「買いすぎたかなあ。こんなにたくさん、二人じゃあ食べきれないかもね」
 それぞれに買い物袋を手にしながら、健介と麻里子はスーパーを出た。同じ大学のゼミに所属する彼らだが、つき合いはじめて数ヶ月になる。もう周囲にも、公認のカップルとして認められている関係だった。
 一緒に、健介が住むアパートの階段をトントンと上がっていく。
「あれ?」
 そんな声をもらしたのは、健介だった。
「どうしたの?」
 彼の肩越しに、通路の先を確認する。廊下の突き当たり、一番奥が健介の部屋だ。
 そのドアに寄りかかるように立っている、ジャケットにジーンズ姿の人影。
「あ……」
 彼らに気づいてこちらを向むいた顔は、彼らより幾つか年下――高校生くらいだろうか? 軽く額にかかる髪に縁取られた、凛々しい感じに整った顔つき。
「薫、来てたのか?」
 驚いたように口にしてから、背後で戸惑っている麻里子に気づく。健介は軽く頭を掻きながら、説明するように言った。
「紹介するな。俺の妹の、薫っていうんだ。薫、彼女は鈴木麻里子さん」
「妹って……えっ、女の子?」
 つい、そんなふうに洩らしてしまい、麻里子は慌てて手で口を押さえた。彼女は薫のことを、可愛らしい顔をした少年だと思っていたのだ。
「はじめまして。ボク、薫と言います」
 だが、麻里子のそんな勘違いを、健介は責めることもできなかった。
 短く揃えた髪型と、シャープな感じの輪郭。軽く頭を下げる少女は、確かに一見したところは男の子──ただし美少年という表現が一番似合う、そんな外観の持ち主だったのだ。

 買いすぎたと思っていた食料も、人数が予定より一人多くなったせいで綺麗に無くなった。
 三人でテーブルを囲みながら、食後のお茶を飲む。
「お前なあ、来るなら来るで、連絡くらい入れてからにしろよ」
「すみません、兄さん。ちょっと、近くに用事があって。それで寄ってみたんです」
 ぼやく健介に、薫は素直に頭を下げて応える。
 落ち着いた風の、わりとハスキーな声。『ボク』という一人称は、この少女には妙に似合っていて。それがますます麻里子に、薫のことを少年のように感じさせていた。
 とはいえ、彼女が女の子らしくないかといえば、そんなことは全くなかった。
 わずかにつり目がちな瞳を飾る睫毛は長く綺麗で、紅く色づいた唇も魅力的だ。ジャケットを脱いだ今は、シャツを押し上げる胸の膨らみが、確かに女性らしい柔らかなラインを主張していた。
「彼女さんとの時間を邪魔するつもりはなかったんですが……」
「あ、ううん。そんな、気にしないでね」
 思わず薫のことを見とれてしまっていた麻里子だったが、話しかけられハッとする。申し訳なさそうに言う少女に軽く首を振ってみせると、床に置かれたクッションから立ち上がった。
「それじゃあ、私、洗い物したら帰るね」
「え、そんな……」
 情け無さそうな表情を浮かべる健介だったが、確かにこの状況では無理に引き留めることもできない。
「あ、洗い物くらい、ボクがやりますよ。料理、ごちそうになりましたし」
「そう? じゃあ、お願いしちゃおうかな」
 彼氏の妹に笑顔で頼むと、麻里子はカバンを手にして玄関に向かう。そんな彼女の背中を見て残念そうなため息をつくと、健介は仕方なく、麻里子を駅まで送るために腰を上げた。


