◇◆登場人物◆◇
トレディオ(Trediaux)金カッパエル♂
イブリリ(Yblili)青白おかっぱタル♀

ミレイラ(Mireilla)エル♀


「おつかれさま〜、また今度ね」
「おう、おつかれー」
アルザビの街に襲撃してきたマムージャ軍を退けると、リンクシェルの仲間同士である冒険者エルヴァーンの男トレディオと同じくエルヴァーンの女ミレイラはそれぞれのレンタルハウスの部屋へと戻っていった。


「おかえりクポー!」
「ああ、ただいま。」
「お客さんクポ。」
「こんにちは、お邪魔してます。」
ころころとしたタルタルの女特有の声が耳に入ってくる。
「あれ、イブリリさんどうしたの?」
彼女もまたトレディオのリンクシェルの仲間だった。
「いろいろ作ってておすそ分けして回ってたんですけどいないのでお邪魔しちゃいました。」
少し笑みを浮かべてイブリリと呼ばれたタルタルの女は言った。
「うまいクポー!!ご主人様も食べるクポ!」
「リスの忘れ物…HQじゃないか、こんなにいいお菓子いいの?…ってこいつがもう半分がっついてるか」
「あはは、気にしないで下さい。作るの自体が楽しくて競売でも売れ行き悪いのとか作っちゃうんです。」
「そっか、それじゃいただくとするよ。ありがとう。」



少し話した後、イブリリは甘い栗のお菓子の匂いを残して帰っていった。
トレディオは頬杖をついて彼女のことは忘れて別のことをぼんやりと考えていた。

(ミレイラさん…誰かとパーティ組んで一緒にいるんだな…
…相手は誰だろう…彼氏とかいるのかな…俺のことどう思ってるんだろう

もっと一緒にパーティ組んでどこか行きたい…でも俺黒魔道士だしな…
…腹苦しいな…甘いのはこたえるな)


「寝るか。」
「まだまっぴるまクポ。げっぷ…」
「ほっとけよ。」


リヴェーヌ岩塊群。
ある日のこと、トレディオはミレイラを誘ってその奥に潜む、宝を隠し持った実体の無い虚ろなクラスターの姿をとったモンスターを倒すために
その住処の前まで来ていた。先客が何人かいるようだったが特に気にもしなかった。
(よーし、きっかけはこれで作ったぞ。あとはどうやっていい雰囲気に持っていくかだな。)


「ぜぇぜぇ…とうちゃく〜、あたしもう疲れたー!」
「ははっ、もうちょっとってところでモンスターに見つかったからな。でも俺のスリプル冴えてただろ?」
「そうだね〜ありがとトレディオさん。」
「中に入ったらもっといいとこ見せてやるか!」
「あっはっはっはーそんなこと言っててあたしの旦那にバレたら大変だよ。すぐヤキモチ焼くんだから。」
「あ、え、ダンナさん…?ミレイラさん結婚してたんだ。」
「ん、そうだよ?あれ、言ってなかったっけ?」
「あ、そうなんだ。うん、知らなかったな。はは…」
「そろそろ行こ。」
「お、おう、行こうか…」
トレディオは動揺を隠そうとしていたが、頭の中はミレイラが結婚していたという事実がぐるぐると回っていて完全に集中力を欠いていた。
そしてそこに投げかけられている視線にも全く気がついていなかった。


結果は散々だった。二人で一斉にウォータの魔法を浴びせかけた途端、その虚ろなモンスターは大爆発を起こしたのだった。
宝は見つからずじまいで傷を負った二人はアルザビの街へと帰っていった。


しかしそれ以上の喪失感からトレディオは立ち直れず、
レンタルハウスに入るなり彼はベッドに体を投げ込んで毛布を引っつかんで大雑把に体にかぶせた。
そのとき中に何かいたような気がしたが、またモーグリが自分のベッドを勝手に使ってるんだろうと思って
ミレイラのことを頭から打ち消したい一心でそのまま無理やり眠りについた。


夢の中ですらその喪失感には勝てなかった。しかし――
(ううぅ、重い……何なんだ??)
その眠りは腰の上で何か重いものがうごめくような感覚で中断された。
「あれ、起きちゃったんですか?」
くすくすという笑い声と共に可愛らしいが淡々とした声が聞こえてきた。
「ん、あれ…イブリリさん…?」
「クスクス…おはようございます」
「え!?」
寝ぼけた彼の目の前に理解しがたい光景が広がっていた。
そこにはイブリリが完全に素っ裸になって腰の上で彼女自身の腰を前後に動かしていた。
彼も服を全て脱がされていて裸だった。
鼓動の速さがいつもの数倍になるのを感じ、一気に目が覚めた。
「目が覚めてきました?」
「な、な、なにを……」
ふと股間の感覚が敏感になった。
イブリリは彼女の性器の入り口をトレディオのモノにこすり付け続けていた。
素股だ。感じていたのは紛れも無く快感だ。それに気が付くとその感覚はますます強くなる。
彼女の顔は真っ赤になっていた。かなり酒臭い……
「はあ、はあ、きもちいいですか…?」
「そうじゃなくて、何やって、るんだ、うっ……」
何とか理性を保って問い詰めてみたつもりだったが、その間も彼女にされるがままになっていた。
「え、だって」
腰の動きを止める。小さな彼女はトレディオの上をぺたぺたと這って彼の胸元の上まで来て顔を近づけた。


