石段を登った先には鳥居が見えた。高沢悠はやっぱりここは神社だったか、と心中でつぶやいた。山の上に続く石段の行き着く先など、確かに神社くらいのものだろう。
 悠は小さく溜め息をつきながら、折角ここまで来たことだし、と見物することを決めた。残りの石段をそのまま登り切り、何の気なしに鳥居を潜る。
 そこで悠は凍りついた。神社の敷地に静かな佇まいの女性が一人いたのだ。悠は階段を登ってきた疲れも忘れ、その女性に魅入っていた。
(うっわぁ……こんな美人、見たことねぇ)
 年の頃は悠よりいくつか上だろう。背の中ほどまである見事なストレートの黒髪。切れ長の瞳と美しく整った顔立ちは、クールビューティとでも言うべきか、大人の美女という印象を受ける。少女の危うさではなく、女の余裕と落ち着きを感じさせる容貌だ。
 同時に目を引かれたのは彼女の服装だった。身体の前に合わせ目のある、真っ白い上着に緋色の袴を身にまとい、容貌とは対照的な清楚さを演出していた。いわゆる巫女装束である。
 美しさに心臓の鼓動を跳ね上がらせた悠だが、我に返るとすぐ巫女に声をかけた。
「すみませーん、この神社の方ですか?」
 悠に声をかけられて初めて、その巫女は悠がそこにいることに気づいたようだった。やや驚いたような顔で悠の方を振り向き、その姿を視界に捉えると、表情がふっと柔らかくなった。
「あ、お客様ですね。いらっしゃいませ」
 女性にしては随分低い声だった。だがそのハスキーな声は彼女の雰囲気によく似合っている。悠の近くまで歩み寄り、礼儀正しく一礼するその巫女に釣られるように、悠まで礼をしてしまう。
「あ……ど、どうも」
「お参りに来たの? 珍しいわね、この時期に来るお客さんって」
 巫女も自分の方が悠より年上だと思ったからだろうか。挨拶の後は砕けた口調で悠に話しかけてくる。魅力的な微笑を浮かべながら語りかけてくる巫女の姿に、悠は心を揺さぶられた。
「いや、お参りっつーか……すみません、写真撮らせてもらっていいですか?」
「え? 写真? わたしの?」

 悠の申し出を聞いて、一瞬巫女はきょとんとした顔になる。
「ええ、そうなんですけど……あ、駄目ですか?」
 悠は高校時代の修学旅行を思い出していた。
(京都の巫女さんは写真とか駄目だって言ってたっけ。やっぱ神主さん辺りから止められてんのかな?)
 悠の期待が過去の前例から縮んでいく中、美しい巫女はくすくす笑い出した。
「あははは……いいわよ、写真撮っても。結構いるのよね、君みたいな人って」
「え? いいん……ですか?」
 繰り返し問う悠に、巫女は微笑みながらうなずいた。
「あら……それとも撮りたくないの?」
 巫女は手を後ろ手に組むと、前かがみになって悠の顔を見上げ、悪戯っぽく笑った。
 男をからかうような、挑発するような、小悪魔のような表情。悠はどこか遊ばれているのを自覚したが、相手はそうお目にかかれない大人の美女。従うのが一番だろう。
「それじゃ鳥居のそばに立ってもらえますか? 写真、撮りますんで」
 悠は背中のバッグからカメラを出すと、魅力的な微笑を浮かべたままの巫女を、何度かシャッターに収めた。

「巫女さん、ありがとう。いい写真撮れたよ!」
 何度か撮影を終えると、悠は満足そうな顔で巫女に礼をした。巫女はどこかほっとしたような表情で、悠に歩み寄りながら尋ねてきた。
「君、この町の人なの?」
「あ、そうです。大学の関係で、最近ここに引っ越してきたんですよ」
「ふーん、最近ってことは、それじゃ大学1年生? 今年で19歳? 道理で年下に見えてしまうわけね……わたし23だし」
「はは、オレから見てもお姉さんって感じじゃないですか、巫女さん」
「ふふ、そうなんだ。ところで……」
 また先ほどのように悠を下から覗き込む。巫女のハスキーな声が突然甘くなった。
「ねえ、わたしの写真だけでいいの……?」
「……え?」

 突如の変質に悠は戸惑った。巫女の表情に男を惑わせる色彩が含まれているのを感じたが、突然のことに頭も身体もついていかない。相手が何を言いたいのか悟る前に、悠は巫女に絡めとられていた。
 巫女は両腕を悠の首に絡ませ、抱きつきながら悠の唇を奪った。
「……っ!」
 悠の混乱は頂点に達した。頭が混乱して何も考えられない。はっきりしているのは服越しの柔らかい女の身体と、密着した唇の甘い感触だけである。
 巫女は容赦なかった。唇を合わせるだけでは飽き足らぬと言わんばかりに、舌先が蠢きながら悠の唇を割って口腔に侵入する。キスも初めての悠にとって、巫女の技巧は刺激が強すぎた。
 いつの間にか股間はこれ以上なく硬くなり、それを知ってか知らぬか、巫女の舌は悠の口内を意のままに蹂躙した。
 悠の舌に絡みつき、口の粘膜の上を這い、口に張り付くような愛撫を怠らない。
 どれほどの時間が過ぎたのだろう。巫女は抱きついた力を緩め、すっと唇をもぎ放す。絡み合った舌の間に、艶めかしい銀の糸が引かれた。
 悠は身体から力が抜け、膝ががくんと折れてしまった。そのまま巫女に体重を預けるような姿勢になってしまう。巫女は悠を優しく抱き締め、自分で立つように促した。
「うふふ……坊や、初めてだったんでしょう? ファーストキスの感想は?」
 今までとは口調も違っていた。悠はまだ巫女の変化を把握し切れないでいる。
「ちょっ……こんな、なんでっ……」
 顔を真っ赤に染めて視線を逸らしながら、悠はやっと言葉を絞り出した。まだ頭の整理がつかない。19年間、女に縁などなかったのに。
「ねえ、境内の裏に行きましょう」
 巫女は悠のあごに手を伸ばすと、人差し指で悠の顔をくいっと自分の方に向けさせた。強引に視線を合わせ、甘ったるい声で悠に囁いた。
「坊やが今まで体験したことのない快感、お姉さんが教えてあげる……」
 余りにも魅惑的な提案。異性との体験が何もかも初めての悠にとって、それは抗えない誘惑だった。
「はい……お、お願いします」
 期待半分、不安半分。そんな表情の悠をその瞳に映し、巫女は心中でつぶやいた。
(ふふ……結構いるのよね、君みたいな人って……)

巫女に連れて行かれるように、悠は境内の裏に回った。そこには大きな庭石
に囲まれた池があった。庭石は人が寝転がれるほど大きく、そして平らだった。
池の水は庭端の小さな滝から注ぎ込まれている。
「わたし、桜井美月っていうの。坊やの名前は?」
「た、高沢です……高沢悠って言います」
「ふーん、高沢悠君ね。大学1年生、19歳と」
 美月と名乗った巫女は、その池の脇の一番大きな石に腰を下ろす。悠はその
池の脇で、どうしたらいいのか分からず、立ち尽くしてしまう。
「ねえ、どうしてそんな所に立ったままなの……? こっちに来て」
 美月は戸惑った悠を見つめ、自分の脇に座るように誘う。
「あ、はい……すみません」
 悠はおずおずと美月の隣に座った。どうも美月の前では気後れしてしまう。
「緊張してるんだね。楽にしていいのよ……」
 美月は腰掛けた悠を抱き締めた。思わず悠は身体を硬くしてしまう。柔らか
い感触が巫女服越しに伝わってくる。
「可愛い……ふふ、ドキドキしてるのね」

 美月はそのしなやかな手を伸ばし、悠の頬を撫でる。真っ赤になった悠を安
心させるようにその手を首筋に伸ばし、鎖骨を這わせ、胸板をさする。むず痒
いような掌が心地よく、徐々にその手は下へと伸びていき、腹部に到達する頃
には、悠の股間は既に勃起していた。
「気持ちいいでしょ……?」
 美月に囁かれるハスキーな声は例えようもなく魅力だった。美月のキスと同
じで、この甘い声には逆らえそうにない。
 白い指はそのまま下に伸びていき、下半身を辿る。ズボンの上から悠の肉棒
に触れると思ったその途端、ぴたりと美月は手の動きを止めた。
 想像していた快感がやって来ない。悠は裏切られたような気分で美月を見る。
今や服とは対照的に淫らな雰囲気をまとった巫女は、悠の心理まで見透かした
ように笑っていた。
「駄目よ。まだ触ってあげない」
「そ、そんな……」
 美月は慣れた手つきで悠の服のボタンを外していく。
「服は脱いだ方がいいでしょ? 脱がせてあげる……」

 慣れた手つきで悠はすぐ全裸にされてしまった。美月は相変わらず巫女装束
のままで、自分だけが裸になっている事実に恥ずかしさを覚えるが、期待と不
安がそれをはるかに上回っていた。
 美月は悠の背後に座り、背中から抱きついた。脇の下から手を通して悠の心
臓の上に片手を置いて鼓動を確認する。
「ふふ……悠君、すっごくドキドキしてるね」
 美月は悠の肩に顔を乗せ、鼻にかかった甘い声をかすれさせながら囁いた。
「わたしもすっごく楽しみよ……満足させてあげるね……」
 直後に美月の細くしなやかな指が、悠の下半身に柔らかく絡みついた。
「うっ!」
 思わず悠は喘いでしまう。美月のような美女に初めて触れられ、一気に興奮
の度合いが高まる。しかも美月は本気を出している風でもない。小刻みに指を
滑らせながら、じわじわと着実に悠を高みに導いていく。悠のペニスからは透
明な粘液がもう滲み出している。
 巧みな愛撫に悠はたちまち息が荒くなった。美月はそんな悠の様子に震えそ
うなほどの高揚感を覚える。指先は心得たかのように男の性感帯を攻め始めた。
亀頭を撫でていた右手は微細な動きを絶やさず下り、ペニスのくびれを這うよ
うになぞり、左手の指は包み込むように肉棒全体を愛撫し始める。
「あぅっ……!」
 指戯が引き起こす快楽に悠は辛うじて堪えた。ここで射精してしまうのは勿
体ない。射精したいが、したくない。相反する感情がせめぎ合う中で、悠は我
慢する方を選んだ。
「あら……よく我慢できたわね。普通の男はもうイッちゃうのに……」
 耳元からそんな扇情的な言葉をかけられた。悠の陥落は最早時間の問題だっ
た。とても美月の愛撫には耐えられない。これ以上愛撫されようものなら、そ
の瞬間が限界だろう。もう我慢し切れない。
 美月も悠が限界近いのは分かっているのだろう。悠の分身からすっと手を引
いた。悠は物足りなさと、これで一息つけるという安堵を覚えたが、すぐにこ
れは嵐の前の静けさに過ぎないと悟った。美月が背後から甘く囁いてきたからだ。
「うふふふ……我慢できたご褒美よ。今から本気でしてあげる……」

 美月は悠のペニスに手を伸ばした。悠の分身から出た透明の液体を亀頭に塗
りたくり、カリの部分を指で円を描くように攻め立てる。美月の残りの指は、
「男」の裏筋を優しく巧みに愛撫する……。
「うわっ、もう、オレ……!」
 先ほどとは比較にならない快感が次々と下半身から送り込まれてくる。限界
に達しつつある射精感に抵抗するも、それは激流の中の小舟に過ぎなかった。
 そこにとどめを刺したのは美月だった。果てしなく甘ったるい言葉が悠を刺
激したのだ。
「我慢できなくなったら、出してしまってもいいのよ……」
 その一言で悠は頂点に達した。
「もう出るっ……あああっ……!」
 美月の手中のペニスが一段と硬くなり、脈動する地点が変わるのを指先で感
じた。こうなった男は例外なく射精するのを美月は経験から知っていた。この
場所を精液が駆け抜ける瞬間に、美月は何よりも興奮させられるのだ。
 悠は下半身を駆け巡る快感と共に、肉棒の先端から白い情熱を噴き出させた。
痙攣と共に二度、三度と射精は続く。美月は力を弱めながら、びくんびくんと
生き物のように震え続けるペニスがおとなしくなるまで愛撫し続けた。
「はあっ、はあっ……み、美月、さん……」
「なあに? 気持ち良かったでしょう……?」
 荒い息が収まりそうにない。悠は美月の問いにうなずくのが精一杯だった。
 美月は天使のような微笑みを見せると、興奮の余りに紅潮した顔を悠の顔に
近づけ、軽く触れ合うだけのキスをした。そして頬を手で掴んで顔を自分に向
けさせ、また挑発するように囁くのだった。
「ねえ……まだデキルわよね?」

