八月半ば、俺達一家は、六泊七日の予定で本家に顔を出した。かつて少しばかり裕福な豪農だった佐藤家には、本家の人間はお盆と年始に本家で過ごさねばならない、という時代錯誤なしきたりがまだ残っているのだ。もう往年の財力も権威も残っていないくせに。
 これは今までは顔を出すのが面倒でならない不愉快な行事だったが、今年以降は――少なくとも今年は――違う。
 理由は俺達一家を出迎えた従兄夫婦だ。当主の長男の長男である十歳上の従兄は今年の四月に結婚したのだが、高校時代から付き合って大学卒業後に結婚したという奥さんが美人なのだ。爽やかなスポーツマン風の従兄に寄り添う奥さんは、名前をゆかりさんと言って、理知的な雰囲気の、いかにも才媛といった感じのお姉さんだ。家系に白人の血が入っているらしいせいか、全体的に色素が薄い感じで、特に肌は雪のように白い。また、ついでに言えば、背は俺よりも頭一つ分高いモデルのような長身で、おっぱいも大きい。Dはあるはずだ。伝え聞くところによれば、情報工学だか電子工学だかを専攻していて、大学からは大学院進学を勧められていたほどの優等生らしい。従兄と結婚するから、とその誘いを一蹴したらしいが、全く素晴らしい話だと思う。そういう男女の間に割り込むほど楽しいことはない。
 高校からの付き合い。一途な才女。強い結びつき。序列の高い相手。数え役満だ。これを寝取らずに誰を寝取る。
 俺はこの一週間でこの新妻を俺のものにし、子供を仕込んで従兄の元に貸し出してやる決意を固めていた。
 もっとも、この決意は前々から固めていたわけではない。今年の八月の集まりのことを思って憂鬱になった時、ふと、従兄の新妻が美人だったことを思い出したことが始まりだ。もう三十、四十のおばさん達の体は食べ飽きており、一度若い体を味わってみたいと思っていたこともあり、それならばと従兄の新妻を味見してみることを思いついたのだ。
 基本的には身内は避けるつもりでいるのだが、従兄の妻だけは別だ。将来佐藤一族の当主になる特別な子供なのに種違い。そんな歪んだユーモアが現実のものとなった時のことを考えるとぞくぞくする。




 五十人近い数の本家筋一同が広間に集まり、当主である祖父に挨拶した後は、しばらく自由時間となる。俺は親戚達と挨拶を交わした後、さりげなく部屋を抜け出し、宛がわれた部屋に戻った。「中学生が大人同士の会話に退屈して抜け出した」わけだ。
 中学生ならもう大人みたいなもの、という方針のおかげで宛がわれたのは一人部屋だ。都合が良いのでここを計画の拠点にする。
 読みかけの本を読み進めながら、従兄の新妻を奪う計画を練り上げる。
 勝負は今夜だ。




 そして夕方になり、風呂の時間がやってきた。この時間は計画にとって極めて重要だ。ここでの偵察の結果次第では、計画の再検討や中止も考慮しなくてはならなくなる。
 会合時の佐藤本家の風呂は、性別と世代によって入浴順が決まっている。一番風呂が当主とその兄弟達で、次がその息子達、更にその次が孫以下であり、夕食を挟んで、次に女達が同様の順番で入浴する。風呂から出た後は、旅館でもあるまいに、本家にある浴衣に着替える。
 俺は「孫」世代なので従兄達と入浴することになる。長男夫婦の息子四人、三男夫婦の息子二人、即ち俺と弟、四男夫婦の息子二人と結構な大所帯だ。
 年齢は、長男の長男が二十二歳、次男が十八歳、三男が十五歳、そして四男が俺と同い年の十三歳、俺の弟が十歳、四男の長男が八歳、その弟が六歳と、大人は従兄だけで、それ以外は中高生と小学生だ。
 風呂で体を洗いながら、さりげなく従兄の股間を確認する。
 勝った。今年二十三歳になる従兄のチンポは決して小さくないし、皮もきちんと剥けているが、大きさにおいてやや俺に劣り、雁首の発達度合においてはほとんど未熟と言ってよかった。早い話が凹凸のないただの先が尖った棒だ。これでは満足に女の中を掻き混ぜることもできまい。
 何はともあれ、チンポの大きさと形でこちらが勝っているのであれば希望はある。相手の方が大きかったら、女の体が覚え込んでいる形を上書きするのは至難の業となってしまう。この辺りは技術とはまた別の問題だ。
 四男夫婦の子供が素っ頓狂な声を上げた。
「うわあっ、太郎兄ちゃんすげえ! チンチン滅茶苦茶でっけえじゃん!」
 その弟も覗き込み、同様に騒ぎ始めた。
「ほんとだ! すげえでかい! 形も何か俺達と違うし! 直人兄ちゃん達よりでかいんじゃねえ?」
 男子小学生は何かにつけてチンコマンコウンコだ。自分も昔ああだったのだと思うと、布団に顔を埋めてジタバタしたくなってくる。
「おいおい、そんなので騒ぐなよ。女子かお前ら。お前らにもついてるだろうが。大体、太郎は中学生なんだからお前らよりでかいのは当たり前だろ」
 呆れた風に笑いながら、何気なく、従兄が俺の股間に視線を落とした。
 直後、愕然とした風に自分の股間に視線を落とし、信じがたい事実に直面したように何度も交互に見比べる。
 その様子を不審そうに見ていた従兄の弟達が同じように俺の股を覗き込み、揃って目を見開いて硬直した。
 股間でぷらぷらと揺れているものに視線を転じると、誰も彼も俺より小さい上、同い年の従弟に至ってはまだ剥けてすらいなかった。
「おーっ! 太郎兄ちゃんすげえ! 直人兄ちゃん達よりでっかい!」
 ガキ共の声に四人は強張った笑みを浮かべ、それ以上この話に触れようとはしなかった。従兄兄弟はでけえでけえと騒ぐ従弟達を複雑な表情で眺めている。




 夕食後はそそくさと部屋に戻り、一人静かに時を待つ。
 計画は順調に進行している。後は静かに時を待つだけだ。
 作戦発動の最も重要な鍵となった夕食時のことを反芻する。
 夕食の席は悪くなかった。従弟達が散々親戚連中に触れ回ってくれたようで、酔っ払った男連中が俺に向かって「お前、デカチンなんだって? 直人よりでかかったらしいじゃないか。将来は女たらしになるぞ」などとげらげら笑い、ガキ共が尊敬の眼差しを向け、笑い物にされた従兄兄弟が恨めしげな視線を寄越し、大人の女性陣が好奇心に満ちた笑みを浮かべてこちらを眺め、十代以下の女性陣が馬鹿な男子に呆れる少女の目でこちらを見ていた。
 いずれにせよ、性的能力のことで注目されるのは悪い気がしない。殊更に巨乳を揺らしたり、生足を晒したりして街を歩く馬鹿女達の気持ちもわかる。雄や雌として注目されることは喜びなのだ。
 ただ不満もあった。ゆかりさんがまるで興味を示す様子がなかった点だ。他の女達と違い、好奇心に満ちた視線も、逆に軽蔑するような視線もない。全く俺を意識してくれなかったのだ。そういうことに淡泊なのか、従兄一筋なのかはわからない。できれば両方であって欲しい。そうであれば、奪う喜びと仕込む喜びを同時に味わえる。
 密かにそういう不満を感じつつも、俺はやるべきことはしっかりとやった。夜を邪魔されないよう、従兄を強い酒で酔い潰してやったのだ。
 負けず嫌いで根が単純な従兄に暴飲させるのは簡単だった。卓上にあったスピリタスを手に取り、何も知らない無邪気な中学生の顔をして差し出せば、後は勝手に飲んで勝手に潰れてくれた。中学生の従弟にチンポの大きさで負けた事実を挽回し、周囲に自分の「男らしさ」をアピールしたかったのかもしれない。
 いずれにせよ、成分的にはほとんどアルコールのスピリタスをストレートで何杯も飲んで無事でいられるわけもない。すぐに真っ赤になって酔っ払いと化し、一人でげらげら笑った後、「眠くなったから寝る。部屋まで連れてけ」と俺に言いつけ、俺に肩を貸されながら部屋に引っ込んだ。




