俺は神殿の大広間で、頭を垂れ片膝をつき運命の審判を待っていた。
今日一番最初に声が掛らなければ、3年間の努力も全て無駄になる。
(きっと彼女は俺を選んでくれる・・・そう信じたい)

俺が初めてアニエスと会ったのは俺達が5歳の頃。
雑貨商を営む父に連れられ神殿騎士団を訪れた俺は、暇を持て余し神殿の前庭で遊んでいた。
花々に囲まれて座る女の子が不器用な花冠を編んでいる。
俺は少し離れた所から彼女を眺め続けていた。
視線に気付いた女の子がニコニコと笑いながら近づいてきて、俺の頭に花冠を乗せる。
「騎士様に、女神様の祝福!!」
気恥かしさで真っ赤になった俺は、その場から走って逃げ出した。
青い目、白い肌、薄い砂色の髪、そしてあの笑顔が目に焼き付いて消えない。

それから俺は、神殿に行くたびアニエスの姿を探した。
アニエスがもう会えなくなると言ったのは、彼女が10歳の誕生日を迎える頃だ。
巫女見習いとして『神巫女の神殿』に上がるのだと。
アニエスは目に涙を浮かべ、俺に迎えに来てほしいと、自分の騎士になってほしいと訴えた。
騎士になりたいという俺に、両親は難色を示した。
そんな俺を応援してくれたのは、父方の伯父だった。
身内から騎士団員が出れば箔がつくと両親を説得してくれたのだ。
12歳になった俺は、神殿騎士団の見習いになった。

今年の冬至祭は特別だ。
始祖様が『神巫女の神殿』の前身である『五人姉妹の社』を起こしてから百年の節目に当たる。
第9代祭司長候補のお披露目も重なっている。
神殿の巫女は50人、15歳で巫女になり30歳で祭から外れる。
巫女たちは全て始祖様の娘5人に連なる血筋だ。この一族は母親の血を濃く引く。
美しさもさることながら、最も特徴的なのは子供の宿し方だ。
祭では5人に4人が身籠る。そして生まれる子供のほとんどが女児なのだ。
冬至祭に参加する巫女は22人、見習いから巫女に上がる娘はアニエスを含めて3人だ。
今半数以上の巫女が夏至祭で身籠ったか産後の肥立ちを待っていることになる。

祭りでは年若い巫女から騎士を選ぶ。
冬至祭で巫女になる見習いの中では、立場的にアニエスが最初だろう。
アニエスという名前が祭司長の長女のみに継がれると知ったのは、騎士団の見習いになってからだった。
今なら、何故両親が俺を騎士団に入れたくなかったのかが判る。
俺の手がアニエスを追いかけても、届くことはないと知っていたのだ。
巫女の中でもアニエスは別格だ。
祭司長を世襲する長女が、一介の商人の息子を自らの騎士として選ぶことはなく、還俗の見込みもない。
それでも俺は今、この大広間に膝まづいてアニエスを待っているのだ。
不安に胸が締め付けられる。
(俺はアニエスに選ばれるためここにいる。でも、彼女の立場がそれを許すものだろうか?)

衣擦れの音が俺の前に止まり、やがて俺の頭上で声が響いた。
「騎士様、女神様があなたの武勇を求めています」

アニエスに導かれた俺は長い廊下を抜け、肌寒い彼女の私室に招き入れられた。
勿論、初めてのことだ。香を焚いているのか、彼女の部屋は甘い香りがした。
振り向いた彼女と目が合う。話したいことはいくらでもあった。
どれたけこの日を待ったか。そして、どれだけ恐れていたか。
俺は両手を広げアニエスに歩み寄る。
「アニエス!!」

アニエスは右手の掌を翳し俺の動きを制した。
人差し指を俺の唇に当て言葉も封じる。
続けて翻した掌と視線でベッドへ腰掛けるよう促された。
(俺は今日の日を3年待った。いや5年、10年かも知れない。
 そして彼女も答えてくれた。なのに何故こうも彼女は冷たいのだろう?)

