ルーヴェル:エル♂F4銀髪
アリア:ヒュム♀F4黒髪

ウルガラン山脈の冷気は平等だ。
生者にも死者にも、健やかなる者にも、そして傷ついた者にも。

吹雪にまかれて視界を失い、氷原のあちこちに開いていた穴に落ちた二人は、氷雪の力の塊である魔物や、おそらく行き倒れてアンデッドと化した者達に襲われた。
辛うじてそれらを退けたものの、エルヴァーンの狩人ルーヴェルは、最後の最後で手ひどい攻撃を受け、とうとう倒れてしまった。
そして耐え抜いたヒュームの白魔道士アリアもまた、限界まで心身を酷使したためにその場でうずくまり、動けずにいる。

「大丈夫…?」

それでも彼女は、か細い声で彼に語りかける。
ルーヴェルは冷たい地面に横たわったまま、首だけをどうにか動かして頷き、それに応えた。
大丈夫な訳がなかった。骨が何本も折れているのがわかる。
手足の先や、皮膚の露出した部分のあちこちが、重度の凍傷で焼け爛れていて感覚がない。
動かすことさえ、できない。だが、それでも。

「もう少しだけ、待ってね」

死人のような顔色のまま、それでも懸命に微笑むアリアが、魂を削り取るほどに気力を使う、長い長い呪文を詠唱し始めた。

それが終ったとき、ルーヴェルの全身に強い癒しの力が注ぎ込まれた。
形容しがたい感覚と共に折れた骨が接合されてゆき、凍って砕けた筋組織が再生される。
極度の低温でひび割れた皮膚が癒着し、エルヴァーン特有の褐色を取り戻す。

肺の奥に溜まった古い空気を吐き出しながら、ルーヴェルが自分の足で立ち上がると同時に、気力を使い果たしたアリアは再び、手にした両手棍に縋りつくようにしてへたりこんだ。
細かな文様の刻まれた杖の先端には、美しく磨きこまれた闇色の宝珠がはめ込まれいて、周囲に漂う眼に見えぬ魔力の流れを引き寄せ、装備するものの気力へと変換する。
その杖の、宝珠を組み込んだ部分と、持ち手の部分をつなぐ位置には、調理師としての修行をやめて印加を返上し、狩人としての道をより確かに歩むために、木工職人へとなった、ルーヴェルの銘が刻まれていた。

ルーヴェルは背負い袋から野営用の毛布を取り出すと、黙って彼女の傍らに座り込み、二人纏めて暖かな布にくるまった。アリアはその行為になすがまま、身を任せる。

しばしの時間を経て、ようやくアリアはほうっとため息をついた。

「ここ、どこかしら…?」

氷の壁と凍った岩床、ところどこに吹き貯まった雪。
短い夏が来ても溶けることの無い、どこまでも冷たい空間が、隙あらば二人の熱を奪おうとする。

「…ああ、無事だ。アリアも。……いや、いい。出られるようなら、そちらは戻ってくれ。交信切るぞ」

耳穴にはめ込んだパールを外すと、ルーヴェルはそれを胸のポケットにしまいこんだ。
それから改めて、アリアの体を抱く腕に力を込める。

「パウ達は帰した。回復したら、俺達も戻るぞ」

先ほどの問いなど耳に入ってなかったかのように、ルーヴェルはそう言って目を閉じた。

「…うん、わかった」

わずかな不満を感じながらも、アリアは素直に返事をして彼の腕に縋りつく。

「ここは」

目を閉じようかとした寸前、彼の声が続く。

「この山脈の地下に元々あった洞窟だろう、古い伝承では、この洞窟のどこかが、遥か北の、オークの本拠地に通じているとも、聞いている」
「えっ」

アリアがルーヴェルの顔を見上げた、その顔に怯えと嫌悪が入り混じっている。

1週間ほど前、知り合いの頼みもあり、そのついででルーヴェルのミッションを完遂するべく、オークの集落深部を殲滅する部隊に加わった時だった。
運悪くオーバーロードと呼ばれる首長クラスの戦士がいたために返り討ちに会ってしまったのだ。
普通なら戦闘不能になるまでいたぶられるのであるが、その時に限り、物好きなオークの1匹が逃げそびれたアリアを捕らえ、陵辱しようとしたのだった。

