夜の闇に紛れる邪悪が存在する。それは遙か古より存在する暗黒の使者達――時に帝国に、時に教会に、時にギルドに潜り込み侵し、
常世において神秘とされる不老不死を謳って信仰を集める邪なるものども――それすなわち根源を目指すもの、魔術結社“アルケー教団”。
この世に魔界を造り出さんばかりに、魔術によっておぞましい半人半魔の生命、“魔人”を生み出す魔術結社である。
その勢力は帝国各地に及び、それを信仰する老人達、或いは権力者達は、惜しみなく“生け贄”を彼らへ捧げた。
生け贄とは、魔人の母体と成り得る強い生命力を持った少女……すなわち、妊娠と出産に耐えうる母体のことであった。
アルケー教団は、魔術を用いて受精卵に強力な魔の因子を生み込み、日々新たな魔人を生み出しているのだ。
勿論、効率的な出産のために母体は受胎の前に“加工”――魔術的に強化され、精神的にも魔を孕んで問題ないように“洗礼”を受けるのである。
結果、僅か二ヶ月ほどで出産を可能とする、魔女が誕生するのだった。
彼女らは黒魔術に長け、受胎期間以外は組織の戦闘員としても用いられるほどだ。
ちなみに一口に魔人、と言っても様々な者がある。
上記のように魔女を母胎として生まれるものが“教団”においては殆どだが、極々稀に生まれついて魔の力を宿すものがいる。
帝国各地に残される伝承……ワーウルフ(人狼)、ワータイガー(人虎)、ドラゴニュート(竜人)、ヴァンパイア(吸血鬼)などとして語られるそれらはすべて、
自然発生した強力な魔人、オリジナルと呼ばれる存在なのだ。その力は人工的、魔術的加工によって生み出されたものとは比べものにならず、
軍隊にも劣らない戦闘能力を秘めているとされる。事実、アルケー教団のトップ“教皇”とその側近たる“大神官”は、
自然受胎でこの世に生まれたのだという。長々と書いたが、これらはすべては“事実”だ。
私はこの正教会に潜り込んだ邪悪なる者どもと対峙する。
神よ、我らの敵に死を!

……とある教会騎士の日記より抜粋。


なお、この騎士は後日、死体で発見された。
猛獣に噛み砕かれたような骸だったという。


……私は今回の事件に関わりたくない。
帝国魔導院密偵の、私すらそう思うのだ。
“教団”はそれだけ強大で、恐ろしい勢力である。
おそらく、今日もまた何処かで魔人が産声を上げているのだろう。



深夜。
鬱蒼と茂る森の中。
息を切りながら逃げる。
闇夜において明かりは月光のみ。
そんな状況下でも、二人の姉妹は駆け抜ける。
一人はショートカットの黒髪に緑の瞳が愛らしい少女。
胸は僅かに膨らむのみだがお尻はふっくらした安産型、整った造形の顔だ。
何処か人形を思わせる華奢な少女は、姉に手を引かれて走ること数キロ。
既に彼女はバテかけていた。

「お姉ちゃん、ボクもう走れないよ……!」

「ユーリ、走るのよ! あいつらに捕まったら、疲れたどころじゃないわ!」

そう言ってへたり込みそうな妹を叱咤する、鳶色の瞳の姉。
妹とは反対に筋肉と脂肪が程良くついた美少女――アンネ。
長く艶やかな黒髪をポニーテールで纏め、豊かな乳房を揺らして走る。
彼女の息も上がり掛けているが、多少は武術の心得があるのでまだユーリよりはましだ。
ざわり。木立が揺らめいた、と見えた瞬間、巨大な魔物が現れた。それは伝承で言うミノタウロス(半人半牛)に似ていたが、
毒々しい魔術模様が縫い付けられたマントを身に纏うヒトガタは、むしろこう呼ぶに相応しい。

「ま、魔人……!」

ユーリが悲鳴のような声を上げた。

「ユーリ、逃げなさい!」

アンネの決断は早かった。腰の後ろに差していた短刀を引き抜き、それを構えて怪物と向きあったのだ。
まさに無謀だった。相手は魔術によって生み出された魔人、戦車(チャリオット)さえ粉砕する化け物。
豪族の娘として武術を習っていたからと言って、とても勝てる相手ではない。
ましてや得物は刃渡り三十センチほどの短刀であり、近づく前に殺されるのがオチだった。
だけど、ユーリは恐怖に耐えきれず――脱兎の如く駆けだした。

