ユージン:エル♂フェイス7B
セシリア:ヒュム♀フェイス4A
コンコン、コンコンコン。
真夜中もかなり過ぎた時間、遠慮がちに頑丈な造りの木戸をノックすると
中からゴトンガタンと閂を外す音が聞こえ外を窺うように僅かな隙間が開いた。
「もう大丈夫、蛮族は追い払ったわ」
いつものように声を掛けのろのろと開きはじめたドアの隙間に身体を滑り込ませ中にはいる。
ドアの前には蒼い瞳いっぱいに不安の色を浮かべたエルヴァーンの青年が立っていた。
「随分と掛かったから心配で…」
「やっぱり起きていたのね、先に寝ててって言ったのに…?」
言い終わらないうちに細い彼の腕に抱き竦められた。
「ごめんよ、ここは僕の街なのに君ばかり危険な目にあわせて」
「何言ってるの、これでも腕利きの傭兵なんだから」
軽く受け流して身体を離そうとする私を逃がすまいと彼の腕に力が篭った。
「…っぅ」
強がってみたものの本国では最高ランクに属する冒険者出身の傭兵がバタバタと倒されていく皇都防衛戦、
素早さが身上のシーフと言えども無傷ではいられないのだ。
「やっぱり怪我してるんだね?」
彼の胸に顔を埋め、尖り帽子で彼の視線を遮る。
「ユージン、何度も言わせないで。私は傭兵で冒険者、これが仕事なの」
「セシリア…ごめん」
邪魔な帽子を払い除けて私の顎を持ち上げる彼の指は微かに震えていて、
言葉に表せない程の深い哀しみが伝わってくるようだった。
遠慮がちに唇が触れた瞬間、私の中で燻っていた欲情に火が点いた。
敵を屠る度に感じる絶頂にも似た興奮がまだ醒めていなかったのだ。
彼の唇を舌で押し開き歯列をなぞる。
「…んっ…」
男の甘い呻きに背中がゾクゾクする。
腕を伸ばして長い首に腕を巻きつけ、更に深く舌を差し入れ彼の舌を絡め取った。
…愛しい…汚したい…
相反する感情が溢れて苦しくなるが、こんな時は考えても無駄、己の欲望を開放するのみ。
溢れた唾液を啜り上げて唇を離す。
つつーっと唾液が糸を引いて切れるより早く緩んだ彼の腕をすり抜け
スロップスごと下着をずり下ろし膝立ちになると目の前にある彼の分身に手を添えた。
「セ…シリァ…あっ…!」
一瞬の出来事にうろたえる彼を尻目に裏筋を舐め上げ、ぱくりと咥える。
エルヴァーンのモノは大きくて根元まで咥え込むことは出来ないから
舌を転がすようにして先端を丹念に愛撫し、両手で根元を包み込むようにして扱く。
「んっ…ぁ…」
ユージンの身体がぴくんと跳ねる。
膝に力が入らなくなったのか、身体を支えようと私の肩を掴んだ手に力が入る。
ちろちろと尿道口を嬲ったり、舌全体で亀頭を擦ったりしてたっぷりと彼を味わう。
「っは、あぁ…くっ…」
切なそうに目をつぶって眉をしかめる彼の顔がたまらなく私をそそる。
肩に食い込む指が、彼の絶頂が近いことを伝えてくる。
口を離して先っぽから溢れる先走りをちゅっと吸う。
彼がちょっと残念そうな顔をしたのを確認して、一気に入るところまで咥え込んだ。
喉の奥に当たると苦しくて涙が滲むが、我慢して頭を上下させ続ける。
ぢゅ、じゅる…
暗い玄関にくぐもった水音が木霊する。
「だ、だめ…セシリァ、あぁ…」
彼が達しようとする直前、私は口を離して右手で彼の足を払い、左手でぽんとお腹を押した。
どすんと尻餅をついて彼は床に座り込む。
あっけに取られて私を見詰める彼にはお構い無しにサラウィルと下着を脱ぎ捨て、
彼に向き合うようにお腹の上に座わり、尻餅をついたままの格好の彼の足に背を預けると脚を大きく開いた。
私のソコは熟しきった果実のようにたっぷり蜜を含んでいた。
指で開いて中の果実を晒す。
「ほら…こんなに溢れて…」
滴り落ちる蜜を掬って彼の頬に擦り付ける。
幼さを残す顔がぼさぼさの髪と同じ朱色に染まる。
恥らう彼を見るとムラムラと嗜虐心が湧き上がってくるのだ。
襞を押し分けて蜜をたっぷり塗した指で顔を出している豆粒を摘み、転がし、擦る。
待ちかねた刺激に身体が喜びに跳ねる。
サンドリアで育った私は、ヒュームであるというだけで虐げられてきたから
エルヴァーンは好きではないけど彼は愛している。
愛しているから?意趣返し?分からない。
分からないけど彼を焦らすのはすごく気持ちイイ。
「んんぅ!」