 悠は美月の問いにこくりとうなずいた。余りのことに冷静な判断力を失って
いたかもしれないが、悠はうなずいて意志を示した。
 美月はそんな悠を見て満足気な笑みを浮かべた。
「そうね、19歳の童貞クンだもん、まだまだデキるわよね……?」
 美月は悠を愛しそうにぎゅっと抱き締めた。服越しだが、美月の柔らかくて
暖かい胸に悠の顔が埋もれる格好となった。女に抱かれるというこの状況に、
悠は頭がくらくらしてきた。
「ふふ、もうすっかり元気になってるじゃない?」
 美月が笑う。もう復活したというより、射精したのに勃起が収まらないとい
う方が正確なところだろう。悠の分身は張り詰めたままだったのだ。
「ま、もうデキないなんて言っても、すぐに勃たせてあげたけどね……」
 美月は両手に腰を当てて上半身を屈めて悠に自分の顔を接近させ、まじまじ
と悠を見つめた。気後れしたままの悠は座ったまま後退りしてしまう。
「ふふ、やっぱり坊やって可愛いわ……悠君って最高……」
 美月は唇を舌で湿した。獲物を味わう前の舌なめずり――男がこの仕草で口
腔での性交を想像してしまうのを、この妖艶な巫女は知っていたのだ。
 悠は期待と羞恥心からかぁっと頬を染めてしまう。これではもう、どちらが
女なのか分からない。
「うふふふ……もっとわたしを楽しませてね……」
 美月は両手を腰に当て、上半身を屈めて舐め回すように悠を見つめる。小さ
な頃、親に咎められるときこんな姿勢で見下ろされたような気がする。そのた
めでもないだろうが、悠はこの瞳に射竦められたように、美月を直視できなく
なってしまう。悠は俯いて目を伏せた。

 しゅるり……と衣擦れの音がした。何の音かと視線を上げれば、美月が白衣
の帯を解き、無造作に手放したのだ。ぱさりと地に帯が落ちる。
(う、わ……!)
 悠は目に飛び込んできた光景に息を飲んだ。美月は姿勢を変えず、手だけを
動かして帯を外したのだ。拘束を失った巫女服は当然緩む。服の合わせ目に隙
間が生まれ、その奥にある乳房の谷間がくっきりと浮かび上がったからだ。
 男の欲を最もかき立てるであろう、乳房の先端こそまだ巫女服の白衣に覆わ
れているものの、二つの豊満な膨らみの間に深く切れ込んだその溝もまた、男
の情欲を充分に刺激する。悠の視線はもう美月の胸元に釘付けだった。
 巫女装束の特性から、これまで美月の身体のラインをうかがい知ることは出
来なかった。身体つきが細身なのは分かったが、男なら誰しもが気になるであ
ろう乳房の膨らみは、今の今まで分からなかった。
 だが、まさかバストの谷間がこれほど深い切れ込みを作り出すとは……巫女
服でさえなければ、男はついその膨らみの豊かさに目が行ってしまうだろう。
「ねえ、悠君……」
 美月の呼びかけで悠は我に返った。応じるように見上げたところで、目の前
にあった美月の顔にまた唇を奪われる。美月の舌が悠の唇を割って、口内に侵
入してきた。膝が抜けるほど、あの情熱的で甘い大人のキス。
 悠は美月の思うがままに口腔を弄ばれるが、今度はおずおずと美月の舌に自
分の舌を絡めてみた。美月は一瞬動きを止めたが、悠の意思表示を喜ぶように、
更に激しく舌を絡ませ合った。悠も負けじと美月の舌を押し返し、逆に美月の
口腔に舌を滑り込ませようとするものの、百戦錬磨の美月がそんなことを許す
はずもなかった。舌を激しく動かすのを止め、文字通りねっとりとした愛撫に
切り替え、悠の口腔のあらゆる箇所に絡みついていく……。

「んぅっ……!」
 溜まらず喘ぎ声を上げる悠。余りの淫靡さと情熱、更には快感までをも演出
する舌の戯れに、悠は力が抜けるどころか、美月に吸い取られるような感覚さ
え覚えていた。
 美月は悠の身体から力が抜け、抵抗する様子がなくなったのを見計らって唇
を離した。艶かしい銀の糸が伸びるのも構わず、美月は余裕の笑みのままだ。
「ふふ、ちょっと本気出しちゃった……悠君のキス、なかなかセンスいいわね」
 褒められたのだろうか。センスがいいと言われたのにここまで圧倒され、し
かもそのテクニックを「ちょっと」と形容するのだから、素直に受け止めてい
いものだろうか。美月の技巧は本当に底が知れない。
「うふふ……わたしの今のキス、良かったでしょ?」
 美月は笑い出す。男を圧倒した昂揚感か、はたまた童貞の心理を見抜いてか
らかう楽しさからのものか。妖艶な色香を漂わせる美女の、次の手管は何なの
だろう? 悠は既に期待すら抱いていた。
「悠君。今の舌使い……もう一度してあげよっか?」
 爛々と瞳を輝かせながら、美月は耐え難い誘惑を次々と提案してくる。
「ただし、今度はこっちの方にね……」
 淫蕩な瞳の輝きがより増したような気がした。
 美月は悠のペニスを指し示しながら、そう提案してきたのである……。
 口による男性器の愛撫――勿論そういった性交の様態があることは、氾濫す
る性のメディアから知識を得た悠も知っていた。
「ふぇ……フェラ、ですか?」
 恐る恐る美月に尋ねてしまう。
「そうよ。フェラチオ。口でしてあげようと思ってるんだけど……さっきの舌
使いでね。気持ち良かったでしょう?」
 美月はくすくす笑い、またあの舌なめずりをしてみせた。悠は女に翻弄され
ていることを痛感しながら、やはり溢れてくる期待に逆らえなかった。何より
激しく自己主張する自分の分身が収まらない――本当はつい先ほど射精したば
かりなのだが。
「そ、それじゃ……お、お願いします。フェラ……してください」
 美月の唇の端が更に持ち上がった。くす、と美月は艶かしく笑う。この先に
何をされるのか、思わず想像してしまう笑いだった。
「いいわよ……」
 美月は妖しい微笑を浮かべた。悠の足を開くとその間に座り、悠の頬を撫で
ながら甘く囁く。
「気持ち良くなっても、いいって言うまで出しちゃ駄目よ……」
 それだけ言うと美月は悠の肉棒に貪りついた。大きく口を開けて、硬く勃起
して引き締まったペニスを先端からくわえ込む。
「え、ええっ!?」
 美月の許可なく射精できない……あのたまらない舌使いに耐えられる自信な
どどこにもない。童貞の男でなくとも、この要求に耐えられるとは思えない。
(あ、そうか。やっぱり口に出されるのは嫌なのかな……)
 悠なりに美月の意図に納得はできた。美月は想像していたほど強く吸い付い
てこない。肉棒全体を舐め回し、口内に分泌された唾液をまるで塗りたくるよ
うに軽めの愛撫を続けていた。

 悠はここまでしてくれる美月がだんだん愛しくなってきていた。突然の誘惑
と圧倒的な性戯に操られ、今でも驚きは収まったとは言い難いが、今まで女に
相手にされもしなかった男を、ためらいなく受け入れてくれたことに感謝に近
い感情まで覚えてしまっている。
「美月さん、ありがとう……」
 悠が感謝の言葉を言いながら美月を見つめたその刹那、身体の芯に痺れるよ
うな快感が走った。肉棒への圧迫感が瞬間的に跳ね上がり、何かがペニスを這
い回っている――美月が本格的に仕掛けてきたのだ。
「んっ……ふぅっ……んん、あん……」
 美月の口と鼻から少しずつ息が漏れる。美月は激しい動きでペニスに愛撫を
加え続けた。肉棒を口に含み、喉の奥で締め付けた。唇と舌を裏筋とカリのく
びれに沿ってぴたりと張り付かせ、口を前後に動かすことで巧みに愛撫する。
 悠はもうされるがままで、まるで女のような喘ぎ声を漏らすことしかできな
かった。美月は男の欲望を煽る上目遣いで、悠の様子をうかがった。
「美月さん、気持ち良いっ……うっ……くぅっ!」
 悠の反応に満足したのか、美月は笑っていた。『男なんか、全部知ってるん
だから……』とでも言いたげな、上目遣いの視線が悠を射抜く。視線を逸らそ
うとしない美月を真っ向から見つめようにも、下半身に注がれる快感が許して
くれそうにない。
 もう悠は爆発寸前だった。射精間が募り、やはり美月のテクニックには耐え
られそうにない。裏筋とくびれの交差するポイントをちろちろと舌で刺激され、
更に口内にくわえ込まれる。このままでは確実に射精に至ってしまう。
(出しちゃ駄目って言われてるんだ……っ!)
 悠は歯を食い縛るように耐えた。柔らかくて暖かい口の愛撫はあの白い指以
上に気持ちいい。耐えられるわけがない……!
「美月さん、もう駄目ですっ! 我慢できません! 限界です! もう出ちゃ
いますよぉ……っ!」
 悠は素直に告げた。このままでは美月の口に出してしまう。美月の許可があ
るまで出してはならないのだ。

 美月の愛撫がぴたりと止まった。危なかった。本当に射精の寸前だった。精
子の軍勢はまだ下から押し上げるような名残惜しさを見せるが、悠は呼吸を乱
れさせながら抑え込んだ。射精できないのは辛かったが、これで少しは大丈夫
だろう。
「はぁ、はぁ……はぁ……」
 まだ肉棒にぬめりがある。美月がくわえたまま放さないのだ。悠が辛うじて
視線を送ると、美月は更に淫靡な表情を浮かべた。そして悠と目が合った瞬間
に再び口と舌の戯れを再開する……。
「……うぁあっ!」
 悠はこのとき悟った。これが『さっきの舌使い』なのだと。美月の今度の愛
撫は激しくはない。だが、ペニスからじわじわと注入される悦楽は先ほどとは
比較にならなかった。
『さっきの舌使い』――フェラの前の大人のキス。
 抵抗する悠の舌をテクニックで圧倒した、あのねっとりとしたキス。
 それがこのフェラなのだ。思えば先ほどまでの激しいフェラは更にその前、
悠が抵抗するまでのキスをイメージした舌使いではないか。
 悠の分身には美月の舌がねっとりと絡み付いている。それは時折ぴくんぴく
んと生き物のように蠕動し、裏筋とカリをも同時に刺激する。こうされている
だけでも、しばらく待っていれば射精させられてしまいそうだ。
 柔らかな口の粘膜が張り付き、舌だけでは絡み付けない箇所を着実に攻め立
てる。柔らかく、そして暖かい粘膜が肉棒を包み込み、ねっとりと吸い付いて
男の性感を煽り立てる。
 そんなものを悠は今、味わっているのである……しかもまだ美月から射精の
許可はもらっていない。
 しかも美月はピストンのようにペニスを口から出し入れし、更にここから
ねっとりと「男」をしごくのだ……そう、ねっとりと。
「美月さんっ……!」

