こんな時間に・・・。ボク、まだ眠い・・・」
眼を眠そうに擦りながら言う。
「五月蝿い。ハルが帰ってきたの。黙ってタオル持ってきて」
「ん・・・? ハル? ・・・・・・おーーー、ホントにハルだー、どうしたの! スゴい久しぶりじゃないか」
「あ、夜子ねぇ・・・ひ、ひさしぶり」
僕のその言葉に、何故か――ぴくり、と月ねぇが反応した。・・・ように見えた。
「夜子・・・。 ・・・・いいから、さっさと言われた通りになさい」
じろり、という表現がぴったりの鋭い目つきで睨むと、月ねぇはそう言った。

「ちぇ・・・なんだよー、怖い顔しちゃってさー。月ねぇのブラコンー」
「ふふふ、夜子ぉ・・・貴方、面白い事ゆうのねぇ」
月ねぇがほほほ、と笑う。
しかしながら、その眼は全く笑っていなかった。
「うお。そ、その眼マジ怖ぇ・・・。わ、わかったよー、持ってくればいいんだろー持ってくればー」
そう言って、夜子ねぇは奥の洗面所に消えていった。

「んじゃ、オレは風呂入れてくるわ」
陽にぃが傘をしまうと、中に上がった。
「ん、お願い。・・・ほら、ハル。貴方も上がりなさい?」
「あ、別にお風呂まで沸かさなくても・・・。体、拭くものだけ貸して貰えれば・・・」
「何言ってるの。そんなびしょ濡れで。体温めないと風邪ひくわ」
「で、でも・・・」
「ま、いーから遠慮すんな。自分ちなんだからよ。・・・大体、なんだその敬語は。昔よりひどくなりやがって。・・・もっとくつろげくつろげ」
笑って陽にぃは離れに近い風呂場に向かった。
「あ・・・」
「・・・本当にね。ほら上がりなさい。・・・身体を拭いてあげるわ」
月ねぇに手をひかれ、居間に行く。
パチ、と月ねぇが居間の明かりをつける。
屋敷の中は。
――五年前と何も変わっていないように思えた。
「さ、服脱いで」
「え? ちょ・・・」
月ねぇが手際よく、僕の着ているものを脱がし始める。
そこに夜子ねぇがバスタオルを持って現れた。
「はいよー、タオル。・・・・おわ、すげぇ」
服を脱がされ、上半身、素っ裸の僕に驚いたのか、夜子ねぇがそんな声を漏らした。
「あ・・・・、や、夜子ねぇ」
「へー・・・・いい体してるじゃないか。・・・ちゃんと鍛えてたみたいだね」
「・・・そうね。バランスよく、鍛えられてる。・・・あの女性(ひと)、ちゃんと先生してくれてたのね」
「あ、いや・・・その」
言いながら、月ねぇは僕の髪や身体についた水を、バスタオルで優しく拭いていく。
「成長を妨げるような、無理な鍛錬も行ってないようね。・・・安心した」
心底、安心したような声で月ねぇがそう言った。
「月子姉さん・・・」
「月ねぇ・・・って呼んでくれないのね」
「え・・・」
「夜子の事は昔みたいに”夜子ねぇ”で、どうして私は”月子姉さん”なのかしら?」
視線を合わさないまま、タオルで僕の身体を拭きながら、少し拗ねた口調で月ねぇが呟く。
「あ、そ・・・れは・・・」
「それは?」
聞き返して僕の眼をじっと見つめてくる。
「あ、いや・・・」

正直なところ、僕と1歳しか年が離れていない夜子ねぇには、昔からムチャクチャされてたせいか。
五年という時間を経ても、余り心理的な距離というものは感じなかった。
けれど年の離れた陽にぃや月ねぇに対しては、どうしても一歩引いてしまう。
・・・それはそうだろう。
昔から、そうだったが今では完全にあっちは”大人”なのだ。
子供の頃の気安さというか――昔はこちらもガキだった分、少しは甘えられたけれど。
今では、こっちも成長した分、それすらできなくなってしまった。
そう。目上の人間に対する”礼儀”というものが身についてしまっている。
しかも五年という時間。
血の繋がった実の兄弟ならいざ知らず。
養子の僕には、到底越えられるものではなかった。
――もっとも。陽にぃに云わせれば、”僕は昔からそうだった”のかも知れなかったが。

困って視線を彷徨わせていると――すぐ横でニヤニヤと笑う夜子ねぇの姿が目に入った。
必死に目で助けを乞う。
しかし、それに対する夜子ねぇの目による返事は、
(自分でどうにかしなよー)
とゆう無情で残酷なものだった。

「あ・・・っと・・・」
「うん?」
動きを止め、じっと僕の答えを待つ月ねぇ。
諦めて。
「その・・・ご、ごめんなさい・・・・月ねぇ」
彼女の求める言葉を紡ぎ出す。
月ねぇは僕の言葉に満足そうに微笑むと、
「うん。しょうがないから、許してあげるわ」
と言った。
「・・・・・・ありがとう、月ねぇ」
「よかったなー、ハル」
夜子ねぇがわしゃわしゃと、僕の頭をかき回した。
「わっ・・・や、夜子ねぇ・・・」
「いひひひー」
楽しげに絡んでくる夜子ねぇ。

