今夜も俺は、ミィシャの身体を使ってオナニーする。独りよがりのそれは、とてもセックスと呼べる様なものじゃない。
 乱暴に乳房を鷲掴みにすると、ミィシャは「くぅ」と苦しげに呻いた。構わず、チョコレート色の乳首を指先で転がし、摘んで、吸い付く。
「あぅ、はぁ……」
 ミィシャは熱い吐息を漏らした。彼女の頭の上についたネコに似た耳がぴくんと動いた。
 ミィシャが身体をくねらすと、窓から入る淡い月明かりが、褐色の肌を照らした。
 胸を弄るのに満足した俺は、彼女の身体から手を離して仰向けに寝転がった。
 ミィシャは心得たもので、言う前に跨ってきた。堅く張り詰めたペニスを、自らの入り口に当てがう。そのまま腰を落とし、根本まで一息に飲み込んだ。
「く、くぅ、う」
 碌に前戯をしなかったせいで痛みがあるのだろう、ミィシャは顔をしかめた。
「動け」
 俺が短く言い放つと、ミィシャは小さく頷いてゆっくり上下に動き始めた。
「もっと激しく」
 ミィシャはまた小さく頷く。そして言われた通り、懸命に腰を振った。
 ようやく十分に濡れてきたか、そのうちジュプジュプと水っぽい音が聞こえてきた。
「はぅぅ、ん……ぁふぅ……」
 ミィシャはミィシャで楽しんでいるらしい。まったく。俺にはこいつを楽しませるつもりなど無いのに。
「次は後ろからだ」
 俺が言うと、ミィシャは名残り惜しそうに俺の上から下りた。ペニスが抜けた時、切なそうな声を漏らしたのを、俺は聞き逃さなかった。
 四んばいになったミィシャの、黒い毛並の良いシッポを掴んで引っ張り上げ、尻を突き上げさせる。
「ひゃんっ!」
 ミィシャが短く悲鳴を上げる。構わずどろどろになった肉穴に、ペニスをねじこむ。
「あアッ!」
 快感を求めて、欲望のままに俺は腰を振る。ミィシャを犯す。
「くぅン、いっ、くふっ……ハァ、あうぅ」
 苦痛と快感が混ざり合ったあえぎ声。それがますます俺を刺激した。
 パン、バン、パン、パン、パンパンパンパン……
 どんどん腰の動きが速くなっていく。もう止められない。
「出すぞ、ミィシャ」
 言って、小刻みに動いてスパートをかける。
「あアッ、あぁう……うあっ、あっ、あっ、ア、ア、ア、あくううぅウウッ!」
 ドクン、どくっ、びゅぴゅ、ぴゅっ。
 俺はミィシャの胎内に、欲望の丈を思い切りぶちまけた。
 ミィシャの膣はきゅうきゅうとペニスを締め上げ、最後の一滴まで絞り取ろうとしてくる。
「ふう……」
 満足した俺が寝転がると、ミィシャは震える足で立ち上がり、ベッド脇のテーブルに置いてあったクスリを飲んだ。
 その後、俺の横に寄り添う様にベッドに入ってきた。俺はほんのり汗ばんだ身体を抱き締めて、目を閉じた。ショートの黒髪から漂う香りを意識しながら眠った。

 ミィシャは、一年程前に俺ことカイルが買った奴隷だ。
 錬金術の研究をしている俺は家事の担い手が欲しくて、安上がりで済む被差別種族の獣人を買ったのだ。それが女だったのは、もちろんそういう目的のためだった。
 大陸北部では獣人の扱いもずいぶん改善されたらしいが、この南部では今だに獣人は家畜同然だった。
 人語が理解できて、夜の相手もできる家畜――それが獣人だ。
 肉奴隷にするのは自由だが、獣人との間に子供を作るのは御法度。万一孕ませた場合、堕胎が義務づけられている。ミィシャが避妊薬を飲んでいるのはそのためだ。
 妊娠にさえ気を付けていれば、獣人は最高のオモチャだ。
 ちょっと高級なディナー並の値段で買えるし、少々過激に遊んで壊してしまっても、さほど問題にはならない。
 まったくもって最高だ。……ヘドが出る。

