ばたばたと強い風の音が耳を打つ。
予想外の風に驚いて、なびく前髪を押さえると、整った眉を少しよせて辺りを見回した。
目の前には青々としたヴァナディールの空が広がっている。
デッキには人影も少なく、風の音と大きな羽を動かす機械音だけが響いていた。
あと2時間もあればサンドリアの港に着くだろう。

どこいっちゃったの……ふぅと小さなため息をつくと、七色のケープで身体をくるむようにして甲板を歩きだした。

「コルト」
不意に低い低い声で呼ばれ、びくりと振り向く。
そこには愛しいエルヴァーンの姿があった。

「ガウリィ…」
風に堅くしていた表情をほっとしたように和らげると、機械室の壁の影に隠れるように座っている彼に近づいた。
ゴウンゴウンという羽の回転する音が大きくなる。
「ガウリィ…さっきはごめんね。その…私が悪かった。」
小さく口にしてみたが彼は振り向きもせず、うつむいて風に吹かれている。
涼しげな銀髪が、猛毒のある爪から造られた赤い装備の肩で揺れた。
コルトが、みたびその名を口にしようと唇を動かしたその時、先程よりも更に低くなったガウリィの声がそれを遮った。
「コルト…こっちにおいで。ここに座れ。」

…やっぱりまだ怒ってる……。
コルトは心の中でがっくりと肩をつくとガウリィの横に腰を下ろした。
「そこじゃないよ、コルト。分かっているんだろう。」
静かに、それでも強くガウリィが言う。
コルトは整った顔を困ったように一瞬曇らせてガウリィに視線をやったが、さらさらとした前髪がうつむいた彼の表情を隠したままだった。
「………」
機嫌の悪い彼に、何を言っても通らない事は分かり切っている。
コルトは黙って立ち上がるとガウリィの前に回り、その深緑色の七分丈のズボンの膝にそっと体重を預けた。

ケープ越しの背中に彼の体温を感じる。
寒いか?耳元で呟くと、俊敏性の増す大きな漆黒のケープでコルトの膝も包んでくれた。
大きなエルヴァーンの身体にすっぽりと包まれると、コルトはまた一つ小さく息をついた。
人のいる場所で重なり腰を下ろす行為を、コルトは好まなかった。柱の影とはいえ飛空艇も例外ではない。
「あの…ガウリ……っ?」
いい終わる前に長く細い、外気に冷たくなった指が唇を塞ぎ、ゆっくりと歯列をなぞった。
「………」
再び眉をよせ小さく抵抗し、その堅い指をそっと自分の手で包む。
「怒らないで、ガウリィ…」

表に見せる聡明で快活な顔の下にある、人一倍の独占欲を知っていたのに。
またやっちゃった…コルトは後悔で伏せた睫毛を震わせた。
ガウリィはコルトの肩越しからそんな不安な表情を暗い眼で見つめていた。
氷の色の瞳の奥に激しい嫉妬の霧を渦巻かせて。

そもそもの始まりは、ジュノの乗り場だった。
たまたまコルトの知り合いが同じ便を待っていたのだ。
手を振り合って挨拶をしあうコルトとヒュームの青年。
ガウリィはそれを傍で見ていたが、その青年がふいにガウリィを一瞥すると言ったのだ。
「コルト、今度またあれ付き合ってw」

「ぷっ!あれってなに。雪山のENMでしょ、いいよw」
笑いながらコルトは快諾した。
確かに白魔導士がいなければ不便だろうが…しかし…しかしなんと思わせ振りな!
敏感に敵意を感じ取ったガウリィはすっと表情を固めると、ヒュームの青年を切れるような眼差しで一瞥し返し、丁度滑り込んできた船にずんずんと乗り込んだ。
「あ、待って待って」
パタパタとパンプスの踵を鳴らせてコルトが追ってくる。
橙のランプの灯る広い客室には、そこそこの喧騒があった。
ガウリィは手近なビロードのソファにどかっと腰を下ろすと目を閉じた。

「よいしょ」
ふわっとコルトの香がして、とすんと彼女が横に落ち着く気配を感じた。
と、同時に
「よいしょとか言うなよwおばさんかーいww」
能天気なあの青年の声もした。
思わずむっとしてしまったガウリィは、端正な鼻筋にしわをよせると、薄く開きかけた瞼を再び合わせた。
すると青年はコルトの背中越しに今度はガウリィの装備をのぞきこんだ。
「彼、お金持ち装備だね。コルトが良い装備してるのも分かるw」
小さくコルトにささやいたのが聞こえてしまった。
どういう意味だ、このガキ!飲み込んでガタンと椅子を蹴って立ち上がる。