「それで・・・一体どうしたの?・・・こんな時間に」
そして。
あくまで優しく。月ねぇは僕が此処に来た理由を尋ねた。
「うん・・・その・・・特に理由はないんだけど・・・ちょっとね」
バスタオルで身体をくるんで、座布団に腰を下ろす。
月ねぇと夜子ねぇもそれぞれ、座布団に座った。
「なんだー? あのチャイナにイジメられでもしたか? 何なら、ボクが仇とってやろーか」
夜子ねぇがそんな物騒な発言をする。
「そうなの? あの人と喧嘩でもした?」
慌てて首を振り、二人の言葉を否定する。
「ルイさんは全然、関係ないよ。・・・今、仕事で出かけてる。・・・ここに来たのはその・・・・・・あー・・・きゅ、急にさみしくなったっていうか」
いい加減な言葉で答えを濁す。
しかし意外にも、二人はそれ以上、追及してこなかった。
「・・・ふーん。そっか・・・じゃあ、2、3日泊まっていったら? ボクが一緒に寝てやるよ」
「へ?」
「そうね、そうしたらいいわ。とりあえず、明日は――というか、もう今日ね。今日は学校休みなさい。明日から週末だし。・・・・寝るのは私の部屋でいいわね?」
「ええ!?」
「あー、ずるいよ、月ねぇ! ボクが先に言ったんじゃないか」
「五月蝿いわね。今、この家の家長は私よ? その私の言う事が聞けないのかしら」
「聞けなーい! ブーブー、横暴だー! 月ねぇのブラコンー、いかず後家ー」 
「ふふふ・・・・夜子? 貴方よほど死にたいらしいわね?」
ふるふると怒りに震えながら笑う月ねぇ。・・・うう、怖い。
「こ、怖ッ!・・・・でもこればっかりは聞けないもんさー。今度、また何時会えるか知れないんだし。ボクだって折角来た弟ともっとハナシしたいじゃないかー」
その迫力に怯(ひる)みながらも、夜子ねぇが抵抗する。
――というか、僕の意思は関係ないのか・・・?
「ちょ、ちょっと待ってよ! そんな、学校休むとか、泊まるだとか勝手に決められても・・・!」
「・・・いいじゃないか。そうしろよ、ハル坊」
抗議しようとしたところで、後ろからそんな声が聞こえた。
「大体、そんな死にそうなツラして、学校もねーだろ。ぶっ倒れんぞ?」
「陽にぃ・・・」
「お・・・。ちゃんと昔の呼び方に戻ってんじゃねーか。はは、さてはそこの真性ブラコンになんか言われたな? よしよし」
笑いながら、風呂の用意ができた事を告げる。
そんな陽にぃに、
「陽之介・・・貴方、今日の朝稽古、基本セット10本追加」
冷たい笑顔で月ねぇが罪状を言い渡した。
「マ、マジかよ・・・」
がっくりと膝をつく陽にぃ。無残。
「大体、何よ、ブラコンって。それじゃ私がまるで陽之介の事まで好きみたいじゃないの」
「・・・月ねぇ、何気にひどい事言ってるって気づいてる?」
夜子ねぇが小声でつっこむ。
「・・・今は月ねぇが、稽古を見てるの?」
ふと気になって、聞いてみる。

「・・・ん? ああ、そうか、ハル坊は知らねぇのか。去年な、親父のヤツ再婚したんだよ。でな、その再婚相手が京都の人で、親父はその人にくっついて京都行っちまった」
と陽にぃが答えた。
「え、ええ!? そ、そんな事、僕、一言も聞いてないよ!?」
「ああ、そりゃそうだろ。だって、教えてねーしなぁ。・・・ま、朱(チュウ)さんなら知ってるのかも知れねーけど。・・・その辺、何か聞いてなかったか?」
「何も・・・。今、初めて聞いた・・・」
驚いた。蒼玄さん結婚したんだ・・・。
「・・・まぁ、オレ達も適当に流してたぐらいだからな。50も過ぎて再婚するなんて言い出した時は、とうとうボケたかと思ったんだが・・・」
「結婚式もしなかったのよ。・・・ある時、ポンと。『己(オレ)は結婚して京都に行く。道場と後の事は月子に任せる』って、それだけ言い残して、出て行っちゃったの」
月ねぇがやれやれ、という様子で肩をすくめた
「・・・そうだったんだ」
まー、あの人、昔から豪気だったしなぁ。
「まぁ、そんな事はいいからお風呂入りましょう? 余りゆっくりしてるとお湯も冷めちゃうし・・・風邪引くわよ?」
そう言って、月ねぇが立ち上がった。
「あ、はい。それじゃあ、ちょっとお風呂借ります」
「そうね、じゃあ行きましょう」
立ち上がると、月ねぇがそんな事を言いながら、僕の手をひいて歩こうとする。
「へ・・・? な、何? 月ねぇ・・・」
「何って・・・お風呂入るんじゃない。背中流して上げるわ」
「は・・・? い、いやいや! もう子供じゃないんだから、流石に自分で洗えるってば」
「いいから・・・ほら、きなさい。・・・私も濡れたから、ついでよ」
手をひかれる。
「――――」
後ろを振り向き、陽にぃと夜子ねぇに無言で助けを求める。
が。
陽にぃ達はフルフルと首を横に振るだけだった。
「・・・・ってちょっと待ってよ! 僕、もう17歳なんですよ!? ・・・ねぇ、首振ってないで、何とか言ってやってよ、陽にぃ! ムリ! こんなのムリ!」
すると陽にぃが立ち上がり、僕に小声で囁いた。
「悪ぃ。・・・ああなった月ねぇは、もう止められねぇ。・・・諦めろ」
「そ、そんな・・・だって僕、もう高校生だよ?・・・・・・そ、その色々なっちゃうんです・・・陽にぃにだってわかるでしょ!?」
こちらも小声で返す。
「いや・・・まぁ、むしろ、そうなっちまっても仕方ねぇかと・・・・オレは思ってるから、な。・・・悪いが月ねぇに付き合ってやってくれ」
「そ、そんな・・・」
二人でボソボソとやりとりをしていると。
「ちょっと。さっきから男同士で何を話しているのよ? ほら、さっさときなさい」
「おわぁ! ちょっと、月ねぇ!」
無理矢、腕を引っ張られて連行される。
「がんばれよー」
陽にぃがそう言って手を振った。

・・・ああ、なんか僕、今日はこんなんばっかだな。

ふと。そんな事を思った。


                          ◇


がらら。
脱衣所の引き戸を開けると、中からわずかの湯気が漏れ出てきた。
「ほら、入って・・・」
月ねぇに手をひかれ、脱衣所に足を踏み入れる。

「う・・・・」
その時、月ねぇの身体が正面から見えた。
それは。さっき、雨にあたったからか、それとも風呂場から漂う湯気のせいか。
あるいはその両方かもしれなかったが。

――月ねぇのTシャツが濡れて、透けていた。
そして・・・ぺったりと肌に張り付いたTシャツの向こうには。
綺麗な薄桃色の乳首と、乳輪。大きな胸の輪郭までもが。

――ハッキリと見えた。

(や、やば・・・ノーブラ――!)
理性をくさびにして、股間の暴走に歯止めをかける。
目をそらし身体を横に向けて、その凶悪な破壊力に耐える。
・・・心臓はバクバクと早鐘を鳴らし始め。
しかし、そんな僕の居心地の悪さなど意に介した様子もなく、月ねぇは僕の前で、服を脱いでいく。
すぐに月ねぇはショーツも脱いで、一糸まとわぬ姿になった。
視線を逸らしてはいても、その素晴らしい裸身――瑞々しい肉体は否応なく視界に入ってくる。
そして僕のペニスはというと・・・あれだけ、ルイさんに吐き出したというのに、月ねぇの裸を見るや否や。すぐにムクムクと大きくなり始めた。
はちきれんばかりに膨張し、ジーンズの中で窮屈そうに暴れる。
・・・・・・我が事ながら、その無節操さに頭が痛くなった。
(これじゃ、脱げやしないよ・・・・・・)
先程、居間で上半身の服は脱いでいるので、後は下だけなのだが――たったそれだけの事がこの上なく難しい状況となっていた。
「どうしたの、ハル。服脱いで。着たままじゃ入れないじゃない」
にこやかに迫る月ねぇ。
僕がそんな葛藤をしている事など、彼女には全く気づいた様子もない。
その巨乳も、引き締まったウエストも、柔らかそうなお尻も。――一切、隠さず露(あら)わにしたまま、僕が裸になるのを待っていた。
「あ・・・あのさ、月ねぇ。恥ずかしいから・・・その・・・向こう、向いててくれない・・・かな」
そうおずおずと提案する。しかし。
「ふふ、変な子ね。恥ずかしがってたら、お風呂入れないじゃない・・・・ほら、さっさと脱いで」
その提案もアッサリと却下された。
(・・・あーもう!)
・・・諦める。
・・・どだい、この人にそんな常識を求める事が間違っていた。

