「起こしちゃった?」
後ろから声がする。
足が冷えているようだ。
薄目を開ける。ぼんやりとした常夜灯の明かりがベッドを照らしている。
背中に感じるぬくもり。有羽さんの体温だ。
そうか、あのまま眠ってしまったんだ。
僕は体をゆっくりねじりながら聞く。
「うん・・・今、何時?」
有羽さんと向き合う。彼女も目をとろんとさせて、心地よい表情をしていた。
「んとね、大体12時ぐらい。」
目線が僕の頭上を通過し、可愛い口元が動く。
「だいたい・・4時間ぐらい、か。」
4時間ぐらいの睡眠から目覚めた割には、いつもの気分の悪さはまったく感じなかった。
「ふふん・・・4時間前、あなた何してたのかなぁ。」
そういいながら有羽さんは僕の頬に手をやる。
なめらかな感触。くすぐったくも、気持よくもある。
僕は頭を少しだけ前に進めた。
視界いっぱい、彼女の顔。何かを期待する顔。
「それは・・」
僕がもう一度動く前に、有羽さんの唇が重なった。
ちょうど4時間前・・・


「そ、そろそろ出そう・・・」
カリ首の溝をなぞるように舌がうねる。
あたたかくザラッとした感触が陰茎の裏側を何度も往復する。
そんな攻め方をされ続けた僕は限界が近いことを悟った。
「そう?それはちょっと、もったいないなぁ・・」
口を離し、有羽さんはさもざんねんそうな表情を僕に向ける。
その間も、右手が根元をつかんで離さない。
まるで暴発を抑えているかのようにギュッと握ってくる。
「や、ぐっ・・・出させて下さいっ・・。」
仰向けで両足を押さえられている僕はただただ嘆願するしかなかった。
「かわいそうだけど、まだ出しちゃダメっ。」
有羽さんは僕の体を這い上がるように、顔を近づけてきた。
僕が下、有羽さんが上でぴたっと密着する状態。耳元に息をかけながら彼女は言った。
「ね、入れちゃおっか。このままさ。」
少し驚いた。
いつもなら口かパイズリで一回出してから、というのが手順みたいになってたからだ。
その勃起状態で、ゴムを着けてもらっていた。
しかも、有羽さんは・・
「ノーコンドーム。ノースキン。自然のまんま、繋がってみようよ。」
それはまずい、それはまずいよ、だって有羽さん、人妻なんだもの・・・。


4週間前、アルバイト先で僕と有羽さんは知り合った。
いわゆるコンピュータ入力の仕事だったから、パートのおばちゃんだらけ。
そこにたまたま学生で入った僕は浮きっぱなしだった。
そこへ、新しく有羽さんが入ってきた。僕ははじめ、やっと学生の仲間ができたと喜んだものだった。
それぐらい、有羽さんは同年代に思えるぐらいの器量だった。
「え、だんなさん、がいらっしゃるん・・ですか?」
有羽さんがパート枠だと知ったとき、僕はおどろいたし大慌てだった。
音楽の趣味で意気投合した僕らは仕事帰りにレンタルショップへ行き、休日にCDを買いに出かけ、その日夕食をとっているときに知ったからだ。
そうか、遊びなのか。
「なんで、黙ってたんすか」
僕はふてくされた。そりゃ、これだけ早く親密になれば期待のひとつやふたつ。
もうこういうことはやめますか・・・・そう言おうとした矢先、有羽さんは言い放ったのだった。
「ね、君のウチに寄ってっていい?」
そこから先は、もうなにも考えないことにした。

