あれにはびっくりしたね。
 ああいう体験ってのはさ、一生に一度あるかないか、あった場合は完全に運の問題、そういうもんなんだろうな。
「・・うあ、きっつい」
 隣を歩くお前は、太陽から注がれる熱に頬を赤くして、すげー面倒そうな顔をしてたよな。
 俺は普通の顔で、まあ別に暑いのが嫌いってわけじゃなし、平気な顔して歩いてたよ。取り留めて記憶する必要のない日常の場面だったね。
「・・あんた、暑くないの?」
「あん? いや、暑いぞ。普通に暑い」
「はっ? 普通? 普通? ちょっと待ってよ、最高気温三十八度よ? 何で平気な面して歩いてんのよ。普通じゃないでしょ」
「・・・・・・そうか?」
 別に俺がおかしいわけじゃない、お前が気にしすぎだったんだよ。
 でもお前は俺を責めるように溜息を吐いて、「だあっ」とか訳の分からない声を発して、背中を曲げて歩いてたね。ひねくれて目を細めたりしてさ。
「・・・・あー、もういっそ大地が割れればいいのに・・・・」
「いや、それは駄目だろ」
 そんな下らない会話をしてる時だった。その時だったよ。
 十字路のさ、滅多に車が通らないとこだったんだ、その右手の道からさ、いきなり車が飛び出してきたんだよな。
「うへぁっ!」
 うん、まあ、お前の叫び声も分かるよ。人間、いきなり車が突っ込んできたら、そんな声を上げるものなのかもしれない。
 でもさ、その後がさ、問題だったよな。
「ぅえっ!?」
 お前さ、よりにもよって俺を、幼い頃から付き合いのある俺をさ、思いっきり突き飛ばして、その反動を使って車から逃げようとしたんだよな。いや、覚えてないかもしれないけどさ、咄嗟の行動だったのかもしれないけど、そうしたんだよ。
 結果、どうなったか? 呆気なかったね。
「げっ!」

 俺は足を踏み外してよろめいて、そこに車が突っ込んできたよ。
 うん、あの時は、何だろうな。色んなことを考えたよ。ああ、取り敢えずお前の口の中に、お前の大嫌いな納豆を詰め込んで、そこに牛乳でも注いでやろう、とかさ。うわ、まだ宿題もやってないのに、とか馬鹿なことも考えたよ。
 ああ、こんなことも考えたな。
 まだ高校生だってのに、いっつもお前と一緒にいるのが普通になってるせいで、他の子と親しくなる気になれなくて彼女も作ってないのに、ああ、俺ってこんな状態で死ぬのかよ、みたいな。
 実際のところさ、交通事故で死ぬ確率ってのは高いんだよ。ああ、まあ、俺は死ななかったから笑い話になるけどさ、本当は大変なことなんだよ。事実、俺だってさ、片腕と両脚を折っただけで済んだけど、いや跳ね飛ばされた際に背中から道路に落ちて背中を擦り剥いたけど、それでも軽い傷だったんだよな。
 頭を打たなかったのは幸いだったよ、ほんと。
 いや、まあ、それはともかくとして、大変だったんだよ。突っ込んできた車の運転手、そいつ男で会社に遅刻しそうだったらしいけど、慰謝料とか医療費とか、こっちも手加減できるほど潤ってないから、でも向こうも潤ってるわけじゃなくて、かなり嫌な空気になったらしいよ。
 その辺は親がやったんだけどさ。
 金、かなり渋々な感じで、向こうはどうにか適当にはぐらかそうとしたらしくて、親も金に関しては困るもんがあるから、このままじゃ裁判だよ、みたいな脅しかけたりしてさ。
 双方、嫌な思いをしたみたいだよ。うん? いや、別にお前のせいとは言わないんだけどさ。事後報告? みたいなもんだよ。
 あー、それで入院することになったんだよ、俺はさ。
 この辺じゃ一番でかい病院で、入院なんて初めてだからさ、救急車で運び込まれてベッドに寝かされて、レントゲンやら問診やら、もう面倒な作業をいくつもこなして、はい入院ね、みたいな感じで強制的に入院だよ。
 俺はまず学校の心配をしたね。普段はさぼりたくて仕方ないくせに、不思議だよな。
「え、俺、学校ってどうなんの?」
「どうって・・・・休学でしょ?」