そのもっと前にも、ダボイ近辺の討伐隊に参加した時に、ルーヴェルが重傷を負い、アリア自身も命の危険に晒された事がある。
とにもかくにも、アリアにはオークに対する恐れと嫌悪感しか持てないのであった。

「ああ、心配するな。噂にすぎん」

なだめるように、ルーヴェルがアリアの背をなぜた。

「それなら、いいのだけど…」

不安を消しきれず、アリアがわずかに体を震わせた。
氷壁の奥の闇に、目を凝らす。

「向こうの、あの奥から、なんだか嫌な力を感じるの。気のせいだと思いたいのだけど」

「…この地方には、感覚の鋭敏なミスラの【罪狩り】ですら、その追跡能力を封じられるほどの空気が満ちているそうだ。深く考えるな。今はとにかく、休め」

反論を押し込めるかのように、ルーヴェルがアリアの顔を自分の胸に押し付けた。
その通り、アリアは何か言いかけた言葉をむぐむぐ、と封じ込まれる。

「ルーヴったら…!」

どうにか顔をひきはがして、彼女はついきつい口調と視線でルーヴェルにつっかかる。

「わたし冗談でこんなこと言っているんじゃないのよ、少しは真面目に聞いて頂戴」

いつもいつも。そう、出会ったときからずっと、ルーヴェルはアリアを導いていた。
本当の冒険者としての在り方も、一人の人間としての生き方も、男と女の間の事も。彼女の人生経験を深める全てを、彼は与えていたのだ。

アリアは変わった。

白魔道士として決められた事しか出来なかった彼女は、すでにリンクシェルの仲間と共にそれなりに名を知られる冒険者にまで、登りつめた。
人間関係も増え、ルーヴェルが居ない間に、友人達と交流をもつこともあった。
気が弱くて、いつも立ちすくんでいて、いつもルーヴェルの前で涙ぐんでいた彼女は、どんどんその弱さを克服していった。
だから、アリアの行動をさらりと流すルーヴェルの行為は、実績と自信を身につけた彼女の心を、時として傷つけるのだ。

「何を怒っている?」

抑揚のない声で、ルーヴェルは問いかけた。

「怒ってなんかないっ」
「なら、なぜ機嫌を損ねている」

氷のように薄い水色の瞳が、彼女の藍色の瞳を見つめた。

「怒るな」

押し付けるわけでもなく、注意しているわけでもなく、ただ、「そうすること以外を認めない」ような、物言い。
アリアの堪忍袋の緒が切れそうになる寸前、

「…お前が怒っている顔を見るのは、辛い」

かろうじて、ルーヴェルの言葉は間に合った。
振り上げた拳の行き場がなくなるような、そんな気持を、アリアは抱いた。

どこか遠くで、ひょうひょうと雪風の鳴る音が響く。

ルーヴェルは変わった。

いつも一人でふらりと行動していた彼は、アリアと出会い、その温もりを手に入れてから、世俗を絶つほどに傷つけられていた心を癒されていった。
しかしそれは、彼を人間らしくすると同時に、決定的な弱点を抱えこむことでもあった。
いつだったか、瀕死のアリアを陵辱しようとしたオークを、間一髪で駆けつけて蹴散らし、拷問的なまでに痛めつけ、そして殺した事があった。
あの時の我を忘れるまでの怒りは、普段から冷静さを失う事の無かったルーヴェルから最後の理性すらも奪うような、今までに持ったことのない激しいモノであった。
彼にとってアリアは、愛する女であると同時に、理性と狂気を切り替える引き金ともなっていた。


ようやくルーヴェルの体から、弱った心身の影響が抜け始めた。
指を1本1本折り曲げ、感覚を確かめる。耳を澄ませ、付近のモンスターの気配を探る。
幸い、後遺症がでるほどの傷には到っておらず、また、好戦的な獣の存在も感じられなかった。
それを確認し、彼は軽くため息をつく。

