「啓太さん、真理奈よ」
後藤真理奈は、トントンと二度アパートのドアを叩いた。表札には須崎啓太とあるが、
中からは誰も出てくる様子が無い。すると真理奈は、電気メーターをちらりと見て、
「居留守使っても駄目よ。メーターが動いてます」
と、呟いた。今年小学五年生になったばかりの真理奈だが、IQが実に二百近くあって、
非常に頭が切れる。そのため、ついたあだ名がコンピューター。その存在は級友はおろ
か、先生にだって一目置かれる天才少女なのである。そんな真理奈が居留守ごときを
見破る事は容易く、また、その対処法だってお手の物だった。

「開けてくれないんだったら、ここで服を脱いで啓太さんにいたずらされたって叫ぶわ」
そこまで言うと、ドアが音を立てて開いた。ついで、部屋の中からはくたびれた感じの
青年がひょっこりと顔を出す。これが、須崎啓太である。現在二十五歳。地元の町役場
に勤めている。

「真理奈ちゃんにはかなわないなあ」
「ひどい。せっかく彼女が遊びに来たのに、居留守を使うなんて」
「しーッ!声が大きいよ。ま、とりあえず入って」
啓太は負けを認め、真理奈を部屋に招き入れた。今の時代、大人は子供に対してあま
り強くは出られない。まして若い男と小学生女児では、世間様の風当たりが強くなるの
は、間違い無く前者の方である。もちろん、何か事があれば──の話だが。

「あの・・・何か用だった?」
啓太がそう言うと、真理奈はキッと眉を吊り上げ、
「昨日、メール打っといたでしょ?遊びに行くって。あら、やだ!啓太さんの携帯、電源が
切れてるじゃないの・・・これじゃ、メールも見てない訳よね」
と、バッテリーの切れた携帯電話と啓太の顔を交互に見て、呆れたように呟いた。

「そう言えば、二、三日前から携帯持って出かけた覚えが無いな」
「・・・まったく、それでよく社会人が務まるね」
「面目ない」
真理奈は元々、はっきりと物を言うタイプである。それに対し、二人の姉がいる家庭で育
った啓太は、女性にとても弱い。だから、一回りも年が違う少女にだって腰が低く、普通
の大人であれば頭に来る場面でも、つい謝ってしまうのだ。しかし、真理奈にしてみれば
これは良い事である。優しいだけの男で十分。少なくとも、彼女はそう思っているからだ。

「啓太さん、お食事は?」
「朝から何も・・・おっと、もうお昼か」
時計を見ると、十一時五十分。お昼時である。
「どこかに食べに行こうか?真理奈ちゃん、何が食べたい?」
「あたし、啓太さんと少しでも長く一緒に居たいから、部屋から出たくない。ピザでも取り
たい気分よ」
可愛げがあるようなないような、微妙な返事をする真理奈。結局、啓太は出前を取る事に
した。居留守を使った後ろめたさがあるので、逆らうつもりは毛頭ない。

「美味しいかい?真理奈ちゃん」
「うん。啓太さんと一緒だったら、何でも美味しいの。うふふ」
届けられたピザを食べながら、真理奈は笑った。子供らしい可愛い笑顔である。しかし、
言われた啓太は照れくさくてかなわない。なにせ、相手は年端もゆかぬ子供だ。その言
葉を真に受けていいものかどうか。

「ねえ、啓太さん。今日のあたし・・・ちょっといつもと違わないかしら?」
指先についたトマトソースを舐め取りながら、真理奈は言った。はて、と首を傾げる啓太。
いつもと違わないかと聞かれても、別段変わらないような気がするのだが・・・
「髪型を変えた・・・のかな?」
「違うわ。もっとよく見て」
真理奈がぐっと身を乗り出し、啓太に迫る。もう、顔と顔がくっつきそうなくらいに近づき、
互いの息遣いまではっきりと感じる。

「ヒントは・・・唇」
真理奈は顔を傾け、唇を啓太に預けた。この時、ようやく啓太は真理奈が口紅をつけて
いる事に気がついた。いや、口紅だけではない。顔全体に漂う香気で、彼女が化粧をし
ている事に気づいたのである。

「お化粧してるんだね」
「そうよ。ママのを勝手に拝借しちゃった」
真理奈は啓太をゆっくりと押し倒し、さらに唇を求めた。どちらも自然に舌を絡め合い、
手を取り合って夢とうつつの間にある世界へと身を沈めていく。