「冬至の今宵、女神様が、荒ぶる戦神の憑代として騎士様を所望しています」
アニエスは膝を折って俺の太股の上に跨り、俺の首を抱え込み身体を密着させた。
俺の顔がアニエスの柔らかな胸に埋もれる。
温かな体温と甘酸っぱい匂いに包まれ、忽ち股間に血液が集まった。
アニエスが俺の耳元で囁く。
「ロジェ、これは私たちにとって・・・とても大切な儀式なの。ねぇ、目を閉じて」
俺が目を閉じると、彼女が改めた口調で宣言した。
「騎士様は、戦場以上の槍働きを示さねばなりません・・・女神様の祝福を与えましょう」
アニエスの唇が額に触れ、右頬、左頬に逃げて額に。
一度離れ唇に重なり右瞼、左瞼を彷徨いまた唇に戻った。

吐息とともにアニエスの唇が離れる。
アニエスの腕が、唇の感触を反芻している俺からチュニックを奪い去った。
驚いて目を開けると、アニエスが左の掌で俺の目を覆い唇を合わせてくる。
俺は再び目を閉じてアニエスに身を任せた。
アニエスの唇が顎から首筋、胸へと滑り降り、臍のあたりで離れていく。
ズボンの紐が解かれ、ひんやりとした指が俺のモノに添えられる。
目を閉じているせいか、アニエスが喉を鳴らして唾を飲み込む音がやけに大きく感じた。

アニエスの唇が亀頭に触れ、チュッチュッと軽い音をたてる。
唇と舌がゆっくりと亀頭を這い廻り次第に竿へ流れていく。
舞い戻った唇が亀頭でまたチュッと音を鳴らした。
次の瞬間、亀頭の先端が柔らかく温かいものに包まれた。
(まさかっ!!)
俺が目を開き股間に目をやると、蹲ったアニエスの唇が亀頭を咥えている。
アニエスの唇が小さく前後しながら徐々に亀頭を呑込んでいく。
「アニエス・・・」
(・・・ダメだ!!こんなこと)
俺の言葉は続かなかった。
一瞬顔を上げたアニエスの眼差しは、それほど真剣だった。
俺の言葉を遮ったのは、アニエスの目なのか唇が与える刺激なのか判らなかった。
アニエスはほっそりとした指で竿を支え、遂にその柔らかい唇で俺の亀頭を包み込んだ。

チュパ、チュパ、チュパッ、チュパッ。絶え間なく漏れ聞こえる音が大きくなる。
アニエスの口の動きは更に激しくなり、指が竿と袋を擦り始めた。
目を閉じ頬を朱に染めるアニエスはまるで別人だった。
はにかんで小さく笑ってたアニエスの口が、今は涎を溢れさせて俺のモノを扱いている。
(アニエスは、俺のアニエスは変わってしまったのか?)
しかし俺の中の不安や恐れは、初めて味わう刺激の快楽に簡単に押し流された。
「アニエス!!・・・も、もうダメだ!!」
ビュルっ。
身体の芯をあの感覚が走り抜け、俺は慌てて腰を引く。
ビュルっ、ビュルっ、ビュルルっ・・・
身震いとともに俺のモノが何度も脈打ち、精を放出した。
初めの精はアニエスの口内に出てしまった。
引き抜いたモノがアニエスの顔に精を放ち、美しい顔に白く濃い3本の線を描いていく。
額から鼻梁を通り唇へ、右の瞼から頬へ、右頬から顎へ。
それでも収まらず、トーガの胸元に残滓が滴る。

「・・・ハァ、ハァ、ハァ」
「ケホっ・・・えっ」
呆けたようなアニエスの声がする。
「・・・えっ?!何これっ!!ヤダっ、苦い」
アニエスは跪いたまま、左目だけを薄く開けた。
頬に走る俺の精を探るように指を伸ばす。
「・・・熱くて、ヌルヌルする。・・・すごい臭い」
アニエスの顔を汚した俺の精が、粘りついてゆっくりと垂れ落ちる。
俺の息がやっと整い出す。
(俺は何をやっているんだ。俺がアニエスを穢してしまった)
俺は問いかけるようなアニエスの目に攻められて声を絞り出した。
「・・・ごめん。我慢できなくて出しちゃった」
アニエスが頬を拭った掌を見つめている。
「これって・・・まさか」
「うん、ごめん。・・・精液」
今度はアニエスの肩が大きく揺れた。
「せ、精液って・・・こ、子種の?」
俺は罪悪感で押し潰されながら答える。
「・・・そう。ごめん」
俺を凝視したまま、アニエスの身体が小刻みに震えている。
アニエスは顔を真っ赤にして涙を浮かべながら叫んだ。
「ロジェっ!!」
(それは怒るよなぁ。大切な儀式をいきなり台無しにしたんだから)
「どっ、どうして我慢してくれなかったのっ!!」
「いや、それは・・・だから、ごめん」
アニエスが捲し立てる。
「ロジェだって、この儀式の大切さは判ってるはずっ!!私、一生懸命頑張ったのにっ!!」
「だから、次はもっと・・・」
アニエスは肩を落として俯く。きつく閉じた目から涙が溢れている。
「・・・ロジェ、あなたも巫女の掟は知ってるでしょう。
初めて巫女に上がった娘が最初の儀式で身籠らないとき、次の儀式で同じ相手を選べないの。
・・・もう、次は無いのよ。私たちは、もう結ばれないの」

