朝のゴミ出しに向かう途中、何ヶ月か前に引っ越してきた隣人の出勤に出くわした。ぱりっとしたスーツを着た隣の家の旦那さんが仕事に向かうのを、美人で巨乳の奥さんが見送っている。ああいう巨乳はそうはいないから羨ましい。何としても俺のものにしてやる。
 向こうはまだ俺に気づいていないようなので、挨拶の声をかけようかと思ったが、出かかった声を咄嗟に呑み込んだ。旦那さんと、それを見送る奥さんの雰囲気が妙だったからだ。
 旦那さんは酷く不機嫌な、今にも怒鳴り出しそうな顔をしているし、奥さんは奥さんで酷くつらそうな顔をしている。夫婦喧嘩でもしたのだろうか。だとしたら、あの深刻な顔つきを見る限りでは、相当な大喧嘩だ。
 こういうのには関わり合いにならないに限る。家庭の事情を利用するのは人妻を堕とす基本だが、そのためにはまず、家庭の事情に立ち入ることができるだけの親密さが必要だ。
 そう考え、目立たないよう道の端に寄って通り過ぎようとしたのだが、旦那さんが気づかれてしまった。黙って通り過ぎようかと思ったがもう無理だ。
 こうなったら軽く挨拶してさっさと通り過ぎるに限る。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
 旦那さんは俺より一回りは年上、三十数歳といったところだろう。その真面目そうな外見には官僚などが似合いそうだが、付き合いのある調査会社の報告では、とある上場企業の係長とのことだ。仕事においては比較的優秀な人なのだ。
「おはよう、佐藤くん」
 奥さんは俺より四、五歳くらい年長、大体二十四、五か、それより少し上くらいだろう。おっとりとした感じの清楚な顔立ちに、片手では掴み切れそうもない巨乳、ぎりぎりで肥満にならないむちむちとした肉感的な肢体と、凄く抱き心地の良さそうな体をした、タートルネックがよく似合いそうなお姉さんだ。
 いつもと違い、奥さんが浮かべている柔和な笑顔には陰があった。夫婦喧嘩か何かしたのだろうか。
「今から大学かい?」
 微妙な空気をごまかすように、旦那さんが世間話を始めた。
「今日は午後からなんで、これ出した後、家で適当に時間潰します」
「学生はスケジュールが緩くていいなぁ。俺も学生時代に戻りたいよ。それじゃあ、もう行くから……」
「はい、僕もゴミ捨てに行くんで……」
 夫婦と別れ、一人、ゴミ捨て場へと向かった。




 ゴミ捨て場からの帰り道、隣家の前を通りがかった時、何気なく敷地内に目を向け、驚きの声を上げそうになった。奥さんが門の近くで倒れていたのだ。
 早速門の近くに向かう。これは隣人夫婦と親しくなる良いチャンスだ。逃す手はない。
「奥さん、どうしました?」
 門の外から声をかけてみると、奥さんは弱々しく顔を上げ、こちらを見てきた。どうやら心疾患や脳疾患の類ではないようだ。立ち眩みか貧血辺りだろう。そのくらいならば俺でも対処できる。
 となれば、やはりこの機会は逃さず活用すべきだ。どこまでも積極的に。
「奥さん、大丈夫ですか? 意識ありますか?」
 敷地内に踏み入り、奥さんの傍に屈む。
「大丈夫……ちょっと眩暈がしただけ……」
「大丈夫じゃありませんよ。ほら、肩を……あ、もしかして、急に動かすとまずい病気とかだったりしますか?」
「ううん、大丈夫……ちょっと疲れてただけだから……」
「あっ、奥さん、どうしたの!?」
 門の外から年寄り臭い掠れ声が聞こえてきた。
 振り向けば案の定だった。この辺りに住んでいる婆さんだ。日課である朝の散歩中に通りがかったのだろう。
「学生さん、奥さんどうしたんだい?」
 婆さんの態度に俺を疑う気配は微塵もない。
 当然だ。俺は周囲の信用を得るため、常に好青年を演じているのだから。地域の集まりや当番には欠かさず参加している。俺を知っている人間ならば、この状況を見ても、俺が奥さんを介抱しているとしか受け取らない。
「わかりません。ゴミ捨てから帰ってきたら倒れてて……」
「あの、大丈夫ですから……ちょっと疲れて眩暈がしただけで、大したことは……」
「いいからいいから! 奥さん、女は体を大事にしなきゃ駄目だよ! ほら、学生さん、ぼさっとしてないで、早く家ん中に連れてってあげなさい、あたしが戸を開けるから!」
 ある一定年代以上の女に特有の人の話を聞かない性質を発揮して、婆さんが指示を飛ばす。願ってもない援護射撃だ。
「まあ、そういうことなんで、奥さん、僕が肩支えますから、家に入りましょう」
 抱き起こして立ち上がらせ、肩を支えると言うよりは抱くようにして玄関に向かう。その際、さりげなく豊かな胸に触れる。あくまでも偶然を装い、軽く指先が引っかかる、軽く手の甲が掠めるといった程度に留め、感触を堪能する。
 奥さんの体を気遣うように、しかし実際は少しでも長く感触と匂いを堪能するため、必要以上にゆっくりと歩く。
 服とブラジャーを隔ててもわかるほどの柔らかさと温かさは、まさに一級品の証だ。
 何としてでもこの乳を――この女を俺のものにする。俺の子を孕ませて、母乳を吸いまくってやる。
 そういえば、この夫婦にはまだ子供がいないようだ。ならば、丁度良い、初産は俺の子だ。
 やがて玄関につき、俺と奥さんは家の中に入った。
 初めて入った家の中は、上流寄りの中流といった雰囲気だった。それなりの家の奥様と旦那様なのだ。
 この家の中で奥さんを善がらせることを想像すると、今からチンポが熱くなってくる。
 やはり人妻と家はセットなのだ。家、特に夫婦の寝室でのセックスと妊娠は、人妻を寝取る上で欠かせない大切な儀式だ。寝室と子宮。この二つを征服して初めて、人妻を寝取って自分のものにしたと言えるのだから。
「あの、もう大丈夫ですから……」
 俺に肩を抱かれながら、少し顔色の良くなってきた奥さんが言う。
「そうかい? それじゃあ、あたしらは帰るけど、ほら、うちの電話番号書いとくから、何かあったら遠慮なく呼ぶんだよ。世の中助け合いだからね。あ、男手が必要な時もあるだろうから、学生さんもついでに番号書いときな、ほら」
 婆さんが勝手に話を進め、自分の自宅番号を書いたメモ用紙を差し出してきた。
 これで期せずして連絡先を教えることができるのだから、この婆さんの援護射撃は神がかっている。この婆さん、実は俺の目論見をすっかりお見通しなのではないか。ふと、そんな恐ろしさも込み上げてくる。
 紙に名前と自宅とケータイの番号を書き込んで婆さんに返す。メールはまだ書かない。夫婦の警戒心を刺激しかねないようなことは慎む必要がある。
 連絡先を残し、俺と婆さんは隣人宅を出た。




 翌朝、ゴミを捨てに出かけると、隣人宅の前で旦那さんが時計を気にしながら立っているのが見えた。横には奥さんが立っている。
 昨日ほど深刻そうではないが、どうも妙な空気が漂っている。
 旦那さんが俺に気づいた様子で手を振り、手招きした。
「おはようございます。何かご用ですか?」
「うん、マナミから聞いたんだけど、昨日、田中のお婆ちゃんと一緒に、マナミを介抱してくれたんだって?」
「マナミさん?」
 十中八九奥さんの名前だろうが、敢えて訊く。ひょっとすると字を教えて貰えるかもしれない。
「ああ、うちのの名前だよ。『愛する』に『美しい』で『愛美』」
 愛と美。この温かな雰囲気の奥さんにはぴったりの名前だ。
「綺麗なお名前ですね」
「ふふ、ありがとう」
 奥さんが微笑む。
「それから、あの時はバタバタしててお礼も言えなくてごめんね。昨日は助けてくれてありがとう、佐藤くん」
「倒れてる人を見捨てるようなことはできませんよ」
「偉いな、君は。僕が学生だった頃より真面目なんじゃないかな」と旦那さんが笑い、続ける。「そうそう、時間がないから手短に言うけどね、今日は君に何かお礼をしようと思って待ってたんだよ」
「そんな、お礼なんて……」
「まだ若い内から遠慮なんてするものじゃないよ。田中のお婆ちゃんに聞いたんだけど、何でも君は独り暮らしらしいじゃないか」
「ええ、そうですが……」
「家事とか、大変だろう。折角だから、今日は家に夕飯を食べに来ないかい」
 早速あの介抱が効いてきたらしい。
 予想以上の効果だ。まさか翌日に家に上がり込めるほどになるとは思わなかった。
「いいんですか?」
「ああ。ところで、君、佐藤くんだったっけ、歳いくつ?」
「今年で二十歳になる予定です」
「そうか……それくらいならいいよな、うん。酒は飲める?」
「そこそこは」
「なら決まりだ。今晩、うちで夕食がてら、一杯やろう」
「うーん……」
 少し躊躇う素振りを見せ、わざとらしく奥さんの様子を窺う。
「遠慮しないでおいでよ、佐藤くん」
 奥さんは俺の望み通り、オーケーを出してくれた。
 これでひとまず状況は整った。
「それじゃあ、ごちそうになります。お腹空かせていっていいですか?」
「勿論。腕によりをかけて用意しておくから、楽しみにしててね」




 夕食の席では、奥さんの手料理に舌鼓を打ちながら歓談した。
 話題は専ら俺のことだった。
「そういえば、佐藤くん。君、あの家に一人で住んでるんだよね」
 金目当ての馬鹿が寄ってこないように、借家ということにしてある俺の家は、一人で住むにはやや広い。有り体に言って、学生が一人で住むには、金銭的にも間取り的にも不相応な家だ。
「そうですよ」
「家賃とか結構かかるだろう。学生なのに、大変じゃないのかい?」
「ああ、僕、株とFXやってるんですよ。これが結構儲かってるんで、ちょっと余裕があるんです」
 まさか馬鹿正直に、「証券会社の操作ミスに付け込んで儲けた百億でネオニートして年に何億か稼ぎながら、有り余る金と時間を使って女を寝取って遊んでます」などと言うわけにはいかない。
「へえ、株にFX。デイトレって奴?」
「基本はそれです」
「学生なのに凄いね」
「まあ、儲かってるって言っても、せこせこやってるだけですから、儲かっても、精々、一月に二、三十万くらいですね、利益は。酷い時は小遣い程度、もっと酷ければ赤字です」
「それでも大したものじゃないか。大卒の初任給より高いぞ」
「だから、将来的にはこれで食べていけたらいいなと思ってます」
「ふうん。それって俺でもできるのかな」
「いやあ、やめておいた方がいいですよ。本気で儲けようとおもったら、長い間張り付く必要がありますから、普通に勤めてる人だと、ちょっと時間が足りませんよ。学生とか主婦みたいに自由時間が多くないと。まあ、ケータイ使えば外でも何とかやりくりできますけど、お勧めはできませんね。やっぱり、家で落ち着いてやるのが儲けるコツですから」
 ここでさりげなく矢を放つ。後は上手く乗っかってくれることを祈るのみだ。
「そうかぁ。じゃあ俺は無理かな。結構忙しいし。しかし、主婦か……じゃあ愛美なんか丁度良いんじゃないか」
「えっ? 私は、そんな、株なんて……難しいことはわかりませんよ、あなた」
 旦那さんは見事に食いついてくれた。この幸運を逃すわけにはいかない。
「そんなことありませんよ。簡単です、簡単。パソコンの前に座ってマウスをカチカチ、キーボードをカタカタ、ちょこっとやるだけでいいんです」
「でも、そういうのって怖いんでしょ? それに、お金が沢山必要でしょうし……」
「少額での取引なら損益は大したことになりませんし、元手も二十万くらいで充分ですよ」
「だってさ。二十万なら何とかなるし、ちょっとやってみたら?」
「でも、私、何も知りませんし……」
「あ、よかったら教えますよ。デイトレーダーが増えると僕も嬉しいですし」
「そりゃあいいね。でも、君、デイトレで食ってるようなものだし、言わば、プロだろ?プロにタダで指導させるのは心苦しいしなぁ……あんまり出せないけど、いくらかバイト代出そうか? 儲かった分の何割か、とかで」
「いやあ、食うに困らないだけのお金はありますんで、結構ですよ」
「でもそれだと悪いしなぁ……」
 考え込む旦那さんの前で俺も密かに考え込む。
 ここで一気に次の段階に進むべきか。
 それとも、性急な電撃戦はやめ、今日は家に上がっただけで満足すべきか。
 やはりここは攻めるべきだ。ヒトラーはダンケルクの前で停まって失敗したのだ。俺はその轍を踏まない。
「あ、それだったら……」
「ん? 何だい?」
「何か教える日は奥さんにうちに来て貰って、家事をやって貰うっていうのはどうでしょう?」
「愛美が、家事を?」
「独り暮らしだと、家事って結構面倒なんですよ。だから、掃除と洗濯と料理をお願いできないかな、なんて」
 旦那さんは黙っている。
 早まったかもしれない。失敗した。順調な滑り出しに気を良くして調子に乗り過ぎた。
 何とか冗談に紛わせようと口を開きかけた時、奥さんが困ったように言った。
「佐藤くん、そういうの、彼女さんが嫌がるんじゃない?」
「いえ、彼女はいないんですよ」
「意外だなぁ。見た目は結構良いのに、彼女なしか」
 これはまずい。旦那さんはかなり警戒心を強めている。早まったか。どうにかしないと、奥さんに近づく機会がなくなる。
「その、何て言いますか……女の子と付き合うっていうのに興味がないんですよ」
「……ほう」
 旦那さんの態度が少し軟化した気がする。ここで畳みかける。
「いや、ホモとかじゃないんですよ、別に。ただ、僕、学生にしてはお金持ってる方じゃないですか。そのせいで色々ありまして……僕と付き合ってくれる女の子はみんなお金目当てなんじゃないか、と。それか、デイトレーダーが珍しいから、肩書きに寄ってきてるんじゃないかって」
「だから、女はもう懲り懲りってことかな」
「まあ、それもあるんですけど、元々、そういう付き合いって好きじゃないんですよ。トレードしたり、本を読んだり、体を鍛えたりしてる方が楽しいって言うか……」
「自分のためだけに時間を使いたい?」
「そう、それです」
「そうか……でも、それだったら、何で愛美に教えてくれる気に?」
「さっきもちょっと言いましたけど、デイトレーダーが増えると僕としては嬉しいんです。デイトレーダーが増えれば、デイトレも市民権が得られて、珍しい物を見るような目で見られることもなくなりますから。そのための先行投資ですよ」
「なるほどねえ。デイトレの世界にも色々あるんだなぁ」
「そうなんですよ。まあ、ゴルフやってる人が、これから始めようって人に、気前よく高いクラブをあげちゃうようなのと同じだと思ってください。同好の士が増えると嬉しいんですよ」
「そうかい……まあ、そういうことなら、愛美に教えてやってくれると嬉しいな。どうだい、やってみないか、愛美」
「そう、ですね……家計の足しにもなりますし……佐藤くんの迷惑にならないようでしたら……」
「その点は大丈夫ですよ。大学や道場がない時は大抵家にいますから。来る時は事前に連絡してこっちの都合さえ確認して貰えればオーケーです。明日からでもいいですよ」
「そう……なら、お願いするね、先生」
 奥さんが穏やかに微笑んだ。清純過ぎて犯したくなる笑顔だ。
「先生ですか?」
「だって、教えて貰うんだもん」
「佐藤先生か。こりゃあいいな」
 大分酔いが回ってきた様子の旦那さんが、何がツボにはまったのか、楽しげに笑い出す。
「そうそう、ところで佐藤先生は道場がどうとか言ってたけど、何か格闘技でもやってるの? よく見れば、腕なんか凄く筋肉ついてるし……背は俺よりちょっと高いくらいなのに、腕の太さがまるで違うなぁ」
「ちょっと軍隊格闘術系の護身術を齧ってます」
「へえ、何だか物騒だね」
「デイトレで大金持ちになった時に備えて実戦的な奴を訓練してるんですよ。お金持ってると危ないですからね。ほら、この前も、どっかの社長の家に強盗が入ったって、ニュースでやってたでしょう?」
「用心深いんだな、佐藤くんは。あ、だからデイトレで儲けられるのかな?」
 こんな調子で隣人宅での時間は過ぎていった。




 翌朝、既に習慣と化した朝風呂から上がった頃に、早速、奥さんから電話がかかってきた。
 内容は、今からレッスンを受けに行ってもいいか、というものだった。
 勿論オーケーした。
 電話を切った時、激しく勃起していた。パンツの中が我慢汁で汚れるほどに欲情した。今から奥さんを俺の家、即ち俺の縄張りに招き入れるのだと思うと、それだけで興奮せずにいられなかった。
 もっとも、初日から手を出すような馬鹿な真似はしない。最初の内はどこまでも真面目に、下心など欠片も感じさせず、紳士的に、事務的に振る舞う。充分に警戒心が解け、互いの心理的距離が縮まるまでは、物理的な接近は厳に慎むのだ。急がないと初産に割り込めなくなるかもしれないが、そのために股を開かせるのに失敗しては元も子もない。
 しかしながら、何のアクションもイベントもなく時を過ごしていては、いつまで経っても先に進めない。時にはこちらから揺さぶりをかけ、俺が男であることを意識させる必要がある。