「ルーヴ…あのね」

眠っていなかったらしいアリアが、呟くように問いかけた。
寝ろ、と言いたかったが、声音に含まれる重い調子は、ルーヴェルにそれを思いとどまらせる。

「こないだの…あの子、どう思う?」

誰の事かはすぐ分かった。先日、リンクシェルのトラブルメーカー・黒魔道士ララシャの、「間接的な」知り合いが、たまたまルーヴェルのミッションに同行していたのだった。
アリアと同じヒュームの女性で、しかも同じ白魔道士でもあった彼女は、アリアの所持していた装備を一瞥すると、意図的にルーヴェルにちょっかいを出してきたのだ。
直後にリンクシェル会話によってララシャとの経緯を知った二人は、アライアンス内の空気を壊さない程度に、その娘をスルーしていたのではあるが。


「…やはり、何か言われたのか」

アリアの体がびくっと震えたのを、ルーヴェルは感じた。それは、肯定、だ。

「ララシャが言っていた。弁の立つ者だから気をつけろと。何故早く言わなかった」

ミッションは無事終了していた。
だが、その時に誰かが「珍しい装備を持つオークがいる、倒さないか」と言い出したのだ。
色めきたった人々の中には、ルーヴェルにちょっかいを出した娘もいた。

そして、その娘のいたパーティを救うために、ルーヴェルとアリアのパーティも参戦したのに、彼らは向こうが強すぎると知った途端、瀕死の者を数名置き去りにして脱出したのだ。
アリアは取り残された者を癒すために判断を鈍らせ、結果としてルーヴェル達と分断されて、捕らえられたのである。

「あの時は…」
「混乱して何がなんだかわからなかったの…。だから、『アナタには豚がお似合いよ』って、その時はどういう意味、な…のか…」

言葉の最後が、震えていた。声がくぐもっていた。
ずっと言いたくて言えなかった事が、ようやく吐き出されていたのだ。

「戻ったら、あの子が居て。怪我を治してもらって。ありがとう、って言ったその時」

どういたしまして、と返事をしたその娘の眼は、笑っていなかった。
ルーヴェルもそれは、気がついていた。

「ずっと何でもないフリしてた。向こうも仕方なかったんだ、って。でも、でもね…」

疑念と、疑惑。それでも信じたいと思う心。そのどちらもが、彼女の意思を蝕んでいた。

「怖かったの…!本当は、もの、ものすごく、怖かったんだよ………!」

ルーヴェルの服を掴むその拳が、遅れてやってきた恐怖で震えていた。
経験積んだ冒険者としての、意地と名声が、彼女を無理に押さえつけていたのだ。
熱に浮かされたように、アリアはその時の恐怖と悲しみを、ぽつぽつと語り続ける。

「怖かった…怖かったのよ、ルーヴ………」

疲労で理性の鈍っていた頭は、『欲求のまま』アリアを突き動かしていた。
もう少し彼女が元気であったのなら、それ以上の泣き言を、どうにか抑えたのだろうが。


ルーヴェルもまた、いささか正常とはいえない状態であった。
ダボイ潜入の時のことが原因だと分かっていたので無理強いはしなかったが、
今日に到るまでずっと、アリアは夜の関係を拒否していたのだった。
そんな彼女が、声をつまらせ、涙をこぼしながら、胸に閉まった告白と共に熱い吐息を吐いている。

(オ…エノ、…タイコトヲ、…ロ…)


その時、ルーヴェルとアリアの脳裏で、何かが囁いた。
それはあんまりにも小さくか細くて、ルーヴェルの弱った理性ではそれが、外部からの干渉によるものだという事に気づくことができなかった。
いつか、二人はここにかつて何があり、その影響を受けたのだと気づくのだろうが、今日のこの時は、何も知ることなく、その囁きに身を任せることになるのだ。

ルーヴェルは、ぼうっとした理性のまま、改めて自分の腕の中の、大事な大事な生き物を見つめた。

どくん、と、体の芯が疼く。

誘われるようにして、自分の名を呼ぶ唇に、口付けた。
同時に腕の位置を変え、アリアの小柄な体をまさぐりながら、服の合わせ目を探る。

「もし」

「もしも、あのヒュームが意図的に逃げたのなら」

ルーヴェルは、高位の魔道士が身に着ける白いローブのホックを、慣れた手つきでぷちぷちと外した。
前身ごろがはだけると、肌着の裾から手を差し入れ、下着ごとアリアの胸をぐっと握り締める。
あまりに乱暴なその行動に、苦痛の声を漏らすアリア。