 たちまち射精感が限界に達する。美月の口がほんの一往復しただけで、悠は
喘ぎ声を上げてひくひくと震えた。いつになったら許可をもらえるのだろう。
痺れるような快感が下半身から全身に走り巡る。
「美月さん、駄目です! オレ、オレもうっ……ダメッ……!」
 悠がそう観念したところで、美月はまた上目遣いで悠を見つめた。悠はその
瞳に、獲物を捕らえた獣の目と同じものを感じた。
 美月は悠が限界を告げても許可を下さない。クールな視線で悠を見透かした
ように射抜いていた。
 口内で舌と粘膜を絡みつかせたペニスが突然膨れ上がるのを感じた瞬間、美
月は一気に肉棒を吸い上げた。
「ああっ……! うあっ、く……はあぁあっ……!」
 堰を切ったかのように、凄まじい快感が悠の芯にほとばしった。今までにな
い勢いで白い情熱が放たれたのが悠にもはっきりと分かった。全身を痙攣させ
ながら美月の口に精液を放つ。肉棒の脈動が更なる快感を招き、二度、三度ど
くんどくんと悦楽と共に精子を絞り出すように、ペニスが震えた。
 美月は大量の精液が放たれたのをすべて口で受け止め、射精が続く間、ずっと
吸い上げ続けていた。恐らく悠は射精と共に身体の芯から何かが引きずり出さ
れるような悦楽を味わったことだろう。
 美月は仰け反ったまま喘ぐ悠を見下ろすような場所に立ち、見せ付けるよう
に口に放たれた精液をこくんと飲み干した。口の端から一筋零れた精子を指で
すくうと舌で舐めとる。悠はその淫蕩さに思わず見惚れてしまった。
「ふふふ……まだ出していいって言ってなかったのにね……」

「そんなっ、だって、気持ち良すぎて……」
 まだ悠の呼吸は乱れたままだ。荒い息の隙間を縫ってやっと声を絞り出せる
程度だった。それほどまでにあの吸い上げフェラは強烈な快感だったのだ。あ
れほどの絶頂感を悠は今まで味わったことがない。
「うふふ……別に出してしまっても良かったのよ。わたし、悠君のイク瞬間の
顔を見てみたかったの。もうとっても可愛かったわ……」
 美月はくすくす笑い出した。
「だって童貞君がわたしの口に耐えられるはずないじゃない……ただイカせる
だけじゃ面白くないもの。だから観察させてもらったわ、うふふ……」
 悠は虚空を見つめるしかなかった。どう転んでも美月の掌の上なのだろう。
 美月は瞳を潤ませて悠に抱きついた。帯を緩めて肌の露出が増えた分、悠の
胸板に直接美月の肌の温もりが伝わってくる。
「ねぇ……悠君って、一日最高で何回出したことあるの?」
「え、ええっ?」
 本当にこの巫女の考えることは分からない。一日で一番抜いた数? そんな
ことを聞いてどうするというのだろう。
「え、えーと……3回です」
「3回? ふーん、そうなんだ」
 今まで悠は自分の手でしか抜いたことがない。3回も射精するまでしごけば
疲れてしまう。別に自分では多くも少なくもない回数だとは思っているが、そ
れがどうしたというのだろう?
 悠を見つめる淫蕩な輝きに満ちた瞳――美月はまたしても舌なめずりをしな
がら、甘い声で悠を魅惑するのだった。
「それじゃ、わたしが新記録作ってあげる……」

 新記録という言葉にペニスが反応してしまった。この短時間に二度も出した
というのに、ほとんど間を置かず勃起してしまう。それほどまでにこの巫女は
扇情的なのか。男の本能に訴えかけてくる魔力がある。
「あら、もう勃起したの? すぐ元気になっちゃうのね……」
 くすくす美月は笑う。傍目にはグロテスクなものでしかないペニスの勃起も、
美月にはもう可愛いものに映ってしまっているのだろうか。
 悠は咎められたような気分になってしまい、耳まで真っ赤にして俯いた。美
月はそっと手を伸ばし、頬に手を当てて安心させるように尋ねる。
「わたし……だから?」
 潤みを帯びた瞳に見つめられ、悠は更に恥ずかしさを覚えてしまう。この美
しい人を裏切りたくないという気持ちが沸き起こり、悠はこくりとうなずいた。
「美月さんって凄い美人だし、指も口も気持ちいいし……その、オレ、新記録
とか言われて、すげぇ期待しちゃって……す、すみません、節操なくて」
 少しずつ声がか細くなってしまう。弁解するように言いながら、悠は女にこ
こまでさせる自分に気が引けてきた。何しろ悠は一方的に美月にされるがまま
なのだから。
 美月は頬に触れた手を使い、また目を伏せてしまった悠の視線を強引に、し
かし優しく自分と合わせた。美月の黒い瞳に自分の姿が映って見える。
「わたし嬉しいよ、悠君……そんなに自信なくさないで。全然恥ずかしいこと
じゃないもの。遠慮しないで好きなだけ感じていいのよ……」
 余りにも豊かな母性と言うべきか。美月は更にすべての許しを悠に与えた。
「好きなだけ甘えていいんだからね……」

 潤んだ瞳が魅了したのは悠の心だったかもしれない。淀んだ心が癒されてい
くのを悠は実感していた。
 美月は身体を沈め、悠のペニスに唇で触れた。舌先を裏筋に当て、顔を上下
させて淫らに這わせる。先ほどのようには激しく吸い付かない。それでも性感
帯を突く微細な舌の動きは、悠の我慢の粘液を染み出させるには充分だった。
 舌が透明なそれを感じとると、美月はペニスへの愛撫を止めた。悠は快感を
中断させられ、不満そうな表情を浮かべてしまう。悠の不満を見て取ったのか、
それとも男とは快楽の中断に耐えられない生き物だと知っていたのか、美月は
安堵させるように囁いた。
「大丈夫、心配しないでいいのよ。悠君の大好きなわたしのオッパイで、ちゃ
んとイカせてあげるからね……」
 悠はどきりとした。確かに悠は女の豊満なバストにたまらなく惹かれる。雑
誌のグラビアを飾る巨乳アイドルで性欲を処理しているのは事実だが、まさか
もうバレていたのか?
「な、なんで……」
「あら? もしかして小さい胸の方が好き?」
「いや、そうじゃない、ですけど……」
「なんだ、やっぱり巨乳好きなんじゃない」
 美月は悠の狼狽振りを見てまたくすくすと笑う。やられた。これが男慣れし
た年上の余裕なのか。鎌をかけられたのか……。
「そうよね、悠君は大きなバスト大好きだよね。さっき帯を解いたとき、もう
目が釘付けになってたもんね……うふふふ」
 悠はやはり美月にはかなわないな、と感じた。美月が鎌をかけたのは確認の
ような意味だったのだろう。白衣の帯を解いたあのとき、巫女装束の隙間から
覗けた胸の谷間に悠の目は釘付けになった。そのときもう既にバレていたのだ。

 女というのは自分への視線には、男の予想以上に敏感なのだ。ましてや美月
のように豊かな乳房の持ち主ならば、常日頃から男の視線がその豊かな乳房に
集まるのを感じていたことだろう。
 美月は緩んだ白衣の合わせ目を、ゆっくりともったいぶるように焦らしなが
ら開いていった。柔らかそうな二つの膨らみが、小さく揺れてまろび出る。
「どう? 悠君好みの胸だと嬉しいんだけど」
 悠の視線はもう乳房に釘付けだった。巫女装束にこれほどたわわな果実が隠
されていたとは。思わず悠は生唾を飲み込んでしまう。
 美月の乳房はまずその豊かさと造形美に驚かされる。
 乳房全体の重心が高い。前面に張り出しているのに決して垂れることはなく、
重力に逆らうかのように形が崩れないのだ。白い肌から突き出た乳白色の美し
い球形の膨らみは、震いつきたくなるほどに魅力的だった。
 そしてその膨らみの頂点にある突起は、バストのボリュームとは対照的に控
えめだった。薄桃色の乳首はツンと上向きに突き出ている。それを取り囲む同
じ色の乳輪は小さくすぼまっており、豊かな胸にありがちな広がりを見せるこ
とは決してなかった。まるで乳房の頂点にひっそりと咲いた花のようだった。
 最高の乳房だった。豊艶さと美しさを兼ね備えた完璧なバストである。
 悠は見惚れてしまった。雑誌で女の裸は何度も見たことはあるが、ここまで
見事な乳房を目にしたことはない。溜息が出そうなほどに美しく、男の欲望を
かき立て、情欲をみなぎらせる美月の乳房だった。
 美月はひとしきり自慢の乳房を悠の目の前に晒して見せつけると、まだ呆然
と乳房に釘付けになった悠に構わず、両脇から自分の胸を手で押さえ、身体を
屈めた。乳房の位置を悠のペニスと同じ高さに合わせると、美月は上目遣いに
悠を見つめて囁いた。
「わたしの胸でイカなかった男は一人もいないのよ。悠君からも抜いてあげる。
ちゃんと白いのいっぱい出させてみせるからね……」

 美月は巫女装束の白衣を脱ぎ捨てたわけではない。赤い袴ははいたままだし、
白衣にしても身体の前の合わせ目を広げ、乳房を露出させただけである。巫女
装束は清楚な印象を与えるはずだというのに、目の前の淫靡な光景は相反する
背徳感を悠に感じさせ、その状況が更に悠の欲望を煽った。
「それじゃ始めるわね……」
 美月は色っぽく囁くと、その果実のように発達した乳房の谷間に、屹立した
悠の肉棒を挟み込んだ。豊かな白い乳房に黒ずんだペニスが埋められ、対照の
淫猥さを醸し出す。
 悠はほとんど感動していた。長年の夢がかなったのだ。のみならず、この美
しい巫女は絶頂までも約束してくれている。欲望を満たす歓喜が更に悠自身を
熱くしていた。
 乳房に挟まれた情熱から快感が伝わってきた。美月が挟んだ乳房を動かし、
悠のモノをしごき始めたのである。ゆっくり上下に動かし、バストの膨らみを
擦り合わせてじわじわ攻め立てる。
 美月の動きに合わせ、胸の谷間から悠自身の亀頭が規則的に顔を出す。悠は
自分のためにここまでしてくれる美月に征服感を覚えつつあった。自分のペニ
スが美月の乳房を犯している……。
「うーん、ちょっと邪魔ね」
 美月はそう言うと突然パイズリを止めた。わずかに顔をしかめて胸を外した。
「どうしたの?」
「ううん、ちょっと動かし辛いな、と思って。でも心配しないでね」
 美月は白衣の袖から腕を抜いた。ふわりと白衣を外し、胸だけではなく肩と
二の腕も露出させたのだ。それでも白衣は脱いだのではなく、そのまま外にさ
らけ出している。ほとんど上半身は裸だが、その乱れた服装がより想像をかき
立て、更に淫らな光景に思えた。
「うん、これね。上着が邪魔だったのよね。やっぱりこの方が楽にできるわ」
 美月は満足気な表情を浮かべた。直後にそれは淫蕩な色を帯びる。
「これで悠君を満足させられるわ……再開しましょ?」

 美月は再び手慣れた手つきで悠の「男」を乳房の間に挟み、両手で胸を掴む
と巧みに圧迫し始める。先ほどよりも確実に快感は大きかった。
「美月さん……気持ちいいよ」
「ふふ、当たり前じゃない……すぐにもっと気持ちよくしてあげるわ」
 美月は男を挑発するように微笑んだ。耐えられるものなら耐えてみなさいと
いう表情だ。この顔がどれだけ男を狂わせていったのだろう?
 だが悠はまだ余裕があった。やはりパイズリは難しいのだろうか、そのよう
な挑発を受けてもさほど動じなかった。征服感が増したためだろう。
(もう二度も出したんだ。そんな簡単にイッたりしないぞ)
 それが見抜かれていたのだろうか。美月はその挑発的な表情を崩さぬまま、
悠にプレッシャーをかけてきた。
「ねぇ、悠君……私の胸、気持ちいいでしょ?」
「う、うん、勿論」
「そうよね。本気を出す前に聞きたいんだけど……悠君、わたしの胸を犯して
る、なんて気分になってない?」
「えっ!?」
 悠は動揺した。もう完全にお見通しだったのだ。
 悠の返事を待たずして、表情だけで美月は悟り、くすくす笑い出した。
「ふふ、どうやら図星のようね……勘違いしないで。征服感を味わってるのは
わたしの方なのよ。悠君のコレがわたしの胸を犯してるんじゃないわ」
 美月は視線で悠のペニスを示しながら、嘲るような挑発の微笑みを浮かべ続
けた。上目遣いに悠を見上げた美月のその表情は恍惚としている。
 言いながら美月はより巧みに乳房で肉棒をしごき上げていく。いつの間にか
悠に余裕はなくなっていた。美月は小悪魔のような顔で更に攻め立てる。
 悠は美月のその陶酔し切った表情に見つめられ、悟った。この巫女は男を征
服し、そして翻弄するのを楽しんでいる。男を自分の思い通りに弄び、優越感
を得て快感としているのだ。男を操る快感を味わっているのだ。
 その証拠ともいうべき言葉が、美月の口から放たれた。
「わたしの胸が悠君を犯しているのよ……!」