 愛美さんがデイトレを始めてから二ヶ月ばかりが過ぎた。
 勿論、何の問題も起こっていない。二ヶ月続けて黒字だったことは隣人夫妻の信頼を勝ち取るのに充分だったし、人妻が若い独身男の家に入り浸ることへの勘繰りも、寝取られ夫内定者、お人好しの旦那さんが思わぬ副収入に喜んでいたこと、それと町内井戸端会議のボス的存在である田中の婆さんが俺のことを「立派な学生さん」と評価していることによりあっさりと消え去った。田中の婆さんは、俺に対する悪評が出ると、素早く火消しに回ってくれるのだ。
 そして今日、そうしてじっくりと熟成させてきた状況に揺さぶりをかけるつもりだ。
 まずはいつものように愛美さんを家に迎え入れる。
 その後、今日は朝風呂に「入り忘れていた」ことを思い出す。
 愛美さんに、いつも通りの習慣を変えるのは気分が悪いからと言って、愛美さんが食器を洗ってくれている間にシャワーを浴びる。
 その後、「うっかり」いつも通りに裸のまま家の中を歩き回ってしまい、愛美さんに全裸を見せつけ、俺が若い男であることを再認識して貰う。
 計画としてはこんな感じであり、これは風呂から出て裸で歩き回るところまでは予定通りに進んだ。
 しかし、愛美さんに裸を見せたところで、予想外の――しかし好ましい――ハプニングが起こった。
 風呂から上がった後、全裸のまま、自然体を心掛けながらゆっくりとリビングに向かう。リビングでは愛美さんが皿を洗っているはずだ。
 リビングに入ると、案の定、愛美さんはいた。こちらに背を向け、皿を拭いている。新妻風のエプロン姿が情欲をそそり、チンポが硬く立ち上がりかけるのを気合いで抑え、平常時に戻ったところで、いかにも驚いた風な声を上げる。
「えっ……きゃあっ!」
 何事かと振り向いた愛美さんが俺の姿を見て黄色い悲鳴を上げる。
 ここまでは予定通りに運んだ。問題はこれからだ。
 愛美さんの手から皿が滑り落ち、フローリングに当たって割れた。
 愛美さんはすぐに屈み込み、破片に手を伸ばした。
「あっ……ご、ごめんなさい、お皿が……」
 俺はこの状況を最大限利用することにした。すぐさま駆け寄り、愛美さんの手を押さえる。
「ああ、大丈夫大丈夫。愛美さんが怪我したら大変だから、僕がやっとくよ」
「で、でも……」と何かを言いかけ、愛美さんの動きが停まった。驚きの表情で一点を見ている。
 視線の先は勿論俺の股間だ。上手い具合に姿勢を調整し、丁度愛美さんの鼻先にチンポがぶら下がるように仕向けたのだ。
 愛美さんは悲鳴を上げて顔を背けたが、その実、興味津々のようで、ちらちらと俺の股間を盗み見ている。
 俺のは所謂「ウタマロ」、それもよく使い込まれた業物だ。長く、太く、硬く、雁高で、百戦錬磨を示すように黒ずんでいる。また玉袋の方も狸のように大きく、重たげにぶら下がっている。この竿と玉を見て平然としていた人妻はいない。男の味を知る女は必ずこれに興味を示す。遊んでいる女ならばこいつをちょっと見せるだけで股を開くこともある。「試してみたい」のだそうだ。
 愛美さんが唾を呑み込む様子が見えた。やはりこの人も例外ではなかったようだ。ただ、流石に貞淑な奥様である愛美さんは、他のビッチ共とは違い、試してみたいなどとは言い出さない。
 少し面倒臭い気もするが、そういう人妻だからこそ落とした時の喜びも一入と言える。それにしても、人妻が自分のチンポに関心を示してくれた事実は興奮を誘う。
 危うく勃ちそうになってしまったので、こちらが全く気づかずに裸を晒しているという設定上、それはまずい。
 白々しく訊く。
「あれ、愛美さん、どうかしたの?」
「あ、あの……服! 服、着て!」
「え? 服? ……ああっ、うわっ、ちょっ、俺何やってんだ!? ……ああっ、ごめんね、愛美さん。いつも風呂上がりはこうだから、つい、癖で……」
 慌てた風な声を上げて股間を隠し、後ろを向く。心持脚を開き気味にすると、玉袋に視線を感じた。視線感知は女の専売特許ではない。見られれば男もわかるのだ。
「き、気をつけてね。私だったからいいけど、他の人だったら大変だよ」
「ごめんごめん……じゃあ、僕は服を着たらこれを片付けるから……」
「そんな、悪いよ……割ったの、私だし……あ、ちゃんと弁償するね。これ、結構高いお皿なんでしょ?」
「ああ、いいよ、そんなの。変なモノ見せた僕が悪いんだし、その皿も見かけだけで、実はそんなに高くないしね」
「そんな、変なモノだなんて……」
「え?」
「な、何でもないよっ! でも、本当にいいの?」
「いいってば。それより、僕にとっては、愛美さんが怪我しなくて何よりだよ」
「もう、口が上手いんだから……あれ、佐藤くん、そういえば、さっき、自分のこと『俺』って言ってなかった?」
「え……ああ、普段はそうなんだよ。あちゃー、地が出ちゃったなぁ……猫被ってたのに」
「それなら、もう被る必要ないよね。私、自然に接して貰える方が嬉しいから……」
 この日以来、愛美さんと俺の関係は微妙に変化した。勿論、良い方向へだ。
 この時以来、愛美さんが俺を見る目は、弟や友人を見るような目から、雌が雄を見るような色気を含んだ目に変わった。愛美さんは俺を男として意識し始めたのだ。今まではマウスを握る手に触れても大した反応を示さなかったのが、これ以降はピクピクと反応するようになったし、俺の股間や筋肉を盗み見ることも少なくなかった。更に言えば、この時のような「アクシデント」を期待しているような節もあった。
 流れは大分俺の方に向いてきたと言える。ひょっとすると、もう勝負をかけてもいい頃合かもしれない。
 だがまだ我慢だ。あともう一押し、何らかのきっかけが訪れるまでは勝負に出ない方がいい。時間をかければかけるほど初産を奪える可能性が下がるが、ここは慎重を期すべきだ。数ヶ月から半年は覚悟すべきだ。
 そう思っていたのに、転機は大体半月後くらいに訪れた。




 その日の朝、愛美さんは最初から様子がおかしかった。いつの間にか電話からメールに変わった事前連絡には特段変わった様子はなかったのだが、実際に訪ねてきた愛美さんは、全身に陰を纏っていた。
 酷く嫌なことがあったような、酷く落ち込んでいるような、そういう状態だ。
 口先では「体調が悪いなら無理しないで帰った方がいいよ」などと言いつつも、実際は素直に帰す気など欠片もなかった。相手が弱っている時を狙うのは基本中の基本だ。傷心の女はちょっと優しくしてやるだけで簡単に落ちる。
 今日ここで一気に攻め込むことにした。
「大丈夫だから……」と言う愛美さんをリビングに通してソファーに座らせ、隣に腰を下ろす。最初の頃は向かい合って座っていたのが、今ではちょっと手を伸ばせば肩を抱けるような近距離だ。愛美さんも大分俺に気を許し、しかも、少なからず関心を持ってくれているらしい。嬉しい限りだ。
「愛美さん、何だか落ち込んでるみたいだけど、何かあった?」
 おおよその見当はついている。隣人夫婦は、一昨日から昨日の夜まで、旦那さんの実家に行っていた。その時に何かがあったのだろう。
「……私、一昨日と昨日、大輔さんの実家に伺ってたの。そこで、お義母さんに、子供はまだか、子供の産めない嫁なんていらない、って言われて……」
 ありがちな話だ。息子の嫁を子を産む道具としか思っていない姑は多い。そうやって早く子を産めとせっついて嫁にストレスを与え、俺のような人妻狙いの男に援護射撃をする姑は。
「あの……佐藤くんになら話してもいいかなって思うから……家の中のことなんだけど……もし迷惑じゃなかったら、聞いてくれない?」
「いいよ、俺でよかったら相談に乗るよ」
 遂に相談がきた。人妻から家庭内の悩み事を打ち明ける相手として選ばれるだけの信頼を得たなら、裸にするまであと一息だ。
「ありがとう……あのね、私達、結婚して二年も経つのに、まだ子供が出来ないの。色々と試したんだけど、何だか私達って子供が出来にくいみたいで……」
「そうなんですか……」
 こういう時は精々深刻ぶり、いかにも同情しているような顔で一言二言相槌を打つのが正解だ。女はこういう時、ただ話を聞いて同意して貰いたいだけなのだ。解決策を教えて欲しいわけではない。
「多分、私かあの人のどっちかか、両方に問題があると思うんだ……だから、あの人に、一回不妊治療を受けてみようって言ったの。なのに……」
「……なのに?」
「あの人、そんなみっともないことできるかって……お義母さんに色々言われて、私がどんなにつらい思いをしてるのか知ってるはずなのに……」
 愛美さんは言葉を切ったが、これは相槌を待っているのではなく、次の言葉を考えているのだ。ここは何も言わずに待つべきだ。
「……ねえ、佐藤くん。随分前に、私が倒れた時のこと、憶えてるかな?」
「そりゃ勿論ですよ。隣の奥さんが庭で倒れてたんですから。田中さんとこのお婆ちゃんも来て騒いでましたし、忘れようったって忘れられませんよ」
「そう、憶えててくれたんだね……あの時、私とあの人、妙な雰囲気だったと思わない?」
「え? まあ、その、そうですね。何だか、喧嘩してたみたいな……」
「……その前の日なんだ。不妊治療の話をしたの。お義母さんからお叱りの電話があって、耐えられなくなったから、どうにかしないとって思って……でもあの人はみっともないから嫌だって……多分、それでストレスが出たんだろうと思う」
 愛美さんは俯いた。肩を震わせている。泣いているのだろう。
 なるべく自然な感じで背中に触れた。柔らかく温かな感触と共に、ブラジャーの紐の硬い感触が指先に伝わる。
 一瞬、愛美さんの体が驚いたように強張ったが、子供をあやすように背中を撫でてやると徐々に強張りも解れ、されるがままとなった。
 優しげな声で語りかける。
「ねえ、愛美さん、子供ができなくて、つらいんでしょう?」
 愛美さんが無言で頷く。
「赤ちゃんが出来たら、そのお義母さんとも仲良くなれる。お義母さんの酷い言葉を聞かなくて済む。そうですよね?」
 また頷く。
 ここで勝負に出る。さりげなく肩を抱いて距離を縮め、囁くように言う。
「だったら、俺とエッチしてみませんか?」
「えっ……!?」
 愛美さんが驚いたように顔を跳ね上げる。
「もし子供が出来ない原因が愛美さんにあったら無駄ですけど、旦那さんのせいだったら……俺とエッチすれば子供が出来て、悩みが解決するかもしれませんよ」
「そ、そんなの……できるわけ……私、結婚してるし……あの人のこと愛してるし……」
 愛美さんは俺を拒んでいると言うよりは自分に言い聞かせているようだった。
「……愛美さん、俺の赤ちゃん産んでよ」
「そ、そんなの、だ、駄目だよ……いけないよ、そんなの……」
 そう言って肩に回した手に触れるが、振り払う素振りはない。この分なら、このまま押せばいけるだろう。
 だが俺の勢いに圧されて、というのは後々のことを考えるとまずい。決断はあくまでも人妻側が下すのだ。自分から俺に身を投げ出したという言い訳しようのない事実が大事なのだ。そうなって初めて、人妻は本当の意味で俺のものになる。
 肩を離し、立ち上がる。
「……なんてね。冗談だよ、愛美さん。愛し合ってる夫婦の中に割り込もうなんて思わないよ」
 俺は愛美さんの言う「愛」を信じない。本当に愛し合っている夫婦であれば、その間には間男が入り込む余地などないのだ。それなのに俺がこうして割り込みつつあるのだから、それはつまるところ、二人の愛情にヒビが入りつつあるということだ。
「あっ……そ、そう。そうだよね、冗談だよね……もう、そういう冗談は良くないよ!」
 ほっとしたような、同時にどこかがっかりしたように、愛美さんがぷっくりとした唇を尖らせる。
「ごめんごめん。もうしないから許してよ……さあ、もうお喋りはこれくらいにして、トレード始めよう」
 こうして今日、愛美さんに決定的な楔を打ち込んだ。後はこれが効果を発揮するのを待つだけだ。



 楔を打ち込んだ翌朝の九時ちょっと前頃、愛美さんから電話がかかってきた。最近はメールで済ませることが多いので、電話越しで話すのは久しぶりだ。
「はい、佐藤です」
「もしもし、安藤です。今から……い、今から、そっちに行っても……いいかな?」
 今日の愛美さんの声はどうもいつもと違う感じだ。微妙に震えているし、奇妙に強張ってもいる。
「ええ、いいですけど……」
「ありがとう」
「それはいいんですが、あの、どうかし――」
「そ、それじゃあ、また後で!」
 電話は強引に切られた。一体何だったのだろうか。
 単に昨日の「冗談」のせいで妙に俺を意識しているだけか、それともそれ以外の理由で緊張しているのか。果たしてどちらなのだろうか。
 数分後、玄関のチャイムが鳴った。愛美さんが来たのだ。いよいよ疑問の答えがわかる。
「お、お邪魔します……」
「……愛美さん、何だかいつもと雰囲気違うね。何かあったの?」
 愛美さんの表情は酷く強張っている。そこからは緊張と不安の色が窺える。
 愛美さんはぽつぽつと話し始めた。
「……昨日、帰った後、お義母さんから電話があったの」
「……それで」
「子供が産めないなら家から追い出すとか、大輔さんと別れて貰うとか……」
「酷いね……」
「大輔さんに言っても、子供が出来れば何とかなるからって……ろくに話も聞いてくれなくて……」
 涙で潤んだ瞳で俺を見る。
「佐藤くん……昨日の、冗談……あれ、本気にしちゃっても、いいかな?」
 来た。愛美さんは陥落した。後はモノにするだけだ。
 それにしても、覚悟していたより随分と早い。これも旦那さんと姑の援護射撃のおかげだ。ありがたい。
 愛美さんの肩に優しく手をかけ、ゆっくりと抱き寄せる。
 愛美さんは俺の手が触れた時、怯えたように身を強張らせたが、抵抗せずに俺に体を預けてきた。
 服越しに柔らかい体温が伝わってくる。豊かな胸の脂肪越しに高鳴る鼓動も感じられる。
「俺の方こそ、いいの? 俺なんかが愛美さんとなんて……」
「……もう、あの家は地獄なの。赤ちゃんが出来なきゃ、駄目なの……でも、あの人とじゃ赤ちゃん出来ないから……最近知ったんだけど、あっちの家、無精子症の人が何人かいたみたいなの。だから、きっと、あの人も……」
 旦那さんはそのことを知っているのだろうか。きっと薄々感づいているのだろう。だから、その危惧が確定されてしまうのが怖いから、頑なに不妊治療を拒んだのだ。シュレディンガーの箱を閉じたままにして、どちらつかずの曖昧な状態のまま、自分をごまかしたかったのだ。
 真実を恐れるその臆病さと、姑から妻を守る義務を放棄したその怠慢。
 これらは世間一般の尺度では非難されるべき罪だろうが、俺にとってこれは絶大な功績だ。何しろ、そのおかげで愛美さんが俺に体を開こうとしているのだから。
 いずれにせよ、本人にその自覚があるのなら、俺が安全に愛美さんをいただくために手を打たねばならない。
「……わかった。でも、本当に、俺でいいの?」
 愛美さんが俺の背中に手を回し、体を押しつけてきた。
「……佐藤くんがいいんだよ」
「……俺も覚悟決めました。愛美さん、俺の赤ちゃん産んでください! 今度は冗談なんかじゃないよ。本気だ」
「……うん、産むね。私、佐藤くんの赤ちゃん、産むよ」
 愛美さんの温かい体を抱き締めながらほくそ笑む。これでこの人は俺のものだ。
「じゃあ、早速しようか。ちゃんとベッドでしようね、愛美さん」
「あの、その前に……シャワー、浴びさせて。本当は家で浴びてくればよかったんだろうけど……踏ん切りがつかなくって……」
「ああ、気にしないで。どうぞどうぞ。俺はさっき浴びたばかりだから、リビングで待ってるよ。バスローブとバスタオルは後で出しとくから、もう入っちゃっていいよ」
 愛美さんを浴室に向かわせた後、バスローブとバスタオルを持って続く。
 脱衣所兼洗面所の扉を叩く。
「愛美さん、今開けても大丈夫?」
「いいよ……」
 扉を開けると、服を着たまま、緊張の面持ちで愛美さんが待っていた。
「これがタオルで、こっちがバスローブね。服は畳んでこの籠に入れて、上がったらベッドまで持ってきて。誰か来たらすぐに着られるようにしとかないとまずいからね」
 バスタオルとバスローブを渡し、さっさと脱衣所を出る。本当は体の洗いっこなどもしたいのだが、それはまた後の楽しみに取っておく。最初から全てを掴むのは無理なのだ。何事にも順番というものがある。




