登場人物(全員ヒューム)
ルーファー 赤魔道士←主観
クルーガー シーフ
ロディ   戦士
ジェイク  狩人

メルフィール ラミア


俺たちは丸テーブルを囲み先ほどのアサルトについて話し合っていた。
「にしてもよぉ!」
右隣りに座る大柄の男が語尾を荒げ勢い良くテーブルを叩く。
ガチャっと食器達が悲鳴を上げたものの酒場の喧騒の中にかき消されていた。
「仕方ないじゃないか、情報不足だったのが否めない…」
俺の正面、大男の右手に座っている男が煽るでもなく、宥めるでもない口ぶりで語る。
「…挑戦したところで、次は絶対という保証もないしな」
ため息交じりで言い終わるとそいつは右手で弄んでいたグラスのワインを飲み干した。
「最初から予想できてりゃ、ああはならなかったはずだ!」
大男は激高して再度テーブルに拳を振り下ろす。
その行動に食器たちが弾み踊る。が、それらの無事を見届けた後俺はゆっくりと席を立ち上がった。
「ここで言い争ったところで何も解決しないだろう?明日の挑戦に向けてゆっくりと策をねろうじゃないか」
そう言って、俺達は先ほど失敗に終わったアサルトを思い起こしていた。



Time is …
ルジャワン霊窟・アズーフ島監視哨

「アハハハハ……そんな……貴方は……本気……?こんな……治験に……正気……?」
青いヴェールに顔半分を隠した人物。アズーフ島監視哨を見張る不滅隊の一人ナリーマ。
彼女はまるで水晶のような虚ろな眼差しで俺達を舐めるような視線で見つめていた。
背筋にぞくりとした冷たい感触が走る。これは寒気というものだろう。
おそらく俺だけではない、現にシーフのクルーガーは顔色を失っているようだった。
「ああ、俺達はいたって正気だ!お前さんに比べればなっ」
そういったのは戦士のロディ。しかしナリーマを自分の視界に映らないようにあさっての方向をみながら気丈な振りをしているようだ。
「フフフフフ……いいわ……あたし……貴方の中……コレ……入れるだけ……」
そういって懐から取り出したのは赤、黄色、青、緑の原色さながらの色彩を持つ薬液が入っている注射器だった。
それらを俺の第六感が危険だと告げる。
そもそも不滅隊を強化するべきで作られた移植組織。
組織がなんであれ、俺達は人体実験をされようとしているのだからおいそれと引き受けるのは間違っていたのかもしれない。
「ちょっと待ってくれ。その薬の効力を先に聞かせてはくれないか?万が一命を失うようなことになったりしたら…」
「そう……危険は……ないの……命は……平気……」
ナリーマの表情は変わることなくまるで人形とさえ錯覚してしまいそうだった。
4本の注射器はそれぞれ異なる色が入っており、俺達一人に一本ずつ彼女自ら手渡していった。
仲間にならって俺も彼女の手から注射器を受け取る。中には不気味に蛍光染みた黄色の液体が入っていた。
「それは……青の烙印……青の力を……受け入れて……ね?」
俺達は一度みなで顔を見合わせ、おのおの自分の腕に注射針を突き刺した。
ごくり…
乾いた喉に生暖かい唾液が降りる。


