―・・・大丈夫?
瀕死の私をケアルの柔らかな光が包み、そして、温かい手がさしのべられた。

―・・・ん・・・夢・・・
頭が次第にはっきりとしてきて、のんびりと体を起こす。
何度、この夢を見たことだろう。
まだ新米冒険者の私が何匹ものゴブリンに襲われ、死にかかったとき、助けてくれた人。
ハルバートとの、出会い。
当時、私と彼との間には力の差がありすぎて、一緒に冒険することはかなわなかったけれど
必死で冒険者としての経験を積んで、この前再会したときには、一緒に旅することを許してもらえた。
―そうだ。今日は修道窟でスキル上げするって言ってたっけ。
私は急いで夜着から冒険用着に着替え、カバンを持って、【レンタルハウス】から飛びだした。

「えっ?」
私の申し出を、ハルバートは心底意外そうな声で聞き返した。
やっぱり連れていってくれないつもりだったのね・・・
出会ったころより力の差は縮まったけれど、まだ、私と彼の力の間には全然開きがある。
でも・・・
「ハル、お願いだから私も連れていって」
繰り返した。
「・・・」
ハルは少し、顔を伏せて黙った。長い髪に隠れて、目が見えなくなる。
出会った頃から、ハルはたまにこうなるときがある。
そんなときのハルは、いつもと違って物哀しげな、近寄り難い雰囲気で・・・
「いいよ」
ハルは顔を上げ、少し困ったように笑った。 

ダボイ。
もとは美しい修道院の建つ、エルヴァーン族の村だったという。
それが、十数年前、オーク軍残党の手によって焼き討ちされ・・・
大虐殺の起こった、忌むべき地。
今は、オーク族の基地となってしまっている。
「ダボイかあ・・・」
史実を思い出し、溜め息をつく。
「・・・この地を取り戻すのが、王立騎士団の悲願だよ」
ハルの声は沈んでいた。サンドリア出身、生粋のエルヴァーンの彼のこの地に対する思いは、バストゥーク出身、ヒュームの私とは違うものなのかもしれない。
ダボイには多くのオーク族がいるが、奴らは私たちの敵ではない。
好戦的な種族といえど、あまりに無謀な戦いは起こさないのだろう、ただ私たちをじっとにらみつけるだけだ。
南の壁に洞穴が掘られている。修道僧たちの修行の場、修道窟への入り口である。
「入るよ。ここから危険だから、注意して」
―わかってる。
心の中で頷きを返し、懐から紙で折られた人形・・・紙兵を取りだし、握り締める。
「【空蝉の術:壱】」
拳の中の紙兵が消えた。あたりが陽炎の如くゆらめいた。
これでいざというとき、幻影が身を守ってくれる。
ハルは軽く頷くと、修道窟へと入っていった。

修道窟の中は薄暗く、ダボイにいるそれらより強力なオーク達がたむろしている。
潜入がばれればすぐさま袋叩きにあいかねないので、ハルは【インビジ】の魔法を私たちにかけた。
視覚遮断魔法・・・目で敵を判断するオークには有効である。
ハルの姿は私にはうっすらと見えている。どういう仕組みか、仲間には完全な遮断をしないらしい。
どうしてなのか考えてみたものの・・・
魔道士じゃない私に、その理屈なんてわかるはずがなかった。
・・・と、私の鼻がカビくささ以外の何かの匂いを捕えた。
私は子供の頃から異常に鼻がきく。これは・・・金属質の・・・何か。
もしかして・・・宝箱!
その考えが頭に浮かぶと、私は自分を抑えきれなかった。
愚かなことに、ハルにも言わず、一人で、匂いの方に向かってしまったのだ。
シーフの悲しい性とでも言えばいいだろうか・・・
少し離れた小部屋に、それはあった。鈍く輝く宝箱。
私はそれに駆け寄った。鍵がかけられているが、そんなものはなんでもない。
懐からシーフツールを取りだし、開錠する・・・中には綺麗なイヤリングが入っていた。
「わぁ、キレ・・・」
フンッ。
背後で音がした、振り向けば、【オーキッシュウォーチーフ】が私を見下ろしていた。
―【インビジ】が・・・解けてる
「人間・・・女」
何かを呟いたと思ったその瞬間に、剣が唸りを上げて私を襲ってきた。

