ジャハン ヒューム♂
マルアーム ヒューム♀F8
大きく崩れた塁壁に焼けたばかりのレンガを運び込み職人達が組み直している。塁壁はアトルガン皇国の守りの
象徴でもあり、同時に住居や商工施設を一体収容する独特の建築様式のため、その修復はこの町の最重要課題だ。
崩れた塁壁ごと住居が半壊した住民達が心配そうに見守る中、職人達はじつにちゃきちゃきと仕事を進める。
ここ最近の獣人軍の猛攻は目に余るものがある。精鋭五軍に西国から渡り鳥の群の如く大挙したる傭兵部隊を
投入しても、アルザビの疲弊は目に見えていた。人民街区、辺民街区中から塁壁職人が集まり、そこかしこで修復、
増強工事が行われても街の傷は癒え難いものになっている。そんな街でも、住人達はしたたかに、活気を帯びて
生活している。工事現場の木組みの足場の下で露店を開くものもあれば、武具の修繕屋など戦争そのものを食い扶持に
したたかに生きるもの、盗人になるものもいれば、それを追うものもあり街は賑やかだった。塁壁の上三段、
つまり最上部で作業をしていた男が眼下に何かを見つけたのか木組みをスルスルと器用に下り、二段に降りて大声で叫ぶ。
「おーいマルー!マルアーム!人民街区には来るなって、オジームさんが心配するぞー。」
声の先には、半ば難民と化したアルザビ住民達の集まりがあり、その真ん中に炊き出しの女達がせっせと備蓄食を
配っていた。先ほど叫んだ男に気が着いた女達の一人が、自信たっぷりな歩調でつかつか階段を上がって来る。
歳にして22のその娘は栗毛色の髪に翠のピアスが映え、赤地に羊乳色の複雑な刺繍の入ったチュニックが、
活発そうでいながら可愛らしい顔によく似合っていた。
「何さぼってんだ!」
マルアームと呼ばれた女は、先ほど自分の名前を叫んだ職人の胸をドンと突く。
「ジャハン!午前の仕事は?終わったの?」
なおもつかつかと歩きながら、職人、名をジャハンという20とまだ若い男の胸を
小気味よい口調に合わせてドン、ドンと突く。
「う、よせよマルアーム。仕事してるって、それに、こら、押すな、あぶな・・」
マルアームにつかつか歩み寄られ後ずさりしていたジャハンは足下の建材にかかとを引っかけそのまま後ろに尻餅をつく。
ぷっと笑うマルアームだがその笑顔は、面白いという笑顔より、勝ち気な笑顔といった具合だ。
あわてて起き上がったジャハンにドンと胸を張り体当たりするマルアーム、
「おいおい、仕事に戻らなくていいのか〜?」
もどるって、グイグイ押されたジャハンはすごすごと持ち場に戻る。マルアームもすぐに炊き出しに戻り、
持家を失った人々の面倒を見るのだった。
夕暮れ、今日の仕事が一段落した頃、ジャハンは塁壁の上三段の中でも一際高い部分を選んで腰掛け休憩した。
この下は民家なのだろう、高窓の木板が少し開かれており、そこから家庭の灯りと夕食の準備の匂いが漏れている。
バカと煙は何とやら、などと自分で思いながらも塁壁の上部は彼がこの街で最も愛する場所だ。自分の足下で、
自分の築いた建築物達の中で人々が生活し幸せを育んでいる。また眼下に広がる町の景色、商人に町人、
笑いに喧嘩と人々の活気を感じる事が出来る。そんな所がたまらなく好きなのだ。今日も一日作業を終えて背伸びで
体を伸ばしていると、地平線へ降りんとしている夕日が、街と、街を形作る塁壁群、そして最も高い白壁の奥に