腕を組んで操縦室横の壁にもたれかかっていたガウリィの肘に、コルトが触れてきた。
「ここは景色がいいね」
にこにこと窓の先の走る景色を見つめている。
「あいつのおもりはいいのか?」
「おもりって…彼は成人の儀をすませているわよ」
コルトが陽だまりのような笑い声をあげて言った。
「お前が金で動くと思うような男がか。」
ここでようやくコルトがガウリィの冷たい瞳に気付いた。
「…ガウリィ。聞こえちゃったのね。あれは、そういう意味じゃないってば」
彼は、少し天真爛漫なの。おかしそうに言うコルトに無性に腹が立った。

「そういう事じゃない、お前が馬鹿にされてんだ。」
苛立ちを隠せずに吐き出すように言うとコルトは言った。
「あのくらい能天気じゃないとやってけないのかもね」
悪い人じゃないよ、と笑う彼女にどこまで無頓着だ、と言い掛けて凍り付く。
あの青年が/Kiss コルトのモーションを出してきたのだ。思わず腰の刀に手が伸びそうになる。
けらけらと笑って彼を叩いて客室へ追い返すコルトの肘をつかんだ。
いい加減にしろよ…?と唸るように呟く。
「お前は桟橋で抱き締めようとすると嫌がるね…なのに今のはなんだ…?言ってみろ。」

「痛…痛いよガウリィ、挨拶みたいなもんでしょ…」
大きな瞳を驚いたように開いて見つめてくる。
彼はいつもああいうノリだから気にするほうがおかしいよー、発してからコルトはしまったと思った。
「いつも…?」
いつもあいつのキスを?道端で?俺が肩を抱くのも恥ずかしがって逃げる癖に?
「か、彼のは冗談でしょ…痛、ちょっと」
逃れようとするコルトの両肘をつかむとぐいと引き寄せる。
船員がそんな二人の様子を窓越しにちらと見てまた進路へ視線を戻した。
ギラギラとした蒼い瞳でコルトの少しうるんだ瞳を間近に射す。

そのまま彼女の薄い上唇を噛んだ。
「や…!」
仰け反って逃れようとする後頭部を無理矢理押さえ付けて、再び、今度は下唇を噛んだ。
やだ、やー…!周りに少しでも悟られまいと、細い身体が小さくジタバタともがくが無駄な抵抗だった。
「何故逃げようとする?挨拶だよコルト。」
冷淡に微笑を浮かべて、なおも深く彼女の口腔を犯そうと強く引き寄せる。
しかし、人目を嫌うコルトが恥ずかしさのあまり紡いだ魔法が一瞬速かった。
ぱしゅっ!という弾けるような小気味の良い音と共にガウリィの瞳にまばゆい閃光が焼き付いた。

とっさに瞳を覆った骨張った長い指をゆるゆると降ろすと、はぁはぁと泣きそうに息をつくコルトの姿がぼんやりと見えた。
「ごめん…でもおかしいよガウリィ…どうしちゃったの」
瞳にかかる銀髪の隙間にほんの一瞬翻った、深い哀しい色にコルトはハッとした。
泣きだしそうにさえ見えた。が、それはすぐに影を潜め、代わりに
「あのガキと仲良く遊んでいればよい。能天気なによりだな」
という普段より低い、任務遂行時に聞くような感情なしの言葉が降ってきた。
――普段足音をたてない彼の遠ざかってゆく足音が、何故か大きく感じた。

――はたはたとなびくチュニックの襟を少し押さえると、もう一度謝ろうとコルトは背中の男を振り返った。
すると息がかかるほど近くにガウリィの整った細い瞳が自分を覗き込んでいる。
「あ、あのね、本当にさっきは…」「キスしてよい?」
遮るように強く、しかし静かにささやいた。
「あ、あう…あの」
真っすぐに射られてコルトは視線を膝に落とした。
そらすな。言うと彼の腕が伸びてきて華奢な顎を捕えられ、また顔を上げられてしまう。
恥ずかしさできゅっと閉じた睫毛が震えている。
「したい…、するよコルト」
顎にある指先に力を込めた

ふっと陽が陰りガウリィの唇がコルトのそれに重なった。
やさしい気配がしたと思った瞬間、ガウリィの舌が軽く開いた歯列を乱暴に割って侵入してくる。
「ん…!?」
びくりとコルトの身体が強張るのが分かった。
それでも構わずに何度も角度を変え、更に舌の根元まで貪るように吸う。
彼女の肩を引き寄せ、半ば上半身をひねらせ振り向かせるようにして、逃げる頭を強く押さえ付けて、故意に卑猥な音を立てて吸い続けた。
「んぅ…!…ぃあっ…!」
どんどん、と彼の肩を叩いていたコルトの力が弱まってきた頃、ようやく唇を離す。

