ミスラ F3A
ガルカ F8B
「お疲れ!また明日な!」
ヒュームの男が俺に手を振りながら遠ざかっていく。
儂はそいつに大きく左右に2度手を振り見送った。
バストゥーク鉱山区にあるツェールン鉱山で儂達炭鉱夫は日々働く。
疲れた体を引きずりながら我が家へと向かう帰路。いつもどおりの道。
活気溢れる大通りを過ぎ人気の無い路地裏を通り、次の曲がり角を曲がれば憩いの我が家へと辿り着く。
日が沈み鼻腔をくすぐる香りが周囲から立ち込める。その匂いの元を模索しながら歩を進めていた儂の耳に小さな泣き声が入り込んできた。
「.......」
微かにしか聞こえないが音の元へと踵を返す。
その声の主は家と家の間にあるわずかな隙間から発していた。そいつは儂から見ればとてもとても小さな子猫。
儂の姿を見ても怯えるどころかにゃあにゃあと鳴きながら足元へとにじり寄ってきた。
「捨て猫か?」
儂はその場にしゃがみ込み子猫に対して大きな手を差し出した。首輪も付いていない野良猫。
野良猫は儂の手に体を摺り寄せごろごろと喉を鳴らして目を細めていた。
「ほら、来るか?」
片手で子猫の首の後ろの皮を掴み持ち上げ、左肩を子猫の床として提供する。
別段暴れる事もなくその場所を気に入った子猫は顔を洗いながら時折大きな欠伸をしていた。
「Addledegg」
字がかろうじて見えるぐらいの薄汚れた表札を掲げる家へと儂は入っていった。
そう儂の名前はAddledegg。みなからはエッグと呼ばれ親しまれている。
もちろんこれはヒュームどもが勝手に名付けただけで儂のガルカとしての名前はもう一つあった。
残念ながら長いこと語ることもなくなった名前を儂は失念してしまっていた
部屋につくと冷たい石床に客人を座らせる。
「にゃあ」
儂の顔を見ながら子猫は鳴く。丸々とした目が愛らしい銀色の毛の子猫
「腹でも減ったか?」
「にゃあにゃあ」
人の言葉など理解できるはずも無いだろうが、儂は小皿に冷やしておいたセルビナミルクを注ぐ。
3日程前に買ったものだが・・・寒い冬場では腹を下すことも無いだろう。
子猫の前に小皿を置くと、腹を空かせていたようで夢中でペロペロとミルクを飲み始めた。
「ぐうぅぅぅぅ」
儂の腹の虫が鳴く。保存庫を覗いてみてもろくな食べ物が入っていない。
給料日まで後2日・・・熱々の焦げのあるガルカンソーセージを腹いっぱいに食べたいが今はそんな金もコネも無い。
保存庫の中から干し肉を手に取り、くちゃくちゃと口の中で弄ぶ。食い飽きた食事だが贅沢もいえる立場でもない。
儂は貧乏なのだ.・・・
やがて食事を終えた子猫と目が合い、にゃあにゃあと鳴き声をあげながら儂に寄り添ってくる。
「お前さんの食事はもうないぞ。飯にありつきたけりゃ他をあたんな」
干し肉の歯ごたえを楽しみつつ唾を飲み込み、質素な食事を楽しむ儂の体に子猫が登り始めた。
目的は儂の食事なのは明らかだ。
猫が食べれるか分からないが口の中で小さな欠片に噛み千切り、舌の上に乗せ子猫に差し出してやる。
貪欲な子猫が匂いを嗅ぎ、少しためらったもののパクリとそれを拝借していった。
次の瞬間部屋に眩い光が満ち溢れる
「うおおおおおぉ!」
儂は思わず大声をあげ、光をさえぎるように手をかざし目を細めながらその発光の元を見据えようとした。
しかし魔法のように明るく、直視することが出来ず発光が収まるまで待つことにした。そして数秒後...