 リビングで『君主論』を読み返しながら待つ。
 マキャベリは説いている。
 他人の女に手をつけることは、強い憎しみを招くことになるので、君主たる者は慎むべきだと。
 他人の女を寝取って密かに妊娠させることを生き甲斐にしている俺は、あの偉大な十五世紀の軍事思想家に言わせれば君主失格だろう。
 そんなことを考えていると、微かな熱気と石鹸の香りが漂ってきた。
 扉を開け、恥ずかしげに姿を現した愛美さんは、きっちりとバスローブの前を合わせている。こういう慎ましさは好感が持てる。こういう人妻が操を捧げてくれるから興奮するのだ。
「早かったね」
 まだ三十分も経っていない。
「あんまり待たせたら悪いから……」
 恥ずかしそうに身を縮こまらせながら目を伏せる。
「そんなこと気にしなくていいのに」
 そう言いつつ、まだ仄かに湯気が立っているように見える愛美さんの体を観察する。
 男の欲望を刺激するためにあるような体だ。ゆったりとしたバスローブは、本来、体の線が出にくいものだが、愛美さんの場合は、豊満な胸やむちむちとした肢体のおかげで、酷く肉感的な曲線を浮かび上がらせている。遂にこの胸が俺のものになるのかと思うと感無量だ。
 艶々とした黒髪は乾いている。首から上は洗わなかったのだろう。
 顔やバスローブから覗く綺麗な肌は薄らと火照り、仄かに汗ばみ、男を誘う香りを発散している。
「ベッドに行こう」
「……うん」
「籠、俺が持つよ」
 服が入った籠を受け取ってから、愛美さんの腰に手を回し、体を押しつけるようにして、寝室にエスコートする。風呂上がりの女特有の石鹸と体臭の入り混じった香りが鼻をくすぐり、湯たんぽのような温もりが肌に伝わる。
 腰や腿、腹などを撫で回すが、愛美さんは抵抗しない。微かな吐息を漏らし、ピクリピクリと反応しつつも、されるがままになっている。
「きゃっ!」
 寝室に入った途端、俺は愛美さんを抱き締めた。
 そのまま唇を奪おうとしたところで、愛美さんの手が邪魔をする。
「あの、キスは……」
「旦那さんのため?」
「……ごめんなさい」
「いいんだよ、愛美さん」
 申し訳なさそうに俯く愛美さんの額に口づけ、体を離す。
「これで我慢するよ。それより、バスローブ、俺が脱がせてもいいかな」
「……いいよ」
 胸の前で組み合わせていた手を下ろし、緊張の面持ちで、生贄に捧げられた巫女のように目を閉じる。
「じゃあ、いくよ」
 合わせ目から、メロンのような肉の塊が姿を現すことを想像しながらバスローブの紐に手をかける。
 出てくるのは一体どんなおっぱいだろうか。形は整っているだろうか。肌は綺麗だろうか。乳輪や乳首は大きいだろうか。小さいだろうか。色は薄いだろうか。濃いだろうか。
 そんな期待感を膨らませながら紐を解き、前を解放し、俺は軽い失望を感じる破目となった。
「あ……下着、つけてるんだね」
 今まで服の上から妄想するしかなかった素晴らしい豊満な体は、しかし、この期に及んでもその全てが俺の前に開かれたわけではなかった。愛美さんの体は、レースとフリルで飾られた純白の下着に守られていた。
「ごめんなさい、下着なしだと落ち着かなくて……つけない方がよかった?」
「その方が好みだけど、可愛い下着を見られたから、これはこれでいいね」
「そ、そう? 可愛いのを選んできてよかったな……」
 そう答えると、愛美は照れ臭そうに顔を綻ばせた。凄く可愛い。六歳も上だとは思えない。
 少し照れ臭くなったのを軽口でごまかす。
「でもその下着、何だかウェディングドレスみたいだね」
「ウ、ウェディングドレス……?」
 愛美さんは赤面してバスローブの前を合わせてしまった。
「そうだね、ウェディングドレスみたいだ。凄くやらしくて可愛い」
「は、恥ずかしいよ……」
「可愛いよ。下着も、愛美さんも。さあ、脱がすよ、手をどけて……」
 手を下ろさせ、バスローブを肩から滑らせて落とす。下着だけを纏った愛美さんの体が露わになる。
「隠さないで」
 胸元と股間に向かおうとする手を押さえる。手から力が抜けるのを確認してから離し、一歩下がって全身を舐めるように眺める。
「そんなに見ないで。あんまりスタイル良くないから、恥ずかしい……」
「そんなことないって。愛美さんはスタイル良いよ」
「嘘……だって、私、お腹にお肉ついてるし、おっぱい牛みたいだし、垂れてるし、お尻大きいし、脚太いし……」
 確かに愛美さんの腹はぷよぷよしている。おっぱいも雌牛のように大きい。ブラジャーをしているので垂れているかどうかはわからないが、それだけ大きければ多少は垂れもするはずだ。尻は丸い安産型で、触り心地が良さそうで魅力的だ。バックで責めると気持良さそうだ。脚については、むちむちとした太腿が欲情を駆り立てる。
 こんなにも男の欲望を掻き立て、受け止めるためにあるような肉体はそうはない。大輔さんがこれを好き放題にしていたのだと思うと嫉妬と怒りが込み上げてくるが、同時に、今日からその立場が俺に移るのだと思うと、優越感と興奮が湧き起こってくる。
「女の人はそれくらい肉がついてた方が健康的で良いよ。それに、そんなに大きいおっぱいなら、少しくらい垂れたってしょうがないよ。むしろ垂れない方がおかしいんだから」
「そ、そうかな……えへへ、お世辞でも嬉しいな」
「お世辞なんかじゃないって……ところでさ、愛美さん、そのおっぱい……何カップなの?」
 答えは消え入りそうな小声で返ってきた。
「ジ……G」
「凄いなぁ」
 危うく「Gの人なんて初めて見たよ」と口走りそうになってしまった。こういう時、他の女の話題は禁物だ。
「も、もう、やめてよ……それより、私だけ裸なんて恥ずかしい……」
「俺の裸見たいの?」
「あう……そ、そういうことじゃなくてね、その……」
「うん、ごめんごめん。俺も脱ぐよ」
 手早く服を脱ぎ捨て、パンツ一丁になる。パンツの中ではチンポが痛いほどに膨れ上がり、生地が裂けてしまいそうなほど大きなテントを張っている。その上、我慢汁が沁み出して生地の色を濃くしてもいる。
 股間に視線を感じた。愛美さんが茫然と凝視している。
「愛美さん?」
「あっ、えっと……」
「俺のチンポ気になる?」
「そ、そんなこと……」
「そういえば、随分前に風呂から裸で出ちゃった時も、俺のチンポ見てたよね」
「み、見てないよぅ。意地悪なこと言わないで……」
「そうかな。ところで、お願いがあるんだけど」
「お、お願い?」
「愛美さんにパンツ脱がして欲しいなぁ」
「わ、私が脱がすの?」
「うん。ほら、お願い」
 愛美さんの前まで寄り、手を取ってパンツのウエスト部分に誘導する。その後、膝立ちになるように促す。
 膝立ち――丁度僕のテントの前に顔がくる姿勢――になった愛美さんがごくりと喉を鳴らす。
「わ、わかったよ……い、いくね」
 半ば顔を背けるようにしながら、ゆっくりと俺のパンツをずり下ろしていく。
 途中でチンポが引っかかり、上手く下がらなくなり、困った風に見上げてくる。
「ちょっと手前に引けばいけるよ」
 俺の指示通りにした愛美さんは「わわっ」と慌てた声を出した。拘束から解放されたチンポが勢い良く飛び出したからだろう。チンポは反動で大きく跳ね上がって下腹に当たり、そのまま停まる。
 目の前にチンポを突きつけられた愛美さんは、目を瞬かせながら、茫然と固まっている。
 ずり下げられたパンツから足を抜きながら笑いかける。
「どうしたの? 俺のチンポ、何かおかしいかな?」
「へっ!? い、いえ、そうじゃなくて……うう……あ、あの人のと全然、違うなって……」
「どう違うの?」
 夫や彼氏と比べさせるのは楽しい。寝取りの醍醐味の一つだ。より優れた情報で女を上書きしていくことは、筆舌に尽くしがたい興奮と快楽をもたらすし、寝取る上で不可欠でもある。
「い、言わなきゃ駄目?」
「教えてくれたら嬉しいなぁ」
「あうぅ……わ、わかったよぅ……」
「ありがとう。で、どこがどう違うの?」
「あ、あのね、まず、あの人のより、お、おっきいの」
「どれくらい?」
「あの人の倍……くらいかな」
「いやあ、いくら何でも倍はないでしょ」
 流石にそれはないと思う。それでは大輔さんのチンポは十センチにも満たない短小ということになる。やはり俺のが実際以上に大きく見えているか、大輔さんのが実際以上に小さく思えているかのどちらかだろう。
「で、でも大きいよ……こ、こんなの、入るのかな……」
 不安そうに俺の顔を見る。
「大丈夫だよ。赤ちゃんよりは小さいし。で、他には?」
「でも……あ、先っぽの形が……あの人のはそんなでもないのに……佐藤くんのは、茸みたいになってて、おっきい」
「雁高って言うんだよ。こういう形だと、中で引っかかって気持ち良いんだ」
「き、気持ち良いの?」
 オウム返しに言い、愛美さんが雁首に熱っぽい視線を注ぐ。
「うん。楽しみにしててね。で、もう違いはないの?」
「あと……皮がない……あの人のは、いつもは頭の部分に皮が被さってて……」
「大輔さん、火星人なんだ」
「え、火星?」
「ああ、仮性包茎の人ってこと。他にも何か違いあるかな?」
「うーん……もうそのくらいかな、多分……ごめんなさい、よくわからないの……」
「あ、いいよ、気にしないで」
「……でも、私、他の人のって、お父さんの以外だと初めて見るんだけど……男の人のって、人それぞれで違うんだね」
「……え? それってもしかして……今までエッチしたの大輔さんだけってこと?」
 愛美さんは恥ずかしそうに顔を伏せた。
「け、経験が少なくてごめんなさい……」
「謝ることなんてないよ。俺、経験少ない人も好きだし。色々と教えるのが楽しいし、『数少ない一人』とか『あなただけ』に男は弱いんだ」
「そ、そうなんだ……そういえば、コンピューターのこととか、デイトレのこととか、楽しそうに教えてくれてたよね」
「うん。人に物教えるの好きなんだ。さて、それじゃ次は……」
「あ、ま、待って!」
 突然声を上げた愛美さんは、一大決心をしたかのような顔をしている。
「え? どうかした?」
「さ……触ってみていいかな?」
 顔を真っ赤にし、目を固く瞑っている。恥ずかしさを堪えているのだ。
「触る? ……何を?」
 あまりにも可愛らしいのでついいじめたくなってしまった。
「そ、そんなぁ……」
「言ってくれないとわからないよ」
「あの……あそこを、ね……」
「あそこって?」
「う、ううぅっ……意地悪しないで……」
「お、おち、おちんちん……を」
「愛美さん、俺のチンポ触りたいんだ?」
「うう……」と唸り、愛美さんが拗ねたように唇を尖らせる。
「ごめんごめん。触りたいんでしょ? いいよ。でも、デリケートだから、優しくね」
「う、うん……」
 眠る毒蛇に触れるような慎重さで、恐る恐るといった風に手を伸ばしてくる。
 むちむちした体に似合わない華奢な指先が触れた。しっとりとした刺激にチンポが跳ね上がる。
「きゃっ! もう、脅かさないで……」
「そんなこと言われても無理だよ。気持ち良いとそうなっちゃうんだから」
「き、気持ち良かったの?」
「うん。もっと触ってよ」
 再びおずおずと指先を伸ばしてくる。指が触れるとチンポが跳ねるが、今度は遠慮がちにつつき続ける。
 安全を確かめるようにつついた後、愛美さんはゆっくりと俺のチンポを握った。しっとりとした温かい掌に包まれ、俺は興奮の吐息を漏らさずにいられなかった。
「あっ、痛かった? 大丈夫? ごめんね」
「ううん、気持ち良かったんだよ。気にせず続けて」
「うん、わかった……わ、わぁ、こんな手触りなんだ……硬くて熱い……」
「え? もしかしてチンポ触るの初めて?」
「……あの人は触らせてくれなくて……お前はそんなことしなくていいって……」
「大輔さん、潔癖なのかな」
「わからない……でも、きっとそうね」
「そっか。なら、好きなだけ触ってよ。俺も愛美さんみたいに綺麗な人に触って貰えると嬉しいし」
 俺はベッドの縁に浅く腰掛けて脚を開き、愛美さんが好きなようにチンポと袋を弄れるようにした。
 脚の間に座った愛美さんは、スケベ椅子に座った客に奉仕する風俗嬢のように手を伸ばしてきた。気恥ずかしさと好奇心の入り混じった顔をして俺のチンポを弄り回している。愛撫ではなく観察であるため、何とももどかしい感覚に襲われる。物足りないのだ。
「あ、あれ……先っぽ濡れてる……精液……じゃないよね」
 指先とチンポとの間で糸を引く粘液を不思議そうに見つめている。
「それはカウパー氏腺液って言うんだ。普通はそんなお堅い名前じゃなくて、我慢汁とか先走りなんて言うんだけどね。愛液みたいな物だよ。男も興奮すると濡れるんだ」
「や、やっぱり、私で興奮してくれてるんだよね?」
「うん。愛美さん、凄く良い体してるから、見てるだけで興奮しちゃうよ」
「そっかぁ……嬉しい……かも」
 頬を染めて微笑みつつ、手はするすると下へと滑り、玉袋に触れる。
「わっ、そ、そこは本当にデリケートだから、気をつけてよ」
 ここばかりは鍛えられない。男が男である限り、永遠に急所であり続ける場所だ。ぎこちない手つきで急に触られると流石に怖い。
「き、気をつけるね!」
 生真面目な返事と共に、怖々と俺の玉袋に触れる。下から掌を当て、ぽよぽよと撫でている。
「わあ……ぷよぷよしてる……あ、本当に袋みたいになってて、中に玉が入ってるんだね……」
 やはり物足りない。もっと揉んでみるとか、舐めてみるとか、そういうことをして欲しい。
 もっとも、揉むのはともかく、口の方はまだ要求するつもりはないが。今日はとにかく俺を受け容れさせることを優先する。俺の情報を大輔さんが刻んだ情報に上書きする。それだけだ。
 しばらくチンポで遊んでいた愛美さんだったが、俺がじっとその様子を見下ろしているのに気づき、赤面しながら手を離した。
「あっ、ご、ごめんなさい。初めて触るから、夢中になっちゃって……」
「いや、いいよ、愛美さんの気の済むまで触ってよ」
「ううん、もう気が済んだから……それに、私が、その……お……おちん……を触りたいって言った時、何かしたいことがあったんでしょう? 私はもういいから、佐藤くんのしたいことをして」
「そう? なら、もう一歩進もうか。下着を脱がしてあげたいんだけど、いい?」
「……うん。いいよ。はい」
 愛美さんは小さな声で答え、注射を待つ子供のような顔で立ち上がった。
「ブラ取るよ。これ、フロントホックの奴?」
「そうだよ……大丈夫? 外すのにちょっとコツがいるんだけど……私がやろうか?」
「ああ、大丈夫大丈夫。このタイプならわかるから」
 深い谷間の中央で、押さえつけている物の圧倒的な質量に圧されて悲鳴を上げているホックに指をかけ、さっと取り外す。圧力の均衡が崩れて純白の左右のカップが垂れ下がり、夢にまで見た巨乳がまろび出る。
「おおっ」と思わず歓声を上げてしまった。
 その声と、圧迫されていた胸が解放された感覚のどちらに反応したのかはわからないが、愛美さんは慌てた風に両腕で見事なおっぱいを隠してしまった。
 腕の隙間から零れるおっぱいもそれはそれで堪らないものがあるが、俺としては早くその全貌を明らかにしたい。
「隠しちゃ駄目だよ、愛美さん」
 腕を取り、そっと防御を解かせる。絶景が広がった。
「愛美さんのおっぱい、凄く綺麗で、可愛くて、やらしいね」
「や、やだぁ……そんなこと言わないでよぅ」
 恥ずかしげにしながらも隠そうとはしない。
 愛美さんのおっぱいは、俺が今までに見た中でも五指に入るレベルのものだった。
 まず目に入るのはやはりその大きさだ。Gカップを生で見るのは初めてだが、これがまた圧巻だ。自然な曲線を描いて緩やかに垂れる、雌牛のように大きな肉の塊は、少し体を動かすだけで重たげに揺れる。
 親指の先ほどの乳首と五百円玉大ほどの乳輪は、共に大きめの部類に入り、やや色素が濃いが、これだけの巨乳ならばむしろバランスが取れている。形自体が整っていることもあり、吸い甲斐のありそうな乳首と全体に彩りを加える乳輪として魅力増進に貢献している。
「……そ、そんなじっと見たら恥ずかしいよ」
 愛美さんが両腕でおっぱいを隠してしまった。
「俺のチンポはじろじろ見たくせに」
「で、でも、佐藤くんの、ア、アレは……かっこいいんだからいいじゃない。私のなんて、みっともないだけだよ……垂れてるし、乳首大きいし、黒いし……」
「まだそんなこと言ってるの? 愛美さんのおっぱいは魅力的だよ、凄く。それだけ大きければそれくらいは垂れるし――垂れなかったら作り物かと思うよ――乳首もそれくらいないとバランス悪いよ。色だって普通だよ。ちょっと色が濃いけど、そんなの色黒の人の肌みたいなものだよ」
「佐藤くんは優しいからそう言ってくれてるけど……」
「もう。ほら、これが証拠だよ」
「わっ……」
 俺は愛美さんの手を取り、我慢汁でどろどろに濡れたチンポを握らせた。
「愛美さんのおっぱい見てこんなに興奮してるんだよ」
「うわ、うわぁ……凄い、さっきより硬い……かな?」
「うん。もう触りたくてしょうがないんだ。触っていい?」
「……うん。いいよ。好きなだけ触って」
 俺は言葉の代わりに行動で返事をした。重たげなおっぱいに手を伸ばし、掌で下から触れる。
「うおぉ……」
 その重量感は感動物だった。吸いついてくるような肌は温かく、少し持ち上げてみるとずしりと重く、決して小さくはない俺の掌から零れ落ちる。
「うっ……んっ……もっと強くしても平気だよ」
 感触を確かめるために軽く揉んでみると、許可の形でのおねだりが来た。お言葉に甘え、力強く揉みしだく。
「んっ、な、何だか、胸の辺りが温かくなってきた……」
 心地良さそうに感想を述べる愛美さんには悪いが、そろそろ我慢の限界なので、誘惑に負けて乳首に手を出す。
「ひゃっ! もう、いきなりだとびっくりしちゃうよぅ……」
 乳首を摘まんで軽く力を加えると、愛美さんの体がびくりと震えた。捏ね繰り回してやると、くねくねと身を捩じらせて悶える。素晴らしい眺めだ。やはり快楽に悶える女は美しい。
「おっきくなってきたね、乳首」
「そ、そんなこと一々言わないでよぅ、佐藤くん……」
「凄く吸いやすそうな形だ。吸っちゃうね」
「えっ、あっ、やだ、そんなぁ……」
 顔を埋めて――比喩でなく本当に埋まった――乳首に吸いつき、唇、舌、歯を駆使して、軟らかいグミのような乳首を堪能する。左を味わったら右、右を味わったら左と、交互に吸い立てる。
「ふっ、うっ、もう、そんなに吸っても、何にも出ないよ?」
 俺の頭に手を回し、赤ん坊でも相手にするかのように撫でながら、愛美さんが熱い吐息混じりに笑う。
「予行演習だよ。一年くらいしたら牛みたいに沢山出るようになるんだから。初乳は赤ちゃんに譲るけど、出なくなる前に俺にも吸わせてよ?」
「う、うん……赤ちゃん、出来たらね。吸っていいよ」
 それからしばらく俺は母乳の出ないおっぱいを吸い続けた。
 おっぱいが俺の唾液でべとべとになった頃、ようやく俺は顔を離した。
「愛美さん、おっぱいはこのくらいにしようか。ほら、横になって」
 愛美さんの腰を抱き、そっとベッドに誘導し、仰向けに寝かせた。重量に従って左右に柔らかく広がるおっぱいを恥ずかしげに隠す愛美さんの上に、体を腿で挟むように覆い被さる。
「じゃあ、そろそろ始めるよ」
 首筋にキスした後、そのまま胸元へと唇を滑らせ、また一頻りおっぱいを嬲る。愛美さんの体が温まってきたのを確認してから、ふくよかな腹部に顔を埋める。
「お、お腹は恥ずかしいよ、佐藤くん」
「柔らかくて気持ち良いよ」
 撫で、舐め、吸う。そのたびに愛美さんの体が震え、微かな喘ぎが漏れる。仕上げに臍を舌で穿ってやると、遂に耐えきれなくなったようで、身を捩じらせた。
 そして、臍の次は、遂に禁断の領域の攻略開始だ。
 視線を向けると、純白のパンツの股間部分が湿っていた。色が濃くなっている。
「……愛美さんも興奮してくれてるんだね。濡れてる」
「ええっ!? やだぁっ、そんなの見ちゃ駄目ぇ」
 咄嗟に隠そうとする手を押さえ、太腿から尻にかけてを撫でた。
「愛美さん、お尻上げて」
「え? 何で? えっと……こうかな?」
 愛美さんが重たげな尻を微かに浮かせる。
「そうそう。じゃあ、下も脱がすね」
「えっ? ええっ!? だ、駄目だよ、そっちは自分で……」
 俺がパンツに手をかけると、焦った様子で俺の手を捕まえた。
「さっき、俺が下着を脱がせてあげてもいいって言ってたでしょ。ほら、手をどけてよ」
「……わ、わかったよ……ああ、恥ずかしい……」
 赤面し、涙目になった愛美さんは、両手で顔を覆った。
「じゃあ脱がすよ」
 鼻歌混じりに可愛らしい純白のパンツに手をかけ、ゆっくりとずり下ろす。
 少し下げると、下腹部に黒っぽい物が見えた。陰毛だ。更に下げていくと、やがてそれは茂みと言えるほどの量になっていった。愛美さんは毛深い方らしい。
 太腿の辺りまで下げると、クロッチ部分が股間に張り付いている。引っ張ってみると、いやらしく糸を引きながら離れる。
 空気に晒された感覚と愛液の粘つく感覚の双方に反応したのだろう。愛美さんの体が震える。
 そこまで下ろせばもう後は流れ作業だ。そのまま無造作に足首まで下ろし、抜き取り、ブラジャーとセットにして床に置く。
「じゃあ準備するから、脚開いて」
「そ、それは本当に恥ずかしいから……」
「駄目駄目。ここでしっかりしておかないと、気持ち良くなれないよ」
 閉じようとする太腿をこじ開けつつ体を割り込ませ、閉じられなくする。
 俺の眼前では、俺のチンポを受け容れ、俺の子を産んでくれる口が、いやらしく濡れ光っていた。
 肉厚の入口は流石に既婚者らしくやや黒ずみ、形も崩れ気味で、周囲は黒々とした濃い毛に覆われているが、それでも、人妻であるにしては色も形も綺麗だと言える。
「……毛、濃いんだね。お尻の穴の方まで生えてる」
「ひ、引っ張らないでよぅ……」
「お手入れとかしないの? これだと水着とか着られないんじゃない?」
「それは、あの人が……」
「大輔さん、こういうの好きなの?」
「そ、そうじゃなくてね、そんな所の毛を弄るのは、あの……しょ、商売女みたいだから、やめろって」
「……大輔さん、潔癖って言うより堅物なのかな」
「ごめんね、こんな見苦しいの見せちゃって……あの人が嫌がるからお手入れもできなくて……」
「ううん、俺、こういうのも好きだよ。いやらしくて興奮する」
「もう、また、そんなこと言って……ひゃっ、な、何してるの!?」
「何って……舐めてるんだよ」
 話の途中で俺がマンコに舌を伸ばすと、愛美さんが身を強張らせた。
「だ、だって、そこ、お、おしっこが出る所だよ!? 汚いよ!」
「愛美さんのだもん、気にしないよ。それに、今時、これくらい普通だよ」
 愛液を舐め取り、クリトリスを舌先で嬲る合間に答える。
「そっ、んんっ、あっ、そんなっ……あっ、駄目、駄目っ……!」
「駄目じゃないでしょ、そんなに気持ち良さそうにしてるのに」
「だ、だってぇ、こ、こんなの、初めてなんだもん……あっ、くっ……」
「大輔さんは舐めたりしないんだ?」
「う、うんっ、こんな、こと、一度もしてくれ……はぅっ、なかった……あぁっ……!」
「そうなんだ。じゃあ、今日はたっぷり楽しませてあげるよ」
 愛美さんのいやらしい股間に顔を埋め、バター犬のように念入りに、丁寧に、執拗に、激しく奉仕した。
 二十分ばかり経った頃、俺は股間から顔を離した。シーツにはいやらしい匂いを放つ沁みが出来ている。
 体を火照らせた愛美さんは、荒い呼吸をしながら半ば茫然として仰向けになっている。
「愛美さん、どうだった?」
「す、凄かったよぅ……目の前がチカチカしちゃって……か、体に力が入らない……」
「満足?」
「うん……満足。凄かった……」
 熱い吐息と共に答え、だらしのない笑みを浮かべる。
「そりゃよかったよ。頑張った甲斐がある。でも、まだ満足して貰っちゃ困るよ。本番はこれからだからね」
 止まらない我慢汁でコーティングされてしまったチンポを蕩けきった肉穴に擦りつける。
「あっ、うぅっ、それ、また来ちゃう、来ちゃうよぅ……」
 クリトリスの辺りに亀頭を押しつけてぐりぐりと擦ると、愛美さんの腰が震えた。
「このくらいでそんなこと言っちゃ駄目だよ。もっと凄いことするんだから」
「あ……それ、入れちゃうんだよね……? わ、私達、セ、セックスするんだよね……?」
「そうだよ。俺達の赤ちゃん作るんだ。入れるよ。いい?」
 喘ぐような声で愛美さんが答える。
「ま、待って……」
「……どうしたの?」
 まさか土壇場で怖気づいたのだろうか。どうやってなだめよう。
「指輪……あの人に貰ったの、外すから……どこか、置くとこないかな?」
「そこのサイドテーブルの抽斗がいいんじゃないかな。しまってくるから、指輪貸して」
 愛美さんから指輪を受け取り、サイドテーブルの抽斗にしまい込む。これで邪魔者はもう存在しない。
「愛美さん……いいね?」
 愛美さんは目を瞑り、小さく頷いた。「あなた、ごめんなさい」という呟きが聞こえたような気がした。
「いくよ……」
 愛美さんのいやらしい穴にチンポを宛がい、ぐっと力を入れて沈めていく。熱く濡れた肉が纏わりつき、脈打ちながら吸いついてくる。まだ先っぽしか入っていないがわかる。締まり良し、滑り良し、吸いつき良しの、紛れもない名器だ。もう少し愛液が少なく、締めつけがきつい方が個人的には好みだが、これはこれでいい。
「あっ、ひっ、す、凄い……ね、ねえっ、佐藤くん、私のア、アソコ……裂けてない? 大丈夫?」
「大丈夫だよ。裂けたりなんかしてない。やらしく拡がって俺のに吸いついてるよ」
「も、もうっ、そんな、ことまで言わないでっ……!」
 ゆっくりと腰を進めていき、時間をかけてチンポを根元まで埋め込む。俺のはサイズが大きいから、慣れていない女を相手にする時は、最初の内は慎重に動かす必要がある。与えたいのは痛みではなく快感なのだ。
 覆い被さって柔肉を楽しみ、舌先で首筋を責めつつ囁く。
「全部入ったよ、愛美さん。どう? 俺のチンポ」
「……お腹の中、凄いよ……全部、佐藤くんになっちゃったみたい……赤ちゃん出来たら、こんな感じなのかな……あっ、こ、こんな所まで当たるの……? 嘘……やだ……こんなの、こんなの怖いよ……」
 不安と興奮の混じった声で愛美さんが震えた呟きを漏らし、抱きついてくる。
「大丈夫だよ。安心して。怖いのは最初だけだから。すぐに気持ち良くなるよ」
 抱き返し、髪と頬を撫でながら、ゆっくりと腰を動かす。最初は地ならしだ。体を密着させたまま、チンポを軸に、体全体を揺するようにして腰を捏ね繰り回す。まずは俺のチンポの形に躾け直すのだ。
「お、お腹の中、ぐりぐりされてるぅ……」
 戸惑ったような声を上げて愛美さんがしがみついてくるが、その吐息には快感の熱が籠もっている。
「愛美さん、俺の動きに合わせて力を入れたり抜いたりしてみて……」
「うん、うん、やって、みるね……こ、こう? これでいい?」
「そうそう。その調子。その方が気持ち良いでしょ?」
「……うんっ、き、気持ち良い、あっ、ふっ、んっ……!」
 十数分程度をかけて地ならしを終えたら、いよいよ本格的な抽迭の開始だ。
「愛美さん、ちょっと激しくするよ。しっかり掴まってて」
 俺の体にしっかりと手足を絡ませた後、俺は腰を大きく引き、一息に奥まで深く突き込んだ。
 愛美さんの手足に力が入り、食い縛った歯の間から啜り泣くような声が漏れた。感じているのだ。
 この分なら大丈夫だろうと判断し、本格的に腰を遣い始める。全身の神経を尖らせ、五感と体の全てで愛美さんを感じる。
「愛美さん、どう? 気持ち良い?」
「うんっ、うんっ、気持ち、良いよっ……! 佐藤くんのっ、すっごくっ、いひぃ、よぉっ……!」
「大輔さんのより? 大輔さんとするより良い?」
「そ、そんなのぉっ……」
「言わないとやめちゃうよ?」
 腰の動きを止める。
「ひ、酷いよぉっ、そんな、意地悪しないでよぅっ……」
「どっち? 愛美さん、どっちが良いの?」
「い、いじわるぅ……わ、わかってて訊いてるんでしょっ……? そんなの……さ、佐藤くんに……決まってるじゃないのぉっ……! あぁんっ、言ったから、言ったからぁ……!」
「うん、言ったね。そんなに良いんなら、もっとしてあげるよ」
 再び腰を動かす。今度は相手をイカせるための腰遣いだ。脳、子宮、心の全てを俺が与える快楽で上書きするのだ。
「あっ、あっ、駄目、駄目ぇっ、待ってっ、待ってぇぇっ、それ駄目ぇっ、き、気持ち良過ぎるのぉっ……! 良過ぎてぇ……良過ぎてっ、怖いのぉっ、あ、あぁぁっ……何これ、何これぇぇっ、来ちゃうっ、来ちゃうよぉぉぉっ!」
 奥の方に思い切り先っぽを押しつけてやった瞬間、愛美さんが絶叫し、力一杯しがみついてきた。
 密着している柔肉が震え、俺を咥え込んでいる肉穴がソープ嬢の手のようにうねって纏わりついてくる。雄の子種を搾り取るための動きが繰り広げられているのだ。
 絶頂に達した際の締めつけ以上の愛撫はこの世にない。堪らず俺も射精してしまいそうになったが、歯を食い縛り、脚の付け根に力を入れて踏ん張る。まだ出す時ではない。今ここで出して気持ち良くなってしまえば楽だが、それではこの巨乳妻から夫の情報を駆逐できない。圧倒的な、際限のない快楽を与えてくれる優秀な雄としての情報を刻み込むことによってのみ、俺はこの女の全てを奪い取れるのだ。この雄は自分に素晴らしい快楽を与えてくれる雄なのだと体に覚え込ませることが肝心なのだ。そうすることで初めて、自暴自棄からくる「一度の過ち」が「浮気」で終わらず「本気」に成長するのだ。
 愛美さんが掻き立てる射精欲の波に耐えながら、じっと愛美さんの体が落ち着くのを待つ。ほんの十数秒程度の短いその時間は、しかし、俺の感覚では長編映画を丸々一本上映できるほどの長い時間に感じられた。脳内で映画を上映したら、ハートマン軍曹の自己紹介から兵隊達が『ミッキーマウスマーチ』を歌いながら前進するシーンまでを余さず見られるだろう。
 快楽の波が落ち着いた様子の愛美さんが、上気した顔で恥ずかしそうに微笑んだ。
「凄いね……目の前が真っ白になっちゃった……私、こんなの初めてだよ」
「まだ終わりじゃないよ」
「……え?」
「だって俺まだイってないしね。愛美さんの中で出さなきゃ終わらないよ」
「えっ、ちょっ、ちょっと待って……! 私、まだイったばかりで、あっ、ひぃっ……!」
 皆まで言わせず動きを再開する。
 俺が愛美さんの中に溜まったものをぶちまける気になったのは、愛美さんが更に三回ほどイった後だった。
「愛美さん、愛美さん! そろそろ出すよ!」
 甲高い嬌声を上げ、涎と涙を零しながら喘ぐ愛美さんに言う。
「いいよっ、出してっ、佐藤くんの、出してぇっ!」
「いくよ、いくよ、いくよ……!」
「来てぇっ……!」
 チンポの先が疼きながら溶け出すような感覚が最大になったと感じた瞬間、腰を目一杯沈め、愛美さんをきつく抱き締めながら叫んだ。
「愛美さんっ、妊娠して! 俺の赤ちゃん産んで!」
「あひぃぃっ! いひぃぃっ! うんっ……うんっ! はひぃっ、す、するよぅ……佐藤くん、のぉっ、赤ちゃん、ちょう、だぁいっ……!」
 その瞬間、愛美さんも力強く抱きついてきた。中が激しく収縮し、脈動する。同じタイミングで達したのだ。
 絶頂に達し、男の精液を搾り取ろうと脈打つ女の中で射精する。これ以上の快楽を俺は知らない。獣じみた声を上げて悶える愛美さんの中に、獣じみた呻きを上げながら大量の精液を流し込む。
 吐き出す瞬間、超新星爆発のような煌めきが視界を覆い、痺れるような熱が脳髄を支配する。
 吐き出した直後、その煌めきと熱は急激に引いていく。男の絶頂は短い。ほんの一瞬で終わる。それ以降は一段低いレベルの快楽が断続的に続くだけだ。
 射精中の敏感な先端を脈打つ肉に扱き立てられる快感に震えながら問いかける。
「愛美さん、出てるよ、今、出てるよ! わかる? 出てるのわかる?」
「わ、わかるよぅっ、佐藤くんの、びくびくってしてる……!」
 射精が一段落したところで、俺は深く息を吐き出した。
 俺を見上げて愛美さんが微笑む。
「気持ち良かったよ……途中からわけがわからなくなっちゃうくらい……」
「愛美さん、もう満足?」
「……うん」
「ごめんね、俺、まだ満足してないんだ」
「……ええっ!?」
「ほら、俺の、まだ硬いでしょ?」
「えっ、あっ、う、うん……お、男の人って一回で終わりなんじゃ……」
「旦那さんはそうだった?」
「……うん」
「そんなのは人それぞれだよ。俺は一回や二回じゃ終わらないよ」
「す、凄いんだね……」
「だからもっとしよう」
「だ、駄目だよっ、そんな……私、壊れちゃうよっ!」
「俺の赤ちゃんを産んでくれる人を壊したりなんかしないよ。さあ、いくよ」
「えっ? ちょっ、ちょっと待ってっ、待ってって――ひぅっ!」
 腰の動きを再開する。もうすっかり俺の形を覚え込んでいるから、今度は最初から全開だ。
 正常位で愛美さんの体を再び温めた後、愛美さんを抱えて寝返りを打つ。上下を入れ替え、愛美さんが俺に覆い被さるような体位に変える。
「ひゃあっ! ……えっ、あれ、何で佐藤くんが私の下にいるの……?」
「愛美さん、上になって、自分で動いてみてよ」
 戸惑う愛美さんの上体を支え起こし、魅力的に揺れるおっぱいを揉む。
「じ、自分でって……どうすればいいの? 私、わからないよ……」
「騎乗位ってやったことない?」
「キジョウイ?」
「女の人が、馬に乗るみたいに跨って腰を振るやり方だよ。ほら、丁度、今、そんな感じでしょ?」
「言われてみたら……馬……うん、そうだね」
「やったことない?」
「……あの人とは、いつも抱き合ってしてたから」
「俺達が最初にやったみたいに?」
「うん……」
「そっかそっか。経験少ないって言ってたもんね」
 自分の妻にフェラもさせない、クンニもしない、正常位以外の体位でやらない、その上妊娠もさせない。世間ではこういう男を堅物とか潔癖とかヘタレとか言うのだろう。俺も同感だ。実に勿体無いことをする。
 しかし、今の俺の立場からすれば、どれだけ感謝してもし足りない。
 つまり、愛美さんは、ただ処女でないだけなのだ。膜が破られていて、人並みに中出しやキスを経験しているが、それだけなのだ。それ以外は処女と変わらない、まっさらな処女雪のようなものなのだ。
 そんな若妻――俺よりちょっと年上だが――を好き放題にできるのだ。端っこに稚拙な小さい落書きがあるだけの、真っ白のカンバスに好きな絵を描けるのだ。これを喜ばずにいられるものか。
「じゃあ、今日は色々な体位を試そう。取り敢えずは……そうだな、騎乗位からいこうか。俺が支えててあげるから、好きなように腰を動かしてみて」
 愛美さんの手を取り、指を絡ませるようにして手を繋ぎ、ベンチプレスのように上に突き出し、支える。
「ほら、腰を揺すってみたり、上下させてみたり、ね?」
「う、うん……やってみるね」
 愛美さんはおっかなびっくり腰をくねらせ始めた。
「そうそう、いいよ……」
 それは稚拙な腰遣いだったが、ウブな若奥さんが一生懸命に俺の上で踊っている事実の前では些細なことだ。俺は愛美さんの表情と揺れる胸だけで興奮できる。
 だが、もどかしいことは事実だ。愛美さんも徐々に慣れてきて、時に切なげな、時に心地良そうな顔をしながら的確に腰を動かし始めているが、どうも大胆さに欠ける。快感を自分から得ることが怖いのかもしれない。この分では、俺の方からも動かないと、この生殺しがいつまでも続いてしまうだろう。
 こちらからも責めていかねばならない。愛美さんが次に心地良さそうな顔をする瞬間をじっと待つ。
 そして愛美さんが「あふぅっ」と声を上げた瞬間、その時に先端が擦り上げた部分目掛けてチンポを突き上げ、しつこく擦り上げた。
 狙い通りの効果が出た。そこが愛美さんのイイところだったのだ。
「あっ、駄目っ、そこ、気持ち良いから、駄目ぇっ! あっ、あぁぁっ……!」
 喘ぎながら拒むのを無視して責め続けると、一際甲高い声を上げて全身を震わせ、肉穴を激しく脈動させながら俺の胸に倒れ込んできた。
 一発出した後だから、最初と違い、この激しい脈動に耐える余裕がある。愛美さんを受け止め、抱き締めた状態で更に腰を動かしてやる。すると愛美さんは、鳴き声だか喘ぎ声だかわからない声を上げながら俺に抱きつき、ぴったりと体をくっつけてきた。
 動きを緩やかなものに変え、後ろ髪と背中を撫でながら囁きかける。
「次は対面座位にいこうか」
「ふぇ……? タイメンザイ……?」
「こうやって」
 動きを止め、腹筋運動の要領で上体を起こす。愛美さんはむちむちしている分重かったが、日頃から鍛えているので何とかその重量を押し返すことができた。
「ふあぁっ……!」
「抱っこするみたいにして抱き合いながらする形だよ」
 膝に乗せて形の良い尻を鷲掴みにし、子供をあやすように揺すってやる。
「どう?」
「うん……これ、好きかも……一杯くっついてて、何だか落ち着く……」
「じゃあ、こうすると?」
「ふぁぁっ! 何、これ、凄いっ……お腹の奥にっ、ぐいぐい……!」
「痛い?」
「ううんっ、気持ち良いよっ!」
「もっと?」
「あんっ、もっとぉっ!」
 抱きつかせたまま、激しく突き上げていく。どこがイイのかは騎乗位の時点で把握しているから、その部分を重点的に責めてやる。
 急所狙いは効果絶大で、しつこく続けていくと簡単にイってしまった。その快楽の波が押し寄せている内に、更に継続して責めてやると、意味を成さない喘ぎ声だけを発して断続的にイキ続けさえした。
 しばらくその状態を堪能した後、深く刺し貫いたまま、繋がっているところを軸に、愛美さんの体を反転させる。背面座位だ。大きな尻の感触が堪らない。
「えっ、あれぇ……さ、佐藤くん、今度は、何ぃ……?」
 とろんとした声で問いかけてくる愛美さんの前に腕を回し、胸を鷲掴みにしながら答える。
「今度のはね、背面座位って言うんだ。対面座位の逆、女の人を後ろから抱える形。これはどう?」
「顔が見えなくて、ちょっと、怖いかな……」
「でもこの体位だと、こうやって、ここやここを弄りやすいんだよ」
「んっ……乳首、引っ張っちゃやだよぉ……伸びちゃう……あぅんっ! 駄目、そこ、そこ擦っちゃ駄目ぇっ!」
 片手で巨乳を弄び、もう片方でクリトリスを弄ってやると、愛美さんは電流で拷問されているかのように震えながら体を反り返らせ、俺の膝の上で悶え狂った。
 その状態で二、三度イカせて絶妙の締まりを堪能した後、愛美さんの上体を前へと倒し、這い蹲らせる。
「ま、また……やり方、変えるのぉ……?」
 愛美さんが息絶え絶えといった様子で見上げてくる。
「うん。あ、腰上げて……そうそう、そんな感じね。で、肘と膝をついて四つん這いに……」
 繋がったまま尻を抱えて持ち上げ、獣の姿勢を取らせる。肌を火照らせた人妻が、汗ばんだ大きな尻を俺に捧げている征服感を覚えずにいられないはしたない姿勢だ。
「ね、ねえ、佐藤くん……この格好、恥ずかしいよぅ……もしかして、これでするの……?」
「そうだよ。後背位って言うんだ。バックやワンワンスタイルって呼び方もあるよ」
「動物みたいでやだよ……他のにし――ひゃあんっ!」
「一度は試してみようよ、ね、愛美さん」
 桃尻を鷲掴みにし、激しく腰を叩きつける。愛美さんの体はすっかり俺仕様に出来上がっており、暖機も充分に済ませてあるから、こういう無茶をしても問題なく快感が生まれる。
 激しく突くことで張りのある尻がぷるぷると震える様と、腿に当たる尻の弾力と滑らかさをしばらく堪能する。
 その際、ふと思いついたことがあり、尻の両側を掴む手の親指を尻の谷間に引っかける。
 そしてそのまま左右に大きく開く。
 茶色く色素が沈着した慎ましい尻の穴が、俺の抽迭に応じてヒクヒクと収縮しているのが見えた。周囲は黒々とした陰毛で飾られており、穴と毛は、流れ落ちた愛液でいやらしくぬめっている。多分、これなら指の一本くらいは抵抗なく滑り込ませられるだろう。愛液が潤滑液代わりだ。
「あひっ、あっ、あっ、や、やぁっ、そん、そんなとこ、拡げないでぇっ!」
 愛美さんの嬌声に悲鳴が混じる。
「いいじゃない。毛が生えてるのがやらしくて可愛いよ……あ、穴のちょっと横にホクロがあるんだね」
「やぁっ、は、恥ずかしいぃっ……!」
 悪戯心の赴くままに尻の穴の中心を指先でつつくと、悲鳴と共にきゅっと窄まり、同時に、肉穴も連動して絡みついてきた。本当はこの震える桃尻を叩きたいところなのだが、今日はそういうことは一切せず、純粋に俺の愛撫とチンポを味わって貰うと決めている。叩けない鬱憤を尻肉を捏ね回すことでごまかしつつ、愛美さんが特に感じる部分を擦り上げ、連続してイカせてやる。既に愛美さんの穴のことは、イカせたい時にイカせられるくらいにはわかっている。
 断続的にイクことで激しく震える感触を堪能しつつ、俺も思い切り腰を振って二発目を出す。
「愛美さん、イクよ! また中で出すよ!」
「あぇっ、出してぇっ、いいよぉっ、気持ち良いよぅっ……!」
 ベッドに突っ伏し、尻だけを掲げた格好で、うわごとのように愛美さんが答える。
 尻を力一杯掴んで腰を押しつけ、本日二度目の中出しを始める。蠢動する肉に扱き立てられながら、体の中の熱を排出する。いやらしく絡みついてくる濡れた肉の感触に呻きながら、ぴっちりと腰をくっつけ、最後の一滴までを出しきる。
「全部出たよ」と声をかけ、背中を撫でながら愛美さんの顔を見る。
 突っ伏し、横を向いた愛美さんは、半開きの口から涎を垂らして蕩けている。頭の中が快楽で真っ白になっているのだ。
 すかさず、愛美さんの体を裏返して覆い被さり、正常位に戻る。
「はぅっ……ええっ……ま、まだするのぉっ……?」
 怯えと期待の入り混じった顔で力無く問いかけてくる。
 行動と言葉で答える。
「俺はまだ満足してないからね。でも、これで終わりにするから安心して」
 それから俺は愛美さんを十回以上はイカせてから体の一番奥でたっぷりと精液を吐き出した。
 出し終えた後も密着したまま腰をくねらす。抜かずの三発は流石の俺も少し疲れるが、それでもこの程度で萎えるほど衰えてはいない。中学生の頃から五発六発は当たり前だった。
 泥酔したようにぐったりと横たわる愛美さんの顔は、涙と鼻水と涎でぐしゃぐしゃになっていた。荒い息を吐きながら熱に浮かされたように呂律の回らない口調でうわごとを言っている。
「愛美さん、とっても可愛かったよ」
 腰をぐりぐりと押しつけ、汗と唾液でべとべとになった胸を撫で回すように揉む。後戯は前戯と同じくらいに大事だ。女というのは猫と同じで、何だかんだで男に構って貰いたい生き物だから、相手が鬱陶しく思う限界ぎりぎりまで構ってやるのが良いセックスをする基本だ。
 ぐにぐにと中を捏ね回しながら囁いてやると、愛美さんの体が震えた。半開きの唇から、蕩けた調子の、それでいてどこか切羽詰まったような声が漏れる。
「あっ、あぁっ、駄目、やだぁ……あっ……」
 気の抜けた声と共に、下腹部、丁度繋がっている部分辺りに温かく湿った感触が広がった。アンモニア臭が鼻をつく。
 それが何であるか半ば理解しつつ、確認のために体をやや離して視線を送ると、案の定だった。中途半端に開いた蛇口から流れる水のように、ちょろちょろと湯気の立つ液体が流れ出していた。
「あっ、あぁぁっ……ごめんなさい……き、汚いよね……汚しちゃってごめんなさい……き、気持ち良過ぎて……力が入らなくて……と、止められないのぉ……」
 顔を手で覆い、愛美さんが消え入りそうな涙声で呟く。
 その手をそっと外し、大粒の涙を零す目を見つめながら微笑みかける。
「ううん、気にしないで。これも愛美さんが俺で気持ち良くなってくれた証拠だから。それに、シーツの下は防水シートを敷いてあるから、ちょっとシーツを替えるだけで平気だよ。気にしないで」
「で、でもぉ……佐藤くんに、お、おしっこ、かけちゃったし……」
「愛美さんのなら平気だよ」
 頬を撫でてそのまま、唾液で濡れ光る半開きになった唇を奪う。肉厚の唇を啄み、舌を滑り込ませ、口の中を舐め回し、唾液を啜り上げ、また逆に流し込む。鼻にかかった悩ましげな声を聞きながらそれをしばらく続ける。
 口を離し、陶然としている愛美さんの唇を指先でなぞる。
「ごめんね、キスしちゃった」
「ふぁ……今の、キスなの……? 本当に……? キスって……こんなことするんだ……」
「もっとしていい?」
「……うん、いいよ。一杯して」
 愛美さんが甘えるように手足を絡めてくる。
 それに応え、優しく、丁寧に、ねっとりと、愛美さんの口を味わう。
 しばらくそうしていちゃいちゃしていたが、学生と主婦とはいえ、互いに予定や立場のある身だ。いつまでもそうしているわけにはいかない。時計を見ると一時半を過ぎたところだった。そろそろ片付けをしないと互いの予定や立場に差し支える。
「愛美さん、お風呂入ろう。こんなべとべとじゃ帰れないでしょ?」
「うん……佐藤くん、先に入っちゃっていいよ……私、佐藤くんのが凄過ぎて、動けないから……」
「それなら、一緒に入ろうよ。洗いっこしよう」
「ええっ……そんな……恥ずかしいよ」
「洗いっこしたいなぁ……駄目かな?」
 まだ繋げたままの腰を動かしながら訊く。
「あんっ……もう、しょうがないなぁ……いいよ、洗いっこしよう……か、可愛がってくれたお礼だよ」
「じゃあ早速風呂に行こう。抜くよ?」
 愛美さんが頷き、絡めていた手足を緩める。
 ゆっくりと腰を引き、まだ半勃ち状態で差し込んでおいたチンポを少しずつ抜く。名残を惜しむように絡みついてくる濡れた肉を広がった傘で擦りながら、愛美さんの中から出た。
 引き抜く時、愛美さんは鼻にかかった甘い声を出し、抜ける瞬間には小さな嬌声を上げた。
 引き抜いた後、濃い陰毛の中心にはぽっかりと穴が開き、だらしなく弛緩していた。確か、中に入れたのが十時過ぎくらいだから、三時間半近く入れていた計算になる。こうなるのも当然と言えるだろう。
 呼吸による収縮に合わせ、だらしない穴から俺が吐き出したものが零れ出す。しつこく掻き回したせいか、やや泡立っている。
 愛美さんの上体を抱き起こし、股間部分を指し示す。
「愛美さん、見える? 俺のが溢れてるよ」
「やぁ……見ちゃやだよぉ、恥ずかしいってばぁ……」
 恥ずかしげに赤面しつつ、甘えたように俺の胸元に顔を埋める。
「男ってのはこういうのを見たがる生き物なんだよ。ほら、見てよ。愛美さんの愛液と混ざってどろどろ」
「す、凄く一杯出たね……コ、コップ一杯分くらいあるんじゃない?」
「いくら何でもそりゃないよ。お猪口二杯分もあればいい方だよ」
「でも……私、こんなに沢山出てくるの、初めて見るよ……佐藤くん、凄いんだね」
「鍛えてるのと、あと、若いからだよ、多分」
 笑って答え、ティッシュを取って愛美さんの股間に当てる。
「あっ、い、いいよっ、自分でやるからっ!」
「後始末くらいさせてよ。俺が出したんだからさ」
 有無を言わさず股間を拭い続けると、愛美さんは恥ずかしげにそっぽを向いてしまった。
 何枚もティッシュを費やしてひとまず愛美さんの股間を綺麗にした後、愛美さんを抱き上げる。お姫様抱っこという奴だ。
「わっ……さ、佐藤くん、やめてよ……」
「こういうの嫌?」
「ううん、嬉しいよ、嬉しいけど……私、太ってるから……重いでしょ?」
「そんなことないよ。だって女の人だもん。軽いよ。愛美さんくらいだったら、おんぶしながら腕立て伏せだってできるよ」
「……力持ちなんだね」
 愛美さんが俺の胸板に頬を寄せた。
「鍛えてるからね」
 花嫁を抱えて祝福されながら退場する花婿のように、愛美さんを浴室へと運ぶ。