でもこれは、もう一度有羽さんとの関係を正すチャンスだ。
僕も遊ばれてやろうという決心でここまできた。
「ぐ・・・耳、舐めないで下さい・・・。」
快楽におぼれていたとも言う。
有羽さんはいつのまにか僕の股間をまたがっていた。
陰茎の裏側に湿り気を感じる。ちょうど肩のあたりに胸をおしつけられる。
危ない。
「で、でもこれじゃ・・・・・!」
ぬるっ、とした感触が陰茎から脳に伝わり、僕の言葉は途切れる。
有羽さんは自分のソコを僕に擦り付け始めた。
「どしたい?入れたい?やめちゃう?」
僕は無言でうなずくことしか出来なかった。
有羽さんは僕の根元をつかんでいる右手を動かしながら、自分の入り口に陰茎を導いていった。
鈴口にぬめりと熱、そしてなんともいえない快感が襲ってくる。
「じゃ、入れちゃうね・・。」
有羽さんはゆっくりと腰を下ろす。
ぬめりと熱が、亀頭、カリ首、陰茎と徐々に包み込んでいく。
やがて柔らかくて淫らな肉壁に全て飲み込まれてしまった。
「あっぐ・・やっば・・・」
この状態だけで首筋に電流が駆け上がり続ける。
こまかな襞がうねり、僕の粘膜がぬるぬるにさせられているのがわかる。
ゴムを隔たない、粘膜同士の吸い付き。
まるで、陰茎の表面に粘液をすり込まれているようだ。
「どう、生のほうがキモチイイ?」
僕は口で呼吸をするのが精一杯で答えられない。
こんな状態で動かれたら、ひとたまりもない。
どうにか息を整える。
「動かれたらすぐ出そう、なんで、・・・!!」
そう言った時には有羽さんの腰が動いていた。
ずるずるっ・・と音が聞こえるかと思うほど、ゆっくり執拗に陰茎をしごかれる。
いままで触れ合うことの無かった肉襞が、粘液で隙間無く埋めつくされる。
有羽さんの頬が高揚していくのがわかる。
「あっ・・やっ・・・すごい、もうびくびくしてる・・・」
恥骨を押し付けられるたびに、めまいがするほどの射精感の大波がくる。
有羽さんは声を控えめに上げながら、少しずつピッチを早めてくる。
もうあと、何度も耐えられない。
「もうやばい、です・・。」
ふと、上下の動きが止まる。
根元まで陰茎を加えたまま円を描くように腰をゆらしはじめた。
「もう抜かなきゃ、まずいです・・。」
僕は自分の本能に抵抗を試みた。
でもそれも、有羽さんの次の一言で簡単に打ち砕かれる。
「このまま出して、膣内に出しちゃっていいから・・」

そのとき、亀頭の先に何かが押し付けられた。
有羽さんが僕を見つめる。こりっとした弾力のある塊にはへこみがあった。
「わかる?ねぇ、君、子宮口当たってるのわかる・・?」
そういいながら、再び上下に腰を動かし始める。
亀頭に子宮口が押し付けられ、離れるたびに吸い上げるような力がかかる。
まるで、精巣から一刻でも早く精液を吸いだそうとしているかのように。
「ね、わかるでしょ、子宮が精液もらいたがってるの。」
有羽さんは僕に覆いかぶさるようにして、首の後ろに両手を回してきた。
結合部からはぱちゅっ、ぱちゅっという音が響き、
刷り上げられるたびに粘液が陰茎を伝い、精子の詰まった袋を濡らしていく。
「あっ、お、奥につながった時に出してね、子宮口くっつけてる時にっ・・・!」
有羽さんが軽く達し、膣壁が陰茎をきゅっと締め付けた。
僕の頭の中のブレーカーが吹っ飛び、精巣が一気に収縮した。
精巣から無数の精子が精管に押し出され、精管膨大部に溜め込まれる。
有羽さんが腰を押し付け、亀頭に子宮口が覆いかぶさった。
ぱっくりと開いた子宮口が鈴口をとらえると同時に、前立腺では精子と分泌液が交じり合う。
「出るっ!」
僕はなすすべも無く、射精を始める。
圧縮された粘液が尿道を駆け上がり、子宮内に噴き出す。
「あっ、すごい、勢いで出てる・・・」
有羽さんの子宮に精液がどんどん吸い上げられていくのがわかる。
陰茎が律動するたびに、子宮口に亀頭をきゅっと吸われる。
僕はそのまま、真っ暗な心地よい疲労感に包み込まれていった。

僕の精子が向かう先に、有羽さんの卵子が待ち構えていようとは。
知る由も無かった。
有羽さんの中で、4時間のカウントダウンが始まった。