光がなくなり、先程まで子猫が居た場所には素っ裸のミスラが立っていた。
「うニャ?」
ミスラは一鳴きしてきょとんとしていた。そして自分がいる周囲を見渡す。
石壁、石床に天井からぶら下がるランプ。部屋の隅にある保存庫以外なにもない部屋。
そのミスラが注目しているのはわしの存在だった。二人の視線が合い暫くの沈黙。
「ここはどこですか?」
ミスラが儂に問いかける。
「儂の家だ。おぬしは?」
今度は儂からミスラに質問する。その問いに真剣な表情で考え込んでいた。
答えを待っている間にバストゥークではめったに見かけることの無いミスラ族の姿を食い入るように見つめた。
銀色の髪を顎の辺りでまっすぐそろえ、顔には髪の色と同じような模様が数箇所、
女性らしい膨らみに秘所を覆い隠す頭髪と同じ色の恥毛。
ガルカと比べるとひ弱で簡単に折れてしまいそうな手足。
儂の物とはちがう細い尻尾が別の生き物のように左右にふりふりと揺れ動いていた。
「あの・・・」
物珍しさに見入っていた儂にミスラは話し掛ける。
「ん?」
座っていた儂は下から見上げながらミスラと視線を合わす。
それにしても裸で居ることが恥ずかしくないのか恥部を隠そうともせずミスラは話を始めた。
「私はシル=クフィーナです。悪い魔女によって猫の姿に変えられていました」
面白いことを言う。わしにとって魔法とは縁の無いものだが目の当たりにした以上信じないわけにもいかない。
「で、おぬし。シルクヘ...シク...シ、シ...」
「シルと呼んでくださいませ。猫の間の記憶はおぼろげにしか残っていませんが、救っていただきありがとうございます」
どうも長い名前は覚えにくい。ミスラの助け舟がうまく儂を救ってくれた。
「魔法で猫になったものは殿方の接吻により魔法が解けると魔女が言っておりました」
「ほほう、おぬしの呪いは解けたんじゃな?」
しかしミスラは首を横に振って話を続けた。
「おぬしではなくシルと言う名前があります。そして呪いにはまだ続きがあります」
「まだ何かあるのか?」
「それはミスラに戻った際に接吻を交わしたものと3日以内に体の契りを交わさなければ命を落としてしまいます」
「!?」
儂は言葉を失い口をパクパクと金魚のように開閉させた。
直立していたミスラは儂の胸に飛び込んで顔を見上げてくる。
「無理を承知で御願いします。私をのろいから助けてください・・・」
このミスラにしても災難だろう、よりによって儂のようなガルカに呪いを解かれたことが・・・
「御館様、私の命を救ってくださいませ」
ミスラの手が岩のようにゴツゴツとした儂の体を撫ぜる。
儂は視線をさえぎるように目を閉じゆっくりと左右に頭をふる。
「すまぬがその願いは聞いてやれん」
「どうしてもですか?」
悲痛な声が耳に届く。
ミスラを体から離すとわしはゆっくりと立ち上がった。
床に座り込むミスラを見下ろしながら大きくため息を吐き口を開く。
「残念じゃが、儂は女を抱くことはできん。ガルカとはそういう生き物だ」
嘘ではない、儂のモノは十数年そういう状況にあっても変化を見せることが無かった。
目の前で裸の女が居て、抱きつかれても平常心のままそれが変化を見せることは無かった。
ある事件以来性欲というものを感じることは皆無に等しかった。
生殖器としての機能はすでに失っているといっても過言ではない、
儂のそれはただの排泄器官としてしか役割を果たしていないようだった。
ミスラの表情がくもり、頭を垂れ床を見つめていた。
「分かりました。...もし迷惑でなければ3日間ここで生活させていただけませんでしょうか?」
悲しみが溢れ、今にも泣きださんかばかりの震えた声でミスラは必死に言葉を紡いだ。
「うむ・・・それぐらいはかまわん。おぬしの気の済むまでここにいれば良い」
「ありがとうございます御館様。・・・それと私はおぬしではなくシルという名前があります」
ミスラは床を見つめたまま礼を言う。彼女の座っている場所に水が滴り床を濡らしていた。
.............重い。
寝苦しいことこの上ない。
冷たい床の上にミスラを寝かせるわけにもいかず、儂の体の上で寝るように言ったのが間違いだった。
灯りを消してからミスラのすすり泣きは止まず、かける言葉が見つからない儂は優しく体を撫ぜてやるだけだった。
余命がわずかだからか?故郷が恋しいのか?