昔を思い出す。
そういえば僕がルイさんに引き取られる以前も、この神楽家では、彼女は僕が風呂へ入ろうとすると、大抵、こうして一緒に入ってきていた。
僕が12で引き取られるまで――つまりは19歳の月ねぇ(もう身体は充分大人だ)が、小学校を卒業しようかという思春期真っ只中の少年と共に風呂に入っていたのである。
幸い、僕はそちら方面ではかなり遅れた――つまりは発育の悪い子供(ガキ)だったので、ドキドキしながら身体を洗ってもらう程度で済んではいたが――今、思うとやはり異常だ。
――尋常ではない過保護っぷりである。
(そうだよな、陽にぃの言うとおり、こうなった月ねぇは止められない・・・)
ハァー・・・と溜め息をついて。
なかばやけっぱちのまま、僕は服を脱ぐ事にした。
少し曇った眼鏡を外す。
ジーンズを脱ぐと、ギンギンに勃起した怒張のせいで、トランクスの前はひと目で分かる程、膨らんでいた。
それどころか、張り詰めたペニスから漏れ出した先走りのおかげで、トランクスの前はすでにグッショリと濡れている。
・・・ルイさん曰く、僕は濡れやすい体質らしい。
確かに、僕は興奮するとすぐにカウパーが溢れ出してくる。
ルイさんはそれを好きだと言ってくれるけれど――。
(流石にこんな状況じゃ喜べないよな)
・・・・自分が情けなくなる。
しかし、ここまできたら、今更、隠してもどうしようもない。
それに月ねぇはさっきから僕をしっかり見ている。――股間の惨状に気づいていないワケもなかった。

・・・覚悟を決めて、トランクスを脱ぐ。
月ねぇの前に、天に向けてそそり立つペニスがさらけ出された。
脱いだ瞬間のわずかな刺激に、ペニスがびくりと震え、その先っぽからトクトクと我慢汁が溢れる。
(う・・・・わ・・・)
自分でも予想以上の量の透明な液体が、つー・・・・と糸を引いて零れた。
ポタポタと垂れ落ちた雫が脱衣場の床を汚してゆく。
「あ・・・う・・・」
最悪だ――。
もう穴があったら入って、そのまま蓋をしめたい気分だった。
上目遣いに月ねぇを見やる。
流石に軽蔑された――そう思った。
けれど――月ねぇは柔らかい表情のまま、
「うん、それじゃお風呂入りましょう」
と言って、僕の手をひいた。
「あ・・・」

がらがら。
と、風呂場の戸を開ける。
瞬間、流れ出した湯気があたりに立ち込めた。
神楽家の風呂は檜(ひのき)で出来ている。
浴槽がかなり大きいので3、4人同時に入っても大丈夫というシロモノだ。
「まずは体を温めましょうか」

月ねぇが浴槽のそばにしゃがみこんで掛け湯をしながら、僕を手招きする。
「ぼ、僕は、いいです。先に体洗いますから・・・月ねぇだけ先に入ってて」
とにかく、このいきり立ったイチモツをなんとかするべく、僕は洗い場に座り込んだ。
何か他の事でもしていれば気も紛れるかもしれない――。
そう考えて、急いでシャワーを浴びて髪を洗う。
そして、シャンプーに手を伸ばしたところで――。
「こーら」
声とともに身体を後ろから羽交い絞めにされた。
「――――」
「なんで私の言う事、聞かないの? ハル」
背中におっぱいがおしつけられる感触。
「ちょ、ちょっと月ねぇ・・・!?」
「さっきから妙によそよそしくして・・・そんなに私と一緒にお風呂に入るの嫌? 昔はよく私と入ってたじゃないの」
「・・・べ、別に、イヤってわけじゃ・・・た、ただ・・・今は子供の頃と違うし・・・その都合が悪い、ってゆうか・・・・・・ちょっと月ねぇ! 少し離れてってば」
「・・・ダメ」
ぎゅ、っと。更に強く抱きしめられる。
おっぱいの感触に、落ち着きを取り戻しかけていたペニスが再び勢いよく屹立してしまう。
「あ・・・まず・・・」
「ん・・・? どうしたの・・・何がマズイの?」
「いや、それはその・・・って、あ・・・!」
ぞくり――と。
股間から快感が走り抜けた。
見ると。
後ろから回された月ねぇの手が。
僕のペニスを優しく包んでいた――。
「マズイってこれの事?」
クス、と月ねぇが笑った。
「ふ・・・あぁ・・・」
さわさわと、月ねぇの手が優しく刺激する。
「だ、ダメだって・・・月ね・・・うあ!」
「ふふ・・・ハルも大きくなったね・・・。私も嬉しいわ・・・よ?」
耳元で囁かれる。
しゅ・・・しゅ・・じゅちゅ・・・。
先端から溢れた先走りを潤滑油として、前後に手を動かす月ねぇ。
その間にも背中には、柔らかな胸がぐにぐにと押し付けられる。

「ちょ・・・だめ・・・」
「ダ・・メ・・・動かない・・・の」
月ねぇを引き離そうと動いた瞬間。
月ねぇの片腕に腕を絡めとられた。
そして簡単に動きを封じられてしまう。
こう見えて、月ねぇは神楽流古武術師範。
・・・その腕前を以ってすれば、僕など片手で捻る事などワケもない。
くに・・・くに・・・。
「んくっ」
「ふふ・・・さっき服を脱ぐの躊躇ってたのも・・・おち○ちんが大きくなってたから?」
「月ねぇ・・・・うあ・・・なんでこんな・・・!」
「なんでって・・・・このままじゃ辛いでしょう? ほら、我慢しないで・・・・・・好きな時に出して」
艶っぽい声が耳元で囁かれる。
その声に僅かな興奮が感じられるのは気のせいか。
しゅ・・・しゅ・・・。
「う・・・・ああ・・・っ・・・つ、月ねぇ!」
「ほらほら・・・・無理しないで。・・・・ぴゅっぴゅーって、出しちゃいなさいな」
「うう・・・ダメ・・・出る・・・ッ」
どびゅっ! どびゅびゅびゅううう!
ペニスの中を。精液が強烈な快感をともなって奔(はし)り抜けた。
「くはぁっ」
びゅく・・・びゅくくく・・・・びゅ・・・!
勢いよく噴き出された白濁が、月ねぇの手と床を白く汚してゆく。
ガクガクと腰が震えた。
そんな僕を月ねぇは体全体を密着させて支える。
「あ・・・う・・・あ・・あああ・・・」
「ふふ・・・いっぱい出たね・・・?」
びゅる・・・・とぴゅ・・・・・。
月ねぇの手が中に残った精液も残らずしごき出す。

