「ふぅ、きょうもつかれたな…」
と、自分の家(と言ってもマンションの一室だが)の前で、独り言を呟く男。
俺こと霧山 剣(きりやま けん)はとある企業に勤める24歳だ。
…あれ?何俺自己紹介してんの?やっぱ飲み過ぎた?
とか考えながら家へと入る。
「ただいま」
家には誰も居ないのに、とか思いつつ言ってしまう。
この家は一人で住むには若干広すぎる。
だけど、爺さんのお陰で、タダで住めるんだから文句は言わないでおこう。
爺さんはうちの会社の会長だ、だが、仕事が仕事だけに、あんまり偉いとは感じない。
なんせ、いわゆる国家機密の裏稼業というやつで…
おっと、この話はまた今度。
「はぁぁ〜」
と、今日一日の疲れの篭もった息を吐く。
時計を見ると九時半、まぁまぁ早いほうだ。

『プルルル…』
…電話だ、仕事か?
「もしもし、」
『おう、剣か?最近お前特級のライセンス取ったよな?』
「爺さんか、まぁ、一応」
『それで、夏姫の教育係りやって欲しいんだわ。』
「夏姫って、炎山 夏姫(ほむらやまなつき)か?」
『ああ、それから、今日からお前ん家に住むから。』
「だれが?」
分かりきったことを、話の突飛さに聞いてしまう。
『夏姫が』
「はぁ?マジで言ってんのか?爺さん」
『本当だ、まぁ詳しい話は夏姫から聞け』
と言い捨て、電話を切られた
「ちょっ!まてジジイ!……ふぅ、夏姫かぁ…」
夏姫━━━━━
小、中、高校と一緒だった夏姫
夏姫は2つ下の可愛い妹みたいな存在で、
いつも俺の後ろを「ケンにぃ!」とか言いながら付いてきていた女の子━━━━━
だったはずだが、なんで今更夏姫が?夏姫に《適性》が無くて、
高校卒業以来、すぐに修行へと入った俺とは疎遠になってしまって居たが、まさか、こんな形で再会するとは━━━━━

「やばっ!掃除しなきゃ」
なにせ男の一人暮らし、女性に見られてはイケないものが多数在るわけで、それを何とかしなくては、
「ふぅ…これでよし!」
と、とりあえず最重要機密のブツは隠した。
『ピンポーン』
おっ!ナイスタイミング!
と、丁度いいタイミングで来た夏姫を迎えに行く…
て言うか、夏姫をなんて時間に寄越すんだ!あぶねーじゃねーか!ジジイ!と心の中で文句を言う
「ハーイ!」
と、元気よく戸を開けた所でいきなり抱きついてきた人物は━━━━━
頭頂部の左右に猫の耳。
よく正月にみる巫女さんの格好をした。
「ケンにぃ久し振り!会いたかった!」
ネコミミ巫女さんだった━━━━━

「お、おう、てーか、取りあえず離れろ」
「あ、……ゴメンナサイ…」
途端にシュンと、落ち込む夏姫
「い、いや、怒ってねーけども、とりあえずウチ入れ」
「ありがと!ケンにぃ!」
と、フォローを入れた途端に、今度は満面の笑みを浮かべる夏姫
その、相変わらず、感情の起伏が激しい所が、剣を少し安堵させた。


「お茶でも入れるから、適当に座っとけ」
「わかった!」
と元気に返事をして、リビングて座ったのはいいのだが、どこか落ち着かないようで、キョロキョロしていた。
改めて夏姫を見ると、最後にみた五年前の時には、可愛い。だった夏姫が、綺麗。になっていた。
相変わらずの、肩に掛からない程度のショート、
背は少し高くなって、160位だろうか、
胸は貧乳から普通にランクアップしている。
全体的にスレンダーな感じだ。
ひょっとすると、テレビに出てくるんじゃないかと思うくらいの美人だ。
そんな夏姫でも、中身は変わって居なかった。

「━━であの時お前が━━━」
「ケンにぃやめてよぅ!」
と言った具合に昔と同じように接した。
「で、本題に入ろうと思う」
「うん!」
「まず、なんでネコミミ巫女さんなんだ?」
「だって、ケンにぃのじいちゃんが付けてけって言ったから…似合わなかった?」
「いや似合ってたけどよ…」
「えへへ…ボクうれしい!」
と喜ぶ夏姫の可愛いさに、ドキッとしながらも話続ける
「で、夏姫は、退魔師になる修行に俺んとこにきた。と」
そう、俺の勤める爺さんの会社は、日本の裏で、悪霊やら妖怪やらをブッ倒している退魔師と呼ばれちゃったりするものなんだ。
「うん!でも、それだけじゃないよ?」
「?なんだ?」
「その………」
「なんだ?はやく言えよ?」
「そのっ!ケンにぃのお嫁さんになりにきたんだ!」
「えぇぇ〜?マジで?」
驚きを隠せない俺
「うん…」
顔を赤らめて俯く夏姫
あのジジイ…こんなこと…うれしーじゃねーか!
俺がずっと夏姫を好きなの知ってたのかな…
でも…

「で、お前は納得してるわけ?」
「何に?」
「俺と結婚すること!」
「…?」
「お前は嫌じゃないのか?他に好きな奴でもいるんじゃねーの?」
「そんな……そんなわけないじゃん……ボクはずっとケンにぃしか見てないよ!…ぐすっ…」
泣き出す夏姫
あ、泣かした…ダメだな、俺、昔からいっつも夏姫のこと泣かしてばっかだ
「ゴメン。俺いっつも夏姫のこと泣かしてばっかだな…」
「ううん…ケンにぃはそれよりも〜っとボクのこと笑わせてくれたもん…」
ぐずりながらも、可愛い事を言う夏姫
「じゃ、言わなきゃなんねーな!」
「?」
「…俺は、夏姫のことが、大好きです!……夏姫は?」
「もちろん、大好き!だよ?」
ギュッと夏姫を抱きしめる
幸せってこのことなんだなぁ…


「あ、そういえば」
「なに?夏姫」
「……じいちゃんが早く孫の顔がみたい。だって」
「……ふーん(可愛いだろな…子供)」
「え?なんかいった?ケンにぃ」
「い、いや、なにも、」