「啓・・太・・・さん、胸・・・触って」
「うん」
美しい黒髪を垂らしながら、真理奈が愛撫を乞うと、その口づけの合間に出た途切れ途
切れの言葉が、啓太の手を誘う。
「まだブラジャーしてないんだね。男の子の視線、気にならない?」
「別に・・・それほど大きくないし。クラスにはもっと大きな女子もいるしね」
ワンピースの上から触れる少女の乳房は、小さいなりにもそれなりに質感はある。だが、
啓太は壊れ物うを扱うように、恐々と手を這わせた。抱いた少女の体が、あまりにも華奢
だからだ。

「・・・すごく気持ちいい。啓太さん、もっと触って」
「うん」
絡み合ううちにワンピースはたくし上げられ、床へ落ちていた。もう、真理奈の体には真
っ白なショーツが一枚あるだけ。それすらも真理奈は惜しげもなく脱いでいく。いや、む
しろ脱ぐのが楽しいとでも言わんばかりに、尻を振って扇情的に見せつけるのだった。

「真理奈ちゃん、アソコ舐めてあげるから、お尻をこっちにむけてごらん」
「ううん、今日はあたしが先にやってあげるから、啓太さんはじっとしてて」
真理奈はそう言うと、啓太のズボンのジッパーを下ろし、男根を取り出した。すでに勃起
中のそれは、先端から恥ずかしい涙を垂らしている。

「あーん」
と、真理奈は男根にかぶりついた。そして、上目遣いに啓太の方を見詰める。ご気分は
いかがなものかしら──そんな眼差しだ。
「見られてると落ち着かないな」
啓太は恥ずかしそうに頭を掻いた。実際、男根を口で愛撫してくれている相手と視線を合
わせるのは、何となく照れくさい。真理奈はそれを察しているのか、面白おかしそうに目を
細めている。

「あたし、おチンチンの匂いって好きだな。なんとなく」
真理奈は鼻の頭で、男根の尿道口あたりをつん、と突いた。その後、一呼吸置いてカリ首
部分を丁寧に唇で甘噛みする。少女は、男が喜ぶツボを良く心得ていた。
「ああ・・・真理奈ちゃん」
ちゅっちゅっと男根を吸われる音が、啓太には悩ましくてたまらない。年が一回りも違う少
女が、自分の男を慰めてくれている。その背徳感が後押ししてくれる快楽は、尋常な物で
はなかった。

(しかし、まずいよなあ・・・こんな関係)
啓太はふと、そんな事を考える。まあ普通であれば、二十五歳の青年と、小学五年生
の女児とのお付き合いなど、許されないに決まっている。しかしこの関係を望んだのは、
意外にも真理奈の方であった。

出会いは今から半年ほど前に遡る。仕事を終えた啓太が、たまたま通りがかった公園
に真理奈がいた。時はすでに夜更け。子供は家にいなければならない時間であった。
「どうしたの、お嬢ちゃん」
一応、公僕である啓太はひとり佇む真理奈に声をかけた。最近は物騒な世の中である。
子供がおかしな事件に巻き込まれることも考えられる。そう、啓太は親切心から、声を
かけたにすぎなかった。しかし、真理奈は、
「あら、ナンパ?いいよ、お兄さん。付き合ってあげる」
と、言って微笑んだ。啓太が自分を誘ったと思ったのである。

「違うよ。僕は町役場の・・・あ、ちょっと!」
「お兄さんのおうちって近いの?だったら、遊びに行ってあげてもいいよ」
「そう言うことを言ってるんじゃなくて・・・あの・・・」
「ぐずぐずしない!おうち、どこ?」
「あ、二丁目です・・・って、本当に遊びに来る気?」
「当たり前でしょ。人をナンパしておいて。さ、行くよ」
真理奈は押しの強さで、二十五歳の青年を嵌める事に成功した。もっとも啓太の方も生
来の弱腰ぶりをここで発揮する。嫌と言えなかったのである。

結局、その日のうちに啓太は真理奈と体を合わせる事となったのだが、驚く事に彼女
は無垢ではなかった。純潔は一年程前に、ゆきずりの男にくれてやった。体を重ねた
後、真理奈は事も無げにそう言ったのである。これには、啓太も驚いた。
(ずいぶん、進んでるんだなあ、今の子供は)
女性に弱腰である啓太は、ろくに経験もなく二十五歳を迎えている。初体験は二十歳
の時だったし、回数だって数えるほどしかしていなかった。はっきり言うと、真理奈との
関係が今までの人生の中で、もっとも濃密な物なのである。いささか情けないが。

