待ちに待った体育の授業。
なんてったって今日はプールだもん。梅雨が明けたおとといからすっごく暑くなって、もう朝から汗だくでキモチワルイ。
早くあの冷たーい水にどっぼーんって跳びこみたいよー!しかもプール授業の初日だから、ぬるい水じゃなくて、きゅーんってするほど冷たいんだろうな。
「しんぞうまひ」になっちゃうかも、なんてね。ううん待ち遠しいな。
…みんなどうしてゆっくり着替えてるんだろう。
おっぱいがふくらみ始めた子達なんかかわいらしいブラジャー見せ合ったりしちゃって。
ちょっとうらやましいかな…。あ、あの子なんて下着まで丁寧にたたんで袋にしまってから、水着を取り出してる…きちょうめ〜ん。
でもあたしは違う…なんてったって準備のいいあたしはお洋服の下にシッカリ水着じゅんびおっけーなのだ!
他の子たちが着替えに手間取ってるあいだに、すこしでも早くプールサイドに行ければ、冷たい水を触れるわけだから。
「そなえあればぬかりなし」なのだ…ちょっと違う?
あっ、チャイムだ!それっ!
 キラキラと真夏の太陽を反射して宝石箱みたいに輝いてるプールは、まだ青々と澄みわたって底まではっきり見える。んーあたしって詩人?…ばかみたい。
とてとてと足早にプールサイドへ駆け寄って、水をひとすくい。さらさらと指から
こぼれおちていくさわりごごちがとってもいい。
 「まだ、水に触ってはだめだよ。」いけない、先生に怒られちゃった。
「先にシャワーを浴びて、それから消毒槽に必ず浸かりなさい。」
この先生、すっごくカッコよくてみんなの人気者で、あたしも憧れ。えへへ、話かけられちゃった!
あたしは元気に「はーい!」と返事をして、夕立のように降り注ぐシャワーをくぐる。ぴちゃぴちゃと体にあたる水しぶき。
あたしシャワーってあんまり好きじゃないんだけど…がまんがまん。
つぎは消毒槽。これも嫌いなの。白く濁ってるしそれにヘンなニオイもするし…。
あれ、いつもとニオイが違うような…こんなだったかなあ…なんだかちょっと生臭いような…気のせいかな。
「腰まで浸かりなさい。よく消毒するんだよ。」先生に諭されて、そろそろと消毒槽の中を進む。
半年前に初経を迎えてから、女の子の大事なトコロはいつも綺麗にするよう心がけてる。
そういえばこないだの生理は…ええと先々週だったっけ。プールでバイキンをもらわないように、しっかり消毒しなくっちゃ。
…でも消毒液ってこんなどろどろしてたかなあ…。それに生温いし…。
ワンピースの水着の隙間からぬめった液体に体中をなでられているみたいで、いやーな感じ…。

 ゼリーのようにどろりと重たい塊をかきわけながら消毒槽から上がると、白く濁った液体は水着や下半身にもかなりこびりついていた。
あーやだやだ。はやくシャワー浴びなくっちゃ。
と思ったら先生が
「あ、しばらくそのままでいなさい。せっかくの消毒液を洗ってはだめだ。」
って。でもこのままじゃプールに入れないじゃないの…あれ…なんだかふらふらする…?
「いけない、直射日光にやられたかもしれないぞ。少し横になっていなさい。」
言われるがまま、あたしはプールサイドの建物の陰に身を横たえた。
ほとんど陽があたらないためかひんやりとしたコンクリートが気持ちいい。
そういえば今朝お熱を計ったら微熱があったっけ。病気なんてこれまでほとんどしたことなかったのに。
プールだからママには内緒にしちゃったけど。いちおう先生に伝えたら、あたしの健康診断の保健記録をつぶさに調べてくれた。
先生ったら、生理周期まで見なくてもいいのに。
で、プールに入っても大丈夫だよ、そのかわり消毒をしっかりすればね、って。あたしがプール大好きだってわかってくれたんだ。
 「足を少し揚げておいたほうがいいな。」
先生はあたしのおしりの下に浮き具をあてがってくれた。
キョウシのセクハラがモンダイとなっているなんてニュースもあるけど、この先生に触られてもぜんぜん気にならないし。むしろ嬉しい…かな。
「これで無駄なくきちんと流れ込むよ…。」ってつぶやく先生。
なんのことだろ…。ん…なんだか眠くなって…きちゃった…。ヘンなの…。
「いいよ、眠りなさい。今は安静が一番。」はー…い…おやすみな…さ…。すぅ……。
 「ちゃんと受精するためにもね…。」


おわり