幼い頃『結婚しよう』と約束したとして、それが実際叶う可能性というのはどれくらいあるんだろうか?
結婚の意味をちゃんと理解していないほど小さい頃。
まだ自分の周囲くらいの広さしか世界がなかった頃。
そんな頃に交わされた約束なんて、時間が経てば忘れられてしまうものだと思う。
幼かった僕はとある女性と結婚の約束をした。
――そして、十年経った今でも、僕とその人の約束は続いている。
「……て、起きて」
それが、どれほど幸福なことなのか僕は十分理解している。
十年僕の想いが変わらなくても、相手から想われなくなってしまえば、この約束は消えてしまうだろう。
「学校遅れちゃうよ? ほら、起きてって。……んもぅ……こうなったら……」
だから、僕は――
「……ふぇ?」
僕は下腹部が突然不思議な――しかし、とてもよく知っている感覚に襲われていることに気づいて、まぶたを開いた。
カーテンが開け放たれていて、朝の日差しが飛び込んでくる。
「うっ……」
僕はわずかに目を細めた。
(昨日の夜、ちゃんとカーテンを閉めたはずなのにおかしいな)
などと思いながら。
異変が起きている下腹部へと視線を向けた。
見ると、毛布が跳ね除けられベッドの脇に落ちており、その代わりにとでもいうように僕の上に覆いかぶさっている人がいた。
その女性のことは、僕は誰よりもよく知っている。
大神静流(おおがみ しずる)。
僕の十歳年上の従姉であり、僕が通う私立峰連学園の体育教師であり、家元を離れて学校に通う僕の同居人兼保護者であり、僕の――婚約者だ。
「静流さん? ……なにして」
僕の言葉はそこで途切れた。
「……んっ……くちゅ……っ……んん……ン?」
静流さんは僕の身体の上に覆いかぶさっている。
それだけならいいのだが――いや、よくないけど。――静流さんは四つんばいの体勢で、僕のほうにその健康な子供を産めそうなお尻を向け、僕の股間に顔を埋めていた。
「なななな、なにしてるんですかっ」
「あ、ようやく起きたんだ。おはよう、ヒナちゃん」
のんきな調子で静流さんは言った。
ヒナちゃんというのは、僕の名前一成(かずなり)の読みを変えて付けられたあだ名だ。
「お、おはようじゃないですよ」
「あら? 今は朝七時、時間的に『おはよう』じゃないかしら?」
「そういうことじゃなくて――ひゃっ!?」
喋っている途中だったというのに、静流さんの口は先ほどまでしていた行為に戻ってしまった。
「……んっ……ちょっと、まっふぇね……もうちょっとで済みそうだから」
静流さんは僕のおちんちんを口に含みながらそう言った。
くちゅ、ちゅぱっと静流さんは僕のおちんちんを美味しそうにしゃぶっている。
いつもなら直ぐにでちゃうのに、今日の僕にはまだそうした兆候はない。ただ、いつになく痺れるような快感があった。
だから僕は説得を試みることにした。
「朝からこんなことしてたらダメですよ」
「あら? どうして?」
静流さんは一旦おちんちんから口を離すと、口の中に溜まっていた涎や我慢汁の混合液をごくんっと飲み込んでそう応えた。
その間も僕は静流さんの細くしなやかな指先で弄ばれている。
口でしてもらうのも気持ちがいいけれど、手でしてもらうほうが快感は上だった。
首や口の動きみたいな絡みつく動きもいいけれど。
手は口よりも強弱が利くためか、激しく擦られたり、絞るようにされたり、その変化のつけ方が静流さんはとても上手なのだ。
「うふふ、ねえなにがダメなの? ちゃんと答えて」
「そ、それは……」
どくん、どくんとおちんちんが脈打っているのが分かる。
擦られるたびカウパーが先端から溢れていく。
「朝から、その、こんなやらしいことしてたらダメっていうか……」
「ふぅん、ヒナちゃんこういうことされるの嫌いなんだ?」
「……え」
これで嫌いだと答えたら静流さんはやめてくれるんだろうか?