再度周りの様子を見渡してみると、すでにロディは緑の液体を体内に注入しているようだった。
続いて、クルーガーが、次にジェイクが、それらを見届けた上で俺は自分の注射器の液体を体内へと注入していった。
血が全身を駆け巡る錯覚に陥り、それらがすべて脳に駆け集まり、異常なまでの閃きがあった。
「うわあああああ──!」
悲鳴というより絶叫に近い雄たけび。それは俺だけでなく仲間全員が発しているものだった。
「……痛い? ……苦しい? ……気もちいい?そう、あたしにも……分からないけれど……」
ナリーマが俺達の様子をみて無機質な声で呟く。
しかし体の異常を感じたのも一瞬でまるで生まれもってそうだったかのように俺の体は順応してしまっていた。
薬の効果と分かっているが頭が冴え渡り、異常なまでの速さで計算や数式が頭の中に浮かびその答えがでる。
「大丈夫か?みんな」
「ああ、でもどこかおかしい。まるで空を飛べそうな気がする」
「俺は腕が鉛のようだぜ。全身に力が漲るんだがどうも腕が重い」
ロディは両腕をだらんと前のめりにぶら下げ、その姿を見て俺はゴリラを連想してしまう。
そして冷静に俺達の変化をじっくりと観察していたのはクルーガーだった。
「クルーガー、お前はどうなんだ?」
「ああ、目が…お前達の動きがスローモーションに見える、けど…」
「けど?」
クルーガーの言葉を反芻して聞き返した。
「全身から力が抜けていったような感じだな…」
やはり俺だけでなく全員がなんらかしらの肉体強化を感じれるもののその反面、副作用とも言うべき変化が伴っていた。
「あたしの……青い血……騒ぐの……疼くの……魔物……どこかに……?ね……殺して……青の力で……話はその後……ね?」
俺たちが互いに変化を確認し終わったのを見計らってナリーマはぽつりぽつりと零す。
まるで生気を感じさせない彼女は人形、いや死人のように思える。
「これが、青の力か……」
「つまりどこかに居る魔物を退治すりゃいってことだろ?」
「となると俺の出番か」
狩人のジェイクの言葉が力強い。
地図が無いような場所でも彼の索敵能力は劣ることなく今まで何度も俺達を救ってくれていた。
彼の索敵が始まる。五感を研ぎ澄まし、風の流れを読み、地面からの音の伝動を探る。
「居たぞっ!」
ジェイクは察知した方角に指を指すと、足早に駆け始める。
その速度は尋常ではなかった。
「おいっ!」
ロディがジェイクに声を掛けるが彼の姿は瞬く間に遠ざかり、やがて視界から消え去ってしまった。
俺の脳裏にジェイクの体の変化を具合を言った言葉がよぎる。
『ああ、でもどこかおかしい。まるで空を飛べそうな気がする』
言い方こそ違えどあいつは体が軽くなり風のように走れるようになったのだろう。
魔法の地図で彼の居場所を確認したところ、俺たちの場所からかなり離れた距離に待機しているようだった。
「俺たちも追いかけるか?」
クルーガーの言葉に俺とロディが頷く。


ジェイクは魔物の正体が分からないうちに手を出すなど軽率な行動に出ないだろうが少しでも早く合流しなければ進展が望めない。
俺たちはナリーマをその場に残し自分達の体に違和感を覚えながら地図が示すジェイクのポイントまで歩を進めていった。
この時点ではまだアサルトの真意を俺たちは誰一人として把握できてはいなかったのだ。



「……」
俺たちは目の前で行われている光景に言葉を失っていた。
確かにジェイクは先程地図が示すポイントから移動することなくそこに居たのだ。
彼は一人ではない、その下に組み敷く者が居るのが遠目からでも分かった。
女性だ。
すらりと細く長い足をジェイクの腰に絡め、彼を捉えていた。
二人は裸で抱き合っているのだ。
抱き合っているだけではない、この場所からでも二人が何を行っているかが明らかに分かる。
男女の情事、愛の契り、言い方は色々あるだろうがジェイクとその女性は性行為を行っていた。
「ジェイク!」
ロディが彼の名を怒鳴った。
その言葉に反応をしたのはジェイクではなく組み敷かれた女性の方だった。
一拍置いた後ジェイクは俺たちの存在に気がついたようにゆっくりとその場に立ち上がる。
「お前なにしてんだ!」
ロディが荒声を上げて続ける。
しかしジェイクはその言葉に何の反応も示さず、足元においてあった自前の武器を手に取り矢を番えようとしていた。
「ジェ・ジェイク?」
彼は明らかに俺たちに向かって弓をを引いていたのだ。
「危ない!」
背後でクルーガーが咄嗟に叫んだ。
ジェイクが矢を番えた後、一瞬の出来事だった。
閃光のように彼の手から放たれた矢は瞬く間にロディの喉元を貫きぽっかりと風穴を開けてしまっていたのだ。

□イーグルアイ□

ジェイクの最終手段の技が仲間のロディを一撃で葬っていた。
それはクルーガーにとってスローモーションのように見えたそうだが俺には瞬きした程度の時間にしか感じられなかった。
「……」
ロディは何か言葉を発しようとしたが喉に開いた穴から空しく空気が漏れるだけだった。
それを最後に彼の巨漢は大木が倒れるようにゆっくりと地面に突っ伏していった。
「なにがどうなってるんだ!?」
クルーガーの悲痛な叫び声が洞窟に響く。
明らかにジェイクは普段の彼ではなかった。
彼は俺たちに向け次の矢を番えようと準備を始めている。


俺たちはこのまま彼の攻撃を黙ってみている場合ではない。
そう思った矢先、頭の中に数通りの対処法が浮かびあがった。
俺はその中からもっとも最適な打開策を選ぶ。
青の力とやらのおかげだろうか、それを実行に移すまでものの数秒と掛らなかった。



