「じゃあ元気でね、ユウ君。しっかり勉強するのよ」
2年前の春、そう言い残して、ますみ姉さんは家を出ていった。大学入学で一人暮らしをする為だ。
僕はその日の夜…泣いた。初恋の人に告白する勇気もなく、ただ見送るしか出来なかったから…

隣の家のやさしいお姉さんに恋をする…よくあるシチュエーション。けど自分が恋してみると…つらい。
昔から弟扱いされて、異性の男性として見られないから……
けどこの関係を僕は変える…変えてみせる!その為に必死で勉強してますみさんと同じ大学に合格した。
空手で体も鍛えて初段にもなれた。
僕は2年前の臆病な僕じゃない!ますみ姉さんに僕の気持ちを伝えるんだ!
そして…お付き合いしてもらうんだ!
そう地元を離れる電車の中で誓った……んだけどなぁ……

僕の名前は綾崎湧一(あやさきゆういち)。大学に合格して初めて親元を離れて一人暮しをする18才。
初めての一人暮らし…不安もあるけど、初恋のあの人と同じ大学で過ごすためなら頑張れる…と思う。
僕の初恋の女性…憧れの人…名前は森永ますみ(もりながますみ)。僕より二つ年上。
一人っ子だった僕を弟のように世話してくれた隣のやさしいお姉さん。
身長は僕より小さいけど…スタイルは抜群!一緒にプールに行った時は目のやり場に困ったりもした。
……あの身長であの胸は反則だと思うよ……
そんなますみ姉さんに会える…2年ぶりに会える!僕の心臓は電車が目的の駅に近づくにつれ早くなる。
駅に着いたのは夕方、改札を出た僕はますみ姉さんを探す。
前もってますみ姉さんには連絡してあるんだ。

「えっ?私と同じ大学に合格したの?凄いじゃない!おめでとう、ユウ君!よく頑張ったわね。
ところで住む場所は決まったの?私の隣に空き部屋あるからここにしたらどう?」
僕の報告に驚いたますみ姉さんは、こんなうれしいことを言ってくれたんだ!
もちろん僕はますみ姉さんの隣に部屋を借りることにしたんだ。
これを機会にもっと仲良くなっていつかは恋人に……夢が広がるなぁ…一人暮らしバンザイ!
入居の手続きまでますみ姉さんがしてくれた。僕がした事といえば引っ越しの準備ぐらいだ。
入学手続きの時はタイミングが悪くて会えなかったから…2年ぶりに会えるんだ!

急いで改札を出た僕はますみ姉さんを探す。どこだろう…きょろきょろと探してると懐かしい声が僕を呼んだ。
「ユウ君!こっちよ!」
声がした方向を見ると……ますみ姉さんだ。2年前より綺麗になったショートカットのますみ姉さんがそこにいた。
「久しぶりね、ユウ君。ちょっと背も伸びたみたいね。体つきも男の子らしくなったじゃない。
……元気そうで嬉しいわ」
ますみ姉さん……僕はこのセリフを聞いただけで2年間の努力が報われた気がした。
「ま、ますみ姉さんこそ背が……ごめん、伸びてないね。けど胸はまた大きくなったんじゃない?」
……し、しまった!久しぶりに会えたのに浮かれて、つい思ったことを口に出しちゃった…ど、どうしよう…
ますみ姉さん胸のこと気にしてたから気分悪くなったんじゃ……
「……言うようになったわね、ユウ君。そうよ、背は伸びてないし胸は大きく……なったわよ!」
そう言って僕の頭をつかんで、む、胸に抱きかかえたんだ!…あぁ、夢なら覚めないで……
久しぶりだなぁ…抱きかかえられるのって。僕が小学校時はよくしてくれたんだ。
けど大きくなったって…前までDカップってお母さんが言ってたから今は…E、なのかな?
「こんなとこで遊んでる場合じゃないわね、とりあえず家に行きましょう」
頭を離し、そう言って僕の荷物を一つ持って歩き出すますみ姉さん。あぁ、名残惜しい…
あれ?ますみ姉さんバス停じゃないの?タクシーで行くのかな?
後をついていくと国産のスポーツタイプの車の前で止った。まさかこれ、ますみ姉さんの車なの?
ドアをノックするますみ姉さん。
「彩、ユウ君来たから家までお願いね」
車のドアが開き出てきたのは……すっごい美人!僕より少し背は低いけど165pはあるんじゃないかな?
黒い髪も綺麗で腰まである。まるでモデルみたいだ…思わず見とれてしまった。
「ねぇますみ、この子があんたの弟分なの?聞いてた話だとひょろっとしたごぼう君と思ってたんだけど…
結構いい肉の付き方してるじゃないの。自分、なにかやってるんでしょ?」
そう言って腰のはいったパンチを打つ仕草をした。いい肉の付き方?な、なんだこの人?
「は、はい。一応空手をやってまして…ついこの間に初段をいただきました」
あっそう、とつれない返事…あなたが聞いてきたんじゃなの?それはないんじゃないですか?
「…僕の名前は…」
とりあえずますみ姉さんの知り合いだろうから自己紹介しないとね。
「知ってるわ。自分の名前、綾崎湧一でしょ?ますみから聞いてるわよ。ますみ、さっさと乗ってよ、車出すわよ!」
なに、この人…失礼な人だな。こんな人がますみ姉さんとなんで一緒にいるんだ?
「はいはい。さ、ユウ君は後ろの席ね。荷物はトランクにでも載せてね」
トランクに荷物を入れて後部座席に座る僕。…この人誰なんだ?

ますみ姉さんによると、この美人の名前は国生彩(こくしょうあや)、大学に入ってからの親友だって言ってた。
いつも2人でいるんだって……意外だなぁ。性格が合わないと思うけど……
同い年って言ってたから今年で21才、この車は恋人のものを勝手に借りたんだって。やっぱり我侭なんだ…
こんな気の強そうで我侭な人の恋人なんて大変だろうな…僕はますみ姉さんが好きでよかったよ。
車の中では大学のことや一人暮らしの注意点などいろんな事を教えてもらった。
最初は一緒に大学まで行ってくれるんだって。二人で通学なんて…夢が広がるキャンパスライフ!ビバ大学!
一気にやる気が出て来たぞ。
今日は近くのお店で僕の歓迎会をしてくれるみたいだ。とりあえず荷物を部屋に置く。
1Kだけど結構広い、掘り出し物の物件だな。ますみ姉さんに感謝しなくちゃ。
……この隣にますみ姉さんが……さっきの胸の感触思い出したら興奮してきちゃった。
「ユウ君、どう、結構広いでしょ?」
うわっ!いつの間に入ってきたの、ますみ姉さん!ビックリしたぁ……
「ごめんだけど、彩がご飯食べたいってウルサイから、早くお店に行きましょ。今日はおごりよ」
そう言って僕の手を引くますみ姉さん。手、手を握ってもらえた…し、幸せだぁ〜。
「遅いよますみ!アタシを餓死させるつもり?」
アパートから出てきたらいきなり怒られた。なんだこの人、機嫌でも悪いのか?
「ゴメンゴメン、そう怒らないでよ。せっかくの綺麗な顔が台無しよ?」
「フン!あんたに褒められても嬉しくないわよ」
「あら、やっぱり静馬さんじゃないとダメなのかしら?静馬さん家の奥様には……」
あれ?この人急に真っ赤になったぞ?
「も、もう、ますみったら…さっさと行くわよ!どうせいつものとこでしょ?」
赤い顔でブツクサ言ってる…この人って結構かわいいんだな。照れてるんだ。
「ふふっ、じゃユウ君行こうか。ついて来てね」
あ、手、離されちゃった…ちょっと残念。けどいつかは堂々と握ってやるぞ。
そう心に誓いますみ姉さんの後を着いて行く。ついた先はこじんまりとした……居酒屋だった。

(ますみ姉さんってこんな店に来てるんだ…大人だなぁ)
へんな関心をした僕はますみ姉さんの後について店に入る。
「いらっしゃい!お?魚雷コンビの来店か!いつもの席空いてるよ!」
威勢のいいお店の人が声をかける。魚雷コンビ?なんなんだろ?
席に着いたとたん、店員さんがビールの入ったすごく大きいジョッキ(ピッチャーっていうみたい)と
普通のジョッキ二つ、それにウーロン茶が入ったジョッキを持ってきた。
「はい、ユウ君どうぞ」
そういって空きジョッキにビールを入れて渡してくれる。ますみ姉さんやっぱりやさしいなぁ…
彩さんはウーロン茶を手に取る。車だから飲めないもんね。
あれ?てことはこの大きなジョッキのビールをますみ姉さんと僕で飲むの?
ど、どうしよう…僕お酒なんて飲んだこと無いよ…オドオドする僕。
「ん?自分、どうしたの?なにビビッてんのよ」
僕の様子に気づいた彩さんが聞いてきた。
「じ、実は僕、こんな店初めてで…お酒も初めてなんです。ど、どうしたらいいんですかね…」
そんな僕に彩さんは、ははっと笑って
「ますみがいるから大丈夫よ」
「けどこんなにあるビール、僕とますみ姉さんで飲むなんて…無理ですよ」
僕の言葉にウーロン茶を吐き出す彩さん。なんで吐き出すんだろう?
「自分知らないの?……今日はちょっとしたファンタジー、見られるかもね」
そう言って不気味な笑いをした。な、なにが起こるんだ?
注文を終えたますみ姉さんがジョッキを持つ。
「彩!何に勝手に飲んでるの。乾杯がまだでしょ!」
怒るますみ姉さん、謝る彩さん。
「だって、喉乾いてたんだもん。いいじゃないの」
こうやって見るといいコンビだ。親友というのもうなずけるな。
「さ、ユウ君ジョッキを持って…では、綾崎湧一君の大学合格を祝って…乾杯!」
「乾杯!」
そう言ってジョッキを合わせる二人。僕も真似して合わせる。なんだか嬉しくなってきた。
「僕のために…ありがとうございます!」
嬉しくて頭を下げる僕。頭を上げたらますみ姉さんのジョッキ空になってる。…ええ!もう飲んだの!
「ん?どうしたの、ユウ君。…もしかしてお酒初めて?」
ビールを注ぎながら聞いてくる、ますみ姉さん。頷く僕。
「そうなんだ。じゃ、今日はその一杯だけにしておきなさいね」
優しく微笑むますみ姉さん。はぁ〜かわいいなぁ〜。
次々運ばれてくる料理はどれも美味しかった。けど初めてのビールは苦くてあまり美味しく感じなかった。
少し頭もクラクラして来たし…一杯飲めるかな?コレが大人の味かぁ…みょうに納得してしまった。
ますみ姉さん、なんでこんなの飲めるんだろう?…って、もうビールが全部無くなってる!一人で飲んだの?
唖然とする僕。だって僕はまだ一杯目の半分ぐらいしか飲んでない。あの体のどこに入るんだ?
「ねっ、ファンタジーでしょ?けどこれからよ」
彩さんがそう言った。これから?えっ?何がこれからなんだろう…
「姉さん、久しぶり!最近何で来てくれないのよ〜。俺たち寂しかったじゃないのぉ〜」
突然話しかけてくるスーツ姿のおじさん達。だれ、この人達?右手にはお酒…日本酒の大きなビンを持ってる。
不審な顔をしてる僕に彩さんが話しかけてきた。
「あの人達…ますみのファンの人達よ。まぁファンというより、ますみを狙ってんだけどね」
な、なにぃ〜!ますみ姉さんを…狙ってるだとぉぉ〜!ゆ、許せん!
「ははは、何怒ってんのよ、まぁ見てなさいよ。ファンタジーの始まりよ」
そう言って笑う彩さん。ファンタジーって…なに?

開いた口がふさがらない…こういった時に使う言葉なんだ。みょうに納得してしまった。
なぜなら目の前で起きている現実に口がふさがらないからだ。
目の前には大きなお酒の空ビン(一升瓶というらしい)が6本とスーツ姿の親父が2人、私服のおじさんが2人
転がっている。あっ、もう一人増えた。計5人と7本だ。
これは全部ますみ姉さんと飲み比べをした人達だ。この店の名物らしい。周りには見物人もいる。
「自分、なに口あけてボ〜っとしてんのよ。あんたの歓迎会なんだから料理食べなさいよ」
彩さんの一言で我に返る僕。
「な、なんなんですかコレ!どういうことなんです?」
当然の質問をする僕。
「はぁ?見て分かんないの?飲み比べよ。ますみお酒強いからね」
そう言って出し巻き卵を食べる彩さん。いやいや、そういう意味じゃなくてですね…
「ますみに勝ったらますみと付き合えるのよ。っていうかますみ、自分よりお酒強い人としか付き合わないって
決めてるの…だから正式には付き合った人いないわ」
………ええ!ま、ますみ姉さんと付き合うには、お酒強くないといけないんですか?
「まぁこの人達はますみのファン。一緒に飲みたいだけみたいね。最初はそうじゃなかったみたいだけどね。
何度も挑むうちにファンになったみたい。最近はこういうのが増えてきたからますみ、酒代が浮くって喜んでるわ」
唖然とする僕……その時倒れていたおじさん一人が立ち上がり、ますみ姉さんに抱きつこうとした。
コイツなにするんだ!僕が立ち上がる前に彩さんが立ち上がり見事な蹴りを食らわせる。
あ、あれは、ブラジリアンキックだ……僕あんな蹴りできないぞ?この人何者なんだ?
嬉しそうに倒れるオヤジ。周りからは拍手の嵐だ。
「さすが殺人魚雷コンビだ!」「おお!やっぱり凄いキレのキックだな」「次誰か行けよ。浮沈艦が待ってるぞ」
拍手に答える2人、もうなにがなんだか分かりません。
「ごめんね、ユウ君。せっかくの歓迎会なのに騒がしくしちゃって…そろそろ出ようか?」
そう言って伝表を持ち立ち上がるますみ姉さん。見物人から握手を求められてる…なんなんだ?
まだ口のふさがらない僕に彩さんが話しかけてきた。
「ね、ファンタジーでしょ?…ますみ、ここらじゃ沈まない船『浮沈艦』って呼ばれてるのよ。何人もの男が
ますみを物にしようと挑んできては返り討ちにあってるの。で、ついたあだ名が浮沈艦」
彩さんの説明に、みょうに納得してしまった。って、ダメじゃないか!ますみ姉さんと付き合うには浮沈艦を沈めなきゃ
いけないの?落ち込んでふと横を見る僕。カレンダーが張ってありその上には
『浮沈艦撃墜数累計80人』と書かれてる。
そのうち僕も数に入るのかな…

「ん?どうしたの、ユウ君?少し酔ったの?」
暗い顔をしてる僕を見て、心配してくれるますみ姉さん。やさしいなぁ。
頷く僕。ますみ姉さんを見てるだけで酔いました。
「そう、お酒はほどほどにしときなさいね。あんまり飲んじゃダメよ」
やさしく微笑むますみ姉さん。……説得力ゼロですよ。
「ごちそうさま、ますみ。じゃ、アタシ帰るわ。きっと拓にぃ、寂しがってるからね」
店を出たら彩さんがそう言った。
「あら、寂しいのはあなたでしょ?今日だって静馬さんが来れなくなったから機嫌悪かったじゃないの?」
ふふっと笑うますみ姉さん。そうなんだ、彩さん彼氏が来なかったから機嫌悪かったんだ。
「うるさいわね!じゃあ、ますみに綾崎君、またね」
そう言って帰っていった。いいなぁ、幸せそうだなぁ。
「じゃ、私達も帰りましょうか、ユウ君」
そう言って歩き出すますみ姉さん。あれだけ飲んだのに平気みたいだ。ほんと、ファンタジーだ。
「あ、待ってよ、ますみ姉さん!」
……ま、しばらくはこのままでいっか。会えなかった2年間を考えたらなんてことは無い。
だってすぐそばにいるんだから…お酒もがんばって強くなったらいいんだ。そうだ、努力しよう!
そしていつかは飲み勝って彼女になってもらうんだ!……う〜ん、何かが違う気がするなぁ…
僕は首を捻りながらもこれから始まる新しい生活に胸躍らせている。

だって隣には好きな人が…ますみ姉さんが住んでいるんだから…


今、僕の目の前を歩いてる女性、森永ますみは僕の隣の住人であり、憧れの人、初恋の人である。
そして彼女はお酒が強い…そう、『彼女は酒豪』なんだ。

はぁ、僕の初恋どうなるんだろ……


ファンタジー?な歓迎会から2週間がたち、あれ以来僕は毎晩お酒を飲むようになった。
ますみ姉さんの隠れた能力を目の当たりにしたからね。
お酒で飲み勝てたらお付き合いできる…逆に言えば勝たないとお付き合いできない。
普通の告白じゃダメなの?って思ったけどダメみたい。
実際に何人もの人に告白されてたみたいだけど全部断ったんだって。そう彩さんに教えてもらった。
なかには医学生や青年実業家なんていたらしい。僕とは月とスッポンだ。
やっぱりますみ姉さんって、人気あるよなぁ…昔からそうだったもん。
昔は生真面目だったから交際より勉強!って感じで断ってたもんなぁ。
大学に入ってからいい意味で変わったんだね、ますみ姉さん。
……けど変わるにも程があると思うよ。なんでよりによって酒豪になんて変わったんだろ?
…ハァ、またため息が出たよ。

僕は毎日のお酒飲み特訓の成果で少しづつだけどお酒が飲めるようになってきた。
ようやくビールを二本まで飲めるようにはなったけど、ますみ姉さんにはまだまだ遠い……遠すぎるよなぁ。
例えるなら竹ヤリで戦艦大和に戦いを挑むようなものかな?
それともライオンに素手で戦いを挑むつぶやき○ロー……どちらも絶望的だ…
冷静に分析した自分の立場にみょうに納得した……ハァ、気か滅入るなぁ……
おまけに同じ大学に入ったからといっても、いつも一緒にいれるわけじゃないしね…計算外だったよ。
昼間は講義が違うからなかなか会えないし夜はますみ姉さん、バイト先のファミレスで働いていることが多いしね。
好きな時に会うって訳にはいかないみたい。
ますみ姉さんのファミレスの制服姿……み、見てみたい!…写真貰えないかな?
う〜ん、近くにいるのに好きな時に会えないってのもツライんだな…
そういえば毎日ビール飲むのって結構お金かかるんだよね。
仕送りでどうにか生活は出来るけど…僕もバイト探そうかなぁ。