堪らずに声が漏れると欲望が燃え盛る炎のように意識を焼き尽くした、もう止まらない。
右手でクリトリスを嬲ったまま、左手で襞の奥にある秘所に沈めた。
「…あっ、あぁ…んっ」
くちゅ、くちゅ、ちゅぷ…
可愛らしい水音はあっという間にじゅぷじゅぶという汚らしい音に変わった。
彼の視線がソコに釘付けにになっている。
それがまた身体を熱くさせる。
意識することも無く、抜き差しする手が速くなる。
お尻の辺りで彼の分身がぴくぴくと動いた。
「…わ、私のぉ…みてぇ、感じてるのぅ…?」
ごくんとユージンが唾を飲み込むのが分かった。
「ねぇ…ここにぃ、んふぅ、入れたぃ?」
本当は私が入れて欲しいのだ、もうドロドロに惚けて指では物足りない。
彼は頷き、淫靡な水音と飛沫をあげるソコへと
床についたままだった右手を伸ばしてくるのを豆粒を弄る手を止めて払いのけた。
「…だめっよぅ…ちゃん、と…どうし、た、いかぁ…いわないっと…」
「あ、う、うん……セシリアの中に…いれたい」
顔から湯気が噴き出すんじゃないかというぐらい彼は真っ赤になっている。
私は首を振る。
「ぼぼぼくの、ち、ちちちんちん……セシリアの…お、おま○こ…いれた…い…ですぅ…」
しどろもどろになりながらも、彼は何とか言い切った。
オナニショーを打ち切り彼の膝に両手をついて腰を持ち上げ、
天を仰いでそそり立つ肉の楔にゆっくりと腰を下ろしていく。
熱い塊がぐっと肉を押しのけて私の中に入ってくる瞬間が最高に好き。
それだけで意識が弾け飛びそうだ。
「あ、あ、あぁぁっ!ユゥジィンッ…」
子宮口に先端が当たる感覚に背筋を電流のように快感が駆け抜けていく。
彼のモノを中に全部納め、私を貫く熱い肉の感覚に酔いしれた。
少しでも動かせばすぐさま上り詰めてしまいそう。
なのに。
彼は私の腰を両手で掴むと下から突き上げてきた。
「セ、シリ、ア…僕、もう、我慢できな…い」
「…わ、たしがぁ…イクまでぇ、は、イっちゃあぁっ、ダメぇえええ!」
返事はなかった。
荒い息遣いと壁を擦り肉を穿つ刺激に、私の限界も迫っていた。
「ん、ん、ん、ぁ、ぁぁあ、…っくぅ……ィイ、ィィのぉ!イクょぅ、イッちゃうぅぅっ!」
光連携のような輝きが脳裏で爆発し、意識を真っ白に染めていく。
「あ、あ、あぁぅ!セシリアァ、熱い、熱いよぉ!」
ビクンビクンと膣の中で跳ねる肉を感じながら、私は彼の胸に倒れこんだ。
シャワーを浴びてベッドに潜り込んだ途端、眠気が一気に襲ってきた。
彼の温かい腕の中でまどろむ幸せに蛮族との争いは夢ではないかと錯覚してしまう。
「僕の名前…」
「……ん?」
「古い言葉で“高貴”って意味なんだ」
「貴族みたいね」
「家は貴族の末裔だって、亡くなった父が言ってたよ」
「…貴族は嫌い…」
「僕は貴族じゃないよ…」
「…そんなの関係ないわ、私は好きよ、ユージンが…」
「セシリア…」
「なぁに?」
「同じ綴りの言葉があったはずなのに意味が思い出せない」
「思い出したら教えてね…」
「うん…」
「きっとよ」
「…うん」
「愛してるわ…」
「…僕と………よ…」
「……」
眠りに落ちる寸前だった私は、彼の言葉を最後まで聞くことが出来なかった。
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腕と暇を持て余し傭兵募集に飛びついた私がこの国に来て何より驚いたのは
昼夜問わずに発令される第一級戒厳令だ。
獣人が大挙して街に攻め入ってくるということが俄かには信じられなかったが、それがこの国の現実だった。
日常的に繰り返される皇都防衛戦も、冒険者あがりの傭兵の参戦で好転してはいるらしい。
蛮族は撤退する際に捕虜を連れて行くことがあった。
時には五蛇将と呼ばれる将軍すらも浚われてしまい、
本国の馬鹿王子の方がよっぽど使えると思ったりもした。
囚われた捕虜は傭兵兼冒険者たちが探索や狩りのついでに救出している。
私も単独で敵地に潜入して何人もの捕虜を解放したことがある。
敵を倒さずとも牢の鍵を解除できるシーフならではだ。
ユージンは私が助け出した捕虜のひとりだ。
ラミアという不気味なキメラたちが徘徊するアラパゴ暗礁域の最奥に囚われていたため、
なかなか助けてもらえなくて途方にくれていたんだと彼は疲れきった顔で笑い、