「……ただいまぁ」
「お帰りなさい、兄さん。早かったですね」
 ちょうど食器を洗い終わったのだろう。手をタオルで拭きながら、薫が彼を迎えた。
「お前はどうするんだ。あんまり遅くなると、母さん心配するだろう」
「そうですね。でも、さっき兄さんのところにきていると電話しておきましたから、多分大丈夫だと思いますよ」
 少女の返事を聞きながら、健介は靴を脱ぎ、部屋の奥へと向かおうとする。
 ――と、彼の背中にそっと触れる手の平の感触を感じて、健介は足を止めた。
「申し訳有りません、兄さん。麻里子さん、本当は泊まっていく予定だったんじゃあない
んですか?」
「まあ、な。でも、気にしなくていいよ。また明日も、大学で会うし」
「そうですか……」
 シャツの上を、薫の手がそっとなぞるように移動し、彼の身体の前へとまわされていく。
「薫……」
「麻里子さん、美人ですね。長くて綺麗な髪をしていて……スタイルもいいし」
 彼の妹が、背に身体を押しあてるように、寄り添っている。背に、彼女の体温と、柔らかな肢体の感触が伝わってきた。
「薫、なにやってるんだよ」
 たしなめるように、口ではそう言ったが、健介の声にはほとんど力というものが感じられなかった。

「残念ですよね、麻里子さんが帰ってしまって。折角、これから身体を重ねようとしていたのに」
「な……お前っ」
 妹の発言を叱ろうとする健介。が、彼はそれ以上言葉を続けることができなかった。
 背中から抱きしめるように彼の身体に回された薫の手が、衣服の隙間から入り込む。その掌が直接に、健介の胸元と、そして下半身をなぞりはじめたのだ。
「大丈夫。ボクが、責任とりますよ。兄さんに、満足してもらえるように頑張ります」
 兄の耳朶に熱い吐息を吹きかけるように、薫は耳元でささやく。
「そんな、俺は……」
 なんとかこの状況を否定しようとする健介だったが、彼の中心は若者らしい率直さで少女に反応していた。服の上から柔らかく撫でられたその部分は、下着の中で徐々に体積を増していく。
「兄さんのココは、ボクのことを期待してるみたいですよ?」
 嬉しそうに、そして淫らな喜びの温度を籠めた声でそう言うと、薫は兄をそっと促し、部屋の奥へと押しやる。
 呑まれたように反抗もできない彼をベッドに腰掛けさせると、自らは床に跪く。兄の脚の間に身体をもぐり込ませながら、少女はベルトに指をかけた。
「失礼します」
 バックルが立てるカチャカチャという小さな音が、この部屋ではやけに卑猥な響きに感じられた。
 ほっそりと長い指は、やはり薫が少女であるということを改めて感じさせる。そんな白い指が布地をかき分け、健介の猛りきったモノに絡みついたとき、彼は思わずのどの奥でうめき声を上げそうになった。
 ひんやりとした軟らかな手が、熱を持った彼の肉槍を、窮屈な下着の中から開放した。

「……兄さん、こんなに大きい……」
 抑圧から飛び出してきた、グロテスクに起立した男の性欲の象徴を、しかし薫はうっとりとした吐息で迎えた。
「熱くて、張り詰めて……痛そうです」
 ドクドクと脈打ち張り詰めた肉棒を、まるで癒そうとするように、少女の手がその表面をゆるゆると撫でさする。
 両の手を兄の起立に添えながら、薫は上目づかいに健介の顔を見上げた。
「ボクが、楽にしてあげますね」
 そっと、ほとんど恭しいともいえる仕草で、少女はピンク色の唇を膨張しきった亀頭の先端に寄せていった。
 健介の視線の先で、己の亀頭と、まだ少女である妹の口唇とが距離を詰めていき、
「ん……ちゅ」
 湿った、軟らかな感触が、健介の敏感な部分に押しあてられた。その刺激に、彼は「うっ」と小さく声をあげ、腰を震わせてしまう。
 だが口づけだけでは飽きたらぬというように、薫は綺麗な輪郭を描く頬を、何度も兄のモノに擦り寄せる。
「硬くて……、ちゅ……とっても熱い……」
 中性的な美しさを備えた少女が、醜く血管を浮かび上がらせ腫れ上がった男の性器に、愛おしげに頬ずりする。その背徳感に満ちた光景は、健介の興奮をさらに煽った。
「兄さん、素敵です……」
 そんな彼の気持の高ぶりが伝わったのだろう。薫は嬉しそうな、甘えた仕草で彼の脚に身体を預けてくる。
 つり目がちな、普段は凛とした雰囲気をもつ彼女が目元を赤くしながら男の欲望に奉仕する姿は、麻薬的なほどに魅力的だった。