「いくぞ!」
作戦簡潔にまとめて伝えると、クルーガーに合図を送る。
クルーガーが囮となり彼に近づいた上で俺の魔法でジェイクを眠りの世界へと葬った。
ジェイクの矢が三度クルーガーに放たれたが彼は肌をかすめるギリギリで見切っていた。
ジェイクの行動を封じたものの俺は急いでロディの蘇生に向かわなければ手遅れになってしまいかねない。
しかし、目の前の女に危険性を感じる間は後回しにせざるを得なかった。
「お前…何者だ?」
まるで水晶のような虚ろな目をしているエルヴァーンの女に問いかける。
「わたしはメルフィール、お前達を待っていた…」
「待っていただと?」
クルーガーがメルフィールの言葉を反芻する。
「邪魔者は居なくなった…うずく体を沈めて……」
メルフィールの整ったボディーラインを舐めるように見てしまった。
「ここが疼くの…」
彼女はそう言って座った姿勢でMの字に脚を開くと、濡れた花弁を自ら指で拡げて見せる。
それは妖艶という言葉が当てはまった。
妖しく、艶を帯び、花芯は俺達を誘うかのように蠢いている。
「わたしの目を見て……」
強制力があったわけではないが俺は彼女の言葉に誘われるようにその目を見つめていた。
水晶のような目が妖しく光り、真紅に染まった。まるで紫水晶のように…
身の毛がよだつのを覚え、彼女から視線を逸らそうとしたがすでに俺はその術中に堕ちてしまっていた。
魅了という彼女の手法に…



不思議な感覚だった。
意識はあるものの自分で指一つ動かせず彼女の言うがままに行動していた。
女を知らないわけではない、しかし女の体がここまで心地よいということは今まで知らなかった。
口付け一つだけで全身が蕩けてしまうのを知覚できる。
まるで水になったかのようにメルフィールと一体化してしまったようだ。
メルフィールのキスは唇から滑り耳たぶを噛み、その中へ彼女の舌が挿し入れられる。
組み敷かれ俺はされるがままで彼女の愛撫に身悶えしていた。
なぜか彼女の体は人間の肌のように柔らかくはなかった。


硬質な皮が体を這うように撫ぜる。
そして違和感を覚えたのが妙に彼女の体が冷たかったことだ。
与えられる快楽を感じることが体がまったく自分の意思で動かない。
そう思っているうちに彼女の愛撫は上半身から徐々に下半身へと進んでいった。
下腹部に血液が集まり一点が熱く、硬く滾っている。
その怒張を彼女はためらうことなく口に咥えてしまった。
彼女の口腔はとても冷たかった。
熱い鉄を冷ますかのように彼女の舌は俺の怒張に絡みつく。
鉄なら冷めるだろうが、俺のモノはより一層滾り、逞しくそそり立った。
彼女の唾液は怒張の先端から根元に向かって垂れ落ちてくる。
その唾液を舌で掬い、延ばし、絡める。

ねちゃねちゃ…ぐちゅ、ずずず……ちゃぷちゃぷ………

無色透明の唾液は粘り気を帯び、とろとろと怒張に纏わり着いている。
それはまるでメープルシロップの様だった。
天を仰いで佇立する怒張を根元から何度も何度もいとおしげに舐め上げる。
腹越しに見える彼女の顔はうっすらと赤みを帯び始めていた。
「そろそろ…いいかしら」
彼女の意味はたやすく理解できる。
言葉を発しようにもそれすら今の俺にはできなかった。
メルフィールは俺の怒張を手に取りしなやかな動作で腰を跨いだ。
濡れた花弁が妖しく目に映る。
それが怒張を包み込み、膣内へと姿を隠していく。
そこは彼女の口腔内同様、ひんやりと冷たかった。
膣壁が怒張を奥へ奥へと誘うように蠢く。
背筋に寒気に似た感覚が走っていた。
全身が鳥肌立ち、得も言えぬ快感が駆け巡る。
人は時として怖いもの見たさという衝動に駆られるときがあるが、今の俺がまさしくそれだった。
このままでは命の危険すら感じたもののメルフィールの隠された真実を知りたくなっていった。
怒張が根元まで咥え込まれ、彼女の口から感嘆とも取れる大きな溜息が吐き出された。
「はあぁぁぁぁぁ……」
俺の胸に手を置き、彼女は自ら腰を上下に動かし始める。

ぐちゅぐちゅぐちゅ、じゅぷぐちゅちゅちゅ……

静かな洞窟に淫靡な音色が奏でられる。
怒張に感じる快感、背筋を駆け巡る恐ろしいほどの寒気、
そして彼女の腰が上下に動いた一ストローク毎に精気が吸い取られる脱力感。
「いいわ、貴方……とっても……特別な……あっ、そう、特別な力が……あぁん」