 午後十時過ぎ、佐藤本家は静かになった。大半の家人が床に就いた。まだ活動しているのは、しつこく酒を飲んでいるおっさん達と、従兄の新妻に夜這いをかけようとしている俺くらいだ。
 午後十一時過ぎ、そろそろゆかりさんも寝入っただろうと判断し、行動を開始する。足音を殺し、従兄夫婦が宛がわれた部屋に向かう。
 襖を少し開ける。中は真っ暗だ。既に二人は床に就いている。幸いにも布団は別々だ。
 本当に寝ているかどうかを確かめるため、隙間からミニマグライトで中を照らす。しばらく繰り返しても反応はない。二人はちゃんと寝ているようだ。
 襖を静かに開けて室内に滑り込む。畳に伏せてしばらくの間目を闇に慣らし、大体室内の様子が掴めるようになったところで静かに匍匐前進し、ゆかりさんの布団に近づく。都合の良いことに、ゆかりさんの布団は窓から差し込む月明かりで照らされていた。
 軽くマグライトで顔を照らし、熟睡していることを確認してから、慎重に掛け布団を剥がしていく。
 俺よりも頭一つ分ばかり長身の、やや寝乱れた浴衣姿が露わになった。白い体が月明かりに照らされる姿が幻想的だ。緩んだ衿からは深い谷間と、ベージュかホワイトか、とにかく白系統の清潔感のあるブラジャーが覗いている。裾の方は肌蹴て捲れ上がっており、夜の闇の中でも眩しい、白く長い脚が剥き出しになっている。
 まずは帯を解き、浴衣の前を開く。パンツと揃いのブラジャーと白く滑らかな肌が姿を現す。
 幸いにもブラジャーはフロントホック式だったため、どけるのに苦労はしなかった。ホックを外して左右に開くと、推定Dカップの形の良い豊乳が震えた。
 重力で緩く撓むお椀形のおっぱいを見て、俺は感動せずにいられなかった。これが若い女のおっぱいなのか、と。俺はこんなに張りのあるおっぱいなんて知らない、と。つい半年ばかり前まで女子大生だった女のおっぱいは、三十路過ぎの熟し過ぎて腐り始めているだらしない肉塊とはまるで違うことを、俺は今初めて知った。
 体重をかけないように覆い被さって顔を近づけると、石鹸の香りの中に汗の臭いが仄かに混じった、嗅いでいると良い気分になってくる匂いが鼻をくすぐった。
 月明かりを頼りに綺麗なおっぱいを観察する。
 小指の先くらいの乳首と十円玉くらいの乳輪は共に色が薄い。多分ピンク色なのだろう。明日辺り、部屋に呼び出して明るい所でじっくりと観賞したいところだ。
 乳首を軽く口に含み、舐め転がす。こりこりしていて良い舌触りだ。
 ゆかりさんは「んっ……」と吐息を漏らしたが、目覚める気配はない。悪戯を続ける。
 乳首を舐めるのと並行して、もう片方のおっぱいに掌を置く。吸いつくような餅肌だ。軽く圧力をかけると一瞬の反発の後、素直に形が変わる。
 弄っていると、俗に言う「下乳」の辺りに何かが見えた。顔を近づけてみると、ホクロだった。これはいい情報だ。よく記憶しておくことにする。
 おっぱいを少し弄んだら、名残惜しいが、下を目指す。
 紐パンならば楽なのだが、生憎とパンツは普通の奴だった。
 これは少し厄介だ。紐なら解いて捲るだけだが、普通のは、尻の圧迫から抜き取り、脚の付け根から爪先までの長距離を抜き取るという非常に難度の高い作業が要求される。
 ずらし挿入という手もあるが、個人的には避けたいところだ。あれは下着が擦れて気が散るから好きでない。
 やはりここはいくしかない。パンツのウエスト部分に指を指し込み、慎重に慎重を重ねて、ゆっくりと下へとずらしていく。何分もかけてゆっくりと下ろしていき、遂に最難関の尻を越えた。後はもう流れ作業のようなものだ。脚を心持ち浮かせ、すっとパンツを滑らせる。片足を抜き、もう片方の足首に引っかける。これで終了だ。
 次は弄りやすいように、少し開脚させる。これはここまできたら簡単な作業だ。ゆかりさんは、あっさりと、引っ繰り返された蛙のような、はしたない格好になった。
 脚の間に寝転び、股間部分に顔を近づけ、よく観察する。
 陰毛は薄い。未使用の高級な毛筆の先っぽのような柔毛が淡く生えているだけだ。
 クリトリスは大きめだ。小豆より大きいかもしれない。敏感そうだ。
 肝心の穴の部分は、肉もほとんどはみ出しておらず、穴と言うより筋、まるで中学生のようだ。三十歳を超えたおばさん達の使い込まれた穴とは違う。
 よくよく見ると、ぷくりと盛り上がった恥丘に小さなホクロがある。胸のホクロと言い、ゆかりさんのホクロは素晴らしい所にある。
 初めて見る若い女の股座に興奮し、ついつい見入ってしまったが、のんびりしている暇はない。寝ている内に決定的なところまで済ませ、夜が明ける前に一仕事終えなければならない。
 おもむろに口を近づけ、大きめのクリトリスを舌先で転がし、湿らせる。女を濡らすだけなら、ここを刺激してやるのが一番手っ取り早い。
 ぴくりと太腿が震えたが、それ以上の反応はない。
 舌先の愛撫を継続していくと、割れ目が蕩け出し、雌の臭いを放って愛液を垂らし始めた。指を挿し込むと、四方八方から力強く食らいついてきた。これはいつも相手にしているおばさん達と違い、相当な締め具合が期待できる。期待感にチンポが我慢汁を垂らし始めた。
 すぐにでも突っ込みたいところを堪え、指を使ってある程度解す。
 充分に解れ、体の方も温まってきたところで、いよいよ待ちに待った瞬間だ。
 浴衣の裾を肌蹴ればこちらの準備は完了だ。元々パンツは穿いてきていない。裾を割ればもうそのまま挿入できる。
「……いただきまーす」
 我慢汁に濡れた先端をじゅくじゅくと湿った入口に擦りつけて慣らし、ゆっくりと沈めていく。思った通り、中は熱くて狭い。食い千切られそうな締めつけだ。
 口を拡げて潜り込み始めた瞬間、びくりとゆかりさんが震えたが、
「んん……」と悩ましげな息遣いをしつつも、それ以上の反応は示さなかった。ほっと息を吐き、腰を前後させつつ、ゆっくりとゆかりさんの奥を目指していく。
 ゆかりさんが寝苦しそうに身を捩る。そろそろ目を覚ますかもしれない。
 内心で焦り、腰の動きを速めてしまいそうになるのを堪え、じっくりと掘り進む。
 心臓が早鐘のように鳴り、汗が噴き出し、喉がからからに乾く緊張に満ちた時間の末、遂に俺はゆかりさんの中に全てを打ち込んだ。
 ゆかりさんの肉穴が、少しでも動かしたら裂けてしまうのではないか、と思えるほどに強く食いついてくる。興奮と緊張と快感とが一斉に襲いかかってきて、入れただけで出してしまう最低の結末を迎えそうになった。しかもまずいことに、自分より背の高い女を組み敷いている現実が征服感と快感を増幅させている。
 尻に力を入れ、歯を食い縛って耐え、波が去ったところでしっかりとしがみつき、まずはゆかりさんの中を俺のチンポに馴染ませることに専念する。腰をぐりぐりと動かし、従兄の形を刻まれた柔肉を俺のチンポで耕していく。
「んぅ……直人ぉ……」
 自分が今男に抱かれていることに気づいたのだろう。ゆかりさんが甘えるような声を出して抱きついてきた。脚に脚を絡め、背中に手を回し、心地良さそうな吐息を漏らしている。
「いいよぉ……そこ、ぐりぐり気持ち良い……もっとぉ……」
 うっとりと囁き、キスをせがむように頭に手を回してきた。ゆかりさんは甘えたがりのようだ。
 おねだりに答え、身を乗り出して唇を奪う。歯列を優しく舌でノックすると、甘えるような吐息と共に緩く開けられた。隙間に舌先を潜り込ませると、愛情のこもった動きで熱い舌がぬめぬめと出迎えてきた。
 しばらく舌を絡めたまま腰をぐりぐりと捏ね回していると、何か違和感でもあったのか、ゆかりさんが訝しげな声を上げた。
 月明かりに照らされたゆかりさんの顔が、陶然とした風から釈然としない風に、そして遂に愕然とした風に変わった。
 口が大きく開き、密着している胴体が吸気で膨らむのが感じられた。
 大声を出す気だ。慌ててゆかりさんの口を押さえる。
 寸でのところでこちらが早かったらしく、叫びになるはずだった声は、くぐもった呻きに変わった。
 ばたばたと暴れ出すのを必死に押さえつつ、耳元で囁く。
「ゆかりさん、静かにして。あんまり暴れると直人兄さんが起きちゃうし、人も来ちゃうよ」
 ゆかりさんの動きが停まった。人を殺せそうなほど鋭い目で睨みつけてきた。月明かりで俺の顔が見えているのだろう。
 口を押さえたまま駄目押しに言う。
「俺達が今何してるかはわかるよね?」
 軽く腰をくねらせる。
 ゆかりさんは眉を歪め、目に涙を浮かべた。
「こんなところ見られたら大変だよね。直人兄さんはショック受けるだろうし、直人兄さん以外でも大騒ぎになる。わかった? わかったなら手を離すけど……」
 ゆかりさんは小さく頷いた。
「うん。じゃあ、騒いだり、暴れたりしないでね。どっちのためにも」
 念押しして離すと、ゆかりさんが、涙の浮かぶ眼で睨みながら、小声で捲し立ててきた。
「あなた……太郎くんでしょ。あなた、自分がしてることがわかってるの!? これはレイプよ、レイプ! 犯罪なのよ! い、今なら忘れてあげるから、早くどきなさい!」
「……ゆかりさん、知ってる? 強姦罪って親告罪なんだよ。だから、女の人が怒らなければ、強姦は犯罪にはならないんだ。あと、そう、少年法。俺ってまだ十三歳だから、捕まっても大した罪にはならないよ」
「そういう問題じゃ――」
「ねえ、ゆかりさん、そんな風に考えないでさ、もっと前向きに考えようよ。もう入っちゃったんだから、諦めて一緒に気持ち良くなろうよ」
「エッチな本の読み過ぎよ! こ、こんなことされて、気持ち良くなるわけ――」
「なるんだよ、ゆかりさん。実際、相手が俺だって気づくまで、ゆかりさん、気持ち良さそうに俺に抱きついてきたじゃない。気持ち良くならないんだったら、あれはどう説明するの?」
「そ、それは……直人だと思ったからよ! あなただってわかってたら抵抗してた!」
「ふうん。直人兄さんも可哀想だなぁ。高校時代から付き合ってる奥さんなのに、旦那さんのチンポとそれ以外のチンポの区別がつかないんだもん」
「だって……だって、他に誰もいないはずなんだから、しょうがないじゃない……」
「あ、そうやって開き直るんだ。でも、ゆかりさんが気づかずに感じちゃったことに変わりはないよね。要するに、チンポだったら誰のでも良いし、誰のでも感じるんでしょ?」
「そんなこと……言ったってぇ……えぐっ……」
 ゆかりさんが肩を震わせ、しゃくり上げ始めた。
 涙に濡れたゆかりさんの頬を優しく撫でながら微笑みかける。
「泣かないでよ、ゆかりさん、人間なんてそんなものなんだよ、男女関係なく。心と体は別物なんだ。嫌いな相手だから感じないなんてことはないし、好きな相手だから気持ち良いとは限らない。実際そうでしょ? だって、もしそうじゃなかったら、どうでもいい人とエッチする人なんてほとんどいないはずだし、エッチの相性が合わなくて別れる人達もほとんどいないはずだよ」
「そんなの……ひぐっ……屁理屈よぉ……わ、たしは……直人じゃなきゃ、やなのぉ……」
「でもさあ、ゆかりさん」
 耳元でゆっくりと囁く。
「気づいてる? ゆかりさんのキツキツオマンコ、さっきから俺のチンポ美味しそうに咥えて離さないよ。ほら、こうやって腰を引くと、行かないで行かないでってしがみついてくるし、こうやって押し込むと、美味しい美味しいって絡みついてくるよ」
「あっ、んっ……そ、そんなことぉ……ひっ……はぅっ……ないぃ……」
 緩やかに腰を動かしながら囁き続ける。
「意地っ張りだなぁ。でも、どっちみちこのままするんだから、楽しんだ方が得だと思うよ。ねえ、割り切っちゃおうよ。ゆかりさんが好きなのは直人兄さん。でも体は俺のチンポを欲しがってる。体は俺としたがってる。俺もゆかりさんとしたがってる。直人兄さんは酔っ払って寝てるし、他のみんなも寝てるかお酒を飲んでるかしてるから、俺達が秘密にしてれば誰にもバレない。ほら、ゆかりさんさえ割り切っちゃえば、全部丸く収まるし、気持ち良くもなれるんだよ」
 ゆかりさんは硬く目を閉じ口を噤み、俺の言葉を一切無視しようとしている。
 しかし、俺が腰を動かすたび、体はぴくぴく震え、口と鼻からは悩ましげな吐息が漏れる。無視しようとして却って意識してしまい、余計に感じてしまっているのだろう。
「まあ、俺は別にいいんだよ。ゆかりさんがどうだろうと、このまま続けるしね。ねえ、キスしようよ」
 顔を近づけて閉ざされた唇を奪おうとすると、ゆかりさんは顔を背けて拒んだ。
「ふうん……そういうことするんだ。ゆかりさんがそういう態度なら、後で爺ちゃんに言いつけちゃおうかな。ゆかりさんに誘われてエッチしちゃいましたって」
「そ、そんなの……んんっ……誰も、あっ、し、信じない……」
「俺はゆかりさんのおっぱいとオマンコにホクロがあること知ってるけど、普通、そんな所のホクロなんて知らないよね……だってそんな所、エッチでもしない限り見ないんだから」
「あなた、ひぅっ……自分が、あんっ、何言ってるかわかって、ひぁ……わかってるの? そん……んっ……そんなこと……したら、た、大変な、こ、ことにぃ……な、なるわよ! 冗談では、ひっ……す、済まされ、んんっ……ないのよ……!」
「え? まあ、俺はちょっとお説教されるだけで済むだろうけど、ゆかりさんは追い出されちゃうだろうね。あ、直人兄さんはショックで首吊っちゃったりするかもね。ああ、こりゃあ確かに洒落にならないや」
「……こ、子供の……あっ……い、言い分なんて……はぁ……あっ……だ、誰も信じないわよ」
「ゆかりさん、言ってること矛盾してるよ。子供の言い分が通らないなら、何で大変なことになるのさ。逆だよ。むしろ子供だから通るんだよ。大人のお姉さんと中学に上がったばかりの子供がいて、子供の方がお姉さんに誘われましたって言ったら、まあ、大体の人は俺の味方をするんじゃないかな。もしそれで足りそうになかったら、お前のチンポがでかいっていうのは本当か見せてみろって言われてパンツを脱がされて……とか言っちゃえばいいしね。子供は天使とか、ホント面白いよね」
「こ、この……んんっ……悪魔ぁ……!」
「悪魔だなんて心外だなぁ。あんなのと一緒にしないでよ。俺は人間」
「こん……な酷いこと……悪魔よぉ、あなたは……!」
「だからさぁ、悪魔なんて所詮人間のカモなんだから、そんな情けないのと一緒にしないで。まあ、そんなのはいいからさ、エッチに集中しようよ」
「せ、せめて……スキンつけて……」
「やだよ。それじゃ意味ないじゃない。ゆかりさんには俺の赤ちゃん産んで貰うんだから。当然、生で中出しだよ。一番奥でたっぷり出してあげるよ。楽しみにしてて」
「い、嫌……お願い、それだけはやめて……えぐっ……お願い……セックスは……ぐす……させてあげるから……せめて、せめてちゃんと避妊を……」
「駄目駄目。生じゃないと気分が悪いし、中出しじゃないと気持ち良くないよ」
「お願い……やめてよぉ……生でなんて、まだ直人ともしたことないの……ひぐぅっ……!」
 生で入れられたことも中出しされたこともない女に生で挿入して種付けする。興奮せずにいられない。チンポがますます硬く大きくなった。
 この言葉はむしろ俺を余計に興奮させ、煽るだけなのだが、ゆかりさんはこの言葉が抑止力になると本気で思ったのだろうか。だとしたら、男というものがわかっていない。
「そんなこと言われてやめられると思う? 余計に生で中出ししたくなっちゃうよ。決めた。今日は一発出したら戻ろうと思ってたけど、二、三発出す。そうしないと収まらない」
「い、嫌ぁ……お願いだから、それだけは許してぇ……赤ちゃん出来ちゃう……」
「やだなぁ、そのためにするんだから当然だよ。大丈夫大丈夫。全部黙ってればバレないって。直人兄さんにはゴムが破れたとか言っとけばいいんだよ。そうすればみんな幸せになれるんだから。俺とゆかりさんは気持ち良いエッチが沢山できて、直人兄さんは何も知らないでいられる。ね、それより、キスしようよ。凄いのしてあげるから、口開けて……開けてくれるよね?」
 嫌悪感を露骨に滲ませ、ゆかりさんが薄くて形の良い唇を半開きにする。
「じゃあ、さっきと同じように……直人兄さんにするみたいに舌を絡めてね」
 唇を啄み、舌を潜り込ませると、ゆかりさんが不快そうに身を震わせ、顔を顰めた。俺は気にせずに口の中を舐め回し、唾液諸共に舌を啜り、体をまさぐる。
 ゆかりさんは嫌そうにしつつも舌を合わせ、「ん……」と甘い声を上げた。
「ゆかりさん、動くから、しっかり俺に抱きついて。背中に手回して、腰に脚絡めて……ほら、早くしてよ。うん、いいよ。もしかして直人兄さんとエッチする時もそうしてる?」
 ゆかりさんは涙の溜まった目で俺を睨み、顔を背けた。
「無視しないでよ、悲しいなぁ。まあいいや。沢山気持ち良くしてあげるから楽しみにしててね」
 ゆかりさんの体を抱え、本格的に腰を遣い出す。
 最初の内、ゆかりさんは、歯を食い縛って堪えていたが、やはり快楽は堪えようと思って堪えられるものではないから、食い縛った歯の隙間から切なげな声が漏れていた。また、俺のチンポを頬張る肉穴も、熱い愛液を沁み出させながらねっとりと絡みついてきた。
 ゆかりさんの穴がこなれてくるのに合わせて徐々に動きを早く大きくしていくと、段々と表情が蕩けてきた。月の頼りない光でもわかるほどに顔が赤らみ、息が荒くなり、吐息が熱くなり、漏れ出る声もしっとりとしたものになってきた。
 それから、今まで意識的に責めるのを避けて焦らしてきた、ゆかりさんが特に感じる部分、まだ半覚醒状態のゆかりさんが悦んで求めていた部分を大きな雁首で執拗に引っ掻き、擦り上げてやると、ゆかりさんはひいひいと喘ぎながら全身を痙攣させた。肉穴が食い千切られそうな強さで締めつけ、絡みついてきて、俺も堪らずイキそうになってしまったが、そういう余裕のない射精はしたくないので必死に堪えた。
 この作業を更に数回繰り返して波打つように震える肉穴の味を堪能した後、だらしなく表情を蕩けさせたゆかりさんの耳元に告げる。
「そろそろイキそうだから、中にたっぷり出してあげるね」
「い、嫌ぁ……やだ、出さないでぇ……お願い……お願い……それだけは許して……!」
「駄目だよ。俺はゆかりさんのお腹大きくするって決めてるんだから」
 腰の動きを速め、ゆかりさんを絶頂に追いやると共に俺自身も快楽を貪る。射精感が臨界点に達した瞬間、タイミングを合わせてゆかりさんの弱点を突く。
 押し殺した嬌声を上げてゆかりさんの腕が、脚が、肉穴が、俺に力強く絡みついてきた。最高の締め具合を味わいながら腰を震わせ、蠢く穴の最奥にどろどろとした精液を送り込む。
「やだ、やだぁ……あっ、あぁぁっ、で、出ちゃってる……あぅぅ……」
 出し終えた後、まだ硬いままのチンポで精液を奥へと押し込む。
「ああ……最高だったよ、ゆかりさん」
 涙と鼻水と涎で顔をべちゃべちゃにしたゆかりさんにキスすると、もう払いのける気力もないのか、或いは俺とのキスが好きになったのか、俺の舌は何の抵抗も受けずに口内を蹂躙できた。
 ゆかりさんが涙声で呟いた。
「……どいてよ。もう満足でしょ」
「何言ってるの、ゆかりさん。最初に言ったでしょ。二、三発やってくって。まだまだ始まったばかりだよ」
「う、嘘ぉ……やだよぉ、もうやめてよぉ……」
 ゆかりさんの弱々しい泣き顔に興奮してますますチンポを硬くしつつ、俺は更に四発、ゆかりさんの心地良い穴の中に熱い精液を放ってしまった。気持ち良過ぎて歯止めが利かなかったのだ。
 限界ぎりぎりまでチンポを押し込み、尿道に残る分も排出し尽くす勢いで下腹部に力を入れた後、チンポを抜く。数時間ぶりにチンポが空気に触れた。体液で濡れているせいで酷く涼しい。
 月明かりを頼りにゆかりさんの様子を窺うと、酷い有り様だった。顔は涙と涎と鼻水にまみれており、どろどろに汚れた浴衣は羽織って袖を通しているだけ、胸は俺の唾液で濡れ光り、股間にはぽっかりと穴が開いてそこから泡立った粘液が零れ出している。
 心身共に疲労困憊しているゆかりさんでは後始末などできそうもないので、応急的に俺が済ませておくことにする。
 枕元のティッシュ箱からティッシュを適当に取ってまず俺の股間を拭い、それから浴衣の帯を締めて身支度を整える。
 次はゆかりさんの番だ。
 まず股間を拭う。中の分まで掻き出す気はないが、外側くらいは綺麗にしておく。精液を纏わりつかせたままではいくら何でも臭いで従兄にバレる危険が高い。
 外を綺麗にした後、パンツを穿かせてまだ白濁液を零し続ける穴に蓋をする。溢れる分はこの清楚なパンツに吸わせてしまえばいい。
 次にブラジャーのカップの中に何とかおっぱいを詰め込み、ホックを留める。かなり下手糞になってしまったが、差し当たり問題はない。この辺りは後で自分で直して貰えばいい。
 それから顔の汚れを拭い、浴衣の前を適当に合わせて帯を結ぶ。
 これで大体「寝乱れた浴衣」の再現くらいにはなったかと思う。
 立ち去る前にゆかりさんの耳元に顔を寄せ、囁く。
「ゆかりさん、とってもよかったよ」
「何が……ひっぐ……よかった……うぅ……よ……こんなこと、しておいて……」
「それに可愛かったよ。声を出さないように必死になりながら抱きついてくるんだもん」
「……最低よ……あなた、最低よ……」
「知ってるよ。でね、ゆかりさん。明日――日付変わってるから今日だけど――の夜は、みんなが寝た頃に俺の部屋に来てね」
「そ……んな……これで、終わりじゃないの……?」
「誰がそんなこと言ったの? 俺達は一週間ここにいるんだから、当然、一週間毎日楽しむんだよ。取り敢えず明日は夜に部屋に来てね」
 強引に唇を奪い、まだ上手く体に力の入らない様子のゆかりさんの口の中を舐り尽くす。
 唇を離し、頬にキスして告げる。
「それじゃ、おやすみ、ゆかりさん。また今夜」
 この後、勿論使ったティッシュは持ち帰って処分した。




