ユガンダ大森林を二人で歩く。
「リュウオンリュウオン」
シュミミは長い耳をふるふるっと震わせて勇気をもってリュウオンを見あげた。
「どうした?シュミミ」
エルヴァーンの長い首が、タルタルを見下ろす。
「リュウオンのこと、シュミミ大好きだよ」
「ありがとう、シュミミ」
「なのに、どうしていつもそこで終わっちゃうの?」
シュミミは青銀の長い髪を風に揺らせて、まっすぐな瞳で言った。
「………」
「好きなの。だから、ね。ヒュム同士とかエル同士とかみんなとかみたいに…
いろんなことしたいのに。リュウオンはどうしてしてくれないの?」
シュミミは夜明け前の深い蒼い瞳で問いかけた。
リュウオンは苦笑する。
「だって、シュミミが好きだから」
「だから!もっといろいろしたいの」
一生懸命一途に見あげる瞳。

「シュミミが壊れちゃうよ」
リュウオンはさらっと言って歩き出そうとする。
森林の空気がまといつく。じっとりと汗がわく。
おまけに迷路のような道だ。
「お耳さわるだけじゃなくて…お胸触るだけじゃなくて…
リュウオンのこともっと感じたいよ」
シュミミがリュウオンの白い服をきゅっと掴んだ。
「満足できるように、していてあげたつもりなんだけどな」
リュウオンはさらっと言って、といきをついた。
シュミミはふるるるっと首を横に振って涙を浮かべる。
「シュミミは気持ちよくしてもらえるけど…リュウオンは?
リュウオンも一緒に気持ちよくなれないと…いつかリュウオン
エルヴァーンのきれいな女のひとのところにいっちゃうでしょう?」
「そんなこと、ないよ」
シュミミはがぜんない子供のように首を横に振った。
「うそ!リュウオンがもてるのシュミミ知ってるもの。
リュウオンが人気あるの…―知ってるもの」
「それは、ジョブがそこそこ人気があるからさ」
「シュミミは……リュウオンのこと好きだから…
エルヴァーンの女の人みたいに、してほしいの」

まっすぐな瞳で見あげられ、リュウオンは吐息をついた。
「無理だと、思うよ」
リュウオンの冷静な言葉にシュミミの瞳に涙が浮んだ。
「リュウオンの馬鹿っ!嫌い、きらいきらいっ!」
「シュミミっ!」
シュミミは迷路に駆け込んでいってしまった。
リュウオンは頭をかいた。
だいせつだから。シュミミに負担になることはさけてきたのに。
それが裏目にでるなんて…。
シュミミが落ち着く時間を与え、
そして迷路の奥でしゃがみこんで泣いているタルタルの少女をそっと抱きしめた。
「泣くなよ。シュミミ」
頬にキスする。
「ん」
イヤイヤというようにシュミミは首を振り、唇をあわせた。
求めるちいさな柔らかい舌を、さくらんぼを食べるようにやさしくからめる。
頬をいくすじも伝う涙の雫が、リュウオンの長い指に落ちた。
ちいさな身体をリュウオンは抱き上げ、自分の膝に乗せる。
「痛いよ」
「……いいの。がんばる」

シュミミは長い耳を伏せて、ゆっくりと自分の衣服を脱いだ。
ちいさな舌が、リュウオンの敏感なところを何度も舐めあげる。
息ずかいまでが分かってしまう。
「がんばれる…とおもうの。リュウオンが、好きだから」
恥らうように呟いて、シュミミが顔をあげる。
「ヒュムやエルヴァーンのように、愛して、ね?リュウオン」
幼い体が、熱帯の空気をまとう。
ちいさな身体を、抱きあげる。
指がやさしくお互いの身体に触れる。
「あ、…んっ…んンっ!」
跳ね上がる声と、ピルピルと小刻みに震える耳。
「あ、ふぁ、あ」
「も、いいかな。シュミミ、すこし、我慢な」
リュウオンの言葉にシュミミは深く頷いた。
「あ、ああん!あッ、あ!ああっ!!」
悲鳴のような声はさすがに、辛い。
それに、やはりきつい。
「シュミミ…力、抜けないかな」
「やぁ、無理ぃ…」