ますみ姉さんの高校の制服姿の写真を見ながら考える僕。壁、透けて見えないかなぁ……


ユウ君が引っ越して来てから2週間、こっちの生活にも慣れたみたい。少し安心ね。
それにしても私と同じ大学に来るなんて…ビックリしたわ。
ユウ君、勉強はあまり得意じゃなかったし、体も細くて今みたいな男の子の体じゃなかったしね。
『ますみ姉さん、ますみ姉さん』って、よく私を慕ってくれたユウ君。
私が出て行く日の涙を我慢してる顔は今でもはっきり覚えてるわ。
寂しがりで気が弱くて、けどやさしい子…フフッ、ほんとにかわいい子ね。
引っ越す時は私がいなくなったらどうなるのかと心配したけど…引っ越しして正解だったみたいね。
私がいなくなった事で男の子として少し成長したみたい。
私が引っ越ししてから空手を始めたと知った時には『ユウ君が空手?』と驚いたし、
それと同時に雛鳥が巣立つような気がして少し寂しく感じたわ。
もう私の後ろをついてくるユウ君じゃなくなったのかな、と思ったけど…やっぱりユウ君はユウ君ね。
今でもこんな私を慕ってくれるなんて……うれしいわ。
けどユウ君には、早くいい人を見つけて本当の独り立ちをしてほしいわね。
…フフッ、いい人って何よ?自分自身があの人を忘れられなくて一人なのに…バカみたい。
お酒が私より強い人じゃないとダメなんて……ウソ。ただあの人を忘れられないだけ…
あの人の代わりを探してるだけ……諦めたはずなのに、忘れたはずなのに……
あんなにツライことがあったのに……忘れられない私…
フフッ、あれは天罰ね。親友を裏切ろうとした私への天罰…
あ〜あ、彩の恋人じゃなければなぁ…奪い取ったのにな。
どこかにいないかな?お酒が強く、やさしくて素敵な人。
…う〜ん、やっぱりお酒は譲れないわね。こんなことだから彩に胸の中身はアルコールと言われるのね。

そんなことを考えながらビールを飲む私。やっぱり朝はビールね。目が覚めるわ。


「ユウ君バイト探してるんでしょ?紹介したいところあるんだけど、どうかな?」
渡りに船とはまさにこういう事なんだろうな。
バイト経験が無い僕にはなかなかバイトが見つけられなかったんだ。そこにますみ姉さんの助け船。
いつも困った時には助けてくれる、僕にとってはスーパーマン…いや、女性だからスーパーガールかな?
話を聞くとテニスサークルの先輩の彼氏の実家が空手の町道場をやってるんだって。
そこでチビッ子に空手を教える人を探してるみたい。
ひと月に4万円と給料はあまりよくないんだけど、好きな空手でお金が貰えるならと二つ返事でOKしたんだ。
もしかしたらますみ姉さんに男らしさを見せることが出来るかも…って下心があったのは内緒だけどね。
ますみ姉さんからバイト先を紹介された次の日、さっそくその町道場に挨拶に行く。
何事も最初が肝心だからね。館長の名前は池田清正さん。五十五才になるんだって。
息子さんがサラリーマンになってから道場にあまり来なくなったと嘆いてた。
稽古をつけてもらったんだけど…歯が立たなかった。
見た目はちょっと背の高い普通のおじさんなのに、物凄く強い!
空手って奥が深いんだな…みょうに納得してしまった。
池田館長にはこれからも稽古をつけてもらえる事になった。嬉しい誤算だ。
稽古は面接試験も兼ねていたみたいで僕は合格したんだ。
腕はまだまだだけど突きや蹴りはきれいだから小さい子に教えるにはちょうどいい、と言ってくれた。
これって褒められてるのかな?どうなんだろ?
道場には週に三日間、火木土と入ることになったんだけど…
よく考えたらますみ姉さんに会える時間が減る訳で…
かといってお金が無いのは困るし…
ハァ、一人暮らしって大変だなぁ…今更ながら実感したよ。いつかはますみ姉さんと二人で暮らしたいなぁ…
…考えてても仕方ないか。うん、まずはバイトだな!
稽古をつけて貰えて体も鍛えれるし、お金ももらえる!…少ないけどね。
お金を貯めてますみ姉さんをデートに誘おう!
そうだ、いつまでもため息ばかりじゃダメだよね、よし!がんばるか!
がんばってお酒も強くなっていつかは飲み勝つぞ!……って無理だよなぁ…

ハァ…ますみ姉さんの事を考えるとため息だらけの僕。この近くて遠い距離……どうにかできないかな…


「綾崎君はあれか、女はいるのか?」
第3土曜日の夕方、チビッ子に稽古をつけた後、道場を掃除してたら池田館長に聞かれた。
「い、いませんよ!ぼ、僕にはまだそんな余裕ないですから!」
と、突然何言い出すんだ、館長は!
「はっはっはっ、いや、悪い悪い。そんなに怒らんでくれよ。しかし君位の年の頃には女の2、3人はいないと
ダメだろ。いつからいないんだ?こっちに来てからか?田舎にはいるんだろ?」
そう言って小指を立てながら笑う館長。げ、下品な人だったんですね。
「こっちに来てからって……地元でもそんな人いませんよ!」
僕はますみ姉さん一筋だったから他の女性になんて興味がなかったんだ。
「だめじゃないか、なかなかのいい顔してるのにもったいないぞ。そんなことじゃいざという時どうする?
空手や喧嘩と一緒で場数だよ。女を喜ばすには場数を踏まないとダメだぞ、綾崎君」
よ、喜ばすって…ば、場数って……バンバン肩を叩きながら笑う館長。
そういえば僕、あまりそういう知識がないぞ?
確かにそうだ、言われてみればそうだよね。このままだったらいざという時困るよね。
……まぁ、その時が来るかは分からないけどね。っていうか来るのかなぁ…来てほしいなぁ…
そんな暗い顔した僕肩を館長は笑いながら叩いてきた。
「なに落ち込んどるんだ綾崎君。よし!君の歓迎をかねてワシがいいとこ連れて行ってやる!
この間、息子に聞いてからずっと行ってみたい場所があるんだよ。さっそく行くか、綾崎君」
ど、どうしよう…正直な話、興味はある。僕も男だしね…
けどなんだかますみ姉さんを裏切るような気がして…
「なにを悩んでるんだ、綾崎君。男ならどんとぶつかれ!」
僕は強引な館長の誘いを断れずに結局一緒に行くことにしたんだ。

ホ、ホントは行きたくないんだよ?け、けど何事も経験だし、しょうがないよね?


館長が連れてってくれたのはセクキャバってとこだった。なんの店なんだろう?
「か、館長、僕こういう所初めてで何がなにやら分からないんですが」
黒いスーツを着た店員に通された店の中は暗くてミラーボールが回っている。
マイクで何かを喋っているけど音楽がうるさくてあまり分からない。
「おう、ワシも初めてでよく分からん。言っただろ綾崎君、場数だよ場数。一緒に場数を踏もうじゃないか!」
一人ずつ座るように分かれたシート席。僕は席に案内される時にこの店がどんな店かを知ったしまった。
席に案内される時に通路を歩くと、他のお客さんが何をしているか丸見えな訳で……
上半身裸の女の子と抱き合って、む、胸をくわえたり、キスしたりしてる!
ど、どうしよう……ぼ、僕、場違いだよね……横の席に座った館長を見る。うれしそうだ。
(ああ〜、なんでついてきちゃったんだろ…帰りたいよ)
僕の心の叫びも空しく女の人が僕の前に立つ。し、下着姿だ!
暗くてよく分からないけど結構若い人みたい。
「いらっしゃ〜い!ミカで〜っす。ちょっとごめんね」
そう言って僕の膝の上に抱き合うように座った。…ええええ!
「お兄さん、飲み物ビールでいい?」
僕の首に両手を回して聞いてくるミカさん。訳も分からず頷く僕。心臓がバクバクしてる。
店員さんが持ってきてくれた缶ビールを落ち着くために一口飲もうとした僕。
「あはは、そう焦らなくてもアタシが飲ませてあげるわよ」
そう言って口に含み、ぼ、僕にキスしてきた!
「ふぐ!ん、んん!…ゴクゴク…ごくん」
く、口移しでビールを飲ませてくれた…う、うう…初めてのキスだったのに…涙が出てきた。
「どう?美味しかったでしょ……って、どうしたのよ!何で泣いてるの?」
そんな僕の様子に気づいたミカさん。慌てて聞いてきた。
「ぼ、僕…今のが始めてのキスだったんです…す、好きな人いるのに…う、うう…」
うつむいて肩を震わせる僕。
「え?ええ!そ、そうなんだ…ならなんでこんな店くるのよ」
当然の質問だよね。僕は来るようになった経緯を話した。
「ふ〜ん、いざという時の場数を積む為にって無理やり連れてこられたんだ…
確かに自分の男がヘタだとテンション下がるわよね……よし!アタシがレクチャーしてあげよっか!」
そういってブ、ブラを外して僕の頭を抱きかかえてきたんだ!
(い、イヤだ!やっぱりイヤだ!か、かんちょ〜助けてくださ〜い!)
もがきながら横を見ると、館長すでに女の人の胸に顔を埋めてる……ま、ますみ姉さ〜ん助けて〜
「ほら、暴れないの。…アン、乳首に当たって気持ちいいじゃない。ほら、早くくわえなさいよ…
優しくしないと嫌われちゃうぞ」
そう言って顔に胸を押し付けてきた。…や、やわらかい…
「うふふ…君かわいいから…お姉さんがいっぱい教えてあ・げ・る・ね?…チュッ!」

耳元で囁くその言葉に僕の頭はしびれて来た……やっぱりイヤだ!た、たすけて〜!


今日は第3土曜日。私があの人と会える数少ない日。会えるといっても彩と3人で食事するだけ。
2人が付き合う前から続いてる食事会。けど私には凄く大事な日。
以前はよく彩と二人で家に遊びに行ったりしたけど2人が同棲しだしてからはあまり行ってない…
お邪魔虫にはなりたくないしね。
繁華街での3人での食事は楽しかったわ。この時だけは彩も私があの人に甘えるのを許してくれる。
フフッ、ユウ君がこんな私を見たらビックリするだろうな…そんな事を考えながら店を出る。

私とあの人の出会いは先輩の紹介。2人でした食事会で、いいなぁと思ったのが始まりだったわ。
その時に彩の知り合いで以前から相談されていた恋の悩みの相手だと知ったの。
友人の思い人だと知った時は諦めようとしたけど…ダメだった。
彩を裏切ってまで私の物にしようとしたの…お酒に酔ったあの人を騙して抱いてもらってね。
私、初めてだったから絶対に責任取ってくれる…そう考えて。
けど、あの人は彩のことしか考えてなかったの…あの人、私とエッチした事で後悔しかしなかったわ。
それを知った私は彩に全てを告白した…好きな人と友人、一度に2人無くすのを覚悟してね。
けど、彩は…私のために怒ってくれた。
『ますみとエッチして後悔してる?アタシの親友をバカにしないで!』ってね…
恋人は出来なかったけど本当の親友が出来た…そう、私はそれで満足したはず…
でもなぜあの人のこと忘れられないのかしら?あんな事があったから?…違うわね。
…あの人が彩と別れたりしたら、きっと私はあの人を軽蔑するわ。
……私は彩と付き合っているあの人が好きなのかしら?…自分の事ながらよく分からないわね。
自分で言うのもなんだけど乙女心って複雑なのね…

そんなこと考えながら2人の後をついて歩いていたら彩が話しかけてきた。
「ねぇますみ。あれって綾崎君じゃないの?いいの?あの子、あんなとこから出てきたよ」
指差した先を見ると確かにユウ君だった。
けどあの子が出てきたビルは……いわゆる風俗ビルというものだった……



「いや〜綾崎君、実に楽しかったな。いや実に勉強になった、わっははは!」
笑いながら僕の肩を叩く館長。僕は肩を落としたままだ。
「んん?どうした綾崎君。いい子がつかなかったのか?」
「違いますよ!落ち込んでるんです!好きな人がいるのにこんな事しちゃって…う、うう…」
また涙が出てきた。
「わはは、安心しろ綾崎君!風俗は浮気には入らんぞ、そう法律で決まっておる!」
「そんな法律聞いたこと無いですよ!次からは一人で行ってください!」
肩を叩く館長、凹む僕。
ハァ、なんで断れなかったんだろ…けどやわらかかったなぁ…ますみ姉さんはもっと凄いんだろうなぁ…
「ユウ君!こんなとこで何してるの!」
うわぁ!ごめんなさい!もう変な想像しません!……って、なんでますみ姉さんがここにいるんだよ!
「ダメじゃないの!こんなイヤラシイとこに来るなんて…あなたには早すぎるわ!解ったユウ君!」
そう言って僕の耳を引っ張るますみ姉さん。イタタタ、ごめんなさい、ますみ姉さん痛いです。
「おお!静馬君!久しぶりじゃないか!元気にしてたか!」
肩を叩きながらますみ姉さんと一緒にいた男性に話しかける館長。あ、彩さんもいるんだ。
あれ?静馬?どっかで聞いたことが……イタタ、それより耳が取れそうだよ。
「ご、ごめんなさいますみ姉さん、もうしません、許してください」
ひたすら謝る僕。そんな僕を見て館長が笑いながら話しかけてきた。
「綾崎君。君、そんな事じゃダメだぞ。ここにいる静馬君を見ろ!こんなにかわいい彼女がいながら
息子と一緒に風俗に行くツワモノだぞ!君も男ならこうならないといけないぞ!わっははは!」
次の瞬間ますみ姉さん耳を離してくれた…あれ?静馬って人、顔が青くなったぞ?
「静馬さん…今の本当ですか?」「拓にぃ…ほんとなの?」
詰め寄る2人に後ずさる静馬って人。

…あ!思い出した!静馬って人、確か彩さんの彼氏だ!…ってことは、これって…まずいよね…


「おお!修羅場だ、修羅場!綾崎君、見てみろ修羅場だ!わっははは!」
か、かんちょ〜、楽しんでる場合じゃないと思うんですが……
「おお!殴った、殴った。殴ったぞ綾崎君!わっははは!」
うわ!彩さん容赦なく殴ったぞ…こ、怖いよ。
震える僕。そんな僕を見てますみ姉さん話しかけてきた。
「ユウ君。私ね、エッチな店はあなたにはまだ早すぎると思うの…ユウ君男の子だから行きたいって気持ちは分かるわ。
けど二十歳までは我慢しなさいね…分かった?ユウ君」
「おお!絞めとる、絞めとる!フロントスリーパーだぞ綾崎君。わっははは!」
ますみ姉さん……言葉は優しいけど目が怖いです。これは本気で怒ってる顔だ…
「ご、ごめんなさい!館長が僕の歓迎会だって連れてきてくれたんです!イヤだって言ったけど断れなくて……
ごめんなさい!もうこんな所、二度と来ません!」
頭を下げる僕。こういう時は素直に謝ったほうがいいんだよね。ヘタに言い訳するとますみ姉さんもっと怒るんだ。
「……そう、歓迎会だったの。けどね、イヤな時はイヤって言えるようにならないとダメよ?」
「おお!落ちたぞ、落ちた!落ちてしまったぞ綾崎君!わっははは!」
優しい顔に戻るますみ姉さん、やっぱりますみ姉さんにはその顔が似合うよ。
「ゴメンネ、ユウ君。よく話も聞かないで叱ったりして…許してね」
「おお!蹴っとる、蹴っとる!落ちたところを蹴り上げとるぞ綾崎君。わっははは!」
そう言って引っ張られた耳を撫でてくれるますみ姉さん……き、気持ちいい〜
「ううん、僕こそいつも心配ばかりかけて…ますみ姉さん、いつもありがとう」
「おお!とどめだ、とどめ!馬乗りでとどめさしとるぞ綾崎君!わっははは!」
頭を下げる僕。そうだ、いつも心配ばかりかけているんだ…こんなことじゃお付き合いなんてまだまだだよ。
「ユウ君…フフッ、そんなこと言える様になったなんて…少し大人になったかな?」
「おお!動かん、動かんぞ!動かなくなったぞ綾崎君。わっははは!」
うおお!ますみ姉さんに大人になったって言って貰えたぞ!……まぁ少し大人に、だけどね。
けどこれは僕にとってはかなりの前進だ!
「彩、そっちは終わったの?……終わったみたいね」
……いつの間にか静馬って人、ボロキレになっている。
それを見たますみ姉さんはおもむろに携帯をかけ始めた。
「あっ、先輩ですか?ますみです。今日池田さん一緒なんでしょか?…そうですか、隣にいるんですね。
実はですね池田さんと静馬さん、2人で風俗に行ってたみたいなんですよ。…ええ、池田さんのお父様が
そうおっしゃってましたので間違いないと思います。…はい、静馬さんは彩により制裁済みです。
…そんな、先輩の役に立つのは後輩としてあたりまえですよ。…ええ、また情報が入れば連絡しますね。
…ええ、彩にも言っておきますね。では先輩、失礼します」
携帯を切って微笑みながら彩さんに話しかけるますみ姉さん。館長の息子さん、どうなるんだろ……こわいよぉ。
「彩、先輩が池田さんの事で何かあったらすぐ電話するように、だって」
「いつも通りでしょ?分かってるって。それよりこれ、車まで運ぶの手伝ってよ」
そう言って転がるボロキレを指差す彩さん。……彼氏、なんですよね?
「ユウ君、車まで運ぶの手伝ってくれる?」
ニッコリ微笑むますみ姉さん。そんなの怖くて断れるわけないじゃないか…
「いや〜楽しんだ、楽しんだ。面白かったな綾崎君。また来ような!わっははは!」
僕の肩を叩きながらそう言って、館長帰っていった。……もうイヤです。

僕はピクリともしない静馬さんを担いで車まで運んだ。生きてるのか?
「じゃ、ますみに綾崎君、またね」
そう言って彩さん、爽やかな笑顔を残して車に乗りこみ帰っていった。……服に返り血ついてましたよ。
「じゃ、ユウ君。私たちも帰ろっか?」
ほほ笑むますみ姉さん…かわいいなぁ。
その笑顔を見て僕はやっぱりますみ姉さんが一番だと確信する。
家に帰ったら早速お酒の特訓だ!今日は3本は飲むぞ!
……ハァ、先は遠いよなぁ……またため息が出たよ。……けど凹んでても仕方がない!がんばるか!
僕はますみ姉さんの後を歩きながら気合を入れた。

僕達の関係はほんの少しづつだけど前進してる……そんな感じかな?そうであってほしいなぁ…


この間の土曜日はいろんな事があった…館長にエッチな店に連れていかれて、は、初めてのキスをしてしまった…
店から出たところをますみ姉さんに見られて叱られたりした。
……キスのことはますみ姉さんには内緒にしておこう。あれはカウントには入らない、ということで…
(でも、女の人の唇って…やわらかいんだなぁ……胸もやわらかかったし…あれがますみ姉さんなら…)
そんな事を講義中に考えてる月曜日。ハァ、結構僕ってスケベなんだな…知らなかったよ。

そんな講義が終わり帰ろうとした僕に女の人が話しかけてきたんだ。

「やっぱり君だ。おんなじ大学だったんだね」
そう言って僕の肩を叩いてきたこの女性は……だれだっけ?
髪はショートカット、背はますみ姉さんより少し高いぐらいかな?顔はなかなかかわいい顔してる。
こっちに来てからあまり知り合いはできてない。こんな人と会った事があるなら忘れるわけがない。
「え〜っと……すみません、どちらさまでしたっけ?」
僕の言葉に文句を言ってきた。
「え〜!あんなに相談に乗ってあげたのにもう忘れちゃったの?」
相談に乗ってもらった?ええ?そんなことしたかなぁ……
う〜ん、やっぱり思い出せない。
「まぁ暗かったし仕方ないか。けど始めての相手は忘れないでほしいなぁ」
初めての相手?………あ!ま、まさか……あなたはあの……
「あ、あの店の……」
「お?やっと思い出した?そう、あなたのファーストキスの相手のミカさんだよ!」
やっぱり!あのエッチな店で働いてる……僕が始めてキスされた子だ!