「んん……、んっ」
 少女もまた、昂奮しているのだろう。息づかいが、僅かに荒く、そして熱を帯びたものへと変わっていく。
「薫……」
 妹の名を呼ぶ、健介。彼が自分の名を口にしてくれた。そのことに、喜びに目を細めながら、少女は淫らな愛撫を進めていった。
 リップなど塗らずとも十分な紅さを感じさせる唇の間から舌を突き出すと、先端で肉茎表面の凹凸をくすぐるように舐めてみせる。
 裏側の縫い目の部分を刺激され、薫の手の中で健介の肉棒が小さく跳ねた。
「ココのところ、感じるんですよね……んっ……ぴくぴくって、震えてます」
 兄の表情を見上げ、彼の反応を確認しながら、薫は淫らな奉仕を続ける。カリの辺りを中心に舌先でくすぐり、先端の尿道辺りを指の腹で軽く擦りあげる。
 献身的に、そして貪欲に彼の敏感な部分を探り当てつつ快楽を送り続ける少女の行為に、もはや健介はただ息を荒らげ、絡め取られていく以外できなかった。
「気持、いいですか? だったら、嬉しいなあ……んくっ」
 くすぐるような愛撫に飽きたのか、今度は横の方からハーモニカを吹くように、舌全体を幹に沿わせはじめる。さっきまでとは違う新たな快楽に、健介の肉棒は自然と脈動を強めた。
「んぁ……兄さん、大好きです。……兄さんのこと……気持ちよくして上げたいんです……ぅん……」
 まるで酔ったかのように、ぼうっと頬を染めながら、兄を慕う言葉を繰り返す薫。
 そんな彼女に抗おうと、健介は食いしばった歯の間から言葉を絞り出した。
「うっ……俺たち、兄妹なのに……薫」
 しかし、そんな兄の台詞を嘲笑うように、少女は淫猥な遊戯を止めようともせずに応える。
「いいじゃないですか。……兄さんのここは、こんなに喜んでくれているんですから」

 亀頭の裏側、男が最も感じる部分の一つに舌を強く押しつけられ、健介の肉槍は薫の手の中でビクビクと震える。
 愛おしい男性が自分の行為を悦んでくれる、その反応を愉しそうに確認しながら、少女は兄に告げた。
「それに、ボクたち……んんっ、ちゅ……本当の兄妹じゃあ、ないんですし」
 そう。二人は、血の繋がった兄妹ではなかった。二人がまだ小さかった頃、互いに伴侶を失っていた二人の父と母が再婚し、家族となった。
 薫が兄に対してつかう言葉遣いがこんななのは、まだ彼女が彼に対してうち解けていなかった頃のなごりである。その後、少女は彼に対して惹かれる心を自覚するようになるが、それでも口調のクセは直ることはなかった。
「でも、俺には麻里子が……」
「それでも、いいんです」
 世間には許されようの無いだろう、背徳への言い訳を繰り返そうとする兄。
 彼の言葉を遮るように、薫は健介の男性器への愛撫を強める。根本にある体毛で包まれた袋を片手で撫でながら、もう片手と舌で、愛おしい男を追いつめていく。
「ボクが、兄さんのことを好きなんだから……んあっ、ふぅ……兄さんが誰のことを好きであろうと、構わないんです」
「薫……」
 先端をねぶっていた指が、尿道から滲み出た透明な粘液でにちゃにちゃと濡れる。指先に絡まる快楽の証明に、少女は嬉しそうに微笑む。
「気持ちいいんですね、兄さん……先っぽから、あふれてます……じゅ……っ」
 唇を軽く被せて、兄の体液を啜る。
「ん……兄さんの味だぁ……」
 口唇を汚す先走りの液を舌で舐め取り、味わうように嚥下してみせる。その仕草は、明らかに彼女を見下ろす健介の視線を意識し、見せつけようとするものだった。