その理由も聞くことはできずミスラが寝付くまでずっと見守っていた。
寝不足になって明日の仕事に支障がでなければよいが・・・
思ったより疲れは残らず儂は目覚めた。
と、同時に目を覚ますミスラ。
「おはようございます、御館様」
「おはよう。寝れたか?」
儂の顔を覗き込むように胸の上からミスラが顔を上げる。
暗い部屋では表情は伺えないが泣き疲れて目を晴らしてないかなど心配してしまう。
石壁の一箇所だけ開いたところから外の光が差し込む。
昼間はこの部屋に唯一の光源だ。
その灯りをたよりに慣れた手つきで保存庫を開け食料を取り出す。
干し肉を2つ・・・
1つはミスラに渡し、もう一つを自分の口へと放り込む。
くちゅくちゅとかみながら唾液で口を満たし飲み込む。
明日の給料日まではこれ以外の食い物は仕事場で出る昼食だけが頼りだ。
「腹が減ったら保存庫に今のが入ってるから食えばいいぞ」
「ありがとうございます」
就業時間が時間が迫り儂は家の扉を開けようとした所で手が止まる。
「いってらっしゃいませ、御館様」
ミスラの見送りの声で止まったわけではない。
「おぬし、ずっと裸でいるのもまずかろう」
踵を返し、ただ一枚の着替えであるワーカーチュニカをミスラに手渡す。
儂は自慢じゃないが今着ている以外にミスラに渡した服しか着替えが無い。
むろん必要でないものを持つまでも無いというちゃんとした理由もある。
ミスラにとっては大きな服だが、上半身どころか膝まで隠せるから十分に役目は果たしている。
「では、いってくる」
今度こそ扉を開け、部屋を後にする。部屋の中に着替えでてこずっているミスラを残して。
「いってらっしゃいませ、それと私にはシルと言・・・」
扉を閉めるとミスラの声は最後まで聞こえなかった。
一日の仕事を終え家路に着く。
その途中の道で古い毛布が捨てているのが目に付いた。
周囲を見渡し誰もいないことを確認し、その毛布を手に取り品定めをする。
ごわごわとしているものの暖を取ることは出来そうだ。
再度周囲を確認しその毛布を自分のもののように家へと持ち帰る。
誤解を招かないように言っておくが、儂はいつもこんなことをしているわけではない。
家の扉を開けると何者かの気配がする。
「おかえりなさいませ、御館様」
もちろん昨日から住み着いた同居人の声だ。
真っ暗な部屋に灯りを灯し、ミスラの姿を確認する。
今朝渡したワーカーチュニカのみという格好。部屋で生活するなら十分だとは思う。
「御館様、これを・・・」
ミスラが出してきたのは200Gilだった
「どこでみつけた?」
外に出たのかと聞くほうが先だったかもしれない。
「町で困っているお母様が居たので、子供のところへ指輪を届けたお礼に頂きました」
「ふむ、ならそのお金はおぬしが持っていればよかろう」
ニコっと微笑むミスラ。その顔が一瞬にして曇ったかと思うと
「御館様!何度も言いますけど私にはシ・・・」
ぐうううぅぅう
言葉の途中で大きな音でミスラの腹の虫が鳴いた。
「腹が減ったのか?昼は?」
ミスラは顔を朱に染めつつ首を左右に振った。朝に食べたきり儂の帰りを待っていたというのか・・・
保存庫から干し肉を3つ取り出し1つを口に含み、残り2つをミスラに手渡す。
「ほれ、昼の分と夜の分だ」
ミスラは儂の手から1つだけ干し肉を取ると、深々とお辞儀をする。