小さく震える唇の端から滴る液を、親指で拭ってやる。
するとコルトが、はぁはぁと呼吸を乱しながら、焦点の合わないような瞳で見上げてきた。
……コルト。
…ぞくりとガウリィの背中に残忍なまでの欲望が駆け上がってくる。
「お前は俺の物なんだよ、コルト。分かるかい?」
やさしく言いながらも、美しい唇は冷淡な微笑で歪んだ。
ふふ、と笑ってうん、と小さく頷いた彼女の頬を大きな手のひらでぐいと掴む。
「…あう!?」
……縛り付けて、泣かせて泣かせて、壊したい。狂おしい衝動。
「…俺の物だって、分かってないだろう?うん?」

「分からないなら、分からせてやろうか。」
言いながらガウリィの右手がコルトの腰紐をほどいた。
後ろから抱きすくめるように、左手できつく掴んだコルトの頬をのけぞらせた。
「……っ!?」
そのまま右手を彼女のズボンの中へと滑り込ませる。
やだ…こんな場所でやめて…。
きつく両脚を閉じようとするが、ガウリィの長い指は、既に柔かい茂みに辿り着いていた。
涙目で訴えるコルトの視線を雪解け水のような視線で跳ねつけると、薄い微笑みを浮かべて言う。
「おとなしくしていろ…。痛くしないと分からないか?」

「………っ。」
身を竦めたコルトはきゅっと瞼を閉じた。
まだ濡れていない秘所に、ゆっくりと骨張った指が侵入してきたのだ。
表情を楽しむように時間をかけて第一関節まで沈める。
「や……や…」
コルトは小さく震えながら冷たい指の感触に耐えていた。
ガウリィは柔かい部分に埋まった指先をゆっくりと上下させ始める。
ぴく、とコルトの身体が強張ったのを見てとると、にやりといやらしく唇を歪めた。
ず…と第二関節まで指を沈める。
「……あっ。」
かあっと頬を染めたコルトの身体が跳ねたが、かまわず、更に奥まで侵入させてゆく。

根元まで沈め終わると、再びゆっくりと指先を上下させ始める。
「…あぁっ……う」
首を振って訴えるコルトの意志に反して、くちゅ、くちゅ、とガウリィの指先が潤いを捕らえた。
くく、と喉を鳴らしてガウリィがささやく。
「濡れてきた。」
コルトは羞恥のあまり更に頬を染めて、ぶんぶんと頭を振り逃げようとしたが、ガウリィの左手が、今度はチュニックの上からきつく胸を掴んだ。
「ひ……っ。」
思わず身を縮めた瞬間、すばやく引き抜かれた右手で、ズボンと下着を膝まで降ろされてしまう。
「…やぁ…」
大きなケープの中とはいえ、外だ。

ケープの隙間からひゅうと入ってくる風を、剥き出しにされた尻に感じ、コルトは狼狽した。
「お願い…もうやめ…っ」
押し殺した言葉は最後まで紡げず、びくんと硬直する。
ガウリィの指が再び、潤い始めた割れ目にくちゅりと埋まったのだ。
じっくり、じっくりと時間をかけて根元まで埋められ、また第一関節まで引き抜かれる。
「は…ぁ……」
同時にいつのまにかチュニックの中に滑り込んだ左手が、柔かな膨らみの先にある突起に辿り着き、くりくりと擦り上げていた。
いやぁ…あ…コルトは小さく呟きながらも、指の動きに翻弄されていく。

「もう一本ここに欲しいんじゃないか?欲しいと言ってみろ」
言いながら不意に秘所を激しく掻き回した。
「……!!」
急な責めに声があがりそうになり慌ててうつむくが、ガウリィは楽しげにその様子を一瞥すると、更に言った。
「いやらしいな…音が聞こえたよコルト。もう一本じゃ足りないようだ」
くちゅ…くちゅ…執拗に中を蹂躙する中指に加え、人差し指が飲み込まれていく。
コルトはそれを制止させるかのようにガウリィの手首を掴んだが、逆に細い手首を捕えられ、先程解かれた腰紐でぎりりと後ろ手に縛られてしまった。

