まだ十五にも満たぬ少年は魔女と戦い、その手に勝利を収めた。
返り血にまみれ、折れた腕も痛々しいその姿。
村人達は名もない勇者を歓喜の声で迎え入れた。

「精霊よ、母なる大地の神よ、我が声に応えこの者に恵みの水を与えたまえ――」
宿屋の一室で、勇者エティスの治療が行われていた。
幼なじみの修道女、アリス。
手を当て、必死になって何度も癒しの呪文を唱えている。
「ありがとう、だいぶよくなったよアリス」
「お礼なんてそんな、エティスは村を救ったんだもの!」
「村を救った……か」
その言葉はどこか胸をえぐる、ある種の後ろめたさを感じさせた。
魔女の家、そこで彼がしたこと――それは単なる殺人に過ぎない。
初めて人を殺した、自分の手で。
断末魔の叫びを上げながら、魔女は呪いの言葉を唱えていた。
首だけになったその顔、裂けた口の笑い声。
「震えてるの?」
「えっ、あ、うん、ちょっと寒かったんだ」
「窓、閉めてくるね」
立ち上がったアリスの髪が風に揺れる。
長い金色の髪は、月の光を浴びてきらきらと輝いた。
上質のシルクの様な髪。

思わず手に取ると、それは砂漠の砂のように音もなく手からこぼれ落ちてゆく。
「きゃっ!」
「あ、ごめん!」
「髪……何か付いてたかな」
「い、いや、綺麗な髪だなぁって」
アリスの髪は甘い匂いがした、幼い頃の母の胸のような。
「もう、エティスったら!」
ほっぺを真っ赤にして、窓の方に走っていく。
鍵を掛けた部屋の中、古ぼけたランプの灯りが、頼りなく部屋の中を照らす。
闇に浮かび上がるアリスは、どこか神秘的に見えた。
「少し疲れちゃった、休憩してもいい?」
椅子に腰を下ろすと、ベッドのエティスに体をもたせかける。
顔と顔がすぐそばにきた。
どきりとして、思わず顔をそむける。
「う、うん」
普段の自分なら彼女を体ごと押しのけていただろう、だが、今は腕が棒のように動かない。
股間が熱くなるのを感じた、一週間も森を彷徨い、自慰行為さえしていなかった。
彼女は気付くだろうか、こんな恥ずかしい自分の姿に。
そう思うと、恥ずかしくて目を合わせる事もできない。
「ふふふっ、どうしたのエティス、顔が赤いよ」
「なんでもない!」
「ねぇ、魔女との戦いってどうだった? 怖かった?」
「ああ、すごく怖かった」
「怖かったんだ、あんなに勢いよく首を切り落としたのに」

「……え?」
音もなく、手がズボンの隙間から股間へと伸びていく。
温かなぬくもりに勃起したペニスが包まれる。
「魔女は可愛い男の子が大好きだけど、ただ食い物にするだけじゃつまらない。
 だからほんの少し余興を入れるの」
「ちょっ、ちょっとまって、うっ」
「いいわよエティス、熱くて固くて、私を感じてくれてるのね」
「はっ、うああっ!?」
耳たぶを口に含まれ、思わず情けない声を上げた。
その間に、ペニスに添えられた手はゆっくりと上下に動き始める。
「あっ、アリスをどこへやったんだ!」
「強がる男の子って素敵ね」
熱い舌が唇を割って入ってくる、甘い痺れに、意識が飛びそうになった。
ねっとりと絡む舌から、彼女の唾が垂れ落ちてくる。
「いい子ね、ひくひくって震えてるわよ」
「ぼ、僕はお前なんかに、はあっ」
はだけた胸の、乳首を軽く口に含み、吸い上げられる。
恥ずかしさと背筋を走る快感に、思わずえびぞりになってベッドの上でのた打つ。
「おいしいわ、すごく美味しい、あなたの全ては今私のもの。
 感じなさい、私の中で果てなさい、何度でも」
「お前……サキュバスか!」
「気付くのが遅いわ、楽しみましょう勇者君」
上下に動く手を止め、指先で亀頭の周りを軽く撫でる。
「あっ、はあっ、ああっ」
「いい声ね、可愛い、んっ……」
再び唇を重ね、生き物のような長い舌で舌を絡め取る。

ぴちゃぴちゃと淫靡な水音に混じって、声にならない嗚咽が暗闇に響く。
とろんとした瞳で見上げる、もう何もかもがどうでもよかった。
「ぴくぴく震えてる、我慢できないみたいね」
「はあっ、はぁっ」
「悔しいでしょう、あなたの殺すべきだった魔女の、手の中で射精するなんて」
「アリスは……アリスはどこだ……」
「アリス? まだ言ってるの? アリスなんて娘、最初からいなかったのよ」
「え……?」
「村人達に魔法をかけたの、あなたを私のものにするためにね。
あなたが殺した魔女はただの泥人形、本体はこの私」
「そ、そんな」
「何もかも忘れなさい、楽しみましょう、それとも……」
ぴたりと手の動きが止まる。
「このままやめて、あなたのそばから消えてしまいましょうか?」
「ああっ、そ、それだけは」
「それでは言いなさい、どうして欲しい?」
「つ、続けてください」
「何を続けるのかしら」
「僕を……イカせてください……」
「聞こえないわエティス」
ついと裏筋をなぞり上げる。
思わず小さくうめき声を上げた。
「あなたの手の中に出させてください……お願いします!」
情けなさと射精できないもどかしさに涙がこぼれていた。
魔女は軽く笑みを浮かべ、頬の涙をぺろりと舐めた。
「では出しなさい、あなたの嫌いな魔女の手の中へ……」
止まっていた手が、再びゆっくりと動き始める。
「あっ、あっ、で、出る!」
「名前を呼びなさい、アリスと」
「アリス、アリス、アリスっ……!!」
腰が勢いよく上下に揺れ、鈴口から今までにない量の精液が迸る。

下着に付着したそれを指で取ると、淫靡な笑みを浮かべる。
「あなたの子供の素よ、ほら、こんなに」
「ううっ」
「恥ずかしがらないで、ほら、濃くて美味しいわ……」
ランプの傍で、見せつけるように手のひらを舐める。
ゆっくりと、慈しむように。
こくりと喉が鳴ると、恍惚とした表情でエティスを見つめる。
お前を食べている、そう言っていた。
恐ろしさに逃げ出したい気持ちになっていたが、足は動かない。
むしろ、股間はますますいきり立ち、彼女を求めている。
「まだシて欲しいみたいね勇者様」
「…………」
「黙ってたらわからない、私は何もしてあげないわよ」
「今度は口で……していただけますか……」
「素直な坊やね、いいわよ」
視界から魔女の顔が消え、腰に当てられた手がズボンを下ろされていくのが感じられる。
何もかもが、全てがどうでもよくなっていた。
アリスの姿をした魔女の、その手の温かさが、淫靡な笑みが、瞼に焼き付いて離れない。
「うっ」
不意に股間にねっとりとした熱いものを感じる。
その長い舌が、ヘビのように竿に絡みついていく。
このまま忘れてしまおう、全てを。
何もかも夢だったんだ。
少年の中で何かが弾け飛んだとき、部屋のランプが消えた。
辺りにはうめき声と、微かな水音だけが響きわたっていた……