射精が終わると、月ねぇはようやく僕を拘束から解放した。
僕はといえば、まだ全身が”抜けて”いた。
力が入らず、月ねぇに身体をもたれさせてしまう。
それでも月ねぇは、そんな僕を何も云わず受け止めてくれていた。
「すごい・・・これがハルの・・・・精液・・・」
月ねぇが手に付着した精液をにちゃにちゃと弄ぶ。
「・・・怒らない・・・の?」
「どうして?」
「だって月ねぇに欲情して、こんな・・・さ」
「バカね。・・・当たり前じゃない。正常な証拠よ。・・・これでハルに何の反応もなかったら、私ショックで寝込んでるわ」
クスクスと笑う月ねぇ。
「え、じゃあ・・・・わかってて裸見せてた・・・の?」
「もちろん。・・・でも安心したわ。ハルが立派な男の子だって分かって」
「ひどいな・・・からかってたの?」
「ふふ・・・別にそんなんじゃないわ」
そう言って、月ねぇはペロリと。
手についた精液を舐め取った。

「あ」
「ん? どうしたの?」
「そんなの・・・・汚いから」
「汚くなんかないわよ。別に鼻水やおしっこじゃないんだから」
いや、そういう問題じゃないと思うんですけど・・・。
「それにね」
月ねぇは後ろから僕の身体をぎゅ、と抱きしめると
「ハルのなら平気よ」
と言った。
「月ねぇ・・・」
「・・・何か・・・嫌な事があったんでしょう?」
「・・・・・・・・・」
「そうじゃなきゃ、五年も連絡なかったのに、いきなり訪ねてくるなんて事ないわよね。ハルの場合」
くすくすと笑う月ねぇ。
そこに至り、僕は月ねぇが何故こんな事をしたのか、少しだけ理解した。
(そうか・・・・そういう事か)
この人は僕を慰めるつもりだったのか。
「ごめん・・・」
「いいのよ、謝らなくったって。・・・理由はどうあれ、こうして帰ってきてくれたんだから。それだけで、私は嬉しいの・・・おかえり、ハル」
「・・・うん、ただいま。月ねぇ」
嬉しそうに月ねぇは頷いた。
「・・・それにしても、びっくりした。寝てたら、いきなり陽之介が大声で”起きろ! 末っ子が帰ってきた”って。・・・一瞬、夢かと思ったわ」
「ははは・・・」
「似たような内容の夢、何度も見てたからね・・・また夢かと思ってたの。・・・外でハルに会うまで」
「月ねぇ・・・」
後ろを振り返る。
月ねぇがまるで慈しむような目で、僕を見ていた。
「ねぇ、ちゃんとご飯とか食べてた?」
「うん」
「あの女性(ひと)家事とかできるの?」
「家事はもっぱら僕の仕事。・・・料理は・・・ルイさんは中華はプロ並なんだけど、本人は和食が好きみたいだから、たいてい僕が作ってる」
「お小遣いとかある?」
「多少なら。それにルイさんから別にアルバイト代もらってるから」
「そう・・・」
「月ねぇこそ、元気にしてた?」
「それは大丈夫よ。夜子も陽之介もね」
「・・・今、道場の経営だけで生活してるの?」
「流石に門弟も今じゃ、少ないからね。・・・・・・私の”祓い”と陽之介の印税が今の主な収入」
「そっか・・・今は月ねぇがやってるんだ」
”祓い”とは神楽の裏の仕事だ。
要するに、ルイさんが今、フリーでやってるような事を、神楽家は代々生業(なりわい)としてきたのである。
そして陽にぃの印税とは、小説によるもの。
陽にぃは新進気鋭の小説家で、なにやら賞を貰った事もあるらしかった。
「それより・・・貴方もやってるの? 危ないことしてるんじゃないでしょうね?」
「僕は・・・ルイさんの手伝い程度だよ。ヤクザの人と揉めたりとか・・・せいぜいそのぐらい」
「そのぐらいって・・・・・・。・・・ねぇ、ハル。貴方、うちに帰ってくる気はない? 神楽流じゃなく、あくまであの人の業(わざ)を継ぎたいってゆうのなら、通いでもいいじゃない。何も内弟子にこだわる必要もないわ」

「・・・・・・・・・」
「どう、そうしない?」
月ねぇが真剣な目で僕を見つめる。
僕は少しだけ考えて、それでもやはり首を振った。
「・・・月ねぇの気持ちは嬉しいんだけど。・・・やっぱり僕はあの人の弟子だから」
「そう・・・」
「ごめん」
「ううん。・・・でも、いつでも帰ってきなさい? ここは貴方の家なんだから」
と言うと、月ねぇは微笑った。
「うん・・・ありがとう、月ねぇ」
「うん・・・・・・それじゃあ、ハルも落ち着いたところで続きといきましょうか」
「うん・・・って、え?・・・続き・・・って?」
「もちろん――」
後ろから、月ねぇの両足がするりと僕の腰に巻きついた。
――そして僕は。

「――これよ♪」

ぐるりと、身体を引き寄せられ、仰向けに横になっていた。
一体どんな技を用いたのか――。
・・・ほんの一瞬で月ねぇは位置を入れ替え、僕の上にまたがる格好となっていた。

「つ、月ねぇ!?」
今日は何度、こうして驚いた事だろうか。
再び、僕は驚愕の声をあげた。
「SEX・・・興味あるでしょう?」
「な・・なな・・・」
あまりにも直截(ちょくさい)な月ねぇの言葉。
いくら、空気の読めない僕でも流石に分かる。つまりこれは――。
「――H・・・しましょう?」
「――――」
その言葉と真下から見上げる、途轍もなく素晴らしい光景に僕のペニスは早くも再充填されつつあった。
ルイさんも凌ぐ大きな胸が、凄まじい迫力で僕の股間を直撃する・・・!
月ねぇが妖艶な笑みを浮かべる。
「ふふ・・・もう元気になってるのね。・・・心配しなくても、大丈夫よ。ハルは初めてだろうから、私がリードしてあげるわ」
「そ、そういう事じゃなくって・・・!」
「何? イヤ?」
「い、イヤというか、何というか・・・・怒られるというか・・・」
「怒る人なんていないわよ・・・・・・いても私がなんとかしてあげる。・・・まぁ、お父さんも陽之介も反対なんてしないとは思うけど。・・・夜子ぐらいよ、きっと」