「さぁ、これでもう抵抗できないな…。恥ずかしいかい…?」
言いながら両手でゆっくりとコルトの脚を広げてゆく。
ケープの中で、くちっ…と音をたて、秘部が全開にされてしまった。
「あぅ…やぁ…」
沸き上がる羞恥と快感の切れ端に、コルトは為すすべもなく震えている。
濡れそぼったソコにガウリィの指が、今度は二本差し込まれた。
「…ぁあっ!」
細い腰が跳ねる。
左手で小さな乳首をつまみ擦りあげ、
「下の坊やに見せてやろうか。お前の今の姿」
意地悪く笑いながら、蜜に濡れた震える芽を、爪できゅうと潰すように刺激する。

「ひっ…いぃ…!」
ガウリィの執拗な秘所への責めに、ずぶ!と奥まで差し込まれた瞬間に、コルトは達してしまう。
目尻から涙を溢しながらも、声も無くびくんびくんと跳ねるコルトを見て、ガウリィは更に欲情した。
いまやケープの中のコルトは、チュニックをたくしあげられ両の突起を弄ばれ、両脚は彼の膝の上に大きく開かれた格好で乗せられ、その脚の付け根の恥ずかしい穴には、男の長い指を二本もくわえ込んだ、淫美そのものの状態であった。
履かされたままのブーツの踵がカツンと甲板を蹴って音を立てる。
「下の船室で犯してやろうか」

「……!!」
コルトは瞳を見開き、ぐちゃぐちゃと掻き回され続けながらも、必死でかぶりをふった。
「そうすれば、お前が俺の物だと知らしめられるだろう?」
ぐいとコルトの前髪を掴んで意地悪く言う。
「んぁ……やぁ…ぁぅ…」
喘ぎながらコルトがキスを求めてくる。
「気持ちがよいか?どうしてほしいんだ?」
彼女の唇を、首をかしげてかわすと問うた。ぐり、と蜜の中にある蕾をひねり、こする。
「やぁ゛…っ!あ、ぁ」
再び達しそうになるが、きつく捻りあげられ、嬌声が悲鳴に変わる。
「いきたいか?いやらしいなコルト。認めるか?」

「言ってみろ、自分は何をどうされているか…言え」
「あぁっ…!!」
差し込まれたままの指をぐりぐりと上下され、悶絶する。
「わ、わたし、は…、ゆび、を入れられてぇっ……あぁんっ!」
「どうした、きちんと言えなければ、いかせてやるわけにいかないな。また…自分でイクか?」
ガウリィの言葉にコルトの瞳が潤む。
以前にもガウリィを怒らせ、明かりのついた部屋で自慰行為を強制され、何度も達するように命令された挙げ句、後ろを犯された事があるのだ。
やぁ…あぁ…恥ずかしいよぉ……荒い息をつきながら、コルトがあえぐ。

ぐちゅ、ぐちょ、ずぷ
「あぁ…!ガウリィの、ゆ、指ぃ…いじられていっちゃうのぉ…!」
ぐちゅ…ずちゃぁ…!ガウリィは、更に三本目の指をコルトに飲み込ませる。
「どこをいじられてイクの?」
激しく乳首をつまみねじり、下の朱い蕾をめちゃくちゃになぶり、いたぶる。
「い、ぁ、あ゛っ…ひぎ…っ…わたしのぉ、オマンコぉ……いくぅ、いっちゃ、ぅ…っ、ぁあ…っ」
一際大きくコルトの身体が跳ね、開かれた両脚がガクガク揺れた。
くわえこまれたままのガウリィの指に、きゅうきゅうと膣の痙攣が伝わってくる。

数秒の後、ぐったりと彼の胸に頭を預けるコルトをガウリィはじっと見つめた。
ぎゅう、と抱き竦める。
「…コルト、お前は俺の物なんだ。分かったか…?」
しかし、当のコルトは頬に涙の跡をつけたまま、彼のケープの裾をつかんでぐったりと意識を手放している。
やりすぎたか…?つと後悔の念が胸を掠めたそのとき、飛空艇が高度を下げ始めた。

まもなく、サンドリアに到着致します。
ガイドの声が響く。
ガウリィは、手早くケープを肩からはずすと、下半身があらわになったままのコルトをすっぽりとくるんだ。

長い船旅で疲れ眠りに就いてしまった恋人を、優しく運ぶエルヴァーンの青年の姿。
人々の瞳にはそう映ったであろう。

青年が、昂ぶった己自身を隠すように彼女を抱いていたのと、彼のカバンの裾から、どうみても女性用の下着がのぞいていたことは、誰も知らない。

―――やがて長身のエルヴァーンの青年と、安らかな寝顔のヒュームの少女のカップルは、港の喧騒の中に消えていった―――。


【おしまい】