「ねえ、ママ。見てよ、川の水があんなにきれいだよ」
「そうね、フフッ」
ある田舎町を走る路線バスに揺られながら、香椎恭介は景色の美しさを母親に伝えて
いた。見渡せば、山また山。絶景とまではいかないが、いかにも日本の山奥らしいのん
びりとした風景が、どこまでも続いている。その山あいにある川があまりにも清流なので、
恭介は目を丸くしていた。

「おばあちゃん家って、まだ遠いの?」
「もうすぐよ。おじいちゃんもおばあちゃんも、きっと首を長くして待ってるわ」
恭介は今年、十五歳になった少年である。今日は夏休みを利用して、母の奈津美の郷へ
帰省する所であった。ただ、転勤の多い父親の仕事のせいで、十年近くロンドンに住んで
いたため、今回が初めての帰省となる。そのせいか、どこかはしゃぎがちだった。

「あッ、誰か川で泳いでる。汚くないのかな?」
バスが川沿いを上がって行く途中で、地元の子供たちが川遊びをする姿が見えた。都
会育ちの恭介には、川で泳ぐという発想はない。すると、バスの運転手が声を張り上げて
笑った。
「坊主は都会育ちか。この辺の川はきれいで、水を飲む事も出来るんだぞ」
いかにも田舎くさい、野暮ったい中年の運転手は言った。

「ねえ、ママ。本当なの?」
「ええ、本当よ。ママもあの川でよく泳いだし、お水も飲んだわよ」
奈津美はもともと、この土地の人間である。それが当たり前と思って、育ったのだ。し
かし、息子はそんな事さえ珍しがっている。奈津美は母として、ちょっと切なくなった。
子供はもっと自然と接した方がいいと、彼女自身は思っているからだ。

「あの川でスイカを冷やすと、よく冷えてうまいんだ。坊主、おばあちゃん家についたら、
やってみるといい。そこの百姓家で、スイカもらってきてやるよ」
運転手はバスを止め、一軒の家をを指差した。田舎路線なので時間にはルーズなのだ
ろう、バスは道の端に堂々と止められている。これも都会では考えられない事である。都
会の路線バスは、一分の遅れも許されないほど、厳しいダイヤに追われるのが普通だ。

「おじさん、バス止めちゃっていいの?」
「いいさ。どうせ、お客さんは坊主と母ちゃんだけだからな。おっと、あんた、もしや・・・」
運転手が外に出ようとした瞬間、奈津美の顔を見て言葉を詰まらせた。顔を見る、という
よりは、あらためて見た、といった感じだった。
「塩田さんとこの奈津美ちゃんじゃないのか?いやあ、久しいな」
その名は母親の旧姓である。恭介は運転手の存在を訝った。何者だろう。母親の知り
あいだろうか。そう思っていると、
「ああ、山岡のおじさんかあ。お久しぶりです。フフッ、ずいぶん白髪が増えたじゃないの」
と、奈津美が応じたので、恭介は置いてけぼり感を食らわされたのであった。

「いやあ、別嬪さんになったなあ、奈津美ちゃん」
バスは再び動き出していた。今、恭介の手には、運転手が百姓家で貰ってきてくれた
大きなスイカがある。

「おじさんはあんまり変わらないね。ちょっと、皺が深くなったけど」
「俺ももう、六十間近で老いぼれたもんさ。情けねえ」
母、奈津美は運転席の隣に移動し、まるで女子高生のような、話し振りに変わっている。
普段、言葉遣いにはうるさい母が、あのような軽口を叩く姿を、恭介は知らない。
「奈津美ちゃん、いくつになった?」
「三十七。もう、おばさんよ」
「いや、女として一番良い時だ。亭主はさぞや、可愛がってくれるだろう」
「いやね、おじさん。十六年も連れ立ってたら、そっちの方はもうさっぱりよ」
「もったいねえ。俺なら、毎日でも可愛がってやるのに」

山岡という運転手は、奈津美をよく知っている人物らしい。親しげな態度が、それを物語っ
ている。しかし、恭介にしてみれば、その事が腹立たしくて仕方がない。
(なんだ、あのおじさん。僕のママに馴れ馴れしい)
運転手は時折、奈津美の手を握ったりした。無垢な少年から見れば、老醜が娘のような女
にそうする姿は、非常に薄汚く思えるはずだ。恭介の心は、純粋だった。まだ、母親に理性
と慈愛を求めているのだ。