私がいくら要らないと断ってもお礼がしたいと食い下がった。
それならばと、彼にこの国のことを教えてくれるように頼んだ。
街に戻った彼は街の人々が語る以上のことを私に聞かせてくれた。
傭兵として受けたミッションから少しばかり聞き知っていたこともあったが、
イフマラド王国に関するユージンの話は当事者しか分かりえないようなものが含まれていた。
「もしかしてイフマラド系移民なの?」
「移民だって?!冗談じゃない!僕らは先祖代々ここで暮らしてきた正真正銘のイフラマド人さ!!」
「え?!」
「もっとも旧イフラマド人は市民権がないから人民街区以外の居住は許されていないけどね」
「市民権?」
聞き慣れない言葉だった。
「皇民街区、壁の内側に住むことが出来る権利のことだよ」
城壁の向こう側は豪奢な皇宮や軍施設や大邸宅が建ち並んでいたっけ。
「行ったことがあるのかい?」
「ええ、まぁ…ナジャ社長とね」
「サラヒム・センチネルの?それにしたって…まさか皇国軍の依頼で僕を嵌めようと…?」
ユージンはありありと疑いの色を浮かべて私を睨み付けた。
そういえばナジャ社長が幽霊船の話をした男が不滅隊に引っ張られたというようなことを話していた。
皇国が旧イフマラドの民に対して警戒心を持っていることは既に分かっていたのに、
つまりその逆もしかり、迂闊だった。
「ねぇ、タブナジアって知ってる?」
「クリスタル戦争で滅んだ中の国のひとつだろ?それがどうしたって…」
「私はあなたと同じ、亡国の民なの」
「……?」
「祖国タブナジアはこの国に見捨てられてヴァナ・ディールから消滅したのよっ」
正確には3国とジュノの共謀によって戦争を終結させるための囮にされたのだが、
もしもあの時、タブナジア侯からの援軍要請を聖帝が受けていれば、
あの方が聖剣を抜くことは無く、今もザフムルグの真珠と謳われる美しさのままあったに違いないのだ。
隔絶された厳しい環境に耐え、生き残った同胞たちがいたことを知ってどれだけ嬉しかったか。
「疑ってごめん…」
「私こそこの国の事情が知りたいばっかりに無理を言ってごめんなさい」
お互いの境遇を打ち明けあったことで私たちの距離は縮まり、男女の関係になるまでそう時間は掛からなかった。
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===死者の軍団が最終防衛ラインを突破!===
===戦闘員は皇都まで退き敵を迎撃せよ!===
遅めの朝食を口にしようとした途端、蛮族の襲来を告げる警報が鳴り響いた。
「くっ、朝食もゆっくり食べさせてくれない訳!?死者の軍団か…長引くかも」
「セシリア、あの…」
「戸締りをしっかりね!」
「セシリア、聞いて…」
「私が帰るまで外に出てはだめよ!」
「セシリア!」
慌しく身支度していた私は彼の強い口調に驚きハーネスを着込む手を止めた。
彼を見上げる私の頭にふわりと何かが被せられる。
それは隅に金糸で小さく海豚の紋章が縫い取られたダマスク織りのヴェールだった。
海豚の紋章−それが何を意味するか私は知っている。
彼の家が亡国の王家に繋がる家系であることは間違いない。
「僕と結婚してくれないか」
「こんな時に何を…」
いや、こんな時だからこそかもしれない。
私たち傭兵が捕虜になることはない。死ぬか生き残るか、どちらかひとつだ。
「返事は帰ってからでいいよ」
「このヴェール、預かっておいていいかな」
「母の形見なんだ、きっと君を守ってくれる…」
「行ってくる」
今すぐ彼にYESと返事をして、ベッドで抱き合っていられたら…
挫けそうになる心を叱咤して彼の家を飛び出した。
丸1日にも及ぶ攻防戦の末、ようやく死者の軍団を退けることができたが、
被害は甚大で街のいたるところに敵味方入り乱れて死体が転がっていた。
私も戦闘不能状態から顔見知りの魔道士に命を繋いでもらったばかりで、
一刻も早く彼の元へと帰りたいと気は焦るものの、立ち上がる体力すら残っていない有様だった。
「おい、あんた」
声がするほうに顔を向けると老エルヴァーンの義勇兵だった。
「ユージンってのが連れ去られるのを見という者がおっての、あんたに伝えてくれじゃと」
「なっ、なんで…!?」
あれほど出るなと言ったのに、ユージン!