 いつの間にか二つの膨らみは交互に動かされていた。絶え間なく注ぎ込まれ
る電流のような悦楽が、あっという間に悠を絶頂に導いていった。
「うわ、美月さんっ……!」
 悠はもう我慢できなかった。余裕があったはずなのに、我慢の粘液はもう既
に先端から滲み出てしまっていた。美月の技巧を持ってすれば、こうなれば射
精は最早時間の問題だった。
 美月は肉棒の脈動と悠の表情から射精が近いのを悟った。すぐさまペニスの
先端を柔らかな乳房の間に完全に埋めさせる。直後にどくんどくんと激しい脈
動を、美月はバストの間で感じた。勿論同時に放たれた、白い情熱が谷間を潤
すような感覚も。
 小刻みに乳房で圧力をかけ、悠の快感を一つ残らず搾り取るように愛撫する。
美月は男を圧倒し、思い通りに翻弄した高揚感に背筋をぞくぞくと震わせた。
 恍惚とした表情のまま、美月はペニスを乳房の谷間から外し、そこに射ち放
たれた精液を手ですくい取ると、愛しそうに一滴残らず舌で舐め取った。
 ごくりと悠にもわざと聞こえるように喉を鳴らし、美月は自分が弄んだ男に
視線を移す。美月は日の光を照り返してぬらぬらと光る乳房の谷間を示しなが
ら、悠に囁いた。
「言ったでしょう? わたしの胸でイカなかった男はいないんだから……」

 悠はまともな返事ができない。肩で息をしつつ美月を見上げ、そして虚空を
見つめるだけだった。わずかに残っていたプライドを射精と共に粉々にされ、
悠は今更のように気がついたのだ。
 美月は小悪魔のように男を翻弄する女ではなかったのだ。まさに男を心の底
から狂わせる悪魔なのだ、と。本物の魔性の女に悠は翻弄されているのだ。
 そう悟りながら、悠は女が男を犯すという美月の発言に、倒錯的な快感をも
また見出してしまっていた。味わいたくないが、どうしてもまた味わいたくな
ってしまうような、病みつきになってしまいそうな危険な快楽。
 美月はそんな悠を更に誘惑してくる。
「悠君、そろそろ卒業しようか? わたしが大人にしてあげる……」
「は……はい」
 虚ろな表情で悠は美月に諾と応じた。その双眸は期待に輝いている。
 だがその輝きは、これまでのように女を体験できることへの期待ではなく、
たった今美月に目覚めさせられた、倒錯の快楽への期待なのかも知れなかった

 神社に来てからの経緯を考えてみた。この美しい巫女の写真を撮った後、い
きなりキスされて、気がついたら裸にされて……確かにレイプと同じなのかも
しれない。悠は確かに犯されているのではないか。
 頭がぼんやりしている。「わたしの胸が悠君を犯しているのよ」――その言
葉が頭の中を巡って止まらなかった。唇で犯され、指先で犯され、口で犯され、
乳房に犯され……ついに今度は本当に犯されるのだろうか?
 悠はある種の戦慄と不安、そして期待に唾を飲み込んだ。
 その美月は一休みのつもりなのか、池の水を手ですくって飲んでいる。
(……オレも飲もうかな。こんなの初めてだし、喉からからだよ)
 この池の水は飲めるほど綺麗なのだろう。確かに小滝から注がれる水は悠が
見たことがないほど澄んでいた。
「美月さん、この水、飲んでも大丈夫なんですよね?」
「え? ああ、大丈夫よ。喉渇いたの?」
 美月はハスキーな声で返事をした。今ばかりはいつもの扇情的な響きもない。
「ええ、ちょっと……やっぱ、こんなの初めてだし、ずーっとはあはあ言って
たじゃないですか、オレ。飲めるんなら、と思ったんで」
「そうなんだ。ちょっと待って」
 池の水際などすぐそこなのに、美月は悠を制した。掌で水をすくうと口に含
み、悠の方へとやって来る。
 悠にそこまで目敏さを要求するのは酷だろうか。悠は美月がその水を飲み込
む喉の動きがないことに気がつかなかった。
 美月は予告も何もなく悠の唇を奪った。驚きに目を丸くする悠だが、それ以
上に口の感覚に驚かされる。冷たい水が美月の口から送り込まれてくるのだ。
「……っ!」
 注がれた水を悠は懸命に飲み干していく。次々と水が口に送り込まれ、すべ
てを飲み込んだかと思えば、今度はその隙を縫って美月の舌が滑り込んできた。

 悠は事態を把握してから侵略してきた舌に自分の舌を絡ませる。口の粘液を
まとわせながら悠の口内で踊る美月の舌は、既に先ほどまでの艶かしい女の舌
に戻っていた。
「ふふ、どうだった? まだ喉渇いてる?」
 美月の問いに悠は首を振った。もう充分に乾きは癒されていた。自分が想像
した以上の形で。
「そうなの? もっと欲しかったら今のもう一回してあげたんだけどなぁ」
 美月はからかうように笑った。まるで悪戯をした後の子供のように。だが直
後にその声色が変わる。
「それじゃあ、そろそろ……準備はいい? 覚悟できた?」
 魔性の女が耳元で囁いた。
「は、はい……」
 半ば俯きながら小声で答える悠は、背徳感に背筋をぞくりとさせてしまった。
「うふふふ、とってもいい子ね……坊や、お姉さんが教えてあげる……」
 最初にキスしたときにも聞いた台詞だったが、悠はそのときとは明らかに違
う意味合いを感じ取ってしまっていた。翻弄されたくないと思う一方、美月の
テクニックに翻弄され、目茶苦茶に感じさせられてしまいたいという、相反す
る感覚に囚われていた。

 するり……と衣擦れの音が鳴り始める。美月が巫女装束を脱ぐ音だ。悠にそ
の肢体を見せつけるようにゆっくりと、焦らしながら脱いでいく。
 白衣をまず地面に落とす。先ほど悠を圧倒した豊かな美乳が晒される。何度
見ても吸い付きたくなるような、そこに挟まれたくなるような乳房だった。あ
の快感は当分忘れられないだろう。
 更に美月はゆっくりと赤い袴の帯を解いていく。帯が解けるにつれて袴が緩
んでいくのが目に見えて分かった。美月は解いた帯を先に地に落とし、袴を押
さえている手をゆっくりと離す。
 ふぁさ、という小さな音と共に袴が落下した。美月の下半身が露になる。巫
女服は下着を着けぬというが、本当だったのだ。
 座ったままの悠に見せつけるため、美月は一歩前に出た。悠は見上げるよう
な格好で美月の艶かしい肉体に釘付けになる。
「どう? わたしの裸は? 悠君好みのカラダだといいんだけど、ね」
 すらりと伸びた長い脚に、貪りつきたくなるような肉付きのいい太股。脚の
付け根の三角地帯には男の欲望を一身に集める茂みが楚々と生い茂っている。
そこから繋がる張りのあるヒップは重心が高く、男の欲望をかき立てると同時
に見惚れてしまいそうな美を湛えている。
 その豊穣なヒップとは対照的に、ウエストの細さは芸術品だった。急激に落
ち込むかのような柳腰が、見事なくびれを演出している。
 上半身に続く豊かな乳房の美しさは今更表現するまでもない。この身体なら
男を溺れさせるのもたやすいだろう。今まで何人の男が通り過ぎていったのだ
ろうか。それを思うと嫉妬さえもしてしまいたくなる。完成されたメスの肉体
だった。
 悠の視線は乳房と下半身の茂みを往復したまま定まらない。胸に見惚れたい
が、秘密の花園の暗部にも視線を釘付けにしたい。
 美月はひとしきり自慢の艶かしい姿態を見せ付けた後、悠に近寄るとその右
手を取った。その手を巧みに誘導し、下半身の茂みの奥に触れさせる。
「あっ……!」

 声を上げたのは悠だった。指先に生暖かいぬめりとした液体が触れたのだ。
(これが“濡れる”ってことなんだ……)
 今まで様々な性のメディアから情報は得てきたものの、本当に濡れることを
悠は初めて知った。
「どう……? 濡れてるでしょ?」
 興奮していた。悠はただ美月にされるがままだったというのに。
「オレ……何もしてないのに?」
「もう、無粋ね。男だって女を抱いてるときは勃起するじゃない。わたしもそ
れと同じよ。悠君が感じてるのを見て興奮してたの……」
 美月は挑発するような笑みのまま、誘導した手の指先を更に奥に誘う。男が
女を抱けば勃起する。美月が濡れたのはそれと同じような感覚なのだろうか。
言い換えれば美月は悠を抱いた興奮から濡れたということではないか。
 美月は指先でかき回すように促した。悠は促されるままに指先で美月の下半
身を撫で上げる。
「あぁん……なかなかいいわ、悠君……」
 美月が悩ましい声で喘いだ。あのハスキーな声が喘ぐときだけ高く跳ね上が
る。そのギャップに今度は悠が興奮した。この巫女の甲高い声は、美月が性の
快楽を得たときにしか聞くことができないのだろう。思わず指先に込められる
力が強くなってしまう。

「やン……駄目よ、坊や。女の身体はすっごく敏感なんだから、もっと優しく
しなきゃ……ああっ、そう! いいわ、そんな感じ!」
 言われるままに今度は力を抜いて愛撫する。途端に声がまた跳ね上がり、ふ
るふると今度は美月が震えた。
「そうよ、いいわ……やっぱり悠君ってセンスあるわ……素敵よ」
 美月は自分も感じるように悠を巧みにリードする。悠は言われるままに美月
の下半身を愛撫する。指先にぬめりを感じながら、今はそれしかできなかった。
「今日はわたしもたっぷり感じそう……」
 声が甘く潤っている。美月は秘部から手を離させ、悠を横にさせた。屹立し
た悠の勃起の上にまたがるような格好になり、下半身の茂みをペニスにこすり
つける。
「う……」
 毛の擦れるむず痒さがペニスを更に硬くさせた。亀頭のわずかな先には女の
肉壷があるというのに、毛で擦られるだけで挿入できない。悠は本能的に肉を
割って入りたがり、腰を浮かせてしまう。
 その頃合を見計らってか、美月が動いた。
「ふふ、そんなに慌てなくていいのよ。すぐに入れさせてあげるわ」
 美月はさっと悠の突き上げを避けるように身体を動かした。悠を抑えるよう
に制すると、悠の肉棒を掴んで茂みの奥へとあてがった。
「それじゃあ卒業しましょうね……」
 美月は悠と視線を合わせ、少しずつ腰を落とし、ついに挿入を始めた……。

 ぬるりとする秘肉を割って悠のペニスが美月の膣に進入していく。
(ついにオレも……)
 長かったような気がする。19年間の童貞生活も終わるのだ……と思ったの
だが、美月がその先に進む気配がない。亀頭を埋め込んだ辺りで美月は腰の動
きを止めた。当然ペニスの大部分は未だ女を知らぬままである。
 悠が不満そうに見上げると、そこで美月と目が合った。淫乱な巫女は唇の端
を持ち上げてくすりと笑うと、身体をわずかに上下させ、下の口にくわえ込ん
だ亀頭を出し入れし始めた。くちゅくちゅと亀頭と秘密の口の間で妖しい音を
立てている。
「なんですぐに入れさせてくれないの? って顔してるわね」
 美月はにやにや笑う。上に乗った美月には悠の表情は丸見えなのだ。
「ふふ……悠君は“ミミズ千匹”って知ってるかしら?」
「え? ミミズ……って、あ! その、女の人の……」
「ふーん、知ってるみたいね。そうよ、“名器”って呼ばれる膣の一種のこと
ね。並の女の膣と比べてずっと気持ちいいって話は知ってるでしょ?」
 悠は視線を逸らしたままこくりとうなずいた。
「ふふ……わたしの言いたいこと、分かるかしら?」
 美月は妖艶に微笑んだ。これは悠が射精する前に見せるのと同じ笑みだ。
「は、はい……美月さんがその……ミミズ千匹って名器の持ち主……だとか?」
「ピンポーン。せ・い・か・い! 凄いらしいわよ、わたしの膣の中。今まで
わたしを通り過ぎた男の証言だけどね。こんなの初めてだってみんな言ったわ」
 悠はまたごくりと唾を飲み込んだ。「通り過ぎた男」――美月は「わたしを
抱いた男」とは言わないのである。ただの言葉の使い方なのかもしれないが、
美月の性癖を目の当たりにした悠には、その言葉の中には暗に「わたしが男を
抱いた」という含みがあるように思えてしまっていた。
「ふふ、悠君はどんなことを言ってくれるのかしら……?」