 翌日――今日――の夜、俺は部屋で期待で胸とチンポを膨らませながらその時を待っていた。
 しかしその期待感は、十時を過ぎ、十一時を過ぎた頃には、焦燥感へと変わっていた。ゆかりさんは本当に来るのか。真実を暴露する決意をしてしまったのか。俺にそこまでの度胸はないと踏んで無視することにしたのか。従兄に打ち明けて受け容れられたのか。いくつもの暗い可能性が脳裡に浮かぶ。
 もうすぐ日付が変わるという時間になり、もうこれは駄目かと思い始めた頃、廊下に人の気配を感じた。忍び足で近寄るその気配はかなり稀薄で、ゆかりさんが来ることになっていなければ、幽霊の存在を疑っていたかもしれない。
 気配の移動は部屋の前で停まった。
 一拍間を置き、襖が軽く叩かれた。襖を叩くのはマナー違反である気もするが、現代的な感覚からすれば、「少し開けて声をかける」という本来の作法の方が余程マナー違反であるように思える。このノックの主は知っていてこうしたのか、それとも知らずにこうしたのか。それによって少しこのノックをした相手への評価が変わりそうだ。
 ともあれ、返事をしなければならない。
「どうぞ」
 さて、相手は誰か。俺に抱かれに来たゆかりさんか、怒り狂った従兄か、親父か、母さんか、親戚の誰かか。
 襖が静かに開いた。
「……来たわよ」
 ゆかりさんだった。一人のようだ。綱渡りに成功したのだ。
 ゆかりさんは沈鬱な表情で俺を一瞥し、襖を閉めた。
「来てくれてありがとう。時間ないから早速脱いでよ」
 無言で浴衣の帯に手をかけたゆかりさんは、そこで手を止め、俺を睨んだ。
「……ねえ、あっち向いててくれない?」
「やだ。脱ぐところ全部見たい」
「……好きにすればいいわ」
 刺々しく言い、ゆかりさんが帯を解く。俺の存在を無視しようとしていることが簡単に見透かせる、殊更に普通の着替えを装うような強がりが堪らない。そんな虚勢も張れなくしてやるのが楽しみでならない。
 浴衣を脱ぎ捨てたところで再び手が停まった。
「下着もだよ」
 わなわなと震えながら下着を脱ぎ、浴衣の上に置く。
 白い体が露わになった。脱ぐ過程で丸見えになっていたにも関わらず、往生際の悪いことに、手で胸と股間を隠している。月明かりで見るよりも、電気の灯りの下で見る方が、白さが際立って美しい。
「手、どけてよ。あと、脚もうちょっと開いて」
 奴隷のような無気力な従順さでゆかりさんが従う。手を体の横に下ろし、脚を心持ち開く。よく見えるようになった。
「ゆかりさん、肌綺麗だね。色白だし。白粉でも塗ってみるみたいだ。それに、やっぱりおっぱい大きいね。形も良いし。お椀型っていうのかな。あ、お椀と言えば、何カップ?」
「……Dよ」
「へえ、凄いなあ。それにしても乳首の色……凄いね。ピンクとか通り越して白っぽいね。子供の乳首みたいだ。二十歳過ぎてもそんな色してる人っているんだね」
「私を抱きたいんでしょ? ……さっさとしたらいいじゃない」
 ゆかりさんは苛立たしげに言ったが、声が震えている。本当は――当然だが――嫌で嫌で仕方がなく、怖くて怖くて仕方がないのだ。
「うん、そうさせて貰うよ。ゆかりさん、そのままオマンコ自分で開いてみせて」
「な……そんなの……」
「いいから、ほら」
 渋る様子を見せたゆかりさんだが、再度、やや強い声音で要求すると、唇を噛みながら言う通りにしてくれた。淡い毛に彩られた筋のような裂け目に左右から指を添え、立ち小便でもするかのように開いた。
 股間の前にしゃがみ、その綺麗な割れ目を見上げる。
「ちょっ、ちょっと……!」
「こうした方がよく見えるからね。わあ、毛も薄いし、色も白いね。ヨーロッパの人みたいだ。あ、そういえば、ゆかりさん、お爺さんだかひいお爺さんだかがイギリス人なんだっけ?」
「……母方の曾祖父がイギリス人なのよ」
「ふうん、外人さんとはしたことないけど、日本人よりこの辺は綺麗なのかな」
「やっ、あなた、何して……!?」
「何って……オマンコ舐めるんだよ。濡らさないと入らないし。動いちゃ駄目だよ」
 曝け出された肉穴に舌先を伸ばす。ゆかりさんが一瞬体を引きそうになったが、再度お願いすると羞恥に頬を染めながら大人しくなった。
「ゆかりさんってクリトリス大きいよね」
 ふっくらとした豆粒を唾をたっぷりつけた舌先で舐め上げる。
「い、言わないで! 気に、してるのよ……!」
 ひくひくと太腿を震わせながら上擦った声を上げる。
「気にしなくていいよ。可愛いし、舐めやすいよ」
「嫌ぁ……!」
 しばらく舌先で擦って刺激に慣らしてから、唇で挟み込み、素早く擦ってやると、ゆかりさんは押し殺した声と共に背筋を伸ばし、へたり込んだ。早々と一回目の絶頂だ。
「ま、待って、ねえっ、ちょっと、お願い……」
 懇願を無視してしつこく舐め続ける。今度は割れ目にも舌を挿し込み、餌を貪る犬のように激しく責め立てた。溢れてくる愛液を音を立てて啜り上げながら弄り続けてやると、ゆかりさんはそのまま大きく仰け反り、二度、三度と痙攣して仰向けに転がった。
「な、何……何する気……?」
 三十分以上もかけて責められ、すっかり息絶え絶えになったゆかりさんを抱き上げ、布団に寝かせる。中学に上がったばかりの俺に長身の成人女性の体は重かったが、数メートル程度も運べないほどひ弱ではない。
 浴衣とパンツを脱ぎ捨て、ゆかりさんの手に勃起したチンポを握らせる。
 ゆかりさんが怯えと驚きの入り混じった風に呟く。
「な、何これ……」
「結構大きいでしょ。直人兄さんより大きいと思うけど、どうかな? 昨日入ってたものだし、わかるでしょ?」
「……し、知らないわよ」
「ふうん。まあ、それならそれでいいや。取り敢えず舐めてよ。フェラと玉舐め。直人兄さんにやったことあるでしょ? 俺にもしてよ」
 従兄の名を出すとゆかりさんの表情が強張った。これだから人妻はいい。
「ほら、時間ないし……それにさっき俺もペロペロしてあげたでしょ? お返ししてよ。まずは玉からして欲しいな」
 僅かの沈黙を経て、ゆかりさんが俺の股間に顔を埋めた。袋にぬるりとした感触が生まれる。舐めてくれているのだ。それにしても従兄とは結構こういうことをしているのか、なかなか巧みな舌遣いだ。
「うん、いいよ、ゆかりさん。手を抜いちゃやだよ。もっと唇で挟んだり、舌の上で転がしたりもしてみて……いいよ、気持ち良い……」
 玉舐め特有の、あのじれったい、疼くような快楽が下半身を這い回る。体の中がむず痒くなり、熱が少しずつ高まってはいくが、決して臨界点以上には達しない。そういうもどかしい心地良さだ。
「……うん、玉はもういいよ。次はチンポの方を重点的にやってよ」
 温かい舌の動きが徐々に竿の方へと上がり、根元から先端にかけて何度も舐め上げられる。それを何度か繰り返した後、いよいよ薄い唇が先端を啄み、咥え込んだ。口の中では舌先が別の生き物のように暴れ回り、絡みついてきた。汚れを隅々までこそげ取るような動きだ。その間、手は玉を揉んでいる。
「結構上手いね、ゆかりさん……直人兄さんにもこんな風にしてるの?」
 答えはない。
 だが気持ち良いから問題ない。力を抜き、その巧みな愛撫に下半身を委ねる。
 快楽の熱が込み上げ、その気になれば射精できそうなほどになったところで、愛撫をやめさせる。口の中に出すのでは勿体無い。
「ゆかりさん、そろそろフェラはいいや。入れさせてよ……あ、そうじゃなくて、上になってよ。やったことあるでしょ?」
 寝転がろうとするゆかりさんを止め、欲情して天を目指すチンポを指差す。
 ゆかりさんが俺の体を跨いで中腰になり、汚い物を触るような手つきで俺のチンポを固定する。そのままゆっくりと腰を落としていき、先端が入口に触れたところで、躊躇するように停まり、震え出した。
「どうしたの?」
「お願い、許して……やっぱり、これだけは……ここは、直人しか……そうだ、く、口でしてあげるから……」
 先程までの刺々しさが嘘のような弱々しい哀願だった。
 しかし俺がそんなことで引き下がるわけがない。細く括れた腰をがっちりと掴む。
「い、嫌……」
 俺の意図を悟ったのだろう。ゆかりさんが俺の手を押さえ、腰を上げようとした。
 だがもう遅い。掴むのと、ゆかりさんの腰を引き下げ、俺の腰を突き上げるのは、ほぼ同時の出来事だった。
 硬く立ち上がった俺のチンポがゆかりさんの綺麗な割れ目を歪ませ、押し拡げ、沈み込んでいく。
 ゆかりさんの形の良い尻が俺の下腹部に落ちた。女とはいえ仮にも成人、それも俺より背の高い人間がぶつかってきた衝撃は小さくなく、息が詰まったが、俺は耐えた。そのままゆかりさんの腕を掴んで自分の胸に引き倒し、がっちりと抱き竦めた状態で寝返りを打って組み敷く。
 もがき、俺を撥ね退けようとするのを必死で押さえながら魔法の言葉を告げる。
「騒ぐと人が来てバレちゃうかもよ?」
 これだけでゆかりさんは金縛りにでも遭ったかのように動きを止める。
「昨日の夜も言ったけど、バレて困るのはゆかりさんだけだし、直人兄さんも大変なことになるよ。ゆかりさんがこの一週間だけ我慢すれば、それで何も起きなかったことにできるんだよ」
 引き剥がそうと俺の肩にかけていた手から力が抜け、布団に落ちた。だらりと無気力に手を投げ出したまま、ゆかりさんがそっぽを向いた。
「……わかった。もう好きにしなさいよ」
 納得するのが妙に早いように思える。
 もしかして、単に口実が欲しかっただけだったのだろうか。脅されて仕方なく体を開いたのだ、と自分に言い聞かせるための儀式だったのだろうか。
 そんなはずはないだろう。もしそうだとしたら、ゆかりさんは俺に抱かれることを望んでいたということになる。いくら何でもまだそれは有り得ない。従兄との間に何かあったのならば別だが、そういう不仲を匂わせる気配はまるでなかった。
 どうせあれは駄目で元々の衝動的な抵抗だったのだ。そう結論付け、ゆかりさんの体を貪ることに専念する。
 抱きつくように指示し、最初から腰を激しく動かす。きちんと慣らしていないのでゆかりさんは苦しげな顔をしたが、次第に体が馴染んできたらしく、数分もする頃には押し殺した嬌声を上げ始めていた。
 それから後は一直線だ。特に喜んでいたあの部分をチンポで擦り上げて三回ばかりイカせてやると、ゆかりさんは途端に素直になり、自分から俺に抱きつき、腰を動かすようになっていた。
 キスの合間に尋ねる。
「ゆかりさん、どっちのチンポが好き?」
「あっ、い、言えないっ、そんなの、言えないっ……!」
「あ、教えてくれないんだ。じゃあやめちゃおっかな」
「や、やめちゃ駄目ぇ!」
「じゃあ教えてよ」
「そ、そんなこと、言えるわけないじゃない……」
「ゆかりさんは正直なんだね。嘘でも直人兄さんのって言っておけばいいのに。それじゃ俺のチンポが好きだって言ってるのと一緒だよ」
「やだぁ、駄目なのぉ、直人以外のおちんちん好きになっちゃ駄目なのぉ……!」
 ゆかりさんは何度もイカせると心の鎧が壊れてとても可愛くなる。
 こうなってくるともうゆかりさんも欲望を剥き出しにした女に過ぎないわけで、形ばかりの拒否の姿勢を示しはするものの、抵抗らしい抵抗はしなくなる。むしろ自分から俺を求めてきさえする。
 この後は欲望に素直になったゆかりさんと、短いが濃い時間を過ごした。上になり下になり、前から後ろから、散々にその体を堪能させ、心の赴くままに種付けさせて貰った。