 朝。俺を起こすのは、躊躇いがちに揺すってくる細腕だ。
 目を開けると、間近にミィシャの琥珀の瞳があった。
「朝か……」
 上体を起こして、アクビをひとつ。
「もう飯はできてるのか?」
「アー」
 ミィシャは妙な声を出して頷いた。獣人は発声器官の構造が人間と異なるため、人語を話すことはできない。
 まあ、一年も一緒に居れば言葉なんて無くても言いたいことは大抵わかるが。
 朝食はトマトをふんだんに使ったスープだった。味付けは俺の好みの通り。ミィシャは俺の好みを正確に把握している。料理でもそれ以外でも。
 ミィシャは、明らかに俺のより量が少ないスープに手を着けず、俺が食べ終えるのを待っている。世間一般では、獣人奴隷が人間と一緒に食事をするなど有り得ないらしい。ましてや人間様の腹が膨れる前に獣人が満腹になるなど、もっての他だとか。俺はそんなつまらんことは気にしないと言うのに、ミィシャは断固として一緒に食事を取ろうとしない。
 やれやれだ。
 ミィシャの様子がおかしいのに気付いたのは、昼頃だった。
 足取りがおぼつかないし、顔が赤らんで目も潤んでいる。
 額に触れてみれば、案の定、高熱を出していた。
「今日は料理も掃除もしなくていい。今すぐ眠れ」
「アウ」
 ミィシャは首を横に振った。それだけで少し頭がふらつく様だった。
「莫迦め。お前に寝込まれたりしたら、困るのは俺だぞ。ひどくならないうちに治せ」
 こういうことは、前にもあった。こいつは倒れるまで無理しようとするのだ。倒れるか、気付いた俺が寝かせるか。自分から休もうとは決してしない。
「ウ……」
 ミィシャはまだ何か言いたげだったが、もう一度低い声で「いいから休め」と言うと、不承不承頷いた。
 ミィシャがベッドに入ったのを確認すると、俺は台所に向かった。
 ここに入るのは久しぶりだ。家事は全て、ミィシャに任せ切りだからな。
 少し物色して、リンゴをひとつ見つけた。適当に切り分ける。
 寝室に持って行くと、ミィシャは目を丸くした。
「食え。何か栄養は取らないとな」
 ミィシャは首を横に振る。
「食欲が無いか? それでも、無理して食えよ」
 まだミィシャは首を横に振る。ふと、新鮮な果物など獣人の食べるものじゃない、と昔聞いたのを思い出した。たしか宿無しの獣人が道を歩いていて、桃を食べていた子供が分け与えようとしたのを見た奴が言ったのだったと思う。
 なんとなく、腹が立ってきた。
「いいから食え。無理矢理口に突っ込むぞ」
 ミィシャは切り分けたリンゴを躊躇いがちに手に取り、ゆっくりとかじった。
 一瞬表情がぱっと明るくなって、それから不思議そうな顔になった。
 言葉なんて無くても、言いたいことはわかる。「何故?」と尋ねたいんだろう。
「お前には早く治ってもらわないと俺が困るんだ。それに、同じ家に居る奴に辛そうな顔をされたら気分が悪い。俺の精神衛生のためだ」
 立ち上がり、くるりと踵を返したため、ミィシャがどんな表情をしているかはわからなかった。


