大理石が敷かれたフロアに、老若男女がワインを片手に踊ったり喋ったり、
とにかく好き勝手にしていて、パーティは散々な状態だった。フルに近い
オーケストラも、目前で繰り広げられる痴態に目を覆いたくなるのを堪え
ながら、譜面を睨みつけている。

どだいまともな催しではなかった。本日ここで行われているのは、不動産
業を営む市川継雄の呼びかけで、金に明かした物事が大好きという、ろく
でなしばかりが集っているのだ。例えると代議士の某とか、金貸しの誰某、
影で淫売と囁かれる女優など、とにかく癖のある者が多すぎる。

ここでは客の誰もが上下の関係なく、とにかく自由闊達に過ごす事が義務
のようになっていた。外界では貧苦に喘ぐ者も大勢、いるというのに、この
屋敷では豪奢な食事に酒、それに若く美しい女と逞しい青年が、常にあて
がわれていた。いわば娼婦に男娼、日本人は言うに及ばず、人買いが連
れてきた外国人もいて、それぞれが性癖に応じた色事に長けているという
寸法だった。

阿川知香はそんな人買いに連れられて、ここへ来た一人だった。まだ十五
になったばかりで、二つ下の弟の啓太と一緒に親に売られてしまったので
ある。姉弟ともに美形で、それゆえここでは畜生のごとき扱いを受けていた。
知香は主に娼婦で、啓太は受身の男娼を務める事が多かった。ここへ集ま
る狂人どもの中には、野郎陰間を好む者も多くいて、啓太はいつも人気を
博していた。

オーケストラの手前、少し段差になった所で姉弟は交わっていた。いや、市川の
命令で交わりを強制されていた。人買いから売り渡された二人は性奴でしかなく、
飼主である市川の言う事は絶対だった。市川は催しのある時、決まって姉弟を交
わらせるのである。

妊娠を恐れてご容赦をと懇願しても、聞かなかった。むしろ、そこを面白がって、
交わらせるのである。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん!」
「ああ、啓太ぁ・・・」
姉が大股を開き、弟を受け入れながら、弟は陰間を黒人にやられていた。近頃の
啓太はこちらの官能が開花し、喜びを味わえるようになっている。そういう弟を見
ながら、知香は妊娠の恐怖に怯えつつも腰を振る。この狂った様子は集った客人
たちの監視のもと、果てしなく繰り返されるのである。

別室へ行くと、人気女優の河合早季子が磔にされ、鞭打ちを受けていた。別に彼
女は咎人ではない。これも市川の趣味だった。
「いやあーッ、やめてえ!」
ぴしりぴしりと容赦の無い鞭打ちが続く。早季子が所属する芸能事務所は、市川
の援助を受けており、催しがある時は女優の誰かを差し出さねばならなかった。
今回は最近、人気急上昇中の女優である早季子が選ばれたのであった。

「あの子、テレビで見たわね」
「あんなに鞭打たれて、可哀想に。ふふふ」
客たちはこぞって、早季子が鞭打たれる様を見て笑った。いい加減、嬲りぬかれ
た所で、磔台の近くへ裸の黒人ばかりが数人、やってきた。彼らは早季子の前で
男根を硬くし、隆々と奮わせると同時に自慰を始めた。

自慰を終えると、黒人たちは足元に置かれた洗面器に精液を放出した。それを、
鞭打ち係の女が浣腸器で吸い上げ、早季子の前へ差し出すのである。
「な、何をするの・・・」
「こいつをあんたの道具の中へ流し込むのさ」
「い、いやよ!そんな事したら、妊娠しちゃう!」
「そこが面白いんじゃないか。今度、皆さんの前に出る時は、立派なボテ腹さ。
ほら、あいつのように」

鞭打ち係の女は、対面にある壇上を指差した。そこには、昨年くらいに少し名の
売れた、グラビアアイドルの竹下奈美がいた。彼女は裸で、足枷をされて壇上に
放り出されており、そこに男たちが群がっている。奈美を見ると、妊娠五ヶ月目く
らいだろうか、随分とお腹が目立っていた。性奴的には使い古しの部類に入る
彼女も、妊婦という事で異様な人気ぶりだった。特に黒ずんだ乳首から出る母乳
に、男たちは狂喜した。

「ああ、吸わないで!いやあーッ」
入れ替わり立ち代り、男たちが自分に圧し掛かってくるのである。奈美は泣き叫
び、母乳を干されるまで吸われ続けるのだった。最近では芸能活動は諦めさせ
られ、ここで催される狂宴の女優の一人に数えられていた。

「わ、私は・・・あんなの・・・い、いや」
「いやって言っても、どうにもならないんだよ」
あれが、数ヵ月後の自分かと思うと、早季子は身震いが止まらなくなる。しかし、
鞭打ち女は無慈悲にも浣腸器の嘴を、早季子の肉穴へ押し当てた。
「やめて!お願い!」
「ばーか。もう、遅いよ」
鞭打ち女の手が、浣腸器のポンプを押した。すぐにシリンダの目盛りが減り、黒
人どもが自慰によって出した精液が、早季子の胎内へ流し込まれていく。

「あぐーッ!」
早季子は仰け反り、叫んだ。好きでもない、ましてや異人の子種を流し込まれ、
悲しみに浸るという気にもならなかった。ただ、恐ろしげな事実ばかりが身を覆
い、一刻も子種を洗い流したかった。しかし、今の有り様ではそれも出来ず、
ただ打ち震えるばかりである。

「こんだけ入れりゃ、孕むだろうよ」
「いやーッ!」
鞭打ち女は浣腸器に入った精液を全て流し込むと、ぐったりとうなだれた早季
子を見て高笑いをした。実は鞭打ち女もかつては同じ事をされた経験を持つ。
そしていずれ、早季子たちも同じ運命を辿るのである。



階下ではオーケストラが、最後の曲を奏でていた。予定では華やかな協奏曲
だったが、指揮者の機転で葬送曲が奏でられていた。




おしまい