予想もしなかった出来事に焦る僕。……また昨日のこと、思い出しちゃった。


「な、なんでここにいるんですか!…って、ええ?同じ大学?」
たしかに同じ大学って言ったよね?
「そ、アタシここの学生なんだ。学費を稼ぐため働く貧乏学生……だからまたお店に来てね、もっちろん指名でね!」
そう言って抱きついてきた!う、腕に胸が、あ、当たって……
「うふふ…どう?気持ちいいでしょ?…ぷっ、アハハハ!君、顔真っ赤だよ?ほんとかわいいねぇ」
そういってさらに胸を押し当ててきた。
「や、やめてください!ぼ、僕はもう二度とあんなお店に行きません!そう誓ったんです!」
腕を振り払って逃げようとする僕。
「あん、だめよ女の子には優しくしないと…7年間片思いの子にも嫌われちゃうよ?
せっかくこの大学に追いかけてきたんでしょ?がんばらなきゃね」
………な、なんで知ってるんだ?秘密にしてたのに……
「せっかくお店で相談に乗ってあげたのにつれないんだ……お姉さんさみしいな。
さみしいからいろんな人に喋っちゃおうかな?」
ああ!お、思い出した……キスされて胸を顔に押し付けられたとき思わず好きな人がいるって言っちゃったんだ…
で、エッチなことされない代わりに時間までいろいろ喋っちゃったんだ……ええ?いろんな人に喋る?
「そ、それは、それだけは勘弁してください!」
そんなことされたらますみ姉さんにばれちゃうじゃないか!
「どーしよっかなぁ?でもお店、来てくれないんだよねぇ…あたし、とぉってもさみしいなぁ…」
うふふっ、と笑うミカさん。な、何か企んでる顔だ、これは。
「そういえばアタシお昼食べてないからお腹すいてんだよね〜。どっかにいないかなぁ、
とぉってもさみしがりなアタシに美味し〜いご飯、食べさせてくれるかわいい子」
うう〜、これは僕にご飯を食べさせろって言ってるんだよな……かんちょ〜、うらみますよ〜。
「わ、分かりました!奢ればいいんでしょ!奢れば!」
「あっ、な〜にその態度。アタシがまるで無理やり奢らせようとしてるみたいじゃないの、失礼ねぇ。
アタシはただ一緒にご飯食べて、さみしいアタシのお話聞いてくれる人探してるだけだよ?
別に君じゃなくていいんだけどね〜。それとも君、アタシとご飯食べたいの?」
な、何だこの人!ぼ、僕の弱みに付け込んで……
「……あ、あなたとご飯が食べたいです……一緒に食事に行きませんか?ミカさん」
く、悔しい〜!何でこんな人とご飯に行かなくちゃいけないんだ!
「う〜ん、どおしよっかな〜?…うん!君、かわいいから今回だけデートしてあげるよ」
なにがどおしようかな、だよ!最初から僕に奢らせるつもりで……ええ!デ、デート?
「えええ!デ、デートってなんですか!なんなんですか!」
ご、ご飯食べに行くのがなんでデートなんだ?
「うふふ…その様子じゃデートもまだと見た!大丈夫よぉ、別に君を食べたりしないわよ。
ただご飯食べたり……うふふ、まぁ安心しなさいね」
ご飯を食べたり……うふふ、ってなんなんです?うわ!ま、また腕に抱きついてきた!む、胸押し付けないでぇ〜
「ほら!いくわよ!美味しいイタ飯屋の場所教えてあげるから!」

い、イタ飯屋?……牛丼じゃ…ダメだよねぇ。ああ、お金が…デートが遠のくよぉ、ますみ姉さ〜ん。


(あ〜疲れたぁ〜!まぁだ体が慣れてないなぁ)
大きく背伸びをしてから家路につくアタシ。今年21才にして大学入学したのだから当然かな?
(去年までコツコツ勉強してたとはいえ、3年のブランクはきついな〜。
じっと座って話を聞くってのがこんなにシンドイってこと忘れてたよ)
この3年間で感じることのなかった心地よい疲れに満足しながら3年間を思い出す。
…高校卒業して借金返済のためすぐ風俗入り、かぁ…よく3年も頑張ったなぁ。偉いねぇアタシ、カワイイねぇアタシ!
コレも全部くそオヤジの残した借金のせいなんだよねぇ。どうせ死ぬなら金残せってんだ。
おかげで大学進学もダメになったしね……あれはショック大きかったなぁ……ポジティブなアタシが凹んだもん。
けどくさらずに3年間頑張ったかいがあるってもんよ!
返済を3年で終わらせたのは『さすがいずみさん!よっ、カワイイよ!』って感じだね。

風俗で働いてる間も勉強してたかいあって大学合格したけど……講義受けるのツライわ〜。
何がツライって夜働いてるからネムイんだよね。
さっさと学費貯めてセクキャバなんて辞めなきゃね。
……にしても昨日の客、ナニあれ?セクキャバで初キッスって……キモ!
……いざという時の為に場数を積むために来たって……キモスギ!
君にはいざという時なんて来ないよって、何度言いそうになったか。
今時いるんだねぇ。あんなピュアな心を持つ少年が……プ、プププ……あっははは!なんだぁピュアって!
けど面白い子だったなぁ。抱きついただけで真っ赤になって暴れるんだからね、新鮮だったなぁ。
きっといいとこのボンボンね。じゃないとあんなピュアボーイには育たないわ。
それにしても…7年間の片思いかぁ……暇だねぇ。よっぽどすることなかったんだろうね。
けど……恋かぁ…いつだったかなぁ、最後に人好きになったのって……忘れちゃったな。
恋なんてしてる暇なかったもんな……ちょっと羨ましいかな?
やっぱり風俗で働いてたからそういう感覚、麻痺してるんだろうね。早く元に戻さなきゃね。
まぁとりあえずは金欠のアタシのお腹を満たしてくれるお友達探さなきゃね。
そんなこと考えてたアタシの目に見覚えのある顔が飛び込んできた。

………んん?あの顔どこかで見たような?…ああ!あれって昨日のピュアボーイ!
まさかこれって運命の出会い?一夜限りの出会いだったのにすぐ会えるなんて……
そうか彼……アタシにご飯を食べさせるために生まれてきたのね!
なんて悲しい運命なの!……けど運命には逆らうことできないもんね。
分かったわ。アタシ、ミカこと佐藤いづみは………運命に従います!

……昼飯ゲェェェット!何にしようかな〜?


(もう3時過ぎか…ユウ君もう帰ったかしら?)
今日から彩はしばらく大学に来れないみたい。あの子にもいろいろあるのね。
だから一人での帰り道、ふとユウ君のこと思い出したの。

…そういえば最近一緒にいること少ないわね。…そうだ!久しぶりに夕御飯一緒に作ろうかな?
ユウ君引っ越してきてから一度もしてないしね。
私もユウ君も今日はバイトないし、ユウ君ああ見えて料理上手いし、腕が上がった私の料理も食べてほしいしね。
ユウ君、私が料理作れるようになったと知ったらビックリするだろうなぁ。
昔を思い出し笑みを浮かべる私。

フフッ、昔は全然作れなかったしね。2人でよく留守番してた時、御飯はユウ君が担当して掃除洗濯を私が担当してた
ぐらいだしね。……久しぶりにユウ君のオムライス食べたいなぁ。今夜作ってもらおうかしら?
ユウ君に電話してみよう。友達と予定が入ってるかもしれないしね。
そういえばユウ君、こっちに来てから友達できたのかしら?そういう話聞かないわね。
他の人と出かけるって聞いたことないわね。この間のエッチなお店に館長さんと行ったぐらいよね?
……あの館長さんって大丈夫なの?ユウ君をあんな所へ連れて行くなんて……心配だわ。
かなえ先輩が仲いいって言っていたから先輩から一言言ってもらおうかしら?
先輩といえば結婚を渋ってる池田さんを外堀から攻めていくって言ってたけど…上手くいってるみたいね。
少し前はお父様と仲良くなったと言ってたから館長さんとはいい関係になってるのよね…
かわいそうな池田さん……きっと気がつけば逃げ場が無くなってるのね。
まぁいいわ。それよりユウ君に連絡して今晩の予定を聞かなくちゃ。……なにあれ?ユウ君よね?
私が見たのはイタリアレストランから腕を組んで出てくるユウ君と若い女性。

(あの女の人は最近大学で見かけるようになった人ね……ユウ君と同じ新入生かな?)
……なんだ、いい人いるんじゃないの、やるわねユウ君。
あっ、ユウ君もこっちに気づいたみたい。ちょうどいいわ、紹介してもらおうかしら。
どんな人か気になるしね……あら?少し胃がむかむかするわね?何故かしら?
……最近飲みすぎのせいかしら?少し抑えなきゃね。

そんな事を考えながらユウ君達に近づくアタシ。ん?ユウ君そわそわしてるみたい。フフ、照れてるのね。


(なんで一人3000円もするんだよ?はぁ…イタリア料理って高いんだなぁ…)
予想外の出費に凹む僕。どうせならますみ姉さんと来たかったよ…
「ごっちそーさま〜!んふふ、結構美味しかったでしょ?」
うわっ!ミカさんまた抱きついてきたよ。
「さってと、次はどこいく?デートなんだから君が決めなさいよ。……けどホテルはまだ早いけどね〜」
へ?次って?……まさかまだ奢らす気なの?勘弁してよ!
「次なんてありませんよ!第一もう自由に出来るお金なんてありませんから!」
そう、僕って貧乏学生なんだよね。親からの仕送りで生活できるといっても食費は月3万円。
だからバイトを始めたんだ。このままじゃますみ姉さんとデートも出来ないからね。
「うっふっふ。このミカさん、そんな嘘には騙されませんよ?」
そう言ってまた胸を押し付けてきたけど、僕はそれどころじゃなかった。
ますみ姉さんがいたんだ……ニコニコしながらこっちに歩いてきてる。ど、どうしよう……

(んん?なんでリアクションしないの?このアタシが胸、押し当ててんのよ?タダで感触味わえるんだから
何か言いなさいよ!ピュアボーイのくせに生意気ね!)
反応がないので様子を見てみると、一点を見つめて汗かいてる。ん?なんだぁ?
視線の方向を見てみるとこっちに歩いてくる女が1人……あれって大学でチョー有名コンビの1人、だよね?
う〜ん、服の上からでも分かる巨乳ね。…いづみさん、完敗だわ。
「ミ、ミカさん、離れてください…」
ん?声震えてるよ?どしたの?
けど離れてと言われれば離れたくなくなるのが人情ってもんよね、逆にギュッと抱きついてやったわ。
「こんにちは、ユウ君。うふふ、デートかな?」
近くで見ると……かわいい顔してんじゃないの。…いずみさん2連敗ね。
んん?ユウ君?そういえばこいつの名前、聞いてなかったね。ユウって名前なんだ。
「あ、あの、ますみ姉さん。これはその…あ、あれなんです…」
ナニ焦ってんのピュアボーイ?…ますみ姉さん?はっは〜ん、コイツの姉貴なんだ。身内にバレるの嫌なんだね。
ますみって女よく観察して見ると育ちがよさそうな品のいい顔してんじゃん。さすがボンボン育ちね。
……一応玉の輿の保険かけとくかぁ?
「始めまして、佐藤いづみです。皆からはあだ名でミカって呼ばれてます。(源氏名だけどね)
ユウ君とは大学に入ってから親しくさせていただいてます。よろしくお願いしますね」
ニッコリ営業スマイルかますアタシ。ふっ、完璧ね。
「私は森永ますみです、ユウ君がお世話になってます。こちらこそよろしくね」
うっ、なんていい笑顔なの……いづみさん3連敗ね。
「い、いや、ますみ姉さん。コレは違うんです!話を聞いてくださいよ!」
なぁ〜に焦りまくってんの?テンパリすぎだよ、ピュアボーイ君。
「ふふ、残念ながら惚気は彩ので聞きアキてま〜す。今度詳しく聞かせてね。いづみさん、ユウ君をお願いしますね」
そう言っていい笑顔残して去って行った。お願いしますってことは…身内公認?玉の輿ゲットなの?
……んっふっふっふ、思わぬ拾い物ね。後はどうやってコイツを落とすかね。
そうだ!このアタシが3年間で培ったテクニックを披露しちゃおうかな?……ってなに泣いてるのよ!
あ〜、どうしよう?メンドクサイなぁ。……とりあえずアタシの部屋この近くだから連れ込むか。
そこで慰めながら既成事実作って責任取らせるか。うんそれでいこう。

……けど何で泣いてんの?ピュアボーイは理解できないわね。


気がついたら僕は見知らぬ部屋にいた。何処だここ?
「お〜い?やっと正気に戻ったのかい?ピュアボーイ君」
へ?う、うわ!ミ、ミカさんなんでバスタオルだけなんだよ!
「な、なんて格好してるんですか!……ところでここって何処なんですか?」
周りを見てみるとあまり物のない質素な部屋。物がないのは僕の部屋とよく似ているな。
「んっふっふっふ…ココこそいづみさんの部屋だよ!男を連れ込んだのは君が初めてだよ、満足させてね?」
満足って……掃除でもさせるつもりかな?なんでこんなところにいるんだ?
「なにボケっとしてんの?はは〜ん、緊張してんだ?」
「いや、なんで僕ここにいるんですか?」
「へ?お姉さんに会った後、君が泣き出して動かなくなったから連れて来たんじゃないの。
道の真ん中で泣くのは恥ずかしいから止めた方がいいよ?」
お姉さんに会った?……ああ!そうだ!ますみ姉さんに会ったんだ!そして……誤解されたんだ……
「……う、うう……ヒック、ウック…」
「……はぁ、またかぁ。何で泣いてるの?男が泣いてたら嫌われるよ?」
僕はミカさんに話した。今までのことを…ますみ姉さんとのことを…

(なにコイツ、ボンボンじゃないわけ?…はぁ、そう簡単には玉の輿乗れないかぁ〜)
すべてはアタシの勘違い。話を聞いてみたら全て分かったわ。
どうやらこいつはアタシと同じく貧乏さん。
で、隣に住むますみって女(さっきの巨乳ちゃん)に恋してるんだって。
……そりゃ恋もするわ。あんなレベルの高い娘狙ってるなんて、さすがピュアボーイ。恐れを知らないわね。
けどコイツって…一途、なんだよね。そういえばアタシにもあったよなぁ〜こんな時。
こんな一途でかわいい子に想われるなんて…羨ましいな。
「…ゴメンネ、アタシのせいで勘違いさせちゃったみたいね」
泣き止まないコイツの頭を撫でながら謝るアタシ。
「いいえ、誤解されたのは僕のせいです。僕がしっかり訳を言わなかったからです。ミカさんは悪くないです」
泣き止んだけど目に涙を浮かべて言うコイツ。カ、カワイイ……
(うっ、なにコイツ……こんな可愛い事言うなんて……抱きしめたくなってきたじゃないのよ!)
気がついたらアタシ頭を抱きしめながら撫でていたの。
(…な、なに?このイメージプレイみたいな状況は?そりゃイメクラで何度かした事あるけど…リアルでするとはねぇ)
あっ、また泣き出した……しかたないなぁ、久しぶりにプレイしてあげますか!アタシも疼いてきたしね。
顔に手を添えて優しくキスするアタシ。きたきたぁ!エンジン掛かってきたぁ!
「ゴメンネ、ユウ君……お詫びに今日は慰めてあげるわ。お姉さんに任せてね」
耳元で囁くアタシ……3年間の経験で慰めてあ・げ・る…

バスタオルを取って全裸になるアタシ。……ピュアボーイ、いただきま〜す!


(な、なんだこの状況は……なんでミカさん裸になるんだ?)
『ゴメンネ、ユウ君……お詫びに今日は慰めてあげるわ。お姉さんに任せてね』
そう言ってミカさんバスタオルを取ったんだ。下には何も身につけてなかったわけで…
だ、ダメだ!こんなことしちゃ…こういうことは好きな人同士でする事だ……と思う。
「や、止めて下さい!こんなことしちゃダメです!」
目を背けて言う僕。
「……ユウ君、今だけでいいの…今だけ貴方を感じさせて…お願いだから」
…ミカさん、涙声だ…なんで僕なんかにこんな事…
「何でなんですか…何で僕なんですか…」
「…貴方、死んだ弟にそっくりなの…名前も同じだし…今日だけでいいからお願い…」
その言葉に驚いてミカさんを見ると涙が流れだしている。……どうしよう。
「触ってみて…ほら、ドキドキしてるでしょ?貴方のせいなのよ」
僕の手を取り胸に当てるミカさん。…やわらかい。
「……お願いユウ君。今だけでいいの。今だけ私を抱いてほしいの…あの子を忘れさせて…お願い…」
その言葉に僕はミカさんを抱きしめていた……

(う〜ん、我ながら凝ったシチュエーションだねぇ。死んだ弟の変わりにエッチするって…普通ありえな〜い!
まぁ、それがプレイ的にはいいんだけどね。…童貞貰いたいけどそれはさすがにダメだよね…)
抱きしめられながら考えるアタシ。結論として素股ですることにした。
アタシの素股は入ってるみたいだって大好評だったから満足するでしょ!
さ、プレイ始めますか!あぁ、興奮してきたぁ…久しぶりだからねぇ…


抱きしめられたままコイツのアソコをさする。うふふ、今日は可愛がってあげまちゅからねぇ〜
「あっ、ミカさん、そこは……」
「ダメ!今は姉さんって言って…お願いだから……」
ジッパー下ろしながら言うセリフかぁ?……ズボン邪魔ね。脱がしちゃえ。
「ユウ君、立って…お願い」
素直に立つコイツ……アソコは半立ちみたいだけどね。
ズボンを下ろしてトランクスに手を掛ける。あぁ〜なんか禁断の愛って感じで興奮してきたぁ〜
「や、やっぱりダメだよ、ミカさん!」
むっ、まだ抵抗するか?
「ダメ!今はお姉さんよ……んん…ちゅぱ、ちゅ、ちゅちゅ…ちゅぱ…」
無理やりキスするアタシ…もちろん舌入れてあげたわ。
唇を離すと虚ろな目をしてる…あぁ〜ゾクゾクしてきたぁ〜
「ふふ、ユウ君、お姉さんと言ってね…そうしたらココにも今のキスしてあげるわ…」

トランクスの上からアソコを撫でながら耳元で囁くアタシ…もうビンビンじゃないの。

「あ、ああ…姉さんやめて…」
うふふ、ついに言いました。姉さんって言いました!よく出来ましたね、ご褒美上げますよ。
「うれしいわ、ユウ君。…私にまかせてね。上着も脱ごうか、ユウ君」
素直に脱ぎだすコイツ。脱いでる間もアソコから手は離さない。結構デカイね、こいつのって。
お?結構筋肉質じゃん、コイツ。

じゃ、始めましょうか…姉と弟の禁断の愛を…イメクラモード、スイッチオ〜ン!