そびえる豪奢壮麗な宮殿や邸宅群を真っ赤に染めて行く。ぼーっと考え事をするには最適な一時、
ジャハンは今日の出来事を反芻していた。
(いつもとかわらねえなあ・・ああ、マルアームが白門からこっちに来てたな、オジームさんも婆達も
止めろっつってんのになあ、まあでもそれも“いつもの事”かあ。アイツ面倒見が良いよなあ、
いっつも走り回って他人の世話焼いてやがる、俺にはわからねえ生き方だけど、それも小気味良いよな。)
ジャハンとマルアームは辺民街区に住んでいる、ジャハンは職人で、マルアームは職人座の頭領の娘だ。
二人はジャハンがその職人座に師事するようになってからのなじみだが、マルアームは生まれてこのかた職人達に
育てられて来たのでガサツで無鉄砲で気が強くてアホだが責任感があり男勝りで、というかもうほぼ男で、
可愛い、ジャハンはそう認識していた。
(ああ、胸でかかったなあ・・結構大胆だよな。慣れてんのか、な・・)
昼に胸を押し付けられぐいぐい押された事を思い出す、柔らかい双房が当たった肩口に感覚が蘇るが、ジャハンはすぐに
神妙な面持ちになった。マルアームの事を意識すると、この国の病理も同時に意識せざるをえないからだ。
(仮に、マルアームと一緒になれたとして(そんな気はないけど)も、日に日に強力になる蛮族共の襲撃におびえて
暮らさなきゃあならない。白門だってアルザビ程じゃあないにしろ、何かと物騒だし。さらに最近じゃあ、
西国の傭兵達が新しい不安の種になってやがる。冒険者なんていうらしいが、確かにあいつらはこの国の商業を大きく
刺激するし、何より蛮族軍撃退には最早あいつらの力は欠かせない所まで来ている、まあなにかとおせっかいなり
良い奴も多いみたいで大なり小なりこの国の人民に貢献する仕事もやってはいる。だが、裏を返せば、
真っ当じゃあない奴も流れ込んで来てるって訳で、傭兵絡みの事件は最近特に増えてるありさまだ。自分の利益のために
動いてる連中で、本心からこの国のために動くような奴らじゃあ無い。まあどれもこれも元をたどれば蛮族の侵略が
根本って訳ではあるんだが・・)
冒険者を不安視するジャハンの考えは何も保守的なものでもなく、
この国に生きる者達皆の心の奥底に沈殿する重い澱みのような不安であった。
(商売の邪魔やら、若い女が傭兵に絡まれるなんて、上から見てればしょっちゅうだ。マルアームだって・・顔のせいか
傭兵達に声をかけられる事も多いし、たちの悪そうな傭兵達に連れ込まわされてる事なんてのも何度かあったな)
マルアームの大胆な態度を、“慣れ”と推測した根拠はこの辺にある、もしかしたら経験豊富なのかもしれない。
元々、見栄えはするし、俺や職人衆以外には性格の方も受けが良いマルアームだ、傭兵風情でなくとも
市井にもてるのかもなあ、などとジャハンは思いもするが、
(さすがにあんな奴だけど、アイツが好きになった相手と幸せになってほしいよな。暇つぶしに手込めにされるなんて、
ろくでもねえ事になんねえように・・)
彼の心が少し沈んだように、今日という日もちょうど沈もうとしていた。
ハッと我に返ったように工具を片付け、帰宅の準備を急ぐ。
(さすがに夜のアルザビはあぶねえからな、日が沈む前までには白門にでねえと。
マルアーム、もうしっかり白門に戻ってるか?)