 浴室に入り、蛇口を捻って浴槽に湯を注ぐ。洗い終わる頃には充分な量が溜まるはずだ。
「じゃあ、まずは俺が洗ってあげるね。道具を取ってくるからちょっと待ってて」
「道具? ……わかった。待ってるね」
 この日のために用意しておいたとある道具を取りに向かう。
 目当ての物を見つけたら急いで戻る。
「待たせちゃってごめんね」
「ううん、平気だよ」
 愛美さんは風呂用に髪の毛を結い上げているところだった。
 動きに合わせて揺れ動くおっぱいを観賞しつつ、用意したそれを浴室の床に敷く。
「何だかわかる?」
「……クッション……じゃないね。マット……かな?」
「半分正解。これはソープマットって言うんだ」
「ソープマット……ソープ……も、もしかして、エッチなお店で使う奴?」
「そうそう。ソープとかでマットプレイする時に使うんだよ。この上に寝転がってぬちゃぬちゃ絡み合うんだ」
「わ、私、そんなのわからないよ? その、マットプレイ? なんかできないし……」
「その辺は大丈夫だよ。まあ、洗うから、ちょっとマットの上に座って」
「う、うん……座るね」
 緊張した様子の愛美さんが神妙な顔つきで腰を下ろす。
 手にボディソープを出しながら笑いかける。
「そんなに緊張しないで、リラックスしてよ」
「む、無理だよぅ……男の人に体洗って貰うなんて初めてだし……あれ? ねえ、何で石鹸手につけてるの? スポンジは?」
 愛美さんはきょろきょろとハムスターのように周囲を探した。
「スポンジなんか使わないよ。やっぱり肌は肌で洗わないとね」
 手を擦り合わせて泡立てながら背中側に回って、すべすべした背中に掌を当て、撫で回すように、ゆっくりとボディソープを広げていく。
「な、何か変な感じだね……くすぐったいのとも違うし……」
「ちょっと物足りない感じ?」
「……うん」
「そう思うのは最初だけだよ」
「え?」
「まあ、それは後のお楽しみだよ」
 背中、首筋、肩口、腕と順番に洗っていき、その後、右手を取る。掌と指を両手で擦って洗ってから、俗に言う「恋人繋ぎ」のように指と指を絡ませ、ソープのぬめりを利用して擦り合わせる。
「あふっ……く、くすぐったいよ」
「念入りにしないとね」
 たっぷり数分かけて洗った後、左手も同じように洗う。
「あ、腋の下忘れてた。愛美さん、万歳して」
「わ、腋はいいよ……」
「駄目だよ。汗が溜まりやすいんだから」
 強引に腕を上げさせ、まずは腋を観賞する。
「ふうん、こっちはツルツルなんだね」
「はひっ! きゅ、急に触ったらくすぐったい」
「じゃあ、ゆっくり触るから我慢してね」
 掌を左右の腋に当て、ゆっくりと摩擦する。
 愛美さんは、余程くすぐったいのか奇妙な声を漏らし、身を捩っているが、万歳の姿勢を崩そうとしない。健気で可愛らしいその態度に免じ、今回はこのくらいで勘弁してやることにする。
「はい、腕下ろしていいよ。次は前いくよ」
「えっ!?」
「いいからいいから。じっとしてて」
 腋の下から腕を通し、背中から覆い被さるようにして抱きつき、それから、まずは体の前面を手当たり次第に撫で回し、泡をつけていく。
「お腹、ぷよぷよだ」
「やだ、もう、やめてよ……気にしてるんだから……ダイエットしようかな……」
「駄目だよ。こんなに柔らかくて気持ち良いんだから。勿体無いよ」
「えぇ……でもぉ……」
「俺は愛美さんのお腹好きだよ。一日中だって触ってたいくらい」
「……じゃあ、しょうがないから、佐藤くんのためにダイエットやめる」
「ありがとう……ああ、おっぱいもふかふかだ」
「ち、乳首摘まんじゃ駄目だよ、気持ち良くなっちゃうよぉ……」
「洗ってるだけで好くなっちゃうんてエッチだね」
 くりくりと乳首をいじめつつ囁く。
「さ、佐藤くんの触り方がエッチなんだよぅ……」
「ふうん、じゃあ、乳首はお終い。次はおっぱいの下だね。ここも結構蒸れるからよく洗わないとね」
 重たい胸の肉の下に手を滑り込ませ、掬い上げるように揉みしだく。
 しばらく続けていくと、次第に愛美さんの体から力が抜けてきた。
「じゃあ、次は下の方いくよ」
 愛美さんの前に跪き、胸から下腹へと手を滑らせる。指先が陰毛に触れた辺りで、期待するように愛美さんの太腿が震えた。
 しかしその期待を無視し、手を左右の太腿に走らせていく。「どうして」と視線で問いかけてくる愛美さんに微笑み返し、そのまま脚を抱えるようにして爪先までを念入りに洗う。
「次はこことお尻を洗うから四つん這いになってね」
「そ、そんなの、恥ずかしいよ……」
「そうした方がよく洗えるから」
 恥ずかしがる愛美さんをやや強引に這い蹲らせ、尻の後ろに回った。
「うん、よく見える」
「やだよぉ、そんな恥ずかしいこと言わないでぇ……」
 愛美さんは恥ずかしげに尻を振ってどこか嬉しそうな悲鳴を上げた。
「可愛いから問題ないよ。じゃ、洗うよ。沁みたりしたら言ってね」
 粘膜に優しいボディソープを泡立て、張り詰めた尻を揉み解すようにして泡だらけにし、ついで谷間に手を滑らせる。指先が肛門を掠める。
「ひっ! そ、そこ、お尻……汚いから、汚いからぁ……」
「だったら尚更綺麗にしなきゃ駄目だよ」
 聞く耳を持たず、念入りに洗っていく。
「はい、洗い終わったよ」
 涙目でこちらを睨む愛美さんに背を向け、腰を下ろす。
「じゃあ、今度は愛美さんが俺を洗ってよ。俺がやったみたいに。あ、でも、洗う時は手じゃなくておっぱいをスポンジ代わりにしてくれると嬉しいな。ああ、泡は今体についてる奴でいいよ」
「ちょ、ちょっと待ってね……えっと、こうかな?」
 背中に先っぽにこりこりした物がついた柔らかくて熱い塊が二つ押しつけられた。塊は心地良く吸いつきながら、「んしょ、んしょ」という可愛い声と共に肌の上を滑っている。
「うん、いい感じだね。そのまま、がばっと抱きつくようにして擦ってみてくれない?」
「待ってね……んしょ……こんな感じかな?」
「温かくて気持ち良いよ」
「背中はこれくらいかな……次は」
 愛美さんが悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「……え?」
「万歳してね」
 愛美さんは先程の仕返しをするつもりのようだった。
 この後、俺は愛美さんの逆襲に悶える破目になった。腋を念入りに洗われた時などは「うひゃう」などと奇声を発して身を捩ることになったし、前を洗うと称して乳首を弄ばれた時はちょっと興奮してしまった。チンポを無視して足に向かうのは別にどうでもよかったが、その後、四つん這いになって尻を掲げさせられたのは非常に恥ずかしかった。収縮する尻の穴や垂れ下がる玉と竿を後ろからまじまじと見つめられ、「うわあ……」などと言われながら優しい手つきで洗われるのは何かいけない感覚に目覚めてしまいそうなほどの恥ずかしさだった。やはり、プロのお姉さんにやられるのと普通の素人にやられるのでは大違いというものだった。
「ふふ、さっきのお返しだよ、佐藤くん」
 柄にもなく赤面する俺に愛美さんが勝ち誇るような笑顔を見せた。
 駄目だ。やられっ放しは性に合わないし、どちらが上かははっきりさせておく必要がある。
 泡にまみれて怒張し、天を目指しながらびくんびくんと脈動するチンポを見せる。
「ねえ、愛美さん……愛美さんがあんまりやらしいせいでムラムラきちゃった。泡流したら、このままもう一回戦しない?」
「……うん。私も、したいなぁって思ってたの」
「じゃあ、髪が濡れたら困るだろうから、俺が下になるよ」
 マットの上に仰向けになり、手招きする。
「もう一回騎乗位でやろう。自分で入れてみて」
「うん……上手くできないかもだけど……やってみるね」
 愛美さんは俺の体を跨ぎ、開脚したまま、ゆっくりと俺の上に腰を下ろしてきた。開脚の影響で開かれた下の口から愛液が滴り落ちてくる。大半がチンポに垂れてきている辺り、
愛美さんの位置取りそのものはなかなか正確だ。
「えっと……自分で入れるって、こうかな……あれ? う、上手く入らないよ」
「そりゃそうだよ。ちゃんと手で押さえなきゃ」
 思わず苦笑してしまった。愛美さんはいきなり上級者向けの技に挑戦していたのだ。今日初めて騎乗位を知った性的素人が手で固定もせずにチンポを受け容れられるはずもない。
「そ、そうだよね。うっかりしてたよ……手で……んっ……」
 固定されたチンポが涎を垂らす肉穴に触れた。
「そのまま腰を落として……」
「はぅっ……おっきい……やぁっ、まだ大きくなるのぉっ……!?」
 少し苦しげな息をしながら少しずつ腰を落とし、呑み込んでいき、悲鳴を上げる。愛美さんのむちむちとした体に赤黒いチンポが吸い込まれていく様は酷く煽情的だった。おかげで挿入途中で更に膨らんでしまった。
「ぜ、全部入ったんだよね……?」
 俺の下腹部に尻を押しつける愛美さんは既に息が荒くなっている。
「入ったよ。そのまま動いてみて」
「む、無理だよぅ……気持ち良過ぎて怖いよぅ……」
 甘えるように上体を倒し、覆い被さってきた。
「しょうがないなぁ……じゃあ、このまま俺が動くよ」
「う……んっ!」
 返事を待たずに尻を鷲掴みにし、前後左右に揺り動かしてやった。
 愛美さんは悲鳴とも嬌声とも取れる絶叫を上げながらしがみついてきた。