「いきなさい、ユーリ」

それが“生きなさい”なのか“行きなさい”なのかは、ついぞわからなかった。
ざわざわと生い茂る木々の間を、闇雲に走り回った。遠くで女の人の悲鳴が聞こえたけど、自分とは関係ないと信じて。
こうなってしまったのは、何もかもあの覆面の男が来てからだ。父と深夜に話し込んでいた黒衣の男は、翌朝には姿を消していた。
その日を境に家族は急に余所余所しくなり、今朝、遂に父が号泣しながら語ったのは、聞くもおぞましい事実だった。

曰く。

『お前達姉妹は、教団の人間に生け贄として捧げられ、魔人の母胎となる』

曰く。

『もしも言うことに逆らえば、村の人間を皆殺しにすると脅された』

曰く。

『断ったばかりに滅ぼされた集落は数知れないんだ……だから』

曰く。

『……生け贄になってくれ……』

それは人間を辞めると言うこと。
闇の眷属の仲間入りをするということであり、二度と家族とは会えない。
アンネはまだ覚悟をしていた。問題は一つ違いの妹、ユーリだ。
気が強いわけでもなく、少しばかり我が儘な以外、大人しく静かな娘だった。
せめてユーリだけは、と父に懇願したが、それはもう決められたことでどうしようもないのだという。
だから、二人の姉妹は逃げた。けれど、魔術結社の放った魔の手からは逃れられず。
ユーリの華奢な身体が転んだ。白い肌が冷気に曝され、どうしようもなく寒い。
けれど、もっと恐ろしいのは……“足首が掴まれていること”。

「……ひっ」

メキメキと地面を陥没させて現れるのは、巨大な蟻地獄――のような魔人だった。
暗い緑の甲殻、丸々と膨らんだ胴体が何処までも醜悪で、複眼と顎がぎょろぎょろ動く。
そいつは甲殻に覆われた肉体でゆっくりと這い出しながら、嗤った。

「良い尻だ……さぞやよい子を産むのだろうなぁ……」

「やぁ……ボクは……」

「逃げても無駄よォ、姉と一緒に我らが眷属となるが良い」

振り上げられる拳――腹に一撃。
鳩尾を打たれ、ユーリの意識は闇に落ちた。



半人半牛の魔人が娘を山腹の神殿に連れ帰ったのは、夜も深くなる時間帯だった。
連れ去られた娘とは豊麗な胸の美しい少女――アンネであり、彼女の黒く艶の良いポニーテールが揺れる。
石造りの扉を片手で苦もなく開けたミノタウロスは、少女の身体を優しく寝台の上に横たえると、
彼らに近づいてきた覆面の男――この神殿の黒衣の神官に少女を捧げるように膝をついた。
牛頭の魔人が人間の言葉を発し、男へ報告する。

「バルメ様、例の姉妹の姉を捕まえて参りました」

「ご苦労だったね、オックス。今日の受胎の儀では、君が主役だ」

初老の神官がそう言うと、実直そうなミノタウロス――オックスが頭を下げた。
戦闘時には巨大な角を展開するオックスは、今は角を小さくし、娘を傷つけないようにしている。
バルメは気絶しているアンネの服を脱がしにかかり、上着やズボンを脱がすと、ぷるん、と大きな胸が揺れた。
もう既に成熟し掛かっている女体。それにオックスとバルメ神官は息を呑み、

「素晴らしい……」

呟くと残る下着も脱がせ、文字通り裸にしてしまった。
そして神官が慎重な手つきでアンネの身体を濡れた布で清め、禊ぎを済ませた。
水に濡れた少女の裸体は美しく、獣欲の強い魔人であるオックスなどは既に鼻息が荒い。
バルメ神官はそれに苦笑しつつ、少女の口を開かせると、漏斗のような器具を少女の喉奥に差し込んだ。