 美月は舌なめずりをすると、いよいよ本格的に腰を落とし始める。さほどの
抵抗もなく膣の中に悠のペニスは飲み込まれてしまった。
「う、うぅん……」
(あれ……?)
 美月が喘ぐような声を漏らし、悠は怪訝に思った。確かに肉棒が温かいもの
に包まれている感覚がある。しかし何もない空洞にペニスが入っただけのよう
で、快感というほどのものは特になかった。
 本当に入ってるのかな? と悠がいぶかしんだ瞬間、それは変貌を遂げた。
(な……何だ!?)
 肉棒を包んでいた温かいものがじわじわと動き出した。生き物のように膣の
肉襞がうごめき、蠕動のように悠の肉棒全体に、ぬめりを帯びながらぴたりと
絡み付いてくる……。
「うわぁっ!」
 悠は思わず叫んでしまった。多数の肉襞がペニスに吸い付き、しかも絡みつ
くような蠕動を繰り返している。襞の一つ一つの吸い付きがとてつもない快感
を引き出し、あっという間に射精感が高まっていく。これまで美月に披露され
た性戯など比較にならなかった。うねうねと柔らかいものが這い回っている。
「美月さんっ……!」
 身体を震わせながら耐えるものの、それは風前の灯だった。肉壷の絶妙な刺
激に悠はあっという間に果ててしまう。管を駆ける白い欲望は膣に強烈に吸い
上げられ、これまでにない衝撃的な快感を悠にもたらした。
 どくんどくんと精を打ち放つ間も膣襞の愛撫は留まらない。まるで一滴残ら
ず精液を抜き取るように絡み付いてきた。
“ミミズ千匹”とはよく言ったものである。
 挿入開始からわずか20秒足らず。もう『入れた途端』と同じレベルで悠は
果てた。猛烈な勢いで精液を放ったペニスは、未だに美月の膣の中がきゅきゅ
きゅと断続的に締まるのを味わっている。
 肩で息をして後ろに倒れ込んでしまった悠に、美月は優しく囁いた。
「良かったわね、おめでとう……これでやっと坊やも大人よ」

 本当に女は分からない。先ほどまで「あなたを犯している」などと発言した
女と同じとは思えない優しさだった。
「はぁ、はぁ、はぁ……すみません、美月さん。オレ、あんまり気持ち良すぎ
て、中に出してしまって……それに、あっという間にイッてしまって……」
「心配しなくていいのよ……わたし避妊のお薬飲んでるから。それに初めては
誰でもこんなものよ。特にわたしが相手なんだから」
 悠はそう慰められると、どこかほっとした。そしてやっと、自分が童貞を捨
てることのできた喜びが沸いてきた。
「これで、ついにオレも……」
「ふふ、そうね。やっと男になれた感じ? 悠君の童貞、とっても美味しかっ
たわよ。それにこれで新記録達成ね、うふふふ……」
「あ、ありがとう……ございます」
 悠は身を起こすと美月と唇を重ねた。軽く舌を絡め合って初体験を喜び合う。
 美月はゆっくりと舌をもぎ離すと、悠の両肩に両手を当てて前かがみになる。
されるがままに悠はまた押し倒される。美月は妖艶な瞳を潤ませ、囁いた。
「ねえ……もう一回しましょ?」
 その途端、ペニスを包む膣襞が締まり、じわじわと快感を送り込み始めた。
(な……なんて淫乱な膣なんだ……!)
 貪欲に男を求めるように快感を送り込んでくる膣の襞。悠が驚いている間に、
快感が強制的に勃起させてしまう。
「ふふふ……膣を締めることくらい、簡単にできるわよ」
 美月が更に恐ろしいことを告げてきた。確かに今、膣は美月の台詞と連動す
るかのようにうごめいていた。
「男をイカせるなんて簡単なのよね。こうして入れてしまえば、後は何もしな
くても射精させられるわ。男がわたしの中に耐えられるはずがないもの……」
 自信をみなぎらせた表情で美月は挑発的に笑った。膣の中がこれほど気持ち
いいと真実味がある。それにその挑発的な笑いが、悠にまたあの倒錯の快感を
もたらしていた。
「……それじゃ緩めるわね」

 美月がそう言うと、ペニスを襲う快感が弱まった。もう間違いない。美月は
膣の締まりを自分でコントロールしている。
「締めたり緩めたりするだけでイッちゃうのよね、男って……」
 男そのものを笑うような態度。ここまで圧倒されては、悠は最早認めざるを
得ないような気がしてきた。勿論美月の指す“男”には自分も含まれている。
情けないと思いながらも、その屈辱感が快感にすり替わっていた。
 美月は悠の胸の上に手を置き、騎乗位のままわずかに前傾姿勢になる。豊か
なバストが重力で張り出し、美月の両腕に挟まれる。二つのたわわな果実が目
の前で柔らかそうにたわんだ。
「坊やに選ばせてあげる……わたしを目茶苦茶にしたい?」
 怪訝そうな顔をする悠に、美月は甘ったるい声で提案した。
「それとも――わたしに目茶苦茶にされたい?」

 その意味を理解した直後、悠に例えようもない誘惑が襲いかかってきた。
 一つは破壊的な衝動・欲望のままに、目の前の美女で欲求を満たすこと。
 そしてもう一つ……倒錯的な欲望のままに、目の前の美女の圧倒的な技巧に
翻弄され、性の義務と常識の束縛から解き放たれた悦びに溺れさせられること。
 普通なら男は願望と欲望から前者を選ぶのだろう。だが童貞ごときのテクニ
ックで美月を『目茶苦茶にする』ことは可能なのか? そしてそれ以上に、こ
の心の裏側から滲み出るような、後者への鈍い欲求は何なのだ? 胸で『犯さ
れた』ときに感じた、あの倒錯感。味わいたくないが、どうしてもまた味わい
たくなるような、一度味わったら抜け出せなくなる危険な快感。
 小悪魔ではなく、本物の悪魔のみが知る底なしの悦楽。魔性の女のみがもた
らし得る強烈な絶頂。ただ射精するより明らかに気持ちいい……。
 いつの間にか、欲求の満足よりも快感に溺れることへの憧憬のみが脳裏を走
り巡っていた。
「……ください」
「え? なあに? 聞こえないわ」
「目茶苦茶に……オレを目茶苦茶に、してください……」
 それは禁断の果実――悠は越えてはいけない一線を越えたのかもしれない。
もう引き返せないかもしれない快楽の道に、悠は足を踏み入れた。
「……いいわよ」
 見下すように、嘲るように……美月は「くすっ」と妖艶に笑った――。
 美月は「くすっ」と妖艶に笑った。最初からこうなることが読めていたかの
ように。男を翻弄するのが楽しくて仕方ないと言った感じである。
 既に悠はすべてを美月に任せた。「目茶苦茶にしてください」――後はもう、
美月の意志のままに落ちていくだけだろう。
 ペニスにまとわりつく名器の感触は今もなお強烈だ。気を張っていなければ
あっという間に上り詰めてしまうほどに。
 美月は悠を観察する。もう4度も射ち放ったというのにペニスは硬く勃起し
ている。さすがはヤリたい盛りと言ったところか。
 だがまたすぐに達してしまいそうな状態だ。歯を食い縛るようにして膣内の
うごめきに耐えているといった様子である。
 この坊やはどこまで耐えられるのかしらね、と美月は笑った。
 悠の視線が美月の顔から下へと移動する。美月はその視線の様子をじっくり
観察した。豊満な乳房を凝視する悠の視線を確認すると、美月は動いた。
 悠の胸に置いていた手を横に移して身体のバランスを取り、クールに悠を見
下しながら言い放った。
「一生懸命我慢してね……その分、気持ちよくしてあげるから」
 美月はわずかに腰を浮かせて自慢の名器の膣を強く締め、巧みに高速で腰を
前後させる。美月の下半身がクイクイとリズミカルに、艶かしく振られる……。
「あっ……ああっ! 美月さん、み、づき……さんっ!」
 悠は余りの快感に悶絶した。これほどの快感は初めてだ。我慢するだけ無駄
ではないか。あっという間に悠は絶頂に導かれていく。肉棒が下からの突き上
げを抑えようとするが、もう張り詰めていてこれ以上は無理だった。
 美月もこのテクニックには自信があった。膣を締めての騎乗位――1分耐え
た男はいない。美月自身もそこまで耐え切れる男はいないと思っている。どん
な男でもあっさりイカせてしまう自信があった。
 そんなものがつい先ほどまで童貞だった男に浴びせられたらどうなるのか。
「気持ち良すぎてもう駄目ですっ……! ん、く、ああっ……!」

 悠は仰け反りながら射精した。我慢しようとしてし切れる快感ではないのだ。
ぴたりと張り付いた肉襞が、耐えようとする気力さえ奪うような気がした。
 腰を振りながら、美月は締めた膣の中に入ったモノがびくびくと痙攣し、精
液が怒涛のように流れ込んでくるのを感じた。美月はどこか満足そうな悠の表
情を見つめて悦に浸った。
 悠は精子を出し切ったところでインターバルも入れてくれるだろう。そう思
っていたが、次の言葉が美月から放たれたことで絶句する。
「出したみたいね。それじゃ2回戦に行くわよ……」
 頬を上気させた美月はまた妖艶な笑みを浮かべ、妖艶な腰使いを続ける。
「そ、そんな、もう?」
 もぞもぞとうごめく膣壁がまたペニスに絡みつき、快感を悠に与えていく。
じんじんと下半身が痺れ、このままではイカされるのは時間の問題だ。
「目茶苦茶にされたいって言ったのは坊やの方じゃない……」
 甘く潤った声で、美月は悠を見下ろして囁く。
「悠君のってなかなか良いわよ。女が一番感じる形をしてるんだから……こん
なので突かれたら女はみんなよがり狂っちゃうわ。いい感じよ」
 美月も快感を得ながら腰を振っていたのだろう。まさかこんな褒められ方を
するとは思ってもいなかったが。
「じゃあ、続けましょ……」
 今度は腰が左右にも動き出す。美月の腰は円を描くように回転し始めた。
「うっ…くっ……!」
 ただでさえ耐えるのが辛いのに、美月はその腰の動きを確実にヒートアップ
させていく。徐々に腰使いの速度が上がり、悠自身への締め付けがより激しく
なる。ぬるぬるとした膣壁が射精を煽るように悦楽の注入を強めていく。
 この日6度目の射精までさほど時間もかかりそうにない。
「美月、さん……!」
 電流のような快楽が身体の芯を走る。仰け反りそうになりながら悠は肉襞の
絡みつきに耐える。
「ふふ、いい顔よ、悠君。我慢すればするほど気持ちよくなれるのよ……」

 美月の容赦ない攻め立てに、悠は実際の快感以上の快感を覚えていた。そう、
何度も襲い掛かってきたあの倒錯の快楽。
 どんなに我慢してもイカされてしまう、どんなに耐えても結局は美月の思い
のままに射精してしまう。無駄と知りつつ我慢という形で抵抗するが、最後は
やはり白い欲望を屈辱的に吐き出させられてしまう。生殺与奪がすべて美月の
掌の上にあるような、精神を支配されるような快感と、それへの欲求。
「ほぅら……イッちゃいなさい、坊や……」
 美月の言葉が脳を貫いた途端、悠に限界が訪れた。
「く、うぅっ……!」
 どくん、どくん――もう6度目の絶頂だというのに、悠の射精に衰える気配
はない。最初に美月の指で犯されたときと、何ら遜色のない勢いで精子が膣に
打ち付けられる。身体の緊張と共に、どっと快感のレベルが跳ね上がる。
 だがそれ以上に驚いたのは、美月のその後の行動だった。
「悠君がイク瞬間ってとっても可愛い……こんないい顔の男って久しぶり」
 余裕の笑みを浮かべて美月は腰を振り続けている。射精した直後で敏感なペ
ニスは繊細に反応してしまう。くすぐったいような、じんわりと滲むように快
感が染み込んでいく。悠の意志に反してぴくぴくと膣の中で痙攣し、悠の身体
もそれを性の快感と認識しつつあった。
「み、美月さん、ま、まだ……!」
「あら、どうしたの……? “抜かずの3発”は男の自慢じゃないかしら?」
 美月は男を操るのがいかにも楽しいといった風に笑っている。
 抜かずの3発――膣内で射精した後、ペニスが萎えず勃起し続けた状態で、
再び性交、射精を3度はできるという意味である。それだけ精力が強いという
ことを誇示する言葉であり、確かに男にとっては自慢にもなろう。
 だが、この場合は明らかに何かが違う。強制的に勃起させられるこの事態は、
決して抜かずの3発だと誇れるものではない。名器の強烈さを示すだけである。
「うふふ……搾り取ってあげる…目茶苦茶にしてあげる……」