 母親は事も無げだったよ。
 あ、そうなんだ、みたいに納得したね。なるほど、さすがに片腕と両脚が折れれば学校は休学なんだ、そりゃそうだよな、とか思ったよ。
 さて、と。
 そろそろ本題に入るか?
 いや、実は入院に至る経緯は些細なことっていうか、はは、実はここ数日、誰とも喋ってなくてな、しかも一日中、ベッドの上。もう暇ったらないよ。死ぬかと思ったよ。
 はは、だからお前が来てくれてよかった、本当に感謝してるよ、喋れて超気持ちいいもん。あ、ちょっと、待て待て、まだ話は終わってないって、こっからが問題なんだよ。というか相談なんだよ。
 え? あー、まあ、面白いかどうかは人それぞれ、でも凄いぞ、かなりえろいぞ。おお、聞く気になったか、いや、お前のそういうところは大好きだよ、とか普通に言えるから問題なんだよなー。知ってる? 俺とお前は彼氏と彼女って、もう公認の事実として認められてるぞ? え、あ、知ってたの? めんどいって・・・・いや、お前らしいけどさ、まあ、いいや、お前が気にしてないならいいんだ、そろそろ
本題に移ろう。
 そうだな、まずは簡単に、ほら、ここって病院だろ? ということはさ、看護婦、あ、今は看護士か、がいるんだよな。うーん、まあ俺としては看護婦の方がえろさを感じるから、ここは看護婦で説明することにするよ。
 ああ、そう、看護婦さんってさ、どうにも美人に見えるんだよな。ナース服ってのは凄いよな、えろいよな、俺はもうびっくりしたよ。何しろ入院なんて初めてだからさ、間近でナース服なんて見たことなかったんだよ。凄いぞ、感動するぞ。
 まあ、それはいいとして、ある日な、寝転がったまま身動きできない、することもない俺の前にさ、看護婦さんが現れたんだよ。いや瞬間移動じゃなくて。歩いて来たよ。悪かったよ、言葉が悪かったよ。
 そんでな、その看護婦さんはさ、とびきりの笑顔ってんじゃなくて、微笑、優しい笑み、そんな表情をしててさ、俺に穏やかな声をかけたんだ。
「今日は、体を拭きますね」
 は? と思ったよ。そりゃ思ったさ。

 でもな、当然なんだよな。俺、入院してから身動きできないわけだからさ、風呂なんて入れないんだよな。骨折したまま湯に入るわけにもいかんしな。それで、ああ、とか数秒後に納得してな、はい、とか頷いて、そんで俺はどうすればいいのやら、と呆然としてたわけだよ。
 そしたら看護婦さん、おもむろにカーテン、そう、それ、それ閉めてな、六人部屋だろ? その時は他に四人がベッドに寝てて、もう一人の看護婦さんが動き回ってたんだけど、カーテンを閉めたら当然、そういうのは見えなくなってさ、なるほど男っていっても裸を晒すのは嫌だからな、とまたまた納得したんだよ。
「上着、脱いでください」
 看護婦さんは、さすがプロ、事務的な言葉なんだけど、そこに優しさが滲むっていうかさ、そういう言い方で俺に言ったわけよ。
「あ、はい」
 俺は照れるとかそういうのはなくて、まあ、裸なんて何度もお前に晒してるし、とか思いながらパジャマ、そう、これこれ、今着てるやつ、それを脱いだんだよ。
 ボタンを開けてさ、そう、脱ぐのに十秒ぐらいかかったかな。
 その十秒の間に、だよ。
 看護婦さんがさ、俺のズボンを下ろしてんだよ。え? あの? そうは思ったけど、なんていうんだろ、事務的な仕草でさ、ああ、こういうものなのか、とか思っちまってさ、膝まで下げられたズボンを見てたわけよ。
 そしたら看護婦さん、何の躊躇もなくトランクスの脇から手を入れてさ、俺のものを掴んで引っ張り出したんだよ。
 ただな、凄いのは、ここでもまだ、俺は傍観してたんだな。あ? 馬鹿じゃないよ、むしろ偉いよ、え、いやえろくはないよ、まだ違うよ、ともあれ聞けって。
 あのな、俺は思ったわけだよ。体を拭くってことは、そういうとこも拭くんだろうなって。看護婦さんはそこから拭くのが仕事で、だから淡々とこなしてるんじゃないかって。
 それでな、俺はぼんやりと見守ってたんだよ。いや、ほんと今になって考えると変だが、その時はそれが普通だったんだって。
「ちょっと背中を曲げてもらえますか?」
 んでな、看護婦さんがそう言って、そりゃ俺は曲げようと思ったよ、でもさ、看護婦さんは俺のものを掴んでさ、もう片方の手で袋を揉んでんだよ。凄い普通の顔で。
「・・・・えっと・・・・・・」
「あ、熱かったですか? 痛かったりしたら、言ってくださいね」