「啓太さん、何か考え事してるね」
「ご、ごめん」
男根を舐めていた真理奈が、記憶を辿っていた啓太の様子に気がついた。やはり、頭
が良いだけあって、気持ちの変化にも鋭い。
「あたしとエッチしてる時に考え事するなんて、良い度胸ね」
真理奈は左手で男根の茎部分を握り、右手の指でその先端をクリクリと弄った。啓太
自身の先走りと、真理奈の唾液が合わさって滑りが良くなったそこは、もともとの敏感
さも手伝って、何とも言いようのない痛痒感に苛まれる。

「うあ!ま、真理奈ちゃん・・・」
「気持ちいいんでしょう、啓太さん。一回、これで出しちゃおうか」
小さな真理奈の手に遊ばれる男根は、情けないほど滾っていた。大量の先走りが滴り、
茎を扱かれるたびに玉袋がひきつる。啓太は、暴発寸前であった。

「う、うう・・・出ちゃうよ」
「あはは。啓太さんの顔、面白い。まるでおしっこを我慢してる子供みたい」
真理奈の表現は的確だった。今まさに啓太の男根は、白濁液を放出する寸前まで来て
いる。ただ、真理奈の手の動きが巧みで、絶頂を寸前のところで止められているだけだ。

「あたしの中にいらっしゃい。中で出させてあげる」
真理奈は微笑を浮かべながら啓太の股間の上に跨った。そして躊躇なく腰を下ろす。
「ああ・・・入ってくる。啓太さんのおつゆのおかげで、すんなり入ったわ」
「真理奈ちゃん・・・」
「情けない声を出さないで。今、最高にいい所なんだから・・・」
目を閉じると、男根が膣内を満たしていく事が分かる。真理奈はこの瞬間が好きだった。
まだ性毛も生えてない恥丘が、ぐっと肉を盛り上げる。中に異性が入っているのだ。そう
考えると、体が震えてくる。

「いいわ・・・奥まで届いちゃった。啓太さん、ここだけは立派なんだから」
「真理奈ちゃん、腰を動かしていいかな」
「駄目。あたしが動くから、啓太さんはじっとしてるのよ」
真理奈はそう言うと同時に、腰を前後させた。啓太の男根はそれに合わせ、少女の肉襞
で淫靡に扱かれ始める。

「真理奈ちゃんの中、すごく熱いよ。それに、きつい」
「啓太さんのおチンチンも熱いわ。それに、太い・・・」
真理奈と啓太は目を合わせると、再び唇を求め合った。そしていよいよ二人は、快楽の
深淵に身を投げ込んでいく。

「あっ!あっ!あっ!」
狭い肉洞の中で蠢く男根。真理奈はその微妙な感覚におののく。いつしか肩で息をして、
腰が円を描いている。喘ぎは断続的に上がり、乳首が痛いくらいに尖っていた。
「真理奈ちゃん、僕もう出そう」
「いいよ、啓太さん。中で出して」
真理奈は床に手をつき、狂ったように腰を振る。彼女自身、絶頂が近くなっていた。繋が
った性器からは男女問わずの蜜が滴り、生々しい肉音を奏でていく──

「いくよ、真理奈ちゃん!」
「あ、あたしもッ!」
啓太が膣内で子種を噴射すると、真理奈も達した。髪を振り乱し身悶える様は、成人女の
それと何ら変わらぬ姿であった。

「また来るね」
「うん」
真理奈は玄関で靴を履いていた。啓太はその後ろで、じっと彼女を見守っている。
「携帯の電源、入れといてね」
「分かった」
「よいしょ」
真理奈が立ち上がる。少し、肩を落としながら。

「ごめんね、啓太さんが困る事は分かってるんだけど、あたしどうしても会いたかった」
不意に真理奈が目の端に涙を光らせた。啓太はそっと、その雫を指で拭う。
「またおいでよ。僕の彼女なんだから、遠慮しないで」
「・・・うん」
真理奈だってこの関係がいけない事は分かっている。二人が男女の間柄だと世間に
知れれば、真理奈自身はともかく啓太の方は取り返しがつかなくなる。大きなリスクを
啓太はあえて背負ってくれているのだ。真理奈にはその優しさが嬉しい。

「じゃ、またね」
真理奈はそれだけ言い残して部屋を出た。啓太は何も言わない。
「バイバイ」
二、三歩進んで真理奈は振り返る。啓太はやはり何も言わない。ただ、優しく彼女を
見送るだけであった。

おしまい