いつもとかわらぬ日々が続いたある日の事、ジャハンはいつものようにアルザビに入り、職人達と塁壁の修繕に
当たっていた。しかし今日はなんだか様子が変だ、アルザビに傭兵の姿が目立つ。胸騒ぎがして、作業の傍ら、
ちらちらと地段や二段に気を配る。
「おーい、ジャハンの奴、またマルアームの御嬢を探してますぜ!」
「好きだねえ、まあやめとけって、あの女と床に入ったら、一物食いちぎられちまうぞ。それに親方が
それを知ったら杭の代わりに塁壁の土留めにブッ刺されて、頭を木槌でぶったたかれらあね。」
ガハハ、と他の職人達が大笑いしている、ジャハンは顔を真っ赤にしながら違うやいと怒鳴る、が、やはりしっかりと
マルアームの姿を見つけ出していた。特に変わり無さそうだなと思い、塁壁の縦柱の取り付け工事に取りかかる。
作業に没頭し、日が低くなりつつなったころ、やはり何か様子がおかしいと思いもう一度マルアームの方に目をやると、
彼女は必死に住民達を誘導しているようだった。
「あっ!?兄弟子方ァ、マルアームが!下の様子が変ですぜ!」
おいおいまた御嬢にみとれてんのかと他の職人達があきれ顔をするが、その表情はすぐに驚きの表情に変わる。
「住民共が混乱してらァ!傭兵どもも駆けつけてやがる、こいつぁまちげえねえ、市街戦だ!蛮族共がきやがる!」
ガルカの現場監督が大声で撤収を促す、まだ警鐘は鳴ってねえ、切り上げられない所だけ作業を終わらせて工具をしまえ、
その後白門に撤収だ、指示通りに職人達はきびきびと動くがジャハンは胸騒ぎを押さえられない。
(おかしいぞ、五軍も傭兵もこれだけ急ぎ集まってるんだ、警笛こそ鳴っちゃいねえがもう蛮族はそこまで・・)
ジャハンは工具もしまわず木組み足場を一気に降りる、他の職人に呼び止められるのを聞かず、マルアームの元へ走る。
あちらこちらと走り回る兵士達に、混乱で人の渦と化した非戦闘員達が邪魔でなかなか前に進めない、上から見るのと違い、
マルアームの姿も見えない。そんなおり凄まじい爆音がアルザビの奥から地鳴りを伴い響いて来た。白煙の尖塔が立ち、
直後黒煙がそれを包む。バラバラと音を立てて木屑や石片が降り注ぎ、ようやく街中に警笛が響き渡った。
「敵襲!敵襲!敵種別不明!皇都が奇襲を受けて・・」
奇襲だって?胸が一段と高鳴る、あたりを見回しても住民の避難はまだ終わっていないように見える。
ああ、マルアーム!ジャハンは胸が締め付けられ、人波をかき分けるように強引に進む。先ほどと同じような爆音と
煙の柱が二回連続で打ち上がり、そこかしこで悲鳴が聞こえる。沈み始めた夕日が都を真っ赤に染めていた。
「マルー!まて、停まれ!」
ようやく見つけた、もう日がほとんど沈む直前、ジャハンはマルアームの肩を後ろから掴む事に成功した。
ジャハン!そう叫ぶとマルアームはジャハンに抱きついて来る、ジャハンもギュッと彼女を抱きしめる。
「逃げよう、白門まで出られればひとまずは安心だ。」
マルアームの手をしっかり握りしめグイグイ引っ張って走り出す、何故まだ逃げていなかったのだ、
走りながら問いつめると住民の誘導をしていて自分は逃げられなかったというのだ。馬鹿やろう!声には出さないが
ジャハンは心の中で叫ぶ。だけどそんな生き方も気味が良い、絶対に生きて帰らなければ。
ドーン、ドーンと低い音が連続的に聞こえる、何事かと二段を仰ぎ見ると、隣の区画とこちらを隔てている塁壁の
通路の扉に木材や家財が積み上げられ、それを兵士や傭兵達が必死に支えているところだった。もうとなりの区画まで
敵兵が迫っている、ドーンという音に加え、木材がひび割れひしゃげる音が混ざりだす。職人の勘でもう扉の木材がもたない事がわかる。
「マルーまずい離れ、、」
その瞬間木材が砕け散る音とともに二段より木片と傭兵数名がバラバラと降り落ちて来る。
ぐしゃりと受け身を取れずに墜落したエルヴァーンの傭兵にマルアームが駆け寄り、魔法による治癒を試みる。