「む、もが……」

「眠りたまえ」

魔術で睡眠を強要されたアンネは、そのまま呼吸を苦しそうにしながら眠り続け、
その間に神官が、前もって冷ましておいた異臭を放つ琥珀色の液体を持ち出し、静かに少女の口に差された漏斗へ流し込んだ。
突如として流し込まれた液体にびくり、とアンネの身体が震えるが、やがて液体がごくごくと無意識のうちに飲み込まれていった。
バルメが嗤う。

「臓腑に造魔溶液が馴染めば……彼女は立派な母体です。あと一刻ほど待ちなさい」

「はい、バルメ様」

そう答えたオックスの目は、少女の裸身に注がれていた。


……一刻後。


目を開くと、見慣れない石造りの神殿の中にいた。
神殿だとわかるのは、見慣れない異教の偶像が飾られているからだ。
暗い、暗い、暗い――いや、目が慣れるとそうでもない。
あちこちで篝火が燃えたぎり、パチパチと炎が弾ける音がする。
気づけば寝台の上でアンネは寝かせられていて、服は脱がせられていた。
つまり産まれたままの姿であり、白い肌も釣り鐘型の豊かな乳房も、大きなお尻も陰毛も丸見えだった。
通常であれば恥ずかしさの一つも感じたのだろうが、頭が霞み掛かったように動かない。

――あれ? わたし、どうしたんだっけ?
たしかユーリを逃すために短剣を抜いて戦って、でもミノタウロスに負けちゃって……
そう、短剣を叩き落とされたところで意識が途切れてしまったのだ。
なんとか朦朧とした意識で起き上がろうと上体を起こす。
しかし、じゃらり、という鎖の音が意識を完璧に叩き起こした。
そう言えば、首が妙に苦しい。自由になっている手を首へ伸ばすと、そこには紛れもない“首輪”が付いていた。
素材は皮のようだがまるで鋼のように丈夫で、いくら手で引っ張っても緩む様子がない。
ちょうど首の付け根の位置から伸びる鎖は、そのままアンネの横たわる寝台の足に繋がれている。
これでは逃げられない――まさか、既に手遅れなのだろうか。

「……まだ諦めるには早いはず――」

「目覚めましたか」

顔を上げると、寝台の前に数日前に父の元を訪ねた覆面の男が立っていた。
思わず豊かな乳房を両腕で隠し、足をきつく閉じてそいつを睨み付ける。

「お前は!」

「ああ、数日前にお会いしていましたね。私はバルメ、ここの神官です。
アンネさん、一通りの施術は終わりましたが、貴方ならば良い魔女になれますよ」

施術は終わった――この言葉に、アンネは目の前が真っ暗になった。
おそらく、自分は既に手遅れなのだろう。ならばせめて――ユーリは、あの子だけは。

「…………私はどうなっても良いから、妹には……ユーリには手を出さないで」

覆面を被った黒衣の神官――バルメは笑いながらそれを承諾した。
それは愉悦に歪んだ悪魔の笑みだったが、彼女には知る由もない。

「……貴方が自分から約束を反故にしなければ、妹さんには手出ししませんよ」

「本当?」

「ええ、我が主上の名に誓って――」

「もういいでしょう」

諦観に支配されそうになったアンネの意識を現実へ引き戻したのは、野太い男の声。
それは気絶する前に聞いた、あの半人半牛のミノタウロスのものだった。
相変わらず毒々しい呪術模様のマントを身につけているが、
それよりも目を引くのは――それの股間のズボンを突き上げるナニカ。

「おやおや、オックス。もう待ちきれないのか?」

「一刻は経ちました、バルメ殿」

いきり立った男の愚息を、ズボンを脱いで露わにする魔人オックスに、思わずアンネは後退りする。
何故ならそのペニスは、水浴びの場で幼少の砌に見た男の子のものとは比べものにならぬほど大きく、
皮も剥けていて亀頭は丸出し、竿の部分は脈打ちグロテスクと言えるほどだ。
あまりにも驚異的なそれに顔を真っ青にする黒髪の美少女。
バルメ神官はにこやかにその様子を眺め、ウフフフ、と笑う。

「アンネさん、今から君はこの魔人――オックスと性交して貰う。
それで見事魔女としての務め、魔人の赤子を孕むという役割を果たすのだよ」

少女はポニーテールの黒髪を揺らし、ガクガクと震えだした。

「……い、いやぁ……」

「ふむ、いやなら君の妹君に相手をして貰おうか? 君には別の魔人をあてがおう」

想像する――妹の小さな身体にあんなペニスが入るわけがない。
いや、そもそ姉として決めたのだ。絶対にユーリを守ると。
だからアンネは、なけなしのプライドを捨てて、言葉を正した。