「恭介、ほら、おばあちゃん家が見えたわよ」
奈津美が前方の切り立った場所を指差して叫んだ。段々になった場所に、大きな平屋
がある。その前に、写真と電話でしか接した事がない祖父母が立っていた。きっと、娘
と孫が来るので、待ちきれずに外へ出ているのだろう。それを見た恭介は、思わず席か
ら立ち上がった。

「おばあちゃんとおじいちゃんが、外で僕たちを待ってくれてるよ!ママ、早く降りる用意
をして」
「ええ。おじさん、悪いけど家の前につけてくれる?」
「おう、まかせな」
バスは停留所でもない所に止まった。その瞬間、恭介は弾けるように外へ飛び出した。

「おじいちゃん、おばあちゃん!」
「おお、恭介。大きくなって」
恭介は両手を広げ、祖父と祖母を抱きしめた。手紙や電話でのやりとりは何度もあった
が、物心ついてから会うのは、これが初めてである。嬉しさのあまり、落涙しそうだった。
「じゃあ、おじさん。ありがとう」
奈津美がゆっくりとバスから降りてくる。その瞬間、恭介は信じられない物を見た。
「おう。しっかり親孝行するんだぜ」
そう言いながら、運転手が奈津美のヒップを触ったのである。

「あッ!」
祖父母と抱擁を交わしている最中の事である。恭介は目を丸くした。おじさんが、ママの
お尻を触った。間違いない。恭介ははっきりと、その瞬間を見た。だが、お尻を触られた
奈津美は別段、気にも留めずに、
「ただいま、父さん、母さん。山岡のおじさんにスイカもらったのよ。後で川へ冷やしてくる
わ」
と、父母へ普通に挨拶したのである。実際の話、恭介は運転手が母の尻を触った事より
も、触られても平然としている母の態度の方が、驚きだった。

(見間違いだったのかも)
陽が傾き、車内は多少暗かった。おじさんがママのお尻を触ったように見えただけなのか
もしれない。恭介は母の態度を見て、考えを改めた。
「じゃあ、俺は行くよ」
運転手が片手を上げて、バスを動かし始める。だが、その上げた手に折りたたまれた紙が
握られていたのを、恭介は確認する事が出来なかった。

「これも食え、恭介」
「うん」
祖母が腕によりをかけた料理を出してくれる。そのどれもが美味で、恭介は箸を忙しげに
動かしていた。
「大きゅうなったなあ。可愛い顔をしとるが、男ぶりも良い。恭介は、自慢の孫じゃよ」
祖父はしきりに孫の事を褒め上げた。田舎の風習で、男孫は大事にされやすい。恭介は
照れながら、祖父と話をした。

山に薄闇が迫ってくると、風に乗ってどこからかお囃子が聞こえてきた。今は夏祭りの
時期である。耳を澄ますと、お囃子は案外近くから聞こえる。恭介は箸を止めて、祖父
に問いかけた。

「ねえ、おじいちゃん。お祭りでもあるの?」
「ああ、村の夏祭りじゃ。お盆もかねて、村役場で三日ほどやるんじゃよ。恭介も飯が済
んだら行くといい。少し歩くが、役場までは五分もかからんよ」
「うん」
外国生活が長かったので、日本の祭りには興味がある。恭介はご飯を掻きこんで、早々
に祭りへ行く準備をした。

「ママ、着替え出して。あれ・・・?」
夕食を済ませた恭介は、用意された部屋へ戻った。しかし、母、奈津美の姿がない。恭介
は台所へ行き、祖父母にその事を言うと、
「そういえば、スイカを川へ冷やしに行くと言っていたっけなあ。まあ、すぐに戻るで」
奈津美は夕食の準備を手伝った後、スイカを冷やしに行くと言って、出て行ったという。そ
れには恭介にも心当たりがあるので、特に不思議には思わなかった。
「まあ、いいや。着替えなくても」
ガールフレンドと行くわけじゃない。恭介は着替えず、祖父母に祭りへ行くと言って、家を
出た。この頃にはもう、山はすっかり闇に包まれていた。

「うわあ、夜の山って暗いな」
祖父の家を出て、あぜ道を真っ直ぐに進む。おぼろだが、その先に艶やかな光が見え
る。おそらく、そこが村役場に違いない。恭介は足取り軽く進んだ。