 くす、とまた特徴的な笑いを浮かべると、美月は容赦なく腰を振り始めた。
高速で上下に動かしたかと思えば、円を描くようなグラインドも巧みに交え、
一心不乱にくいくいと激しく腰を振る。艶かしい姿態に悠の性感はぐんぐん高
められていく。自分が快感を貪るための腰使いではない。明らかに男を射精に
至らしめる、ただそれだけのための艶めかしく、卓越した技巧……。
「悠君、わたしでいっぱい気持ちよくなってね……壊してあげる……!」
 見事なストレートのロングヘアが激しく乱れ、それ自身が生き物のように跳
ねた。ほんのりと桜色に紅潮した美月の肌と乱れ髪が対照を成し、悠の興奮を
更に刺激する。成熟した乳房が腰使いに連動し、プルンプルンと不規則に揺れ、
視覚からもオスの本能を煽り立てる。
 乱れ動く乳房と上気して艶やかな美月の顔に視線を釘付けにしながら、悠は
まるで女のような喘ぎ声を、絶え間なく襲いかかってくる快感や白い粘液と共
に何度も何度も放っていた――いや、放たされていた。
 余りの快感で頭の中は既に真っ白になり、美月が腰を振り終わった頃には、
もう悠は文字通り果てていた。

 ミミズ千匹という名器により、射精そのものの悦楽さることながら、やはり
一番大きかったのは倒錯の快感だった。すべての義務から解放されることを許
され、男のプライドも打ち砕かれ、自分の望むまま倒錯的な快感を一身に集め
ることができた。
 ただの射精よりも、童貞でなくなったという喜びよりも、自らの裡に在る精
神的な願望、心の深層に眠る欲望を満たされたのが、何よりも快感だった。
 そしてそれをすべて許してくれる女性――悠ならずとも美月は女神に見えた
であろう。美月は悠のすべてを受け入れてくれる。美月は悠のすべてを満たし
てくれるのだ
「美月さん……!」
 悠は目の前の美月に抱きついた。柔らかく、そして大きな乳房に顔を埋めて
甘える悠を、美月は優しくそっと抱き締め、愛しそうに頭を撫でた。
「悠君……気持ちよかった?」
「うん、うん、気持ちよかった。もう最高……」
「そっか……良かった。わたしも嬉しいよ」
 生まれたままの姿で抱き合う二人。肌と肌が触れ合うのが暖かい。
「ねえ、悠君……お願いがあるの。聞いてくれる?」
「え……? 何ですか?」
 ばつが悪そうに美月は視線を逸らす。そんな仕草が可愛らしく思えた。
「ねぇ、今度はわたしを満足させてくれる……?」

「……はぃ?」
 悠は反射的に聞き返してしまった。あれだけ悠から搾り取っておきながら、
今度は自分を満足させて欲しいとは。
「や、やっぱり駄目? もうデキない? ヤリ過ぎちゃった……かしら?」
 どこかおろおろしたような様子だ。余裕のあった大人の美女の姿はそこには
ない。似つかわしくないその姿に可愛らしさを感じてしまう。
「え、いや、その……」
「その……もう、無理?」
 不安そうに悠の下半身を見ながら美月は尋ねる。若い肉の柱は今の今まで百
戦錬磨の名器に搾り取られ、普段の存在感はない。
(無理もないわね……あんなに出したんだし……)
 これならもう少し手加減した方が良かったのかもしれない。美月ははぁ、と
溜息をついた。久しぶりにいいセンスの坊やだったというのに。
「いくらなんでも……ちょっと」
 これ以上は無理だろう。悠が断ろうとしたとき、美月に閃くものがあった。
「あ、そうだ」
 美月は短くそう言うと、悠を見て艶かしい笑みを浮かべた。悠を追い詰める
ときのあの笑顔だ。
 美月は悠の足を開くと、その間に顔を埋め、ペニスを口にくわえた。
「み、美月さん!?」
「本当にデキないの? 試してあげる」
 美月は肉棒の裏筋に舌を這わせた。愛液と精液の混じった生々しい味がする。
強くは吸い付かず、表面を舌先で刺激するように舐める。徐々に下を向いてい
たペニスがそそり立つ兆候を見せた。美月は満足そうに笑うと、舌を離して挑
発する。
「あら……何よ、まだやれるんじゃない?」

 例のくすくすという含み笑い。先ほどの慌てた姿はどこにも感じられない。
悠はその表情でまた自分が射精させられてしまうのを想像してしまう。今日初
めて会ったばかりなのに、まるで条件反射だ。
「すぐに勃たせてあげるわ……」
 美月はカリの部分を舌で舐め、肉棒を乳房の膨らみと膨らみの狭間に埋めさ
せる。左右から挟むと柔らかくしごき上げ、ペニスの先がはみ出たときに舌を
絡める……パイズリフェラだ。
(うわ、スゲェ気持ちいい……)
 足の間に身体を入れての行為故に、美月の視線は自然と上目遣いになる。そ
の顔はやはり、男を感じさせるのが楽しいといった風に笑っていた。
 胸の谷間に揉み込まれ、舌先で性感を強く刺激され、美月の視線に背筋をぞ
くりとさせられる。男を昂らせる術を知り尽くした淫らな女が、その圧倒的な
技巧で徐々に悠の射精感を高めていく。
(まずい、これ以上されたら……)
 もう何度も何度も射精したというのに、悠は限界まで届きそうになっていた。
ここまで出してしまう自分にも驚いているが、ここまで搾り取る技巧と身体を
持つ美月のなんと末恐ろしいことか。
 射精寸前を見計らったように、美月はペニスを胸の谷間から外し、顔を上げ
て舌を遠ざける。その瞳が悠の寸前という状態も見抜いているように見えた。
「本当、回数の効くいい子ね……」
 美月は性感をなるべく刺激しないように悠の肉棒を撫でた。まるで母親が我
が子をあやすように、愛しそうにその肉の柱を撫でる。
 美月はくすりと笑うと、平らな石の上で仰向けになった。肘を曲げて投げ出
された腕が妙に色っぽい。横になったのにみっしりと張り詰めた乳房は左右に
流れるようなこともなく、その完璧な造形美を崩さずに保っている。思わず見
惚れそうな美脚は緩く広げられ、付け根にある“女”の深奥への欲望を煽る。
 美月はその投げ出された手で悠を招き、この上なく艶を含んだ声で誘惑する。
「さあ、今度はわたしを楽しませて。手取り足取りリードしてあげるわ……」
「美月さんっ……!」
 完全に勃起したペニスは最早痛いほどだ。ここまでもう何度も出したのに、
悠の射精への欲望と女を求める渇望は収まりそうにない。
 いや、むしろ美月に収まるのを許されないといったところか。自分自身でも
ここまでできるとは思いもしなかった。
 悠は身を投げ出した美月に覆い被さるように抱き締めた。美月の挑発が悠の
理性を断ち切ったのかもしれない。
「あん……」
 美月は悠にされるがままに任せた。元々性交にセンスを感じさせる男だから、
初めてと言えどもそれなりの快感は得られるであろうと美月は踏んでいる。
 悠は強引に美月の唇に自分のそれを重ね合わせた。間髪入れずに舌を美月の
口内に進入させる。美月は一瞬ぴくりと震えたものの、抵抗する気配はない。
悠に任せるつもりなのだろうか。
(好きなようにしていいのかな……)
 未だ不安げな悠は舌先の進入を侵略へと移した。舌を美月のそれと絡ませ、
時折歯茎や口の粘膜に這わせてみる。
 美月はここでも反応が弱い。まるで初めて性の契りを交わす少女のように、
おずおずと舌を悠の舌に絡ませてくる程度だった。あの淫蕩な舌の絡みつきは
鳴りを潜めている。
(こりゃあ、いけるぞ……)
 年上とはいえ、女にいいように翻弄されたままで終わりたくない。攻撃的な
本能が首をもたげ始めた。好きなようにしていいのなら、好きなようにさせて
もらうぞ……。
 悠は舌の侵略から美月を解放した。日を照り返して輝く淫蕩な糸が艶かしい。
「はぁん……やっぱりセンスあるわね。キスは問題ないわ。こんなに力が抜け
ちゃうのって久しぶり……」

 らしくなく頬を真っ赤に紅潮させて美月がつぶやいた。うっとりと陶酔した
その表情は男の支配的な欲を煽る。意のままに貪りたいと自然に思ってしまう。
 悠は美月を見つめたまま、その手だけを動かして乳房を下から掴んだ。
「ああっ……!」
 悠の腕の中で身を捩らせて美月は喘いだ。歓喜の吐息なのは明白である。
「そうよ、悠君…わたし、胸が弱いの……ああ! そう! いいわ……!」
 グラビア雑誌のモデルのバストもこの胸には確実に劣る。悠の掌に納まり切
らない豊かさ。のみならず美しい造形。そして更に感じやすい……男に揉まれ
ないことなど、罪と言いたくなるような果実が実っている。
 悠は掌を動かして下から円を描くように優しく揉んだ。ただし乳首には決し
て触れないで。
「あん…ふぁっ…! いいわよ……はぁん、気持ちいい……」
 大人のメディアで性に関する知識は入手している。女はソフトな愛撫が一番
感じ、乳首は焦らして後から触れるべきと書いてあった。もしかしたら美月が
褒める悠のセンスとやらは、その耳学問を身に着けていることを仕草から察し
たのかもしれない。
 しかし美月はここでそのセオリーを破るように喘ぐのだった。
「ねぇ、悠君……もっと強く揉んで…」
 瞳を潤ませながら願いを告げる美月を前にして、悠は危うく理性を吹き飛ば
してしまいそうになる。征服したいという欲望が更に募っていく。
 悠は揉み解すような愛撫から切り替えた。一揉みをじわりじわりと少しずつ
強くしていく。美月の喘ぎは次第に大きくなっていく。
「あん! そうっ、その強さが一番感じるっ……!」
 美月は吐息を漏らしながらかすれた声で喘ぐ。悠はしっかりと掌でその力加
減を記憶した。吸い付くような美月の白い肌が薄桃色に染まっていく。感じて
いるのだ。
 悠は愛撫に緩急を混ぜ始める。触れるか触れないかといった微妙なタッチで
肌の上に手を滑らせたかと思えば、美月が一番悦ぶ力で揉みしだく……。
「んはぁ……っ! あぁんっ…感じちゃう……あはぁっ…!」