私が、斬られて・・・消えた。
否、空蝉の幻影である。
それに気付いたウォーチーフは、二撃目を加えようと再び剣を振り上げた。
急ぎ腰に下げた二本の短剣を取る。
降り下ろされたウォーチーフの一撃を体を捻ってかわす。
その隙に両手の短剣をウォーチーフに突きだす。
左手は盾で防がれたものの、右手はしっかりとオークの巨体を突いた。ウォーチーフがうめく。
そのうめきに反応して、近くにいたらしき【オーキッシュベテラン】が参戦してきた。
一瞬まずいと感じたものの、相手が二匹になっても、私は敵の攻撃をうまく避け続けることができた。
―いける・・・
この程度の実力なら、私一人でも問題ない。
さらに激しく地を舞い、二本の短剣を煌めかす。
オーク達は激怒し、攻撃パターンがさらに単調になる。
余裕のはずだった。聞き慣れない、オークの黒魔法詠唱を耳にするまでは。
「【ポイズン】」
毒々しい輝きが私を包み、さらに一体の幻影が消える。
―まさか・・・
予感は的中した。新たに参戦したのは、【オーキッシュウォーロード】、将軍。
呆然とした私をウォーチーフの剣が襲い、最後の幻影が消滅した。
―まず、張り替え・・・
「【スリプル】!」
睡眠魔法は無防備の私を直撃し、私は途端に眠気に襲われた。
薄れゆく視界の中で、オーク達が、下卑た笑いを浮かべていた。

―・・・う・・・
目は覚めたものの、魔法のせいか、酷く頭が痛む。
まず、手足に異変を感じた。自由に動かない。
―やられた・・・
ようやく状況を理解した。私は手足を縄のような物で縛られ、寝転がらされているようだ。
どうにか後ろ手の縄から手を抜こうとするも、縄が食い込んで酷く痛む。
腰のナイフもしっかり抜き取られていた。
「起ぎだがよ、女」
しわがれた声がかけられた。【ウォーロード】だった。屈強なオークを数匹連れている。
「・・・殺さないの」
声の震えをできるだけ隠す。
「ごろず・・・おどごならごろしでたかもなァ」
「どういう意味・・・」
答えず、ウォーロードが近付いてくる。逃げようにも、動けない。
「おめぇには、おれだちを楽しませでもらわにゃ」
髪の毛を掴まれ、顔を上げさせられる。醜い、しかも下卑たオークの顔。
ここはさっきの部屋ではない。移動させられてしまったようだ。
さっきの小部屋なら、ハルが近くにいた。でも、ここでは・・・絶望が胸にこみあげる。
ウォーロードが手を伸ばすと、側近らしきオークがナイフを手渡した。
「動ぐなよ・・・死にだぐなかっだらなぁ」
オークがナイフを私の服にかける。すぐさま意図を理解した。
「いっ、いやぁぁっ!!」
「うるぜぇっ!」
衝撃が走った、次の瞬間、猛烈な痛みが頬を襲った。
殴られたと理解するまで、数秒の時間を要した。
すーっ・・・と音をたて、コタルディが裂かれていった。
「い・・・いや・・・」
もはや暴れる気持ちはなくなっていた。勝てない。
下着は残されたものの、素肌が風に晒されると肌がぐへへへ、とオーク達が笑う。
「白ぐでぎれいな肌じゃねぇが、女ぁ」
「・・・」
自然に、涙が流れる。