十一

 騎乗位で繋がって互いに満足した俺達は、体の汚れを簡単に流し、ぬるま湯で満たされた浴槽に二人で入った。浴槽の縁に俺が寄りかかり、その膝の上に愛美さんが座る形だ。挿入していない背面座位のようなものだ。
 愛美さんを抱き締めるようにして体の前面に腕を回し、おっぱいとクリトリスを弄りながら囁きかける。
「愛美さん、俺達のルールは何だったっけ? 愛美さんはどうすればいいんだっけ?」
「あっ、はぅっ……んっ……あ……あん……あの人とエッチしちゃ駄目なの……し、したいって言われたら……ん……断るのぉ……」
「うん、ちゃんとルールを守るんだよ」
「ふぁい……んっ……んっ……」
「愛美さん、そんなに俺のチンポにお尻押しつけてどうしたの?」
「わ、わかってるくせにぃ……佐藤くん意地悪だよぅ……」
「何のことだかわからないなぁ」
「ほ、欲しいの……佐藤くんの……」
「俺の……何?」
「お……お、おちんちん……」
「そんなに欲しがられたらあげないわけにいかないよね。愛美さん、そのまま立って壁に手を突いて、こっちにお尻突き出して。後ろから責めてあげる」
「こ、こうかな……恥ずかしいよ、この格好……」
「もうちょっと脚を開き気味に……うん、いいよ。オマンコもお尻の穴も丸見えでいやらしいよ」
「そんなこと言っちゃやだよぉ……」
「ごめんね。お詫びにたっぷり可愛がってあげるから。もうじゅくじゅくだからこのまま入れちゃうね」
 涎を滴らせる下の口にチンポを宛がい、一思いに貫く。
「はぁんっ!」
 甲高い声を上げ、愛美さんが背を仰け反らせた。