「いや・・・でも・・・」
「それにね・・・」
「・・・・・・」
「Hするのも鍛錬の内よ」
・・・どこかで聞いたセリフだった。
「その・・・月ねぇは・・・した事あるの?」
「何・・・気になる?」
「・・・うん。・・・まぁ、気にならないといえば嘘・・・かな」
「こーら、デリカシーに欠けるぞ?・・・でも・・・まぁ、いいか。・・・うん。少しだけ・・・ね。寂しいなーって時があったのよ、私にも」
「そう・・・なんだ」
「ハルは初めてよね?・・・やっぱり初めては処女の子としたかった?・・・ごめんね、こんなお姉ちゃんで」
「あ、ううん・・・僕も別に、初めてじゃない・・・から」
「――え?」
「いや・・・だから僕も初めてじゃ・・・ない――って月ねぇ?」
月ねぇの様子がおかしい。
恐る恐る月ねぇの顔を窺う。
見ると。月ねぇが固まっていた。
「月ねぇ・・・?」
「・・・れ・・・」
「??」
「・・・・・・誰・・・・と・・・した・・・の?」
僕を凍てついた笑顔で見つめながら、月ねぇが尋ねてきた。
・・・何だか肩が震えている。
「え・・・あ・・・その・・・ルイさん・・・と」
「――――」
何だか怖くなって、正直に言ってしまった。
「あ・・・の・・・月ねぇ・・・?」
「――あん・・・っの・・・」
「――――」

「くされチャイナぁああーーーー!」

――月ねぇが吼えた。

・・・耳がキーンとした。
「ちょ、ちょっと・・・お、落ち着いてよ、月ねぇ!」
「落ち着け? これが落ち着けですって!? あの女・・・私からハルを奪っただけじゃ飽き足らず、ハルの貞操まで・・・!」
炎を吐き出しかねない勢いで猛る月ねぇ。
・・・ああ・・・助けてよ・・・陽にぃ・・・。

「ハル!・・・・・・もしかして、怒られるって・・・あの女に・・・って事?」
「あ・・・うん・・・まぁ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」
「つ、月ねぇ?」
頭を抱えこんで、声にならない声をあげた後、月ねぇは僕の肩をガシっと掴んで。
「――いい事、ハル。・・・貴方、卒業したら家に帰ってきなさい。これは家長としての命令。分かったわね!?」
「え、ええ!?」
「そして卒業したら、私と籍をいれるの。・・・ああ、心配しないで。戸籍上の問題はクリアしてる筈だから」
「強制!?」
「いや、今すぐの方がいいかしら。・・・そうね、明日、私がついて行ってあげるから、その時ハッキリ言いましょう。内弟子やめますって。ハッキリと!」
「ちょ、ちょっと、ちょっと! 月ねぇ! 少し落ち着いてよ」
体を起こして、月ねぇを諭す。
「なに!」
「いや、なんでそんなに怒ってるのさ!?・・・別に、僕がルイさんに無理矢理されたとか・・・そういう事じゃないんだから」
・・・まぁ、多少は強引だったけれど。
「貴方が大切だからに決まってるじゃない!」
「あー・・・うん。それは凄く嬉しいんだけどさ・・・」
「貴方も! なんでそんな簡単に体を許すの!? いくら師匠と弟子だからってね、そんな肉体関係まで結ぶなんておかしいでしょう」
いや、まぁ。・・・でもそれを云うなら姉弟もマズいよ、月ねぇ・・・。
「・・・えと・・・ルイさんがその・・・”女を知るのも武のうち”みたいな事を・・・」
「そんなの嘘よ!」
・・・オイ。
「じゃあ何? そんなんでヤっちゃったワケ!?」
「・・・ええと・・・一応、愛してるって言ってくれたし・・・・僕もその・・・ルイさんの事、嫌いじゃなかったし」
「・・・・・・・・・」
「それからは師弟でありながら恋人・・・みたいな関係・・・とゆうか」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・あの」
ふー、と呆れたように月ねぇは大きく溜め息をついた。
僕は小さくなって。
「あー、だからその・・・Hはマズいかなー・・・と」
と言った。
「そう。・・・でも、それなら私だって貴方の事を愛しているわ。・・・だから私とHしなさい」
「え・・・いや、でも」
「何よ、ハッキリしないわね。・・・ハルは私の事、嫌いなの?」
「ま、まさか」
「ならOKね。――大丈夫よ、黙ってればバレやしないわ。・・・それに卒業したら貴方は此処に帰って来る事。これは決定事項。いいわね?」
「そんな――」
「い・い・わ・ね!?」
「・・・ハイ」
――逆らえなかった。
「・・・できれば、全ての関係を今すぐ清算しろっていいたいけど。まぁ、それは勘弁してあげるわ。・・・・ハルだって寂しかったんだろうし」
よかった・・・。
ほっと安堵の溜め息をつく。
もし別れろなんて言われたら、マジに逃げるしかなかった。
「でもね、貴方は彼女の弟子の前に、私の弟なんだからね? 愛しいお姉ちゃんに捧げる童貞ぐらいキチンと守っときなさい」
「あ、あのね・・・・月ねぇ、ムチャクチャ言ってるから」
「何が、ムチャよ!・・・・この五年、私がどんな想いでいたか・・・!」
どん、と。
起こしていた体を、再び押し倒された。

「つッ!」
「・・・お仕置き。・・・そのままじっとしてなさい」
言って月ねぇは腰を浮かした。
そして、用便する時のように、しゃがんだ状態で股間を広げて見せると――。