「さーで、そいじゃあいぐぜ」
ウォーロードが、白いブラジャーにナイフを当てる。
上半身を覆うものは、もう、何もない。
「ぎゃははは・・・ぎれいなぢぐびじゃねぇが、・・・新品があ?」
「・・・」
「安心じろや、気持ちよぐじでやっからよぉ」
ウォーロードが顔を近付けてくる。
「あっ、いやぁっ、んぐ」
唇を奪われた。酷い悪臭に吐気がこみあげる。
ウォーロードの舌が必死に閉じた唇をこじあけ、中に入り、うごめく。
恋人同士でする甘いキスではなく、口で口を犯すような・・・
・・・じゅっ・・・ぺちょっ、べちょ・・・
卑猥な音が、小部屋に響く。
どろっ、と、粘性の強い液体が口内に流れ込んできた。
・・・こくん
唾液だ、とわかって必死に顔を離そうとするが、私の頭を固定したウォーロードの手がそれを許さない。
抵抗むなしく、息が苦しくなり、私はそれを飲み込んでしまった。
力が、抜けていく・・・
「ぶはっ」
ようやく、口が解放された。
「どうだよ、オレのツバの味はぁ?」
「・・・」
「ぎゃはは、げんぎねぇな・・・声がでないならだざぜでやらぁ」
ウォーロードが、私の片方の胸に触る。
そして、意外なほど優しく、胸を揉み始めた。
「ぅ・・・」
「どうだ、ぎもぢいいだろ、え?」
白い乳房が、愛撫に応じてぐにぐにと形を変える。卑猥、だった。
そして、次第に胸の先端に変な感覚が生じはじめる。
「ぎゃはは、勃っでぎたぜぃ」
―私は、感じはじめちゃってるの・・・?
答えは、明らかだった。

「こんなにずぐにおっ勃でじまっで、意外に好きものなんじゃねぇのが?」
側近たちが賛成するかのような笑いをあげる。
「そんな・・・ちが・・・ぁあんっ!」
ウォーロードの爪が、自分でも痛々しいほどに勃起した乳首をはじいた。
途端鋭い快感が頭の中を突き抜けた。
「ぎゃはは、いい声だ」
「あっ、あぅんっ、あっ・・・ぃ・・・や」
連続で乳首を弾かれ、思わず声をあげてしまう。
明らかに、艶のある声を・・・
ウォーロードは満足したように笑い、私にのしかかると、再び荒々しいキスをしてくる。
しかも、今度は、胸も激しく愛撫しながら。
「んっ・・・んぐっ・・・」
再び口を離すと、ウォーロードは穿いていたクウィスを脱ぎ、その、巨大な男根を取りだした。
思わず息を呑む。信じられないような、大きさ・・・
「ほら、ごんどはおめぇの番だ・・・舐めろよ」
「・・・」
「ほら!!」
髪を掴まれ、顔を無理矢理に近付けさせられる。
私は、その大きさと臭さに意識をもうろうとさせながらも、舌を伸ばした。
ぺちょっ・・・くちゅ・・・
既に分泌されていた液体と、私の唾で、巨根がぬらぬらと妖しく光る。
「ぐ・・・うめぇじゃねえが、ほんどに初めてがぁ?」
その屈辱的な言葉にも言い返せず・・・ひたすら、その雄臭いモノに奉仕を加える。
堅くそそりたち、どろどろになったモノが私の顔を叩き、顔を汚される。
「いいぜ・・・ほら、ぐわえろや」 