(…何で服なんて脱いでるんだ僕は…こんなことしちゃダメだよ…けど頭が働かないよ…)

僕は服を脱ぎトランクス一枚になった。ミカさ…姉さんはアソコをずっとさすっている。

「こっちに来て、ユウ君…」「はい、姉さん…」
もうこれが現実なのか夢なのか分からなくなってきた…もういいや。なるようになれ…

ベットに寝かされる僕。姉さんトランクスに手を掛けてきた。
「少しお尻上げてくれるかな?」
素直に上げる僕。
「うふふ、よく出来ました。これはご褒美……チュッ…チュポッ…ジュル…ジュポッ…」

ううっ!なんだコレ!気持ちいい…アソコを見ると姉さん僕のを咥えてる…
「あっ!ダメだよ姉さん!汚いよ!」
「はむっ、んっく、ユウふんに、きはないとこなんへ、はいわよ…ジュッポジュッポジュッポ…」
ああ…姉さん気持ちいいよぉ…うう…だ、ダメだよもう出ちゃう…
「も、もうダメ…姉さん出ちゃうよぉ…」
「はぁぁ…出していいわよ。姉さん飲んであげるわ。ユウ君の飲んであげる!」
姉さん右手でしごきながら僕のを顔に擦り付けている…い、いやらしいなぁ…
口に咥えなおしてさらに激しい動きで僕を攻め立てる姉さん。
ジュポジュポジュポジュポジュポ……
「うあああ〜!ね、姉さん!でるぅ!出ちゃうよぉ〜!」
ああ!も、もうだめだぁ〜!……ドピュ!ビュピュ!ビュプ!ピュ!……
姉さんの口の中に大量に出してしまった…凄い…凄かった…
(んく、んく、ごくん)
あ、姉さん僕のを飲んでくれてる…嬉しいな。
「ケホッ…うふふ、ユウ君凄くいっぱい出たね。まだまだ出そうね」
僕の横に寝転んできながら囁く姉さん。

「次は姉さんを気持ちよくしてほしいなぁ…女の子を気持ちよくさせる方法教えてあげるね」


「ユウ君、胸触って…優しくだよ…んあ!そう、そこ気持ちいいよ…舐めて…ああん、そうよもっと舐めて…」
あはぁ…気持ちいい…かわいい子にしてもらうとこんなに気持ちいいんだ…
今までは仕事だからヌク事ばかり考えてたからね…
「お手てお留守にしちゃダメよ?…ここ、触ってね…」
右手を手に取りアソコに持っていく
あぁ…いいわ。男がイメクラにハマルの分かるわぁ…んん!
クチュ…クチュ…クチュ…
「あ、あ、あ、ああ!いい、いいわよ!ユウ君いいわぁ〜!」
乳首舐められながらアソコ弄られてる……ああん、気持ちいいわ…
「ん、ユウ君。ココ舐めて…姉さんのいやらしいココ…舐めて…」
一度体を離させて、両足を開きアソコを広げるアタシ…早く舐めて!
「すご…凄いよ姉さん…凄くいやらしいよ…」
ピチャ…ピチャピチャピチャ…ジュル、ペチャ…ピチャピチャ…
ひゃう!…あ、スゴ!…イヤ!……くうん…ああ!い、いきそ…
「ああ、凄いよ姉さん…いくら舐めてもどんどん濡れてくるよ…ベットまで濡れてるよ…

姉さんのココ、黒くてヒクヒクしてて、とてもいやらしいよ…」
ああ!凄いわ!もっと舐めて!もっとぉ!………黒い?今コイツ…アタシの黒いって言いやがったな!
「ユウ君、交代よ。姉さんがすっごく攻めてあげる」
アタシは上に乗ってコイツのアソコをアタシのクリちゃんに当たるようにして腰をスライドさせる。
もちろん右手でコイツのを握り締めながら…これがアタシの18番の素股よ!
これで何人虜にしたか……アタシがイクまで止めてやんないからね!
黒いとか言った罰よ!……気にしてんだからね……
ヌッチャ…ヌッチャ…ヌッチャ……あ、んん!い、いいわ…コイツいいもの持ってるわね…んん!
「だ、ダメ姉さん!入れちゃダメだよぉ〜!」
うっふっふ、入れてないんだよ〜だ。…んっ、気持ちいい…
「で、出ちゃう、出ちゃう、出るぅ〜!」
ネッチャ…ヌッチャ…ヌッチャ……ドピュ!ピュピュ!ピュル……
ああん、もういっちゃったの?…あれ?小さくなってきた…そうはさせないよ。
人差し指にアタシのアソコから流れてる愛液を十分に付けてコイツのお尻に突き刺す。

「いひゃう!な、何するんですか!止めて下さいミカさん!」
おお?正気に戻ったのね…けど遅いよ。人差し指をクイッとな。入れた指で前立腺をマッサージ…はい、復活しました!
「うっひゃう!み、ミミミカささんん!」
うるさいなぁ。…ヌチュ…ヌチュ…ん、あ、あ、いい、気持ちいい…
ヌッチャ…ヌッチャ…ヌッチャ…ヌッチャ…
さらに腰の動きを激しくするアタシ……アタシがイクことができたのはコイツが3回イッテからだった。


僕はベットの上で三角座りしている…全裸でだ。
「ごめんって。謝るから許してよぉ」
ぼ、僕の体……汚れちゃった……汚されちゃった……
「ねえ、ユウ君…減るもんじゃないんだからいいじゃないの。あっ、精子は減ったかな?
けど君も最初はノリノリだったじゃない?」
お、お尻に指を……それで立っちゃうなんて…僕は変態なんだ…
「シャワー浴びなきゃザーメン臭いよ?」
ますみ姉さんに嫌われる…嫌われちゃうよ…
「そんな怒んないでよぉ。気持ちよかったでしょ?5回もイッタんだから」
こんな変態…死ななきゃダメだよね…短い人生だったなぁ…
「ほらぁ、元気出してよぉ。アタシと5回もしようなんてお店だったら7〜8万かかるよ?得したじゃん!」
どこで死のう…迷惑が掛からないとこがいいな…
「仕方ないなぁ…サービスでもう一回してあげるよ」
「もう黙っててよ!こんな…汚れた僕なんて…もうほっといてよ!」
う、うう…涙が出てきた…
「ハァ?…お前今、なんて言った?汚れてる?アタシとしたからか?じゃあアタシは汚れた汚物か?もう一度言ってみろ!」
ミ、ミカさん?こ、怖い…凄く怖いよ…
「確かにアタシは3年間、風俗で体売ってたよ…あんたをいかせてあげたのもその時のテクニックだよ。
けどねぇ、汚れてるはないんじゃないの?好きで風俗で働く女がいるもんか!」
ミカさん…泣いている…
「アタシはねぇ、プライド持ってやってたんだよ?アタシにつく客全員に最高の時間を過ごして貰おうとね!
確かに安っぽいプライドかもしんないけどね…そのプライド持ってやってたことを汚いなんて言われちゃね……
風俗で体張って頑張ってる娘達全員を馬鹿にされたことなるんだよ!」

……ぼ、僕は知らないとはいえ…なんて軽はずみなことを言ってしまったんだ……


「ご、ごめんなさい!軽はずみなこと言ってしまって…許してください!」
土下座する僕。
「……気持ちよかったでしょ?そういう夢のような時間を一緒に体感するのが……風俗なんだよ」
「ミカさん…」
「違うよ、アタシのホントの名前は佐藤いづみよ…アタシこそゴメンネ。ちょっと悪乗りしちゃったわ」
そう言ってほほ笑むミカ…いや、いづみさん。
「君、カワイイから悪戯したくなったのよ…けど安心して。君、まだ童貞だから。入れてないからOKでしょ?」
「もう、いづみさん!そういう問題じゃないですよ!」
館長みたいなこと言う人だな。
「あはは!元気になったね。…もう一発しとく?今なら童貞貰ってあげるけど?」
はぁぁ、さっきの怒りはなんだったんだ?
「あ、な〜に?なんでため息なのよ?やっぱりますみ姉さんじゃないとイヤなのね…アタシは遊びだったのね」
「遊びとかそういう事じゃ……ってなんで僕の好きな人がますみ姉さんだって知ってるんですか!」
「いや、君の態度でバレバレよ?森永さんは気づいてないの?」
ええ!そうなの?僕の態度って…バレバレなの?
「なぁにショック受けてんのよ!やっぱり君、面白いねぇ〜。よし!いづみ姉さんが協力してあげる!」
そう言って僕の胸にパンチをしてきた。
「アタシに任せてよ!どんな性の悩みでも答えるわよ!遠慮しないで、友達でしょ?」

「そんな答えはいらないですよ!」
「あらぁ、付き合うようになったら必要だと思うけどなぁ」
「……その時にお願いします」
「あはは!分かったわ、期待せずに待ってるよ!とりあえずシャワー浴びてザーメン落としたら?臭ってるよ」
あう!…とりあえず僕はシャワーを借りてサッパリする事にした。

こうして僕には強力な?味方が出来たんだ…味方かなぁ。
まぁ一応女性だからますみ姉さんの気持ち分かるだろうし、いろいろ相談に乗ってくれるって言ってくれたしね。
それに……こっちに来て出来た始めての友達だしね……友達があんな事するかなぁ…
当面の目標はますみ姉さんの誤解を解くこと!いづみさん協力してくれるかなぁ…不安だ。

けどいづみさんのおかげでますみ姉さんとのデートが実現したんだ!
でもその時になぜお酒が強い人としか付き合わないって言ってるのか分かったんだ……

そしてそれ以上にショックなことも知ってしまった…
僕に出来ることって何があるんだろう…ますみ姉さん…

(あのユウ君に彼女が出来るなんて…ビックリね。先、越されちゃったな…)
一人で取る夕食、食べる気しないな…本当ならユウ君と一緒に食べるはずだったのに…
けどユウ君はあの女と一緒…はぁ、皆先に行っちゃうのね。私だけね…先に進めずに同じ場所にいるのって。
……けど何よ、あれ。私に見せ付けるように腕組んで…だいたい私のほうが胸あるじゃないの!
あんなペチャパイより私のほうがいいに決まってるのに…
あんなのに私、負けたの?…ユウ君、女を見る目無いのね。ガッカリだわ。…はぁ、やってらんないわ。
ますます胃がムカムカしてきたわ……えっ?なんで私ユウ君に怒ってるの?
私のほうがいいに決まってるのにって、何よ?
あのおとなしいユウ君に彼女が出来たのに…祝福してあげるのが当たり前なのに…何故かしら?
……そうか、これはきっと嫉妬ね。私より先に大事な人ができたユウ君への嫉妬……情けないわね。
はぁ、ユウ君もうあの女とキスしたのかな…それとももうエッチな事してるのかな。
…あんなペチャパイ、気持ち良くないと思うけどな…
それともユウ君、静馬さんみたいに胸にはこだわらないのかな…どうなのかな?
……ああ〜もう!私何考えてるのよ!なんでユウ君の好みのタイプを気にしなくちゃならないの?
全部ユウ君のせいね!今度あのイタリア料理奢ってもらうわ。私を嫉妬させた罰よ、文句は言わせないわ。
……あ〜スッキリしないな。よしっ!こんな時は飲みに行くに限るわね!
携帯を取出し誘いの電話をかける私。ふふっ、やけ酒ね。こんなお酒に付き合ってくれるのは一人だけ。
「彩?ますみだけど…今夜暇かな?」
『なに?また飲みに行くの?アタシ無理だからね!』
何よ、私達親友でしょ?そんなつれない態度取るわけ?ならこっちも考えがあるわよ。
「あら、残念ね。…じゃ静馬さんを誘って二人きりで飲もうかしら?今夜は酔っちゃおうかな?
久しぶりの二人きりだから私乱れちゃうかもね?」
『ぐっ…アンタ性格悪くなったんじゃない?』
誰かさんの親友してたら悪くもなるわよ。
「じゃ彩、今晩静馬さん借りるわね…明日には返すわ」
『あ〜もう!分かったわよ!付き合うわよ!付き合えばいいんでしょ!』
「ふふっ、相変わらず独占欲強いのね、うれしいわ。場所はいつもの所、時間は一時間後でいいわね?」
『ああ、あそこね?分かったわ……ねぇますみ、何かあったんでしょ?後で話しなさいよ』
うっ…鋭いわね。さすがに親友……ほんと、うれしいわ。
「…うん、分かった。後で話すわ。じゃまた後でね」
電話を切る私……ふぅ。さてと、着替えようかな?

…彩なら分かるかな?何故こんなにイラつくのか…何故こんなにモヤモヤしてるのか…胃もたれ…じゃないわよね。


部屋に帰ってきたのは夜の八時過ぎ、ますみ姉さんの部屋、電気ついてないや。また彩さんと飲みに行ってるのかな?
それにしても…今日はトンでもない目に遭ったなぁ。
でも女の人とするのってあんなに気持ちいいんだ…ますみ姉さんとだったらもっと気持ちいいんだろうな…
いづみさんは入れてないから大丈夫って言ってたけど…何が大丈夫なんだ?
もっとスゴい事されたんじゃないの?
けどお陰で少し度胸がついた気がする。館長の言ってた場数を踏むってこういう事なのかな?
…よし!勇気を出してますみ姉さんをデートに誘うぞ!
…けど今日は疲れたから寝ようかな。ますみ姉さんいないしね。
……ホントに度胸、ついたのかな?

「ねぇますみ。あんたの話し聞いてたらね、昔のアタシと拓にぃを思い出すのよ」
いつもの居酒屋でお酒を飲みながら今日の事を彩に相談したの。
「あなた達を?どういうこと?あ、焼酎ハーフボトルお代わりお願いします」
「はぁ、やっぱり分かってないんだね」
頭を押さえる彩。一体なんなのよ?
「勿体ぶらないで教えなさいよ」
「だから、あなたが拓にぃで綾崎がアタシ」
…何言ってるの?私が静馬さんであなたがユウ君?
「まだ分かんないの?綾崎が何で猛勉強したか。何で空手を習いだしたか…
全部アンタに認めてもらうためだと思うよ、きっとね」
私に…認めてもらうため?
「アタシ、あの子の気持ち分かるよ。アタシも拓にぃ認めてもらいたかったから…
一人の女として見てほしいから…頑張ったもん。綾崎も同じはずだよ。アンタに男として見てほしいんだよ」
彩の言葉に戸惑う私。だって、それじゃユウ君、私の事を…
「知ってる?好きな人に異性として見られないのって…スゴく辛いんだよ…泣きたくなるんだよ…
…どんなに頑張っても相手にされない…好きで好きでたまらないのに、すぐ横にいるのに…アタシを見てくれない…
こんな悲しいことないんだよ」
彩…泣かないでよ…私まで泣きたくなるじゃない…
「アンタはね、無意識では綾崎の気持ち分かってんのよ。その綾崎が他の女と腕組んで歩いてたから嫉妬したのよ、
その女にね。アンタも拓にぃと同じよ。自分の気持ちに気付いてないだけ。アンタ、きっと綾崎が好きなのよ」



「アンタはね、無意識では綾崎の気持ち分かってんのよ。その綾崎が他の女と腕組んで歩いてたから嫉妬したのよ、
その女にね。アンタも拓にぃと同じよ。自分の気持ちに気付いてないだけ。アンタ、きっと綾崎が好きなのよ」

私がユウ君を…好き?そんなはずないわ。だってあの子は昔からの弟みたいな子だし…
静馬さんと違ってあまりお酒強くないし、ユウ君には悪いけど…頼りないしね。
男としての魅力は……皆無よね。そんなユウ君を好きなる訳……けどユウ君、純粋でやさしい……
いつも真直ぐな瞳で私を見てくれる…いつも私にやさしくしてくれる…こんな私でも…見つめてくれる……
けどユウ君はあの事を知らない……知ってるのはアタシと先輩だけ。彩にも言ってない…
ユウ君だけには知られたくない…あの事を知られたらきっと軽蔑されるわ。
……あ……そうなんだ…やっと分かった……何故静馬さんのこと忘れられないのか、好きだからじゃないわ…
あの事への罪悪感なのね…静馬さんを思い続けることは…あの事への償いなのね……
……フフッ、こんな私にユウ君を好きになる資格なんて……やっぱり無いわ……
……やっぱり彩の言う通りなのね。私ユウ君が好き…みたい。
…辛い…辛いわ…こんな気持ちに気がつかなきゃよかった…明日からどうすればいいのよ…
「ますみ?どうしたの?なんで泣いてるのよ?」
え?…ホントだ、涙出てきてる……彩に泣き顔見られたの2回目ね。
「ゴメン、アタシあんたの気持ち考えずに言いたい事言っちゃったね…友達失格だよね…」
「彩……違うわ、違うわよ」
彩を抱きしめて泣く私…
「あなたがいてくれるから私、ここにいられるの…あなたのおかげで笑っていられるのよ…
あなたが親友でよかったわ。ありがとう…ごめんね、彩…」
いつか…いつになるか分からないけど心の整理が出来たら彩には言おう……本当の事を。
…それが原因で嫌われても…いいわ。彩には隠し事なんて出来ない…もう少し待ってね彩。いつか絶対に言うからね。
打ち明けたその後も……出来ることなら友達で、親友でいてね、彩。