「おや?」
幾らか歩いた時、前方からぼんやりとした光がこちらへ向かってくるのが分かった。懐中
電灯などではない、自然な光である。
「あれ、何て言ったっけ。そうだ、提灯だ」
提灯が照らす光を受けて、白い影が浮かび上がった。目を凝らすと、それが浴衣を着た
女性だという事が分かった。年は三十近くだろうか。長い髪をひとつにまとめた、美しい女
性だった。

「こんばんは・・・あら、あなたどこの子?」
女性は恭介を見るや、にこやかに挨拶をした。笑うと切れ長の目が細まり、妙な色艶が出
る美女だった。
「僕、そこのおじいちゃん家に遊びに来た、香椎恭介といいます。こんばんは」
「ああ、塩田さんの所の・・・そういえば、さっき奈津美さんを見たわね。あッ・・・」
女性はそう言って、あわてて口を押さえた。言ってはならぬ事を口にした。そんな顔をして
いる。

「ママを見たんですか?どこで」
「え・・・それは・・・」
女性は恭介の質問に答えない。いや、答えにくいという態度だった。切れ長の目は伏せ
がちになり、しきりとまばたきをしている。

「川でしょう?さっき、スイカを冷やしに行くと言ってたから」
恭介がそう言うと、女性はひっと言葉を詰まらせ、持っていた提灯を落としてしまった。途
端、二人の周りは闇に包まれる。するとどうだろう、闇の中から小川のせせらぎが聞こえ
てくるではないか。今日、この村へ来る途中に見た、あの川だろう。恭介は音のする方を
じっと見据えた。

「川って、案外近いんだな。あっ、あれは・・・」
辺りが暗くなったせいで、右手の方に煙る明かりのような物が見えた。せせらぎもそちらか
ら聞こえてくるので、明かりはきっとスイカを冷やしに行った母に違いないと、恭介は見当を
つける。
「あれは、ママだな。ちょっと、脅かしてやるか」
「いけない!」
対面にいる女性が、恭介の手を引いた。行ってはいけない。暗闇の向こうで、女性はそう
言っている。

「大丈夫。僕は川に落ちたりしないから。そうだ、あなたも一緒に行こう。提灯の火が消
えちゃったから、そのまま夜道を歩くのは心もとないでしょう」
恭介はそう言って、反対に女性の手を引いた。外国育ちなので、レディをエスコートする
事に、何の違和感も持たない性分だった。

「ち、違うの。ああ・・・」
「しーっ!声を出しちゃダメ。ママを脅かしてやるんだから」
女性の手を引きながら、恭介は明かりの方へ向かった。十中九まで、あそこにいるのは
母に違いない。そうして、明かりまであと少しという所まできた時、恭介は背中に冷たい汗
を流す羽目となった。

「ああんッ!」
恭介は女の悲鳴を聞いた。その途端、足が止まった。そして、膝が震えた。悲鳴の主が、
母親だったからだ。
「奈津美ちゃん、いい道具持ってるな」
今度は男の声が聞こえた。恭介はほんの一瞬聞いただけで、それが昼間会った山岡と
いう運転手だという事に気がついた。
「マ、ママ・・・」
女性の手を引いた恭介の手は震えていた。母は服を着崩し、川の浅瀬にある岩にへばり
ついていた。下半身には下着一枚すら無く、尻が丸出しだった。そこに、あの運転手が
体を重ねている。

「お、おじさんのおチンポ・・・太くって、とっても素敵よ」
「奈津美ちゃんのココも狭くて、キュウキュウだあ。旦那が羨ましいよ」
二人の男女は、一つの肉塊と化していた。母、奈津美は岩に体を預け、背後から犯され
ている。相手はあの、野暮で薄汚い老醜だ。恭介の頭に血が上った。

「あ、あいつ、ママに何をしてやがる!」
「だ、だめよ、行っちゃだめ!」
一歩、足を進めた恭介の手を、女性が引いた。そして、彼らに気づかれぬよう、そっと木
陰に潜んだ。
「だから、さっきいけないって言ったでしょう?」
女性は嗜めるように、恭介を見据えた。そうされると、まるで母親に諭されているようで、
激昂しかけた気持ちが、なんとなく落ち着いていく。恭介は呼吸を整えると、あらためて
母の姿を追った。

「ああーん、おじさん、もっと突いてぇ・・・」
「そうか、奈津美ちゃんは俺のチンポが気に入ったんだな。そりゃ、そりゃ」
「ああ・・・おじさんのおチンポ最高・・・」
提灯の明かりに照らされる母と男は、世にも忌まわしい恥ずべき言葉を、平然と口にして
いた。男はともかく、母があのような事を言うのが信じられない。恭介は肩を狭めて、体が
強張るのを収めようとした。