 悪戯っぽい表情で兄の目を見上げながら、薫がからかうように言う。
「麻里子さんとボクと、……どっちが上手ですか?」
「ばっっ! 麻里子は、こんな、コト……!」
 あまりにあけすけな問いの内容に、思わずどもりながら反応してしまう健介。そんな彼の返答を、興味深そうに、しかし同時に目を軽く見開いて、薫は聞いた。
「あれ、そうなんですか。麻里子さんは、こういうことしてくれないんですか。……でも、」
 一瞬だけ意外そうな顔をしてみせたが、すぐに淫らな微笑みを取り戻すと、舌を亀頭に絡めてくる。
「ぅん、ん……、じゃあ、兄さんのこの味を知ってるのは、ボクだけなんですね……嬉しいなあ……んっ、ぁ」
 うっとりとした表情で、鈴口に溜まる滴を、可憐とも言うべき唇でついばむ薫。まるで夢中でミルクを舐める仔猫のような仕草で、少女は心から慕う兄のペニスに舌を絡めた。
「兄さん、言って下さい……どこを舐めて欲しいのか……どうしたらもっと気持ちよくなってもらえるのか、ボクに教えて下さい」
 性欲の香りに酔ったように、目元をぼうっと染めながら、繰り返し反り返ったペニスに口づけし、指を上下させ、舌先を擦り付ける。
 そうしながら彼女の太股は、疼きに耐えきれないとでも言うように、小さくすり合わされていた。
 腰が溶けてグズグズになってしまいそうな程の、快感。
 背筋を駆け上がる痺れは、健介から道徳や禁忌などという言葉を簡単に奪い取ってしまう。
「ボク、兄さんになら……兄さんが言うことなら、なんだって聞きます。ん、じゅ……何をされても、いいんですよ?」
 男であればだれであろうと夢想するような献身を捧げながら、少女は求め、請う者の視線で健介を見つめる。
 熱い吐息と共に、薫は耐えきれなくなったかのように自らが纏う服に手をかけた

 もどかしげに、シャツのボタンを外していく。はだけられた衣服の隙間から、清潔そうな下着に包まれた、なだらかな曲線を描く柔らかげな膨らみが姿を現した。
「薫……」
 無意識にゴクリと唾を飲み込みながら、吸い寄せられるようにその瑞々しげな双丘に目を奪われる兄。そんな彼の前で、少女は指を小さく動かす。フロントホックが外れ、白い下着の中から、それよりも更に白くきめ細やかな肌をもつ乳房がこぼれ落ちた。
「兄さん、ボク、すごくドキドキしてます」
 その言葉を裏付けるかのように、頂点に色づくピンク色の小さな蕾は、突き出すように自らの存在を主張していた。
 男の欲望を誘わずにはいられない、若々しく、それでいて確かな女性を感じさせる、形のいい乳房。
 薫はいっそう躰を兄にすり寄せると、じゃれつく仔猫のような顔で言った。
「こんなの、どうですか……このあいだ友人から借りた雑誌に、書いてあったんです」
「どうって……うわっ?」
 勃起した肉棒に加えられた新しい刺激に、声を出してしまう。薫が、彼のモノを指で支えると、自分の乳房に押しつけたのだ。
 しっとりと柔らかな温もりを伝えながら、薫は亀頭の先端を自らの膨らみに沈み込ませるようにして、なすりつける。未体験の刺激に、健介は陶然となった。
「はあ……ボクの胸、気持意ですか? だったら、すごく嬉しいです」
 愛おしげに、快感に唇を噛む健介の表情を眺める、薫。
 先走りの粘液が、妹の乳房の上にナメクジが這ったような痕を残す。それは、口でされる以上に妹を汚しているように感じられ、健介の中の熱を煽った。