 その晩、食事を取るのに外へ出た。久しぶり――前の外食も、ミィシャが体調を崩した時だったか。それ以外は、朝昼晩全てあいつの作った料理だ。「外で食べよう」などと言おうものなら、あいつは夜通し料理の研究をしかねない。
 ――そんな風に気を張りすぎるから体調崩すんだ。バカめ。
 俺の入った食堂は日雇いの労働者やら何やらで賑わっていた。なるべく喧騒を避けてカウンターの隅の席に座った。安いものを適当に注文する。
「お、カイルさんじゃないか」
 急にでかい声で話しかけられる。声の主は隣の席にどかっと腰を下ろしてきた。たしか近所に住んでる中年の男……名前は忘れたが、前に薬を調合してやった気がする。
「どうも」
 仕方なく適当に挨拶する。
 微妙に気まずい。こういうことがあるから、外へ出るのは嫌いだ。普段からもう少し他人に関心を払ってればいいのだろうが、それはそれで難しい。こんなだから、世間からズレて行くのだろう。
「珍しい。こんなところで会うなんて」
「普段は、家で研究ばっかやってるもので……」
 その後も、よく喋る男の話に適当に相槌を打ちながら機械的に食事を口に運んだ。
 男が喋る。相槌を打つ。食事を口へ。男が喋る。相槌を打つ……
 ……さて、口に運ぶものが無くなってしまったわけだが。
「それじゃ、俺はそろそろ」
 強引に切り上げようとするが、
「なんだい連れないな。もう少しいいじゃないか」
 と引き止められる。適当な返事だったが、よく喋る彼にしてみればそのくらいの方がいいのかもしれない。やれやれ。
「はあ……」
「それに、家に帰ったってどうせ一人だろう? たまには話すのもいいんでないか?」
 『家に帰ったって一人』。男は確かにそう言った。男に薬をやった時、彼はウチを訪れている。つまり、ミィシャのことも知っている。それでも言ったのだ。『一人』だと。
「すいません、やっぱり帰ります。少し用があるんで」
「ん、そうか。じゃあな」
「じゃあ」
 そそくさと店を出る。
 ――こういうことがあるから、外へ出るのは嫌いだ。

 家に帰って玄関の戸を開けると、トテトテと足音が近付いて来た。
「寝てろって言ったろ、アホウ。病人に出迎えられても逆に困るんだ」
「ウ……」
 ぶっきらぼうに言った途端、ミィシャは肩を落として回れ右した。しかしその前に深く頭を下げるのは忘れていない。
 溜め息をひとつ。やれやれだ。
 翌朝。
 なんとなく嫌な予感がして、いつもより早く目が覚めた。まだ日も昇り切っていない。台所から物音が聞こえる……嫌な予感は的中しているらしい。台所へ行くと、ミィシャが驚いた顔で俺を向かえた。
 今朝は早いんですね、とでも思っているのだろう。
「何をしてる」
「あぅ……?」
 ミィシャはオドオドと視線をさ迷わせた。こいつは、俺が何に怒ってるかもわかっていないのだ。それが何よりも癇に障る。
「飯なんて何でもいいから寝てろ。一日二日で治り切る様な熱じゃなかったぞ」
「ウー」
 ミィシャはぷるぷると首を振った。ひっぱたいてやろうかとも思ったが、さすがにそれは思い止まった。しかし、ミィシャの無理を黙認することはできない。
 手っ取り早いのは、「命令だ寝てろ」と言うことだ。命令と言われれば逆らうことはできない。だが、それは何かが気に入らない。
「お前は、もう少し自分を大切にしろ」
 代わりに、少し気恥ずかしい台詞が口をついて出た。
「…………?」
 ミィシャは首を傾げる。こんな簡単なこともわからないのか。
「お前は十分やってるから、無理はしなくていいって言ってるんだ。わかったら早くベッドに行って寝てろ今すぐに!」
 無意味に声が大きくなる。ミィシャは飛び上がって寝室へ行った(一礼は忘れない)。
「はあぁ……」
 溜め息が出る。まったく、あいつは……
 むしろ、俺は恨まれたって仕方ないはずなのだ。
 本人の知らないところで勝手に彼女を買い取って、家事の全てを押し付けて夜伽までさせている。噛みつかれたって当然だと思う。
 それなのに、何を勘違いしているのか、あいつはつとめて『良い奴隷』であろうとする。
 いや、もしかしたらそれが普通なのかもしれない。おかしいのは俺の方なのかもしれない。
 またひとつ、溜め息が出た。