「今日ふられちゃいましたよね?」
「え、なんでそれを…って関係、ないだろ…?」
彼女に間近で見つめられ強い口調で言おうとしたのが弱まってしまった。
さっきまで酒臭いばかりだったが強烈に女の匂いがしているのに彼は気が付いた。
「今日ミレイラさんとデートにいきましたよね?偶然私の友達がそこにいたので
ちょっと聞き耳立ててもらっちゃいました」さらに顔を近づけた。
「デートでもないし、ふられてすらいない!だからそれがこれとどういう、うぐ」
突然イブリリに顔にしがみつかれ長い口づけをされた。
「おねがいです!今日だけでもいいです!私で全部忘れてください!」
イブリリはさっきまでいつもと同じように淡々と喋っていたのに急に感情を昂ぶらせ、
せきを切ったように泣きじゃくり大粒の涙をぼろぼろと流し始めた。
「ひくっ…今夜、すぎたらもう、私のことなんか、忘れてもいいですから…」

あまりにも唐突過ぎる彼女の行動に戸惑っていたが、
普段真面目な彼女がこのような行動を起こすなどどれほどの覚悟か想像もつかない程であることに気付き、
その懇願の言葉に彼の理性は吹き飛び「男」のスイッチが入った。
彼はイブリリも含めてタルタルの女を異性として見たことなど一度も無かったが、
この瞬間から彼女に対し強く「女」を意識した。


「いいんだね?」
彼女をベッドに寝かせ、その上に覆いかぶさり口付けをし舌を入れた。
それに応えるように小さな舌がからみついてくる。
彼女の目は恍惚状態と一目でわかるものだった。もはやトレディオの頭の中からはミレイラのことなど忘れ去られてしまっていた。
「やっぱり女の子なんだね」彼は男女で同じ体型のタルタルの膨らんだ乳首を見て言った。
乳房こそほとんどないがそれは女性のものとわかる形をしていた。
「ああっ」その乳首は舌や指でもてあそばれていた。
「今まで君のこと気が付かなくてごめんね」
トレディオは指でころころといじくりその反応を楽しんでいた。
「いいんです、今こうして私のこと抱いてくれてますから…はあ、はあ…」
イブリリは自分の胸に喰らいつく男をドロンとした瞳で見下ろして少し微笑んで言った。


上半身の敏感なところを次々に触れられる度に彼女は息を荒くしていった。
次第に彼女は我慢できなくなり内股をこすり合わせ始めた。
「あの、そろそろ…」
「え?」
「その、ください」
イブリリは頬を紅く染めてもぞもぞとつぶやくように言った。
その意図を理解したトレディオは口の中が干上がるような感覚に襲われた。
イブリリのことが愛おしく感じ始めていた彼は必死に言葉を口にした彼女を焦らして弄ぶ気にはなれず、
すぐにその欲求に応えてやることにした。


その小さな上半身から顔を離し、彼女の両脚を手で開き先端を彼女の入り口に押し当てる。
「それじゃ、いくよ」
「はい…」
亀頭が彼女の中に侵入した。ものすごくきつい。
タルタルとの体格差だけによるものとは思えない。
心配になって相手の顔を見ると苦しそうな表情を一瞬していたように見えたが
その視線に気が付くとイブリリはすぐに笑顔に戻して見せた。
「大丈夫?」
「何がですか?」
「すごくきついんだけどもしかして…」
「続けて下さい!」
「お、おう」
強い口調に負けて続けることにした。奥まで完全には挿入せずに、
半分程までを小さな膣に出し入れした。
彼女の口元だけは相変わらず微笑んでいたが
脂汗を浮かべ少し青ざめていることから苦しんでいることは明らかだった。
トレディオは腰の動きを止め体を起こした。
「もうやめよう。いきなり無理したら壊れちゃうよ。」
「やめないで!」
彼はベッドから立ち上がろうとすると後ろから強くしがみ付かれた。
「もう、ここで壊れても死んでもいいんです。だから、最後まで、してください。
でないと私押しかけただけの変態になってしまいます…ひくっ」再び涙声になる。
「うーん、どうしようか。」
少し戸惑ったがトレディオはその声に決意した。
「じゃあ、これを使ってみようか」
机の引き出しから透明の液体が入った瓶を取り出した。
これは行為時に性器などに塗る、ぬるぬるした潤滑油のようなものだ。
もちろん異種族間での行為が多いヴァナディールのものなのでこれを読んでいる方が知っているそれより数段効果は高い。
その分お手ごろ価格とは言いがたいものになっている。
「あはっ、なんでそんなの持ってるんですか。やっぱりミレイラさんとのことそこまで考えてたんですね。」
「違うよ。今日君が来るという運命に備えて買っておいたんだよ。」
「ぷっ。くすくす、あははははは。」イブリリは初めて声をあげて笑う姿を彼に見せた。
「ははははっ。」