「えっ?!」
俺はアニエスの言葉が理解できなかった。
「でも、えっ?!いや・・・だって、アニエス?もう一度・・・」
俺を睨むアニエスの顔は、涙と鼻水でグシャグシャだった。勿論、俺の精も拭い切れていない。
アニエスは涙声だ。
「だ、だから、次の夏至祭は・・・」
俺はアニエスを遮る。
「アニエス、アニエス!!待って、話を聞いてっ!!」
「なによっ、バカっ!!」
「いや・・・だから、今から、もう一度、儀式の続きをすればいいんだよ」
アニエスは上目遣いでポカンと口を開けていた。
「えっ・・・だって、ロロ・・・もう出しちゃったでしょ?」
俺は脱力した。
「うん。でも、まだ出来るんだ。そう、まだ出せるんだよ」
ペタンと座り込んだアニエスが、疑うように尋ねてくる。
「あのぅ・・・ロロ、アレって一度限りじゃないの?」
俺は何とか笑いを堪え真顔で言う。
「うん。まだ3回、いや必死になれば・・・あと5回くらいはできると思う」
「まぁっ!!5回もっ?!」
アニエスの顔が綻んだ。今日初めて見るアニエスの笑顔、俺の大好きなアニエスの笑顔だ。
それにアニエスは俺を騎士様でもロジェでもなく、ロロと呼んだのだ。子供の頃のように。
(・・・でも5回は言い過ぎたかな)

水差しの水で顔を洗い終わったアニエスが、俺と向き合ってベッドに座っていた。
俺は胡坐、アニエスは腰を落として膝を揃えているが脚は外に開いている。
幼い女の子のような格好だ。そんな姿に10歳くらいのアニエスの姿が被る。
「化粧、落ちちゃった」
アニエスがシュンとなって呟く。
「うん。でも、俺は化粧してない方がいいよ。可愛い、昔のままの、俺の好きなアニエスだ」
耳まで赤くしたアニエスが俯いた。
「・・・バカ」
確かに化粧を施したアニエスは美しかった。いや、美し過ぎた。
凛とした佇まいに気高さを纏い、近寄りがたい印象だ。
そんなアニエスを見ると、いつも自分が取り残されるような不安を覚えていたのだ。
あのアニエスの朱い紅を塗った唇が俺のモノを包んでいた。
それを思い出すと自分でも解らない衝動に突き上げられ、また股間に血が集まってくる。

仕切り直しだ。
「巫女様、・・・それじゃあ、儀式の続きをしてくれるかな?」
「えっ!!あ、あの、えと、そ、その、それは・・・」
アニエスの視線がキョロキョロと彷徨う。
「お姉さま方に教わった儀式の手順は、あそこまでなの」
「で、でも、それって・・・」
「お姉さま方は『このあとは、全て騎士様にお任せすればいい』って言ってたの。
ロジェ・・・あ、あのぅ、あとはロロに任せていいんだよね?」
「えっ。あっ、う、うん。・・・ぼ、僕、じゃない、俺に任せてくれ」

(拙い、これは拙いぞ)
今度は俺が狼狽える番だった。
俺も儀式については、それとなく先任の騎士達に話を聞いていた。
しかし、この場で役立つような収穫はなかった。
『はははっ。どうせ祭では半分の男があぶれる。騎士に成りたての坊主が心配することはねぇよ。
 巫女は頼りになる年上の男から選んでいくからな。お前を選ぶとしたら物好きな姉さんくらいだ。
 その時は巫女の姉さんに全部任せとけ。天国を見せてもらえるぞ。
 まあ、巫女さんをガッカリさせないように腰の槍だけ鍛錬しておけ。
 お前は穴に入れて、腰だけ振ってりゃいいのさ』
(誰もアニエスが俺を選ぶと思ってなかったんだろうな)
「アニエス。あ、あとは何か言ってなかった?騎士がそのあとどうするとか?」
「あとは・・・え〜と、あ、あのっ。き、騎士様は、祝福を返してくれるの」

