「覚えてろ!」
そう言って、鼻血を出しながら去っていく男を見て、金井浩太は呟いた。
「・・・へっ、てめーみてえなヘタレ、覚えてられねーよ」
男とは数分前に目が合ったという理由で、ケンカになっただけの間柄。名前も知らない
ので、覚えてろと言われても、覚え様が無かった。

「タバコ、タバコ・・・ちっ、切れてやがる」
浩太は自動販売機までいき、愛煙している銘柄のタバコを買う。今年十七歳になった
ばかりだが、浩太の喫煙歴はすでに二年に及び、地元では一端のワルで通っていた。

「いちち・・・唇がしみるな」
紫煙をくゆらせていると、先ほどのケンカで自分も案外、怪我を負っている事に気がつ
いた。大事に至るものは無いが、結構あちこちが痛むのである。相手だって必死だ。怪
我ぐらいするさと浩太がうそぶいたその時である。

「浩太君?あなた、浩太君じゃないの?」
薄暗い路地裏に居る浩太に向かって、誰かが声をかけてきたのだ。
「誰だ?」
表通りの明かりが逆光になって見づらいが、自分の名を呼ぶのはどうやら女性らしい。
しかし、ここは夜の盛り場。自分を知るような女性はいない筈だった。

「やっぱり浩太君。あら、あなた・・・タバコなんか吸って、どういうつもり?」
女性がツカツカと歩み寄って来たかと思うと、なんと浩太は身構える間も無く頬を打たれ
た。咥えていたタバコは吹き飛び、浩太は惨めにも尻餅をつく。

「いてえ!何しやがる!」
「子供のくせに、タバコなんて吸っちゃ駄目よ」
女性は浩太の前で腕を組み、仁王立ちになった。年は三十そこらで、白いスーツが良く
似合う素敵な淑女である。

「私の事、分かる?浩太君」
「あ、あんた・・・篤志のママ?」
「そうよ。ちょっと見ない間に、ずいぶんやさぐれたわね、浩太君」
それは、小学校時代の友人の母親だった。名前は思い出せないが、子供時分に良くし
てもらった記憶がある。

「あ、あの・・・これは、何と言ったらいいのか」
「まず立ちなさい。お話はそれからよ」
女性は浩太に手を差し伸べ、微笑んだ。母性に溢れた素晴らしい笑顔だった。
「いきなり打ってごめんなさい。でもね、子供が悪い事してたら、大人は怒るのが当然だ
と思ってるの、私」
「いや、別に・・・篤志のママ・・・おばさんが悪い訳じゃないよ」
ジーンと痺れる頬に手を当て、浩太ははにかんだ。そう言えば、こんな風に叱られたの
は久しぶりだった。

「どうしてこんな時間に、こんな所にいるの?」
「どうしてかなあ、ハハハ・・・」
他の誰かに同じ事を問われれば、うるせえと一喝して終わりである。しかし、浩太は彼女
に対し、曖昧な笑顔で誤魔化そうとしている。出来れば穏便に、とでも言うように。

「笑ってないで、ちゃんと答えなさい」
「は、はい!実は俺、夜遊びする予定でしたので・・・」
「予定、じゃなくって、もう夜遊びになってるじゃないの!これをごらんなさい。もう十一時よ、
十一時!」
腕時計を指差し、迫り来る友達の母親に怯む浩太。これでも一応、この辺では名も顔も知
れる不良なのだが、今は随分と精彩を欠いていた。

「お家に帰らないと、家族が心配するでしょう?ホラ、携帯貸してあげるから、連絡しなさい」
「あ、俺んち、今、誰も居ないんで・・・」
これは、嘘では無かった。浩太の母は幼い頃に父と離婚し、遠い仙台の街に住んでいる。
年に一、二度、便りは来るものの、顔を会わせてはいなかった。

「誰も居ないって、どういう事?」
「俺んとこ、オヤジとママ・・・母さんが離婚しちゃって、家にはだーれも居ないんです。俺が
悪さをするようになってから、オヤジは単身赴任で大阪に行っちゃったし」
「行っちゃったし・・・って、じゃあ今はお母様と住んでるのね?」
「ううん。母さんにはもう八年も会ってないかな。たまに手紙は来るけど、再婚したらしいから
会うのも・・・ね?」
浩太は悲しい身の上を、なるべく楽しそうに語った。そうしないと、やってられなかった。