ぱっくりと、月ねぇは2本の指で己が性器を割り開いた――。

「見て、ハル・・・。これが・・・お姉ちゃんのおま○こよ・・・」
くぱぁ・・・。
その淫靡な景色に。思わずごくりと、唾を飲込む。
トロリと。
月ねぇの秘所から、ひとすじの雫が太ももを伝った。
「わかる?・・・もう濡れてるの。・・・ハルの感じてるところを見て、ハルのおち○ちんが欲しいって・・・泣いてる」
「月ねぇの・・・おま○こ・・・」
「入れる・・・ね」
「あ・・・」
刺激的な光景の前に、僕のペニスは既に臨戦状態だ。
そこに少しずつ、月ねぇが腰を下ろしてゆく。
ぬ・・・ぬる・・。
「ふ・・・あ・・・ああ・・・入ってくる・・・入って・・・」
月ねぇがうっとりとした表情で呟く。
「ハルのおち○ちん――ハルのち○ぽが・・・私のおま○こに・・・ああ・・・いい・・・!・・・凄く気持ちいい・・・・ああ・・・最高の気持ち・・・」
「う・・・月ねぇ」
――にゅるん。
根元まで。月ねぇの肉壷におさまった。
「くぅあン!」
月ねぇが啼いた。
「く・・・月ねぇの中・・・凄い・・・」
ぐちょぐちょに濡れた月ねぇのオマ○コが、僕のペニスを食い千切らんばかりに締め付ける・・・!
「ご・・・五年間・・・」
「くっ!・・・・・・な、何?」
「五年間ずっと・・・ううん・・・その前からずっと・・・私はハルとこうしたかったの」
「月ねぇ・・・?」
月ねぇの目が――涙ぐんでいた。
「え・・・月ねぇ」
「好き・・・貴方が好きなの。・・・他の誰よりも――貴方が好き。貴方が私の弟になった時から・・・ずっと――!」
月ねぇが腰を上下にグラインドさせる。

体重は僕にかかってはいない。
――あくまで、”しゃがんで腰を浮かせた”状態でセックスをしていた。
ずちゅっ! ぐちゅっ! じゅぼっ!
「ハル・・・・愛してる・・・ハル・・・愛してる・・・!」
股を広げ、自分の膝に手をついて踏ん張り、懸命に腰を上げ下げする月ねぇ。
僕に気を使っているのが、痛いほど伝わってきた。
「うああ・・・月ねぇ・・・!」
じゅぼっ・・・ずぽっ・・・ぐちゅっ・・・!
「はっ・・・んっ・・・んく・・・くああん」
月ねぇが淫らに腰を振るたびに、股間からイヤらしい音が響いてくる。
結合部は、月ねぇの本気汁と僕の先走りで、早くも泡立ち、濁り始めていた。
凄まじい快感の津波が、僕を責め苛む。
「くあんっ・・・あん・・・おま○こ・・・気持ちいいっっ・・・ひ、ひあ・・・」
どんどんと快感を高めていく月ねぇ。
「ダメ・・・! イク・・・! ああ、まだ・・・まだ繋がってたいのに・・・イっちゃう・・・おま○こイっちゃう・・・!」
「う・・・、月ねぇ・・・」
「イっくぅ・・・・・ぅぅん!」
大きな声を上げ、絶頂の快感を貪る月ねぇ。
瞬間、僕も限界を迎えた。
「ぼ・・・くもっ!・・・出る・・・!・・・抜いてっ・・・月ねぇ!」
「ああん、ダメェ! いいから・・・いいから、このまま出して! 中に・・・出しなさいッ」
「そん・・・な・・・駄目だ、出るッッ」
じゅば!!
月ねぇの中に深く差し入れたまま、果ててしまう。
どびゅぅうう! どびゅ! どぴゅうううーーーーー!
二回目の射精は、一回目より遥かに凄まじい量だった。
「はああぁぁあん!・・・・な、中に入って・・・・お、おおお・・・・イイ・・・これ・・・す、すご」
びゅぶ! びゅぶば! ぶぶぱ!
肉棒が痙攣しながら、白濁を月ねぇの中に放ってゆく。
意識が飛びそうになるのを必死に堪えた。

その時。

ポツリと。

――僕の頬に熱い何かが落ちた。



(え――?)
頬を拭うと。指が何かで濡れていた。
・・・月ねぇを見上げる。
月ねぇは泣いていた。
僕に貫かれ、膣内射精(なかだし)されて、快感に体を震わせながら。
その目からはとめどなく、涙が。

――”ごめんね、ハル”
そう――何故か僕にはまるで謝っているように見えた。
それが何に対してなのかはわからない。
けれど。
それは僕の理性を決壊させるには充分だった――。

がばりと。
体を入れ替え、月ねぇを仰向けにする。
「やぁん!・・・な、なに!? ハル?」
「なんで泣いてるのさ・・・」
「え? 私、泣いてなんかないわよ?・・・ってアレ?」
自分の頬を拭って驚く月ねぇ。
「あ、アレ? おかしいわね。 別に痛くとも何ともなかったんだけど・・・。き、気持ち良すぎて緩くなっちゃたのかしら・・・って、ハルどうしたの? きゃあ!?」
月ねぇのおっぱいにむしゃぶりつく。
「あ、ど・・・どうしたの? 急にやる気になって・・・んっ」
月ねぇが新たな快感に、眉間にしわをよせる。
んちゅ・・・むちゅ・・・ちゅう・・・ちゅう・・・。
片方のおっぱいを吸い、片方はこねまわした。
「月ねぇがあんまり可愛いからさ・・・・・・。もう知らないからね? 後でHしなきゃ良かったなんて・・・言わないでよ?」
「そ、そんな・・・ん。・・・そんな事ゆうわけないでしょう・・・んくっ」
頤(おとがい)をそらし、月ねぇが喘ぐ。
僕のペニスは月ねぇの中で、再び硬さを取り戻し始めていた。
そのまま、月ねぇのオマ○コにチ○ポを突き刺したまま、腰を突き上げる。
「んくぅ・・・くあっ・・・ん・・・ああんっ・・・ぬ、抜かずのニ連戦・・・!?」
「・・・い、いいでしょ? こっちはもう・・・ん・・・スイッチ入っちゃったんだから」
ぶちゅ! ぐちゅ・・・・じゅぼ・・・ぐちゅ・・・ぐちゅん・・・・。
「い、いいけど・・・あんっ・・・で、でも、ちゃんと中で出しなさいね・・・? 抜いちゃダメよ?」
「・・・・さ、さっきも抜かなかったけど・・・どうしてこだわるのさ?」
不思議に思い、そう尋ねる。
「あのね、女の子は中に直接、射精(だ)してもらうと、すっごく気持ちいいの・・・それに・・・」
「うん・・・」

「今日は受精したい気分なの」
・・・にっこりと笑う。
「・・・・ええ!?」
「妊娠・・・・したいの。・・・・だから、ね? い〜〜〜・・・・っぱい出していいのよ?」
「で、でも・・・」
「いーの! ハルは何も心配しなくても。・・・・私が勝手に欲しいと思ってるんだから」
そう言って微笑む。
「気にしなくていいわ・・・だから。おま○こ突きまくって膣内(なか)に出して」
一瞬だけ。ほんの一瞬だけ、ルイさんの顔が脳裏をよぎった。
(ごめん、ルイさん・・・・でも)