 三日目の昼、俺はゆかりさんが待つトイレに向かった。
 ゆかりさんの背中を見ていたらむらむらしてきて我慢できなくなったのだ。話を持ちかけると、ゆかりさんは当然ながら嫌がったが、しつこくお願いすると渋々ながら了承してくれた。
 ただし、一緒に入るのは目撃された場合に危険だし、連れ立ってトイレに向かうのも不信を招く可能性が皆無ではないため、時間をずらして合流することになった。
 佐藤家には四つほどトイレがあるが、俺達が選んだのは、その中でも広間などから遠い一角だ。
 ドアを一定のリズムでノックする。
「入っていいよ」
 ゆかりさんの応答と共に鍵が開いた。
 さっと開け、さっと入り込み、さっと閉める。誰にも見られていないはずだ。
 裸で洋式便座に腰掛けるゆかりさんに訊く。
「ゆかりさん、言っておいた通り、準備しておいてくれた?」
「……これでいいんでしょ?」
 ゆかりさんがそっと脚を開くと、淡い毛に彩られた筋からは愛液が滴っていた。自分で濡らしておくように言っておいたのだ。
「うん。じゃあ、時間ないからさっさと済ませよう。俺が便座に座るから、上に乗ってよ」
 位置を交換し、心持ち脚を開き気味にして手招きする。
 ゆかりさんがゆっくりと俺の膝の上に乗り、太腿でチンポを挟んだ。
「じゃ、入れるから、ちょっと腰浮かせてね」
 濡れそぼった割れ目にチンポを宛がう。
「ゆっくり腰を落として……」
 腰が降りてきて、チンポが肉の穴に潜り込んでいく。細い腰に手を添え、肉を掻き分けるようにして押し込む。ゆっくりと進んでいくとゆかりさんが心地良さそうな吐息を漏らした。
 根元まで突っ込んだ後は数分ほど慣らし、尻を鷲掴みにしてゆかりさんを揺する。すべすべとした尻に下半身を押し付け、捏ね回し、掻き混ぜていく。
「あっ、ふっ、うぅんっ! す、凄っ、あっ、い、いいっ……!」
「ゆかりさん、声押さえて! 聞こえちゃうよ!」
 腰の動きを緩め、ゆかりさんに警告する。そのおかげで確かに声は小さくなったが、やはりびくびくと体を震えさせるゆかりさんは、依然として快楽の声を上げ続けた。
 大分気分が乗ってきて、そろそろ一発目が出そうかという頃、唐突にドアが叩かれた。
 緊張と驚愕のせいか、ゆかりさんの中が急激に締まった。驚愕と急な刺激で出してしまいそうになったが、何とか堪える。
 小声でゆかりさんに言う。
「ゆかりさん、誰か来たよ。返事して」
「わ、私がするの?」
 もう一度、今度はより強くドアが叩かれた。
「そうだよ、いいから早く」
「わ、わかったわよ……あの、入ってます!」
「何だ、ゆかり、そこにいたのかよ」
 外から返ってきたのは従兄の声だった。扉を一枚隔てたすぐ傍に従兄がいるのだ。扉を挟んだだけのすぐ目の前で従兄の妻を膝に乗せ、大股開きにして繋がっている。そう考えるだけでチンポが昂る。
 きゅうきゅうと俺のチンポを締め上げながらゆかりが答える。
「え、ええ、そうよ……何か用だった?」
「いや、別に用はないよ。ちょっとションベンしたくなっただけだから……まだ時間かかる?」
「そ、そうね、ちょっと時間かかるかも……そこで待ってるより、ほ、他のトイレに行った方が、いいんじゃない?」
「ああ、そうするわ……って何か、お前、苦しそうだな。大丈夫か? 腹でも壊したのか?」
「う、うるさいわね! き、気が散るから、話しかけないで……!」
 ややきつい口調のその声には、どこか必死な、懇願めいた響きがあった。
「お、おいおい、何でそんなきつい言い方するんだよ……大体さ、お前、何か最近、機嫌悪くないか?」
「き、気のせいよ!」
 気のせいではなく事実だ。俺に初めて抱かれた日から、ゆかりさんの態度には陰があった。全てを知る俺にとっては何の不思議もない。夫の知らない所で毎日犯されていて、平然としていられる方がおかしいのだ。
 しかし、事情を知らない者からすれば、それは不可解な不機嫌さ以外の何物でもない。
「いいや、気のせいじゃない。お前、絶対何か機嫌悪い。いや、いいんだよ、俺の前でならさ、俺が我慢すりゃ済むんだから。でもさ、頼むから人前では普通にしててくれよ。お前がそういう態度だと、俺まで恥掻かされるんだから……伯父さん達に夫婦仲の心配までされたんだぜ」
「……そうだったの。ごめんね、直人。これからは気をつけるわ」
 その声は平板なものだったが、よくわからない凄味があった。気圧され、ゆかりさんの中でチンポが少しばかり縮こまってしまった。こんなことは初めてだ。
 その凄味を扉を隔てて感じ取ったらしく、従兄が動揺した風な声を出した。
「あ、い、いや、ゆかり、あのな、お、俺も言い過ぎたよ。悪い……ちょっと頭冷やしてくる……」
 そそくさと立ち去る気配がした。
 トイレの中が沈黙に支配された。ゆかりさんは背を向けたまま何も言わない。俺も怖くて何も言えない。
 ゆかりさんがおもむろに体を反転させ、対面座位の体勢になった。
 その顔を見てぎょっとした。ゆかりさんの目は静かに涙を零していた。
「ねえ……」
「は、はい」
 涙の零れる目でじっと見つめられ、俺はすっかり委縮していた。ゆかりさんは涙を流している以外は至って普通の顔をしていたが、それだけにそのアンバランスさが恐ろしく、俺の目にはゆかりさんが般若に見えた。心の底から怒った女はとても怖い生き物なのだ。
「もうあいつなんてどうでもいい……私と沢山エッチしよう? 私の中で好きなだけ出していいよ。あ……太郎くんの、ちょっと小さくなっちゃってる……私の中、気持ち良くない?」
「そ、そんなことはないよ、ゆかりさん。ゆかりさんの中、凄く気持ち良いよ!」
「なら、何で小さくなっちゃうの?」
「ご、ごめん、ちょっと中断したせいで……すぐ大きくするから……あれ、おかしいな、こんなこと初めてだ……あ、その、ちょっと待ってて……」
 大きくなれ、大きくなれ、と念じる俺の意思に反し、チンポは逆に縮こまっていくばかりだった。こんなことは初めてだ。大きくなるなと念じて無視されたことはあっても、大きくなれと念じて無視されたことは、未だかつてなかった。
「……もういいわ。私が大きくしてあげる」
 無造作に腰を浮かせてチンポを引き抜くと、ゆかりさんは飛びつくような勢いで俺の股間に顔を埋め、手、唇、舌の全てを総動員した愛撫を開始した。
「……ふふっ、大きくなった。いつもの逞しい太郎くんだ」
 唾液でぬらぬらと光ったチンポに頬を寄せ、うっとりと微笑む。
「これならもう大丈夫だよね。入れるね」
 再び俺の脚を跨いで腰を下ろし、勝手に俺のチンポを受け容れ、恍惚とした吐息を漏らす。そのまま俺に抱きつき、激しく腰を揺らし始めた。
「あっ、いい、いいよ、太郎くん、太郎くんのおちんちん、気持ち良い……!」
「ゆ、ゆかりさん、何、何なの? 一体どうしたの? ねえ?」
「い、いいから! あっ、あんっ、凄っ、凄いっ、直人のなんかより……いいっ……!」
 俺の上で躍っていたゆかりさんは、動きを急激に激しくしていき、俺に抱きつきながら絶頂に達した。肉穴が激しく蠢動して俺を強制的に昂らせ、袋の中身を強引に引き摺り出す。俺も堪らずゆかりさんの中に射精してしまった。イカされてしまったのだ、この俺が。
「ゆ、ゆかりさん……ど、どうしたの?」
 荒い呼吸を必死に整えつつ訊く。
 ゆかりさんは黙って俺に抱きついてきた。長身が覆い被さってくる。
「……ゆかりさん?」
「……あいつ、私の気も知らないで……私がどんな思いでいたか、知りもしないで……」
 ゆかりさんが涙声で呟いている。自分の妻が知らない所で男に犯されている、などというのを察しろと言うのは流石に酷だと思うが、それを指摘したところで俺には何の得もない。
「……しかもあいつ、自分のことばっかり……さっきだって、私が不機嫌な理由、気にもしてなかったし……」
「ゆかりさん……」
 抱き締めようとしたが、それは果たせなかった。それよりも先にゆかりさんが腰を遣い始めたからだ。
「ちょっ、ちょっと、ゆかりさん?」
「まだできるでしょ? して! もっと私を気持ち良くして! 直人があんな態度なら、こっちだって、もう一々気にしてなんかやらないわ! そうよ、どうせやらなきゃいけないんなら、楽しまないと損よ! 覚悟してね、太郎くん。朝も昼も夜も離してなんかあげないから!」
 ゆかりさんの腰遣いは暴力的だった。殴りつけるように快感を叩きつけてくる。ゆかりさんは知的で理性的な女だと思っていたが、実際はかなりの激情家のようだ。
 色々と動揺が激し過ぎて主導権を取り返せない。搾り取られるような腰遣いに翻弄されてしまう。
「ああっ、イクっ、イっちゃうぅっ……!」
 だがいつまでも翻弄されているわけにはいかない。俺がゆかりさんの捌け口になるのではない。ゆかりさんが俺の捌け口になるのだ。
 徐々に高まる声を抑えるべく唇を奪いつつ、主導権奪回のためにこちらも腰を遣い始める。