マルアームにこんな事が出来るなんて、いやそれより、早く逃げないと、この調子では彼女は最後の一兵が死ぬまで
戦場に残るはめになる、その先にあるのは過酷な運命だけだ。
「すまない!君たちは戦闘員ではないようだね。早く逃げるんだ、奴ら奇襲部隊少数で監視をかいくぐって都を
目指していたんだ、冒険者が移動中の部隊を発見はしたものの・・散兵が都を目指すと予想出来たのはほんの一握りの
連中だけだった、残念ながらね。遅れて本隊が殺到している、到着前に早く・・!」
助けた傭兵の言葉は絶望的としか言いようの無いものであった、特にこの街を愛し、そこに住まう二人にとっては。
二段では既に戦闘が始まっている、ジャハンは再びマルアームの腕を引っ張り走る、がその先にあったものは絶望だった。
退路が塞がれている、最初の数回の爆発は白門とアルザビの連絡を絶つ為の攻撃だったというのだ。
行き場を失った住民達が右往左往しており、瓦礫をどかしてできた僅かな通路は軍と傭兵の突入孔として利用され、
脱出はまだ禁止されていた。まだ出口はある、再び駆けたジャハンの先でトロールの走狗のボム族が火球となって破裂し、
直後全てを白煙と続く黒煙が包んだ。黒煙は凄まじい刺激臭で鼻や喉、胸に突き刺さるようで煙に巻かれた二人は
激しく咳き込んだ。まさか、ここも塞がれたか、口を押さえて煙を避けるように腰を屈めて進むジャハンの目の前に、
血まみれの傭兵の姿が見えた、西国の板金鎧は無惨にひしゃげ、腰から下はあるはずの脚が奇麗になくなってしまっている。
「マルー見るな!ここはダメだ、下がるぞ」
殺してくれ、殺してくれとつぶやく傭兵を尻目に最後の心当たりを目指す事にした。惨劇を見せまいと
マルアームの頭を抱きしめて視界を塞ぎ彼女を引きずるように走る、先ほど来た道を戻る。トロール共の
雄叫びが次々と増えて行くのがわかり、兎に角がむしゃらに走る。
よし、ここはやはり大丈夫だ、袋小路になった区画、こんな場所には敵兵も味方も居ない。
「塁壁職人でよかった、ここには水路を引く為の仕掛けがあるんだ。こっち側からでも流れ込んで来る水を止められる、
整備用にね、水路の先は白門だ。」
マルアームの顔が少し明るさを取り戻す、さすがの彼女も怯え、涙目で震えていたのだ。
「わかったわジャハン、私に何か手伝える事ある?」
いや、とジャハンは答える。そして・・
「逃げるのは君だけだ。」
マルアームが唖然とした表情になる、彼女の性格を考えれば言いたい事はわかる、だから彼女の言をまたずに説明を始めた。
「この金網の下に水路用の閂がある、水路本流との引き込み支流の弁を塞いで閂で支えなきゃならないんだ。
要は水を止めている間、閂を支持する人間はそこを動けない。」
「俺が支えている間に水路をくぐってくれ、頼む、マルー君に生きていて欲しいんだ。」
マルアームの顔が真っ赤になる、まるで激高したような表情でジャハンに怒鳴る。
「ダメ!ふざけないで、二人で助かる道じゃなきゃ・・」
「いいんだ!生きてくれ、俺の為に・・・愛しているんだ。」
マルアームは突然な、そして意外な言葉に唖然とした表情に変わる。
「君の生き方に、君のこの街の人々への愛に、
俺にはその生き方は出来ないけれど街を愛するその心は痛い程わかる。そして魅かれるんだ。」
落ち着いた口調でジャハンは続ける、
「俺だってこの街を造り、治す栄えある職人の端くれだ。
この街を愛している。だからこの街に必要な君も誰よりも愛している。」
マルアームはその言葉を聞いて、一語一句噛み締めると、紅潮し震える言葉を紡ぐ。
「私も、私もよジャハン・・大好き。あなたはいつも、この街の人々をいたわってくれた、
表現の仕方は直接じゃあ無かったとしても、あなたの仕事は、あなたの目はいつもみんなを見守ってくれていた。