 首を左右に振りながら快感を貪る美月。生意気にもこの辺りが頃合だろうと
見計らった悠は、揺れる乳房の頂点にある最も鋭敏な突起に舌先で触れ、もう
片方の手も反対側の同じ場所を愛撫し始める。
「あぁああぁんっ……!」
 途端に美月は身を固まらせた。痺れたかのようにおとがいを逸らし、身悶え
している。強烈な快感を味わっているのだ。悠はここぞとばかりに攻め立てる。
「もっと…もっと舐めて! そう、そんな感じ! 感じる……あぁん!」
 悠は美月の望むまま左右の乳房を寄せ、交互に舌先で敏感な先端を愛撫し、
乳首を指の間に挟みながら乳房全体を揉みしだいた。
「はぁっ…あ、ぅん……凄い、凄いわ…あっ…ああんっ!」
 悠の愛撫に美月はすっかり浸ってしまっていた。悠は舌先で乳首を転がし、
色素で桜色に染まった部分のみを撫で、摘み、捏ね繰り回す。その度に美月は
喘ぎ声をより高く跳ね上がらせ、身体を弓なりに反らしてしまう。その姿は例
えようもなく艶かしく、そして美しく、更には悠の本能を煽り立てていく。
 悠はその調子のままで愛撫を続けながら、そろそろと右手を乳房から下へと
移動させていく。人差し指でなぞるように、胸の谷間からみぞおち、へそを通
り過ぎるように愛撫し、下腹部を通り過ぎていく。
 美月は未だ止まぬ乳房と乳首への愛撫が呼び起こす快感に身を委ねながらも、
その手の動きはしっかりと悟っていた。
 悠の五指がざわりとした感触を下腹部の更に下で得た。秘部の門番のように
生えている茂み――ついに“女”に手が突入しようとしているのだ。この先は
美月との初体験の時に触れたものの、自分の意思で進入するのは初めてだ。
 立場が逆転したように美月は快感の中で荒い息を漏らしている。悠は手の位
置を変えずに、美月の顔をじっと見つめた。
 ややあってその視線と止まったままの手の位置に気づいたのか、美月は呼吸
を乱れさせながらも、潤みの満ちた瞳を悠の双眸と合わせた。悠の瞳に自分が
映るのを見ながら、真っ赤になって恥ずかしそうにこくんとうなずいた。
 悠はそれを確認すると、未知の区画にその指を進めていった……。

 すべてを許された悠の指が恐る恐る未知の区域へと進んでいく。ほどなく茂
みに指が触れ、ざわりとした感触がした。この先が美月の秘部なのだ。
 悠は美月に覆い被せた身を起こし、美月の足を広げさせた。見下ろすような
位置から美月を覗き込むと、悠は更に加虐心を刺激される。
 絶佳の美女が悠の目の前で恥ずかしそうに頬を染め、男を狂わせる肢体をさ
らけ出しているのだ。思わず力任せに欲望をぶつけたくなる。
 視線を上から下ろしていく。男を惹きつけるための豊かな膨らみから突如落
ち込むかのような腰のくびれ、そして重心高く張り詰めたヒップへの魅惑的な
曲線がたまらない。
 だが悠の視線は更にその先に釘付けだった。身体の深奥を覆う茂みはこれま
で雑誌などで目にしてきた女性のものよりも薄く、肌の白さを際立たせている。
その奥にある秘所ももう悠の視界に入っている。愛液に塗れたそれはさながら
隠花植物のような色彩を帯びていた。ねっとりと淫靡な誘いが男を引き寄せ、
一度そこに入ればもう逃げ出せなくなるような花びらが咲いていた。
 悠は食い入るようにその隠花の芯を見つめながら、そっと濡れそぼった肉の
中心に指を伸ばした。ぬるりとした感触に一瞬手が止まる。
「あぁっ…! 気持ちいい……」
 ハスキーな美月の声が跳ね上がった。
「ねえ、もっと……」
 懇願するように美月は悠を見つめた。悠は隠花の芯に触れた指をかき回す。
くちゃくちゃと淫猥な肉と液が音を立てる。
「は、あぁっ……」
 加えて交えられる喘ぎ声が更に悠を興奮させる。ハスキーな声が性の戯れの
ときにのみ弾け上がる様は、男の征服欲を強く刺激する。何故ならこの声は性
交の相手でなければ聞くことが出来ないのだから。

 声が弾ける度に秘口の芯から湧き出す液体の量が増えていく。悠は肌を桜色
に染めて快感に浸る美月に興奮を覚えながら、指先を愛液に塗れさせ、陰唇の
上にある慎ましい突起に軽く触れてみた。
「あぁあ……っ!」
 声にならない声が美月の口から放たれた。今までとは段違いの反応だった。
身体全体を左右に捩らせ、仰け反りながらびくびくと身体を振動させる。
「そう、そうよ…今のがクリトリス。悠君、やっぱりいい……女の扱い方、知
ってるじゃない。そこを触られて平気な女は誰もいないの。敏感な所だから優
しくしてね……」
 言われるままに、悠は力を抜いて指の腹で肉芽を撫で回す。面白いように美
月はよがり狂った。声だけではなく、身体までも跳ねさせては悶えた。
「ああっ……いいっ、感じちゃうわ…はぁっ…ん、ふぅっ…あぁあん……!」
 合間を縫うように豊艶な乳房の先端を舐めると、美月は痺れるように痙攣し
ながら男の欲望を満足させる声で激しく喘いだ。
(このままならイカせられる……!)
 悠が根拠のない確信を持ち、そのまま女芯への愛撫を続けようとしたとき、
美月が瞳を潤ませて要求してきた。
「悠君、わたし、もっと気持ち良くなりたい……だから入れて……」
 美月の中心はもう充分に濡れていた。悠の愛撫と悠を攻め立てたことへの興
奮が、既に受け入れ態勢を整えさせていたのだ。
 悠は美月の頼みにうなずくと、屹立した肉棒を淫口近くの位置に置き、少し
ずつ奥へと進めていこうとした。美月は潤み切った瞳でその光景を眺めている。
 だが悠のペニスは濡れそぼった陰唇の液に滑らされ、膣の中に入らなかった。
(あれ……駄目か?)
 悠はもう一度試す。つい先ほどまで童貞だったことの焦り。うまく挿入する
方法を悠は知らなかった。同じことを試すがまた滑って入らなかった。
 美月はその悠の姿を見てくすくす笑い出した。肉棒で繋がった瞬間に出すつ
もりの甘ったるい声は、もういつでもいいように用意しているのに。
「落ち着いて、悠君。ちゃんと指でペニスを誘導しないとやり辛いわよ?」

 そうだったのか……悠は自分の甘さを初めて知った。敏感なゾーンをペニス
で突きさえすれば、いつの間にか挿入できるものだと思っていたかもしれない。
(雑誌とか本に踊らされてるなぁ……)
 ばつの悪い思いが頭を過ぎった。悠は思い直すとペニスを再び美月の蜜口に
指を添えてあてがい、少しずつ陰唇の中央に押し込んでいく。
「ん……あ…ふぅっ…!」
 三分目付近まで挿入したところで悠は動きを止めた。ここまでは上手くいっ
たが、押し戻そうとする肉壁の抵抗が強くなったからだ。
 それを察した美月が囁く。
「ここまで来たら、一気に突き入れて……」
 悠は返事もせず、力任せにペニスをぐいと押し込んだ。勢いをつけてしまう
と存外簡単にペニスが奥深くへと沈み込んでいく。美月は挿入の快感と共に、
溜め込んでいた甘ったるい声をここぞとばかりに解き放った。
「あぁああぁん……! 感じる、すっごく感じるぅっ! 気持ちいい……」
 ハスキーな声が快感を表現する。美月は男が喜ぶことを見抜いた上で最高の
声を用意していた。
 奥まで挿し入れられた肉棒に肉襞が絡みついていく。美月すらも意図せぬ名
器の膣が悠を更に高みに導いていこうとするが、今の悠には余裕があった。度
重なる射精と精神的な優位が、悠の我慢を増幅させていた。
 快感に仰け反った美月は挿入の余韻に浸りながら、かすれた声で悠に囁いた。
「ねえ、動いて……もっと腰を使って感じさせて…」
 悠は言われるままにペニスを前後させる。今まで得た知識をフル活用するよ
うにぐいぐいと出し入れを繰り返し、深く浅く、そして激しく美月を攻める。
「あん……ああっ…感じるわ……!」
 身体を震わせながら美月は悶えた。半ば恍惚とした表情が男の欲を更にかき
立て、悠は激しく腰を振る。奥を突いては膣口寸前まで引き抜き、出来る限り
奥まで押し込むのを繰り返す。
「んっ……はぁん…やン、凄い…! 悠君とわたしって身体の相性もいいわ!」

 頬を赤く上気させて快感を身体全体で受け止める美月。この美女をもっと感
じさせたい、もっとよがらせたい。悠がそう思って腰を引いた途端、ペニスの
先端までもが抜けてしまった。
「あっ……!」
「あら……?」
 二人が同時に素っ頓狂な声を上げた。同時にお互いの余った部分と足りぬ部
分を埋め合わせていた感触が突然失われたからだ。美月はくすくす笑い出した。
「もう、しょうがない子ね……そんなに焦らなくてもいいのよ?」
「いやっ、その……」
 今度は悠が顔を真っ赤にしてしまう。余程女に飢えているとでも思われてし
まっただろうか。
 美月は笑いながら起き上がり、つんと悠の胸を突いた。悠も突然身体を起こ
されたことでバランスを崩し、軽く尻餅をついてしまう。
 美月は立ち上がると今度は悠の上にまた覆い被さった。
「わたしがリードしてあげるわ……上に乗ってあげる」

 あの鼻にかかった甘ったるい声。男の悦びを知り尽くした技巧。悠はその言
葉にまた期待を抱いてしまっていた。
「で、でも……オレ、もうそんなに何度も…」
 悠は顔を伏せてつぶやいた。美月の騎乗位は充分に味わっている。あのテク
ニックと名器で攻め立てられたら今でもそうは持たないだろう。
「大丈夫よ……心配しないで」
 美月は限りなく優しい声で悠の耳元で囁き、安堵させるように頭を撫でると
身体を起こした。長い黒髪がぱさりと揺れる。
「わたしね……騎乗位が一番感じるの。さっき悠君から搾り取ってたときもね、
実は結構感じてたしね。うふふ……」
 騎乗位が一番感じる――この上なく淫乱な意味合いを思わせる言葉だった。
男を攻め立てる体位が一番良いというのだから。
 美月は半ば唖然とする悠のペニスを誘導し、下の口の入り口に先端をくわえ
させると、挑発するようにまた囁いた。
「それじゃ、わたしを楽しませてね……」
 美月はその言葉と同時に、再び腰を落としていった。

 再びあのぬめりとした感覚にペニスが包まれる。男を翻弄して止まない女体
の壁の愛撫がまたしても悠を襲う。耐えるために下半身に力を入れて強張らせ
るが、今度は先ほどのように美月は締めつけてこなかった。
「ふぅっ……ん…」
 騎乗位で挿入し切ってからも、美月が仕掛けてくる気配はまだない。むしろ
彼女は頬を赤く上気させ、天を仰ぎながら肉棒のもたらす快感を味わっている
ように見える。
「心配しないで……今度はわたしが感じるためのセックスだから。そんなに強
く攻め立てないわ」
 悠の肌の緊張を悟ったのか、美月は頬を染めながら安堵させるように囁く。
「まあ、それでも――悠君が耐えられるかどうかは知らないけどね」
 美月は一転してクス、と笑った。やはりこの顔が美月の本当の素顔だと悠は
思う。快楽への姿勢には絶対の自信があるのだろう。美月のように淫乱で、圧
倒的なテクニックの持ち主であれば、それも不思議なことには思えなかった。
「悠君のペニスってやっぱりいいわ……最高の形してるわよ。入れてるだけで
気持ちいいなんて久しぶり……」
『入れてるだけで気持ちいい』のは美月だけではない。ほとんどの男が挿入し
た途端に射ち放っていたのだ。美月のミミズ千匹はそれだけの快感を男にもた
らすのだから、自分が感じる暇などなかったのである。
 だから美月は男を搾り取った末に味わうことを覚えたのだ。男が自分のテク
ニックに耐えられないのは仕方ない。ならば耐えられるようになるまで翻弄す
ればいいのだと、男が自分を通り過ぎる度に学習していったのだ。
 かなわないことを思い知れば、男はプライドに賭けて美月を絶頂に導こうと
躍起になる。まさにそれは美月の思う壺だった。自分のサディスティックな欲
望を満たせる上に、男は次第に技巧を上昇させ、欲望を満たすだけの性交はい
ずれしなくなる。更に美月が倒錯の快楽を与えることで、更に男はこの淫乱な
巫女にはまり込んでいく。最初から男は美月の掌の上で操られているのだ……。