「ママ・・・」
恭介の視界が涙で歪む。こんな光景を見たくはなかった。敬愛する母、奈津美が夫で
もない男と体を重ねている。その事実を受け止めるのは、十五歳という若さではとても
無理だろう。

「あーッ、おじさん・・・精子が出てるうッ!す、すごくいいッ!」
「へっへっ・・・俺の子を孕むかい?奈津美ちゃん」
運転手は腰をガクガクと振りながら、奈津美の尻をはたいた。なんとこの男、奈津美を
夫も子もある女と知って、子種を胎内に注いだのである。浅ましいにもほどがあった。
「ママ・・・」
恭介は涙を拭いて立ち上がると、連れ立ってきた女性の手を振り解いて、歩き出そうと
した。もう祭りどころではない。祖父の家へ帰るつもりだった。驚いたのは女性の方で
ある。

「ちょっと、君。どこへ行くの?」
「おばあちゃん家に帰る」
「ダメよ。そんな顔で帰ったら、おばあさんたちが怪しむわ」
女性はこっちへ、と恭介の手を取った。駄々っ子のようなこの子を、今帰す事は危険
である。女性はそう判断した。
「あたしの家へいらっしゃい」
そう言って、女性は体を恭介に密着させた。柔らかい乳房の感触が、少年の背中で
たゆむ。

「ああ、気持ちよかった。奈津美ちゃん、もう一回チンポしゃぶってくれないかい?」
「フフッ、いいわよ。残り汁を吸ってあげるわ」
清流の真ん中に立ち、男は口唇愛撫をねだった。すると奈津美は、いまだ熱く滾って
いる肉棒へ、いかにも愛しげに口づけを捧げていく。

「うおッ・・・い、いいねえ、奈津美ちゃん。チンポが蕩けるような舌使いだ・・・」
男のその声を背後に聞きながら、恭介は女性の乳房に押されて夜道を行く。名も知ら
ぬこの女性は、どうしていらぬ節介をするのか、この時の恭介は考える暇も無かった。

「少しは落ち着いた?」
「はあ・・・」
見も知らぬ女性宅に招かれた恭介は、差し出されたお茶を少しだけ飲んだ。しかし、頭の
中にあるのは奈津美が先ほど見せた、濃艶な痴態の事ばかり。無防備になった体を男に
ゆだね、肉棒を胎内へ受け入れていた母親の姿だった。

(ママ、どうして・・・)
微塵も考えた事がない、母親と他人の情事。艶めく女体、嬌声。それらはすべて悪夢だっ
た。今もあのシーンを思い返すと、涙がこぼれそうになる。恭介にとって母は、絶対的な理
性と慈愛の象徴なのだ。その母が、あのような男と──

「ごめんなさいね。恭介くん・・・だっけ」
女性はそう言って、畳に手をつき深々と頭を下げた。しかし、なぜ謝るのか、恭介には分か
らない。
「どうして・・・あなたが謝るんですか?」
「奈津美さん・・・あなたのお母さんと、その・・・してたのは、あたしの父なの」
それを聞いた恭介は、ぽかんと呆けてしまった。目の前にいる女性が、母と交わっていた男
の娘と聞いて、驚きのあまり思考が止まってしまったのである。

「そ、そうなんですか。ふーん」
何と言葉を返したものか、悩む恭介。間を繋ごうと、出されたお茶に口をつけたが味など
はしなかった。

「あたし、山岡睦美っていうの。あなたのお母さんの事は、昔から良く知ってるわ。あたし
より七つ年上で、頼りになるお姉さんって感じだったの。あたし、子供の時はすごく可愛
がってもらったのよ」
「はあ、そうなのですか」
そんな事を言われても、どうリアクションを取ったらいいのだろう。恭介は、自分を見つめ
る女性の眼差しに、気もそぞろという状態だった。

「それで、父との事なんだけど・・・」
睦美と名乗った女性は、しきりに浴衣の前合わせに指を沿わせた。彼女自身も、恭介を
前にして言いづらい事を言わねばならないので、どこか落ち着かない様子である。
「あのね、驚かないで聞いてね。ここいら辺じゃ、お祭りの日には男女が・・・その、勝手に
・・・結婚しててもしてなくても、好きにああいう事が出来る風習があるの。これは、この辺
りだけじゃなくて、結構、日本中に残ってる風習なのよ」
それを聞いて、恭介は目を丸くした。馬鹿げてる。そんな風習、聞いた事が無い。