十二

 初めて体を重ねてから四日後の朝、愛美さんから俺の都合を確認する電話があった。
 今日は本来ならば一限に講義が入っているのだが、幸運にも臨時休講となったため、俺は「今すぐ来られるならすぐ来て。シャワーはこっちで浴びればいいから」と答えた。
 すると、愛美さんは比喩ではなく本当にすぐ来てしまった。
 ドアを閉め、愛美さんを抱き締めながら「早いね」と言うと、
「早く会いたかったんだよ」という可愛らしい答えが返ってきた。
「シャワーまだだよね? 俺もまだだから一緒に入ろうか」
「……うん」
 照れと期待に満ちた眼差しと共に愛美さんが頷く。
 愛美さんの尻を撫でながら脱衣所へと向かう。
 軽い愛撫とキスを交えて互いの服を脱がし合い、仲良く浴室に入る。
 浴室では四日前の後始末と同様に洗いっこをした。
 互いの体を覆う泡を洗い流した後、俺達は服が入った籠を持ち、裸のまま寝室に向かった。
「えっと……どうする? キスする?」
 愛美さんが落ち着きなくベッドと俺を交互に見ている。まだ二回目だから、どうしていいかわからないのだろう。
「今日は……まずフェラをして欲しいな」
「フェラ……フェラって、あの、男の人の、アレを……く、口でする奴だよね?」
「あ、知ってたんだ。説明する手間が省けてよかった。そうだよ。俺のチンポを愛美さんにしゃぶったり舐めたりして欲しいんだ。やってくれる?」
 愛美さんが俺の股間に怯えたような視線を向けた。
 チンポは既に臨戦態勢に入っており、小さな口から我慢汁を滲ませている。濡れやすいのが俺の欠点だ。どうしてこうなったのかはわからない。欲しいと思った女を常にモノにしてきたせいで、自制心が壊れているのだろうか。
「……嫌かな?」
「そ、そんなことないよ! だって、佐藤くんも、私の……アソコ、な、舐めてくれたし……」
「そっか、やってくれるんだ。嬉しいなぁ。じゃあ、早速お願いするよ」
 ベッドの上に腰を下ろし、脚を開き、手招きする。
「ここに来てよ」
 少しの躊躇いの後、意を決した風に頷き、愛美さんは俺の前に跪いた。
 しかし、そこで停まってしまった。
「ど、どうしたら気持ち良いのかな?」
「うん、まずはこの前みたいに、手で触って」
「……こう、かな」
 愛美さんが俺のチンポを握った。刺激でチンポがびくりと震えた。
「うん。じゃあ、袋の方とかも撫でて……そうそう……いいよ」
 そうしてしばらく手で遊ばせてから本格的に口を使わせる。
「じゃあ、まずは先っぽにキスしてみて」
「う、うん……」
 ゲテモノを口にする罰ゲームを受けている芸能人のように、恐る恐る愛美さんが唇を近づける。赤黒く膨らんだ亀頭と薄桃色の唇とが徐々に近づき、やがて接触する。唇の震えが伝わってきたと思った途端に離れる。唇に付いた我慢汁が糸を引き、愛美さんが唇を指先で拭う。
 チンポに手を添えたまま顔色を窺うように見上げてくる愛美さんに告げる。
「繰り返して」
 二度目は一度目よりもスムーズで、三度目は二度目よりスムーズだった。
「次はキスしたまま、軽く唇で挟んだり、舐めたりしてみて」
 ゆっくりと唇が開き、我慢汁に濡れた先っぽを挟み込む。舌先が触れ、びくりと震えて下がり、また再びおずおずと触れてくる。
「愛美さん、味はどう?」
 訊かずにはいられない。
「へ、変な味……ちょっと……しょっぱい?」
「嫌い? もうやめる?」
「ううん、よくわからない……でも、佐藤くんのだから、佐藤くんがして欲しいんなら、する」
「そういう風に言って貰えると嬉しいなぁ」
 頭に手を伸ばし、耳の後ろを指先で撫でる。愛美さんがぴくりと反応し、口と鼻から悩ましげな熱い吐息が漏れ、しっとりとチンポを刺激する。
「じゃあ、次はぱくっと咥えてみて。ゆっくりでいいよ。あ、歯は当てないようにしてね、デリケートだから」
 軽く口を開け、躊躇いがちに先端を口内に導き入れようとする。熱く湿った息が当たり、何とも心地良い。
 頭の部分を口に含めた状態で愛美さんが喋る。
「ふぉ、ふぉれいひょう、ふぁいらないひょ……」
 息と舌が当たって気持ち良い。愛美さんは、これ以上入らないよ、と言ったのだろう。
「うん、じゃあ、そのままペロペロしたり、吸ったりしてみてよ……ん、そう、いいよ、そうそう……」
 しばらく口の中を堪能した後、頬を撫でてそっと口を離させる。唾液と先走りの糸が空中で千切れた。
「次はこの横の所とか舐めてみて。唇で挟んでハーモニカみたいにずらしながら舐めたり、後は袋とチンポの境目とか……それから袋も舐めてみて……そうそう、舌の上で転がしたり……
うん、口の中に軽く吸い込んでみたり……ああ、いいよ……」
 しばらくそうしてチンポを咥えさせている内、愛美さんは大きな尻を切なげに揺らし始めた。
 奉仕を中断させ、にやにやと問いかける。
「チンポ咥えてたら欲しくなっちゃった?」
「……うん」
「じゃあしようか。仰向けになって脚開いてよ」
「こ、これでいい?」
 言われた通りにした愛美さんの股間は既にとろとろだった。濡れているのが一瞥しただけでわかる。
「この分なら、濡らす必要なんかないよね。いくよ」
 チンポを押し当てる。水気を含んだ音がした。
「うん……き、きて」
 既に俺の形に躾け直された肉穴を一思いに貫いた。
 後は前回の交尾と同様、正常位で何度かイカせた後、種付けし、体位を何度か変えながら、例によって失禁するまで責め立て、ベッドの上で五発ほど注ぎ込んだ。その後は二人でいちゃいちゃしながら入浴し、家に帰した。


十三

 更に二回ほど体を重ね、すっかり愛美さんの体が俺用に躾け直された頃、大輔さんが、一週間の予定で出張に行くことになった。
 このことを知った俺と愛美さんは俺の家のベッドの上で喜びを分かち合った。俺にとっても愛美さんにとっても、最早大輔さんはセックスを邪魔する目の上のタンコブでしかなかった。
 俺は愛美さんの体の中を捏ね回しながら、俺達の今後の関係を盤石なものとするための計画への協力も求めた。
 愛美さんは二つ返事で快諾してくれた。


十四

 大輔さんが出張に出かけた日の昼、大学から帰った後、早速愛美さんに連絡を入れて家に呼んだ。
 程無くしてドアチャイムが鳴った。鍵を開き、愛美さんを招き入れる。
 鍵を閉めたら、言葉を交わす前にまずは抱き合い、舌を絡め合う。話をするのは濃厚なキスを終えてからだ。
 言いつけてあった通り、シャワーを浴びていたのであろう、石鹸の匂いを漂わせる愛美さんの口を解放し、問いかける。
「愛美さん……君の本当の旦那さんは誰?」
「……太郎くん。私の旦那さんは太郎くんだよ」
「俺? じゃあ、大輔さんは?」
「あの人は……一緒に生活してて、偶にエッチさせてあげるだけの知り合いだよ。もうあんな人、どうでもいいの。私には、太郎くんだけ」
 愛美さんが俺に寄り添い、胸に頬を寄せた。
「そっか。じゃあ、本当の旦那さんとたっぷりエッチしようね」
「うん……たっぷり気持ち良くなろうね」
「今日は時間がたっぷりあるから、夜中まで可愛がってあげるよ」


十五

 大輔さんが出かけている間の一週間、俺達は学生や主婦としての活動や周辺住民に認知されている習慣など、どうしても外せない用事以外の全てをキャンセルし、猿のように交わり続けた。俺の家では、応対に出る時と外に出る時と料理を作る時以外は、全裸が俺達の制服だった。
 平日は、俺が大学に出発するまで朝から俺の家で体を繋げ、俺が出発した後は愛美さんを一旦家に返し、帰宅後にまた呼び出して夕食まで交わり続ける。トロロや鰻や納豆などを大量に食べて精力をつけた後は、深夜まで抱き合い、付近の住民に目撃される虞のない深夜に帰宅させる。そういう風にして、朝には普段通りの生活を再開し、表面上は普通の生活を装った。
 大学がない日曜日も似たようなものだったが、その分、交わりの濃厚さは増した。一回当たりの時間を気にせずに済むせいか、ろくに休憩もせず半日ほど――比喩でなく朝から晩まで――ベッドで過ごしてしまった。
 また、その爛れた一週間は、単に俺が愛美さんの体を楽しむためだけに費やされたわけではない。俺達の関係を盤石のものとするための計画も進行していた。
 五日目の昼頃、計画完遂のための鍵となる物が郵送されてきた。愛美さんを膝に乗せて後ろから突き上げながら中身を確認し、俺達は計画の成功を確信した。それ以後は、大輔さんの帰りを楽しみに待ちながら一層激しく交わった。


十六

 一週間の出張を終え、自宅への道を歩く。出張の成果は上々だったが、犯してしまった過ちのせいで、その喜びもどこか空疎に感じられる。足取りも自然と重くなる。
 最愛の妻が俺の帰りを待っている我が家が見えてきた。
 久しぶりに見る我が家だが、普段とは違い、懐かしさよりも先に、拒否感を覚えてしまう。チャイムを鳴らして妻を呼び出すのをやめ、ふらりと周辺を一回りしてきたいなどとすら思ってしまう。旅先での過ちへの罪悪感のせいだ。
 だが妻には七時前には戻ると伝えてある。無意識的に帰るのを先送りにしていたせいか、もう時刻は六時五十分を過ぎている。そろそろ帰らねばまずい。
 意を決し、チャイムを鳴らすと、待ち侘びたように妻が出てきた。子供の件で母との折り合いが悪く、何かと塞ぎ込みがちだったが、最近また結婚前の明るさを取り戻し始めてきた、愛しい妻だ。
 普段であれば妻の顔を見て込み上げるのは喜びだが、今日込み上げてくるのは気まずさと申し訳なさだ。やはりあんなことをすべきではなかったのだ。
「大輔さん、お帰りなさい」と微笑む妻の顔はどこか上気しており、熱っぽい感じだった。
 風邪でも引いたのではないかと心配すると、妻はそれを否定し、俺の鞄とコートを受け取った。
 靴を脱ごうとして下を向き、見慣れた靴があることに気づく。
「佐藤くんが来てるのかい?」
 思わず非難がましい声を出してしまった。亭主の留守中に若い男を家に上げるなんて非常識だ。それに、家の主が戻ってきたのに顔を出さないのは無礼だ。彼はそういう非常識な若者には見えなかったが、所詮、学生は学生ということか。
「はい、来て貰ったんです。ねえ、大輔さん、話があるんですけど、いいですか?」
「……話? 疲れているから、できれば明日にして欲しいんだが……大事な話かい?」
「ええ、凄く大事な話です。明日じゃ駄目です」
 従順な妻がここまできっぱり言うのは珍しい。確かに大事な話のようだ。
「わかった、でも手短にな。それから、話が終わったら風呂に入りたい」
「お話が済んだら沸かしますね」
「……まあいいよ。それじゃあ話を聞こうか」
「座ってお話ししましょう」
 妻に連れられて居間に行くと、佐藤くんがパソコンを弄っていた。デイトレでもしているのだろうか。
 いくら大義名分があるとはいえ、若い妻が留守を守る家に上がり込むとは非常識だ。そういう密かな非難を籠めて声をかける。
「佐藤くん、来てたのか。俺がいない間も愛美に色々教えてくれてたのかな?」
「ええ、愛美さんは覚えが良くて教え甲斐がありましたよ」
 佐藤が笑った。非難を軽く受け流されたせいか、それは酷く嫌な微笑に見えた。
「それはよかった……それで佐藤くん、悪いんだが、これから夫婦の話をするから、君はちょっと遠慮してくれないか」
「大輔さん、太郎くんには一緒にいてくれるように私が頼んだんです」
「……俺達の話に佐藤くんを巻き込むのか?」
「そうした方が良いと思いますから」
「わかった……佐藤くんがいてもいい」
 納得させられてしまった。今日の妻は妙に押しが強いし、またどこか色っぽい。一体どうしたのだろうか。妻は変わったのだろうか。それとも、負い目のせいで俺が気弱になっているだけだろうか。
「まず見ていただきたいものがあるんです」
 妻の対面のソファーに腰を下ろすと、妻がパソコンを弄る佐藤に何か合図をした。
 佐藤は何か操作をした後、画面の前からどいた。
「大輔さん、画面を見てください」
「何だい?」
「温室と画質は悪いですけど、まあ、必要なことはわかると思いますよ」
 どこか含みのある言葉を聞きながら画面を覗き込み――一瞬、頭が真っ白になった。
「こ、これは……」
 画面に映っていたのは出張先での過ちだった。裸になった俺が、裸の女の尻を後ろから突いている映像だ。
 佐藤が真面目腐った顔で言った。
「愛美さんの話だと、一昨日にこれがいきなり届いたらしいんですけど……大輔さん、これって浮気ですよね?」
「あ、あの、これは……」
 画面に流れる映像から恐る恐る視線を妻に向ける。
 妻は先程までの柔和な表情ではなく俺を睨むような厳しい顔をしていた。
 すぐ傍に佐藤がいることもどうでもよかった。俺は席を立ち、恥も外聞もなく土下座した。
「許してくれ! あの時は酔っ払っていて……いや、言い訳なんかできる立場じゃないの
はわかってる! でも、あれは本当に……お願いだ、許してくれ……!」
 必死になって懇願した。妻とセックスをしていないので溜まっていたこともあり、傷心旅行中だという女の誘いに乗ってセックスしてしまったが、俺が本当に愛しているのは妻だけなのだ。妻ほど気立てが良くて豊かな体を持った女は他にいない。これほど俺に尽くしてくれる女は他にいない。
 妻は、こいつにこんな声が出せるのか、と愕然とせずにいられないほど冷たい声で言った。
「……駄目です。許せません。離婚してください」
「お、お願いだよ、それだけは本当に……」
 妻を失うことは精神的な安らぎや性的な楽しみを失うだけでは済まされない。社会的にも大きな痛手となる。俺の浮気が原因で離婚などということになれば、会社での地位もどうなるかわからない。
「……と本当なら言うところなんですけど」
「え?」
 妻がにこりと笑った。どうやらちょっときついお灸を据え、肝を冷やさせるだけで許してくれるつもりのようだ。妻の優しさと俺への愛情の深さが身に沁みる。
 しかし、にこやかに続けられた妻の言葉は信じがたいものだった。
「私も大輔さんを責める資格はないんです。だって、私も大輔さんに黙ってお付き合いしている人がいるんですもの。おあいこです。だから今まで通りに暮らしましょう」
「……は? お、お前、一体、何を……そ、そういう冗談はよせ……!」
「冗談なんかじゃありませんよ。私、その人と何度もエッチしました。逞しいおちんちんを生で入れて貰って何度も中で出して貰ったんですよ。あ、おちんちんを一杯しゃぶらせて貰って、量が多くてとても濃くて美味しい精子も飲ませて貰っちゃいました。とっても気持ち良くて……私、もうその人のおちんちんじゃないと駄目なんです」
「おい……おい、お前、自分が何を言ってるのかわかってるのか!?」
「わかってますよ。だから、離婚はしないで、今までと同じように夫婦でいましょうって言ってるんです。その人、私と結婚してくれる気がありませんから、赤ちゃんが出来たら大輔さんとの子供ってことにしないと困るんです」
「だ、誰だ!? 相手は誰だ!? 俺の知ってる奴か!?」
 そこまで言い、自らその答えに思い至る。すぐ傍に怪しい奴が――夫婦のデリケートな話し合いに当たり前のような顔で参加している男が――いるではないか。
 思わず佐藤を見ると、妻がうっとりと頷いた。
「そうです。私、太郎くんのものになっちゃいました」
「ふ、ふざけるな! い、いつからだ!? いつからなんだ!? いつから俺を騙してたんだ!?」
「ええと……二週間ちょっと前からです」
 妻がしれっと答える。この瞬間に半ば悟らずにいられなかった。もうこの女は俺に欠片も執着していないのだ。
「い、一体……何が不満だって言うんだ!? 何でそんな学生なんかに……!」
「不満ですか? 不満なら一杯ありましたよ。お義母さんは私に酷いことを言うし、大輔さんはちっとも庇ってくれないし、不妊治療の話も嫌がるし……」指折り数え上げた妻はそこで言葉を切り、若干恥ずかしそうにしながら続けた。「それに、これは太郎くんに教えて貰ったんですけど……大輔さんは本当のエッチをしてくれませんでした……太郎くんがしてくれたのに比べたら、大輔さんのなんて……それから、それから、太郎くん、とってもおちんちんが大きいの。大輔さんの倍くらい……かな」
「だ、だからか!? そのせいでそんな奴と浮気したのか!?」
「浮気じゃありませんよ……本気です。太郎くんは、落ち込んでいる私を優しく慰めてくれました。何もしてくれなかった大輔さんとは大違い。だから、太郎くんの赤ちゃんを産ませて貰うことにしたんです」
 思わず佐藤を見ると、佐藤は薄く笑っていた。
 ピンと来た。全てこいつの計画通りなのだ。
「……お前、最初からそのつもりで近寄って来たんだな! そうか! あの女も、ビデオも、全部お前が……俺をハメたな!」
「全部その通りですけど、俺、何か悪いですか? 全部大輔さんのせいじゃないですか。大輔さんが愛美さんのことを考えてあげないから、愛美さんは俺の所に来たんです。それに、あの女は俺が手配したわけですけど、大輔さんが誘いに乗らなかったら意味ありませんでしたよ」
「だ、だが、お前は愛美を抱いてるらしいじゃないか! 愛美は俺と結婚してるのに!」
「そう、そこは確かに俺が悪い。でも、大輔さんだって他の女の人とセックスしたでしょう? 愛美さんと結婚してるのに。それで相殺ですよ」
「お前らはずっとじゃないか! 俺は一度、しかも酔っ払ってたんだぞ!」
「一回だろうと百回だろうと、浮気は浮気ですよ。オール・オア・ナッシング。零か一かです。ところで大輔さん、お願いがあるんですけど、俺と愛美さんの仲を認めた上で、結婚生活を続けてくれませんか? 流石に俺が他人の奥さんを寝取って孕ませた、なんてことが広まったら困りますし、別れた後に愛美さんが産むんじゃ体裁が悪いですから」
「ふ、ふざけるなよ! 百歩譲って今までを許したとしたって、これからを許すわけが――」
「大輔さん、立場わかってますか? 騒ぎになって困るのは誰です? 大輔さんですよ。俺はいいんです。全部バレちゃっても引っ越せばいいし、大学だって別に辞めるなら辞めるでいい。お金はありますから。でも大輔さんは? 言っときますけど、もし離婚するって言うなら、愛美さんに会社の方にも訴訟を起こして貰いますよ。会社が出張を命じたせいで浮気したんだ、とね」
「言いがかりだ、そんなの! そんな訴訟、通ると思ってるのか!?」
「通らないでしょうし、多分裁判所に却下されるでしょうけど、大輔さんの勤め先に嫌がらせして大輔さんの立場悪くすることはできますよ」
「糞……糞っ!」
 もう駄目だ。愛美の心を失った今、俺には仕事しかないのに、包囲はその仕事の方にも及んでいる。このクズに屈服するしかない。
「まあ、俺が愛美さんを好き放題にして、愛美さんが俺とセックスして俺の子を産む以外は今まで通りですから、安心してくださいよ。愛美さんの気が向くようならセックスしたって構いませ――」
「嫌です! 太郎くん以外は嫌!」
「あらら……じゃあ、他の女と浮気でもします? 俺のお古でよかったらセックスの上手い人妻を何人か紹介しますよ」
 あまりにも惨めだ。ろくに社会も知らないような学生に妻を寝取られ、優越感に満ちた笑みを見せつけられ、悲劇を通り越して喜劇的ですらある寝取られ夫の役割を与えられ、おまけに妻に拒絶された上に間男にお手付きの女を宛がわれる。耐えがたい屈辱だ。涙が零れた。
 殴りかかりたい衝動に駆られたが、身長はともかく体格が違い過ぎる。体力抜群の若者に三十過ぎの運動不足気味の男が勝てるわけがない。
「あ、そうそう、大輔さん」
「……何だ、まだ何かあるのか……?」
「知ってます? 愛美さんってオマンコにチンポ突っ込むと凄くだらしない顔で――」
 勝ち目がない。そんな計算はこの瞬間に吹っ飛んだ。
 跳ね上がるように立ち上がり、憎たらしい嘲笑を浮かべた顔に向かって殴りかかる。
 しかし、突き出した拳はあっさりと手刀で弾かれた。痛みで動きを停めたところで手首を掴まれ、そのまま関節を決められ、跪かされる。その後、間髪入れずに首に腕が巻きつき、絞め上げてきた。
 意識が遠のいていく。
 そういえば、佐藤は軍隊格闘術を習っていると言っていた。
 思考が闇に沈む直前、そのことを思い出した。