もう、逆らえなかった。
「ぁ・・・んぐ」
その巨根を、口を限界まで開き、受け入れる。牡の臭いが鼻をついた。
「いいぜぇ・・・ほら、舌をづかえや」
「んーっ、んむ・・・むぐ、ぺちゃ・・・んっ!」
ウォーロードが腰を動かしはじめた。もはや、呼吸もままならない。
ぼんやりとする頭で辺りを見回すと、側近達も各々の男根を取りだし、自らの手で激しくしごいているのがわかった。
「ぐ、うぐぉぉ、イクぜぇっ」
モノが、一瞬、さらに膨れあがった。
次の瞬間、私の喉を、大量の精液が叩いていた。
「おぇっ」
口の中から溢れだした精液が体を汚す。
さらに自慰に耽っていた側近達も同時に達し、その放出物は、私にめがけて降り注いだ。
「ぎゃはは、いいザマだぜ、淫乱がぁ」
精液まみれの床で、私は自分の存在が地まで堕ちたことを感じた。
「さで・・・まだ終りじゃあねぇ」
もはや余裕のない身振りで、ウォーロードは私のズボンと下着を剥ぎ取った。
まだ、誰にも見せたことのない秘所が露になる。
もう、そこがどうなっているのか、自分でわかっていた。
「ぎゃはは、ヨダレ垂らしでチンポ食いたがっでらぁ。お望み通り・・・と」
かかり、再びそそりたったモノを、あてがった。
「ぁ・・・っ」
その熱さに、無意識に声をあげる。
「吸い付いてぎやがる・・・いぐぜぇ・・・」
ごめんなさい、ハル。

「【スリプガ】!!」
ウォーロードを含め、オーク達全員に睡眠魔法がかかった。
「シルヴィ!!」
―・・・私の、名前。ハルの、声・・・
「シルヴィ、逃げるよ!急いで!」
私は、ふらふらと立ち上がり、声の主の方へ歩み寄った。
「シル・・・」
ハルが、絶句した。私のおかれていた状況を理解したのだろう。
その時、ハルの顔が、何故か全くの無表情になった。
「・・・逃げるよ。」
「・・・う、ん・・・」
「【エスケ・・・」
シュッ。
突然飛んできたナイフを、ハルは全く慌てずにかわした。
「にがざねぇ・・・きざま、いいところを・・・」
「ウォーロード・・・」
ハルは無表情にウォーロードを見た。
ウォーロードが、側近の持っていた斧を取った。
「抜げ・・・ころしでやる」
応じて、ハルも、剣を抜く。
黄金の柄、青く細い刀身―選ばれし者の剣、ジュワユースを。
「【エンウォータ】」
ジュワユースを、水の魔力が包む。
「いぐぞぉぉぉ」
ウォーロードが、突進した。

「【ブライン】」
「ぐぉぉっ」
ハルが暗闇魔法で目を潰し、直線的になった突進をかわす。
ジュワユースがしなり、ウォーロードを斬りつける。
「うぐ・・・ふんっ」
落ち着きを取り戻したウォーロードの斧がハルを打つが、ハルは平気な顔である。
「ストンスキンがっ・・・」
ウォーロードが歯ぎしりした。
勝負は圧倒的にハルの優勢ですすむ。あたりには、しきりにウォーロードの血が飛び散った。
「ぬぉぉぉっ、ぎざまあああ」
怒りで真っ赤になったウォーロードが、叫んだ。
「我願わん、仇が滅び、我が勝利!【ブラッドウェポン】!」
暗黒の魔力が付与された一撃が、ハルのストンスキンを打ち破った。
ハルは後ろに飛び退くと、魔法を詠唱する。
「【バインド】」
魔力の枷が、ウォーロードを捕えた。
さらにハルが、力を解放する。
「我、時の真理の枷をはずさん・・・【連続魔】!」
ウォーロードが、何かを叫ぼうとしたその刹奈、連続ウォータVの激流が、ウォーロードを直撃していた。
さらに、吹き飛んだウォーロードに向かい駆け・・・宙高く跳ぶ。
「【サベッジブレード】」
何とか立ち上がったウォーロードが、次の瞬間には二つの肉魂となっていた。
ハルが、私を見つめて、呟いた。
「帰ろう、シルヴィ」