 それから数日して、俺が錬金術の研究をしている時に、乱暴に玄関の戸を叩く音がした。ミィシャは買い物に出ているので、俺が出なきゃならない。
 面倒臭いな、と思いながら玄関を開ける。
 そこで俺の目に飛込んで来たのは、腫れ上がったミィシャの顔だった。
「あ……?」
 あまりのことに、言葉も出なかった。ふらふらと倒れ込んでくるミィシャの体を抱き止めて、そこで初めて彼女の後ろに立つ人々に気が付いた。申し訳なさそうな顔の男と、その息子らしい子供。
「えぇーとその……なんて言うか、ウチの倅たちがですね、お宅の獣人奴隷とゴタゴタがありまして……まあ、ご覧の通りなわけです。申し訳ない! ホラ、お前も謝れ」
 男は息子の頭を持って下げさせた。それから、紙幣を二枚渡してきた。
「どうもすいませんでした。どうかこれで新しいのでも買って下さいな」
 俺は押し付けられた紙幣を男の顔に向けて投げ返した。
「要らん。いいから失せろ」
 言って、乱暴に玄関を閉める。何もかもが腹立たしい。
 なるべく揺すらない様に、ミィシャをベッドまで運ぶ。
 彼女の傷、素手で殴られたものじゃない。木の棒か何かでやられたんだろう。
 ミィシャが自分から揉め事を起こすとは思えない。大方あの子供が、ふと見掛けた獣人に絡んで、相手が無抵抗なものでエスカレートしたんだろう。
 幸い骨に異常は無いらしい。とりあえず、痛み止めはある。それで落ち着かせて、それから傷薬を調合しよう。
 水と痛み止めを渡す。ミィシャは、どこかぼんやりとした様子でそれを受け取った。
 それから急ぎで傷薬を作って顔に塗ってやった。すると、腫れ上がった頬を涙が濡らした。
「アウ」
 ミィシャはそのことに自分で驚いた様に、指で涙の筋をなぞった。
 突然の、わけもわからない衝動にかられて、俺はミィシャを抱き締めていた。
「ウ……?」
「そんな、泣く程喜んでるんじゃねえよ、バカ」
 こんな当たり前のことで……
「お前は怒っていいんだよ。あんなクソガキに絡まれたら、殴ったっていいんだ。後で俺が何か言われたって、構いやしないから」
 こんなこと言ったところで、こいつはきっとキョトンとするだけなのだろう。それが何よりも悔しかった。体を離して、向かい合う。
 ミィシャは大きな目で、どこか脅えた様に俺を見ている。
「こき使われて、毎晩の様に犯されて、すぐ捨てられるなんて……お前はそんなことのために居るんじゃないだろう?」
 ミィシャは少し考えて、それでも俺の言葉の意味がわからないらしく、首を傾げた。
「お前だって、好きに笑って泣いて怒っていいんだ」
 ミィシャはやはり首を傾げる。
 そうか。わからないのか……わからないなら、教えてやろう。
 ――どれだけの時間がかかっても……

 山奥の、人なんて滅多に来ない様な、おそろしく辺鄙な場所に家を建てた。静かな場所だ。
 ちなみに引っ越す際、奴隷は解雇した。
 新しい場所で新しい生活。初めての朝。
 ここでも、俺を起こすのは躊躇いがちに揺すってくる細腕だ。
 寝起き一番、出来たての朝食の匂いが鼻孔をくすぐった。
 家事を任せてるのは、相変わらず。情けないことだが。
 しかし全部が同じわけじゃない。朝食はミィシャも一緒だ。オドオドとこちらを窺いながらだが、彼女も同じ時間に同じテーブルで朝食を取っている。
 小さなことだとは思わない。
 掃除は、やはりミィシャ任せだが……俺は薬を調合したり貴金属を精製したりしている。たまに町へ行って、これを売って生活に必要なものを買うのだ。
 ゆっくりと時間が過ぎていく。
 昼も晩もミィシャと一緒に食事を取った。
 そして夜。
 この家に、ベッドはひとつだ。
 俺はとっととベッドに入ったが、ミィシャは棚の辺りでごそごそと何かしている。
「何してる?」
 言ってから、はたと思い当たった。クスリを探しているのか。
 ――もう必要無いというのに。
 身を乗り出して、ミィシャのシッポを引っ張る。
「キャン!」
「いいから来いよ、早く」
 ぐいぐいと引っ張って、ベッドの中に引き込んだ。隣に寝かせる。
「前の話の続きなんだがな」
「ウ?」
「普通に笑って泣いてうんぬんの話……普通の、誰かと結婚したりなんなりの生活、そういうのってどうだ? 少しは憧れたりしてたか?」
 ミィシャは少しの間考えて、おずおずと頷いた。
「へえ、やっぱりそうか」
 呟いて、唇を重ねた。そうしてから気付いたが、そういえばキスなんて今まで数える程しかしてなかった気がする。今さら興奮してきた。
「ん、ちゅぱ、ふぐ、んむんん……」
 舌を絡めて唾液を交換しつつ、右手を彼女の服の中へ。柔らかな膨らみに触れる。
 ゆっくり形を確かめる様に撫でて、優しく揉みしだく。
 ミィシャが身をよじったが、唇は離さない。そのまま乳首を指先で転がし、摘んで、引っ張ると、ミィシャは「クゥン」と泣き声に近いものを上げた。
 右手は胸を堪能しつつ、左手を下腹部へ。
「きゃう、アウゥ」
 すでに濡れそぼった割れ目をなぞる。指を一本挿し入れ、ゆっくり動かす。
「あ……ン……ウゥア」
 ぬるぬるした粘液が指を濡らした。親指でクリトリスを刺激すると、ミィシャの体がぴくん、と跳ねた。そして尚一層愛液が溢れてくる。