(――でも、僕はやっぱり、この人を愛してる)

昔から憧れていた二人の姉。
だからこそ、神楽の家を離れた時。
――僕は、二度とここには帰ってこないと決めたのだ。

僕は彼女たちを捨てた。
重たすぎる彼女たちの愛から逃げて――自分の願いをとった。
それでも――。

(――好きだって思い出して・・・愛してるって言われて・・・また逃げ出すなんて出来ないよな)

――決意して腰をぶつけた。
「ああんっ!」
「いいよ・・・じゃあ、出してあげる。僕も月ねぇが好きだから・・・月ねぇを愛してるから」
「ふ・・ふふ・・・・や、やっと・・・言ったな?・・・あん!・・・んんん〜〜〜〜ッ」
じゅぼ・・・じゅぼ・・・ぐちゅ・・・じゅぽ・・・・。
卑猥な音が風呂場の中で反響する――。
「月ねぇを孕ませるよ? いいね?」
コクコクと、月ねぇは夢中で頷いた。
「じゃあ・・・そろそろ・・・二発・・・目ッ」
ぶばっ。
「はあぁ・・・・ああん・・・・出てる・・・・いっぱい・・・おま○この中で精液とろけてる・・・!」
「まだまだ・・・こんなもんじゃ・・・」
ぐいっ。
月ねぇの上体を抱え起し、対面座位の形にする。
そして肉棒が萎える前に、月ねぇの蜜壷を突き上げた・・・!
「ひあああ・・・・・・ッッ」
月ねぇの体がぶるりと、大きく震えた。
「ちょ・・・ちょっと待って・・・ハル・・・? ま・・・まさか!? ぬ、抜かずの3連射・・・!?」
「・・・・さぁね・・・・。どこまでいけるか分かんないけど・・・とりあえず・・・まだ!」
ガツン!
思い切り突き上げてやる。
「ひく・・・・くは・・・・ああ・・・・あああああああん!!」
絶叫する。
じゅぶ・・・じゅぶ・・・じゅぷ・・・。
「あ・・・・イク・・・イク・・・・・・これじゃ・・・・イキっぱなしに・・・」

「いいよ。イって。・・・・好きなだけ。・・・・・僕も月ねぇに出すよ」
「あ・・・ああ・・・ハ、ハル・・・・う、嬉しい・・・よ?」
「うん」
ズポズポとオマ○コをピストンしながら、目の前の乳首をもう一度吸った。
(え・・・・?)
口の中に甘味が広がる。
慌てて、見直してみると驚く事に月ねぇの乳首から母乳が噴き出していた。

「――つ、月ねぇ・・・コレって・・・!?」
荒い息遣いながら、月ねぇがにっこりと笑みを浮かべた。
「・・・・く、くひっ・・・・か、感じすぎちゃうとね。ミルクが出ちゃうの。・・・・ん・・・んっ・・・体質みたい・・・・い、嫌だった?」
「ま、まさか・・・! とっても美味しい」
ペニスはオマ○コを貫いたまま。
両手でおっぱいをぎゅ・・・と絞った。
ぴゅ・・・ぴゅ・・・ぴゅ・・・。
白い液体が、弧を描いて零れ落ちる。
「あ、は、やああん! も、もっと・・・お、おっぱい、し、絞って・・・!」
「凄いや・・・本当、月ねぇってエッチなカラダしてる・・・」
「そ、そんな・・・そんな事・・・」
「ううん。・・・・嬉しいんだ。だって、これ僕のモノなんでしょう? オマ○コもおっぱいも・・・このミルクも、さ」
「あ・・・・・・うん、そうよ。これは全部、貴方のもの・・・全て、これからは貴方専用よ」
「うん・・・嬉しいな・・・好きだった・・・本当は僕も、ずっとこうなりたかった・・・月ねぇと」
母乳を飲みながら、激しく腰を動かす。
「ひ・・・おっ・・・うひ・・・・・・え・・・え!?」
悶えながら、びっくりした顔で月ねぇが聞き返してくる。
「だから・・・僕も好きだったの。・・・・でもさ、流石に姉弟でそんな事、言ったら気持ち悪いって・・・・思われると」
「え・・・ええ・・・・そ、それ、本当・・・!?・・・ん・・・ん・・・・んんんんん〜〜〜〜ッ」
ぐちゅ・・・ぐちゅ・・・ぐちゅ・・・。
結合部から溢れ出た、精液と愛液の混じりあった液体が、尻の下まで流れ落ち。
腰を動かすたび、ぬるり、ぬるりと下が滑る。
「・・・い、今じゃ・・・く・・・昔の思い出だけどね・・・。月ねぇがまさか、男として見てくれてたなんて・・・当時はわかんなかった」
「・・・・く・・・あ・・・んっ・・・私だけじゃないわ・・・よ」
「え?」
「夜子もね・・・きっと・・・そう思ってる筈だから・・・・あんっ」
「・・・・・・・そう・・・なのかな?」
「多分・・・ね・・・・あぅ!」
「で、でも・・・今は月ねぇだけだよ。・・・・出すよ? そろそろ」
「う、うん・・・イって・・・いっぱい・・・おま○この中で出して!・・・・私を・・・孕ませてぇッッ」
「月ねぇ!」
咄嗟(とっさ)に月ねぇの腰を掴み、ぐぐっと強引に引き寄せる。
亀頭が更に奥に押し込まれ、子宮口に突き刺さった。
「〜〜〜〜〜〜ッッ!?」
ぐり・・・ぐり・・・・ぐぐぐっ・・・ぐりり・・・。
「か、かはっ・・・・ダダダ、ダメ・・・ダメッ・・・ハ、ハル・・・・そ、そこ・・・し、しきゅぅう・・・・!」
「だからだよ・・・月ねぇを・・・孕ませるんだからさ」
「ダ、メ・・・漏れるッ・・・漏れちゃう・・・・!!」

・・ぐ・・ぱぁ。
――亀頭が完全に子宮口をこじ開けた。
「ひ・・・ぎぃ・・・・」
「いく・・・よ・・・」
同時に。僕は無理矢理押さえつけていた射精への欲求を解き放った。
びゅぶばっ!
間欠泉のように噴き上げ、弾けた精液が、月ねぇの子宮の奥を叩く。
「く!」
どびゅーーーーどびゅぶぶぶぶっぶう・・・・・・びゅく・・・ぶくぶく。
子宮の中を、僕の精液が染め上げてゆく。