「バカバカしい。僕、帰ります」
親も親なら、娘も娘。恭介は息巻いた。こんな戯言には付き合っていられない。
「あ、ちょっと、待って」
座を蹴ろうとしていた恭介の肩に、睦美の手が伸びた。そして──
「今、それを証明するから・・・」
そう言って、睦美は恭介の唇を奪ったのである。

「!」
「あん、驚かないで。騒いじゃ駄目よ」
驚愕する恭介をよそに、睦美は自分の体を摺り寄せた。腕を恭介の腰に回し、足を絡め
てお互いの体を密着させようとする。
「な、何するの?あなたは・・・」
「いい事よ。それと、あたしの事は、睦美さんって呼びなさい」
二つのシルエットが一つになり、畳の上に転がった時、部屋の明かりが落ちた。睦美の指
が、電灯を消していた。

「まあ、すべすべのお肌ね」
睦美が恭介のシャツを脱がしにかかった。ほとんど日焼けをしていない少年の体は、白く
美しい。睦美は恭介のへそのあたりから胸元にかけて、指を這わせる。
「強(こわ)い毛が、一本も無いわ・・・赤ちゃんみたいな体ね」
睦美は舌で恭介の乳首を舐めた。舐めた後、ちょっと意地悪げに軽く噛んでやる。少年特
有の甘い体臭が、睦美の官能を思い切り揺さぶった。

「や、やめて・・・」
コリコリと乳首を噛まれ、恭介は戸惑った。こんな経験は初めての事である。しかも、次
は睦美の手がジーンズのジッパーの辺りへ伸びてきた。ここを弄られてはかなわない。

「硬くなってるじゃないの」
「そ、それは、睦美・・・さんが、僕の胸を吸うから」
「それで大きくさせちゃったの?ふふ、敏感ねえ」
睦美の体が、恭介の下半身へと移動した。細い指がジッパーにかかり、小さな金属音が
響く。その後、僅かな衣擦れの音がしたと思ったら、恭介の肉棒は外気に晒された。

「あら、立派じゃないの。ママ恋しの僕ちゃんにしては、ずいぶんと大物よ」
横になった恭介の股間から屹立するモノは、睦美の手に余るほど大ぶりだった。肉傘が
しっかりと開き、茎の部分も野太い。愛らしい顔つきに反し、恭介のそれは肉の凶器に近
かった。
「こんなに大きくして。うふふ、うちの父とやってたママみたいに、おしゃぶりして欲しいん
でしょう?」
「やめて、睦美さん」
「あなたのママは、美味しそうにしゃぶってたわ。こんな風に」
恭介の下半身に、衝撃が走った。睦美の唇が、いきり勃った肉棒を包んでいたからだった。

「ああ・・・」
温かな舌で肉棒を絡め取られ、きつく吸いつけられると、恭介は泣きそうな顔になった。
あの運転手の股間に顔を埋める、母の顔が思い出されてくる。

「ママ・・・」
今まで用足しでしか使っていない肉棒が、異性の口で愛撫されるという感覚は不思議な
ものだった。実を言えば、恭介は自慰すら知らない。たまに夢精をするが、そんな時は母
親が笑って下着を洗ってくれていた。それほど無垢なのである。それを知ってか知らずか、
睦美はさも美味そうに肉棒をすすり、音がするほどしゃぶり続けた。そして──

「恭介くん。ママと同じ事しようか」
睦美はいい加減、肉棒を貪った後、恭介に向かって尻を向けた。先ほど、自分の父親と
恭介の母親が取っていた形と同じ姿勢で、同じ事をしようと言うのである。
「ママと同じ事・・・?」
「そうよ。とっても気持ちいい事よ。あなたのママが悶え狂うほど、気持ちいい事・・・やって
みれば分かるわ。あたしをママのつもりで、やりなさいよ」

ママ、ママと連呼されて、恭介の頭に血が上った。やってやる。睦美の言葉には、そう思わ
せる誘い文句が含まれていた。

「ママ離れする時が来たわね、恭介くん。ああ、ドキドキしちゃう」
睦美は畳に頭をつけて、両手を後ろに回し、自ら女陰を掻き広げた。恭介に、背後から
犯されようというのだ。彼の母親がそうしていたように。