「いえ! 私は……私はどうなっても良い。 だから――ユーリは、妹には手を出さないで!」

「よろしい。彼女の相手をしたまえ、オックス」

「御意」

気づいたときには両腕を掴まれ、ベッドの上に押し倒されていた。
魔人の異形の頭部が近づいてくる。荒い鼻息、熱い吐息がアンネの顔に掛かった。
牛の意匠を取り込んだ獣(けだもの)の口が開き、長い舌がゆっくりと少女の唇を割ってはいる。
何とか歯で拒もうとすると、神官が覆面越しに愉快そうに嗤った。

「おやおや、無駄な抵抗はお止めなさい。貴方の受胎が遅れれば遅れるほど、妹さんは辛い目に遭うのですよ?」

その一言で抵抗する気が失せた。あとはされるがまま、そう諦観を決め込んでいたのだが。
化け物の長い舌が、少女の初めて、愛の接吻を奪う。じゅるじゅると流れ込んでくる魔人の唾液を飲まされ、
アンネの舌と異形のそれが絡み合い、彼女の脳内で一つの違和感が起き始めていた。

――あれ……? きもち、イイ――?
それは呼吸が困難な所為だ、と自分に言い聞かせた直後、

「ひゃん!」

嬌声が上がった。右の乳房が怪人の無骨な指に揉みしだかれ、何故か常より感度の良い乳首を抓られて堪らず声が出たのだ。
長いキスが終わり、異形の舌がねっとりと唾液の糸を引いてアンネの口から引き抜かれる。
ぷはっ、と呼吸を回復しながらも、少女の汗ばんだカラダは安息ではない何かを感じ取っていた。
深呼吸をしようにも、今度は口を使って左の乳首を甘噛みされ、その度に甘い電流が脳裏を駆け抜ける。
ポニーテールの黒髪をふさふさと揺らしながら、アンネは切なく喘ぎ続けるしかなかった。

「あ、ひゃ!」

――身体が熱い。自分のものじゃないみたいにフワフワする。
やがて下腹部がじわじわと熱を帯び、染みが出来るように無数の文字列が浮かび上がった。
ちょうど魔方陣のような円形で、幾つもの魔術文字によってお腹が覆われる。
“魔女の刻印”――少女の肉体を成熟させ、僅か二月で赤子を産み落とせるカラダへ変えるおぞましい肉体改造の証。
それが浮かび上がると同時に、じんじんと“子宮が疼いた”。これこそが熟した排卵の証だった。
灼熱感が内臓に拡がり、化け物からの愛撫がいっそう快感として感じられる。
ぎゅっ、と豊かな胸を捏ねくり回され、

「や、んぁああああ!!」

乳房を押し潰されるような圧迫、それすら脳が――カラダの“刻印”が勝手に快楽へと変え、アンネの男を知らない身体は遂に絶頂を迎えた。
伸ばされた爪先、耳元まで真っ赤になった頬、勃起した乳首――とろん、とした知性の感じられない蕩けきった表情。
仰向けにベッドに横たわる少女の肉体は、完璧に刻印に屈したのだ。

「ハァ、ハァ……」

肩で息をしているが口は半開きであり、ふっくらとした赤い唇の端からは唾液が一筋。
艶々した長い黒髪は背中に張り付き、開かれた太股の間、秘所は処女のものとは思えないほど淫猥に愛液を垂れ流す。
その量たるや洪水と言って良いほどで、下腹部に浮かび明滅する魔女の刻印は、アンネの子宮が準備を完了していることを知らせていた。
バルメ神官はその光景を好色そうに眺めると、アンネの秘所に指を突っ込み、一気に引き抜く。