「ありがとうございます、御館様。1つ頂きます。もう1つは大切に保存しておきましょう」
「うむ・・・・・」
無理に渡すことも無いだろう。あいにく儂の稼ぎで居候を養えるほど余裕は無い。
少ない食事、家具の無い食卓、ただいつもより干し肉が美味しく感じたのは気のせいだろうか。
食事を終え何も無い部屋ではやるべきことは1つしか残っていない。
「寝るか」
明日に備えて睡眠をとるだけだった。
ミスラはこくりと頷く。
「ほら、これを使え」
道中で拾った振る毛布をミスラに渡す。
それは小柄なミスラの体を覆い隠せるほど大きなものだった。
「これは?」
「知らんか?毛布だ。さすがの儂も昨日は寝苦しかった。床に敷けば寒さはしのげるだろう」
回答の意味が違ったのか合点が行かない表情のミスラ。
それには構わず天井からぶら下がっている灯りを消すと、部屋は一瞬にして暗闇に変わる。
「暖かいです。御館様ありがとうございます」
大の字に寝転んだ儂の隣へとミスラは毛布に包まり近寄ってくる。
「うむ」
短い返事をし、目を閉じるとすぐに眠りにつく。
明日は清々しい朝を迎えれそうだ・・・そして儂の意識は途切れた。
翌日、仕事を終え待ちに待った「給料」が手に入った。
それを持って儂の向かう先は家ではなく大工房の2階にある食堂だった。
「おやじ、いつものをくれ」
店主を見つけるなり定番の品を注文する。
「おうよ、用意はしてるぜぇ。ガルカンソーセージ1グロスだな?」
店主の返事より先に儂の視界に上手そうに食事を楽しんでいるミスラが映った。
冒険者風の装備になんらかしらの魚を焼いたものを食べている。
「おいエッグ、1グロスでいいのか?」
店主がミスラの食事に見入ってしまってる儂を催促する。
「まった、今日はいつもの半分・・・いや1ダース。1ダースだけで良い」
脳裏に儂の帰りを待っているミスラを思い出しそう答えていた。
「なんでぇ、賃金でも減らされたのか?」
店主のおしゃべりは有名だ。変な噂を流されないよう曖昧な返事をする。
家でミスラと同居していると言ってしまったら最後、1日でバストゥーク中、いやヴァナディール全土に知れ渡ることだろう。
「ほらよ、パン屋の1ダースだ!しっかり味わいな」
店主が小さな麻袋を手渡し引き換えに代金を支払う。
いつもなら担いで変えるはずの袋を片手にぶら下げ家路へと向かった。
「美味いか?」
儂がすでに10本のソーセージを平らげている最中、ミスラは未だに一本目にかじりついていた。
熱々の中から汁があふれ出るこれは儂の大好物だ。
本来なら今日だけで50本は胃袋に消えるところだが、今日は13本しか買っていなかった。
「お、おいひ・・・いでふ」
口の中で躍らせながら、ミスラは残りを頬張る。猫舌とは厄介なものだ。
「ところで好物の魚はなんだ?」
「はひ?」
間抜けな返事を返すミスラ。
「明日の晩飯に食わせてやろうと思ってな」
ミスラは驚いた拍子にごくんと口の中のソーセージを飲み込んだ。
そして顔が徐々にくしゃくしゃになり目に涙をためながら口を開いた。
「おやかたはま〜きもちらけでうれひいです」
おそらく舌を軽く焼けどしたのだろう。半泣き状態でろれつが回らないミスラが喜ぶ。
いつもより豪勢な食事を終え、儂らは寝る仕度を始める。
「御館様、私の御願いをきいてもらえますでしょうか?」
「ん?なんだ?」