十七

 気づいたらどこかの部屋にいた。違う。見覚えがある。ここは我が家の寝室だ。目の前にはベッドがある。
 体を動かそうとしたが動かない。
 落ち着いて自分の状況を確認してみる。どうやら俺は裸にされた挙句、椅子に座った状態で縛りつけられているらしい。紐は切れそうにない。
「意識はどうですか、大輔さん」
 後ろから声が聞こえた。忌々しい佐藤の声だ。喋れないので唸り声で抗議する。
「元気そうで良かった。気付は成功みたいですね。咄嗟に絞め落としちゃいましたけど、それなら大丈夫そうですね」
 佐藤が視界内に現れた。
「おい、何のつもりだ!?」
「暴れたら危ないですよ。一応、椅子はガムテープで固定してありますけど、所詮テープですから。これから何をするか、気になりますか?」
「そんなことはいいから、さっさとこれをどうにかしろ! これは犯罪だぞ!」
 佐藤は俺の言葉を無視した。
「これから、愛美さんと俺のセックスを大輔さんに間近で見て貰うんですよ」
 言われた瞬間、頭が真っ白になった。冗談としか思えない。まさに現実と化した悪夢だ。夢なら醒めて欲しい。
「愛美さん、おいで」
 馴れ馴れしい声で佐藤が呼ぶと、妻が親しげに近寄り、俺に見せつけるように佐藤に抱きついた。
「始めますからじっくり見てくださいね」
 佐藤がにたりと笑い、妻の唇を奪った。妻は拒絶する風もなく、それどころか自ら口を開けて受け容れ、舌を絡ませている。しかもそればかりではなく、互いの体を撫で合い、少しずつ衣服を脱がし合っている。
「お、おい、お前ら、何を……おい……おい!」
 あんなキスを俺は知らない。俺達の間でのキスは唇を合わせるだけのものだった。あんな風に唾液を零しながら体をまさぐり合うような、不潔で激しいキスなどしたことがない。男の唾液を美味そうに飲み下す妻の姿など見たくもない。
 俺が見守る前で、妻が若い男と絡み合い、少しずつ肌を露わにしていく。妙に息の合ったその動きは、一回や二回のセックスで身につく程度のものではない。一体妻は何度この男に抱かれたのか。どんな風に抱かれたのか。心がどんどん沈んでいく。
 やがて二人は下着姿になり――俺の知らない下着、いやらしく透けた卑猥な下着を身につけた妻の姿と、佐藤の信じがたいほど大きく張り詰めた股間の前には驚かずにいられなかった――遂には一糸纏わぬ生まれたままの姿になった。
 二人の股間を見てもう一度驚く破目になった。
 まず妻だが、淫売のように毛を弄っているのを叱りつけて以来、伸ばし放題になっていた股間の茂みが、綺麗さっぱり失われていた。まるで子供のようにツルツルになっている。剃られたのか剃らされたのか。妻がまるで淫売のように扱われている現実に頭がくらくらした。
 そして佐藤の方だが、こちらは同じ日本人であることが信じられないほどに凶悪な怪物を股座に飼っていた。生まれてこの方皮など被ったこともなさそうな先端は赤黒く膨らみ、雁首は信じられないほどに逞しい。黒々とした竿自体も子供の手首ほどの太さがある上、長さも相当なもので、角度も急で真っ直ぐ天を目指している。その下には握り拳ほどもある巨大な陰嚢がぶら下がっている。
 ふと素裸にされた股間に視線を落としてみると、そこには半ば皮を被ったものが縮こまっている。大人と子供ほどにも差があるように思える。あれが大砲だとしたら俺のは水鉄砲だ。男として圧倒的に敗北している現実と、妻があの大きなものに何度も貫かれた事実とが二重の衝撃となり、体の奥に重い鉛の塊が埋め込まれたような気分になった。
 妻が佐藤の前に跪いて化け物のような男の陰部に手を伸ばし、顔を近づけた。
「お、おい、まさか……愛美、お前……そんな……」
「大輔さん、見てください。これが私に本当のセックスを教えてくれたおちんちんです。大きくて逞しいでしょう?」
「や、やめろ……頼む、そんなこと、やめろ……」
 妻がそそり立つ佐藤のものに頬擦りしている。恋人の胸に頬を寄せるような顔で醜悪な肉の塊に頬を寄せている。
「今から教えて貰った通りにおちんちんにご挨拶しますから、よく見ていてくださいね」
 言うが早いか、妻は太い竿を片手で扱きながら、もう片方の手で手に余るほど大きな陰嚢を柔らかく揉み、俺と誓いの口づけを交わした唇を赤黒く濡れた先端に触れさせた。
 俺にしていたようなキスを数度繰り返すと、犬のようにだらしなく舌を伸ばし、汚らしい肉の棒を舐め回し始めた。床に滴り落ちるほどに唾液を塗りたくった後、おもむろに口を開けて先端を頬張り、頭を前後に動かし、麺類を啜るような下品な音を立て始めた。御馳走を味わっているかのようにうっとりとした表情で頬張りながら、手は竿と袋を愛撫している。飼い犬を褒めるような手つきで頭を撫でられると、何か素晴らしい出来事に見舞われたかのように幸せそうな顔になり、一層頭の動きを激しくする。
 しばらく先端を口に含んだ後、唇を竿の上で滑らせながら下へ下へと向かっていき、佐藤の股間に顔を埋めるようにして、巨大な陰嚢に唇をつけ、舌を這わせ、顔を擦りつけている。いつから俺の妻は風俗嬢になったのだ。
「そろそろいいかな。愛美さん、ベッドに乗ってこっちにお尻向けてよ」
 佐藤に言われ、妻は名残惜しげに醜い肉塊にキスをしてベッドに上がり、四つん這いになってこちらに尻を向けた。
「自分で開いてご覧」
 あろうことか、妻は犬のように這い蹲ったまま、自分で尻を広げた。豊かな丸い肉に挟まれた茶色い窄まりと、俺だけが触れることを許されていたはずの肉の穴が丸見えになった。恥ずかしげもなくAV女優のようなポーズを披露するような女を俺は知らない。
 その光景には微かな違和感があったが、それが何かはすぐにわかった。窄まりからは先端に輪がついた紐のような物が飛び出していた。何かが入っているらしい。嫌な予感がした。
「あ、大輔さん、やっぱり気になります? 今抜きますから見ててくださいね……愛美、開いたまま、力を抜いてるんだよ」
 尻を一撫でした佐藤は、紐の輪に指をかけ、ゆっくりと引っ張り始めた。
 妻の肛門がまるでこれから排泄するかのように大きく盛り上がり、内側からの圧力でゆっくりと口を開け始めた。苦悶するように妻の尻が震えた。
 開いた口からは紐と繋がる紫色の何かが見えた。やがてそれはゆっくりと口を押し拡げて半分ほど顔を出した。ピンポン玉程度の球体だった。
 佐藤が更に引くと、いくつも繋がった球体が妻の尻から顔を出した。佐藤が全てを抜き取ると、妻は尻を震わせながらベッドに突っ伏した。
 佐藤は湯気の立つその器具を無造作にベッドの上に投げ出し、ひくつく妻の尻に手をかけた。そのまま大きく割り開く。ぽっかりと口を開けた肛門が弱々しく収縮しているのが見えた。その下の肉の穴からは涎が滴り落ちている。あのどれだけ愛撫しても滲み出る程度にしかならない、濡れにくい妻の穴から。
「今の見ました、大輔さん。今日、愛美さんはずっとこれ入れてたんですよ。出迎えにいった時、いつもと違う感じがするな、とか思いませんでした?」
 あの時の熱っぽい表情はこれが原因だったのか。佐藤が仕込んだ、この卑猥で不気味な器具の。
「愛美さん、ちょっと冷たいかもしれないけど我慢してね」
 佐藤の手には得体の知れない液体の入った容器があった。そのボトルのキャップを外すと、妻の尻の上で傾けた。容器の口から桃色がかった透明で粘り気のある液体が滴り落ち、妻の尻を濡らす。
「大輔さん、今面白いものを見せますから、よく見ててくださいね」
 言うなり、佐藤は妻の尻に纏わりついた液体を指で集め、だらしなく開いた肛門に塗りたくり、そのまま指を突き立てる。妻の体がぴくりと震えるが、佐藤はそれに構わず指を二本、三本と増やし、妻の排泄器官を弄んだ。
「ほら、凄いでしょ。愛美さんのお尻、こんなに拡がるようになったんですよ」
 妻の肛門が佐藤の指にぐちゃぐちゃと掻き混ぜられている。妻は指が動くたびに尻を震わせ、吐息を漏らすが、決して抵抗せず、されるがままになっている。それどころか、健気に尻を捧げ、佐藤の悪戯に協力してすらいる。
 佐藤が指を抜き、汗ばんだ尻を平手で軽く叩いた。小気味良い音と共に肉が震えた。
「さて、そろそろいいかな。じゃあ愛美さん、あれつけてくれる?」
 妻がのろのろと身を起こし、ベッドサイドの箱――コンドームだ――を探ってコンドームを取り出し、封を切った。
 仁王立ちになって逞しい陰茎を突き出す佐藤の前に跪き、口にコンドームを咥えた。
 これを見ても妻が何をしようとしているのか見当がつかないほどウブではない。
 しかしそれはあまりにも無惨な光景だ。見たくない。
「あ、ああ……うう……」
 だが目を逸らすことも閉じることもできない。妻が赤黒い先端に口づけ、苦しげにそれを口に収めていく様子を涙を流しながら見ることしかできなかった。
 妻は苦労して半分程度を口に収めたが、それ以上はつらくて入らないようだ。動きが停まった。
 そこへ佐藤が手を伸ばし、妻の頭に触れる。まさか強引に押し込むつもりか。
 幸い――なのだろうか――にもその危惧は外れた。佐藤は労わるようは妻の頬を撫で、口を離させた。
 妻は申し訳なさそうな顔で肉棒に触れ、手でコンドームを装着させた。
 散々避妊せずにセックスしてきた男が今更なぜコンドームなど使うのか。この疑問の答えは薄々ながらも予想がついていた。だがそれは信じたくないし、間違っていて欲しい予想だ。
 佐藤がもう一度優しく頭を撫でると、妻は再び四つん這いになって俺の方に尻を向けた。俺の目の高さの辺りに丁度肛門が来た。
「大輔さん、今から愛美さんの初アナルです。一生に一度の瞬間ですから、しっかり見てあげてくださいね」
 佐藤はコンドームの具合を確かめるように何度か肉棒を扱き、もう一度あの卑猥な液体を妻の肛門に垂らした。
 結局、俺の予想は正しかったのだ。
 目の前で佐藤が妻の体を跨ぎ、俺に結合部が見えやすいようにするつもりか、何度か姿勢を調整した。何度か位置変更を繰り返した後、納得のいく位置を見つけたらしく、佐藤は凶悪な陰茎を妻の肛門に押し当てた。
「おい……佐藤! よせ! やめろ!」
「大輔さん、ほら、愛美さんのお尻に俺のチンポが入ってくところ、じっくり見てください」
 グロテスクな亀頭が妻の肛門を押し拡げてめり込んでいく。俺はただただ太い肉の棒が妻の尻を侵略していく様を眺めていることしかできなかった。
 妻の尻が震え、息遣いが苦しげなものとなるが、やはり抵抗はしない。黙って尻を佐藤に捧げている。どうしてそんな扱いを受けても佐藤を受け容れるのだ。
「ほら、大輔さん、見てください、俺のが全部入っちゃいましたよ。いやぁ、しかし、尻の穴っていうのはほんとよく締まりますよね。食い千切られそうです」
 馴染ませるように腰をぐいぐいと押しつけながら、佐藤が妻の尻の具合を実況している。
 妻は苦しげな息遣いながらもどこか心地良さそうな、鼻にかかった喘ぎ声を漏らしている。
 妻の尻を鷲掴みにした佐藤は、段々と腰の動きを大胆なものとしていきながら、不快な実況を続けた。
「ほら、こなれてくると、こんなに動かせるんですよ。ああ、愛美さんの、熱くて気持ち良いよ!」
「やめろ! そんなの聞かせるな! 黙れ! 黙れぇっ!」
 肉がぶつかる音が高まるにつれ、妻の声も次第次第に高まっていく。酷く切なげな声だ。
 俺は茫然と、肉がぶつかる音と妻の嬌声を聞き、尻の穴に逞しいものが出入りする様子を眺めた。
「あ、そうだ、大輔さん、繋がってるところだけじゃなくて、顔も見たいですよね。ちょっと待っててくださいね」
 そう言い、佐藤は妻を後ろから抱え上げ、こちらを向いた。妻は佐藤の膝の上に座らされ、まるで小便をさせられる子供のように開脚させられていた。
「顔も、繋がってるところも、これなら全部見えるでしょう?」
 俺の目に全てが飛び込んできてしまった。紅潮し、快楽に蕩ける妻の顔。後ろから揉みしだかれ、弄られる豊かな乳房。一体何の運動に使っているのか腹筋の収縮が窺える腹部。白濁した分泌物を滲ませる剃り上げられた肉穴。そしてその下で肉の凶器としか言い様のないものを受け容れた排泄器官。見たくもないものが全て見えている。
「お前……何でそんな顔で……何でそんな顔をするんだ……!?」
「愛美さんがお尻で感じてるところ、よく見ててください」
 佐藤が妻の尻を突き上げ始めた。妻の口から甘い声が上がり、乳房が激しく揺れ、尻がぶるぶると震える。
 信じがたい持久力と筋力を発揮してしばらく突き続けた佐藤は、妻の唇を味わってから俺を見て、にやっと笑った。
「取り敢えず、一回イカせて体解しちゃいますね」
 その言葉と共に佐藤の腰の動きが早く深くなり、妻は一際甲高い声を上げて全身を仰け反らせた。同時に、佐藤もくぐもった声を上げて腰を妻の尻に埋め、痙攣させた。
「ほら、愛美さん、お尻だけでイケるようになったんですよ。うわぁ、凄く締まるなぁ。ゴムの中なんて勿体無いけど、凄く出ちゃう」
 うっとりとする妻の尻の深々と陰茎を突き立てながら、佐藤が心地良さそうに言う。
 だが俺には、佐藤の不快な言葉よりも、深々と繋がった場所で、化け物のような凶器とその下の袋が脈打ち、妻の体の中に汚らしい液体を送り込んでいる様子よりも、はしたなく緩んだ妻の顔の方が余程衝撃的だった。あんなにも幸せそうな、あんなにも気持ち良さそうな、そんな顔をしている。俺は妻にあんな顔をさせてやったことが一度でもあっただろうか。あんな妻の顔は初めて見る。どうして妻は俺以外の男に抱かれてあんな顔をするのか。どうしてあそこにいるのが俺ではないのか。
 少しして、佐藤が一仕事終えた男の溜息を漏らし、腰のものを引き抜いた。抜け落ちる瞬間、妻は震える声を上げた。
 佐藤のものに貫かれていた場所にはぽっかりと穴が開いており、口を閉ざそうと空しい収縮を繰り返している。酷く現実感に乏しい眺めだ。
 佐藤は仰向けに妻を寝かせた。丁度、俺の前に妻の顔が来た。
 妻と目が合ったが、どちらからともなく目を逸らした。見てはいられない。
「愛美さん、口開けて」
 妻の顔の横に膝を突いた佐藤は手に何かを持っていた。
 妻が素直に口を開けると、佐藤はその何かを妻の顔の上に翳した。
 それはコンドームだった。中には黄色味がかった恐るべき量の白濁液が入っている。
「やめろぉ!」
 俺の目の前で、コンドームが逆さにされ、そこから粘塊のような白濁が妻の口の中に滴り落ちた。
 妻は吐き出すどころか顔を顰めもせず、微笑みと共に口を閉ざし、あろうことかくちゃくちゃと咀嚼し始めた。
「味はどう?」
「美味しいよ」
「よかった。味わったらちゃんと飲み込んでね」
「うん……」
 たっぷり数分間――或いはもっとか――口の中で転がした後、妻の喉が動いた。汚らしい液体が、佐藤の体液が、妻の体の中に飲み込まれたのだ。
 妻は佐藤が差し出した水で口を濯ぎ、そのまま吐き出しもせず飲み込む。
 佐藤がそんな妻の髪を親しげに撫でる。
「ねえ、愛美さん、次はどうしたい?」
「……太郎くんのおちんちん、もっと欲しいな」
「欲しいんだ?」
「……うん」
「じゃあ、ちゃんとどこに何が欲しいか教えてくれないと。ほら、こっちに向かってさ」
 佐藤が位置を変え、俺に背を向けた。
「い、いじわるぅ……あのね、オ、オマンコに……オマンコに、太郎くんの大きなおちんちん、欲しいの……」
 仰向けになった妻は膝を抱えて脚を開き、愛液を滴らせる卑猥な穴を佐藤に向け、清楚な妻の口から出てきたとは信じられないような言葉を吐いた。
「ちゃんと言ってくれればわかるよ。もう準備は必要なさそうだけど……うーん、でも、観客もいるし、ここはじっくりやろうか」
 そう言った直後、佐藤が愛美の肉穴を指先で拡げた。白く濁った分泌物がどろりと流れ出る。妻がこんなに濡れたことはなかった。佐藤にそういう風に変えられてしまったのか。
「あ、大輔さん、見てくださいよ、愛美さん、もうこんなに濡れてますよ。愛美さんって凄く濡れやすいんですけど、知ってました?」
「大輔さんはそんなの知らないよ。だって、大輔さんの愛撫、全然気持ち良くなくて……気分で何とか濡れたけど……」
「お前、何を言って……」
 妻が俺を貶めると佐藤が笑う。
「勿体無いなぁ、本当、こんなに濡れやすくて可愛いオマンコなのに……」
 佐藤が開かれた脚の間に顔を埋めた。犬が牛乳を舐めるような音が聞こえ始めた。妻がシーツを掴みながら悶える声がそれに混ざる。
「ああ、美味しい。大輔さん、こんなに美味しいオマンコ、舐めたことなかったんですって? 勿体無いことしますねえ」
 佐藤が顔の角度を変えると、長い舌が複雑な動きで妻の肉穴を蹂躙するのが見えた。白濁した愛液が長い舌に舐め取られるたび、妻の体が震え、声が上がる。佐藤が痛々しく膨らんだ陰核を唇で挟み、しばらく顔を動かすと、妻は高らかな嬌声を上げて大きく震え、脱力した。
「今の見ました? 愛美さんはここを舐めると簡単にイっちゃうんですよ。さて、準備はできたし……大輔さん、いよいよ本番いきますね。愛美さんがどれだけ可愛くなるか、そこで見てあげてください」
 佐藤が脱力してだらしない姿を晒す妻の上に覆い被さった。大きな肉の棒が濡れた肉の穴に押し当てられ、ゆっくりと入口を押し拡げ、めり込んでいく。俺の最愛の妻の神聖な場所に、温かくて気持ちの良い場所に、俺以外の男の、俺よりももっと逞しいものが、見せつけるかのようにゆっくりと潜り込んでいく。
「ああっ、愛美さん、いつもより締まって気持ち良いよ。大輔さんがいるから興奮してるの?」
「そ、そうかも……」
 妻が恥じらうように答えるが、その恥じらいは俺に対するものではなく、あくまでも佐藤に対するものに違いない。
 佐藤の腰が妻の股間に密着した。巨大な肉の棒が妻の中に根元まで突き立てられた。大きな袋が妻の尻に圧しつけられて形を変えている。
 妻が佐藤の背中に腕を回し、腰に脚を絡めた。その手足は、まるで愛撫をするように、優しく佐藤の体を撫でている。
「愛美さんの中、凄く熱くて気持ち良いよ」
 不快な実況をしながら佐藤が腰をぐりぐりと動かす。妻が嬉しそうな声と共に腰の動きを合わせる。密着したままの結合部が視界の中央で踊っている。
 しばらくその動きを続けてから、先程肛門を犯した時と同様、佐藤が動きを激しくした。激しいだけではない。激しい動きの中、腰は複雑な軌道を描き、様々に角度を変えている。
 腰の一往復ごとに妻の蕩けた声が響く。佐藤が動くたびに快感が生じるかのような反応だ。佐藤は妻の体を隅から隅まで知っているのだろう。疑いなく、妻の体にこの世で最も詳しいのは、夫である俺ではなく、この佐藤だ。
 佐藤に体を貫かれて喘ぐ妻の声を聞くたび、見せつけられる二人の尻と結合部、暴力的な肉の塊が肉を掻き分けて押し入り、肉を引き摺り出すように戻る様子を見るたび、妻の体がいかに佐藤に馴染んでいるかが窺え、気が狂いそうになる。
 精神的拷問以外の何物でもない光景を延々見せつけられた後、しばらく妻の唇を貪るような後ろ姿を見せていた佐藤が声を張り上げた。
「知ってましたか、大輔さん! 愛美さんってっ、奥の方の右辺りをっ、こうやってっ、がしがしっ、突いてあげるとっ、ほらっ、こんな風にっ、すぐイっちゃうんですよ!」
 こちらを見もせずに佐藤が声を張り上げ、一際深く突き込んで密着すると、妻が悲鳴にも似た声を上げて全身を震わせた。妻の尻の穴がひくつき、肉穴の周囲が痙攣するのが見えた。また妻は絶頂に達したのだ。今まで俺が一度も味わわせてやれたことのない絶頂に、こうも容易く。
「大輔さん、今の見てました? 愛美さんって、凄く敏感で、ちょっと弱点を弄ってあげるだけで簡単にイっちゃうんですよ」
 他人に妻の体のことをレクチャーされるなど屈辱の極みだ。許されるならば佐藤を今すぐこの手で殺してやりたい。こんな俺の思いを手に取るように理解し、楽しんでいるのだろう。佐藤が挑発的な実況を続けた。
「ああ、凄いなぁ、愛美さんのイキマンコ、最高だ。震えながら絡みついてきて、精子頂戴精子頂戴って吸いついてくる」
 しばらく密着したままでいたが、妻の体が落ち着くのを待っていただけのようで、佐藤はやがて動きを再開した。
 少しして、また佐藤は大きな声を出した。
「出すよ、愛美さん! 愛美さんの中に一杯出すよ!」
 それは明らかに俺に聞かせるための宣言だった。
「おい、やめろ! それだけはやめろ! 頼むからやめてくれ! 俺の前でそんなことをしないでくれ!」
 俺の懇願も空しく、妻が喜色に満ちた声でそれを受け容れる。
「来て、来てぇっ! 私の中に太郎くんの一杯出してぇ!」
 妻の体をがっちりと抱き竦め、佐藤が暴力的なまでに激しく、それでいて洗練された技巧的な動きで妻の肉穴を掻き回し始めた。
「出すよ、出すよ!」
「出してぇっ、ああ、来るぅ、来ちゃうよぉっ……!
 妻が痙攣するように震えながら抱きつくと同時に、佐藤が低く呻き、腰を痙攣させた。
 愛しげにしっかりと抱き合う二人の結合部が俺の目の前で震えている。妻のどろどろに濡れた肉の穴に、佐藤の凶器が根元まで、袋が尻に当たって歪むほどに深く突き立てられている。
 目を背けたいのに目が言うことを聞いてくれない。目が釘付けになり、離れてくれない。
 妻の肉穴は嬉しげに震えながら佐藤のものに吸いついている。俺はその肉穴に突き立てられた佐藤のものが脈打ち、一回二回三回と汚らしい汚濁液を注入していく様を黙って眺めていることしかできなかった。
 満足した風な吐息を漏らして佐藤がどいた。驚いたことにまだ硬さを維持したそれがずるりと引き抜かれると、力無く開いた穴からは塊のような黄色味がかった白濁液がどろりと顔を覗かせ、滴り落ちることなく垂れ下がった。
 それは肛門の時とは違い、酷く現実味のある光景だった。同時に、取り返しのつかない、妻が確かに別の男のものになってしまったのだと痛感させられる光景でもあった。既に俺が知らない間に何度も繰り返されたことだというのは承知の上だが、やはりこうして見せつけられると、全身に冷たい汗が噴き出し、悪寒が走る。
「大輔さん、愛美さんがイってる最中に中出しすると凄く気持ち良いんですよ。もう腰が抜けそうなくらい……あ、旦那さんなんですから、知ってましたよね?」
 楽しそうにそう笑い、佐藤が妻の体の向きを変えた。今度はこちらに頭を向け、俯せになっている。妻の顔は火照り、喜びに蕩けていた。俺はこんな顔をする女など知らない。
「さっきは繋がってるところを見て貰ったから、今度は繋がってる時の顔を見てあげてくださいよ」
 佐藤が妻の尻を持ち上げた。
 まさか、と思いながら眺めていると、そのまさかだった。
 佐藤は妻の尻を抱え、腰を宛がい、一気に突き進んだ。
 妻が掠れた声を上げて背筋を仰け反らせた。
 佐藤はそんな妻を気にかける様子もなく我が物顔で腰を叩きつけている。
 勢いに押されて突っ伏した妻の顔はだらしなく蕩け、その半開きになった口からは喘ぎ声と共に涎が垂れている。もうそれは人間の顔ではない。雌の獣の顔だ。これは俺が知っている女ではない。あの清楚な、性的なことに淡泊な、あの妻がこんな顔をするわけがないのだ。
「大輔さん、愛美さんってお尻叩かれるの好きなんですよ。ほら」
「ひぃんっ!」
 佐藤が手を振り上げ、揺れる尻に向かって叩きつけると、妻が喜色を含んだ悲鳴を上げて身を捩った。
「こうやって叩くと、中が凄くよく締まるんですよ」
 平手打ちが繰り返される。そのたびに妻の体が撥ね、仰け反る。俺の目の前で妻の顔が快楽に歪み、だらしなく舌を突き出し、「凄い、凄いのぉ」と声を上げる。
「愛美さん、ほら、大輔さんにどれだけ気持ち良いか教えてあげて!」
「あひぃっ、はひぃっ、い、言いますぅっ! だ、大輔さん、あ、ああ、あのねぇっ、た、太郎くんのぉ、お、ちんちん……す、すっごいんですぅ……お、おっきくて、か、硬くてぇ……だ、大輔さんのじゃ、と、届かないような、ところ、まで、ひぁっ、擦って、くれるんですぅ……!」
「や、やめて、くれ……お願いだ、もうやめてくれ……」
 視界の中の妻の姿が歪んだ。気づけば、俺は泣いていた。涙のおかげで妻の姿を正視せずに済んだが、涙は所詮、目を覆ってくれるだけだ。音と臭いまでは遮ってくれない。依然として妻の卑猥な告白が耳に襲い掛かってくる。
「も、もうこの、お、おちん、おちんちんじゃ、ないとぉ、だ、駄目、駄目ぇっ、ひぃぃっ、そ、そこ駄目ぇっ……!」
「あれ、大輔さん……」
 佐藤はしばらくの間妻の尻を叩きながら腰を振っていたが、わざとらしい声を上げて動きを止めた。
「あぁんっ、駄目ぇっ、停まっちゃやだぁ!」
 妻が甘えるような声を出して佐藤に尻を押し付けるが、佐藤は妻の尻をがっちりと掴んで固定したまま、俺に笑いかけた。
「大輔さんって変態だったんですね。こんな状況なのに、チンポが勃ってるじゃないですか」
「な、何を言ってるんだ……そんなわけ……」
 まさかという思いで股間に視線を下ろす。指摘の通りだった。俺の股間では、佐藤のものを見た後では最早惨め以外の何物でもないものが、今までにないほど硬く激しくそそり立っていた。
「自分の奥さんが他人のチンポ突っ込まれて悦んでるの見て興奮しちゃったんですよね……あ、そうだ。愛美さん、大輔さんのチンポしゃぶってあげなよ」
「えっ……ええっ!? や、やだよぉ……太郎くんの以外、触りたくないよぉ……」
 妻の拒絶の言葉を耳にした時、俺の股間がますます硬くなった。俺は一体何に興奮しているのだろうか。妻が俺を拒絶したことか。妻が佐藤のものに操を立てたことか。それとも、こんな状況でも、妻の奉仕が受けられるかもしれないことが嬉しくて堪らないのだろうか。
「でも可哀想だよ、仮にも旦那さんなんだし。口でしてあげるくらいならいいじゃない」
「ええ……でもぉ……」
「そうだ、ゴム越しなら我慢できるでしょ?」
「ゴム……でも、大輔さんのおちんちんを口に入れるなんて……」
「やってあげてよ。あんなに興奮してるんだし……やらないと俺もやめちゃうよ」
「そ、そんなぁ……酷いよ、太郎くん……」
「でも、やってくれたら朝までたっぷり可愛がってあげるからさ」
「……うん、わかったよ。太郎くんがそこまで言うなら……でも、絶対だよ? 絶対絶対、朝まで可愛がってよ?」
「わかってるよ」
 佐藤が妻の体を抱え上げ、わざと上下に揺さぶりながらベッドサイドに行き、箱からコンドームを取り出した。
「じゃあ、これ、大輔さんに着けてあげて」
「……うん」
 佐藤はコンドームを妻に渡すと、体を繋げたまま妻を下ろし、四つん這いにさせた。妻は後ろから突かれながら俺に這い寄り、俺の股間に身を乗り出した。
「よ、よせ……やめろ!」
「私だって嫌です……でも、やらないと、太郎くんのおちんちんで気持ち良くして貰えないから……」
 封を切って取り出すと、汚らわしそうに俺のものを指で摘み、コンドームを被せた。明らかに佐藤のために用意されたそれのサイズが合うわけもなく、長さも太さも大幅に余ってしまった。こんな時にも、俺は佐藤への敗北感と劣等感を味わわされなければならないのか。
「……ぶかぶかだ」
 妻が真顔で呟いた。その表情には失望と侮蔑の色があった。頭の中で佐藤のものと比べているのだろう。凄まじい追い撃ちだ。
「ほら、舐めてあげて。舐めないとチンポ抜いちゃうよ」
「やぁんっ、舐めるから、抜いちゃ駄目ぇ……」
 言うなり、妻は獣のような勢いで俺のものを頬張った。佐藤にしてやっていた時のような優しさや慈しみは欠片も感じられない。単にさっさと精液を吐き出させてしまおうと、そういう事務的な動きだ。
 初めて味わう妻の口の中は酷く温かった。こんなにも気持ち良いのなら、変な潔癖さなど捨てて、最初からこういったことをやって貰うべきだった。
 コンマ一ミリにも満たない薄い膜越しに、熱い舌が触れた。
 その瞬間、竿の付け根で灼熱感が爆発した。
「う、うぁぁっ……!」
「えっ!? えっ、う、嘘っ、えぇっ!? も、もう!?」
 驚きの表情を浮かべ、妻が口を離した。情けないことに、俺は妻の舌が触れただけで射精してしまったのだ。白濁液が薄い膜の中に溜まっていく様子を眺めながら、妻は純粋な驚きの表情を浮かべている。
 佐藤が笑った。
「え? もう出ちゃったんですか? もっとゆっくり楽しんでもよかったのに」
「ねえ、太郎くん、もういいでしょ? もう大輔さんのおちんちんいいでしょ?」
「うん、愛美さん、無理なこと言ってごめんね、もういいよ」
 佐藤が再び妻の体を抱え上げ、ベッドサイドに向かう。
「はい、これで口を洗って……」
 佐藤が吐き出したものを飲んだ時と同じように水を与えられた妻は、口を濯いだ後、口の中の液体をゴミ箱に吐き出した。
「愛美さん、そんな所に吐いちゃ駄目だよ」
「ごめんね、でも、飲み込みたくなくて……」
「そんなに嫌だった?」
 妻の体を反転させて自分に抱きつかせ、佐藤がベッドに腰掛けた。妻は佐藤の腰に脚を絡め、ゆっくりと尻を振りながら頷いた。
「……もう太郎くん以外のおちんちんを咥えさせたりしないでね?」
「わかってるよ。これからは、愛美さんが触るのは俺のチンポだけだからね」
「うん……嬉しい。私、太郎くんのものになったんだね」
「そうだよ、愛美さん。愛美さんの体はもう俺のものだ」
 二人はどちらからともなく顔を近づけ、水気を含んだ音や息遣いが俺に聞こえてくるほどに激しくて濃いキスを始めた。
 ねっとりとしたキスを終え、佐藤が俺の方を見た。
「あ、大輔さん、俺達、そろそろ本格的に始めますから、もう大輔さんの相手はしてあげられないんです。そこで見ててもいいですけど、話しかけないでくださいね」
 そう言い捨て、佐藤は妻をベッドに押し倒した。その上に覆い被さり、野獣のように腰を振り始める。妻が鼻にかかった甘い声を上げ始めた。
 目の前で激しく複雑に体を絡み合わせる二匹の獣を眺めながら、俺の体はもう何の反応も示さなかった。
 目からは涙一滴零れず、白濁液で汚れたコンドームに包まれたまま項垂れたものはぴくりとも動かない。