「悔しいなあ。もし麻里子さんと同じくらい胸があれば、もっといろいろと、兄さんのことを喜ばせてあげられたのに」
 いったい、どんな行為のことを言っているのか。確かに麻里子は平均よりも大きな胸をしており、その彼女に健介もエロビデオで見たシーンを密かに期待したこともあったが……もちろん、そんなことを妹に確認するわけにもいかない。
 薫はしばらくのあいだ、興味深そうにじ自分の胸と兄の性器とを交わらせていたが、やがてそれだけでは飽き足らなくなったのか、改めて健介の勃起に顔を寄せた。
「兄さん……」
 何度か舌で舐め、亀頭を唾液で濡らしてから、唇を開く。健介は彼女の唇の間に、自分の反り返った肉茎が入っていく様を、血走った目で見つめていた。
「くっ」
 張りつめた先端が、ぬかるんだ熱い口内に含まれる。
 薫は健介の味や舌触りを試すかのように、カリの辺りまでを咥えたところでしばらく動きを止めたが、やがてゆっくりと頭を動かしはじめた。
 深く咥え込み、舌をべったりとペニスの裏側に絡ませる。あるいはそこから唇で幹の辺りを擦るように頭を引き、口の内で舌を動かし、先端をくすぐる。
「ん……兄さん、大好きです……ふぁっ、ぅん……本当に……大好き……」
 口を離して健介に囁きかけるときも、手は動き、やわやわと根本の辺りや陰嚢を愛撫し続ける。体毛に包まれた袋の中で、二つの塊が細い指に弄ばれる感覚が、肉棒に加えられる口唇愛撫と溶け合って、脊椎を弱い電流のような快楽が駆け上がる。
「はぁ……、兄さん……お願いします。……んっ、ちゅ……兄さんの精液を、ボクの口に下さい」
 頭が焼き付いてしまいそうな、淫らなおねだりを口にする薫。
「飲みたい……兄さんの、精液……ふぁっ、ん……ボクの喉に、飲ませて……」

 短い髪を汗ばんだ額に張り付かせながら、ボーイッシュな美少女がそうせがむ姿は、あまりにも魅力的だった。
 本来はシャープな曲線を描いている綺麗な輪郭は、大きく口を開いて彼のモノを含んでいる所為で、今は間延びして見える。それがかえって扇情的な雰囲気を煽り、健介の欲棒は限界まで高まりきった。
“くちゅ……、じゅ……っ”
 薫の唇と健介の肉茎の隙間から、たまらなく猥雑な水音が立ち上がる。それが彼の耳から脳に届き、下半身からの悦楽と絡み合い、脳髄を灼き焦がす。
「兄さんの……ふぁ、……ん、欲しい……ぅんっ」
 そんな彼の快感と同調するように、少女の奉仕にもいっそうの熱が入る。男のソコに唾液を執拗に塗り込もうというような熱心な愛撫に、健介は無意識に、薫の頭を両手で抱え込んでいた。
「ふうっ……んんんっっっ!?」
 喉の奥まで肉槍を押し込まれ、苦しそうな鼻声を洩らす少女。だが、絶対の献身を兄に捧げる彼女は、決して逆らおうとはしない。むしろ、自らなんとか兄の快楽を受け止めようと、
いっそう強く口内の肉塊に啜りつく。
「んぐっ、……ん、んん……」
 顔を真っ赤に染めながら、えずきそうになるのを必死で耐えながら、口全体で男性器を愛撫する妹。
 だがそんな彼女の苦しみも、思いの外、早く終わりに辿り着いた。
「う……あ、かお……るっ!」
 濃厚な奉仕を受け続け、肉体的にも精神的にも強烈な淫楽に曝され続けてきた健介は、とっくに限界付近に達していたのだ。
「だ……出るっ!」

「うんんっ……っ!?」
 彼女が望んだ通り、口の中で――いや、正確には喉の最奥で――健介は耐え続けてきた抑圧を解放した。
 どくっとくっ、と脈打ちながら、腰の奥から熱い粘液が尿道を駆け抜け、先端から打ち出される。腰が勝手にぶるぶると震え、呆れるほど大量の精子が薫の口内に注ぎ込まれていった。
「ん……っ、ふぐ……ぅぅ」
 形のいい眉をぎゅっと歪め、まなじりに涙の粒を湛えながらも、薫はそんな兄の欲望を受け止める。
 同時に、苦痛に縛られたはずの薫の細い背中が、小さく強ばり、痙攣するように揺れた。
「んっ、ん……こくっ……」
 喉が上下し、性臭の塊を食道へ、そして胃の腑へと送り込んでいく。
 それでも溢れた白い粘液が、肉根に塞がれた唇の脇からこぼれ落ち、とがり気味の顎先へと伝わり落ちた。
「……っっ、は、ああ、あ……」
 全てを放出し終わり、がっくりと力の抜けた兄の両手より解放され、薫はやっと健介の股間から顔を上げる。
「……はあっ、はあっ」
 酸欠にぼうっとした顔を、薫は兄に向ける。
 だがその瞳に浮かんでいる表情は、苦痛以外の明らかな色を浮かべていた。
「にい、さん……」
 やや虚ろな視線で、口元をだらしなく弛緩させながら、少女が呟いた。
「兄さん、分かりました? ボク、イっちゃいました」