「ゃっ!」

ぬらぬらと光る愛液は潤滑液としての機能を果たしており、濃度も十分だ。

「膣分泌液確認。良好な母体だ――犯せ」

意識を半ば失っていたアンネの視界に、グロテスクな巨根が映った。

「ひっ」

魔女の刻印の効果で快楽の奴隷に堕ちつつあった少女は、それを見て“恐怖”を思い出し身を捩るが、
既に逞しいミノタウロスの両腕によって白くふっくらした太股を掴まれており、逃げることも出来ない。
赤黒い亀頭がゆっくりと秘所の陰唇にあてがわれ、ゆっくりと擦り合わされる。
アンネ自らが垂れ流した愛液がその行為をスムーズに行わせ、陰核に亀頭の先端が当たる度、声にならない悲鳴があがる。

「んぅ、あ、あ!」

切なかった。皮から勃起した陰核が姿を見せているのに、ペニスは擦るのに使われるのみ。
快感は感じられるが、それは自慰でも得られる程度のもの。下腹部の灼熱はもっと違うものを求めていた。
バクバクと心臓が鼓動を刻み、お腹の呪術文字の魔方陣がぽわぽわと緩やかに、しかし確実にメスの欲求を昂ぶらせる。
ぬちゃぬちゃ。ぬちゃぬちゃ。粘液の音が何時までも反響する寝台の上。
果たしてそのような行為をどのくらいしたころだろうか……アンネは、自分から魔人に尋ねていた。

「……あ、あの……」

「欲しいのか?」

「……え?」

牛の魔人オックスは、可笑しそうにクツクツと嗤う。
猛牛の意匠を持つ頭部の歯を鳴らし、言い切った。

「自分から言うんだ。“淫乱な未通女に、貴方様のチンポで種付けしてください”とな」

「そ、そんな……」

破廉恥だ。豪族の娘として貞淑を教育されてきたアンネには、耐え難い恥辱。
だがしかし、その思いは魔人の一言によって消え失せる。

「言えぬのなら、お前の妹が母体になるだけだ」

次の瞬間には羞恥に頬を真っ赤に染めながら、乙女は自ら淫靡な言葉を吐いていた。

「い、淫乱な未通女に、あ、貴方様の……」

「聞こえないな」

「……貴方様のオチンポで種付けしてください!」

屈辱に耳元まで赤くしたアンネの身体は、しかしメスとしての屈服を悦んでいるかのように、
ツンと乳首は起ち、陰唇はだらしなく開ききって愛液を垂れ流している。
脱力――自ら足を広げ、男を迎え入れているようだ。

「ふむ、いいだろう」

言うが早いか、オックスは自身の脈打つペニスを陰唇にあてがい、
剛直と呼ぶに相応しい異形の男根が、メリメリと肉を押し広げ、遂に、膣へと侵入を果たしていた。
ブチ。薄い処女膜は暴力的な巨根の侵入によって容易く破れ、遂にアンネは乙女の純潔を失った。
愛液に混じる赤い血。痛み以上に化け物に初めてを奪われたという精神的ショックは大きく、気丈な少女は泣き喚く。

「いたぁ! 痛い!」

「案ずるな、お前のカラダがすぐに受け入れる」

言いながら、牛の魔人は狭い膣肉を押し広げるようにズンズン腰を叩きつける。
その度にぎゃっ、と悲鳴が上がり、アンネの豊かな乳房がぶるぶると震え、黒いポニーテールが揺れた。
豪奢な寝台がギシギシと軋むほどの暴力的陵辱。みちみちと侵入され、肉棒の形に蹂躙される膣肉の痛みが、彼女の脳に伝わる。
痛み――ミノタウロスの背中へ爪を立てるように腕を回し、力一杯抱きつくが、猛牛の表皮には傷一つ付かず、
むしろ大きな乳房が胸板で押し潰される感覚によりいっそうオックスは興奮し、肉棒が硬度を増した。
膣の圧迫感が増したことで、アンネが拒絶感を示そうとした瞬間。

ドクン。

ドクンドクン。

ドックンドックンドックン。

“下腹部”の魔方陣が明滅し、魔術的効果によってシナプスサーキットを操作、
痛みの電気信号を脳に伝わる過程で快感へ変換、少女の肉体で燻る肉欲を爆発的に開花させる。
結果――突如としてアンネの脳裏で稲妻が弾けた。

「ぁあ、ひゃぁあああ!?」

びくん、と身体が跳ねる。肉棒を挿入されていることに対し、絶対的な幸福感が押し寄せる。
突然訪れた津波のような快楽によって、アンネの理性はどろどろに溶けてしまいそうだった。
その影響は末端にまで及び、異形の男根をくわえ込んだまま膣壁が痙攣してしまう。
逸物を締め上げられる感覚にオックスは酔いつつ、