「まず殺されることはないんじゃ、気は揉めるじゃろうが」
「…知らせてくれてありがとう」
「まぁ無理はせんようにのう」
諭すように呟き老兵は足を引き摺りながら凱旋門へと歩いて行った。
開門と同時に向こうから人影が駆け出し老兵に縋り付く。きっと奥さんだろう。
「…私が迎えに行かなきゃ、ね」
パウチから帰還魔法の施された呪符を取り出し空に放り投げた。
彼は最初に出会った最奥の牢にいる、そんな予感めいたものがあった。
最奥の牢の入口には番人のラミアがいて、姿を隠していても見破られるので厄介なのだが
皇都襲撃部隊として出撃でもしていたのが見当たらなかった。
幸運をアルタナ女神に感謝しつつ、そっと牢の中を覗く。
やっぱり、彼はここいた。
「ユージン!」
呼びかけても彼はピクりとも動かない。おそらく眠らされているのだろう。
ツールを取り出し開錠にかかる。
カチッという音に安堵した瞬間ふしゅっと霧状の何かが鍵穴から噴出した。
慌てて口を押さえたが間に合わず吸い込んでしまう。
焦るあまり罠を解除し損ねるなんて、だめだ、意識が遠くなる…
背中にごつごつした岩の感覚がする。
どれくらい気絶していたんだろう、とにかくユージンを助けなきゃ…
身体を起こしきる前に首に食い込む何かが私を引き倒した。
霞む目を擦ろうとした手も途中までしか持ち上がらない。
意識の覚醒を促そうと頭を振るとジャラジャラと鎖の音がした。
両手と両足も同じだった。
おかしなことに頭にはユージンから預かったヴェールが被せられていた。
それ以外は何も身につけていない状態で、岩の台らしきものに鎖で繋がれているらしい。
冒険者の殆どの末路なんてこんなものだ。
獣人に嬲り者にされようが命があれば何とかなる。
でもここはアラパゴ暗礁域、死者の住む国。
囚われれば生きて戻れる可能性はゼロだ、生きたまま貪り喰われる前に死のう。
返事、できなかったな…
覚悟を決めた私の耳が信じられない声を捉えた。
それは熱に浮かされたようなユージンの嬌声だったから。
声のする方に首を廻らして見たのはラミアと睦みあう彼の姿だった。
「ユージン!!!」
私の声が聞こえないのか、ラミアの乳房を捏ね回し赤ん坊のように吸いついている。
魅了されてる?
相手はナンバーズのようだし有り得ないことではない。
私の声に反応したのはラミアの方だった。
勝ち誇る女の目をして口の端を釣り上げ笑ったように見えた。
ラミアが何かを囁くと、彼は乳房から口を離して石の寝台に腰掛けた。
彼の股間のモノは張り裂けんばかりに大きく屹立している。
意味深な視線をこちらに投げてラミアは彼の足元に蹲った。
「あぁぁあっ!」
私の時よりも激しく声をあげて、彼はラミアの頭を掴んだ。
じゅ、じゅとラミアの頭が足の間で上下する度に淫靡な水音が大きくなる。
明らかにラミアは彼のモノを根元まで咥え込んでいる。
「ユージン!ユージン!目を覚まして!!!」
私の絶叫にまたも注意を向けたのはラミアだった。
顔を上げてこちらを向こうとするのを、ユージンが押さえつけた。
ラミアが嫌がるように首を振っても意に介さない素振りで上下させ始める。
イ、イラマチオ?!