「俺が、殺してやる」


そして、もう一度口付けた。今度はもっと深く。アリアの舌は、からめとられて吸われ、返事ができない。

「あっ」

刺す様な冷気を、腹部に感じたアリアは流石に狼狽した。しかし、拒否の言葉はでてこない。
ひざの上にアリアを横抱きにし、ルーヴェルは人形の服でも脱がすかのように、的確に望む場所だけをほどいていった。
白いローブと対になっている生地のスロップス、その腰の辺りに手を差し入れ、下着ごとするりと剥がしてしまう。

「アリア」
「ああっ!」

返事の代わりに、悲鳴が漏れた。前戯もなにもなく、ルーヴェルがアリアの秘所に指をねじいれたのだ。
骨ばった長い指先が、ぐりぐりと彼女の中を探る。

「あああっ、や、やめて…っ」

しかし、その声にはどこか艶が含まれている。
苦痛と、そして同時に湧き上がる別の感覚に翻弄されて、アリアはもぞもぞと腰を引く事しかできない。
少しでも毛布の中から肌が露出すると、痛いまでの冷気が容赦なくそこを責めるのだ。

「んっ、んんっ、ん、んー……!」

絶え間なく唇が重なり、声が出せないまま、体の内側をかき乱される。
見開いた瞳に、再び涙が滲んだ。

「いや、ルーヴお願い、もっとやさしく…して…っ…いやだ…ぁっ、あ、あぅ…っ」

はぁ、はぁ、と吐息が漏れる。それでも、ルーヴェルは責めるのを止めない。
指を前後するようにして、引き出しては差し入れ、それを繰り返す。
アリアの下半身は靴以外の装備を外されおり、上半身はローブの前が全開になっていた。
肌着はたくしあげられ、下着の金具ははずされて、胸が露になっている。
下手をすると全裸になるより卑猥なその光景は、外である事も相まって、さらにルーヴェルの欲情をそそった。

くちっ、とルーヴェルの指に水音がからんだ。アリアの顔がかあっと朱に染まる。

「俺が、わかるか?」

ふっと唇を歪めて笑うルーヴェルは、アリアの耳に口を近づけてそう囁いた。
そして、耳を甘噛みしながら、ぐいっ、と、更に深く指を差し入れた。
同時に、ぷくりと存在を主張し始めた赤い芽を、空いている指で器用に弾く。

「あっ……あっ!!」

短く叫んで、アリアは体を硬直させ、やがてぐったりと脱力した。

ルーヴェルは手早くブラッカエの前面を開き、がちがちに昂ぶった分身を取り出した。
もがくアリアの姿は、しばらく欲求を溜め込み続けていたルーヴェルを燃えさせるには十分で。
彼はそのまま、腕の中の娘の体を、己の望むままに操る。
自分の体を跨がせるようにしてアリアの脚を広げさせ、向かい合って座り込む。
この体勢が、ルーヴェルは一番好きだった。
アリアの声も、表情も、体全部の重みも、何もかも。自分だけが確かに独占しているから。

「入れるぞ」

一言それだけを言い、ルーヴェルはアリアの体を僅かに持ち上げると、
手を添えながら、的確に彼女の中へと己の分身を導いた。

「!!」

声もなく、アリアが目を見開く。秘所が、進入物を拒絶するかのように締め上げる。
だがそれに構うことなく、彼はアリアの最奥まで突き進むのだ。

「…ルーヴぅ……」

苦痛と快楽に押し流されるようにして、アリアはルーヴェルの胸に縋りつく。
はぁ、はぁ、と漏れる吐息は、すでに開発されて目覚めた「女」のそれで、甘い響きをもって男の首筋に吹きかかる。

「ひうっ」
「ぐ…」

繋がる部分にさらに触れ、擦り上げられたアリアが悲鳴を上げる。
同時にルーヴェルも、その反応によって与えられた快感に、声を漏らす。
熱い体液がとろりと溢れて、ルーヴェルの分身の、その根元にまで滴った。
とうとうたまらなくなって、彼は腰をぐいっと突き上げる。何度も、何度も。