うわごとのような彼女の言葉で咄嗟に俺は先ほど自分が得た力のことを思い出した。
この状況を打開すべく解決策を練ろうと考えを走らせる。

………

しかし手遅れだったのだ。
今となっては先ほどのような感覚は蘇らず、むしろ考えることすら頭が拒絶し始めていた。
快楽に溺れ、狂気に飲み込まれる。
いつしか俺はそれすら心地よいとまで思い始めている。
ふと、ゆっくり俺の上を跳ね踊るメルフィールの動きが止まった。
「貴方も……加わって……さぁ……」
彼女の言葉に促されて俺の視界に現れたのはシーフのクルーガーだった。
クルーガーは腰の上に跨るメルフィールの背後に回り、腰を下ろす。
虚ろな眼差し……不自然な動き……
俺の予想通りやはり彼からも生気を感じることはできなかった。
彼女は俺の胸に突っ伏すと自ら尻肉を拡げて彼を誘い入れる。
俺の怒張は薄い肉壁一枚越しにクルーガーの重圧を感じていた。
徐々にそれは彼女の排泄孔へと侵入していった。
「あ……ぁぁああああ゛あ゛ん!」
クルーガーの両手はがっちりと彼女の腰を掴み、一旦根元まで収まったところで前後運動を始めた。
不思議な感覚だった。
冷たい肉壁越しにクルーガーの熱い怒張の動きが感じ取れる。
徐々にピッチを上げ、彼女の尻肉に腰がぶつかり乾いた音が鳴り響く。
彼女が腰を動かしているのではなくクルーガーの振動が如実に伝わり、連動するかのように膣壁が蠢く。

グチュ、グチュ、ビュブッ!ブジュ、ブビュ…ブジュ…ジュブルル……

激しい腰使いに結合部から恥音が零れる。
「あぁあああん!!い、いぃわぁ……あっ、あああぁ!」
淫猥な彼女の言葉遣い、喘ぎ、怒張から巡らされる悦楽と全てが俺を絶頂へと誘う源動力となった。
『いきそうだっ!』
動きを封じられた言葉にできず心の中でそう呟いた。
次の瞬間俺は彼女の中に大量の精を放った。
冷たいはずのメルフィールの中が熱く満たされる。

ドビュ!ビュルルル、ドクドク!

射精感は留まることなく長く余韻を残し体に染み渡っていた。
ありったけの精を吐き出すように何度も何度も脈打った怒張から放出される。
今まで味わったことのない快感、数秒で終える絶頂感が今もまだ続いていた。


俺はそれとほぼ同時に壁越しに熱い迸りを感じていた。
クルーガーもメルフィールの腸内に白濁した欲望を排出したのだろう。
俺の胸の上で背筋をそらした彼女が硬直しているのが仰ぎ見えた。
口の端からだらしなく垂れる舌の先が二股になっていたのをこの時初めて知覚する。
すべりが良い肌にはうろこ状の外皮が浮かび上がり、爬虫類独特の質感が体に触れる。
「残念……」
突然、頭上から女性の声が聞こえた。
その人物を確認しようとしたものの今だ持って自分の意思では首を動かすことすらままならなかった。
しかしそれは以前にも聴いたことがある女性の声。
「また……してね……青の……治験……あたし……待ってる……」
声の主は間違いなくアズーフ島監視哨の不滅隊ナリーマだった。
その言葉を最後に俺は意識を失っていくのだった。



次に目覚めた時、俺たちの周りには数人の人だかりができており、皆揃って奇特の眼差しを向けていた。
冷たい風に撫ぜられ、我に戻った俺は周囲を見渡した。
そこにはアサルト突入前と同じく見慣れた面々が倒れていたのだ。
クルーガー、ジェイク、そしてロディ。
ロディに至っては蘇生の魔法『レイズV』を掛けてもらっている最中だった。
しかし俺を含む残り三人は下着すらつけていない、全裸で冷たい地に醜態を晒していたのだ。
俺は慌てて跳ね起き自分の服を探す。
乱雑に脱ぎ捨てたままの状態でそれは見つかった。
「ちっくしょう…」
ぼやいたところで状態が好転するわけでもなく、急いで衣服を身に纏っていく。
俺たちはナリーマにしてやられたのではなく、討伐すべき相手に翻弄されてしまったのだろう。
エルヴァーンと思っていた相手、最後に知覚することができたラミアであろう怪物に…
自分の身なりを整えたところでまだ横たわっているジェイク、クルーガーを気付けさせた。
クルーガーはうわごとでなにやら訳の分からないことを口走っている。
やがて周囲に取り巻いていた野次馬達も散り散りに解散し何事も無かった様にアズーフ島監視哨はいつもの静けさを取り戻した。
「どこまで覚えている?」
仲間に問いかけるが意気消沈したみんなは何一つ言葉を返そうとしない。
そろいも揃ってラミアの魅了の前に敗れた俺達はロディの衰弱回復を待ちいつもの酒場へとしけこむことにした。

□END□