「どうすればいいの?睦美さん・・・」
恭介が睦美の尻に乗りかかる。しかし、目指す場所が分からない。
「今、カチカチになってるオチンチンを、ここへちょうだい」
睦美の指が、女唇を左右にくつろげた。女唇は肉厚で、右側が少し大きい。それらが自身
の指で開かれ、中からは粘り気のある液体が溢れ出ていた。その奥には、恭介がいよいよ
目指す場所がある。濡れそぼる女穴だ。

「こ、ここかな?」
「もう少し腰を上げて・・・オチンチン入ったら、あたしの体にしがみつくのよ」
恭介の肉棒が少しずつ、睦美の中へ埋まっていく。そうして、ぬるりという感触と共に、少年
の純潔は散った。
「ううっ、入った!」
「ああ!入って来た!」
挿入の瞬間、睦美の体はぴくりと弾んだ。その背に恭介が迫る。恭介は言われたとおり、
肉棒が女穴を満たした後、睦美の体にしがみついた。

「ああ、恭介くんのオチンチン、大きいわ・・・アソコが裂けそうよ。ジンジンしちゃう」
睦美は目を細め、自ら腰を使い始める。恭介が女に不慣れなので、そうした方が良いと
判断したのだろう。
「あんッ!お、奥まで届くわ・・・恭介くん、すごくいいわァ・・・」
肉の杭を深々と打ち込まれると、たまらない気持ちになる。睦美は腰を中心にして、左回り
に尻を振った。

「今の睦美さん、さっきのママと同じ顔をしてる」
「気持ちいいからよ。女は皆、同じなのよ」
「ママも気持ちよかったんだ・・・そうか」
気がつけば、恭介は静かに腰を使っていた。動きはぎこちないが、ぬめる女穴の中を確実
に行き来している自分が分かる。初めての性交だったが、母親のことばかり考えているせい
か、意外に冷静だった。

「ママ・・・ママ」
目を閉じると、あの運転手に圧し掛かられていた、奈津美の顔が浮かび上がる。淫らで美し
い顔だった。それを思うと、急に肉棒が言う事を聞かなくなり始めた。
「睦美さん、僕、おしっこ出そう・・・」
「そ、それは、おしっこじゃないわ・・・いいから、そのまま続けて」
はちきれんばかりの肉棒が、大量の粘液を放出した。その瞬間、恭介の耳には母の喘ぎ声
が響いていた。

「またいらっしゃいね」
「うん」
恭介は睦美に見送られて、彼女の家を出た。もう、祭りのお囃子は消え、村には静寂が
戻っている。

「お祖母ちゃんたち、心配してるかな」
睦美から提灯を借りて、夜道を急ごうとした恭介が門をくぐった時、
「おい、坊主」
と、どこかで聞いた声が、低く響いてきた。慌てて声の主を確かめると、睦美の父親であ
るあの運転手が、にやけ面を下げて門の脇からこちらを見ているではないか。恭介は青
ざめた。

「見てたぜ。中々やるじゃないか、坊主。俺も、お前のおっかさんを頂いちまったが、お前も
俺の娘とやったんだから、これでおあいこだよな」
運転手は悪びれず、そんな事を言う。しかし、恭介は反論できなかった。言われた通りだっ
たからである。
「おじさん、ママはどうしたの?」
「スイカ持って帰ったよ。今頃、お前さんが居なくて、心配してるだろうよ。早く帰ってやんな」
「うん・・・」
母を犯していた男に諭され、砂を噛むような思いになる恭介。もっとも自分も彼の娘を犯して
いるので、反論の余地は無い。黙って、帰途につく事にした。

祖母の家に戻ると、母、奈津美は縁側で涼んでいた。湯上りなのか、浴衣を着て髪を
アップにしている。
「ただいま」
「おかえりなさい。遅かったわね」
奈津美の横には、あのスイカがたらいの中で冷やされていた。スイカはきっと、奈津美と
運転手の情事を一部始終、見ていたのだろう。そう思うと、あまり食指が動かない。

「スイカ切ってあげるから、ママの隣においで」
「うん」
恭介は黙って、奈津美に従った。湯上りの母親は、ミルクのような香りを発している。恭
介は鼻をすするふりをして、母の体臭を嗅いだ。睦美とは違う香りだった。
「お祭りで、誰かお友達でもできたの?こんなに遅くなるなんて」
「別に。道に迷ったりしたから」
スイカは四つに切り分けられ、そのうちのひとつが恭介の手に渡った。

「いただきます」
よく冷えたスイカにかぶりつく恭介。しかし、先のこともあってか、どこかほろ苦い味が
するのであった。