どうしてあの時、オレはあの場所に行っちまったんだろう。
世の中には知らない方がいいこと、たくさんあることはわかっていたはずなのに。
彼女とあいつが持つ、オレと同じリンクシェルの反応が、青々と晴れたロランベリー高原にあったのがなんとなく気になったから。
オレは蜂の巣のかけらを集めながら、なんとなく二人の姿を探していたんだ。
オレの名前はケイン。ヒュームで、バストゥーク共和国所属のシーフ。
あいつの名前はダリュー。エルヴァーンで、同じくバストゥークに所属するナイト。
彼女の名前はアリアナ。同じくヒュームで、やっぱり同じくバストゥーク所属の白魔道士。
オレが駆け出しだったときからずーっと、冒険の苦楽を共にしてきた仲間。
「ひゃあんっ・・・」
その、聞きなれた仲間の、聞きなれない声を聞いたとき、思わずオレは心臓を鷲掴みにされた様に縮こまる。
息を殺してそーっと声がしたほうの様子を見ると、ダリューとアリアナが、青空の下、岩陰でなんかしている。
(・・・?)
草原に数枚のラビットマントを敷いて、下半身だけをむき出しにして、腰を下ろしてるダリューの上にアリアナがまたがり、体をを揺すってる。
二人がこんなところで何をしているのか。目に映る物をしっかりと把握するまで少しの時間が要った。
セックス。
アリアナの、ヒーラーブリオーの裾から覗く白くてきれいな尻の真ん中、ぬめぬめとしたマ○コの部分に、ダリューのガチガチになった・・・チンコがずっぽり入っている・・・
ダリューとアリアナが・・・・こんな晴れた空の下であられもない姿を晒して情事をしていた。
「くっ・・・ふっ・・・」
普段はいつも優しげに微笑んでいるアリアナの顔が、息も荒く、切なげにゆがんでいる。
セックスの主導権を握っているのは彼女の方みたいで、腰を振りながらひたすらダリューの顔や首筋にキスをしたり、耳を甘噛みしたり、ガラントサーコートの隙間から手を差し込んで何かしている。
清楚だとばかり思っていた彼女が、自らダリューの乳首をいじって、相手の快感を引き出そうとしているんだと気づいた時、オレの頭の中は真っ白になる。
「あっ、やん、ダリューさぁん・・・あたっ・・・アソコ・・・きもちいよぅ・・・」
二人の仲が、最近妙にいい感じになっていたのに気がついてなかったワケじゃない。そういう関係になっているっていう可能性を、無理に考えないようにしてたが・・・まさかここまでの仲になってたとは思いもしなかった。
押し殺した二人の声と、くちくちとという、粘膜同士がこすれあういやらしすぎる水っぽい音。
二人からは死角になっている岩場の影に潜み、何をするわけでもなく二人の姿を見続ける。
急に、大事な仲間が手の届かない遠いとこに行ってしまったような気がして、不意に鼻の奥がツーンとする。
だが、ローグキュロットの中のオレの物は、オレの感情をあざけるかのように、今までに無い位にガチガチになっていた。
「ダリューさぁん、はぁっ、ダリューさぁぁぁあんっ・・・!」
「くっ・・・はっ・・・はっ・・・」
陽の光でキラキラ光る金髪を揺らしながら、アリアナは喘ぐ。
じっとりと汗に濡れて弾む健康そうな身体が、綺麗だと思った。
気がついたら、自然に手がローグキュロットの中に入りこんでいた。
じょりっとする、陰毛の感触。
理性なんてもんは、とっくに吹っ飛んでいる。
びくん!