トレディオは生まれて初めて口を開いたばかりの彼女の入り口にその奥まで念入りに液体を塗った。
一本で数日分の稼ぎが飛んでいくものだったが、すでに彼はこの女のためなら全部使ってしまっても構わないと思っていた。
イブリリはベッドの上で蛙のように脚を大きく開いて全てを任せていた。指を奥まで挿入されて塗られている間にも彼女は再び高まっていた。


「じゃあ、もう一度いくよ」
「はい」
再び半分まで男根を彼女の中に挿入する。まだ苦しいか。しかし液体の効果は強く、狭いながらもしっかりと侵入してくるものを肉で包み込むように変化していた。
「うくっ…」
女の方も自分の中に入り込む違和感に少し苦しんだが、滑らかに挿入されるようになり、
何度も繰り返し挿入され続けられているうちに青ざめや作り笑顔は消え、新しい快感に頬を染めていた。


「うぅ…あ…ああっ、あっ」
彼のピストン運動が続くにつれ、違和感や苦しみよりも快感の方がまさり、その感覚に震え、声まで漏れてきた。
「どう?」
「あっ、あっ、気持ち、いい、です…ああっ」口元に自然な笑みが浮かんでいた。
「じゃあもっと速くしてみるよ。」
「はいっ…ああああっ」
「いく…ぞ!」男の先端は膣の奥にまで達し、入れる度にその奥を叩いていた。
「ああああっ、ああああっ」


「はあ…はあ…」
液体は男の側の快感も強め、既に遠慮することなく奥まで突いていたためトレディオはもうあまり長くは持たないと感じていた。
「ああっうううぅ…」
イブリリは強まった感覚に全身にゾクゾクとした感じを覚え、快感に身をよじり始めた。


トレディオはスピードをさらに強めた
「はあ、はあ、そろそろ限界かな?」
イブリリは『気持ちよすぎて頭がおかしくなりそうです』と答えたつもりだったが
「いおい…ああっあわわあっ…おうれす」嬌声も混じり全くろれつがまわっていなかった。
「よし、いい感じだ。」
「はああっはああっ」彼女は甲高い声を上げ始めた。
「くっ…」トレディオはラストスパートをかけ限界まで強く彼女の中を何度もえぐった。
「ふあああああっもだめ…」
「俺…も…」
「あああああああああっっ…はああっ…」
イブリリの快感が頂点に達し全ての思考が飛び去り快感で埋め尽くされた。
それを見届けるとトレディオは彼女の中に自分の全てを注ぎ込んだ。


「トレディオ…さん」
「…ん?」
「ありがと、ございます…」




「少し汗を流したいのでお風呂お借りしてもいいですか?」
「ああもちろん、ごゆっくり。」

イブリリが汗を軽く洗い流し部屋に戻るとトレディオはすでに先ほどの姿のままで熟睡していた。
彼女は彼の体をタオルで軽く拭いてやり彼の寝間着を探し出して着せた。
体の大きなエルヴァーンに着せるのは大変だったが全く苦にはならなかった。
そして彼に丁寧に毛布をかぶせ、最後にその顔に優しく口付けをし、自分も着替えて部屋を後にした。


「はあ…」
トレディオはため息をついた。イブリリの訪れた夜から何日もあのセックスのことばかり考えていた。あれは一体何だったんだろう。
最初は夢じゃないかとも思ったがあの夜の痕跡はいくつも存在したため実際に彼女は来ていたのだ。
リンクシェルでは彼女はいつも通りだ。ミレイラとだって仲良くやっている。
彼の中ではミレイラのことなどどうでもよくなっていた。思い起こすことすら一度も無かった。
イブリリの言った自分でミレイラのことを忘れてほしいという願いは実現されていた。

あれからイブリリからの個人的な接触は一度も無い。しかし常に彼女のことばかり考えていた。
それまで彼女を女として見たことなど一度も無かったが今では違っていた。もっと知りたい。もっとあの子と仲良くなりたい。
もしかすると自分は彼女の策略に落ちたのではないだろうかと薄々感じ始めていた。
しかしそれでも良かった。今は自分を落とすためにそこまでする彼女が愛おしかった。
トレディオは意を決して遠くにいる彼女に自分の声を伝えてみた。

『イブリリさん』
返事が無い。少し不安になった。
『ねえ、イブリリさん』
『…あ、はいっ!』
もう一度声をかけると、少しの間の後とても明るく期待に満ちた声が返ってきた。彼の顔に笑みが浮かんだ。
『そのさ、もし今度よかったら…』




おしまい。