「ぐっ! ……達したか」

にやりと厭らしく嗤った。そして膣を押し広げる運動から、本格的なピストン運動を開始する。
魔人の猛るような腰の激しい動き――今までなら泣け叫んだであろうアンネは、一転して甘い喘ぎを出し始めた。
ギシギシと寝台が軋む音、猛牛の唸り、発情したように呻く少女の声。

「あ、あん、あ、あぁんっ! そ、ん、な――ん、でぇ!?」

ズン。ズン。ズン。ズン。
ぬちゃ。ぬちゃ。ぬちゃ。
自分の身体の異変に戸惑いつつも、与えられる快楽にガクガクと震える少女の細い腰。
快感は断続的に肉体を侵し、絶頂の波が来そうになる度に、視界が真っ白に染まった。
ぶるんぶるんと勢いよく揺れる二つの果実、その片割れに長い舌で吸い付く人牛。

「やぁ、おっぱいだめぇ……ひぃん!」

「ふむ。胸が良いか。どうやら既にお前は“魔女”のようだな。こんなに早く馴染むなど――雌犬め!」

そう言うとミノタウロスは太いごつごつした指で乳首を引っ張り、同時にペニスの先端がポルチオ性感帯を突き上げる。
子宮口の入り口近く、処女ならばまだ硬く痛みを感じるはずのそれが、どうしようもなく“キモチイイ”。
これまでで最も高い快楽の波に襲われ、アンネは痙攣し獣のように喘いだ。

「ひっぁああああ〜〜〜!! な、にぃ?」

それまで二人の性交を見守っていたバルメ神官が、覆面越しでもわかる笑い声を洩らす。
きらきらと妖しく光る瞳で、快楽に惚けているアンネへ魔術師が語るのは、恐ろしい事実だった。

「ふふふ、貴女のカラダはね、魔術でもう戻れないようになっているンですよ」

子種を注がれたら、絶対に妊娠するようね――その言葉にアンネの顔が絶望に染まる。

「いやあ、や、あ、あ、あ、あ、あ!」

「ちなみに貴女は、“刻印”のお陰でどんなことも気持ちいいはずですよ?
ふふふ、出産は産みの苦しみと言いますが、カラダが“魔女”になった貴女にはそれすらも――」

――嫌。そんな。私には普通の幸せすら許されないの――?
狂いそうな快楽に溺れかけながら、それでも自分は普通の婚姻と家庭を望んでいた筈だと拒絶する。
まだ心が完璧に屈していないことを、その眼力で見極めたのか。
バルメはウフフフ、と嗤いながらオックスに指示した。

「――私が彼女のカラダを屈服させます。オックス、子宮に教育しなさい」

「御意」

何事か神官が呪文を呟く。するとどうだろう、熱く熟した子宮が“下がり始めた”。
同時にオックスの責めは苛烈さを増し、ずちょ、ずちょ、とポルチオ性感帯を突き続ける。
その度にアンネは喘ぎ、よがり、黒いポニーテールを揺らして咽び泣いた。

「いひゃあぁぁぁ! あっ! ああぁん!」

子宮口は下がり続け――。

「“開いたな”」

「ふぇぇ?」

ふっ、と快楽の蹂躙が止む。
それに緊張の糸が切れそうになった瞬間、杭でも打つかのように腰が突き出された。
男根、ペニス、巨根、肉槍――どうとでも形容できる暴力的な男性の具現が、ぐちゃぐちゃに濡れそぼった股間を撃ち抜く。
ごんっ。僅かに開いた子宮口に亀頭がめり込み押し広げ、遂に――“開ききった”。

「あぁぁぁぁっ!!」

それは暴力的な快楽。絶対的に自分が“メス”なのだと理解してしまう衝撃。
蕩けきった表情を晒し、アンネはこれまでの人生で最高の絶頂を迎えた。
ぴゅうううううう、と潮を噴き上げ、ミノタウロスの腹筋を濡らす。
オックスはそれに満足したのか、嗤いながら告げた。