ローグキュロットを膝まで下ろし、ガチガチになったチンコを握る。
そのまま上下にしごく。下半身から伝わりだす、気だるい快感。
息を殺して、仲間同士のセックスを覗いて、オナニーにふけるオレ。
駄目だ思いながらも、止められない。止めることが出来ない。
とんとんと、リズミカルにアリアナの尻がダリューの腿を叩いている。
二人の動きに合わせてしごくうちに、だんだんとこの快感が、アリアナに与えられている物であるような錯覚を覚えだしていた。
「くっ、駄目だ、アリアナ・・・も、もう・・・」
「い、イクの?ダリューさん、イッちゃうん、ですか?」
荒くなった息で、自分の上で貪欲に腰を振リ続ける少女に向かって、限界が近い事を告げるダリューに、普段の様子からはとても想像出来ない、淫靡な声で応えるアリアナ。
なんてエロい声、出しやがるんだ。
「うふふ・・・いいですよ、我慢しないでも。もうちょっとでわたしもイきそうですから・・・一緒に、イきましょ?」
チンコの根元から、じわりと広がる快感の波。
「あ、アリアナ、アリアナ・・・・っ!」
「出してぇ!いいよっ、精子、精子出してぇ・・・・・っ!!」
アリアナの腰がスパートを掛け、ダリューの上でいやらしく揺れ動く。
「・・・・!!!!」
「はうっ、あうっ、はぁぁぁ、んーーーーーッ!!!」
アリアナが、震える身体で首を傾げ、ダリューの唇を奪う。
全身を貫く激しい快感に耐えるようにぎゅっと瞼を閉じ、彼女が腕と太腿をダリューの鍛え上げられた身体に巻きつけた瞬間、奴の身体が大きく跳ねた。
チンコを抜くそぶりも見せず、アリアナのマ○コに深く挿したそのままで、細かい痙攣を繰り返しているダリュー。
膣に・・・射精しているのかよ。
「ああ・・・熱いの、出てる・・・はぁぁぁんっ・・・」
「ああ・・・熱いの、出てる・・・はぁぁぁんっ・・・」
もう限界だった。
びゅるっ、びゅるっ、びゅるるっ!
止められた堰を砕くように、熱い快感がオレの身体を貫く。
音を立てつつ、べちべちっと目の前の岩にたっぷりと射精した。
思わず声が漏れそうになるが、何とかこらえる。
チンコの根元から数回しごき、一滴残らず精液をしぼり出し、一息ついた所でふと我に返る。
・・・なにやってんだ、オレ。
岩にねっちょリこびりつく、オレの、ゼリーのような白い液体。
なにやってんだ、オレ。
そんなオレを余所に、ついばむようなキスを交わしている二人の姿が見える。
なにやってんだ、オレは・・・!
オレはその場から逃げるようにして駆け出した。
とんずらと呼ばれる、シーフ特有の走法。
・・・二人に気付かれなかったか?
いや、もうそんな事どうでもいい。
そのとき、オレは初めて自分の気持ちに気がついた。
オレが、アリアナの事をどう思ってたかって事に。
知らないうちに、男と女の関係になっていた仲間。
知らなかった、彼女の淫靡な一面。
オレは・・・ダリューに嫉妬しているのか?
疎外されたと理不尽な怒りを覚えつつ、そのくせ、お前は二人が愛し合う姿を見て、何をした?
いつの間にか、泣いている自分に気付く。
なさけ・・・ねぇ。
脚がもつれ、丘の上で盛大に転がった。
土ぼこりと芝生まみれのオレの体。
「・・・・・」
そのまま、青空をぼーっと見上げ続けていると、陽にやかれて視界の端が緑っぽくなって来る。
頭の中が真っ白で、何も・・・考えられねぇ・・・。
《あっ、ケインさんだ!おはようございまーす》
いきなり、耳につけたリンクパールからアリアナの声が響く。
《お!お前がくるのを待ってたんだよ、ケイン。今日暇ならどっかに金稼ぎに行かないか?》
続いて聞こえるダリューの声。
声の調子からして、さっきの行為を覗かれていたとは思ってないみたいだ。
さっきまであんなとこでセックスしてた癖に、いつもどおりに話すんだな。
思わず、笑いが漏れた。
もう、どうでも良くなった。
ただ、いつもと変わらない、いつもどおりの二人の声を聞いているのが苦痛だった。
無言で耳に付いたリンクパールを外し、ぐっと力を込める。
ぱりん。
乾いた音と共に、コバルトブルーの欠片が飛び散った。
壊れる時って、案外あっけねーもんなんだな。
抜けるような青空の下で、オレはただ、指に付いたキラキラ光る粉をいつまでも見続けていた。