瞬間。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」
絶叫を上げ、月ねぇが体を強張らせた。
それでも両足は僕の胴を挟み込んで、貪欲に月ねぇの子宮は精液を飲み込んでゆく。
「あ・・・はぁ・・・・あは・・・ひ・・・アハ・・・さ、三発・・・目ぇ・・・・し、しあわせぇ・・・・」
びゅくく・・・びゅくくく・・・・びゅぷっ・・・どぴゅるる・・・。
まだ、射精は終わりを見せない。
「ん・・・くぅ」
絶頂にがくがくと腰がひくついた。
4回目の射精なのにも関わらず、凄まじい快感と射精量だった。
ぶくぶくと入りきらなかった精液が、泡立ち結合部から逆流し漏れ出す。
「あ・・・濃い・・・・こんなの・・・孕む・・・・子宮に直接・・・こんなに濃いの出され・・・たら・・・・絶対に妊娠しちゃう・・・・・・」
ぷっしゃああああ・・・・。
股間から暖かい液体が流れ出してきた。
「月ねぇ・・・」
「お・・・おああ・・・・お・・う・・・く・・・くひっ・・・」
ぴくぴくと痙攣しながら、まだ、僕をぎゅうっと抱きしめてくる
ぴゅ・・・ぴゅっ・・・ぴゅっ・・・ぷしゃ・・・。
全力で抱きついている、月ねぇのおっぱいからは。

――母乳がかなりの量溢れ、僕の体を濡らしていた。




絶頂の快楽から幾分落ち着きを取り戻すと。
「あ・・・ハ、ハル・・・ごめ・・・ごめん・・・こんなお漏らしなんかするつもりじゃ・・・」
月ねぇが慌てて、謝ってきた。
・・・・とても、あの普段は気丈な月ねぇとは思えない。

「ご、ごめんね。謝るから・・・お姉ちゃんを嫌いにならないで・・・お願い」
「月ねぇ・・・」
「ハルの言う事、何だって聞くから・・・だから・・・」
「・・・・・・・・・」
「せっかくハルが好きだって・・・言ってくれたのに・・・こんな事で、私、またハルを失いたくない・・・!」
そう――月ねぇが抱きついてくる。
その頭を優しく撫でた。
「大丈夫・・・いいよ・・・。お風呂場だしさ。構わないよ、おしっこぐらい」
「ハ・・・・ハル・・・」
「好きだよ。愛してる、月ねぇ・・・」
「ハル・・・ほんと?」
「うん。だから、また次もHしてくれる?」
「え・・・ええ、もちろん! ハルが望むなら・・・何時だってしてあげる」
そう言って、ようやく落ち着いたのか、月ねぇは笑った。
「はは・・・やっぱり月ねぇはそうでなくっちゃ。僕のお姉ちゃんなんだからさ」
「あ・・・ふふ。・・・そうね。お姉ちゃんなんだものね。・・・ちょ、ちょっと今のは焦っただけよ!・・・わ、忘れなさい」
拗ねた表情で笑う。
「うん・・・・あ・・・あとさ、僕は凄く気持ちよかったんだけど・・・月ねぇは・・・どうだった?」
「あ・・・う・・・それは・・・その」
「それは・・・?」
「あ、あのねぇ・・・キミちょっとデリカシーに欠けるぞ?」
「聞いてみたいんだもん。月ねぇの口から直接」
「う・・・そ、そりゃあ・・・き、気持ち良かったわよ・・・そんなのアレだけバカになってたら聞かなくても判るでしょう」
「そうだねぇ・・・普通”おま○こ、いいのぉー”とか中々言えないよね」
「な・・・は、ハル〜〜〜!? あ、貴方ねぇ! 調子に乗るんじゃないの!」
腕をとられ、関節技を極められ。
「痛いっ! ごめ、ごめんって! 謝るから!!」
ぎゃあああああ・・・・!

――僕は絶叫した。


                           ◇


「いいのか? 月ねぇに取られちまっても」
少し肌寒い縁側に腰掛け。そう、陽之介はぽつりと問うた。


雨音は既になく。雨によって浄化された空気はとても澄んでいた。
・・・もうすぐ日が昇る。

「べっつにー。あのブラコンがハルに風呂場でどんなえっちぃ事してようが、ボクには関係ないもーん」
陽之介の隣に同じように座っていた夜子が少しだけ面白くなさそうに返答する。
二人の視線は、ともに白み始めた空に向けられていた。
「ふ・・・そうか」
「・・・・嘘。・・・ホントはすっげー気になってる。・・・気になってるけどさ・・・・ハルがいなくなった時の月ねぇも見てきて知ってるし。・・・まぁ、少しは我慢してやろうかな、って」
「ふん・・・お前だって、あの頃は見れたもんじゃなかったけどな」
「・・・・それでもさ。・・・・ボクは月ねぇほど荒れてなかったでしょ? 月ねぇ、ああ見えて結構弱いとこあるからさー。・・・心配してたんだよね」
「最近は落ち着いてたみたいだったけどな。ようやく吹っ切れたかと思ってたんだが」
「あの様子じゃ、たんに忘れようとしてただけっぽいね」
「それはお前もだろ?」
く、と笑う陽之介。
夜子は口を尖らせると、
「どうしてそうゆうことゆうかなぁ。・・・ボクはいくら寂しいからって、年下の道場生に手を出したりしないもんね」
と言った。
「許してやれよ。一時の気の迷いだろ。・・・藤田が女に振られたとかで寂しそうにしてたから、慰めてあげたくなっただけだ、って本人も言ってたしな。・・・藤田の雰囲気が一見ハルに似てたから・・・てのもあったんだろうが」
「冗談! あんなヤツ、ハルとは似ても似つかないよ。ハルはあんなに性格悪くない」
「それについては概(おおむ)ね同意するけどな。・・・見た目は結構・・・」
「似てないよ。・・・・月ねぇ達は絶対、目が悪いよね。・・・どこをどうしたら、あんなプライドと傲慢の塊みたいなヤツ・・・」
「夜子はオレ達とは違うものが見えてるんだな」
「そうゆうんじゃないよ・・・でも月ねぇがハルの代わりに藤田(アイツ)を選んだんだったら、ボクは納得しない」
「ふ・・・そうか」
「うん・・・・」
そうして。二人は少しだけ沈黙した。


しばらくして。
「・・・アイツ、何があったんだろうな」
陽之介が口を開いた。
「・・・・・・・・・」
「昔から独りで抱え込むヤツだったけど。ますます酷くなってるみたいだしよ」
「ハルは・・・」
「ん?」
「ハルは自分が優れているなんて、絶対に思わないんだよね」
「夜子・・・・・・?」
「完全な無能にして凡才。最初からの・・・生粋な。まるで鎖で地面に繋がれてるみたいに羽ばたけない鳥。――それが周囲の天才を狂わせる」
――夜子は思う。
それが春留の才能。
それこそが――春留の最も根源的な個性なのではないか、と。

「・・・夜明けだ」
陽之介がそう呟いた。