「あの、美月さん……その……オレのってデカいですか?」
 上に乗ったままで動かない美月に悠は尋ねた。美月はそうね、と返した。
「普通よ。でも人によっては小さく感じるかもね?」
「そ、そうですか……」
 普通、更には小さいとまで断言され、悠は肩を落としてしまう。美月は含み
笑いを口の端からわずかに漏らしながら続けた。
「あ〜ら、心配してるの? さっきから悠君のこと褒めてるじゃない。気持ち
よさはアソコの大きさじゃ決まらないわ。形よ、か・た・ち。悠君のって本当
にいいペニスよ。こんなに形が良くて硬くて、これだけ回数が効く男は初めて
かもしれないわね……最高よ」
 美月は舌なめずりをしながら悠を勇気づけた。本心からの言葉である。世辞
でも何でもない。
「それにね……私と悠君って身体の相性も抜群なのよ。もうすっごく美味しい
男のコを見つけた感じなのよね、わたし」
 生来から淫乱なのだろう。悠を見据える美月の目付きは男を挑発し、昂らせ、
快楽をひたすらに求める獣のような色彩を帯びていた。美月の破壊衝動はこの
瞳のときに発揮されているのだ。優位に立つことへの快感と、男をその技巧で
圧倒し、自分に溺れさせ、狂わせ、落としていくのがたまらないのだ。
「それじゃ、わたしを気持ちよくさせてね……」
 甘く囁きながら、美月は腰を上下させ始めた。悠から搾り取ったときほど技
巧は凝らさず、リズミカルに腰を振る。名器にものを言わせて強く締め付ける
こともない。それでも並の女には生み出せないであろう快楽を悠に与えている。
悠は何度も射精させられたため、まだまだ余裕があった。
 変化はすぐに現れた。美月が腰を振りながら、顔を紅潮させながら喘ぎ声を
漏らし始めたのだ。
「あぁん…はぁっ……気持ちいい…!」
 美月は半ば目を閉じ、柳眉を歪め、口を半開きにして徐々に喘ぎの吐息を荒
くしていく。ペニスが膣をえぐる快楽に身を浸しながら、美月は悠に懇願した。
「ねぇ、悠君も来て……!」

 ねっとりと絡み付いてくる美月の襞。何もしなくてもうねうねと蠢動し、男
自身に吸い付いてくる。普通ならそれだけで射精感を相当高められてしまうが、
悠は何度も射精した後だけに余裕を持って耐えられた。
「ねぇ、悠君も来て! もっとわたしを感じさせて!」
 美月は腰の動きを少しずつ激しくしていく。悠は美月の要求のままに下から
腰を突き上げる。途端にぶるぶると美月が身体を細かく震わせ、喘ぎの吐息が
かすれた。
「……っ! んあぁっ…!」
 その反応に美月が抵抗を見せる様子はない。悠は立て続けに突き上げてみた。
「はぁっ、んぅっ……気持ち、いいっ……!」
 美月がいい声で鳴いた。口の端から漏れる女の喘ぎは男を最も興奮させる。
美月は悠のリズムに合わせて腰を振り出した。悠が腰を引くときに身体を浮か
せ、突き上げるときに腰を落としてくる。この辺りはさすがに慣れていた。い
ち早く悠の突き上げるリズムを察知し、それに合わせて快感をより深めようと、
より奥へと突かれるために合わせてくる。
 美月の身体が甘い嬌声と共に跳ね上がった。美月が身悶えする度に、悠の男
自身を包み込む女の壁はきゅっと強く締め上げてくる。感じ始めると自然と女
の膣は締まるのである。恐らく先ほどまでなら、その締め付け一度だけで悠は
白い液体を解き放っていたことだろう。
 知らず知らずのうちに美月の腰の動きはより激しくなっていった。生温かい
女の襞が比例するように活動を活発にする。腰の動きが激しくなるにつれ、美
月の前面に突出した乳房がたわみ、プリュンプリュンと揺れた。まるで触れと
言わんばかりに。
「あぁあああぁん……っ!」
 美月の声が更に跳ね上がったのは、悠がそのバストを下から鷲掴みにして揉
んだからだ。先ほど覚えたばかりの美月の一番感じる指使いで、円を描くよう
に下から上へと揉みしだく……。
「あぁ…あはぁん、ああぁあぁぁっ……!」

 美月の声が今までになく高い快感の震えを帯びた。悠の男を下の口にくわえ
たまま身体を弓なりに仰け反らせ、びくびくびくっと痙攣する。今までにない
反応だった。
 悠は胸を揉むだけでは飽き足らず、腹筋で身体を起こすと、プルンと揺れる
乳房の先端にある突起に吸い付いた。美月の乳首を口に含んで舌先で転がし、
左手で反対側の膨らみを揉みしだいた。美月は悠の愛撫の度に反応を強めてい
く。勿論悠も美月も腰使いを緩めるどころか、更にヒートアップさせていく。
「ああん! ふあぁあぁんっ……は、あぁああん…!」
 快感に溺れつつも腰を振り続ける美月を支えようと、悠は背中に手を回した。
そのとき偶然に、悠の手が美月の振り乱された黒髪の中に突っ込まれた。
「きゃんっ……! あぁあぁああ……っ!」
 その瞬間、美月の身体が痺れるように震えた。呼吸が明らかに激しく乱れ、
身体全体が桜色に染まり、電源が落ちたかのようにぐったりと崩れた。悠のペ
ニスへの締め付けだけが激しく残ったままだった。
「美月さん……?」
 悠が呼びかけても美月は悶えの吐息を荒くさせるだけだった。余程強烈だっ
たのか、美月はしばらく動けないでいた。
「か、髪……!」
「え?」
「だ、だって、髪を触られるなんて、久しぶりで……突然そんな所を撫でられ
るなんて思ってなかったから、だから……」
 目の焦点がまだ合っていない。目を白黒させ、まるでどうしたらいいのか分
からないと言った様子でおろおろと戸惑っている。
「美月さん、髪の毛、感じるの?」
 悠の問いに、美月は今までの態度が嘘のように弱気になる。
「だ…だって、今までの男なんて、みんな揉みしだくことと入れることしか考
えてなかったから、だから全然準備もできてなくて…そのっ、あの……!」
 怯えたように弁解する美月を、悠は優しく抱き締めながら腰を突き上げ、同
時に美月の見事な黒髪の間に五本の指を差し入れ、梳った。

「あぁああん……! 駄目、そんなことされたらっ……! だめぇっ!」
 何がどう駄目になるのか、男の悠には永遠に知るべくもない。悠は美月最大
の性感帯と見られる黒髪をかき乱しながら腰を使って下から突き上げ、目の前
でプルンプルンと魅惑的に揺れる豊満なバストの先端を舐め尽くす。美月はい
つしか与えられる快感を受容する立場に回っていた。
「ああっ……はぁんっ…!」
 美月は余りに激しい吐息のため、喘ぎ声すらも途切れ途切れになっている。
下から一突きする度に、乳首に舌を絡ませる度に、見事なストレートの黒髪を
かき回す度に、美月の身体は電撃が走り巡ったかのようにぴくぴくと震える。
「はぁああん……もう駄目、わたし、もう駄目…ああぁああん……!」
 悠の肉棒を締め付ける花園の愛撫もより強烈なものになってきた。美月は本
気で感じている。悠は必死に堪えながら、美月の芯を何度も激しく貫いた。
「わたしもう駄目っ…! もうイクッ! もうイッちゃうぅっ…!」
 美月は泣きそうな顔を左右に振って許しを請うが、悠はあと少しだと確信し、
ここが最大のチャンスとばかりに腰の勢いを強め、力の限り美月を抱き締めた。
「あああぁあぁ――……っ!」
 美月は背筋をピンと張った状態で身体を反り返し、一際大きな喘ぎ声を響か
せた。同時に美月が騎乗位で搾り取ったときよりも強烈に膣壁が収縮し、悠を
限界に至らしめる。
「美月さん、オレもっ……!」
 耐えに耐えていた熱い白濁液が一気に肉棒の内部を駆け抜けた。あれだけ出
したというのに、とてつもない量の精液が後から後から快感と共に噴き出し、
どくんどくんと脈打ちながら美月の中へと注ぎ込まれていく。
 ミミズ千匹の膣が一滴も逃さんと言わんばかりに吸い付き、射精の終わった
悠のペニスを優しく包み込む。悠のペニスを捕まえておきたいかのようにひく
ついている。
「悠君って最高…フィニッシュで抱き締められるなんて……!」
 瞳を潤ませながら美月は悠に囁いた。
「あぁん……こんなに乱れちゃうなんて久しぶり」

 心底満足したというように美月は微笑んだ。悠にとっても最高の笑顔だった。
「オレも嬉しいです……美月さんが気持ちよくなってくれて」
「ふふ、そう? わたしも嬉しかったわよ、たっぷり楽しめたしね」
 二人は抱き合いながら感想を述べ、悠は未だ膣の中に収まったままの肉棒で
名器の愛撫を楽しんでいた。
「……でもちょっと悔しいかな」
「え?」
 怪訝そうな顔で悠は問い返した。
「だって、初めてだった男の子にイカされちゃうなんて……わたし悔しい!」
 その瞬間、美月の膣が収縮し、ペニスに絡みついた。美月が締めたのだ。
「今度はもう許さないよ……覚悟してね。悠君がイカなくなるまで、何回でも
出させてあげるからね……!」
 美月の瞳が妖しく潤んだ。

 すべてが終わったときには、太陽はもう西の空に傾いていた。あの後もう、
何度射精したかも悠は覚えていない。太陽が黄色く見えるのは、決して夕方に
近づいたからだけではないだろう。
 美月と悠は着替えを終え、敷地の石畳の上で会話していた。
「悠君、大丈夫? ちゃんと歩ける?」
「え、ええ……な、何とか」
 今までの人生にない射精回数。かなり腰に来た上に、疲労感から脚がふらつ
いている。大きすぎる快楽の代償は下半身に。だが悠は決して後悔していない。

「ねぇ……悠君。今度また一緒に写真撮ろうね……」
 クス、と美月は笑った。その含み笑いを見て悠は思い出す。そうだ、今日は
この巫女さんの写真を撮りたいって言ったら誘い込まれて……まさか!?
「あの、それって……」
「うふふふ……わたしが何を言いたいかは当然分かってるでしょ?」
 ハスキーな声で美月は笑う。勿論「そういうこと」を言いたいのだろう。
「それとも、わたしが悠君の家に遊びに行っちゃおうかなぁ? 悠君、大学の
関係で一人暮らしだって言ってたし、それならわたしとヤリたい放題だよ?」
「え、あ、いや、その……」
 戸惑う悠に美月はそっと抱きついた。まるで落ち着かせるように。
「この神社じゃ仕事だから巫女装束だけど、悠君の家ならもっと他の服も着ら
れるんだよね。わたしの下着姿とか、見てみたくない?」
 大人の余裕を見せつけながら美月は囁く。悠は美月の下着姿を反射的に想像
してしまい、赤面してしまう。
「ふふ、その顔だと決まりね。今日の写真、できたらわたしにも見せてね」
「あ、はい、それは勿論。そしたら持ってきますんで……」
 美月は悠の台詞を遮り、下から覗き込むような上目遣いで悠を挑発した。
「悠君、そのときまでちゃんと溜めてないと駄目だからね。わたし、今度はも
っとサービスしてあげるから」

「ええっ!? も、もしかして、今日よりも……」
 美月は舌なめずりをしながら答えた。やはりこの巫女は生来から淫乱なのだ。
「ふふっ、そうね。まさかわたしがあの程度だと思ってた? もっといろんな
テクニック持ってるんだけど……どう?」
 あの獣の瞳だ。悠はこれに見据えられるともう身動きが取れないように竦ん
でしまう。あの倒錯の快楽への期待とも重なり、悠は答えていた。
「わ、分かりました……また今度来たとき、お願いします」
「うふふ、ちゃんと溜めておかないと駄目よ? 楽しみにしてるからね……」
 美月は二人が最初に会ったときのように、唇を重ねて悠を送り出した。

 その翌日――。
 悠と同じ年代の男が、敷地内で掃除中の美月を見つけると、駆け寄りながら
美月に話しかけた。
「すみません、この神社の方ですか? 良かったら巫女さんの写真、撮らせて
欲しいんですが……」
 それを聞いた美月は、にっこりと微笑みながら応じた。
「あ、写真ですか? いいですよ。結構いるのよね、君みたいな人って」
 その笑顔の裏で、美月は別の性質の色の笑みを心中で浮かべた。
 そう――あの「獲物を狙うメスの獣の顔」である。
 美月は自ら飛び込んできた獲物を観察し、圧倒の予感に身を震わせた。
(ふふ……結構いるのよね、君みたいな人って……)

――THE END――