 あのトイレでのセックス以来、ゆかりさんは一気に積極的になった。中出しを拒むことは最早なくなり、俺が誘えばどこででもさせてくれるようになったし、それどころか、自分から俺を誘うようにすらなった。まだみんなが普通に家の中をうろついている時間にフェラをして貰うことなど茶飯事だったし、日の高い内から納屋で体を繋げることもあった。時にはトイレに引き込まれてしまうこともあった。人が変わったように俺を求めるようになったのだ。
 俺の言うことは何でも聞いてくれるようになったし、俺が要求した以上に過激で丁寧な奉仕をしてくれるようにもなった。頼んだら放尿も見せてくれたし、フェラを頼めば玉は勿論尻の穴の中まで丁寧に舐めてくれた。どれも本人曰く「直人にもしたことがない」らしい。「太郎くんをもっと気持ち良くしたいから、太郎くんの気持ち良いところを教えて」とも言われた。感無量だ。
 俺達は最終日までの間、機会を見つけては体を繋げて過ごした。




 佐藤本家で過ごす夏の締め括りは六日目の夕方に行われる夏祭りだ。佐藤一族は総出でこの祭りを一日かけて楽しみ、翌日、それぞれの家に帰るのだ。
 勿論俺も、例年通りこの祭りを楽しんだ。歳の近い出店を回り、屋台のたこ焼きや焼き蕎麦、お好み焼きなどの「夏の味覚」を堪能し、祭囃子の演奏や賑やかな神輿などを観覧した。
 だが、今年はそれだけでは終わらせなかった。今年は食べ物と音楽と神輿以外にも楽しめるものが、もっと素晴らしいものがあった。ゆかりさんという極上の女体だ。
 俺は歳の近い従兄弟達と一緒に祭りを回りながら、この後に待ち受ける極上の快楽に思いを馳せ、こっそりとチンポを大きくしていた。
 しばらく回った後、俺はさりげなく従兄弟達とはぐれた。それから充分な距離を取ったところで、ケータイで従兄弟の一人に俺は一人で回ることにする旨を伝え、ゆかりさんとの待ち合わせ場所に向かった。
 待ち合わせ場所に行くとゆかりさんはまだ来ていなかった。一緒に回っている従兄と分かれるのに苦労しているのだろう。
 俺にやや遅れてゆかりさんが現れた。
「ゆかりさん、来てくれてありがとう」
「待たせちゃってごめんね。離れる隙がなかなかなかったの」
「いいよ。気にしないで。それより、直人兄さんには何て言ったの?」
「浴衣にジュースかけられちゃったから、一度戻って着替えてくるってメールしたわ」
「着替えだけだとちょっと時間ないんじゃないかな」
「少し休むって言ったからちょっとくらいなら大丈夫よ」
「なら大丈夫だね。じゃ、早速その野外スポットに行こうか。本当は直人兄さんとするために調べておいたっていう場所にさ」
「もう、意地悪ね」
 ゆかりさんが微笑む。
「あ、そうそう。万が一知り合いに見られたり、盗撮されたりしたら大変だから、これ被っててよ」
「……紙袋?」
「うん。目と口の所に穴を開けたから。旦那さん以外の人と外でセックスする訳あり奥さんって感じで気分出るでしょ?」
「もう、中学生のくせに、スケベ親父みたいなこと言うんだから……」
 苦笑しつつも満更でもないようで、ゆかりさんは素直に袋を被ってくれた。
「じゃ、行こうか」
「うん」
 俺達は仲良く手を繋いで青姦スポットである林の中に向かった。
 林の中は既に盛り上がっていた。若い男女を中心に――中には四十歳くらいのや中学生くらいにしか見えないのもいる――沢山の男女がそこかしこで絡み合っている。あるカップルはズボンやスカートを下ろしただけで、あるカップルは浴衣を肌蹴させ、あるカップルは完全に服を脱ぎ捨て、周囲に見せつけながら、また周囲に見せつけられながら、興奮した様子で体を絡めている。
 この盛況ぶりを見るに、なかなか有名な場所らしい。
「す、凄いね……」
 ゆかりさんが圧倒されたように呟く。
「そうだね。でも流石に紙袋被ってる人はゆかりさんだけだね」
 カップルの何組かがゆかりさんに奇異の目を向けている。
「……太郎くん、落ち着いてるね」
「そんなことないよ」
「あっ……」
 浴衣の裾にゆかりさんの手を引き入れ、パンツに張ったテントの中身を握らせる。
「もうこんなだよ。触られただけで出ちゃいそうなくらい」
「……スケベ」
「ゆかりさんだって似たようなものじゃないか。で、どうする? 全部脱ぐ? それともパンツだけ?」
「……汚れると困るから、全部脱ぐわ」
 言うなり、帯を解いて浴衣を脱ぎ捨てた。それだけで全身が露わになった。薄暗い林の中に白い肌が浮き上がる。
 自分の女に向かって腰を振っている男の何人かが、讃嘆混じりのいやらしい視線を向け始めた。
「あ……下着つけてなかったんだ……」
「そうよ。外でするつもりだったから……こういうの嫌だった? 下着つけてた方がよかった?」
「そんなことないよ。ゆかりさんがノーブラノーパンで隣にいたなんて……想像するだけで興奮しちゃうよ。エロ過ぎだよ、ゆかりさん」
「喜んで貰えてよかった。ね、太郎くんも脱いでよ。私だけ裸じゃ恥ずかしいよ」
「うん、すぐ脱ぐよ」
 俺も浴衣とパンツを脱ぎ捨てて裸になった。痛いくらいに立ち上がった股間に視線が集まるのを感じた。男は驚愕、女は好奇が主のようだった。
 普段ならばこのまま他のカップルに近づいてスワッピングでも持ちかけるところだが、ゆかりさんは特別だ。この人は俺だけのもの、一億六千万歩譲っても、俺と直人兄さんのものだ。
「どうする? おちんちん舐めてあげようか?」
「ううん。今日は時間がないから、フェラはいいや。そこの木に手を突いて、お尻突き出してよ」
 言う通りにして尻を突き出しながら、不安そうに尻をくねらせる。
「ま、まさか、そのまま入れちゃうの……?」
「ちゃんと舐めて解してから入れるから心配しないで」
 突き出された白い尻肉の間に顔を埋める。割れ目を舐め上げてやると、甘い声と共に尻が震えた。