あなたにうまく向き合えなくて、私、女の子らしくする仕方がわからなくて、あなたに自分を伝えられなかったのに・・。」
泣き出すマルアームの言葉を聞いて、ジャハンも信じられない気持ちでいっぱいだった、まさか愛し合えていたなんて。
マルアームの肩をそっと抱きしめる、最後に一緒に居られてよかった。
「さあ、行ってくれ。敵軍が近づいて来ている。」
しばらく無言の時間が続き、ついに、マルアームが首を縦に振る。辛い決断だった、折角通じ合えたのに、
通じ合えたからこそ進まなければならない道に。グイッとマルアームが体を寄せて来る、
「わかった、でもその前に・・私を抱いて。」
死の影が濃いアトルガンの地に、新たな生命を引き継ぐのが女の責務だとマルアームは言った。
「考えたくもないけど、あなたが戻って来るって信じてるけど、私・・子供はあなたの子じゃなきゃ嫌!」
ジャハンはマルアームをなだめるように、生きて帰ったら結婚しよう、そう伝えるがマルアームは引かない。
「だめよ、もう嫌なの!傭兵や蛮族に襲われたらと思うと、私・・。ううん、傭兵達は良い人もいっぱいいる、
でも怖い目にも何度も遭った!それに、蛮族にさらわれた娘達がどんな目にあったか、あなただって知ってるでしょ!?」
ジャハンとの子供をもうけられるのは今だけかもしれない、マルアームはそう考えていた。蛮族軍に虜囚にされた
娘達がどうなるかはジャハンも知っている、手ひどく犯された上に子を生せなくなった娘も居る。
たちの悪い傭兵の事だって知ってる。マルアームの心配はよくわかった、彼女を抱いていた手をすっと下ろしチュニックの
裾から内側に差し入れ、ズボンの腰紐の結び目を探る。紐をほどくと赤布のズボンはストンと落ちマルアームはそれに
反応してビクンと震えた。下着に手をかけるとマルアームは細かく震えだした。上着もブーツもそのままに、下半身だけ
裸になったマルアームを抱いたまま、その背中を塁壁に押し付ける。
「マルー始めるよ、いいんだね?」
コクリと首を縦に振ったマルアームの背中に回していた腕を下ろし、手をそのまま後ろから彼女の臀部に下ろす。
ここが暖かい我が家の寝屋だったら、この大きく柔らかい絹のような肌を愛せるのに、今は時間がない、
さらに手を進め彼女の尻側から股に手を差し入れる。その周囲は既に熱く、水気も帯びている、すぐ始められるなと
ジャハンは思い、尻から差し入れた手の人差し指と中指で彼女の割れ目を開き、膣口を晒す。その動きに湿った
吐息を漏らすマルアーム。ジャハンは自分のものをシャルバルから出し、彼女の股に差し入れる。既に自らの手で
彼女の入り口は開けてあるので、挿れるのは手間ではないと思っていたが、うまく刺さる部分が無い。不思議に思い、
割れ目を開いていた人差し指を曲げ、入り口がありそうな部分を探る。指先が孔を見つけるがずいぶん小さく、
そこに自分の鈴口を誘導し押し込むがなかなか入らない。一連の行為にマルアームが震える声と体で、
まだ生娘である事を告げて来た。初めて他人に触られた部分をまさぐられだいぶまいっているようだ。
(まさか、まだ綺麗な体だったとは・・。)
だが、市街の戦闘音は着実に迫って来ている。
「ごめん、急ぐよ。乱暴になるから痛いと思うけど・・。」
「いいわ、わからないから、好きにして。」
グイッと、突き上げるジャハン、マルアームは無意識に逃げるようにつま先立ちとなるが下からの突き上げに
逃げ切れないまで脚を伸ばすと、自分の入り口が裂けだすのがわかる。
「ひぃぐ!いったぁ・・・いった・・」
可哀想だが止める訳にもいかず、もう一息と判断し、グイッと突き上げる。ヌチッっと粘液と粘膜が擦り合わさる
小さな音がして、ジャハンはすっぽりと彼女に収まったのを感じた。後方から怒声と金属音、獣の咆哮が聞こえて来る。
(待ってるわけにはいかないか、ごめんマルー)
突き刺したばかりだがすぐにストロークを始める。強引に貫かれ、痛みが最高潮のうちからジャハンに