ユージンが主導権を握ってる?どういうこと?
自分のモノを愛撫するラミアを恍惚とした表情で見下ろしていた彼が顔を上げた。
そうして私と視線を合わせるとはっきりと言ったのだ。
「セシリアより、ずっとイイよ…」
彼は魅了された訳でも魅入られたのでもない、己の意思でラミアに奉仕させているのだ。
「どうして、どうしてなのよー!!!」
私への興味は失せたとばかり、彼はラミアの頭を激しく振った。
「いくぞ、全部飲めよ…っ、く、うっ!」
大きく身体を震わせて彼はラミアの口で果て、満足そうに寝台に寝転がった。
いつも私の思うまま恥じらいながら愛し合った彼が、信じられない…
立ち上がったラミアは長い舌で唇の白い液体を舐めるとにやりと笑った。
“ククククク…新鮮ナ肉ハ、久シブリダロウ。サァ、オ前タチ、楽シムガヨイ!”
いつの間に集まっていたのだろう。
ラミアの高らかな宣言と共にクトゥルブが私に群がってきた。
「お前らの思いどおりになんかなってたまるかぁああ!」
舌を噛み千切る寸前で、私は硬直した。
スタンだって?!ちくしょう、こいつらの中に黒魔道士がいたのか!
包帯だらけの腐った指が私の口を抉じ開ける。
腐ってるくせに硬くいきり立った肉棒が喉の奥へと突っ込まれる。
足も割り開かれ腐汁を潤滑油にぐじゅぐじゅ汚らしい音をたてて秘所にも進入してくる。
「ぅぐぅっ、がぁっ!」
気が狂いそうな生理的嫌悪と猛烈な吐き気に襲われる。
いっそ息が詰まって死ねればいいのに!
がら空きの乳房を鷲掴みにされる。
ダラダラと涎を垂らしながらそいつは乳房に噛み付くと肉を引き千切った。
飛び散った鮮血と臭いはやつらの僅かに残るもうひとつの欲望を強く刺激したらしい。
包帯だらけの醜い顔の奥でぎらつく目は餓えた獣と同じ光に満ちていた。
もう一方の乳房だけでなく、わき腹や太股にもやつらの歯が立てられる。
なまじ冒険者として修羅場をかい潜った精神は、
生きながら喰らわれる激痛にも狂いはしなかった。
まあいい、出血量からして意識が途切れるのが先か、心臓を抉り出されるのが先か、
何れにしろ死は速やかに訪れるだろう。
彼が何か言っているけど、もう私には彼の言葉を聞くことが出来なかった。
暗く冷たく閉ざされていく世界で、ガリガリと肉をこそげ取る音が骨を伝わってくる。
それだけが知覚できる全てだった。
女神アルタナよ、私の魂を導きたまえ……
…僕の母はラミアなんだ、ふふ、驚いたかい?…
…何故だか男の子はキメラじゃないんだよ、まぁ滅多に生まれないけどね…
…生まれた男の子はカターバ浮沼の墓地に捨て置かれ…
…イフラマドの旧家が引き取り育てるのさ…
…イフラマドの民は今も古い記憶と盟約を受け継ぎ守っているんだよ…
…いつかイフラマド王国が復活する日を信じてね…
…僕の役目はね、忠実なクトゥルブや姉妹たちに餌を与えてやることなのさ…
…君のような余所者や皇国の犬たち、獲物には事欠かなくて助かるよ…
…最後に教えてあげる…
…Caecilia…の古い言葉で“幻惑された”って意味さ…
…君にぴったりじゃないか…
…君の愚かさは愛するに値したよ…
…あははははははははははははははははは…
木霊スル、嘲笑ハ、怨嗟トナリ、
母ナルくりすたるヘト、還ロウトスル、
私ノ魂ヲ、コノ地ニ、留メタ、
ヒドイ、ヒドイ、ヒドイ…
魂スラ、開放シテ、クレナイ、ナンテ…
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--アラパゴ暗礁域にいる青いゴーストが美しい織物を持っているという噂を聞いたことはないかい?
--その化け物が女の成れの果てかなんて、そんなことはアタイの知ったこっちゃないさぁね。
--アンタ、冒険者かい?じゃあ、確かめに行ってごらんなよ。
--もしかしたらアタイの話も愚か者を誘き出す罠かも知れないけどねぇ。くすくすくす…
こんな寝物語を聞かせてくれるミスラの娼婦がアルザビ人民街区に住んでいるという。
了