「あの・・・その・・・」
言いづらそうにミスラはもじもじと体をくねらせる。
「言わないなら寝るぞ」
ミスラを横目に灯りを消そうと手を伸ばす
「御館様の!その・・・御奉仕させていただけませんか!」
儂の動きが止まる。赤面するミスラ。
「ダメでもかまいません。お口で御館様のモノを御奉仕させてください」
儂はランプに伸ばした手を戻し頭をボリボリと掻く。
「むむ・・・構わんが。期待せんほうが良いぞ」
ミスラが元の姿に戻って2日目。3日のうちに契りを交わさなければ死ぬと聞いている。
性欲など感じないが、このミスラを救えるならたやすいことだと思う。
「では・・・恥ずかしいので見ないでくださいね」
儂は仰向けに寝転び天井を見上げる。
肌着や下着を脱ぎ捨て、産まれたままの姿でミスラの行動に身を委ねた。
ぺちゃ・・・ぺちゃ・・・
うな垂れるイチモツを手にとり、先端から舐め始める。
腹の向こうに見えるミスラは時折顔にかかる邪魔な髪を指で掻き揚げる。
んぐ・・・んんぅ・・・
小さな口に頬張りねっとりと暖かいものが儂自身のモノを包み込む。
唾液と舌が絡みついてくる。
ミスラ独特のザラザラとした舌がこそばゆい。
背筋にゾクゾクと寒気とは違った何かが体を刺激する。
ちゅぱじゅ・・・ぢゅる・・・
頭を上下に揺らし、ミスラの口を儂のモノが犯している。
覗き見えるモノが黒光りし、出入りするたびに淫猥な音が静か暗部屋に響く。
どれほどの時間そうしていただろうか。
・・・・・・残念なことに必死の奉仕もわしのモノはまったく変化をみせなかった。
「御館様。ごめんなさい・・・」
「うむ。気にするな・・・寝るぞ」
あやまるな。おぬしの悲しむ顔を見れば見るほど儂は自分を、過去を憎んでしまう。
心で呟き、部屋の明かりを消す。
お互いの顔すら確認できない暗闇。
今の儂にとっては都合が良かった。
翌日家へ向かうはずの足は大工房へと寄り道をしていた。
自慢じゃないが儂は魚の種類には疎い。
店主に出来るだけ美味しい魚を見繕って腕を奮ってもらう。
ついでガルカンソーセージも買ってしまう・・・自分に素直な男だと苦笑する。
家路の道を歩きながらミスラの喜ぶ顔を想像すると顔がほころぶ。
はたから見れば気持ち悪いガルカだろう。
家の扉を開け暗い部屋に足を踏み入れる。
「・・・・・・おい?」
不思議なことに人の気配はしなかった。
部屋の明かりをつけ、ミスラの姿を探す
「・・・・・・」
*ミスラに戻った際に接吻を交わしたものと3日以内に体の契りを交わさなければ命を落としてしまいます
ミスラの言葉が蘇る。
出会って今日が丁度3日だった。もし道で倒れてしまっていたら・・・
胸騒ぎがおさまらず、料理を床に置き出口へと急いだ。
すると扉が自然に開き、その向こうにミスラが立っていた。
「おぬし!?」
「ただいま戻りました・・・御館様いい加減にシルって呼んでください」
フィールドチュニカをきたミスラは大事そうに両手で買い物袋を持っていた。
「それは何だ?」
「はい!御館様の御食事を買って来ました」
「ふむ。・・・変わった匂いだな」
今まで嗅いだことの無い香りがその袋から立ち込めていた。
「えぇと、ウナギの串焼とスッポンのスープです」
初耳の名前に興味がわきつつ、ミスラを抱き寄せ部屋へと入った。
ミスラの料理が格別美味しいことは無かったが喜んで魚料理を食べる姿が今夜の最高のあてとなった。