「満足したか――さぁ、孕ませてやるぞォ!」

一度根本まで引き抜いたあと、ズンッッッ、と凄まじい音が聞こえた気がした。
アンネの子宮口にすっぽり収まった巨根は刹那、ぎゅうっと睾丸を収縮させ、輸精管から精液を送り出す。
それは剛直の内部を駆け抜けると、勢いよくアンネの子宮の最深へ叩きつけるように放射された。

どぴゅ――どく、どく、どく……

傍目に見ても胎内射精させられているのがわかる音。

「あふぁぁぁぁ……出てるぅ……」

本来なら嫌悪感しか湧かぬはずの行為。化け物に犯され、無理矢理妊娠させられると言うこと。
されど、性行為と“魔女の刻印”で熟れきったアンネのカラダ、そしてココロは幸福感でいっぱいだった。
その目は虚ろに宙を泳ぎ、口は半開きで涎が溢れ出ている。
黒い髪をサワサワと揺らし、魔人に唇を奪われながらアンネは思う。

――もう……どうでもいいやぁ――。
“堕ちた”ことを確認しつつ、バルメ神官は仕上げに取りかかる。

「我々の眷属になると誓えば、これから先も快楽と栄華を提供しましょう。如何です?」

「誓うからぁ……してぇ、もっと、もっといっぱい――」

信じられないほど甘く壊れた声でそう言うアンネに、バルメは微笑む。

「――はい、ならばもう」

パチッ、と指を鳴らし。

「暗示は必要無いですね♪」

聞こえる、見える、感じられる。
そう――漸く少女は、“それ”を目にした。

「いたい、いたいよぉぉ! たすけ……お姉ちゃ……」

「カカカカ! 泣け、喚け!」

黒髪に緑の鬼火のような瞳、凹凸の少ない細い身体を嬲られる妹の姿があった。
ユーリ。自分が身体を張って助けたはずの妹。白い肌の少女が、昆虫の化け物に犯されている。
顔を苦痛に歪ませ、純潔を失ったことを知らせる血を流して。

「ユーリ? そ、そんな……いつから……?」

「ええ、四半刻ほど前から。んんー? 気付かなかったのですか?」

「い、いやぁぁあああああああ!!」

少女の悲鳴に酔いながら、悪鬼どもは哄笑した。



同時刻、月明かり照らさぬ森の中。
交差する――二つの影。それはヒトと異形の舞踏。
一人は人間、身長は百九十センチ弱の大男。灰色のコートを纏って宵闇を跳ぶ。
一人は魔人、二メートルを超える体躯に、鋭い牙と俊敏性を備えた黒豹が跳ぶ。
片や筋骨隆々の肉体と戦闘術を武器とする狩人。片や爪と牙を持つ人外の魔性。
両者の激突。空中で喉笛を噛み千切ろうとする牙と、音速に迫る拳が迫り合う。
牙を恐れることもなく打ち出された正拳が、黒豹の顔面を粉砕した。
ぐちゃり。鋼のような拳で殴られ、眼球と牙を失った山猫の魔人が崩れ落ちる。

「ギィィイ!」

「痛ェか?」

「ギ、ザ、マァァァ!」

残った歯で噛みつこうとするも、ガチリ、と虚しく残像を喰うのみ。
何時の間にか背後にまわったコートの男が、灰色の短く刈り込んだ髪を揺らして言う。

「遅いんだよ、何もかも」

勢いよく魔人の背中へ振り下ろされる右の踵――ゴキリボキリ、と砕け散る背骨。
ギャアアァァ、と悲鳴があがるのを冷酷に見下ろし、男は微笑んだ。

「お前らのアジトはこの先だな? 答えろ」

「そ、そうでず……受胎の儀を……二人、娘に」

「そうかい」

黙々と事情を聞いていた男が、不敵に笑った。
男――精悍な顔に残酷極まる獣の笑みを浮かべ、左の手の甲の刻まれた“剣の紋章”を翳す。

ぞぷり。

「ギャイッ」

突如として空間を引き裂いて現れた刃が、黒豹の頭蓋骨を貫通していた。
同時に男が呪文を呟くと、刃を伝って業火が燃え移り、魔術的クリーチャーの屍骸から噴き出す青い炎。
灰に還る化け物を背にしながら、人狼族の狩人は風のように消え去った。