「そう・・・なの。ごめんなさい。立ち入った事、聞いちゃって」
「いいんだ、もう古い話しだし」
「じゃあ、一人住まいなのね、浩太君」
「うん。オヤジの仕送りはあるけど、基本的にはガソリンスタンドのバイトが本職かな。
一応、高校には籍があるけど、ほとんど行ってないし」
「一人身かあ・・・私と同じね」
ふふ、と女性が笑った。少し、自嘲気味である。

「え?おばさん・・・篤志は?」
「実はね、私も離婚しちゃって・・・へへ、篤志はダンナの方に取られてね。まあ、一ヶ月
に一度は会ってるから、浩太君よりはマシかも」
「そうかあ・・・おばさんもか」
二人は黙り込んでしまった。同じような境遇にあるために、相手へかけてやる言葉が見
つからないのだ。

「ねえ、浩太君。お腹へってない?」
「実はペコペコで・・・夕飯食べてないんだ。バイト終わって、パンかじったくらいで」
「だったら、うちへ来ない?私も夕食まだなのよ」
女性が浩太の手を取った。母親が子供とするような、手の繋ぎ方だった。
「簡単な物だけど、すぐに作るから」
「おばさんの手料理か。いいなあ」
「決まりね。じゃあ、ついてきて」
こうして、夜の盛り場に不釣合いなカップルが誕生した。もっとも、それは傍目から見る
と、親子か年の離れた姉弟ぐらいにしか見えなかった。

「さあ、入って。狭いけどね」
盛り場から歩いて五分、小さなアパートの一室へ浩太は招かれた。表札を見ると平松
紀香とある。名字が友達のと違うのは、離婚して旧姓に戻ったからだろう。

(紀香さんか、いい名前だな。でも、名前じゃ呼べないよな)
かつての友達の母親を名前で呼ぶには、さすがの浩太も抵抗感がある。しかし、ずっと
おばさん呼ばわりでもおかしくはないだろうか。紀香は、おばさんと呼ぶには若々しく、
また美しい女性なのだ。

「ねえ、おばさん。俺、おばさんの事、何て呼んだらいい?」
「なあに、あらたまって」
「だって、おばさんって呼びづらいんだもの・・・お姉さんって呼ぼうか?」
「アハハ!ちょっと、やめてよ。私、お姉さんって年じゃないわ」
「じゃあ、紀香さんって呼ぶ?」
「それも恥ずかしいなあ・・・若いツバメ、飼ってるみたいで」

そう言う紀香だが、満更ではなさそうである。しかし、さすがに名前呼ばわりには、彼女
も肌に合わぬ物があるのか、くすぐったそうな顔をした。すると、浩太は意を決したような
顔で、
「・・・だったら、ママって呼んでいいかな?」
などと言うのである。

「ママ?」
「そう、ママ」
「ママ・・・かあ」

紀香はスーツの上着を脱ぎながら呟いた。実際の所、それが一番、ふさわしい呼び名の
ような気がするのは、彼女も同じだった。
「いいわよ、うふふ」
「そう?良かった、ありがとう、ママ」
浩太が飛び跳ねんばかりに喜ぶので、紀香は不思議がった。だが、すぐにその理由が
分かった。

(そういえば、この子・・・小さい時に、ママと別れてるんだっけ)
紀香自身、子供と生活を別にしているので、その辛さが良く分かる。更に浩太の場合、物
心がつく以前に、母親と別れているのだ。おそらく母性に飢えているのだろう、紀香を見つ
める眼差しが、赤子のように無邪気なのである。

「そうと決まればママ、早く夕食を作ってね」
「あ、そうね。分かったわ、すぐ作るわね・・・うふふ、良い子で待ってるのよ」
子供に食事の用意を急かされる。そんな事が、紀香には嬉しかった。離れて分かった大
切な絆──親子で紡ぐ当たり前の日常が戻って来たような気がして、心が弾むのだ。
「着替えるから、ちょっと向こうを向いててくれる?」
「あ、ごめん」
小さな六畳一間のアパートに、着替えのための別室は無い。紀香は押入れを兼ねたクロ
ーゼットから部屋着を取り出し、仕事着を脱いでいった。

「浩太君はカレー、好き?実は今夜のメニュー、それにしようと思ってたんだけど」
「うん、大好きさ。それと、俺の事は呼び捨てで良いよ、ママ」
「分かったわ、浩太・・・」