「祝福?」
(どういうことだろう?)
「さっき女神様の、しゅ、祝福をしたでしょう?
 あの、お、同じように騎士様が、巫女の、胸とか、ア、ア、アソコを
 ・・・さ、触ったり・・・な、な、舐めたり」
もうほとんど最後の方は聞き取れないが、何を言いたいかはよく判る。
「段々気持ち良くなって、ぼぉっとなって、フワフワするんだって。
 すると、騎士様の槍を迎えるために、ア、アソコに蜜が溢れるの」
アニエスは説明しながら膝の脇で頻りに人指し指を動かし、シーツに何かの図形を描いている。
俺は覗き込もうと身を乗り出しかけて、ふと気付いた。指の動きに意味はない。
これはアニエスが恥ずかしがっているときの癖だった。
「それで、ここが一番大切だと思うのだけど『いい騎士様に導かれた巫女は女神の園に行く』のですって!!
 女神の園を見た巫女は子宮っていう赤ちゃんを宿すところが降りて、騎士様の槍を迎えに行くそうよ。
 すると、騎士様の、せ、せ・・・子種を吸い上げて子供を身籠るの。
 だから、女神の園を見れなかった巫女は、赤ちゃんを授かることができないの」
(そういうことか。それで同じ騎士を選べないのか。あれ?天国を見るのは騎士じゃないのか?)
「アニエスは、その、め、女神の園に行ったことはあるの?」
「あるわけないでしょう?私は初めて巫女に上がったんだもの」
「じゃあ、女神の園の景色を見ても判らないのか」
アニエスがニッコリ笑う。
「それは大丈夫。女神の園は『行けば判る』って、お姉さま方が言ってたわ」

儀式用のトーガを脱いだアニエスがベッドに横たわっている。
薄い砂色の髪を梳きながら唇を重ねると、触れるだけの口付けが互いを貪る激しい動きに変わる。
唇をアニエスの首筋から鎖骨へ這わせ、胸の谷間に辿り着く。
両手で二つの白い隆起を掬いあげ、先端の突起を交互に口に含む。
僅かに掌から零れる乳房は柔らかく、しっとりとして指に吸いつく。
(・・・これがアニエスの胸)
暫らく口と手で双丘を味わっていると、アニエスが身体をくねらせた。
「ふふっ、くすぐったい。ロロ、赤ちゃんみたい」
「アニエス、これは大切な儀式なんだよね?」
ちょっと意地悪な言葉を返す。
「ごめんなさい、ロジェ」
唇を下方に流し、臍に達したところで状態を起こす。
砂色の髪より濃い色、アニエスの控え目な茂みが目に入った。

初めて見るアニエスの、いや女の秘部は、何というか・・・何というか。
(・・・いやらしい)
アニエスの白い肌の中で、そこだけ場違いに突拍子もないものがついている。
指で押し開き、薄紅色の秘腔を食入るように見る。
想像以上に複雑な形状のそれを凝視していると、股間に痛いほど血が集まる。
「・・・あ、あの、ロロ?私の・・・変?」
「・・・うん」
おずおずとした問い掛けに上の空で答えると、枕で後頭部を殴られた。
「ひどいっ!!何でそういうこと言うの?!」
「あっ!!いや、ごめん、違うんだ。いや、判らないよ。初めて見るんだから。でも、綺麗だよ」

小さな決心と共に潤んだ秘腔に舌を添える。アニエスもこんな気持ちだったのだろうか。
(蜜って言ったけど、酸っぱいんだな)
「あっ!!」
アニエスの反応を待たず秘溝に舌を這わせる。
上部に真珠を認めて軽く舌を当てると、アニエスの身体がピクンと跳ねた。
「んんっ!!」
(んっ?!ここなのかな?!)
俺は唇と舌と指で祝福を返す。アニエスの呼吸が次第に乱れ、時折身を躍らせる。
秘腔に蜜が溢れるのを確かめ、俺は上体を起こした。

「行くよ」
声を掛けると、アニエスが薄眼を開けて俺を見返しコクンと頷く。
俺はアニエスの太股を抱えて腰を進めた。亀頭を秘腔に収めようとするとヌルヌルとかわされる。
改めて竿に手を添えゆっくりと押込むと、亀頭がニュルンとアニエスの胎内に飲み込まれた。
「痛っ!!」
アニエスの身体が仰け反り、亀頭を押し戻そうとする。
「アニエス、痛い?大丈夫?」
俺が声を掛けると、アニエスは息を整えながら右手を伸ばしてきた。
左手は顔の横でギュっとシーツを掴んでいる。
意図を察して俺が上体を倒すと、アニエスの両腕が俺の首を抱え込んだ。
「・・・ロジェ、続けて」
促されて更に腰を進める。
「んんっ!!・・・痛っ!!」
アニエスの両脚が俺の腰に巻きつく。
俺は脇の下から両腕を廻してアニエスの肩を抱き込み、ゆっくりとアニエスの中に竿を埋め込んだ。
アニエスの額に汗が浮き、眉間に苦悶の皺が寄り、閉じた目元に涙が浮かぶ。
噛みしめた歯の間から浅い息が繰り返して漏れ、太股が痙攣している。
俺はアニエスのきつく閉じた唇に唇を重ね、アニエスに全てが胎内に収まったことを知らせた。

