満月の光がカーテンの隙間から部屋を照らす。その部屋には小さな寝息しか聞こえない。
そしてその寝息の持ち主は、ベットに体を横たわらせ、可愛げな寝顔を誰に見せるでもなく、
ぐっすりと眠っている。
 と、カーテンが揺れた。ちらちらと月光が部屋の中を照らす。風もないのに揺れたカーテンの側、
そこにゆらりと影がたち、そして、次第に輪郭をつくりだし、色が映え、音もなく女性の体が作りだされた。
「誘われてきてみれば……ふふ、美味しそうな子ですこと」
 長身の体に、それに似合うかのように長く伸びた黒髪。赤く照らされる唇に、母性を謡うには
妖しすぎる大きな膨らみ。それを黒のビキニブラが包み、肌の白さを混じり合い、コントラストを描く。
腰から下も微かに、ビキニパンツを履いているだけの半裸の姿。そして全身からにじみ出ていそうな
独特のオーラ。まっすぐ見つめられただけで、何かが壊れてしまいそうなー
 サキュバス。
 夢魔とも、淫魔とも呼ばれる者。それが彼女の正体。小さな獲物を前に、満足げに唇の端をもちあげ、
笑みを浮かべる。
「このまま襲ってもいいのだけれど……。風情がないわね。そう、この子から望んで、
糧になってもらう、なんていいかしら」

 その思いつきは満足いくもので、彼女はさっそく音もなくベットに近寄り、そして少年の寝顔を覗き込むようにし、
膝をついた。寝息は先ほどとかわらず、規則正しくくりかえしている。
 彼女は改めて獲物の顔を見つめる。幼い顔立ちに、華奢といれる体つき。しかし成長の歩みは
確実に進んでいて、彼女の鼻腔を微かに男の、いや糧の香りがくすぐる。精力は物足りなくとも、
この純粋さを汚す喜びーーそれは、サキュバスである彼女にとって、何事にも代え難いものだ。
「さ、て。前菜ね。私からのプレゼント。喜んでくれるかしらね?」
 少年の前髪を優しくかきあげ、額に人差し指を押し当てる。指の先が鈍く光り、それが染みこむように
額に吸い込まれていく。二呼吸ほどの間が空いて、少年の寝顔が赤く染まりだし、
そして今まで規則正しかった寝息が乱れ始めた。サキュバスはくすくすと声を漏らし、
笑うと、そのまま指をすべらせ、柔らかな頬に手をあてた。
「さあ、素敵な夢をみて、頑張ってあそこをおっきくしてね……」
 少年は息を漏らし、口を大きく開けて、助けを求めるように、そして目に見えないなにかに
縛られてるかのように、身を揺らす。顔はもう真っ赤になっていて、息は荒く、部屋のなかに微かに響く。
 蜘蛛の巣にかかった蝶が、藻掻いて逃げ出そうとしているのを眺めるように、
サキュバスはうっとりと少年を見続ける。少年の体にかかってる毛布の間に手を差し込み、
パジャマの上から体をなぞっていく。膨らみがあたった。

 少年の体はぴくりと震えた。サキュバスの指がくすぐるように膨らみを擦るそのたびに、
熱い息をもらし、ベットの中で悶えていく。その刺激の強さで目を覚ましていいはずなのに、
魔力は少年を淫靡な夢のなかに捕らえつづけている。ふたつの刺激に少年の理性は、
自覚なしに崩れていく。
「さぁ、これくらいでよいかしらね。坊やにはすこし刺激が強すぎたでしょうけど……」
 うすく笑い、毛布から手を引き抜く。いまだに体をゆっくりよじる少年の額に再び指を押し当てると、
今度は青い光が吸い込まれ消えていく。サキュバスは優しく少年の髪を撫で顔をのぞきこむ。
「さ、起きて……大丈夫、君?」
 少年の目がひらいた。何回かぱちぱちと瞬きをし、目の前のサキュバスの顔を見続ける。
視線が交わると、サキュバスは優しく笑みを浮かべた。
成熟した男ですらその奥にある魔性に気づく事は困難で、少年にそれを見抜くのは不可能だった。
「お、お姉さん……だれ?」
 声は震えていた。しかしそれは緊張であって、警戒ではない。火照る体と、さきまで見続けていた
淫夢のおかげで、そこまで思考が至らない。そのうえ最初から拒絶するには、目の前の女性は魅力的過ぎた。
「ふふっ、ごめんなさいね。驚かせちゃって。私はね、天使なの。君が夢に苦しめられていたのを
みて、助けにきたのよ」
 そういうと彼女は背中から羽をのばした。羽は暗い部屋の中、まっ白に浮かび、それ自体が光を
発し、薄く周りを照らしていく。----だれが天使の羽は白く、悪魔の羽は黒いと決めたのだろうか。
少年の表情は緊張から感嘆へ、みるみるうちに変わっていく。
「天使、の……お姉さん。ホントに。すごいや…」
 羽を再び背中へしまい終えると、また少年の髪を撫で始める。その行為が愛撫であることに、
少年は気づかない。
「私の役目はね、苦しんでる男の子を助けることなの。エッチな夢を見て、苦しんでる子をね」
 サキュバスは、優しい目をし続けていた。