僅かな会話の後、衣擦れの音が部屋の中に静寂を作った。紀香はシャツを脱ぎ、スカー
トも脱いだ。いつもならここでシャワーを浴びるために、生まれたままの姿になるのだが、
今日は来客があるので、部屋着を選択する。と、その時、紀香はクローゼットの扉に設え
られた鏡に、自分の下着姿を忍び見る浩太が映っている事に気がついた。

(まあ、浩太ったら・・・)
肩越しにチラチラと見ているのは、おそらく肉付きの良いヒップであろう。そこは、年頃の
少年であれば気になる場所に決まっている。もっとも、親子ほど年の差があるので、紀
香の方にはやや気後れが芽生える。何といっても、相手は息子と同い年の少年なのだ。

「なあに、浩太。そんなにママのお尻が気になるのかしら?」
「あっ!い、いや、別に・・・」
戒められた浩太は、無意識の内に懐からタバコを取り出した。先ほど、紀香から窘められ
た事を忘れているのか、震える手でライターを持っている。
「あら、タバコは駄目よ。さっき、私に怒られた事、忘れたの?」
「ああ、そうだったね、ママ・・・うっかりしてた」
浩太は慌ててタバコを握り締め、ゴミ箱へ投げ込んだ。すると──
「そんなに見たければ、見ても良いのよ・・・」
と、紀香は半裸のまま振り返り、浩太の頬を両手で優しく包むのであった。

「マ、ママ・・・」
「ママのお尻、見たいんでしょう?そんな顔、してたわよ」
この質問に、浩太は無言で頷いた。そして、目に涙をためて言うのである。

「俺・・・俺、ママが家から出てって・・・寂しかったんだ。ずっと・・・本当だよ」
「分かるわ。だから、甘えていいのよ、浩太」
「ママ・・・」
もう、紀香は友達の母親ではない。自分のママなのだ。そう思った時、浩太は紀香を
静かに押し倒していた。作り物ではない本物の畳の上に寝転ぶと、紀香はうつ伏せに
なり、
「さあ、ママのお尻を好きにしなさい」
と、顔を赤らめながら、囁いたのである。

「ああ、ママのお尻だ・・・なんて柔らかいんだろう」
むっちりとしたヒップを包む白いパンティに、浩太は頬擦りをした。桃をそのまま大きく
したような形のお尻は、その小さな下着の縫い目をはち切らせんばかりに、肉をたゆ
ませている。言わば、浩太は極上の枕に頭を乗せているも同然だった。

「うふふ、くすぐったいわ、浩太。鼻をお尻の割れ目にあてがうのはやめて」
「好きにしなさいって言ったじゃないか、ママ。俺はやめないぜ」
「匂いを嗅がれるのが、恥ずかしいのよ・・・アーンッ・・・」
やめてと言われてかえって昂ぶらせてしまったのか、浩太は鼻をパンティに出来た
桃尻の割れ目にくぐらせた。こうすると、ママは恥ずかしがると知り、調子付いている
のだ。

「ああ、いい匂いだ、ママ・・・でも、変態っぽいな、俺」
ママのそこはたまらなく官能的な香りに溢れていた。浩太はそれを胸一杯に吸い込み、
鼻腔を刺激した。熟した女が下半身にこもらせる香りは、十七歳の少年をめくるめく性本
能の深淵へ引きずり込み、男へと成長させようとしている。

「イヤーン・・・変な事言うと、許さないわよ」
「許さないって、どうするんだい?ママ」
「こうするのよ、エイッ!」
紀香は足をばたつかせ、浩太を拒むように蹴った。もっとも、力を込められてはいないの
で、浩太にしてみれば痛くも痒くもない。どちらかと言えば、誘っているようなものだった。

「イテテ。蹴らないでよ、ママ」
「うふん・・・ママにこんなイタズラをする子には、おしおきが必要かもね」
紀香は今度は仰向けになり、腹筋を使って半身を起こした。そして、浩太の下半身に手を
伸ばす。
「あっ、ママ」
「いやだわ、こんなに硬くして・・・」

グリグリと揉み込むように、紀香の手が浩太の若茎をまさぐった。ズボン越しだが、勃起中
のそれは中々の物だという事が分かる。
「ああ、ママ・・・駄目だよ、そんなにしちゃ」
「ママのお尻の匂いを嗅いで、ここを大きくするなんて、悪い子ね。さあ、罰を与えてあげる
から、ズボンとパンツを脱ぐのよ」
そう命ぜられ、浩太はズボンごとパンツを脱いだ。すると、若さに物を言わせた一物が、天
を突かんばかりに反り返りながら、その正体を現したのである。