 ゆかりの奴が家に戻ってしまったせいで、予定が大分崩れてしまった。本当ならば今頃は調べておいた場所で久しぶりにゆかりの穴を味わっているはずなのに。ゆかりの浴衣にジュースをかけた馬鹿野郎をぶん殴ってやりたい。
 ゆかりのことを思い出したら、何だかむらむらしてきた。健康な若い男が一週間近くも禁欲生活をするなど、土台無理があるのだ。一度セックスできると思ってしまうと、もう収まりがつかない。
 駄目だ。勃起が収まらない。ゆかり以外で出すのは勿体無いが、いつまでも前屈みのままうろつくわけにもいかない。
 仕方がない。どこかで抜いてこよう。どこがいいだろうか。そうだ。ゆかりと行こうと思っていた場所でいい。あそこには覗き専門の連中もいる。相席させて貰おう。
 そう結論して例の林に向かう。
 林の中は大盛り上がりだった。至る所で男女がセックスしている。荒い息遣い、甘い声、肉がぶつかる音、雄と雌の臭いが充満している。
 どうせオカズにするなら美人の方がいいに決まっている。茂みの中を移動し、手頃なカップルを物色する。
「えっ……?」
 移動した先では信じがたい光景が繰り広げられていた。
「た、太郎……?」
 紙袋を被った良い体をした女の尻を抱えていたのは、まだ中学生の従弟、太郎だった。白くむっちりとした尻を鷲掴みにし、我武者羅に腰を振っている。
 これは一体どういうことなのだ。まだ中学生のあいつが一体何をしているのだ。
 他のカップルの邪魔をしない。そんな不文律も忘れ、俺は茂みを飛び出していた。
「お、おい、太郎、お前、何やってんだ!?」
 喘ぎ声を上げながら女がさっと顔を背け、太郎が驚いたような顔をした。
「あっ、直人兄さん! 何ってそんなのエッチに決まってるじゃない。直人兄さんも、そのために来たんでしょ? あ、でも、ゆかりさんと一緒じゃないし……もしかして、浮気?」
 気持ち良さそうに腰を振りながら太郎が答える。
「そ、そんなわけねえだろ! あいつはちょっと今都合が……って、そうじゃなくてだな……ああ、ええと、そう、その人誰なんだよ?」
「知らないお姉さん。さっきそこで誘われたんだ。人妻さんなんだって」
「ば、馬鹿、お前、人妻に手出したのか!」
「大丈夫だよ、顔は隠してるし」
「そ、そういう問題じゃないだろ……」
「いいからいいから。あ、そうだ、あのね、直人兄さん、お願いがあるんだけど……」
「何だよ?」
「このこと、みんなには内緒にしといてよ。お願い」
「……まあ、おおっぴらに言えることじゃないからな」
「ありがとう、直人兄さん!」
「お前な、人と話す時くらい、チンポ停めたらどうなんだよ?」
「だって、この人のオマンコ、すっごく気持ち良いんだもん! 停まらないよ!」
「へ、へえ……」
 確かにこのお姉さんは良い体をしている。ゆかりほどではないが、スタイルも良い。童貞小僧の太郎の言葉だから割り引いて考えるとしても、やはり相当に具合が良いのだろう。
「あっ、そうだ! 直人兄さん、このお姉さんにチンポしゃぶって貰いなよ!」
「は、はぁっ!? お、おい、お前、何言ってるんだよ!?」
「だって、溜まってるんでしょ? さっきから、このお姉さんのこといやらしい目で見てるし。だったら、すっきりしちゃった方がいいんじゃない? 直人兄さんさえよかったら、俺がお姉さんに頼んであげるよ! このお姉さん、チンポしゃぶるの凄く上手いんだよ!」
 正直なところ、非常に迷っている。一週間近い禁欲生活の果てにすっぽかされ、その挙句にこんなものを見せられたのだ。俺のチンポはもう限界寸前だ。そこにこんな素敵な申し出をされて平然としていられるはずがない。
 しかし、俺にはゆかりがいるのだ。高校時代から付き合ってきた大事な女がいるのだ。ここでこの申し出を受けるのはあいつへの裏切りになる。
「ねえ、直人兄さん、チンポしゃぶって貰いなよ!」
 再び悪魔が俺を誘惑してきた。
「俺もしゃぶって貰ったけど、このお姉さん、凄いんだよ! タマタマまで舐めてくれたし、精液も飲んでくれたんだよ!」
 駄目だ。誘惑が強過ぎる。この状況でこの誘いを断るのは難しい。
 大体、よく考えてみれば、所詮はフェラに過ぎない。ちょっと口で抜いて貰うだけのことだ。裏切りにはならない。
 それに、それにだ、ここで断ったら、太郎が困る。これは太郎からの口止め料、太郎は俺と秘密を共有することで安心したいのだ。だからこの申し出を受けるのは太郎のためなのだ。可愛い従弟のためなのだ。
「……じゃ、じゃあ、お願いしちゃおっかな……あ、あの、お姉さん、お、俺のチンポもお願いできますか?」
 恐る恐る問いかけると、甘い嬌声を上げていたお姉さんが振り向き、後ろから突いている太郎に相談するような視線を向ける。
 太郎が頷いた。
「やってあげてよ、お姉さん……直人兄さん、やってくれるって!」
「そ、そうか……あ、お姉さん、どうも、お世話んなります」
「直人兄さん、そこに俺の浴衣があるから、それ地面に広げてよ。お姉さんがフェラしやすいようにさ」
「よし、待ってろ、浴衣は……ああ、これだな。よっと……こんなもんでいいか?」
「うん、じゃあ、お姉さん、そこに四つん這いになってよ。直人兄さんはそこに座ってチンポ出して」
 太郎が童貞小僧とは思えないほど的確な指示を出す。紙袋のお姉さんがゆっくりと移動し、浴衣の上に這い蹲る。太郎はお姉さんの尻を抱えて繋がったまま、器用にその移動にくっついてきた。大の大人でもなかなか難しい動きを軽々とこなすこいつは、そのチンポの大きさと言い、将来が怖いやら頼もしいやらわからない。
「ほら、直人兄さん、ぼさっとしてないで!」
「あ、ああ、悪い悪い」
 お姉さんの前で胡坐を掻き、浴衣の前を寛げてチンポを差し出す。お姉さんは迷わず俺の股間に顔を埋めた。紙袋が当たってがさがさと音を立て、肌をくすぐるが、その不快感など一遍に吹き飛ぶほどの快感がその直後に生まれた。
 温かくてよく唾のついた舌がぬるりと竿を舐め上げたのを皮切りに、あちらこちらを唇で啄まれながら吸われたり、やわやわと袋を揉まれたり、根元までを一息に頬張られてチンポが溶けるのではないかと思うほど激しく舐め回されたりと、思わず「ああああっ」と気の抜けた声を上げて腰砕けになってしまうほどに気持ち良い刺激に襲われた。
「す、凄い、凄いです、お姉さん!」
 掛け値なしに上手い。高級店の嬢でもこれほどまでの技術を持っている者はそうはいないに違いない。一体このお姉さんは何者なのだ。
「ね? 凄いでしょ、このお姉さん。あ、そうだ、直人兄さん」
「うぉぉぉ……え? あ、何? 何か言ったか?」
「ゆかりさんにもこういうことして貰ったことあるんでしょ? どっちが上手い?」
 太郎の問いと同時に心地良い舌の動きが停まった。
「ば、馬鹿、そんなこと訊くなよ! お姉さん怒っちゃうぞ!」
「ごめん……でも、ちょっと気になっちゃってさ」
「あー、うー……しょうがねえな。ゆかりには絶対言うなよ? 秘密だぞ?」
「うん。俺だって黙ってて貰うんだから、おあいこだよ」
「よーし、男と男の約束だ」
「うん、で、どっちがいいの?」
「……こっちのお姉さん」
 正直に答えればそうなのだ。ゆかりも結構上手いが、このお姉さんほどではない。それにしても、こんなフェラを味わってしまって、今後、ゆかりのフェラで満足できるのだろうか。それが少し心配だ。
「だってさ、お姉さん。折角だし、もっと気持ち良くしてあげてよ」
「い、いや、あの、ほんと、すんません、他の女と比べるようなことしちゃって……この馬鹿には俺の方から言い聞かせときますんで……ってうわぁっ……!」
 何の前触れもなくお姉さんが舌の動きを再開した。その舌の動きはこれまでとは比較にならないほど丁寧かつ激しいもので、俺は堪らず一気に射精してしまった。
「あ、ああっ、やばっ、お姉さん、で、出るっ……!」
 お姉さんは嫌がる素振りも見せず、唇で扱き立てながら受け止めてくれた。出し終えた後も、尿道の残りも吸い出した上、お掃除までしてくれた。
「あ、す、凄かったっす、お姉さん……」
 腰砕けになりながら、お姉さんを見ると、お姉さんはもう俺の方など見てはいなかった。太郎に腰を掴まれてがんがん突かれ、甲高い声を上げて喘いでいる。
「直人兄さん、もう終わったんだよね?」
「あ、ああ、終わったけど……」
「じゃあ、ちょっと待ってて、今こっちもイクから……」
 そう言って太郎は中学生らしく激しいが、中学生らしくもなく技巧的な腰遣いでお姉さんの尻を責め立て始めた。一体どれほど的確な動きをしているのか、お姉さんの感じ方は尋常ではない。浴衣の上に愛液の滴が滴り落ちているし、お姉さんの上体は浴衣の上に突っ伏している。
「あっ、お姉さん、出すよ、出すよっ!」
「えっ、出すって、おい、まさか……」
 制止しようとしたが遅かった。お姉さんが背筋を仰け反らせて痙攣した――中学生の分際で人妻をイカせやがったのだ――瞬間、太郎も同時に腰を突き出し、低く呻いた。そのまま何度か腰をぐっぐっと押し込み、満足そうな吐息を漏らす。
「お、お前、人妻の中に出しちゃったのか!?」
「うん。出していいってお姉さんが言ってたから」
「言ってたからって……もう何度も中出ししてるのか?」
「うん。もうこれで四回目くらいかな……あっ、お、お姉さん、そんなに中締めちゃ駄目だよ! またしたくなっちゃうって!」
「何だよ、まだやる気か、お前……」
「うん、ちょっとむらむらきちゃって……お姉さんももうちょっとしたいみたいだし……それに、こんなこと、次にいつできるかわからないからね」
「そうかそうか、やり溜めか。わかった。じゃあ、俺はその辺適当にぶらぶらしてから帰るわ。あんまり遅くなるなよ」
 ここに来てから結構な時間が経っている。まだゆかりから何の連絡もないということは、今日はもうお預けということなのだろう。こうなってはもう祭りに出ている意味もないから、お姉さんの匂いが飛ぶまでその辺を歩いて、さっさとゆかりの所に帰るとしよう。
「うん。今日のことは秘密でお願いね!」
「おう」
 背を向けて歩き出すと、すぐにお姉さんの喘ぎ声が響き始めた。
 俺が消えるまで待つくらいはしてもいいだろうに、堪え性のない奴だ。所詮はやりたい盛りの中学生と言うべきだろうか。
 それにしても、野外で人妻で中出しなどという変態フルコースが初体験とは、あいつの将来が少し心配になる。こんな初体験では、普通のセックスではもう満足できなくなるのではないだろうか。