「…ん、んっ。あ、ルーヴっ、ルー…!、…う、あ、はあっ、あ…あ、あーっ…」

外である事を僅かながらも理解しているのか、アリアの声は半端に抑制されていた。
その必死な様が、いじらしくも愛らしい。かえって嗜虐心を、そそる。
小刻みに体を震わせ、目じりに涙を浮かべて、絶え間なく襲う激しい快感に自分に流されまいとでもするように、ルーヴェルに縋り付いて来る。

「アリア…お前、心地よいよ。恥らうなっ、俺には、俺の前では、何も隠すな…っ」

数日にわたって溜め込んだ衝動は、ルーヴェルを乱暴なまでに振舞わせた。
アリアがより声を上げるポイントを探るようにして、わずかずつ角度を変えて、突き上げる。

「やっ!だ、だめ、そこは……ああああっ!!ル、ルーヴっっ!?」

しなやかな背筋が反らされ、一際大きな声でアリアは啼いた。
絶妙な角度でがつんと激しく突かれ、とうとう達してしまう。
それを受けて、ルーヴェルも欲求のままに滾りを放った。
熱い、熱い、その熱が、二人の内側を埋めていく。

くたりとへたりこむアリアを、ルーヴェルはしっかりと抱きなおす。
共に息が浅いが、それでも、その吐息は熱く甘い、生者のそれであった。

「ルーヴ……」

腕の中から、繋がったままの彼女が顔を上げた。
行為の時、感情が昂ぶると彼女はいつも涙を滲ませていた。
それは、初めて抱いた時からずっと変わっていない。

「ルーヴ、大好き…」

うるうると潤んだ瞳で、アリアはキスをねだった。
だが、ルーヴェルはそれに応えない。

「?」

アリアは小首をかしげて、恋人の答えを待った。
しかし、こういう時のルーヴェルの反応を、アリアは忘れていた。
彼はやがて、薄く笑って、アリアに要求をするのだ。

「お願いは?」

リンクシェル仲間や、募集でパーティを組む一期一会の人々には、決して見せる事の無い、女を誘う艶やかな「男」の表情で、ルーヴェルはそう言った。
言われてから、アリアはまた頬を朱に染める。
行為の余韻でぼうっとした理性の中で、しまったと思いながらも、ごにょごにょと、言葉を濁して言いよどむ。

「アリア、お願いは?」

きゃっ、と短い悲鳴が響いた。
ルーヴェルが、繋がったままの場所に手を伸ばし、
溢れて交じり合った二人の体液を、そろそろと塗り広げているのだ。
くちゅ、ぐちょ、と、卑猥な音が響いて、アリアをさらに追い詰める。

「………を、…て、ルーヴ…」
「聞こえない」

意地悪く、ルーヴェルはあっさりと切り捨てる。
耐え切れなくなって、アリアはルーヴェルの首に腕を回してすがりつき、
その耳元に唇を寄せる。

「わたし、を」

恥じらいから、彼女の体がぶるっと震える。
それがルーヴェルにとっても快感となって、アリアの中の分身が擦られ、
徐々に活力を取り戻し始める。

「わたしを…、る、ルーヴでいっぱいに……し、て…」

首に回された細い腕が、ぎゅうっと彼を抱く。
革鎧越しに、アリアの胸元が押し付けられてふるふる震えているのが伝わる。
どれだけ世界が動いても、どれだけ環境が変わっていったとしても、アリアだけはいつも、ルーヴェルの側に居て、おそるおそる彼を求めてくる。

「いい子だ」

腕を解いて、アリアの顎を手で捕らえると、ルーヴェルは噛み付くような勢いで
唇を重ね、その口腔を存分に味わう。今度はアリアも戸惑っていなかった。
ルーヴェルの望むままに舌を差し出し、流し込まれた彼の唾液をこくんと飲み込む。