 やや呆然と息をつきながら、たどたどしい舌使いで告白する。
「精液……兄さんのを飲ませてもらって、……それで、イっちゃったんです」
 少女が身じろぎした拍子に、脚の間からじゅくりと濡れた音が聞こえた。
 肩で息をする薫の股間は、まるで小水を漏らしたかのように、液体で濡れていた。
「ボク、……変態ですね。兄さんのを口にもらって……嬉しくて、イっちゃうなんて……」
「薫……」
 彼女の見せるあまりに淫靡な光景に、健介は言葉を失い、ただ彼女の顔から目を離せないままにいる。
 そんな彼の視線の先で、薫は顎まで垂れ流れた精液に気づくと、ぼんやりとそれを指で拭い、口に運んだ。
「ん……精液……、兄さん、の……」
 ぴちゃぴちゃと音をたてて、指を汚す白濁を舐め取る。幼子のような、仕草。だがその媚態は、牡の匂いに酔う雌、そのものだった。
 やがて目の焦点が合ってくると、少女はその視線を兄の股間へと戻した。
「兄さんの……綺麗にします、ね」
 首を差しのばすと、彼女の唾液と健介の精液とでグチョグチョに汚れたペニスを、口に含む。
 昂まりを放出して力を失いかけた陰茎に、柔らかな唇と舌がまといつき、表面を綺麗に、丁寧に拭っていった。
「ちゅ……こく……」
 不浄な穢れを、舐め取っては、唾液と共に呑み込んでいく。

 射精したばかりで敏感になっているペニスに加えられるくすぐったい刺激に、健介は腰を震わせ、その拍子に鈴口から管の中に残っていた白い滴が滲み出る。
「ん、あ……まだ、残ってる……じゅ……っ」
 最後の一滴までもを飲み下そうと、じゅるじゅると下品な音を立てながら、薫は兄の肉茎を頬張る。
「ぐ……っ」
 その心地よさに、彼のモノは再び硬度を取り戻してしまう。
「ああ、兄さん。また……」
 自分の愛撫で力を持ち直した兄の欲棒に、口元をほころばせる薫。ソフトだった後始末の口唇奉仕は、それに従ってより積極的な、強く肉の快感を引き出すものへと変えられていった。
「ん、ちゅ……」
 すっかり猛々しい姿に戻った男根に、奴隷のようにかしづきながら、薫は喜びに頬を赤くした。
「兄さんに出していただいたのが、ボクのお腹の中で……とても、暖かいです」
 顔を横に傾け、ハーモニカでも吹くように肉棒の横の部分を咥えながら、舌先で小さく舐め回す。
「何度でも……兄さんが満足されるまで、ボクがご奉仕します……」
 語りかけてくる声が、やけに震えている。それに気づき健介が見れば、薫の右手は、衣服の隙間から、自らの下半身に伸ばされていた。ズボンの前が、中に差し込まれた指の動きを表すかのように、小さく蠢いていた。
「あ……ごめんなさい。でもボク、我慢ができなくて……」
 恥ずかしそうに目元を歪めながら、薫は言い訳のように口にする」
「でも、大丈夫です。兄さんのことは、きちんと気持ちよくしますから……だから、許して下さい……ああっ」
 彼の隆起したモノを頬張りながら官能に溺れる、妹の姿。少年のような美しさを兼ね持つ、中性的な美貌を淫らに紅潮させた薫の表情に、健介は新たな滾りが腰の奥に燃え上がるのをはっきりと自覚した。