彩に相談したことで自分の本当の気持ち―静馬さんに対しての…ユウ君に対しての―に気づいた私。
けど、どうしたらいいのかは分からなかったわ…



「とりあえずご飯にでも誘ったら?もちろん美味しいご飯だよ」
次の日、僕は現状を打破する為に、どうやってますみ姉さんをデートに誘ったらいいかをいづみさんに相談したんだけど
…やっぱりご飯かなぁ。もっとこうデートって感じがするほうがいいんじゃないのかな?
「最初からガツガツ攻めたらアタシだったら引いちゃうね。何コイツ、必死じゃん、ってね」
そ、そうなのか、知らなかったなぁ。
「それに話を聞いてみると、君はオスとして見られてないしね。まずはオスとして見てもらうことから始めないとね。
いきなり告白しても粉々に砕け散るだけだよ。まぁ、そっちの方が笑えるけどね」
……笑いはいりません。けどそうだよね。僕って男として見てもらえてないよね。キツイよなぁ……
「な〜にくらい顔してんのぉ?よし!このいづみ姉さんに任せなさいな!きっちり2人でご飯食べれるように
セッティングしてあげようじゃないの!軍艦大和に乗った気でいなさいな!」
「えっ?ホントですか!ありがとうございます!」
頭を下げる僕、いづみさんに相談してよかったよ。
「あはは、照れるじゃないの。友達…フレンドとして当然じゃないの。まぁこのセックスフレンドに任せなさいな」
照れながら手をヒラヒラさせるいづみさん。頼りになるなぁ……ってセックスフレンド?
「な、何言ってるんですか!ただの友達です!頭に変な言葉つけないでください!」
はぁはぁはぁ……この人何処まで本気か分かんないよ。…あれ?そういえば……
「いづみさんってますみ姉さんと知り合いでしたっけ?」
「うんにゃ、あんな巨乳ちゃん知らないよ。まぁなんとかなるっしょ?」
……そういえば軍艦大和って……結局は沈むんだよね……なんだろう、この絶望感は……

「森永さん、少し時間貰ってもいいですか?」
大学の帰り道、いきなり声を掛けられたわ。あら?この人は確か……ユウ君の…彼女、よね?
「……少しなら、いいわよ」
彩に相談してから一週間。情けないことにユウ君に会うのが怖くて…ユウ君を避けてるの。
電話が来れば話すけど、顔を合わしたりはしてないわ。自分がどうなるか分からないから……
けどなんでユウ君の彼女が話しかけてきたの?挨拶しかしてないのに……
「ここじゃなんだから…喫茶店でも行きましょうか?」
喫茶店に誘う私。こんなところにいたらユウ君に見つかっちゃうわ。
店の奥の席に座りコーヒーを2個注文する。
「佐藤さん…でしたっけ?いったい何の用かしら?」
この女がユウ君を……こんな女をユウ君が……
「……そんなに睨まなくてもいいじゃないのよ。一応アタシのほうが年上なんだけどねぇ」
…ええ?そうなの?新入生だから年下だと思ってたわ。
「す、すみません。ユウ君とお付き合いされてるので、てっきり年下かと思ってました」
「あはは、そんな頭下げなくていいわよ。照れるじゃないの」
そう言って手を振る佐藤さん。結構気さくな人なのね。……ユウ君こんな性格がいいんだ……
「それに付き合ってないわよ、あんなピュアボーイとはね」
ニヤリと笑いこちらを見る…何?この女。なんかムカつくわ…え?付き合ってない?
「残念ながら今のところはただの友達よ、友達」
残念ながら今のところって?なに?……何よそのにやけた顔は……
「今のところって…何なんでしょうか?」
この女にだんだんムカついてきたわ…教えなさいよ!今のところってなんなのよ!あなたもユウ君狙ってるの!
「ん〜?それはねぇ……ひ・み・つよん」
ムカッ!ムカムカッ!
「なによそれ!言いなさいよ!」
バンッ!っと机を叩く私、静まる店内……ああ…やってしまったわ…
そんな私を見てニヤつく佐藤。この女…敵ね。



(巨乳ちゃんのこの態度……姉としての嫉妬じゃないね。女としての嫉妬だね、これは)
軽いジャブのつもりで攻撃したら意外な事実!なんだ、ピュア君脈アリじゃないの。聞いてた話と少し違うけどね。
「こほん、すみませんでした、佐藤さん。ユウ君の姉代わりとして少し心配になったもので」
頭を下げてニッコリほほ笑む巨乳ちゃん。残念ながらそんな営業スマイル、通じないんだよね〜。
もっとイジリたいけど…まぁいいわ。
「気にしてないから大丈夫よ。今日時間を割いてもらったのはね、ピュア君…綾崎君の事なんだけどね」
「ユウ君がどうしたんですか!何かあったんですか!」
おお!食いつき早いねぇ〜。……もしかして両思いじゃないの、こいつ等?アタシいらなかったんじゃない?
「なんかさぁ〜、好きな人に避けられてるって落ち込んでて鬱陶しいんだよね〜。
これだからイヤなんだよね童貞って。森永さん、お姉さんみたいなものなんでしょ?話を聞いて慰めてやってよ」
「……けど、私……」
…なんだ?この巨乳ちゃん、辛そうな顔して。…ピュア君の気持ちも知ってるみたいな反応だねぇ。
それで最近会わないようにしてるの?けど巨乳ちゃんもピュア君の事嫌いじゃないと見てんだけど
なんで会うの嫌がるんだろ?ま、いいや。とりあえずご飯に誘ってだねぇ……
「今夜綾崎を励ましてやろうとご飯食べる約束してるんだけど、アタシと2人なんだよねぇ。何かイヤじゃん?
凹んだ童貞の相手を1人でするのって」
「……」(ギロリ)
「うっ……じょ、冗談じゃないのぉ。そんな目で睨まないでよ」
な、なによこの迫力は…怖いじゃないの。
「……分かりました。ご一緒します。あなたと2人だとユウ君心配ですからね」
「あはは、安心しなよ。もう手は出さないつもりよ」
「……『もう』?」(ギロリ)
「あ、ははは……心は広く持とうよ、森永さん。じゃないとしわ増えるよ?」
だからなんなのよ!この迫力は!
「余計なお世話です!……ところで質問なんですがいいでしょうか?」
ふぅ、向こうから話題変えてくれた、助かったぁ。
「ん?いいわよ。勉強の事は勘弁だけどね」
「…この間レストランから腕を組んで出てきてましたけど…付き合ってないならなぜあんな事を?」
……何このジェラシー全開な質問は……
「あ、あれね。ご飯奢ってもらったからサービスしただけよ」
……今、一瞬明らかにホッとした表情したわね…これ確定ね。こいつピュア君に惚れてるわ。
「ということで今晩お願いね〜。あ、そうだ。携帯の番号教えてくれる?」
番号を交換して分かれるアタシ達……この番号高く売れそうだわ。くっくっく……ってちがうっしょ!
とりあえずピュア君に電話するアタシ。う〜ん、アタシっていい人ね。



『あ、ピュア君?とりあえず今夜、巨乳ちゃんと3人でご飯食べる事になったから。君、場所探しといてね』
「えっ?本当ですか!有難うございます!」
『あはは、お礼は君の、ど・う・て・いでいいからね。おいしく頂くね』
「い、いいいづみさん!」
『あっははは。冗談よ、冗談。巨乳ちゃんにはアタシから場所教えるから決まったらメールしてね』
「分かりました。どうもありがとうございます!」
『いいって、いいって。あ、そうだ。アタシ適当な理由つけて行かないからね』
「ええ!そんな…来て下さいよ、不安ですよ」
『あんたはトイレに行けない小学生か!まぁ頑張んなさいよ』ピッ
切られちゃった……どうしよう?
ますみ姉さんとはこの間イタ飯屋さんから出るとこ見られてからまともに喋ってないんだよね。
やっぱり怒ってるんだろうな……なんで怒ってるんだろ?
あ、電話だ…あれ?またいづみさん?…ピッ
『そうそう言い忘れたんだけど……君、脈有り!だよ。頑張んなさい、ピュアボーイ』ピッ
切られちゃった……み、脈有り?……う、うををををを〜〜〜〜!
高速に近い速度でグルメ雑誌をめくる僕……破けてしまった。
……結局はこの間のイタ飯屋に決めた。あそこ美味しかったもんね。
いづみさんにメールするとすぐにOKと返事が来た。
こ、これでいわゆる一つのデ、デートというやつができるんだ。
ま、ますみ姉さんとデート……緊張してきた……

午後6時30分、約束の7時に近づいてきたわね……はぁ、こんなに緊張するなら断ればよかったわ。
けど久しぶりにユウ君と食事…できる事なら2人で行きたかったわね。けど…こんな気持ちのままじゃ……
電車の中で憂鬱な私。はぁ、ため息が出てくるわ。
(ん?メールね。佐藤さん?なにかしら……ええ!佐藤さん来れないの?)
ど、どうしよう……企画した人が来れないってどういうことなの?
電車を降りて落ち着くために1カップ酒を一気飲みする私。
(いまさら断るのはダメよね……私まで行かないとなるとユウ君1人だしね…)
考えをまとめる為1カップ酒をまた飲む。
(……今まで通りに普通に接すればいいんだわ。…それが出来るかどうか…うまく乗り切るしかないわね)
気合を入れるために1カップ酒を一気飲みする私。
お願いだからユウ君、変な事言わないでよ……

午後6時50分、僕は店の前でますみ姉さんを待っている…好きな人を待つって意外といいもんだね。
ちなみにここには1時間ぐらい前からいるんだ。早く来すぎだよね。
(とりあえずこの間の、いづみさんとココに来てたことを謝って…)
ぶつぶつ言ってたら声かけられた。
「ユウ君お待たせ!佐藤さん来れないんですって?いろいろ話聞きたかったんだけどなぁ」
ふお!ま、ますみ姉さん!……久しぶりに見るますみ姉さんは、かわいい!…でもなんでお酒の匂いするんだろ?
「ユウ君、何ビックリしてるの?……さ、お店入りましょう。もうお腹ぺっこぺこなのよ」
手を引かれて店に入る僕、ますみ姉さん、何か慌ててない?


初デート?は食事だけで終わったんだ。最初はどうなるかと思ったけど上手くいった……のかな?
料理はいづみさんと食べた時より遥かに美味しかった。好きな人と食べると美味しくなるんだね。
久しぶりのますみ姉さんとの会話もはずんだ。いづみさんとの事は……秘密だけどね。
ただ……ますみ姉さん、少し様子が変だったんだ。なんていうんだろ、空元気って感じかな?
うん、あれは無理やり明るく会話してる感じだ。
会話の内容も、最近大学はどうだった?とか、彩さんがまた彼氏を殴ったとか、
ますみ姉さんの先輩の彼氏(館長の息子さん)がその先輩から逃げ出したのを捕まえたとか、
ほとんどがますみ姉さんの話だったんだ。今までこんな事はあまりなかった。
いつもは僕の話を嬉しそうに聞いてくれてたんだよ。今日は僕が話そうとしてもさえぎる様に話してきたんだ。
それに…うん、そうだ!あのますみ姉さんがお酒頼まなかったんだ!ありえないよ、これは!
朝一番にビール飲む人だよ?彩さん曰く「ますみは水分をアルコールで取る」だからね!
何かあったのかな?……だから最近会えなかったのかな?
………電話してみようかな?直接会って話したいけどもう遅いからね。まだ起きてるかな…

ふぅ、危なかったわ……少しでも酔っていたらユウ君に好きって、打ち明けてたかもしれない……
理性が勝ったわね……目の前で見たら抱きしめたくなるなんて……やっぱりしばらく会わないほうがいいわね。
……はぁ、なんでこんなことになったのかな……私のせい、よね。自業自得ってやつか……
この壁の向こうにユウ君がいるのに…好きな人がいるのに…
あれ、涙出てきた…う、うう…ユウ君…つらいよ、ユウ君……寂しいよ…会いたいよユウ君…

しばらく悩んだけど結局電話するのは止めた。
やっぱり夜遅くに電話かけるのは迷惑だしダメだよね。明日の朝にでも話をしよう。
けど、何かがあったのは間違いないと思うんだけどな…
今までは僕が守ってもらってばかりだったからこれからは僕が守るんだ!
じゃないとなんで体鍛えたか分からないよね。

ピンポーン

……だから夜遅くは迷惑でダメだと思うんだけどな…誰だろこんな遅くに……
ドアを開けるとますみ姉さんが立っていた。
「あれ?どうしたんです?ますみ姉さ……」
泣い…てる?ますみ姉さん泣いてる!え、なんで?何があったんだろ?
「ユ…ヒッ…君…わ…たし、ウッ…私ね…」
「とりあえず部屋に入ってください、何があったんですか?」
泣きじゃくるますみ姉さんを部屋に招き入れる僕。こんなの始めてみたよ。
……う!酒の匂いが…かなり飲んでるなこれは、やっぱり何かあったんだ、ますみ姉さん。
「何かあったんですか?ますみねえ…ムグッ!」
ドアを閉めたらいきなり…キスされた。え、ええ?何で?



ん…んん…んちゅ…チュチュッ…チュパッ…チュル…ジュル…んん!

し、舌が…ますみ姉さんの舌が入って来て…ええ!あ、あそこを触ってきた!う、うわ!気持ちいいよ…
ますみ姉さん、キスで僕に舌を絡めながら左手でズボンの上から僕のを触ってくる。
…はぁはぁ…気持ちいい…ますみ姉さん気持ちいいよ………けどダメだ!こんなのダメだよ!
「ますみ姉さん!どうしたんですか、止めて下さい!」
僕はますに姉さんを突き放した。だっていきなりだよ?こんなの絶対おかしいじゃないか!
絶対何かあったんだ…ますみ姉さんに何かあったんだ!
「……ゴメンね、ユウ君ゴメンね……」
「どうしたんです?何があったです!」
泣きじゃくるますみ姉さんを抱きしめて落ち着かせる。僕がいます…落ち着いてください…
しばらくすると落ち着いてきたみたい。僕に話しかけてきた。
「…ユウ君に謝らなきゃいけないの…ユウ君、私のこと好きでしょ?けど答える事できないの…」
いきなり交際断られた……ショックだ。けど僕とのことなんていい、大事なのはますみ姉さんなんだ!
「…何があったんですか。何かがあったんですよね?だからこんな事したんですよね?
だから僕と付き合えないって言ってるんですよね?何があったんですか、ますみ姉さん!」
きつく抱きしめながら問いただす僕。力になりたいんだ…好きな人の力に…
「私ね…前に一度だけ…好きになった人を騙して…抱いてもらったの。…お酒に酔ってた静馬さん騙したの!
彩の思い人って知りながら…友人の好きな人って知りながら…彩から奪い取るためにこのいやらしい体を使ってね!
彩を裏切ったのよ!私は最低な…汚い女なのよ!」
!!……正直ショックだった……ますみ姉さんがそんなことしたなんて……
「うふふ…私ね、どうしても静馬さん、手に入れたかったのよ…けど無理だった。彼、彩を選んだの…」
「……ますみ姉さん……」
「けどね、彩はね、許してくれたの…こんな汚い私を…親友だって言ってくれたの!この裏切った私を!」
ますみ姉さんまた涙流してる…
「だから私、静馬さんあきらめたの…あきらめたはずなの!」
ますみ姉さんも僕を力いっぱい抱きしめてきた…つらいんだろうな…
「たった1回だけだったのよ?私が抱いてもらえたの…1回だけだったのに…」
ますみ姉さん震えてきた…そんなにつらいんだ…抱きしめる事しかできないのがもどかしいよ…
「ふふふ…笑っちゃうでしょ?好きな人にたった1回抱いてもらっただけで……妊娠して…その好きな人の子供を
生む事もできずに流産して…殺してしまうなんて!」
に、妊娠?………流産?……頭の中が真っ白…だ……
「あの子が生きてたの…たった1ヶ月よ?私のお腹に1ヶ月しか生きれなかったの!
あの人の…静馬さんの子供、私が殺したのよ!かなえ先輩はしかたないって言ってくれたけど、私が汚い事しなければ…
私になんて宿らなければ、死ななくてすんだのよ!」
ま、ますみ…ねえ…さん…
「最近まで静馬さんをまだ諦められずに好きだって思ってたの…けど違ったの。静馬さんを想う事は…生まれる事の
出来なかったあの子への償い…あの子を忘れないためだったのよ!」
ますみ姉さん…僕を離した…あれ?いつのまにか…僕…抱きしめるの辞めてた…
「ふふ…私、すごく汚いでしょ?汚れてるでしょ?…ユウ君のこと好きだけど…愛してるけど、こんな私ときれいな…
凄くきれいなユウ君、付き合えないよ……けどね、こんな汚れた私でもユウ君の性欲処理には使えるよ?」
ほほ笑みながら僕のアソコを触ってきた…こんな笑顔見たくないよ…
「ユウ君…遠慮しなくていいよ?どうせ汚れてるから気にしなくていいよ?」
ベルトを外そうとするますみ姉さん……僕はそんなますみ姉さんを……

突き飛ばして逃げ出したんだ……最低だ僕って……何が力になりたいだよ……


「ここらに来るのも久しぶりだな。…若いころはよく静馬と2人で来てたんだよ」
繁華街のネオンを眺めながら隣の最愛の人に話しかける。少し前まで同僚の静馬とよく来ていた。
そう、2人で風俗に。あの頃はお互いに寂しい独り身だったんだよ…今はお互いに恋人がいるけどな。
「な〜に若い頃とか言ってるの?直樹まだ27でしょ?まだまだ若いわよ」
腕をギュッと抱きしめてくれる…俺、お前の事好きなんだけど…ホントに好きなんだけど、けどなぁ…
「いや、そんなに若くない。…だから回数減らしてくれない?2日に一度とか…せめて一日1回に…」
そう、こいつは一日に何度も求めてくる…何をだって?そんなのSEXに決まってるだろ!
「却下。直樹に選択権ないわよ。こんな素敵な女性を置いて逃げようとするなんて…3日よ?
直樹分かってる?3日も抱いてもらえなかったのよ?どれだけあたしが心配したか…
直樹に何かあったんじゃないかって…夜も眠れなかったわ」
…そう、俺逃げちゃったんだ。いや、逃げてるつもりはなかったんだ……静馬と男2人で温泉に
浸かりに行っただけなんだよ。お互い恋人の事で相談したい事あったし、何より体を休めたかったんだ。
お互い恋人に言ったら絶対について来るからと内緒にしてたんだけど…バレた。
「心配させたのは謝るけど、一応書置き残してただろ?何で逃げた事になってるんだ?」
「……男2人で温泉なんて、絶対に浮気するつもりだったんでしょ!それとも、何?
あたしだけじゃ物足りなくなって、静馬先輩に手を出すつもりだったの?」
……かなえ、浮気するつもりなんてないよ。ただ…俺の息子にも休みが必要なんだよ!
毎日最低3回はキツイぞ!分かってくれ…っていうか俺はホモじゃねえよ!
「そんなに怒るなよ…美味しいもの食ったろ?機嫌直してくれ……なんだ?喧嘩か?」
路地裏から男達の怒鳴り声が聞こえる……懐かしいねぇこの感じ。
俺もよくやってたなぁ…高校時代は無敵だったもんな。
「直樹、喧嘩なんて無視して…3日分出して…抱いてもらうわよ?」
……喧嘩は止めなきゃダメだよね?……うまいこと軽い怪我をして治療に行かなきゃな。
3日分って10回ぐらいはヤラされる……池田直樹27才。俺、まだ死にたくないんだよ…
「そうはいかんだろ?池田道場の息子としては無駄な暴力は止めなきゃな」
「でも、直樹……あ、ほら出てきたわよ?もう終わったんじゃないの、喧嘩」
う……ホントだ。出てきやがった。今時の若者っぽいのがゾロゾロと出てきやがった。
何人かやられてるな。何対何だったんだろ?気になるな。
「ちょっと…なんで路地裏に入ってくの?あたしはいいけど……直樹もやる気ね。分かったわ、コンドーム買ってくるね」
………え?なんでそうなるんだ?ちょっとあいつ等の喧嘩相手の様子を見たいだけなんだけど?
もしかしたら大怪我してるかもしれないし…ここでするわけじゃないですよ、分かってますか、辻原かなえさん?
……分かってなかった。かなえ、ダッシュでゴム買いに行った…あいつ体育会系なんだよな。
ダッシュでコンドームを買いに行く23才・女……それでいいのか?