かき混ぜられたマルアームは大粒の涙を目に溜める。
「いったぁい、痛い、痛いよぉ、ジャハァン、ウッ、グッ、ハゥ」
突かれるたびに言葉が詰まるマルアームを気の毒に思いながら、自分の具合を気にする。このペースなら射精出来そうだ、
あまり優しくしすぎて出ないようなら意味は無い。
空いている手で彼女の片膝を抱え股を開かせる、誰もいない真っ暗な区画で、塁壁に押し付けられた男女が激しく貪り合う。
人間死を感じると性本能が活発になるというのは本当のようで、ジャハンのものはいつもより膨れて充実しており、
マルアームは未開発の体でありながら徐々に性感を見出しつつあり、非常に粘りの強い粘液が止めどなく溢れる。
ぷっくりした頬に女らしい丸みのある体、食べたら肉汁が多そうだなんて妄想した事もあったが、
およそ期待通りのものが自分を締め付ける。
マルアームもズン、ズン、と突かれるごとに、結構な痛みが股間に走るが、また何か別のものも込み上げて来るのがわかる。
「!、!、!?、あっ!、はぁ、ん!?なんか、いい・・、あっ、あぅ。」
痛みに涙をぽろぽろながしながら、自分が女へと変わって行くのを感じる。職人衆に育てられ、自分でも男勝りだと
認識し、町娘達のように女らしく愛する人と一緒になるなんて事は自分には無い事だとどこかで思っていたのに。
いま体を寄せ合い、愛するジャハンに求められ、女の悦びを知りいとおしい感情が胸にあふれる。
が、もしかしたら、それもこの一瞬で終わりかもしれないのだ、死が二人を分とうとしている。
「いやだよう、ジャハン、死んじゃいやぁ・・」
彼女の言葉にジャハンの胸が痛い程に締め付けられる。
(こんな、こんな愛し合い方で終わりなのか・・?)
「死ぬもんか、絶対に生きて帰る。だから一緒になってくれマルー。」
感情の高ぶりに合わせて、子種が激しく込み上げて来る、もうすぐだ。獣のように唸るジャハンから
精子が吹き出すのを感じると、マルアームもしっかりと組み付き合った下半身をさらにすりつけ最奥に全て受け止める。
まるで恥女だと思いつつも、ジャハンを貪る。そのままの姿勢で、二人とも激しい呼吸を整えていた。
そうしている間にも戦闘音はさらに迫り、様々な足音まで聞こえるようになっていた。
さあ・・とジャハンが言い出したのを遮るようにマルアームが強い口調でいう。
「まだよ、まだ時間はある。恋人同士の愛の確認じゃあ無い、そんな睦み合じゃないの。もう一回私を犯して、男でしょ?
私を孕ませなさい、どんな恥辱でも耐えてみせるから。」
マルアームの意思はしっかり伝わった、もう反論はすまい。いったん彼女から引き抜くと、今度は壁の方を向かせ、
両手と上体を壁につけるよう指示する。一瞬考えたような表情になり何をするのか理解したのだろう、マルアームは顔を
真っ赤に染めた。それでもいわれた通りの体勢になり、そして、自ら脚を広げ、膝を少し曲げ、尻が上向きになるように突き出す。
(すまないマルー、こんな恥をかかせてしまって。)
むき出しになった股を見ると、結構な血に驚く、乱暴にしすぎたか。すまないと思いつつも、既に口を開いている彼女の
陰部から先ほど流し込んだ子種が漏れ出ようとしていたのが目に入り、男の本能が体を塞げと命令する。
子種を押し戻すように彼女を貫き、二度目の射精に向け、一気に腰を振り立てる。
「はあぁぐ、あ、あ、あ、ジャハンンン、さっきのが、溢れないように、気をつけ、はぁう!」
やはりまだ痛むのだろうか、しかし確実に悦びも感じているようだ。細かく早く腰を振ると彼女の膝がガクガク振るえ、
体勢を安定させる為に、上体をより塁壁に押し付けて伏しているようであった。それはマルアームは、快楽に顔が歪むのを
ジャハンに見られたくなかったのもあった。脚が自分の意志から離れ快楽に崩れそうになり行為の邪魔をしてしまい、