十一

 野外で散々楽しんでも、今日の楽しみは終わらない。何しろ俺がゆかりさんを抱ける最後の日なのだ。最後の最後まで楽しまなくてはならない。
 部屋でゆかりさんを待っていると、午後九時過ぎ、割合早い時間にメールが来た。ゆかりさんからだった。内容は「今から私の部屋に来て」というものだった。従兄を酔い潰したので、最後の夜は従兄の横で過ごそうとのことだった。そういえば、今日の夕飯時、ゆかりさんは「明日は私が運転するから飲んでいいよ」と言って従兄にどんどん酒を飲ませていた。あれはこのためだったのか。
 ゆかりさんも最後の最後に残酷なことをするものだと思いつつ、従兄の部屋に向かう。
「もう、遅いよ。もっと早く来てよ」
「ごめんね、ゆかりさん」
 驚いたことに、室内は灯りが点いていた。いくら酔い潰れているとはいえ、これでは流石に従兄も目を覚ましてしまうのではないか、と思ったが、よく見れば従兄はアイマスクをつけられている。ゆかりさんは非常に用意周到な女のようだった。
「でも、この部屋でなんて……一体どういう風の吹き回し?」
「お喋りはこれくらいにして、早くしようよ。そのことなら終わってから話すから」
 ゆかりさんが浴衣の前を肌蹴て脱ぎ捨てた。一糸纏わぬ白い体が露わになった。
「下着つけてなかったんだ……」
「そうだよ。もう待ちきれなくて脱いじゃった。ほら、早くしてよ」
「うん、俺も脱ぐから、ちょっと待ってて……」
 俺が浴衣とパンツを脱ぐと、ゆかりさんは布団に仰向けに転がり、愛液がとろとろと沁み出す肉穴を指で拡げ、誘ってきた。
「ほら、もう、こんななの。前戯なんていらないから、早くそのおっきいの入れて」
 ここまで言われて我慢できる男はいない。チンポを軽く扱きながら覆い被さり、肉穴に宛がい、ゆっくりと押し込む。楽しくて心地良い時間の始まりだ。
 夜中に、従兄夫婦の部屋で、酔い潰れた従兄の横で、正常位で、ゆかりさんとセックスし、中出しする。
 この基本構造は初日の夜と同じだ。言わば原点回帰、円周の終わりは始まりと同じ位置にある。
 しかしながら、細かく、それでいて重大な点において、最終日は初日と異なっている。
 一つは、俺が従兄を酔い潰すのではなく、他ならぬ従兄の妻、ゆかりさんが従兄を酔い潰したこと。
 二つは、俺が部屋に乗り込むのではなく、ゆかりさんが俺を部屋に招き入れたこと。
 三つは、俺が無理矢理にゆかりさんを犯すのではなく、ゆかりさんが自ら脚を開いて俺を迎え入れたこと。
 そして四つは、俺が無理矢理にゆかりさんに中出しするのではなく、ゆかりさんが自ら俺に中出しを求めたこと。
 俺達の関係性の帰着点は一見すると原点回帰したように見えるが、その実、俺達の関係は円環構造ではなく、相似形を描きつつも上昇或いは下降する、螺旋構造なのだ。俺達は同じようなことを繰り返しながらも、少しずつ変化しているのだ。
 俺達は明るい部屋で、従兄のすぐ横に敷かれた布団の上で、汗だくになりながら正常位で交わった。互いの汗ばんだ体を密着させ、手足を絡め合い、唇を合わせ、腰の動きを合わせて貪り合い、互いの体を褒め合いながら、雄と雌の快楽を貪り合った。
 流石に疲労困憊し、体を繋げて重なり合ったまま動きを停めたのは、午前二時を過ぎた頃だった。五時間近くもお互いを貪り合っていた計算になるから、疲れるのも無理はない。
 ゆかりさんの胸に顔を埋めて覆い被さっていると、ゆかりさんが、子供にするような優しい手つきで俺の頭を撫でた。普通は逆なのだろうが、身長差があるのだから、仕方がない。いつか背丈を追い越した時にやり返してやる。
「……ねえ、太郎くん」
「何、ゆかりさん?」
 まだ若干の硬さを残すチンポが締めつけられる感触と、枕代わりのおっぱいの柔らかさとを楽しみつつ、訊き返す。
「何でこんなことするのかって訊いたよね?」
「ああ……うん、そういえばそうだね。どうして?」
「……直人に仕返しするため。あいつ、私のこと心配しないだけじゃなくて、浮気までしたから……確かにあいつのおちんちんしゃぶったのは私だけど、あいつは私にしゃぶらせたなんて思ってない。あいつ、私じゃない女にしゃぶらせたのよ。その仕返し。そのためにあいつの横で思い切りセックスを楽しんでやったの。それだけ」
 ゆかりさんは奇妙にさっぱりした声音でそう語った。
「……ねえ、ゆかりさん」
「何?」
「この一週間、毎日何度も中出ししてたわけだし、多分、出来ちゃってると思うんだけど……俺の赤ちゃん、産んでくれる?」
「え……?」
 ゆかりさんが目を丸くした。
「あ、やっぱり嫌かな……俺はゆかりさんが俺の赤ちゃん産んでくれたら嬉しいんだけど……」
「えっ、あっ、そうじゃなくて……いいのね? 産んでいいのね?」
「勿論だよ! 中絶なんてしないでよ、絶対」
「身勝手よね。勝手に作って、挙句に、中絶するな、なんて」
 ゆかりさんが言葉とは裏腹に温かく微笑んだ。
「う、そ、そうだけど……」
「うん、でも、いいの。私も途中からはそのつもりだったしね。産むなって言われても産むつもりだったよ。だから、産めって言ってくれて、結構嬉しかったり」
「そうだったんだ……ありがとう。あ、でも、その、悪いんだけど……子供出来ても、認知とかできないよ」
「いいよ。直人の子ってことにするから。最初の子は違う男の子、っていうのもあいつへの罰。あの日、私が襲われてるのに横で気づかず寝てた罰。あの後、私が苦しんでるのに理由を聞こうともしてくれなかったことの罰。私以外の女の誘惑に負けた罰。これ全部ひっくるめてあいつへの仕返し」
「前にも思ったけど、ゆかりさんって……結構怖いんだね」
「そうよ。普段は猫を被ってるけど、私、本当は凄く嫌な女なんだから。でも、こんな女でも抱く価値があるって思うんなら……」
「……思うんなら?」
「また今度……そうね、多分妊娠してるから、子供がある程度大きくなった頃、そう、二、三年後くらいかな、その頃にまたここで逢うことになるだろうから、その時、また私のこと抱いてくれると嬉しいな。太郎くん、性格は最低だけど、おちんちんは最高だから」
 ゆかりさんが照れ臭そうに笑う。
 俺は真剣な顔で頷く。
「うん。絶対だよ。今度逢った時、絶対抱くよ、ゆかりさんのこと。嫌がったってまた夜中に忍び込んで襲うから」
「……うん、期待してるよ」
 ゆかりさんの微笑に笑みを返した時、ふと思いつくことがあった。
「あ、そうだ、子供って言えばさ」
「……何?」
「赤ちゃん出来たらおっぱい出るようになるよね? もし俺達がまた逢った時、まだおっぱいが出るようなら、俺にも飲ませてよ」
 ゆかりさんは最初、呆れたような顔をしたが、やがてくすくすと笑い始めた。
「いいよ。たっぷり飲ませてあげる」
「約束だよ」
「うん」
 頷き、ゆかりさんが俺の額に軽くキスし、「指切りの代わり」と微笑んだ。
「指切りか。それだったら、俺はこっちの方がいいな」
「こっちって……んぅっ」
 身を乗り出し、ゆかりさんの唇を奪う。舌を滑り込ませ、約束を交わすように舌同士を絡ませる。
 そのまましばらく舌を絡め合ってから、ゆっくりと唇を離す。
「ゆかりさん、確かに約束したからね」



十二

 九月中旬、ゆかりさんが第一子を懐妊したとの知らせが我が家に届いた。妊娠が確かとなった途端、有頂天になって親戚中にその事実を触れ回っていた従兄は、電話越しに、本当の父親であるこの俺に、「親になった喜び」とやらを熱く語ってくれた。寝取った女の夫や恋人と話すと、歪んだ喜び、嗜虐欲と優越感が満たされる暗い喜びが心の中に込み上げてくる。


十三

 俺がゆかりさんと再会したのは、種付けから二年後の夏だった。それまでの間、従兄夫婦は、ゆかりさんが妊娠中であること、子育て中であることを理由に、子作りに関しては実際的な考えを持っている祖父の許しを得て、会合を欠席し続けていたのだ。
 みんなが集まる前に一度従兄夫婦に宛がわれた部屋を訪ねると、好都合にも、ゆかりさんと赤ん坊がいるだけだった。
「ゆかりさん、久しぶり。二年ぶりかな」
「うん……久しぶり。大きくなったね。もう私より背が高い……大人っぽくなったし……今は中三?」
「そうだよ。ゆかりさん、出産おめでとう」
 祝いの言葉を述べた後、単刀直入に訊く。
「で、誰の子?」
 あやしながら拗ねたように唇を尖らせる。
「そんなの……君に決まってるじゃない。直人にはスキン無しでさせたことないし、他の人となんかしてないんだから。そりゃあまあ、義理で一人くらいは産んであげようかとも思ったけど、子育て中にその気も失せたわ。あいつ、私の乳首見て、前の方がよかったとか言うんだもの」
「じゃあ、直人兄さん、まだゆかりさんの中ちゃんと味わってないんだ。勿体無いなぁ。こんな名器、滅多にないのに」
 ゆかりさんが頬を染めて頷いた。
「だって……もう、私のお腹、太郎くん専用だもん……太郎くんのおちんちんは私専用じゃないみたいだけど」
「え?」
「あれだけ手慣れてるんだもの。あれが初めてじゃないでしょ。そうね……あの頃にはもう、そのおっきなおちんちんで四、五人くらい泣かせちゃったんじゃない? ひょっとしたら、他にもお腹大きくしちゃった人がいたりして」
「いやぁ、それが、単純な人数だけなら、あの時点で三十人くらいは……子供も……うーん、まだ産まれてないのも入れて、七、八人くらいかな」
「呆れた……その歳で子供が八人なんて……しかも経験が三十人だなんて……」
「俺のこと軽蔑する?」
「あの時からずっとしてるから心配しないで。でも、知ってもどうもする気がない私も似たようなものよね」
「嫌いになったりは?」
「それもないわ。だってそんな程度じゃ……ううん、元々嫌いだもの。私にとって太郎くんは私を一番気持ち良くしてくれる人。それだけ。だから、バレないように気をつけてね。調子に乗っちゃ駄目よ。太郎くんのおちんちんが味わえなくなったら困るもの」
「俺はチンポだけか……結構辛辣だね。ちなみに、直人兄さんは?」
「一緒にいて一番楽しい人、かな。いいお友達」
「それはそれで可哀想な気もするなぁ……」
「……ねえ、それより、今夜も部屋に行っていい? 二人目産んであげるから久しぶりに可愛がって欲しいな。あ、でも、部屋だと声が出せないから……ねえ、お金は私が出すから、今度、ホテルに行かない? 太郎くんくらいならごまかせるだろうし」
「部屋にはむしろ来て欲しいくらいだし、ホテルも行きたいからいいんだけど、二人目出来た時、ちゃんとごまかせる? 言い訳考えてある?」
「……スキンが破けちゃった、っていうのは駄目かな、やっぱり」
「二度続けてはきついかも。うーん……いっそ、一回生でやってみる?」
「本当はスキン越しだって嫌なのに……そのままなんて絶対嫌。私の中に入っていい精子は太郎くんのだけ。他の人なんて嫌」
「じゃあ……そうだ、終わった後さ、ゴムを、こう、口で取ってあげるんだ。その時、ゴムから精液の味がするから漏れてる、みたいな話に持ってくんだよ。何なら、その時にちょっと穴開けたっていいし。それか、酔い潰しちゃって、次の日に、嫌だって言ってるのに生で入れられた、なんて言っちゃうとかね」
「……うん、それ、いい考えだ。それであと二人は産めるね。太郎くん、やっぱり頭が良いんだね」
「……悪魔みたいに?」
「ううん。太郎くんは人間よ」
「よく憶えてたね」
「忘れるわけないわよ、あんなの……あ、思い出したら、欲しくなっちゃった」
「ここだと人が来るから……そうだ、またトイレでしよう。直太郎と一緒に先に行ってて。合図はこの間と一緒だから、中で準備してて」
「うん。待ってるから早くね」
 お手洗いに行ってきます、と書置きし、直太郎を抱いたゆかりさんは、弾むような足取りで部屋を出て行った。
 それにしても、聞くたびに酷い名前だと思う。「長男で直人さんの子だから直太郎」とゆかりさんは説明したが、事実を知る身からすれば噴飯物だ。
 俺だけは真実を知っている。
「血は太郎、戸籍が直人だから直太郎」だ。