「うっわ〜、ボロボロだな……お?コイツ1人か?1人であの人数とやったのか…やるなぁ、コイツ。
けど、負けちゃダメだろ。喧嘩はどんな手を使ってでも勝たないとな」
そう、どんな手を使っても勝つ。それが本来の池田道場の教えだ。
最近オヤジは子供に空手を教えたりいい人ぶってるがとんでもない!
あのおっさんほど恐ろしいやつはいない。町でいきがってるガキ共相手に稽古だとよく喧嘩をやらされたもんだ。
この間もオヤジのせいでとんでもない目にあったしな。なんで風俗行ったことバラすんだよ!
おかげで静馬は彩ちゃんに粛清されたし、俺は……女の気持ちが分かってしまうこと…されちゃった…
今度お返しに行かないとな……静馬の野郎は8年前に奥歯とアバラ3本折られてからビビってるし、俺1人でやるか…
けど最近稽古してないからキビシイか…久しぶりに稽古行くかな?
…そういえば最近、ますみちゃんの後輩が道場に来てるらしいな。先輩として稽古つけてやるかな。
「……う…うう…グホッ、ゲホッ…」
お?気がついたみたいだな…こりゃ結構ひどいな…左のコブシ、折れてんじゃねえか?
「おい、大丈夫か?生きてるか?」
軽く頬を叩いて意識の確認をする。う〜ん、ダメだなこりゃ。病院行きだな。
「お待たせ直樹!コンドームと…後、縛りに使うかなと思ってスポーツタオルと包帯買って来たよ!」
……まあ何にせよタオルと包帯を買ってきたのは結果オーライだな。
「かなえ、両方貸せ」
袋を奪い取る俺。とりあえず応急の手当てをしてやらないとな。
「えっ?今日はあたしが縛られるの?」
両手を頬に当てイヤイヤって恥ずかしがるかなえ。……あれぇ?目の前に怪我人いるのにそっちに考えいっちゃうの?
「……状況を見てくれない?怪我人がいるんだよ?」
チッと舌打ちするかなえ。……コイツを病院に連れて行ったら俺がとんでもない事、ヤラれそうだな……
「あれっ?この子どこかで見た事が……」
……は?かなえの知り合いか?なら仕返ししてこないとな。……さっきの奴ら何処行った?
「………ああ!君、綾崎君でしょ?ますみの後輩の綾崎湧一君!」
「え?コイツが今、道場に来てるって子か?」
なんだ、この喧嘩ってケンカ稽古だったのか。なら負けたコイツが悪い。
「間違いないわ!この子よ、ますみに写真見せてもらった事あるわ。……けど、ますみの話ではおとなしくて
とても優しい子って話だったのに…なんで喧嘩なんてしたのかしら?」
多分オヤジにそそのかされたんだよ。可哀相にな…また1人、健全な青年が道を踏み外したか…
「……こ…ろせよ……ぼ…くを…ころ…せ…」
おいおい、なんか物騒な事言ってるぞ?
「ま…すみ…ね…さん…ゴ…メン…」
「ねぇ、綾崎君!ますみがどうしたの?」
かなえ、後輩の面倒見はいいんだよな。さすが体育会系だな。
「……に……しん……り……ざ……にげ……」
かなえの耳元で綾崎って子が呟いてる。
「………直樹、今晩のエッチはパスよ。綾崎君を手当てしてあげて…あたしは用事が出来たから、後で電話するわ」
かなえはそう言い残して走ってどこかへ行ってしまった。
こいつどうしよう?とりあえずケンカ稽古でこうなったんだろうし…道場に連れて行って手当てしてやるか。


(…ここ…どこなの?…私、確か……ユウ君に…見捨てられて…お酒を大量に飲んで…睡眠薬を…)
目が覚めると知らない天井が……私、死んだ?……死ねたのかしら…ここは天国?…いや…地獄よね…
「ますみ…起きたようね」
この声、先輩?…あっ、ここは……先輩の部屋だ。……死ねなかったんだ…私。
「ますみ…歯を食いしばりなさい。……このバカ!」
バキッ!頬に走る衝撃…グーで殴られた…口の中が血の味がする…
「あんた…死んでどうするの!死のうなんて…あたしが許さない!絶対に許さない!」
先輩……抱きしめてくれた。私が汚いって知りながら、抱きしめて……センパイ…先輩!
「…う…うう…セ…パイ…ヒッ…わ…たし…も…イヤ…なんです…ツラいんです!」
先輩の胸で泣きじゃくる私。…2度目ね、先輩にこうして胸を貸してもらうのは…

「……ますみ、少しは落ち着いた?…バカ、なんで相談しないのよ…何の為の先輩だと思ってるのよ…」
優しく頭を撫でてくれる先輩…ありがとうございます、先輩。
「……先輩、なんで私のところに?」
そう、先輩が来なければ私は死んで…死ねてたはず。
「……綾崎君に聞いたの。彼ね、町で大喧嘩して…怪我してるわ」
え?ユウ君が喧嘩?…怪我したって…
「ユウ君大丈夫なんですか!怪我ってどのくらいの怪我なんですか!」
なんで、何故なの?優しいユウ君が喧嘩なんて野蛮な事を…
「怪我は軽い打撲と左手の中指骨折。後、歯が何本か折れたみたいね」
……大怪我じゃない!……私のせい…よね。私がユウ君に迫ったからよね。
…好きな人に一度だけでも抱いてほしかったから…思い出が欲しかったから…愛した人のぬくもりが欲しかったから…
なんてバカなんだろ、私。私のせいでユウ君が……
「彼ね、あたし達が見つけた時、もうボロボロだったの…けどねますみ。あなたに謝ってたわ…逃げ出してゴメンってね」
……ユウ君……
「あの事、彼に話したんだね。…ますみ、あれはあなたのせいじゃないわ。自分のせいにしたい気持ち分かるけど…
綾崎君の気持ちも受け取ってあげて…」
「…私のせいです…私が変なことしなければ…きっとあの子は彩と静馬さんの子供として…」
…そう、私が親友を裏切ろうとしなければ…静馬さんを騙して抱いてもらわなければ…
……え?綾崎君の気持ちって?何?なんなの?
「先輩、ユウ君の気持ちって…なんなんですか?」
「あの子、結構ヤンチャ坊主なのね。直樹の実家の道場で治療したんだけど、意識を取り戻した後にあなたと静馬先輩のこと
直樹に聞いて『ますみ姉さんを傷つけた静馬って奴を許せない!僕が敵を取る』って息巻いてたらしいわよ」
…え?ま、まさかユウ君がそんな事言うわけ…私のために言ってくれる訳ないじゃない。…先輩、からかってるんですか?
「あと少しで始まるんじゃないかな?…決闘が」
「?…決闘って?…なんなんですか、先輩?」
「決まってるでしょ?綾崎君と静馬先輩の決闘よ。さ、あなたも早く準備しなさい。じゃないと間に合わないわよ」
……えええ!ユウ君が静馬さんと決闘?何故そんなことになるのよ!
「せ、先輩!なんでそうなってるんです?訳が分かりません!」
「そんなこと行けば分かるわよ。あたしも電話で聞いただけだから何故そうなったかは、よく分からないんだけど…
あなたの為に綾崎君、体張るんだから応援しないとね」
私のため?……ユウ君が私の為に静馬さんと……何故?こんな汚い、汚れてる私なんかの為に…何故なの?ユウ君…
「ほら、さっさとお風呂入って準備しなさい!彩が迎えに来るから」
……ええええ!彩も決闘の事知ってるの?何故止めないの、この人達は!
信じられない展開に呆然とする私。そんな私に先輩ニッコリとほほ笑みながら話してきた。
「ねぇ、ますみ?…あたし早く準備しろって、言ったわよね……2回も言ったわよね?」
……せ、先輩?……コ、コワイ…その笑顔怖いです…
「わ、分かりました!お風呂お借りします、先輩!」
慌ててシャワーを浴びる私。先輩の迫力に嫌な事が頭から吹き飛んだわ。
……そっか、今のワザとしてくれたんだ……ありがとうございます、先輩。……また涙が出てきたわ。

…シャワーから出ると遅いと頭に拳骨落とされた。
…先輩、決闘を早く見たいだけだったんですね。………涙、返してください。

僕が目を覚ますと布団で寝ていた。頭がズキズキする。体中も痛い。
(…ここ、どこだろ…うっ、体中が痛い…そっか、自棄になって僕、初めてケンカをしたんだ…)
そして負けて…うう、ますみ姉さんゴメン……なんであんなひどい事したんだ?ますみ姉さん辛そうだったのに…
僕が強くなろうとしたのはますみ姉さんを守る為だったのに…僕って最低だ…最低な男だ!
昨日の事を思い出したら涙が止らない…僕はますみ姉さんを傷つけた。守りたい人を傷つけたんだ!
「わっはっは!綾崎君、ケンカに負けたぐらいで泣いてどうする?よしっ、一つワシが見本を見せてやろう。
早速今晩あたり行こうか、綾崎君」
か、館長?なんでここに?ってよく見ればここって…道場じゃないか!…なんで僕、道場にいるんだ?
「そもそもケンカとは負けたと思った時が負けなのだよ。だからワシなんて今だ負けなし!わっはっは!」
僕の肩をバンバン叩きながら笑う館長。
「こら、くそオヤジ!いたいけな青年を悪の道に誘うな!…テメェには俺がそのうち黒星を付けてやるよ」
…誰、この人?オヤジって言ったよね?…あ、館長の息子さんか!
「始めまして、綾崎君。俺の名前は池田直樹、いちおうこのクソ館長の息子だ。
で、ボコボコにやられた君を、ここに連れて来て手当てしたのも俺だったりする」
え?そうだったんだ。
「ありがとうございます、池田さん!」
「苗字だとくそオヤジとややこしくなるから名前でいいよ。あとココでの先輩だから『さん』じゃなくて『先輩』な」
気さくな人なんだ。さすが館長の息子さんだな。
「で、なんで無茶なケンカなんてしたんだ?…聞いた話によると君はおとなしくて優しい子って話だが…
あんな人数相手にケンカするなんて…無茶が過ぎるぞ?」
「…………」
……あんな情けない理由なんて…話せないよ。
「だんまりか。……一応ますみちゃんに報告しなきゃいけないと思うから話してもらいたいんだがな…」
…えっ?ますみ姉さんを知ってるんですか?
「直樹先輩、ますみ姉さんと知り合いなんですか?」
「ああ、知ってるよ。俺の女…かなえの後輩だ。よく一緒に遊んだりもするよ」
…かなえ?…ますみ姉さんが言ってたあの事を知ってる先輩…だよね。じゃ、直樹先輩も聞いてるのかな?
「…先輩はますみ姉さんのこと、どのくらい聞いてるんですか…僕、昨日ますみ姉さんに聞いて…ショックで…
自棄になってケンカしたんです」

「あ〜、あれな。確かにショックだよな。静馬って一応は俺のツレなんだよな。まぁ酔っ払ってたとはいえ…
やっちゃいかんよな」
…直樹先輩、妊娠のこと知らないんだ…
「そうか…お前ますみちゃんが好きなんだな。それでケンカしたんだろ?けどお前、やる相手間違ってるぞ?
どうせやるなら静馬だろうが」
……え?なんでそうなるんですか?
「な、直樹先輩?なんで静馬さんなんですか?だって静馬さん、酔っ払っているとこをますみ姉さんに…」
「まぁ確かにそうだが静馬に捨てられ傷ついたのには違いないだろ?ならお前がやる相手は静馬なんだよ」
……確かにそうかもしれないけど、でも……
「綾崎君、事情はよく分からんが君の好きな人が静馬君に傷つけられたんだろ?なら敵を討たずにどうする?」
館長まで…
「短い間だが君を見ていて感じたことがある。君は素直で優しい男だ。それはそれで素晴らしいんだが…
残念なことに君には絶対的に足りないものがある……それは男としての強さ、だよ」
「…男としての強さ、ですか?」
なんなんだ?その強さって…
「自然界では強いオスにしかメスはよって来ない。分かるかな、綾崎君。
その子が君じゃなく静馬君に引かれたのは……君が弱いからだよ」
!……う、うう……
「弱い者にはメスは来ない…自然の摂理だよ。しかしな、綾崎君。人間は動物じゃないんだ。
肉体的強さだけじゃなく…精神的な強さ、というのもある。君が見せなくてはならないのは精神的な強さじゃないかな?」
…そうだ、僕は心が弱い…だからますみ姉さんが傷ついていたのに…助けることが出来なくて…恐くなって逃げ出したんだ。
……強くなりたい。好きな人を……ますみ姉さんを守れるような…何があっても優しく抱き締めることが出来るような…
強い男になりたい!こんなに強くなりたいと思ったのは初めてだ!
「館長、直樹先輩…有難うございます!僕…強くなります!強くなって…ますみ姉さんを…好きな人を守ります!」
さっきまで感じていた心の中のモヤモヤが一気に吹き飛んだ気がする。
「よく言った!では早速静馬君に挑戦だな。直樹、手配をしなさい」
…え?
「分かってるよ。彩ちゃんから言ってもらえばあいつは断れないだろうからな」
…ええ?
「早めがいいだろうから今日の午後三時でどうかな?場所はここを使えばいいからな。なぁに気にするな綾崎君。わっはっは!」
…えええ?
「彩ちゃんのOK出たぞ。ますみちゃんの為の決闘だって言ったら大喜びだったぞ」
…ええええ?
「そうか、よくやった直樹よ。よしっ、綾崎君。決闘まで時間があるから身を清めてきなさい。
…それに最後になるかもしれないから挨拶したい人にはしておきなさい」
…えええええ?
僕の意志に関係なく決まった静馬さんとの決闘。けど僕はますみ姉さんを守る強い男になるために戦うことにした。
静馬さん…たとえ悪気がなくても、ますみ姉さんを傷つけたことは…許さない!
お風呂に浸かりながら気合いを入れた僕。初めてますみ姉さんのために戦う…不思議と恐くない。
ますみ姉さん…僕はもう二度と逃げません!


「綾崎君、はっきり言って静馬は強いぞ?今の君ではまず勝てない…しかしますみちゃんの為に強い君を見せないとダメだ。
……好きな人の為だ、出来るな?」
……直樹先輩。急に決められた話だからかなり戸惑ったりもしたけど…ますみ姉さんのために…
好きな人を守れるくらい強くなるために…静馬さんと戦います!
「直樹先輩、相手の強さなんて関係ないんです。どんな理由があろうとも、ますみ姉さんを傷つけた人は許せません。
それに…僕が、弱い僕自身に打ち勝つために戦うんです!」
僕の言葉に頷く直樹先輩。
「よく言った!頑張れよ綾崎君!……アイツちょっと顔がいいからって飲みに行ったらモテやがるんだよ。
プロレスオタクのくせに生意気だろ?前から一度殴ってやろうかと考えてたけど…アイツ強いんだよなぁ。
だから迂闊に手を出せないんだよ。ほら、殴られるのってイヤじゃん?だからさ、俺の分までぶん殴れよ、綾崎君!」
………ハイ?な、なんですか?今の言葉は?ま、まさか、直樹先輩…静馬さんと決闘させるのは
僕のためじゃなくて…モテナイ男のジェラシー?
そ、そんなことないよね?うん、僕の考えすぎだよね…
そんな僕の後ろで館長が嬉しそうに歌を口ずさんでいる。
「決闘、決闘、楽しいな〜顎を砕いて〜目を潰す〜!鼓膜も破いて一丁上がり〜!」
……そんな物騒な歌、歌わないでくださいよ…
「あっ、大事な事言うの忘れてた。ますみちゃんも見に来るぞ。かなえが連れてくるって言ってた。
惚れた女にカッコイイとこ見せろよ!」
ますみ姉さん、来てくれるんだ…一体どんな顔して会えばいいんだ?辛そうなますみ姉さんを見捨てたのに……
…ありのままの僕を見てもらおう。それしかないよね。今は弱虫な僕だけど…いつか必ず強い男になる!
…ますみ姉さん!見ていてください!
「決闘、決闘、楽しいな〜鼻を潰して〜玉潰す〜!前歯をへし折り一丁上がり〜!」
………館長、その歌2番もあったんですね……