「あ、あ……」
 みるみるうちに少年の顔は真っ赤に染まっていく。必死に否定しようと首を横にふるが、
唇に指を押し当てられると、おとなしく目を見つめることしかできない。
「心配しなくていいの。君くらいの子はそういう夢を見ちゃうんだから。だから、
私たちみたいな天使が、助けにくるの。わかる?」
 少年の視線が外れた。きゅっと毛布を握り、しばらくその言葉の意味を考えているのように見える。
呼吸の音だけが10回ほど聞こえた後、少年の視線が何度か上下した。目に近い、
サキュバスの胸にその視線がとどまり、またふいと戻す。きっと怒られるかどうかためしたのだろう。
怒られるかもしれないと思うおそれの色と、もっとじぃっとみたいというお願いの色が、こちらを見つめる瞳に混じっていた。
「え、えっと……じゃあ、あの、見てても……いい、の?」
 唇の指が外れると、きっと勇気をこめたのだろう、微かに声をふるわせながらきいてくる。
サキュバスは返事のかわりにちいさな手をとり、そっと自分の胸へとそれを押しあてた。
「わ、あっ……!」
 少年は声をあげたが、手をはなそうとはしない。息を荒くしつつ、視線は手の重なっている部分へ注がれる。
股間の膨らみは毛布すら押しあげている。
「夢じゃ、見てるだけじゃなかったでしょ? こういうふうにしてたんじゃなかったっけ?」
 サキュバスの口からはくすくすと笑い声がもれている。
「う、んっ……! 夢みたいに、しても、いいっ……?」
 いうかいわないかのうちに、サキュバスの胸には両手が添えられていた。ブラの上から触っていき、
形がふにふにと変わっていく。それをサキュバスは微かに目を細め、まるで見守るような視線で見つめていく。
誘惑するために作られた体は痛みも快感も感じない。ただ、少年の心が熱に染まっていくのが、たまらなく嬉しい。
少年の顔ははじめての性の喜びにふれているせいか、だらしなく口を開け、はぁはぁと息を漏らしている。
胸をまさぐる手は止まらないけれど、そこから先をどうすればいいのかわからないのか、ずっと同じリズムで触りつづけている。

「んっ……それだけで、いいの?」
 サキュバスの手が伸びた。毛布の中にすべりこんでいって、股間の、パジャマの上にそっとあたる
。膨らみを手が包んでいって、少年はおもわず腰をはねさせて、逃げようとした。けれど胸から手をはなすと、
もう二度と触らせてくれないような、そんな気がして、手は胸に吸い付いたままで手を払うことができない。
腰をひいたくらいでは、股間のふくらみを撫でる手は離れてくれず、次第に胸にあててる手と同じように、
ふにふにと揉み出してくる。
「あ、あっ。お姉さんっ……どうして……?」
 指の動きと一緒に腰をひく、ひくとふるわせて、初めての刺激に少年は息をつまらせ、反応する。
毛布のなかの手と、サキュバスの顔を交互に見やりながら、どうしていいのかわからず胸を触ることすら忘れて、
体をよじっていく。その様子をサキュバスは満足そうに見つめ、指を次第に激しくうごかしていった。
「ひんっ! だ、だめぇぇ…! そこ、そんなにしたら…あっ!?」
 少年は自分も気づかないうちに、動きを逃げるためのものではなく、刺激をもっと得るものへと変えていた。
腰をくっと突き出して、サキュバスの手へとこすりつける。指は優しく受け止めて、
じんわりと甘美な感覚を少年にくれる。それは先の胸と、比べものにならないほど気持ちよくて、
そしてたまらなく背徳感にあふれる行為だった。

「どう? ここ、触ったことない? すごく気持ちいいでしょ……?」
 ふくらみに指がからみついて、ゆっくりパジャマの上からしごきだしてきた。
きゅっ、と胸の手に力をいれてしまって、形を変えるくらいにしてしまった。しかしサキュバスは優しい目をしたまま、
堅く膨らんでしまったあそこを擦っている。息と声を少しづつ漏らしていくあいだにも、
次第に快感に頭がなれてきて、再び手を動かしだした。
「うんっ……すごく、気持ちいいよ……もっと、して……?」
「よかった。じゃあ……もっと気持ちよくしてあげる」
 あっ、と声を漏らす暇もなく、パジャマと下着を一緒に下ろされた。いままでみたこともないくらい、
自分のおちんちんがぴん、と張り立っている。それにサキュバスの手が絡みついて、小さく激しく、しごきだしてきた。
「ひゃっ!? す、すご、いっ……お姉さん、だめぇっ! なにか、でちゃうっ!」
 なにかが体の奥からこみ上げてくる。さっきまで夢中になってた胸のことも忘れちゃうくらい、頭が真っ白になっていく。
「いいの……さぁ、出してごらんなさい……っ?」
 そしてそれが弾けた瞬間、おちんちんになにか熱い、おしっことは別のものが流れていく感触がして、
勢いよくなにかを噴射してしまう。お腹やサキュバスの手、おろされたパジャマにくっついたそれは、
べたっ、べた、と白くどろどろしていて、ほんのりと熱かった。体中に詰まってた熱が一気に吹き出たような気がして、
かわりに疲れがどっと押し寄せた。胸から手がようやく離れて、ベッドに大の字になって、はぁはぁと荒く息をついてしまう。
けれどまだ、股間だけは熱く、刺激を欲しがってた。