一度だけ、互いに酔った勢いもあって、アリアに口で奉仕させようとしたのだが、
達したあとはいつも、長く深いキスをする癖があったので、それを思い出し、寸前でやめさせたことがあった。
逆に、自分がアリアにそうすることについては言及しないという、矛盾したところもあったりするのだが。
兎に角、ルーヴェルもどうしてなかなか、潔癖な部分が抜けきらない男だった。

再度満ち足りて昂ぶる劣情を、ルーヴェルは抑制する事も無く押し出した。
狭くて熱い彼女の中を、張り詰めきった分身でどこまでも犯すのだ。
小柄な体が、彼のひざの上でがくがくと揺れて、満足に声すら出せなくなっている。

「あんっ、……っ、…ぅあ、ふっ、あ、んんっ、………!!」

ぐちっぐちっ、と結合部から、白濁した液と、淫靡な音があふれ出す。
やがて、ルーヴェルはふたたびアリアの中に欲情を吐き出すが、それでもまだ、心も体も満ち足りなかった。
繋がり続けたまま、苦しげに身じろぐアリアの行動と姿に、またしても本能を煽られる。

「…!う、うそ、ルーヴ…っ!?」

くるりと体の向きを変えられ、アリアは自分の背中をルーヴェルの胸に預ける形になった。
今度は、骨ばった指が彼女の胸をきつく掴み、そしてもう片方の手で、秘所をより的確に執拗に嬲りはじめる。

「やぁっ、も、もうダメ…お、おかしくなっちゃう…!」

涙交じりの抗議は彼の耳に届かない。首筋にいくつも紅い印がつけられる。
弱いところを、数箇所同時に責められて、もはや逃れる術すら思いつかない。
真下から、脳天まで貫かれるほどに激しく突かれ、アリアの目の前が真っ白になった。

「アリア、アリア…!」

感極まった声で、ルーヴェルは愛しい娘の名を呼んだ。
己の感情、過去の傷、そういった全てを埋めるために、彼はアリアをただひたすらに欲する人間になっていた。
それこそが、リンクシェルリーダーであるパウ・チャの危惧した事とも知らずに。

「お前は、お前だけは俺のだ!俺だけのものだっ…!」

ルーヴェルの股間を、とろとろと熱い液体が湿していた。
そのまま、毛布の広がる地面の上にアリアをうつ伏せに押し倒し、細い腰を抱え上げる。
上半身で巧みに彼女を押さえ込みつつ、背後からさらに激しく体奥を突いた。
その強引さに翻弄されるアリアは、唇を噛み締めてただ受け入れるしかなかった。
互いに、苦痛がなかった訳ではない、でも、それでも。

ルーヴェルも、アリアも、幸せだった。

「く、ア、アリア…一緒に…」

がん、と、体ごと想いをぶつけるルーヴェル。
悲鳴も出せずに、体を硬直させるアリア。

氷点下の空気の中で、二人はただただ、望むままに達していた。
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ようやく体力を取り戻したアリアの魔法により、タロンギ峡谷へ飛んだ二人は、
そこからチョコボに乗って、ルーヴェルの所属国であるウィンダスに向かっていた。
ガルカですら容易に運ぶような体格のよいチョコボを借り、
ルーヴェルは鞍の前にアリアを載せるような形で、歩を進ませる。
つい行き過ぎた行為のせいで服を汚した事もあり、彼女は毛布にくるまったままだった。
ルーヴェル巧みな手綱捌きによって、ゆらゆらと柔らかな振動しか伝わってこないため、
いつのまにかアリアは目を閉じて、軽い寝息を立てている。

土を含んで舞う風も、今は穏やかで。乾燥した空気の向こうに、輝く星空が見てとれる。

「アリア…」

眠る彼女に、聞こえていないと分かっていても彼は声をかける。

「いつか、冒険者を辞める事があれば…。その時はどこかで、静かに暮らそう。
 その時は、一緒に来てくれるよな…?」

彼女が目覚めていたのなら、恥ずかしげに微笑みながら、小さく頷いたのだろう。
そして、ルーヴェルもそれを見て、傷ついた心をまたひとつ、癒されるのだ。きっと。

近い将来、ルーヴェルのその願いが、哀しいほどに望まぬ形で叶う事になるということを、

この時の二人は、まだ、知らない。
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Fin