でも、正直な話嫌いじゃない。というか、結構好きだったりする。
けれど好きだと素直にはいえなかった。
「……ふぅん」
僕の沈黙をどうとったのか、静流さんは妖しい笑みを浮かべた。
「静流さん……?」
「なら好きになるまでしてあげるっ」
「ちょ、ええっ!?」
言うや、静流さんは再び僕のおちんちんを咥えた。
僕は思わず逃げそうになったが、静流さんに身体を押し付けられ、動けなくされてしまった。
「し、静流さんっ」
僕が叫んでも静流さんは答えてくれない。
身体と身体がくっつきあい、両腕は踏みつけられていて動かせず。下手に暴れて、静流さんを怪我させたらと考えると、抵抗しようがなかった。
「ふふ……ヒナちゃんのおちんちん、かわいい……ちゅぷっ……くちゅ……びくびくーってふるえてるのに、おっきいよ……」
僕には僕の下腹部がどうなっているのか見えないからよく分からない。
でも、静流さんの口が動くたび微細な電流が身体を迸り、どうしようもなくカウパーがあふれってっているのが分かる。
「ねえ、ヒナちゃん……気持ちいい?」
「うん」
素直に答えてしまった。
「あ、いや、だからって。その、こういうことを朝からするのは」
僕は率直に答えてしまったことに恥ずかしさを覚え、ごまかすように言った。
だが、僕のそんな考えは見透かされてしまっているらしい。
「ふふっ、じゃあ早く済ませてご飯にしましょ」
そういうと、先ほどまで手を抜いていたかのように、静流さんの口の動きが激しさを増した。
ちゅぷ、ちゅく、じゅぷっ、ちゅるっ。
水音が部屋の中に響く。
外から聞こえてくるスズメの鳴き声と交わり、僕はいけないことをしているんじゃないかっていう気持ちが強くなっていたが、反抗の声をあげることもできなかった。
僕の口からは喘ぎ声がどうしようもなく漏れていた。
それが静流さんの好きな声だとはよく知っていた。
静流さんは自分自身が気持ちよくなるよりも、僕が気持ちよさそうにしているのを見るほうが好きなのだと前に教えてもらった。
だから、僕は隠すことなく声をもらしていた。
ただ、こういう状態の時の僕の言葉は、どうにもうわ言に近いらしく。なにを言ったのか、なにを言っているのか自分でもよく分からない時がある。
「すごいわ……っ……ヒナちゃんのおちんちん、いつもよりおおきくなってる」
「し、しず姉っ。ぼく、しず姉のお口まんこにだしたいっ!」
ほんと、僕はなにを言っているんだろう。
「しず姉のお口まんこに……、顔に、ううん、身体全体にかけたい」
「犬じゃないんだから」
そう言いながら笑った。
「それに、私のことは静流って呼んでっていったでしょ? もうお姉ちゃんじゃなくて、ヒナちゃんのお嫁さんなんだから」
そう、僕と静流さんは結婚することを誓っている。
幼い日。十年前。――僕が六歳で、静姉が十六歳だったあの日、僕たちは結婚することを約束した。
今はまだ籍をいれることはできないが、高校を卒業したら直ぐに籍をいれて、同じ苗字になろうと誓っている。
僕は、僕たちはその日が早く来ないかと願っている。
「し、静流……さん」
まだ呼び捨ては僕には難しい。
「なぁに?」
「ここにいれたらダメ?」
僕はそういって、いつの間にか開放されていた手で静流さんの下腹部に触れた。
「ひゃっ」
パジャマとパンツ、二重の布越しでもそこが湿っているのが分かる。
静流さんだってこんなになってしまっているんだ、きっとしたいはずなんだ。
パジャマのズボンをずり下ろし、パンツも下ろすと、女の人の匂いが部屋中に広がった。
「ちょ、ヒナちゃん」
静流さんの股間からパンツに糸が引いていた、朝陽を浴びてきらきら輝くソレを、僕は指で絡めとり、口に含んでいた。
「ねえ、いいでしょ、いれても?」
「だ、だめよ。約束したでしょ」
