<――――ガガ―>

そこはマンションの一室、しかしそこに広がる光景は平凡なモノとは思えなかった。
玄関、窓など出入り口になりそうな部分は鉄板で塞がれ、
壁は防音の素材で固められたその一室、そのワンルームに置かれた
ベッドに彼女は眠っていた。

「ぅ・・・ぅん・・・ん?・・・・ここは・・

<おはようございます――>
「だ、誰!?」
何処からとなく聞こえる機械混じりの声。
<あなたを敬愛する者――とでもいいましょうか>
「どこなのココ!?」
目覚めた少女は突然の出来事に頭が追い付いていなかった、
当然といえば当然である。
「ねぇ!どこにいるの?誰なの?ココはどこなの!?」
<落ち着き下さい――>
機械混じりの声は無機質で少女を黙らせるには十分な恐怖を与えた。
「ぅ・・・ぁ・・」
<今回お呼びしたのは他でも有りません――敬愛するあなた様とゲームをしようと思いまして>
「ゲー・・ム・・?」
<はい――目の前にあります、テーブルを御覧ください>
言われるままに見た先には四角い物が布を被されて置かれていた。
<御手数ですがその布を御取り下さりますようお願い致します>

バサリ――少女が布を剥ぎ、そして
「ひっ!?・・・こ、これって・・・・」
四角い物の正体は水槽だった、しかし本来の役目は果たしておらず
中には水が一滴もなく、水槽の枠も頑丈に溶接のような工事が施されており
見るからに触らせないような見た目をしていた。
しかし少女が驚いたのはその中身、そこにあるのは男性の性器を模した物。
<――そう、バイブです>
「なんでこんなモノを・・」
<それはこれがゲームに欠かせない物だからですよ――>
「どういう・・・こと?」
<このバイブは少しばかり特殊でして、中に精液が入れられるのですが、
時間を調節して噴出させることができる仕組みなのです、――そろそろでしょうか>
「・・・」
<――3―――2――――1>
「ひぃっ!?」
時間とともにバイブは激しく揺れながら頂点から白濁とした液を噴き出した。
完全に密閉されていたためか、臭いすら漏れていない。
「こ・・これがなんだっていうの・・・・?」
<失礼ですが下腹部に違和感は御座いませんか?>
「えっ?・・・・・あっ!!?ナニコレ!!!」
少女が異変に気付いた時には既に準備は整っていた。
貞操帯、少女に着けられた器具の名前。
<御理解頂けたでしょうか?>

「ま・・・まさか・・」
<御安心下さい、性器は傷付けないよう細心の注意を払いました>
そうじゃない!少女はそう叫びたかったが、身体中から血の気が引き、
呆然としてしまった。
<では――ルールの御説明を致します>
「へぇっ!?」
声は少女のことなど気にする様子もなく話を進める。
<タイムリミットは30分――まぁこの部屋の広さ的に妥当なところでしょう>
「ちょ、ちょっと!」<貞操帯の鍵がこの部屋に隠されています、見つければ成功、
失敗すれば――そうそう、言い忘れておりましたが、
あの液体、精液だけでなく妊娠促進剤が混ざっておりますので>
「・・・へ?」
<確実に妊娠していただけると思います、そう――――私の子供を>
「いや・・・いやっ!なんで!?なんで私なの!?」
<――――ではスタート>
そして地獄のゲームが始まった。

「あああああああっっ!!」
少女は死に物狂いで鍵を探した。
玄関、廊下、トイレ、浴室、洗面所、リビング、キッチン、クローゼット
30分が妥当、そんな訳がない小さな鍵を探すのにワンルームに30分は短すぎる。
「ないないないないない」

<残り10分――>
「いや!待ってま゛っ・・・・・・!!!」
さっきまでの勢いが消えたように少女は震えながら座り込んでしまった。
「なぁ・・に・・・・ぁぁ・・これ・・ぇ・・」
<時間が迫って参りましたので少しばかりペナルティを>
「ペナル・・・・ティ・・・・?」
<大変申し訳有りませんがクリトリスの部分にローターを付けさせてもらいました>
「ふぇ・・・?」
<御安心を、まだ弱ですので>
何が御安心なのだろう、一番敏感な部分を責められ少女は息も絶え絶えだ。
そこへの振動だけでなく膣に入っているバイブにまで響いてしまっているのである。
「いゃぁ・・・・はぁ・・・・ぁ・・・・」
膝を震わせながら少女は立ち上がり捜索を再開する。
少女が来たのは浴室、浴槽を覗くと湯船は真っ黒だった。
怪しい、少女でなくとも思うはずだ。
「し・・四の五の言ってられないわ・・」
少女はそのまま黒い湯船に腕を突っ込むと鍵を探す。
「ない・・・ない・・・・」
そうだ、怪しいのが怪しいではないか、少女は肩を落とす、多分これは
時間稼ぎの罠だったのだと。
<残り5分――>
少女は感じた、振動が強にされたのだと。

「はぁっ!・・ああっ!あっ!んっ!んんっ!・・」
少女は完全に動けなくなってしまった、それでもとゆっくり立ち上がり
丸めた湯船の蓋をゆっくり退かす、その時だ、
カッっという金属が当たる音と共に湯船からお湯が引いていった。
多分引っ掛かって栓を抜いたのだろう。
「・・・・・・え!?」
しかしそんなことは少女にとってどうでもよかった、お湯のない浴槽
その底に字が書かれていたのだ。
『ベッドノウエデネロ』
また時間稼ぎの罠だろうか、しかし今の少女に冷静な判断力は欠けていた。
ゆっくりとベッドまで歩くと体をベッドに投げつける。
「か・・・・ぎ・・・・」
<残り1分―――>
「あ゛・・・・あ゛ぁ゛・・・・」
少女が寝転がった視線の先、天井にあったのは鍵ではなく鏡だった。
自分の呆けた顔を見て少女は意識を取り戻す。――だが
<残り10秒――>
「いやぁ!!」
<――9>
「やだぁ!」
<――8>
「やだやだ!!」
<――7>
「助けて!誰か助けて!!」
<――6>
「やだやだやだ!やだぁ!」
<――5>
「なんで!!?」
<――4>
「なんで私なの!!」
<――3>
「やだよ!!妊娠やだ!!」
<――2>
「妊娠したくないしたくない!!」
<―――――1>



「いやっ・・・・・・・・・・・・・・・・」
少女の中で何かが弾けた。
<残念――ゲームは私の勝ちですね、良い子を孕んでください>
「・・ぁ・・・ひっぐ・・ぅ・・・えぐ・・・・」
少女の目に生気はない、あるのは受け入れ難い現実と下半身の違和感だけ。
「・・・・・鍵・・・ドコ・・・・・」




<――鍵は浴槽の中にある――>


<それでは明日また学校で――さん――ピピッ――ガガッ>




「うふっ・・あはっ・・・あははははは・・・・・・・あはは・・・」

再び少女が目覚めるとそこは自宅の部屋だったそうだ。


end――




<――――ピピ――ガガッ――>
「ぅ・・・・ぅ・・ん・・・・・」
<おはようございます――>