アニエスの中は温かく、俺を包み込んでギュっと締めつける。
亀頭が受ける刺激に耐えきれず腰を押し付けると、アニエスの四肢に力が加わった。
「痛っ!!・・・ごめんなさい。もう少しだけ・・・このままで」
じっとアニエスを待ちながら感慨に耽る。俺はやっとここまで辿り着いたのだ。
達成感に押し上げられ、俺は股間の槍が更に固く大きくなるのを感じる。
浅く短かったアニエスの吐息が深く長い呼吸に変わり、俺を締めつける力が緩む。
「・・・いいよ、ロジェ」
アニエスの声を受けて腰を動かす。
暫らく腰を往復させただけで、ヌルヌルとした襞の感触に亀頭が膨らむ。
(ダメだ。もう耐えられない)
アニエスに包まれた俺の槍がビクビクと脈打つ。
俺はあっけなく絶頂に達し、アニエスの胎内に精を放った。
「あっ!!・・・熱い、ビクビクしてる。・・・ロジェ?」
アニエスの言葉に裏はない。
ないはずだけれど、何故か責められている気分なって弁解口調になった。
「ごめん、また出ちゃった。でも大丈夫、このまま続けるよ」
「うん。あと4回だね」
(うわぁ、数えてるのか)

アニエスの元に辿り着いたことで満足してはいけない。それでは今夜限りでまた引き離されてしまう。
これからも傍らに居たければ、今夜アニエスに種付けして孕ませなければならない。
俺はゆるゆると腰を使いながら、様々なことに思いを馳せていた。
腰に意識が向くと直ぐに達してしまいそうというのが本音なのだが。
「・・・あっ・・・はぁ、はぁ」
アニエスが甘い吐息を漏らすようになって気付いたことがある。
これは槍の突きじゃなくて剣捌きなのだ。しかもフェイントが効く。そう、これは剣の修行だ。
浅いところを攻め続けてから奥に突き込むとアニエスの声が裏返る。
「あっ・・・んっ・・・んはぁ、ロジェ、んっ・・・ああっ」
アニエスの頭が反って白い喉を見せる。
吐息が次第に熱を帯び切ない喘ぎに変わっていく。
アニエスの熱く湿った声と股間でニチャニチャと響く水音に刺激されて、俺はまた昂りを迎える。
アニエスは女神の園を見ているのだろうか。
いや、これは剣の修行じゃないな。きっと俺に課せられた苦行か拷問なのだ。
「んっ、ああっ、ロジェ!!何か来る、ロジェ!!・・・はぁぁ!!」
顔を左右に振っていたアニエスの声が一際高く響き、俺に巻き付いた腕に、脚に力が加わる。
「アニエス、俺の子供を産んでくれ!!」
背を仰け反らせたアニエスの身体が大きく痙攣したとき、俺は再びアニエスの胎内に精を放った。
ビュルっ、ビュルっ、ビュルっ。
アニエスがギューっと俺を締めつけ、俺から全ての精を搾り取っていく。
俺はガクガクと揺れて力が抜けていく頭で、この子種がアニエスの胎奥に根ざしてくれることを祈った。

「・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
俺とアニエスはベッドで仰向けになり、並んで息を整えている。
アニエスを見やると、青い瞳は驚くほど潤み、目元は朱に染まっていた。
胸の膨らみが呼吸に合わせて大きく上下に揺れている。
やがて満ち足りた表情のアニエスが、こっそり秘密を打ち明けるように囁く。
「ねえ、ロロ。私、女神の園を見たのよ。あなたの赤ちゃんを授かったわ」
アニエスの両手は大切なものを守るように下腹部に重ねてられていた。
一息ついたアニエスが、満遍の笑みで俺に呟く。
「あと3回だね。ねえ、ロロ?私、気がついたのだけど・・・
 儀式の始まりは、騎士様のお顔に6箇所の口付けでしょ。こういう意味なんだね」
いや、アニエス、それは違うと思うよ。
無邪気な微笑みを見ると、とても言えないけど。
俺はその笑顔が少しだけ怖くなった。

一年後の冬至祭。
俺は神殿の大広間に立ち、緊張した面持ちの巫女達と頭を垂れた騎士達を眺めていた。
俺の横には、小さなアニエスを抱いた俺だけの巫女がいる。

終わり