自分の上で大きく仰け反る幼い少女のような身体にリュウオンはしばらく考えた。
無理をすれば、いけなくはない。
けれどシュミミは苦しげに眉を寄せ、ちいさな唇で浅い吐息を繰り返しつき、耳を震わせながら耐えている。
その表情は苦痛に満ちている。
いじめるのも悪くはないが、本気で苦しめたいわけじゃない。
リュウオンがそっと身を引いた。
はふぅ。シュミミの全身の力が一気に抜けたのが、分かった。
「大丈…夫?」
リュウオンの言葉にシュミミはふえええっと泣き出してしまった。
「シュミミ?」
「駄目なの、かなぁ。私じゃリュウオンのおよめさんになれないのかなぁ」
泣きながら、リュウオンの胸にすがりつく。
リュウオンは蒸し暑い空気のなかでつぶやいた。
「シュミミ。無理しないで、ゆっくりいこう。な」
「ごめんね…ごめんね?リュウオン、シュミミのこと嫌いにならないでね」
涙をボロボロこぼしながら見あげるタルタルの幼い顔にリュウオンは苦笑する。

「水場で身体洗いに行こう」
「ちゃんと、できるようになるから。痛いの我慢できるようになるから…」
「無理しなくていいよ。気持ちいい事したいだけだから」
「でもでもっ」
「お互い気持ちよくなるように、しよう」
白い大腿に赤が一筋こぼれている。
それをやさしく拭って水場へ向かった。
「シュミミ、重くない?」
「軽いよ」
「シュミミ、歩けるよ?リュウオン」
「無理しない」
「シュミミは…いつも何にもできない…ね」
「でも、傍にいてくれるだろう?」
たわいない事を話しながら、滝に向かう。
幸いいるのはサギハンくらいだ。
そしてサギハンはリュウオンのレベルでは襲い掛かることもない。
「せめて、させて。ね?」

蒼い瞳がリュウオンを見あげ、ちいさな手としたがおずおずと不器用にリュウオンにからまる。
腰に重い感覚が澱み、それが次第にむず痒く、そして熱くなってゆく。
「ん…」
「ふ、あ、ぁく、ん」
水音がパシャパシャと響く。
ちいさな口いっぱいに吸われる。痺れが甘く腰から広がる。
そして、電気が脳に走る。
一気にはじける。
弾けたものをビックリしたようにシュミミはかぶった。
頬に、胸に、お腹に。
そしてそのまま、シュミミはえへへと小さく笑う。
「リュウオン、好きだよ」
「ああ」
「いつか、しようね?」
甘えかかるちいさな身体を抱きとめ、頷く。
「いつか、な」
「よぉし!明日もっかいチャレンジしよ?ね?ね?」
「駄目だ」
「どうしてよぉ。いいじゃん」
頬をぷくんと膨らませて、小さく呟く。
「明日は仲間とウガレピ行くんだろ」

「夜にモグで…」
「チビでお前は体力ないんだから、無茶は却下」
「いやいやぁ。リュウオンのこと、感じたいんだよ。シュミミ」
「シュミミは思い立ったら暴走するから、駄目」
「やぁん。リュウオンの一番近くに、いたいの。一緒にずっと朝も昼も夜もずっと一緒に、ね?」
「シュミミ。わがまま言うな」
リュウオンの言葉に、しおんとしおれて、小さくはぁいと呟いた。
ぱしゃん。
リュウオンがシュミミに頭から水をかける。
「涙の跡くらい、消しとけ」
「え?」
「萎える。もう一ラウンドいこうか」
とりあえず今は、幸せ。
シュミミが大きく頷いて、座っているリュウオンの形のよい唇に背伸びをしてキスをした。


END