十八

 あの忌々しい日から、あいつらは誰憚ることなく、猿のようにセックスに狂い始めた。佐藤も愛美も、俺のことなどまるで無視して、平然と俺の前でセックスをするのだ。むしろ、俺の前だからこそしている節さえある。
 佐藤の奴はまるで俺の家が奴の家であるかのように傍若無人に振る舞っている。朝から晩まで、時間が合いさえすれば、奴は四六時中、家のあちらこちらで愛美を抱いている。
 早朝にゴミを捨てに行くようになったあいつは、その帰り道に我が家に上がり込み、かつて夫婦の寝室であった部屋で一人で眠る愛美を起こし、セックスを始めるのだ。そのセックスは俺が目を覚まし、前日の内に用意されていた冷たい朝食を温め直し始めても終わらない。それどころか、わざわざ寝室からリビングまで下りてきて、俺が飯を食べている横で雄と雌の臭いを撒き散らしながら体を繋げるのだ。
 昼がどうなっているかはわからないが、多分、俺がいない間も二人で盛っているのだろう。
 夕方以降、つまり俺が帰宅する時間帯も状況は変わらない。帰宅して玄関の戸を開けると、抱っこをするような形で――駅弁とか言っていた――繋がった二人に出迎えられたことさえある。非常に疲れていて、帰ったら熱い風呂に入ろうと思っていたのに、いざ帰宅してみると、風呂で風俗店の真似事をしていたこともある。
 四六時中、家のどこかで妻が余所の男に抱かれて悦びの声を上げている。朝目覚めれば妻が男に尻を突かれていて、夜帰れば妻が男の上で尻を振っている。
 こんな生活に耐えられる男はいない。もしいるとしたら、そいつは狂人か、妻を一度も愛したことがないかのどちらかだ。
 俺は一週間もしない内にこの生活が耐えられなくなった。
 もう俺には仕事しかないのだ。


十九

 隣人夫婦が決定的な破局を迎えた日以来、大輔さんはそれまで以上の仕事人間になり、あまり家に寄り付かなくなったが、それは俺と愛美さんにとってはどうでもいいことだ。俺も愛美さんも大輔さんのことなどさして気にしていない。それ以上に重大なことが起こったこともあり、大輔さんが俺達の意識から消え去るのに大した時間はかからなかった。
 その重大事とは、愛美さんの妊娠だ。最初に体を重ねてからおよそ一ヶ月半後、愛美さんの妊娠が判明した。俺の息がかかった医者によると、現在、四週目とのことだった。
 妊娠判明後、俺はしばらく愛美さんと逢わずにいた。妊娠初期はセックスを避けるべきだし、セックスのできない女に逢う価値などないからだ。妊娠中期、妊婦の性欲が向上し、安全な挿入が可能になってくる時期までは、まず、寝取った人妻の一人から紹介された「主人のために色々覚えたいんです」という勉強熱心な新妻を調教しながら過ごしたが、あちらの新妻も妊娠してしまったため、現在は幼馴染の彼氏との関係に悩む女子高生に狙いを定めている。
 妊娠中期になってからも、子宮への配慮のために中出しができないこともあり、やはり逢う頻度は低かった。女子高生の攻略の合間を縫ってという感じだ。
 今日も女子高生の方の都合がつかなかったため、愛美さんを抱いている。
 主の代わった寝室のベッドに寝そべり、愛美さんの腹に負担をかけない側位で後ろから肉穴を捏ね回していると、ベッドサイドの電話が鳴った。
「あ、お義母さんからだ……たーくん、出ていい?」
「いいよ。でも抜いちゃ駄目だよ」
「えぇ? やだぁ、たーくん、エッチ過ぎるよぉ……」
 困った風に言いつつも、肉穴の締まりは増している。大分好き者になった愛美さんはむしろそれを望んでいる。
 愛美が受話器を取った。
「もしもし、安藤です……あ、お義母さんですか? ご無沙汰してます……はい、母子共に健康だそうですよ……そうなんです、元気な赤ちゃんで……はぅっ……」
 物欲しそうに尻が揺れたので腰の動きを再開してやると、愛美さんの呼吸が色っぽく乱れた。
「えっ? あっ、ん……大丈夫ですよ? 妊婦さん向けの……ふっ、ん……エ、エクササイズを……あ……してるんです。健康な赤ちゃん……ふっ……産むためには、お母さんも、健康じゃないと、駄目ですから、ね……はい、お腹の中で、命が育ってる感じって、いいですね……はい、この子が産まれたら……また、次も……はい、二人目も、あん……頑張り、ますね……はい、それでは……はい、はい……」
 受話器を置き、愛美さんが興奮したような笑みを浮かべた。
「もう、たーくんったら、あんなにねちねち動くんだもん。声が出そうになっちゃったよぉ」
「怒った?」
「ううん、気持ち良かったから許してあげる! だから、もっと一杯こねこねして。赤ちゃんにパパとママが仲良くしてるのが伝わるくらいして」
「いいよ。でも、その代わり、後でしゃぶってね」
「そんなの、代わりになんてならないよぉ。だって私、たーくんのおちんちん一日中だって舐めてたいもん。飲んであげるから沢山出してね……あっ、今、興奮したでしょ。えへへ、中でもっとおっきくなっちゃったよ」
「妊婦さんにそんなこと言われて興奮しない男なんていないよ……ところで、二人目がどうとか言ってたけど、また産んでくれるの?」
「当然だよ。たーくんさえよければ、何人だって産んであげる! 勿論、認知なんてしなくていいよ。そういうのは大輔さんに任せればいいから」
 愛美さんが悪戯っぽく笑い、濡れた唇を押しつけてきた。