彼女は思う、私はなんて淫らな女なの、こんな時に、ジャハンは頑張ってくれているのに、快感に耐えられないなんて。
性器に与えられる刺激に、嬌声を止められない、また下半身はだらしなく愛液を流し続け、時折膝から力が抜け、崩れそうになる。
「大丈夫、女の子だもの、仕方がないよ。」
ジャハンが彼女の意図を汲んだのか、優しく語りかけ、彼女の腰をしっかり押さえ支えてやる。自分が腰を
打ち付ける度に、彼女の豊満な尻は柔らかく形を崩す。立てばシャクナゲ座れば牡丹とはよく言ったもの、
まあ今は突いて牡丹の形になっているが、そんなマルアームを自分一人のものに出来るなんて、
誰もがうらやむだろうと自慢に思う、絶対に生きて帰らなければ・・。
先ほどよりだいぶ早く、込み上げて来たのをジャハンは感じる、
「出すよ、これがすんだら必ず逃げるんだ。急いで下着とズボンをはいて、水路を止めるから、急いで通り抜けるんだ。」
喘ぎながらも、うん、うん、と返事をするマルアームに安堵し、自分の下半身に集中する。
動かしやすい体勢の甲斐有って、彼女の膣がよく絡み、敏感になって来た自分のものが快感に耐えられなくなる。
獣のような行為の終わりに、彼女の最奥を目指してさらに分け入ろうとする。マルアームもそれを手伝い、
ジャハンの鈴口は、彼女の底にある少し固い肉壁の小孔に押し当てられる。激しい絶頂感とともに、ジャハンの全てが
マルアームの中に流れ込んだ。ギュッと膨張しては吹き出すのを繰り返す、男性器の生々しい感触にマルアームは
もう子供には戻れないと痛切に感じる。
アトルガンを支えて生きて行く一人になる、そういう決意をジャハンに注ぎ込んでもらった気がした。
「よし、すぐに水が停まる、もう水路に降りて!」
引き込み水路の木弁がギシギシと軋みながら水を止める。大きな仕掛け閂を抱えるように押さえ込みながら
ジャハンが叫んだ。別れの挨拶は無い、振り返りもしない、脚が止まってしまうから。マルアームは水が引いた
水路を中腰になって駆け抜ける。街区を隔てる大型の塁壁は分厚い、どれぐらい時間が経っただろう、数十秒か数分か、
ジャハンには全くわからないが、水音を立てて走って行く愛しい足音はもうしない。
「ジャハーン!必ず、必ず帰って来て。もういいわ、逃げて!隠れるのよ!ジャハン!」
湿った水路に木霊した
声がくぐもって聞こえて来る。蛮族共が水路を伝ってしまわないように閂を元に戻し水を再び流す。
隠れたり逃げるわけにはいかない、自分で築いた街と、マルアームに未来の為に。
戦闘は熾烈を極めていた。至る所で乱戦が繰り広げられ、既に将軍も討取られたなどという情報も飛び交う。
そこら中に落ちている戦死者の曲刀を拾い上げ、義勇兵の戦団に加わる。
「炎蛇将配下の軍団、近隣の街区を制圧との報あり!歓呼斉唱にて迎え入れよ!」
激戦のさなか、伝令が我軍の局地的勝利を伝える、沸き立つ兵や傭兵達が歓呼の雄叫びを上げる。
ウラーーーーーー!次々に上がる歓呼を遮り炎蛇将が姿を現す。
「者共聞けい!これより敵主戦列を攻略する。ここからが胸突き八丁、鍔迫り所よ!命など惜しむなッ!
退く者あらばこれを切る、ゆけ!奴らと我々の屍を山と築くのだッ!」
突撃命令!なおも兵士達は沸き返る、
ジャハンも、これが最後になるかもしれないと思いつつも曲刀を振り上げて雄叫びを上げた。
数ヶ月後、お腹の子供のために病院に通うマルアームは、負傷者収容室に立寄っていた。
兵士に傭兵、民間人と戦争で傷ついた者たちが苦しそうに並んで寝ている。
「おい、まーだ治ってないのかよう。仕事さぼりたいだけじゃないのか〜?」
ニヤニヤ笑いながらジャハンの包帯で締め付けられた右足をつつく。
「痛てぇ、ひでえ嫁だ!」
悲鳴を上げるジャハンに、周りの兵士達が寝込んだままゲラゲラ笑う。
塁壁で待ってるよ、楽しそうに笑いながらマルアームは勇敢な夫に口づけをした。
おしまい