「彩…私あなたに隠していた事あるの…先輩とユウ君にしか話してない秘密…あなたには聞いてほしいの」
私がシャワーを浴びている間に迎えにきてくれた彩に、全てを打ち明けることにした…
……今日で全てを清算しよう。生めなかった…私のせいで生きれなかったあの子の事……全部話そう。
嫌われるならそれでもいい。もう隠す事に耐えられない…彩、今までありがとう。あなたは私の本当の親友だったわ…
「……それって綾崎が急に拓にぃと戦うって言いだしたのと関係あるの?」
「……あると思うわ。ユウ君には昨日話したの……あの子優しいから私の為に静馬さんと……」
……ユウ君、私の為に静馬さんと決闘するってホントかな?…だったらうれしいな…
……もしかしたらユウ君、まだ私のこと……嫌いになってないのかな?…けど無理よね?綺麗なユウ君に汚い私が……
「彩、車の鍵貸しなさい。…2人とも、車で待ってるから。落ち着いたら来なさいね」
かなえ先輩、気を使ってくれて有り難うございます。……彩、私のこと許してくれるかな……
「……彩、私ね……静馬さんと…したあとにね……実はね………妊娠したの」
……彩の顔を見れない……目を瞑りながら彩に告白する私。
「……静馬さんとした1ヶ月後にね…急に体の調子がおかしくなって検査してもらったの……嫌な予感はあったんだ。
……生理遅れてたしね。検査の結果は………流産だったの。すぐ入院して…手術したわ。
ゴメンネ、静馬さんの子供…私が殺したの。私のせいで死んじゃったの…私が静馬さんを騙さなければ…
汚い事して抱いてもらわなければ……あなたの子供として生まれてたのにね……ほんとバカよね、私って……」
……これで彩にも嫌われたなぁ……残念だなぁ…せっかく親友になれたと思ったのになぁ。
ふふっ、私が汚い事したせいよね。…自業自得よね。彩、ゴメンね。謝って済む話じゃないけど……ゴメンね、彩……
「……ますみ……この大バカヤロ〜!」
バシンッ!………頬に走る衝撃…ぶたれたんだ。…そうよね、許してもらおうなんて、考え甘いわよね……
「あんたねぇ、アタシをバカにしてんの?…なんでもっと早く言ってくれないの?…あんたがなにか悩んでる事知ってた…
もしかしたらって考えてた…先輩に聞いても教えてくれなかったけど、多分そうじゃないかなと思ってた…
あんたが生みたいならアタシ、拓にぃから身を引こうと思ってたんだよ?でもお腹全然大きくならないから考えすぎかなって
思ってた。……流産してるなんて…思わなかった。……なんで、1人で我慢するの?…アタシ、あんたの親友でしょ?
あんたの力になりたいのよ…なんでアタシを頼ってくれないのよ!」
………え?う…そよね?私が妊娠してるかもって思いながら…私と付き合って…友達でいてくれたの?
親友でいてくれたの?……何故なの?彩、何故私なんかに…
「彩…何故そんなに優しいの?…こんな私に…汚い私に……」
バシッ!……また叩かれた。……?彩、泣いてるの?
「なんでそんな事言うの?あんたを汚いとか言う奴いたら…アタシが殺してやるわ!
あんたはアタシの親友なんだからね?…一生の親友なんだからね!」
…あ…やぁ…許して…くれるの?
「う、くぅ…ゴメンね…ゴメンねぇ、ヒック、あやぁ……わ、わたし…ヒッ…わたしぃ…」
涙が止らない…彩、涙が止らないの…あなたのせいよ…あなたのせいなんだから…その小さい胸、貸しなさいよ…
「あやぁ…あやぁぁ〜!う、うぇ……ヒック…あやぁぁ……」

……今まで悩んでたのがバカみたい……なんで私の周りにはこんなにいい人ばかりいてくれるの?
ちょっと…いや、かなりエッチな優しい先輩。少し…いや、かなり強気な優しい親友。
私…生きててよかった…私、生きてていいんだ!…生まれてこれなかったあの子には悪いけど、私……幸せだわ。

しばらくしてから二人で車で待つかなえ先輩のところに行ったの…仲良く拳骨落とされた。……え?なんでですか?
「あんた達、お・そ・い!もう始まっちゃうじゃないの!彩!さっさと運転しなさい!」
顔を見合わせる彩と私。…ぷっ、ぷぷっ…あっはははっ!
「なに笑ってるの!さっさと行くわよ!」
有り難うございます先輩!…先輩が少し涙目になってるのは…気づかないでおきますね。

池田さんの実家の道場に着いた私達が見たのは…倒れてて必死に立ち上がろうとしてるユウ君と、
息一つ乱してない静馬さんだった。


「君が綾崎君か。ホントはやりたくないんだけど、どうしてもやらなきゃいけないの?」
約束の時間の20分前、僕が戦う相手、ますみ姉さんを傷つけた男…静馬さんが来た。
Tシャツにジーパン、両手をポケットに入れている。なんてラフな格好なんだ。胴着を着てる僕がバカみたいじゃないか。
(この人がますみ姉さんを…知らなかったじゃ許せない、僕が許さない!)
「分かったよ、そんなに睨むなよ。相手してやるよ。決闘というぐらいだから手加減無しだぞ?
前にオレが彩にボコられてるところを見られてるけど、あれがオレの実力だって思ってたら大怪我するからな」
「静馬さん、あなたが知らなかったとはいえ、ますみ姉さんを傷つけた事は許せません。
あなたの強さなんて関係ないんです。僕の大事な…愛している人を傷つけた事、許すわけにはいきません!」
コイツのためにますみ姉さん、泣いていた。
コイツのためにますみ姉さん、ずっとつらい思いしてきた。
コイツのためにますみ姉さん、傷ついて……僕は、守れなかった。
怒りが込み上げてきた。ますみ姉さんを傷つけたコイツと……ますみ姉さんをその傷から守れなかった、自分の弱さに。
「静馬さん、あなたと戦って僕は強くなります。強くなって、ますみ姉さんを守ります!……静馬さん、勝負!」
静馬さん、まだポケットに両手を入れている。僕を舐めてるのか?ふざけるな!
食らえ!僕は一番自信のある右での正拳突きを顔面目掛け突き出した!……はずだった。
「ぐふぇっ!ぐほっ、げほっ!」
な、なんだ?何が起きたんだ?お、お腹が?みぞおちに…グホッゲホッ!
僕の正拳突きが届く前にみぞおちに衝撃が走った。何だ?何をされたんだ?
膝から崩れ落ちる僕。ま、前蹴りか?見えなかっ……グシャッ!
その嫌な音がした瞬間に頭に衝撃が走り、僕の意識は飛んだ。

「遅かったな、かなえ。もう始まってるぞ」
な、なぜユウ君が倒れてるの?血?血が出てるじゃない!
「ゴメン直樹、いろいろあってね。綾崎君倒れてるけど、どうなってるの?」
静馬さんがやったの?なんでこんな酷い事を…
「綾崎が先に右正拳突きを出したんだが、静馬の前蹴りを腹に食らって止められ、崩れたところを顔面に横蹴りってとこだ」
え?ユウ君、なぜ立とうとしてるの?もうそのまま立たないで!
「ますみ、落ち着いて!綾崎の気持ち、見てあげようよ!」
ユウ君に駆け寄ろうとする私を抱きしめて止める彩。離してよ!
「離して!離しなさい、彩!ユウ君が…このままだと、ユウ君が!」
ゴスッ!ゴスッ!
頭に走る衝撃。え?なんで殴られたの?彩も頭を押さえてる。
「ますみ!落ち着きなさい。せっかく綾崎君があなたの為に頑張ってるのに、あなたが取り乱してどうするの!」
「けど、かなえ先輩…私こんな事、望んでません!」
そう、なぜケンカなんてするの?私こんな事されても、嬉しくない!
「それより先輩…なんでアタシまで拳骨なんですか?」
頭を押さえて涙目の彩。先輩と初めて会った時にケンカを売ったとは思えない顔ね。
「あら、ゴメンね彩。ついやっちゃったのよ。あんた達仲いいんだからいいでしょ?……文句あんの?」
先輩もしかして騒がしいのが気に入らなかったのかな?
「おいおい、お前ら遊ぶのもその辺にしとけよ?綾崎立ち上がったぞ」
なぜ?そのまま寝てたら終わったのに…なぜ立ち上がるの、ユウ君?

(おいおい、あれ食らって普通立つか?いくら手加減したといってもまともに顔面へ入れたんだぞ?)
やっぱりあれか?ますみちゃんへの愛ってやつか?う〜ん、愛ってすげぇな。感動した。
おや?彩達来たのか。はぁ〜、彩にはオレが人を殴るところ見せたくなかったんだがな。
仕方ない、さっさと終わらせるか。悪いな綾崎君、君の気持ちを汲んであげたいけど、これからは本気だ。
怪我しても恨むなよ?……少し君が羨ましいよ。最愛の人の為に戦える…男冥利に尽きるよな。
その最愛の人が見てるんだ。頑張れよ、綾崎君。


(も、もうやめて……ユウ君これ以上立たないで!)
ユウ君、もう何回殴られたの?何回倒れたの?何回…立ち上がったんだろう…
もうユウ君が殴られるの見たくない!ユウ君が殴られる音、聞きたくない!
目を瞑り耳を塞ぐ私。もうイヤ!なんでユウ君、私なんかの為に……
「ますみ、ツライのは分かるけどしっかり見なさい!綾崎君あんなに頑張ってるのよ?」
先輩、分かってます!ユウ君が私の為に頑張ってる事、分かってます!けど私…もう見たくありません!
「ますみ…この決闘の理由、直樹に聞いたわ。綾崎君こう言ってたみたいよ。
『僕…強くなります!強くなって…ますみ姉さんを…好きな人を守ります!』ってね。
だからね、ますみ。しっかりと見てあげなさい。綾崎君が強くなるところを」
ユウ君…なぜ私なんかにそこまでしてくれるの?私がしたこと話したでしょ?知ってるでしょ?
ユウ君を見る。足元がおぼつかず、もう立っている事さえ辛そうだ。多分意識も無いはず。
ユウ君?何か話してる。何か呟いてる。呟きながら静馬さんへ向かっている。
「…ますみ…ねえさ…ん…どは…るんだ……僕…まも…んだ…好きな…ますみ…ねえさ…守るん…だ」
途切れ途切れに聞こえるユウ君の呟き。私のこと思ってくれてる。あんなにフラフラなのに私のこと想ってくれてる。
ユウ君の言葉が…この小さな呟きが私の心を洗い流し、私を満たしていく。
私、ユウ君のこと信じていいの?ユウ君のこと好きでいいの?ユウ君のこと…愛していいの?
私の心の中にあった流産したあの子への罪悪感。生きてる事への罪悪感が…全て消えた。
優しい先輩。優しい親友。そして……すごく優しくて、とっても強い最愛の人。ありがとう、私…もう大丈夫!
あなたたち3人のおかげで私、もう大丈夫だから!
駆け出す私。倒れる寸前のユウ君を抱きかかえて受け止める。もう我慢できないわ!
「ユウ君、ありがとう。私もう、大丈夫だから。私をこんな気持ちにさせた責任……取ってもらうわよ?」
キスする私。周りからは冷やかしの声が聞こえる。
「ユウ君、こんなに強くなったんだね。ユウ君…いえ、湧一さん。好きよ、愛してるわ」
湧一さんを強く抱きしめキスをする。…こんなに大きくなってたんだ。男の体になったんだ。
これからはこの大きな人に守ってもらえるんだ。
「ますみちゃん、ここまでやっちゃってゴメンな。こういう時はおめでとう、でいいのかな?」
静馬さん…肩で息をしてる。
「静馬さん、湧一さんとの決闘に付き合ってもらえてありがとうございます。けど……なんでここまでするんですか!」
怒りに任せて思い切り足を蹴り上げ、静馬さんを蹴る私。
『キーンッ!』
後で先輩がこういう音がした、って言ってたわ。
ゴメンね、彩。しばらく静馬さんの……使えないかも?
静馬さん両膝をつき、股間を押さえて青い顔してる。べ、別に狙ったわけじゃないわよ?偶然よ偶然!
「何やってんのよますみ!……あんたねぇ……」
あ、彩?やっぱり怒っちゃうわよね?
「甘いのよ!どどめを刺しなさい!」
そう言って静馬さんの顔面に蹴りを入れる。
「うわ!ヤクザキックだ…むごい…」
池田さんの呟きが聞こえる。どうでもいいわよそんなこと。それより早く湧一さんを手当てしないと…
「彩、私の部屋まで送ってくれるかな?湧一さんの治療したいの、手伝ってくれる?」
泡をふいてる静馬さんを捨てて、彩と二人で湧一さんを担いで道場を出る。
早く手当てしなくちゃ。彩の車に乗り込み改めて湧一さんの顔を見る私。
ここまで怪我するなんて…ここまで私の為に頑張ってくれたなんて…好き、愛してるわ!


「もういいぞ静馬、3人とも道場出て行ったぞ。しかしお前らホントに恋人か?ヤクザキックはないだろ?」
俺の言葉に立ち上がる静馬。
「ええ?静馬先輩、大丈夫なんですか!…はぁ〜、アカデミー賞なみの演技ですね」
平気な顔してる静馬に驚くかなえ。そりゃそうだよな。静馬、さっきまで泡ふいてたもんな。
「静馬先輩、ありがとうございました!おかげでますみ、立ち直る事が出来ました!」
かなえ、優しいよな。でもな、その優しさをたまには俺にもくれよ、頼むから。
「かなえちゃん、今回の件はオレじゃなく綾崎君が頑張ったからだよ。あいつ途中から意識がないのに向かってくるから
正直怖かったよ」
なに照れてんだよ、お前。
「はっはっは!静馬君の動揺した顔、面白かったぞ!いや〜愉快愉快!」
てめえは死ね!このクソ親父!
「しっかし静馬、お前途中で本気出したろ?酷い事するよな、お前も」
俺の言葉に笑う静馬。
「ははは!本気出さないとオレがやられてたよ。あいつ強いぞ?今度お前もやってみろよ」
「ごめんこうむる。ゾンビの相手なんてしたくない」
何回殴り倒され何回起き上がってきたんだ?ホントにゾンビだな、あいつは。
「いや〜愉快愉快!おい、お前ら!気分がいいから風俗行くぞ!直樹、お前がこの間行ったというイメクラとかいう店に
案内せい!今日はワシの奢りだ!」
マジ?愛してるぜクソ親父!
「……な・お・き?この間ってい・つ・の・こ・と?」
……かなえ、いたんだったな。ど、どどどどうしよ?
「2日前、温泉に行く前に行ったそうだぞ、かなえ君。イカンなぁかなえ君、しっかり満足させないとな。わっはっは!」
し、静馬助けて…ってお前なに泡ふいて倒れてるんだよ!それはもう終わっただろ!
「な・お・き、行きましょ?」
俺の手を引くかなえ。ど、どど何処へでしょうか?かなえ様?
「うふふ…も・ち・ろ・ん、天国よ」
ああ、地獄へですね…
「おお!静馬君見てみろ、修羅場だ修羅場!わっははははは!」
クソ親父〜!殺す!絶対に殺す!
「さっさと行くわよ直樹!」
俺の手を無理やり引いて道場を出るかなえ。付き合いだした頃に戻りたいよ……

綾崎よ…女は変わるぞ…気をつけろよ…

俺はこれから起きる試練を想像しながら後輩の幸せを祈った。

「じゃ帰るわね、ますみ。はぁ〜、まったくあんたには付き合ってらんないわ!」
車で部屋まで送ってくれた彩は、何故か怒っている。どうしたの彩?
「人の車の中で、ちゅっちゅ、ちゅっちゅと…ウルサイのよ!」
もう!盗み聞きなんていやらしいわよ、彩。
「……ねえ、ますみ?こんな時に聞くのもなんだけど…あのこと、拓にぃに話していいのかな?」
……そうよね。静馬さん知らないのよね。けど……
「いいえ、話さなくていいわ。だって…静馬さんが彩と別れた後、私に来られても困るしね。
今の私には湧一さんがいるから…」
静馬さんはやさしいから責任を感じて、私に償いをするって言ってくるわ。
ヘタをしたら彩と別れるって言いかねないしね。そんな事になるの、イヤだもの。
「なんで別れること前提で話してんのよ!ああ見えてもアタシ達ってラブラブなんだよ?そんな事ありえないわ!」
ふふっ、ゴメンね、彩。……あの事で冗談を言えるなんて…これも全部湧一さんのおかげね。
「じゃ、帰るわ。……ますみ、おめでとう、お酒が元で別れないこと祈ってるわね」
余計なお世話よ、彩。
「今日は本当にありがとう。静馬さんにもよろしく言ってね」
手を振り車に乗り込み帰って行く彩。ホントにありがとう。
さてと、湧一さんの手当てをしなくちゃね。
この全ての怪我が私のための怪我…うれしい…
湧一さん……私のこの気持ち、どうしてくれるの?


(…ここ、どこだろ…うっ、体中が痛い…)
目が覚めると知らないベットで寝ていた。僕、なんでこんな所で寝てるんだ?
「あっ、湧一さん目が覚めたのね?気分はどう?」
あっ、ますみ姉さん!あれ?なんでますみ姉さんが?
「ますみ姉さん、ここってどこですか?なんで僕寝てたんですか?」
「ふふっ、ここは私の部屋よ。なぜ寝てたかは思い出してね?ところで夕御飯、食べれるかな?
湧一さんが食べれそうな物作ったんだけど、一緒に食べてくれる?」
ええ!ますみ姉さんが……御飯作ったの?あのますみ姉さんが?
「は、はい!喜んでいただきます!…あれ?ますみ姉さん、湧一さんってなんなんですか?」
なんで急に僕の名前言い出すんだ?
「うふふ…なぜ寝てたか思い出したら教えてあげるね。さ、御飯食べましょ?私、昔と違って腕上げたのよ」
確かに料理の腕は上がっていた。っていうか僕より上手くなってる?信じられない!
砂糖と塩を必ず間違えてたますみ姉さんはどこへ行ったんだ?
御飯はとても美味しくてビックリした。ただ静馬さんに殴られたところが痛くて、あまり味わえなかった。
体もあまり動かせない。…殴られたところ?ああ!思い出した!僕、静馬さんと決闘してたんだ!
「ますみ姉さん!僕と静馬さんとの決闘はどうなったんですか?」
やっぱり最初にやられたのであっさり終わったんだろうな。はぁ、情けないよ。
なにが『強くなって…ますみ姉さんを…好きな人を守ります!』だよ。
「やっと思い出したのね、湧一さん」
僕の手を握り、話しかけてくるますみ姉さん。
「私、静馬さんとの決闘見ていたの。強くなったのね、湧一さん。…責任取ってよね?」
ますみ姉さん見てたんだ。見ててくれたんだ。強くなったって…僕、少しは食い下がったのかな?責任ってなんだろ?
「ますみ姉さん、責任ってなんですか?」
「どうしてくれるの?湧一さんを見てるだけで…胸がドキドキするの。あなたといるだけで幸せなの。
ずっとあなたと一緒にいたいの。私をこんな風にした責任……取ってくれるわよね?」
僕の手を握るますみ姉さんの手にギュッと力が入った。ええ!それってまさか……
「ふふっ、一度は付き合えないって言っちゃったけど…アレはなかった事にしてくれるかな?」
優しくほほ笑むますみ姉さん。ああ、僕の大好きな笑顔だ。僕の大好きな、ますみ姉さんの笑顔だ!
「私、あなたのことが…綾崎湧一さんのことが…」
「待ってください!ここからは…僕に言わせて下さい!」
ずっと言いたかったんだ。大好きなますみ姉さんに言いたかったんだ!
昔の僕は臆病で弱くてそんな勇気なかった…けど、今は違う!
「森永ますみさん。昔から…ずっと前からあなたの事が…ますみさんの事が…好きです、愛してます!
僕と……お付き合いして頂けませんか!」
ますみさんからの返事は……大人のキスだった。