約束――そう、僕たちの間には約束がある。
それは将来結婚することであり。
その時まで、お互い純潔を護ろうというのが誓いだった。
だったら、こうして舐めたり揉んだり弄ったりするのはどうなんだって思われるかも知れないが。挿入以外の行為くらい認めないと、どっちかが約束を破ってしまうんじゃないかっていうことから、前戯まではオーケーということとなっている。
だけど……
「もう、我慢できないよ!」
そういって僕は強引に身体を起こし、勢いのまま静流さんを押し倒した。
「きゃっ」
「ぼ、僕、静流さんにいれたい! 静流さんの中でいきたいんだ!」
そういって僕はそのまま強引に挿入しようとしたが、
「だーめ」
静流さんのその一声で引き止められてしまった。
意思が弱いといわれるかもしれないが、僕にとって静流さんとはそれほどの存在なのだ。
「今いれちゃったら、ヒナちゃん、絶交よ」
「うっ……でも……」
「でも、じゃないの。ちゃんと約束は守りましょ」
僕はしばらく悩み、そして――承諾した。
「……わかった。がまんする」
静流さんは微笑むと、僕の頬を撫でた。
「うん、いい子いい子」
そうして僕の唇に自らの指先を絡ませてきた。
僕は喋ることもできず、少しむくれたような顔をしてしまっていた。
すると。
「じゃあ、いれちゃダメだけど」
「うん?」
「おまんこにかけてもいいよ」
「えっ」
静流さんは僕が戸惑っているのをみて、くすくすと面白そうに笑った。
「ほら、こうやって股開いていてあげるから、ここにびゅーって射精していいよってこと」
そういって静流さんは自らの指先で綺麗な色の割れ目を押し開いた。
「ほ、ほんとっ!?」
「うん」
静流さんは笑顔で笑って答え。
「ただし」
と付け加えた。
「十五分になったらお終いね」
「へ?」
時計をみると七時十四分。
七時四十五分には家を出て学校に向わなければならない。遅刻をしなくて済むぎりぎりの時間と言ったところだろうか。
「はい、スタート♪」
言われて、僕は直ぐにちんちんを擦り始めていた。
静流さんのおまんこへ先端を向けて、必死に擦る姿はなんか間が抜けていたけど、しょうがない。
静流さんはくすくす笑いながら、カウントダウンをしている。
「ほらほら、早くしないとー」
そうは言うが、いつもに比べて、不思議といきにくかった。
でなければ、フェラされていた段階でいってしまっていただろう。
それでも僕は必死に擦り続けていた。
「ほーら、早く早く。それとも私じゃあもう興奮できないのかなー?」
「そんなことっ」
「口を動かすよりも手を動かしたほうがいいわよ。あと十五秒、十四、十三……」
僕は勢いよく擦りすぎてもげちゃうんじゃないかっていうくらい擦り続け、ようやく――
「七、六、五、四……おっ!」
勢いよく大量の精液が吐き出された。
静流さんの綺麗な肌を、僕の精液が汚していくのを見ながら、僕は大きく息を吐き倒れこんだ。
丁度、顔が静流さんの豊かな乳房にうずまるように。
「よくできました」
静流さんがそういって僕の頭を撫でてくれた。
僕は静流さんに身体を預けながら、余韻に浸った。おちんちんは興奮冷めず、今も痙攣しながら精液をこぼしている。
「……ちょっと疲れた」
正直な感想を漏らすと、静流さんはくすくすと笑った。
「でしょうね」
「うん。寝起きだからかな? なんかいきにくくて」
「違うわ」
「え?」
静流さんは笑い声をこぼしながら言った。
「だって、寝ている間に一回射精してたんだもん。そりゃあ、直ぐに二回目とはいかないわよ」
その言葉の意味が直ぐに理解できなかった。
だが、理解すると僕も
「そっか」
と同じようにくすくす笑っていた。
笑いながら、僕は(今日は遅刻だな)とか考えていた。
―了―