街にも馴染んできたミスラは今日一日の出来事を楽しげに話す。
「今の流行の最先端はローブにサブリガ!なんて言われたんです」
「劇団のエルヴァーンさんは剣を飲み込んだり、ガルカさんは口から炎を・・・」
「スタンプラリーのスタンプが後2つ・・・」
儂の知らないバストゥークをミスラは経験していた。
適当に相槌を打ち大きな欠伸をする。
「御館様、明日も早いですね。そろそろ休みましょうか?」
「うむ」
半分睡魔に襲われつつも立ち上がり灯りを消す。
ミスラは背伸びをしても届かないランプを消すのは儂の役目だ。
月光が差し込む薄暗い部屋に寝息が聞こえ始める。
スー、スー、スー
ミスラの静かな寝息。
灯りを消し横になると、先程まで襲っていた睡魔がうそのように消し飛んでいた。
毛布に包まり腕の中で眠るミスラを薄暗い月明かりで見つめる
儂は胸騒ぎが再発し寝付けないでいた。
*ミスラに戻った際に接吻を交わしたものと3日以内に体の契りを交わさなければ命を落としてしまいます
その3日目が今日だ。
もちろんミスラとは契りを交わしては居ない。いや、交わすことができ無かった。
儂も若い頃は他のガルカ同様性欲もあれば欲情することもあったが
強烈な失恋を経験しそれが精神的外傷となり性的不能に陥った。
今の儂に出来ることはこのミスラの最後を看取ってやるぐらいしか残っていなかった。
・・・・・・
突然の変化に驚き儂は目を覚ました。
いつの間にか儂は眠りへと堕ちていた。
静寂の支配する部屋。規則正しく聞こえていたミスラの寝息も途絶えていた。
慌ててミスラの肩を掴み前後に激しく揺さぶる。
「おい!おいっ!」
まるで人形のように力なく体が揺れる。
それにあわせ張子の虎のようにミスラの首が前後に動いた。
「おい!おいっっ!!」
反応の無いミスラ。悲しみと同時に目に熱いものが込み上げる。
涙・・・あふれ出る涙はとどまらず頬を伝ってミスラの顔に滴り落ちる。
一粒、また一粒
心のそこから叫び声を上げかけた時
「・・・うニャ」
軽く一鳴き。
「おい?」
儂にしては珍しく間抜けた声。
「御館様どうしたんですか突然?」
人の気も知らずのんびりと寝ぼけながらミスラは問う。
行ってしまえばわしの早合点だが、無反応のあまりミスラが他界したのかと思い込んでしまった。
「御館様?」
ミスラが再度問いかける。
やり場の無い憤りを感じたものの今そんなことはどうでもよかった。
そう、変化が起きたのはミスラではなく儂の体だった。
「うむ、手を貸してみろ」
ミスラの細い手を取りわしの股間へと誘導する。
冷たい指が熱く滾る儂自身に触れミスラは驚いた。
「御館様!」
「どうやらおぬしの期待に応えれるときが来たようだ」
ミスラの手の中で儂のモノが文字通り勃起し、熱く脈を打っていた。
「シル抱いても構わんのだな?」
言い終わると同時にミスラ、いやシルはわしの胸に飛び込み大きく2回頷いた。
月光を受けキラキラと光る銀色の髪を撫ぜる。
「御館様。私、私・・・嬉しいです!」
ぺちゃ・・・ちゅぱっ・・・
シルが怒張を咥え舌で舐め上げる。
先日も味わった背筋を走る感覚が全身を駆け巡る。
今日は一段と強く、その感覚は快感となり儂に伝わる。
十数年ぶりの快感を吟味する間も無く一瞬にしてシルの口の中で儂は果てた。
どく・・・どく・・