 衣服を脱がす。ミィシャの褐色の肌が露になった。
 左手でアソコを刺激しつつ、乳首にむしゃぶりついた。
「アァ、あンッ、あふぅ」
 長い間、やや乱暴に扱われたせいか、そちらの方が反応が良い様だった。
 もう濡れも十分か。思えば、丁寧に前戯をしたことも稀だ。
 俺はいきり立ったペニスを取り出し、ミィシャの入り口に当てがった。十分に慣らした膣は、さして抵抗も無く男を受け入れた。
「はぅぅっ」
 ミィシャは切なげに鳴いて身をくねらせた。
 俺は沸き上がる欲望のまま、激しく腰を振った。
 パン、パン、パン、パン……肉と肉のぶつかる音がする。
「アッ、あん、くふぅア……」
 あえぎ声に混じって、ジュプジュプと水音が聞こえる。時折緩やかに膣が収縮することから、本気で感じているのだろう。
 背中に手を回して抱き起こす、あぐらをかいた俺の上にミィシャが乗るかたちになる。
「動いて」
 言うと、ミィシャは快感を求めて腰を振り始めた。俺は彼女の顔や首にキスをする。
 頭の上に付いた耳の付け根をくすぐると、
「ひィんっ!」
 と高い声を出した。
「弱いのか、ここ」
 そんなことも知らなかったとは……やれやれ。
 集中的にそこをいじめて、さらに胸やクリトリスも弄る。
「やぁッ、はぁン、んはぁ、ァウ」
 膣がきゅうきゅうと締り、ミィシャの腰の動きも速まる。
 俺の首に抱きついて、ミィシャは一心不乱に動き続ける。
 もう限界だ。
 俺はミィシャの尻を掴んで、一気にスパートをかけた。
「あイッ! くふぅ、アウあ、あぁあああぁアッ!」
 びゅくびゅく、どびゅぴゅっ!
 力いっぱい、ミィシャの身体を抱き締める。
 荒い息遣いと、高鳴っている鼓動と、熱いくらいの体温を感じた。
 町での暮らしに未練が無いと言えばウソになる。だがこの温もりのためなら、捨て去ってしまっても構わない。この温もりがあれば、それでいい。

 それから何ヵ月か――
 さしもの俺も、家事を任せ切りにするわけにはいかなくなった。
 大きな腹を抱えてでは、料理も掃除も一苦労だろうから。
 にもかかわらず、こいつの悪いところは変わっていない。
 ちょっと油断するとすぐに無理を押して働こうとするのだ。
「今はおとなしくしてろ。どっちみち、その子が産まれたらイヤって程働かなきゃなんだ」
「ウア」
 ミィシャは膨れた腹を撫でて、深く頷いた。
 長い付き合いだ。彼女が今何を考えているかくらい、簡単にわかる。



 もしかして、俺はどうしようもなく狂っているのかもしれない。
 獣人相手に夫婦の真似事をしている、救い難い痴れ者なのかもしれない。
 それだっていい。狂人でいいんだ。
 俺の隣に彼女が居てくれるなら、俺は何だって構わない。