十四

 取り決めてある通りのリズムでノックをすると、ゆかりさんが「いいよ」と答えて鍵を開けた。
 周囲に人がいないことを確認し、素早く入り込み、静かに戸を閉める。
「遅いよ」
 ゆかりさんは既に下を脱いだ状態で便座に腰掛けていた。直太郎は横の乳幼児用の簡易ベッドで寝ている。
「ごめんね。でも、タイミングとか色々あるからさ」
 言い訳しつつ、抱き寄せ、唇を奪う。唇の端から唾液が零れ落ちるほど濃厚なキスで、ゆかりさんはあっさりと蕩けてしまった。
「ねえ、時間ないんだから、早くして。ほら、もう入れられるよ」
 ゆかりさんが俺の手を取って股間に導く。既に愛液が滴りそうなくらいに潤っていた。
「そうみたいだね。でも、その前に……」
「舐めて欲しいの? いいよ。おちんちん出して」
「いや、フェラは夜にでも……ねえ、ゆかりさん、まだおっぱい出る?」
「出るよ。もう離乳食に切り替え始めているけど……飲みたいの?」
「うん。前に、おっぱい飲ませてくれるって言ってたでしょ?」
「いいけど……おっぱい見て萎えたとか言ったりしない?」
 ゆかりさんが不安そうに俺の顔を見る。
「そういえば言ってたね。黒くなったの? お母さんになったんだからそれくらい当然だよ」
「そ、そう言ってくれるんなら……はい、どうぞ」
 ゆかりさんがシャツを捲り上げてブラジャーのフロントホックを外し、恐る恐るといった態度でおっぱいを曝け出した。
「……わ、私のおっぱい、どう? 気持ち悪くない? こんなのでも可愛がってくれる? 直人は嫌がってたけど……」
 ゆかりさんのおっぱいは、以前とは大分変わっていた。白に近い薄桃色だった乳首や乳輪は、今はやや茶色く色づき、少し肥大している。胸も以前より膨らんでいる。
 俺の子を産んだ女のおっぱいだ。生唾を呑み込まずにいられなかった。
 焦れたようにゆかりさんが訊いてくる。
「ね、ねえ、どうなの?」
「そんなの、気持ち悪いわけないじゃない。ゆかりさんのおっぱい、綺麗だし、可愛いよ」
「よ、よかった……嫌がられたらどうしようって……」
「まさか。こういうの、人妻のおっぱいって感じで凄く興奮するよ。もっと赤ちゃん作って黒くしたっていいくらいだよ」
「うん……じゃあ、早くおっぱい吸って、それから赤ちゃん作ろう?」
「……いただきます」
 差し出されたおっぱいに吸いつき、ちゅうちゅうと吸ってみると、じわっと口の中に生温かい液体が沁み出し、ほんのりとした甘味が広がった。
「美味しい、太郎くん?」
 口を離して答える。
「美味しいよ、凄く。もっと飲みたい。いい?」
「いいよ。もう直太郎もあんまり飲まないから、好きなだけ飲んじゃって」
「ありがとう。本当に全部飲んじゃうからね」
「うん、好きなだけいいよ……」
 乳首を咥え、唇で強く刺激し、またそれと同時に、牛の乳搾りの要領でおっぱいと乳首を指で圧迫する。
「うぉ……」
 口の中に母乳が溢れ出た。口の中に広がる濃厚な甘味と鼻に伝わる甘ったるい匂いにくらくらする。好奇心から親父の栄養ドリンクを飲んでみた時のように、体の内側が熱くなる。
 夢中で吸っていると次第に出が悪くなってきた。
「おかわり貰うよ」
「いいよ」
 もう片方のおっぱいにむしゃぶりつき、同じことを繰り返し、出が悪くなったところで口を離す。
「ふう……ごちそうさま」
「……私のおっぱい、美味しかった?」
「うん。凄く美味しかったよ。まだ飲み足りないくらいかも」
「夢中になって飲んでたもんね」
 菩薩のように穏やかな顔でゆかりさんが微笑む。授乳には女の人の心を落ち着かせる効果があるという話を聞いたことがあるが、どうやらそれは事実だったようだ。
「何だか大きい赤ちゃんみたいだったよ。あ、口についてる……んっ……自分の母乳飲むのは、やっぱりちょっと恥ずかしいな」
 俺の口の端についていた――らしい――母乳をキスで吸い取り、ゆかりさんが照れたように笑う。
「美味しそうに飲んでくれて凄く嬉しかったよ……でも、太郎くんったら、とってもエッチな吸い方するんだもん。もう耐えられないよ……おちんちん、入れて?」
「……母乳ってさ、それだけで赤ちゃん成長させちゃうんだから、やっぱり栄養満点なんだよね」
「そういうお喋りは後でしようよ」
「まあ、そう言わずに聞いてよ。栄養満点ってことはさ、やっぱり、精力がつくんだよね。ほら」
 ズボンとパンツを一気に下ろす。
 ぎんぎんに張り詰めたチンポが、下腹につくほどの勢いと角度で跳ね上がった。先っぽに先走りを滲ませ、鼓動に合わせて脈打っている。
「あっ……」
 ゆかりさんは目を丸くして立ち尽くしたが、少しして、切なそうな顔でごくりと喉を鳴らした。
「おっぱい飲んだせいかな……見てこれ、針でつついたら爆発しそう」
「……凄い……前に見た時よりも素敵になってる……もう直人のなんか本当に比べ物にならないよ……」
「育ち盛りだからね」
「ね、ねえ、そんなの見せられたら……我慢できないよ」
「俺もだよ。ゆかりさんのおっぱい飲んで、そんな格好見て、そんな風に誘われたら、我慢なんてできっこないよ。そこに手突いてお尻突き出して。後ろからしてあげるから」
 壁に手を突き、すべすべとした引き締まった尻を捧げ、ゆかりさんが期待に濡れた顔で微笑む。
「うん……でも、初めはゆっくりね。太郎くんのおちんちん、久しぶりだから……いきなり激しくされたら壊れちゃう……優しくして欲しいなぁ」
「心配しないで。ゆっくり解してからさっと溶かしてあげるよ。ゆかりさんは、倒れないように気をつけてて……あと、俺も気をつけるけど、ゆかりさんも直太郎のことちゃんと見ててよ」
「うん、大丈夫。倒れないし見てる……けど、太郎くん凄いから、途中で駄目になっちゃうかも……そうなったらよろしくね、パパ」
 パパ。その一言でこれ以上は膨らむまいと思っていたチンポが更に怒張した。人妻から子供のパパと呼ばれる興奮には筆舌に尽くしがたいものがある。罪悪感、優越感、背徳感など、いくつもの感情が混然一体となって脳と股間を直撃するのだ。体験しない限り理解できず、理解できてしまったらもう手遅れで病みつきとなる。そういう感覚だ。これを一度味わうと、もう人妻を孕ませることが生き甲斐になってしまう。
「……いくよ」
 出産を経て成熟し、甘い涎を滴らせる肉穴に、爆発しそうなチンポを押し当てる。
 チンポの先が溶け出すように疼いた。当てただけでこうなるとは予想外だ。これはまずい。ひょっとすると、偉そうなことを言っておきながら、ゆかりさんよりも先にイってしまいかねない。
「いいよ、きて」
 誘うように振られた尻を鷲掴みにし、熱く熟した穴の中にゆっくりと進んでいく。


十五

 トイレで慌ただしい一発を楽しんだ後、俺達は一旦別れた。ゆかりさんは部屋に戻り、俺は大広間で親父達と合流した。
 それからしばらくして従兄夫婦も現れ、恒例の挨拶会が始まったのだが、この時ばかりは主役は祖父ではなく、直太郎だった。
 直太郎の御披露目会場と化した大広間では、健康そうな赤ん坊を抱いたゆかりさんの横で、従兄が「子供が出来ちゃった」経緯を惚気を交えて親戚一同に面白おかしく語っていた。
 真実を知る身としてはあまりにもおめでたい内容なのでつい失笑してしまったら、従兄が俺にデコピンしてわざとらしい説教調で力説した。
「おいおい、少年よ、お前みたいなガキンチョにはわからないだろうが、避妊ってホント難しいんだぞ。俺が言うんだから間違いない。百パーセントなんてないんだ。ゴムしてたって出来る時は出来る。将来のためによく覚えとけよ!」
 びしっと従兄が俺に指を突きつけると、「太郎にゃまだ早いだろ」、「太郎ちゃんはあんたほど馬鹿じゃないよ」などと一同から笑いが起こった。
 俺は曖昧な笑みと共に返した。
「そんな、俺に言われたって……ねえ? そんなの俺には縁のない話だよ、直人兄さん」
「またまた。お前が実は凄い奴だって、俺は知ってるんだぜ?」
「でも、俺には多分、そういうことをする機会はまずないんじゃないかなぁ」
「おいおい。若い奴がだらしないぞ。ちょっとは自信持てよ。自信持って女の子にアタックすれば、中には押しに負けてヤらせてくれる娘だっているさ。わかるだろ、そういうのは」
「いや、それは……」
「直人! 太郎くんがいくつだと思ってるの? そのくらいにしなさい」
 ゆかりさんの静かな一喝に従兄が肩を竦め、にやけながら頷く。
「ああ、ああ、わかったわかった。ガキに大人の話するのはやめるよ。全くよぉ、子供出来てからすっかり口うるさくなったな、お前。昔は可愛く甘えてきてたのに」
「女は付き合う男の人に合わせて変わるのよ」
 からかうような従兄の言葉をゆかりさんはさらりと受け流した。
「何だよ、兄貴んとこの、すっかり女房の尻に敷かれてやがるぞ」
「女ってのは子供が出来ると強くなるからなあ。しょうがねえさ。まあ、お調子者のあいつにゃ丁度良い。良い嫁さん貰ったよ、あいつは。後継ぎも産んでくれたしな」
 二番目の伯父と一番目の伯父が微笑ましげに従兄夫婦のことを話すのが聞こえた。
 三男、つまり俺の親父が相槌を打つ。
「うちの馬鹿息子も、大人になってから連れてくるんなら、ああいう良い娘にして欲しいもんだよ」