脈を打ち大量の精が口腔を犯す。
突然の出来事にシルは口で受け止めるものの、むせ返り空気を求め怒張から口を離した。
「んん・・・すまぬ」
ゲホッゲホッ・・・ゴホッ・・・
銀髪が左右に揺れる。
「御館様。気持ちよかったですか?私は平気ですからもっと、もっと感じてください」
呼吸を正し再びシルは怒張に触れる。
射精したばかりだというの伊それは衰えをみせずそそり立っていた。
「シル、今度は儂がしてやろう」
上半身を起こそうとするがシルがそれを静止する。
そして儂の顔を覗き込みニコっと微笑む
「私・・・もう十分に・・・」
シルの股間を太い指でなぞると彼女の言うとおり花弁は潤いを帯びていた。
「御館様。今度は私の中に・・・くださいますか?」
儂は声にださず大きく頷いた。
シルが股間に跨り怒張を手に取る。彼女のなすがままに身を任せ成り行きを見守った。
怒張が秘部に触れ、ちゅぷと水音が聞こえる
暖かい粘膜に覆われ、柔らかい肉を掻き分けるように怒張がシルの中へ飲み込まれていく。
シルはゆっくり、ゆっくり、慎重に腰を沈め、2人は1つになった。
「んく・・・ふあ・・・ん・・・お、御館さ・まあ」
怒張が彼女の中の奥壁へとぶつかる。シルは腰を少し浮かしており、根元まで入りきらないそれが覗き見えた。
儂の腹に手を置き体を支えると、シルは前後に腰を動かし始めた。
「んはぅ・・・にゃ・・・・んん・・・はあん」
喘ぎ声をあげ、シルは動き続ける。先程のように儂は一瞬で果てることは無かった。
えも言えぬ快感に全身が侵され、シルの動きにあわせて腰を下から突き上げる。
「あふん!御館様、すごいぃ・・・いっいいっ・・・あ、御館様、気持ち・・・いい・・・ですかぁんん」
シルも同じように快感に溺れていた。
だが、自分だけが貪るだけでなくわしの欲求を満たすように腰を動かす。熱い粘膜が収縮し、怒張を締めつける。
「んん・・・・・・・んむ・・・シル・・」
「はい、御館様!いぃ・・・い、くぅん・・・いっちゃ・・・っうっうん!」
「むむんんっ」
低く呻きシルの中へと大量の精を放ち、彼女も体を仰け反らせて全身を硬直させた。
二人はほぼ同時に達していた。
彼女の中が怒張をキュンキュンと締め付け、精を搾り取るように蠢く。
初めて夜を明かしたときと同じようにシルは儂の胸の上で寝そべっていた。
「御館様気持ちよかったですか?」
「うむ」
執拗に聞かなくとも何度も儂はそう応えていたはずだが・・・
「よかったです。私、気持ちよすぎて体が溶けてしまいそうでした」
儂とてそれは同じだった。
しばらくの間、彼女を呪いから解き放てた安心感と十数年ぶりに味わう性行為後の気だるさを感じていた。
「御館様」
「ん?」
「また御願いしたいことが・・・」
「何だ?」
彼女の髪を撫ぜながらまどろんでいるのが心地よかった。
「私、もう少しこの家で生活してもよろしいでしょうか?」
「うむ、前にも言ったが気の済むまでここに居ればよい」
「はい!ありがとうございます」
シルは活き活きとした声で礼を述べた。
「あの・・・」
「うむ」
シルの言わんとすることが儂にも分かった。
収まっていた怒張がシルの中で再び己を主張し始めたのだった。
「御館様。今夜は寝かせてもらえるのでしょうか?」
悪戯に微笑むシル。
部屋に差し込む月明かりはやがて朝日へと変わった。
□END□