「あっ!や、やだあ・・・こんなに大きくしちゃって・・・」
とは言いつつも、紀香の手はしっかりと若茎を握っている。目元をほんのりと赤らめ、
恥らってはいるが、浩太の持ち物をきちんと見定めているのだ。

「ママ、ちょっと擦ってよ」
「もう、お汁が先っちょから出てる・・・やっぱり、若いのね」
順手で若茎を擦り始める紀香。まだ二、三擦りしかしていないが、若茎を握る手は
すぐに粘液でぬるんでしまった。少年の精である。反応も早い。

「気持ち良い。自分でするのより、ずっと」
「ねえ、浩太。あなた、週に何回くらい、自分でしてるの?」
紀香の目が、好奇心に輝いている。この若茎を、少年が己で慰めるという事を、その
口から聞き出したかったのだ。

「大体、週に五回くらいかな」
「それって、多いの?少ないの?」
「普通じゃないかなあ。ところで、ママはどうなの?週に何回くらいするの?」
「いやねえ、女にそんな事を聞くなんて」
「ママだって俺の事、聞いたじゃないか。ずるいよ」
「うふふ・・・週に一回か二回ね、よくやっても」
「本当に?」
「ええ。女は後始末が面倒だからね。お風呂でこう、クチュ、クチュと・・・」

紀香は空いてる手を使い、いつのまにか大きなシミの出来た、パンティのクロッチ部
分を擦った。しかも、こうするのよと言わんばかりに、指で最も敏感な場所をこねく
りまわすのである。

「ママ、すっごくパンティが濡れてるね。なんで?」
「これが欲しいからよ、フフフ・・・」
紀香はそう言って、若茎をぱくりと肉厚な唇で咥え込んだ。そして、頬をすぼめ肉傘を
じゅるっと吸い上げた。

「うっ!マ、ママ・・・」
「ん、んちゅッ・・・浩太のチンポ汁、ママに飲ませて」
「ああ、駄目だよ、そんなに吸っちゃあ・・・ああ・・・」
浩太はひくひくと尻穴をすぼめ、情けなくその場にくず折れた。紀香はそのまま咥えた
若茎を離さず、宝玉袋をやんわりと揉んだ。

「ここに・・チュッ・・・あるのは・・・じゅるッ・・全部、ママのものよ」
ぷりっと張りのある宝玉袋を手の上で転がされ、浩太は唸った。おまけに若茎もいや
らしく吸い上げられ、もうすぐ音を上げそうになっている。
「ああ、ママ!出そう!あッ、で、出るよ!」
「いいのよ、出しなさい。ママが飲んであげるから」
「そんな!ママにこんなもの、飲ませる訳には・・・ううッ!」

紀香は若茎への愛撫を手淫に変え、唇は肉傘をすっぽりと包むようにした。これで準
備は万端。放たれる子種は、一滴たりとも逃す事はない。
「出る!ああ、ママ!」
若茎に精痛が走った。塊のような、濃い精液が怒涛のように流れていくのが、浩太にも
分かる。凄まじい快感だった。

「ああ・・・ママ」
己の意思とは無関係に出て行く子種を、紀香はごくごくと飲んでいる。肉傘にぴったりと
口をつけ、ただのひとしずくも零さずに、だ。その様子を見て、浩太は感動すら覚えた。
通常、よほどの思いが無ければ、精飲などしてはくれまい。紀香のある種、献身的な姿
はまさに、幼い日々に浩太がなくした母性そのものだったのである。

「ふうーッ・・・美味しかった・・・たっぷりで、濃くて・・・」
紀香はやっと肉傘から顔を離したかと思うと、口元から流れる白濁した粘液を指で掬って
舐めた。そして、さも美味そうに頬を緩めるのである。
「ママ・・・俺、感激だよ。精子飲んでくれるなんて」
「ふふッ、可愛い浩太のなんだもの、まだまだ飲み足りないわ。でも──」
「でも?」
「次は、下のお口で飲みたいのよ、ウフフ」

そう言うと紀香は自らパンティを脱ぎ、部屋の片隅へ放り投げた。そして、いまだに衰えを
見せぬ浩太の若茎を逆手に掴み、またがろうとするのであった。