「ん…ちゅ…んふ…ちゅ…ちゅぱ…好き…んふ、好きよ…ちゅちゅ…湧一さん、愛してる…ちゅる…」
僕の唇を割って入ってきたますみさんの舌はやわらかかった。
一緒に入ってきた唾液は甘くておいしい感じがした。
僕も夢中で舌を絡める…ああ、ますみさんとキスしてるんだ。好きな人とキスしてるんだ!
「ぷはっ!…はぁはぁはぁ…ねぇ湧一さん…ベット行こう?はしたないけど…我慢できないの。
あなたのせいなんだから…責任取ってよね?」
僕の手を引きベットに歩くますみさん。けど僕、体が…
「ゴ、ゴメンなさい。僕、体があまり動かせなくて…」
情けない。やっぱり僕は情けないよ。こんな時に体が動かないなんて…
「うふふ…今日は湧一さん、ベットに寝てるだけでいいから。だから…ね?」
え?ど、どういうこと?寝てるだけって?
ベットに押し倒される僕。馬乗りになるますみさん。え?ええ?
「湧一さんは私の為に頑張ってくれた。だから今度は私の番。2回目だからヘタかもしれないけど…我慢してね?」
僕の返事を聞かずにキスしてくるますみさん。
!!手、手が!ますみさんの手が!僕のズボンの中に!
「好き…好きよ湧一さん。愛してる湧一さん…ん、ちゅ…ちゅちゅ…」
あ、ああ…ますみさん…気持ちいいよますみさん…

(ああ…湧一さん。好きよ、愛してるわ!)
湧一さんの口の中に舌を入れる。唇、舌、歯茎、唾液…湧一さんの全てを味わう。
(私の為にこんなになって…愛してる!)
上着を脱がせ、決闘の時についたあざに軽くキスをする。
ちゅっ、ちゅちゅっ、ちゅっ…
(あ、湧一さんの乳首ってカワイイ…クスッ、乳首まできれいなんだ…)
胸の小さな突起に唇を当て軽く啄ばむ。
「ひゃ!ま、まますみさん!そ、そこは…」
ふふ、ここ弱いんだ。ちゅっ、はむっ…
「うひゃぅ!」
うふふ…感じてくれてるんだ。右胸のはどうなんだろ?ペロッ、はむっ、ちゅ、ちゅちゅ…
「だ、だめです…う、ううぁ!」
こっちも気持ちいいんだね。じゃ、両方同時にしちゃおっと。
右手と舌で両方の乳首を攻めてみる。ぺろっ、ちゅちゅ、ちゅぱっ…じゅるっ…
「はぁはぁ、ゆういひさん…ちゅちゅ、どう…ちゅる、きもちひい?」
「う…うぁぁ…くぅ!」
私の問いかけに答えられないみたい。そんなに気持ちいいんだ…気持ちよくなってくれてるんだ…うれしい…
空いてる左手でアソコを撫でようとしたら、凄く大きくなっていた。
「ふぁ?ここ凄いことになってるね…すごく大きくなってるね…」
ズボンを脱がす私。!!こ、こんなに大きくなったんだ…昔見たときとは全然違うわね、大人になったんだ。
静馬さんぐらいあるんじゃないのかな?
「あ…ますみさん、恥ずかしいです。あまり見ないでください…」
うふふ、湧一さん、まるで女の子みたい。…熱い、凄く熱くなってる。湧一さんのをゆっくりと…優しくさする私。
「うふふ…すごく熱くなってるね。ちゅ、ちゅる…じゅる、じゅぽっ!」
(かなえ先輩に聞いていたことが役に立つ日が来るなんて…夢にも思わなかったわ)
ジュッポ…ジュッポ…ジュッポ…ジュル…ちゅば!レロ…ペロペロ…ジュッポ…ジュッポ…ジュッポ…
湧一さんのを口に咥えて先輩に教えてもらった通りに攻める私。
上目遣いで湧一さんの様子を見たら…ふふ、気持ちいいんだ。目を瞑って我慢してるわ。
「湧一さん、我慢してるんだ。…私はもう我慢できないの、私の中で気持ちよくなってね?今日は大丈夫な日だから」
全ての服を脱ぎ捨てる私。あ、私…濡れてるわ。好きな人にエッチな事して、気持ちよくなったんだ。
かなえ先輩の気持ち、分かるなぁ。彩もこうなのかな?
「いっぱい…いっぱい気持ちよくなってね?入れるよ?…んっ、んあ!」
ズ、ズズ…ジュプッ…ジュププ…ジュポッ!
「あ…入った…湧一さんが私の中に…熱い、凄く熱いの…ああ!」
好きな人を受け入れる事ができたことに…愛した人と一つになれたことで感じてしまった私。
(あっ、んんっ…SEXって、こんなに気持ちよかったんだ…ん、好きな人とするのって、凄いんだ…)

私の中の湧一さんを感じながら涙を流す私。愛してるわ、湧一さん。


(う、ああ…ぼ、僕のが…ますみさんに入ってる…僕、ますみさんとSEXしてるんだ…)
初めて感じる感触にすぐにでもイッテしまいそうだ。
(ああ…凄い、凄く気持ちいいよ…くぅ、も、もうダメだ…)
ますみさんに入っただけなのに、もう限界をむかえた僕。
「ま、ますみさん!僕、もうダメです!出ちゃいます!」
「いっぱい…いっぱい出して!私に出して!湧一さん!」
うあ、で、出ちゃう、もう、ダメ……ドピュ!ビピュ!ビュビュ!……
(あ、ああ…はぁはぁ…ああ、出ちゃったよ。ますみさんに出しちゃったんだ)
凄かった…ますみさんの中って、凄かった!これがSEXなのか。前にいづみさんとしたのとは比べ物にならないよ!
好きです、ますみさん…泣いてる?ますみさんが泣いてる?何で泣いてるんですか!
「ますみさん、なんで泣いてるんですか?僕のせいですか?」
つながったまま僕に倒れてくるますみさん。なにしてるんだ、僕は!ますみさんを、好きな人をまた悲しませたのか!
「そう、あなたのせいよ。私をこんな気持ちにしたあなたのせいなんだから…嬉しいの。
あなたが私を愛してくれるのが…嬉しいの。私で感じてくれたのが嬉しいのよ…」
ますみさん…こんな僕なんかをそこまで思ってくれるなんて…
「だから…ね?もう一度…いいかな?」
その言葉に元気を取り戻す僕自身。こんなこと言われて黙ったいたら男じゃないよね?
「あっ、すご…大きく、んっ…じゃ、動くね?湧一さん」
ズッチュ、ズッチュ、ズッチュ、ズッチュ…
ますみさんが動くたびにいやらしい音が響く。これがSEXしてる音なんだ。
グッチュ、グッチュ、グッチュ、グッチュ…
ますみさんが動くたびに大きな胸が揺れる…凄い光景だ。思わず手が伸びる。
「やっ、んん!ああ、湧一さん。胸、んん!き、気持ちいい!はぁはぁ、んん!もっと…あ、触って、いいよ」
右手で胸を揉む。凄い!いづみさんとは比べ物にならない!先端の小さな突起を触る。
ますみさんの体が少し跳ねた。ここ、気持ちいいんだ。僕と一緒だ。
いつまでも寝たままでますみさんに動いてもらうなんていられない!僕はつながったまま腹筋を使って起き上がり、
あぐらをかいた僕の上にますみさんを抱きかかえる形になる。
「好きです。ますみさん愛してます」
囁きキスをする。
グチュ、グチュ、グチュ、グチュ…
「あ、あ、あ…わ、わた、私も…んん!す、好き…」
グッチャ、グッチャ、グッチャ、グッチャ…
大好きな胸に顔を埋め先端の突起を口に含む。さっきのお返しだ。
「やっ、んん!ゆう…ああ、ダメ、んん!」
夢中で舐めて吸い、そして噛む。
グチュ、グチュ、グチュ、グチュ、グチュ…
「あ、あ、あ、湧一さん、もう、もう、わた、わたし…ああ!」
「ぼ、僕もダメです!また、また出ちゃいます!」
グチュグチュグチョグチュグチョグチョグチュ…
「あ、んくぁ!ゆう…、もうダメェ〜!あ、あああぁ!」
「ますみさんで、出ます!出ちゃいます!」
ビュピュ!ピュピュ!ドピュ!ドプ!…
「あ…ああ…また湧一さんが…私の中に…あああ…」
ますみさんとつながったまま倒れこむ僕。
あぁ…ますみさん、愛してます。


目が覚めたら朝になっていた。僕はそのまま眠ったみたいだ。あれ、ますみさんがいない?
まさか昨日の事って…夢だったの?
「あ、やっと起きたわね。湧一さん、朝ごはん出来てますよ」
玄関から入ってきたますみさん。手にはコンビニの袋がぶら下がってる、買い物に行ってたんだ。
やっぱり昨日の事は夢じゃなかったんだ!
「あ、ありがとうございます!」
テーブルを見るとトーストに目玉焼き、サラダが置いてある。
僕のために作ってくれたのか、嬉しくて泣きそうになる。
「ゴメンなさいね。牛乳がないから買いに行ってたの。…心配した?」
僕の首に両手を回し、軽く抱きかかえるようにして聞いてきたますみさん。
「心配したって言うか、昨日の事が夢だったんじゃないかって…不安になりました」
正直に話す僕。目の前にますみさんの顔があるから心臓が早くなる。
「うふふ、湧一さんらしいわ。愛してる…チュッ」
軽いキスをしてくれた。うお〜!これぞまさしく恋人同士ってやつだよね!嬉しくて涙が出そうだ!
「湧一さん、今日は一緒に病院に行きましょうね。湧一さんボロボロだからね」
そうなんだ、僕、ボロボロなんだ。左手は折れてるだろうし、歯も何本か折れてる。
アバラも何本かいってるだろうし…こんな状態でよく昨日ますみさんとできたなぁ。
2人で食べた朝ごはんはこの間食べたイタ飯よりおいしく感じた。
そして午前中に病院に行くために部屋を出た。午後は2人でゆっくりしたいからだ。
これからは2人で出かけれるんだ!ますみさんは僕の恋人なんだ!

病院への道を歩きながらスキップしたくなる僕。そんな僕達の前に、あの人が現れた。


(あ〜あ、暇だなぁ。なにか面白い事ないかなぁ〜、ってピュア君発見!お?隣にいるのは巨乳ちゃん?
ってことはアタシの恋のキューピット大成功じゃないの?)
講義の時間までの暇つぶし…お金がないからブラブラしてたら面白いもの発見!
なんとあの童貞ピュア君が巨乳ちゃん連れて歩いてる!これってアタシのおかげよね?
なんていい人なんでしょ!よっ、かわいいよ!いづみさん!まるで天使みたいだよ!
…って、あれ?なんでそんな天使のようなかわいくて優しい、とてもいい人のアタシに結果の報告ないわけ?
普通はフランス料理御馳走します!ぐらいの電話しなくちゃダメだろ?使えねぇ〜な、童貞は。
ま、いっか。暇だし今聞いちゃえばいいんだ。
「お〜い!童貞ピュアボ〜イ!」
あっはっは!大きな声で呼んでやったら慌ててやんの!ホント面白い子だねぇ。
「なに大きな声で変な事叫んでるんですか!怒りますよ、いづみさん!」
「なによ、それがセックスフレンドにいう言葉?あれは遊びだったのね、シクシク……まぁ私は遊びだったけど」
どう、今のギャグ!面白い?面白いと感じたら頭おかしいから早く病院に行ってね。
「なに言ってるんですか!ただの友達でしょ!」
なに慌ててんのよ、ってよく考えたら巨乳ちゃんいたんだよね。全部聞かれちゃったね。
あちゃ〜、ゴメンねピュア君。でもね、わざとなのよ。私、今すっごく暇なの。
でもこれでいい暇つぶしに……う、巨乳ちゃんすっごい睨んでる、なんか怖い。
「今の言葉…どういう意味なんでしょうか?佐藤いづみさん」
なに、この迫力は!怖いじゃないのよ!
「それよりあんた達付き合う事になったの?おめでとう!よかったじゃんピュア君!」
「あ、有り難うございます!おかげでますみさんと恋人同士になれました!」
「それより2人共さっきの言葉の意味を教えてほしいんだけど?」
誤魔化し失敗!この子怒ったら怖いんじゃないの?失敗したなぁ。
「まぁそんなに怒らないの。眉間にシワが出来ちゃうよ?セックスフレンドっていうのは嘘よ。
ただ一回だけエッチなことしただけよ。ピュア君があたしで5回出しちゃっただけ、そんなに怒らないでよ」
『修・羅・場!修・羅・場!修・羅・場!』
アタシの耳には全国の負け犬共の修羅場コールが聞こえるわ。どうなるんだろ?ワクワク。
「湧一さん、ホントにしたの?答えて!」
おお!巨乳ちゃん攻めるねぇ。さあどう出るピュア君!ワクワク!
「……確かにいづみさんとは一度エッチなことしました。けど、そのおかげでいづみさんとも友達になれたし、
そのいづみさんの力を借りたおかげで、ますみさんと恋人になれたんです。
いづみさんとのことは…ちょっと強引にされちゃったけど、後悔してません」
………ピュア君、なんかカッコいいじゃないの。男らしい感じがするね。
隣の芝生が青く見えるってのはこういうことかな?なんか違う気がするけど。
失敗した〜!童貞貰っておけばよかった〜!こんないい男だったなんて…いづみさん一生の不覚!
「……湧一さんがそう言うのなら仕方ないわね。けど、次なんてないわよ?」
「分かってます。僕にはますみさん以外の女の人なんて興味ないですから。愛してます、ますみさん」
「湧一さん…私も愛してるわ!…チュッ」
なにこれ?嫌がらせ?新手のイジメ?なんでアタシがこんなラブシーンを見せ付けられなきゃならないの?
っていうかここって普通の道端だよ?なんで堂々と抱き合ってキスしてんの?
しばらくキスをしていた二人はアタシに頭を下げ、手を取り合って歩いていった。

……なにこれ?まるでアタシが負け犬みたいじゃない、なんでこうなるのよ〜!


「全治3週間、大怪我だったのね。こんなに凄い怪我してまで私の為に…ありがとう、湧一さん」
病院での診察の結果は全治3週間。ビックリした。診察の結果を聞いてからのほうが体中が痛いような気がする。
この怪我じゃしばらく道場に行けないので館長に電話報告したら豪快に笑われた。
「ぐわっはっはっはっ!そうかそうか!その程度で済んだか!よかったなぁ綾崎君!
早く怪我を治して次は勝ちなさい。な〜に、ワシが静馬君に勝てるように鍛えてやる!わっはっはっ!」
館長、次なんてないですよ。ありませんからね!あの人は絶対に楽しんでるだけだよ…
気を失ってた僕を車で運んでくれた彩さんにもお礼の電話をしたんだ。
「あんた分かってるよね?アタシからますみを奪い取ったんだよ?だからもし泣かすような事したら…殺すからね」
冗談に聞こえないのが彩さんらしいよね。……冗談、だよね?
直樹先輩には連絡がつかなかった。ますみさんもかなえ先輩に連絡つかないって言ってた。なにしてんだろあの2人?
こっちに引っ越してきていろんな人に助けてもらい、ついにますみさんと恋人同士になる事ができた。
最初はお酒でますみさんに勝たなきゃならないって聞いて泣きそうになったけど、今はいい思い出だ。
あれ?そういえば昨日今日と、お酒飲んでるとこ見てないぞ?どうしたんだろ?
「ますみさん、今日はまだお酒飲んでませんよね?どうしたんですか?」
夕御飯を作ってくれてるますみさんに聞いてみた。
「もう、私をアルコール中毒みたいに言わないでよ。…湧一さんが私を酔わせるから飲まなくていいのよ」
嬉しいような恥ずかしいような。なんだか変な感じ…顔、赤くなっちゃったよ。
「さ、出来たわ。湧一さん、冷蔵庫から飲み物出してくれる?」
なんかこうしてると僕達って結婚してるみたいだよね。嬉しくなってきた。足取り軽く冷蔵庫に飲み物を取りに行く僕。
………ビールしか入ってない。気のせいかな?一度閉めて再度開けてみる。……やっぱりビールだけだ。
「あのー、ビールしか入ってないんですけど?」
まさか…彩さんが言ってた『ますみはアルコールで水分を取る』って、ホントだったの?
「そうよ、だってビールって麦茶みたいなものでしょ?同じ麦からできてるしね」
そうなのか…って違うでしょ!
「お酒飲まなくていいって言ってたじゃないですか!」「え?お酒でしょ?飲んでないわよ」
まさか…ますみさんの中ではビールはお酒じゃないの?
「へんな湧一さん。さ、御飯食べましょ?もうお腹ペッコペコなの」
そう言ってほほ笑むますみさん。今気づいた。コンロの横にビールの缶が置いてある。まさか飲みながら作ってたの?
「ますみさん!今日からはビールもアルコールです!飲みすぎ禁止です!」
僕の言葉に驚くますみさん。僕のほうが驚きですよ!
「なんでそんなこと言うの?ビールなんてお茶みたいなものよ」
「ダメったらダメです!今のままじゃ体壊しますよ?だからダメです!」
「ええ〜!どうしてもダメなの?」
首を少し傾げて不安そうな瞳で聞いてくるますみさん。う、かわいい…でも
「ダメです!いくら可愛くしてもダメな物はダメ!」「せめてこれだけは許して、お願い!」
指を3本立てながらお願いしてくるますみさん。3本か…まぁ妥当なとこかな?
「それ以上はダメですよ?ホント体壊しちゃいますからね!」「分かったわ。…はぁ〜、3リットルかぁ…少ないなぁ」
………はい?リットル?今確かにリットルって言ったよね?
「3本です!3リットルじゃありません!」
僕の言葉にまるで死刑を宣告されたような顔になるますみさん。…女の子がそんな顔しちゃダメだと思うよ。
「なんでなの!そんなの横暴よ!」「ダメです!許しません!」
「ひどいわ…私のこと嫌いなの?なぜこんな意地悪するの?」
「好きだからこそです!ますみさんに体を壊してほしくないんですよ」
「湧一さん……分かったわ。その代わり口が寂しくなったらどうすればいいの?」
「う、それは」「あ、そうだ。こうする事にするわ」
…ちゅっ、ちゅちゅ…
「ふぅ、すっきりしたわ。さ、食べましょ?」
そう言って冷蔵庫から冷えたビールを取り出すますみさん。さっきのキスはなんだったの?

今、僕の目の前にいる女性、森永ますみは僕の隣の住人であり、初恋の人であり、僕の初めての恋人である。

そして彼女はお酒が強い…そう『彼女は酒豪』なんだ。

……酒豪にも程があると思うよ?お酒は控えめにしようね、ますみさん。


   
   彼女は××  終 わ り