 そう言いながらさ、看護婦さんは先端を指の腹で撫でて、袋を揉んでんだよな。なんかカーテンの向こうの奴ら誤魔化してる感じなんだよな。
 そこで立たなかったら男じゃないって。いや、俺も意味分かんなかったけど、目の前に看護婦さんの顔があってさ、大人っぽい、輪郭の細い顔と、黒髪と、髪の匂いを嗅いでたらさ、自然とな、いや、えろくはないよ、えろくないって、そこは譲れないよ、いや、ともかくさ、立ったんだよ。それはもう立派に。立派だって。まじで。
 んで、硬くなったそれをさ、看護婦さんは平気な顔で握ったんだよ。指の腹で棒状の皮のとこ押さえてさ、人差し指の腹で先っちょの割れ目の辺りを撫でてさ。いや、びびったよ、ほんと。
 ここで漸く、俺は気付いたね。何かおかしいぞってさ。いや遅くないよ。頑張ったし。ああ、まあ、それで俺はどうしたもんかと思ったわけよ。さすがにやばいだろ、カーテンの向こうから普通にテレビの音とか話し声とか、見舞いに来たらしい子供の声とか聞こえてんのに、看護婦さんが握ってるんだぞ?
 だから俺は小さな声で言ったんだよ。
「・・・・あの、これは・・・・」
 え、続き? いや、続きはないよ。これはって言った瞬間、何て言えばいいか分かんなくて止まっちゃったんだよ。
 馬鹿じゃないよ、誰だってそうなるって。そんでな、看護婦さん、俺の目を見てさ、何か言うのかと思ったら、いつもの笑みを見せてさ、手を上下に動かしだしたんだよ。
 いや、まじだって、ほんとの話、看護婦さんは片方の手で袋を揉みながら、もうやばいくらい硬くなってるものをさ、俺を見つめたまま扱きだしたんだって。
「はい、腕上げてくださいね」
「あ、はい」
 従ったよ、俺は両腕を上げたね。
 でもさ、看護婦さんは万歳してる俺を見てるだけで、両手はしっかり俺のものを刺激してんだよな。何か俺はすげー恥ずかしくなってさ、うわ、とか思って顔を赤くしたんだが、そうしたら看護婦さん、おかしそうに唇だけで笑ってさ、いや、間近で見る口紅も塗ってない唇には興奮したよ、ほんと。
 そんで、まあ恥ずかしい話、俺は人にしてもらうのなんて初めてだったからさ、あっさり先っちょを濡らして、やばいやばいって感じになったんだよ。
「・・・・・・あの・・」
 あー、もう今でも赤面するよ、ほんと情けない声だったよ、そん時の声はさ。

「痛かったですか?」
 看護婦さんはにやっと笑って、俺のものを扱く速度を上げてさ、袋を揉んでた手を先端にかぶすようにしたんだよ。
 そこで俺は果てたね、もう出しちゃったよ。
 看護婦さんの手の平にさ、もう思いっきり出して、はぁっ、と溜息を吐いてさ、やばいぐらいの快楽で、もう腰が抜ける思いだったよ。
 あ? そんで? そんで看護婦さんは、ポケットからティッシュ出してさ、それで手を拭いて、精液まみれのティッシュをティッシュで包んで、それをポケットに入れて、何事もなかったように体を拭き始めて、うん、カーテンを開けたら見慣れたっていうか、さっきまでの光景があって、現実だったのか夢だったのかって感じだったよ。
 あん? 相談? ああ、そうだ、そうだ。
 実はさ、俺、もうほんとすげー暇でさ、んで、こんな凄い体験をしたんだから、ちょっと小説にでもしてみようと思ってさ、片手でノートパソコンのキーボード叩いて、一ヶ月ぐらいかな、かけて仕上げたんだよ。いや、ほんとのところ、その書いてる一ヶ月の間も何度か看護婦さんの手でしてもらったんだが、まあ、それはいいとして、仕上げたんだよ。
 それで? それでさ、何か誰かに見せたいっていうか、小説なんて書いたの初めてだからさ、そう思って、そこで閃いたんだよ、有名な匿名掲示板をさ。
 俺はそこに行って、何かねーかなーと思いながら見てたら、あった、あったんだよ、エロパロ板、何か俺の求めるものがありそうなとこ、そんで見に行ったらさ、あった、あったよ。
 あん? 『【ドクター】病院でエロストーリー【ナース】』と『女性上位で優しく愛撫される小説ver.3.5』ってとこだよ。ああ、そう、二つあったんだよ。

 んで、まあ前者はちょっと、うん、何ていうか、盛り上がっててさ、はは、さすがにそういうとこに投稿するのは恐いなー、とか思ってさ、いや根性なしじゃないよ、違うって、いや違うよ、まあ、そんでさ、うん、後者の、すんごい過疎化してるとこにさ、投稿したんだよ、馬鹿な話なんだけど、まあ事実だからパロではないんだけど、うん。
 え? いや、だから、うん、勢いで投稿したはいいんだけど、ははは、看護婦さんに無許可で、うん、たぶん問題はないと思うんだけど、それと、うん、まあ、これが重要なんだけど、うん、ははは、いや、お前のことも書いててさ、ははは。
 っで! な、何すんだよ、病人だぞ、いや嘘じゃないって見れば分かるだろ、というか分かれよ、うわ、うあ、おい、おい、おい! ぎゃー!

 まあ、そんな話があってさ、はは、片脚の骨がまた折れたよ。はは。