マヤコフ舞踏団のトップダンサーは、怒りに震えていた。目の前の、薄気味悪い二人組に対して。
「ま」
『父親』を狙撃したのがどちらであろうと、それはもはや取るに足らない。魔物を召喚し影を纏う彼らは、存在自体が不吉だ。
「待ちなさいよっ!」
トゥシューズが軽やかに地面を蹴り、赤と黒のフリルに包まれた肢体が宙に舞う。黒いバングルを嵌めた両手が腰の短剣を握り、蜂のようにひらりと影を刺す……筈だった。
「ご覧じろ」
リリゼットの短剣が届くより一瞬早く、オドラールの掌から、闇色の輝きが放たれる。
「!?」
避けられたことに気がついた娘は、その場で我目を疑うこととなった。
つい先刻ラジュリーズを撃ち抜いたそれと同質の、暗くて強いチカラが、人で在らざる者の手の中で大きな球となっているのだ。金属が軋むような、硝子をひっかいたような厭な音を立てながら、渦を巻いて大きく、強く。
「虚に非ず。ここに、すべてがある」
危ない。リリゼットは背中に冷たいものを感じた。避けないと、逃げないと。
本能、とか勘、とか呼び習わされる感覚が警鐘を鳴らし続けている。だが
「善も悪も、聖も邪も……真実も……」
人に在らざる者が手にした力はあまりにも大きかった。
「………!?」
踊り子の娘に、襲い来る力から逃れる術はなく
「いやぁあぁぁ!」
ちいさな身体は流し込まれるビジョンに、蹂躙されることとなるのだった。


枯れたウィンダスの星の大樹、崩れ落ちたバストゥークの町並み、そして玉座の間で殺害されたデスティン王。
破滅的な「未来」がリリゼットの脳裏に直接、流し込まれる。そして
「……う、そ」
気がついたらリリゼットはひとり、救いのない「未来」で佇んでいたのだ。硝煙と血の臭いが充満する城塞都市。人の気配はかけらもなく、代わりに在るのは、リリゼッタを取り囲むオークたちの群れ。どうやらラヴォール村を壊滅させた者どものようだ。
「ここは…サンドリア?……なんで?」
一匹のオークが勝ち誇った笑みを浮かべながら、のっそりと近づいてきた。
「ちょ、やめなさい!」
敗軍の娘の言葉など、一匹として耳を貸そうとはしなかった。白い喉に鎖付の首輪を嵌め、両腕を後ろで戒める。
「うぅ…!」
縄文字を得意とする呪術師の手で、身体への縄がけがはじまった。
赤と黒のフリルで覆われたささやかな胸は容赦なくくびり出され、赤い嘴が先端の布地を切り裂く。
縄の間でいびつにひしゃげた幼い乳房と、先端のピンクが露になった。
「んっ…!」
さらにオークが乱暴に乳房を掴み上げ、小枝ほどもある指先で乳首をこね回す。
縄による圧迫と強すぎる刺激で、そこはたちまち膨らみ、ぴんと勃ちあがってしまった。
「いっ、いやぁ!」
羞恥で顔を赤くするリリゼット。その耳から星型のイヤリングが引きちぎられ、代わりに敏感になった胸の先端にとめつけられる。
「いたぁぃ……っ……っ!」
無数の結び目が施された縄端が、股の間を通される。ごつごつとしたコブはぴったりとしたタイツ1枚を隔てて、広げられた襞に容赦なく食い込み、鞘に包まれた肉豆に擦れる。
「あぁぁっ……っ」
別のオークが、リリゼットの鎖をぐい、と引いた。
獣人どもの嘲笑の中、縛り上げられたリリゼットはよろよろと歩かざるを得なかった。
「あっ……ひあっ」
股の間の結び目が幼い襞を苛む。刺激に慣れていない身体は摩擦から自らを守るため、慌てて粘液を分泌しはじめた。
「うっ…んっ」
黒いタイツの内股に、尿でも漏らしたかのような染みがまたたくまに広がった。踊り子が1歩足を進めるごとに、ぐちゅ、ぐちゅと淫らな音を立てる。ぴんとそそり勃った乳首に止められたイヤリングも、しゃらしゃらと音を立てて存在を主張している。
「いやぁ……こんな未来っ……」
騎士たちの屍の転がる南サンドリアの凱旋門を、リリゼッタは勝ち誇るオーク軍に引き立てられ、啼きながら歩いた。

地面には彼女の零した汁の痕が、ラヴォーヌ村の方角に点々と続いていた…


焼け落ちたラヴォール村の池のほとり。リリゼットは真新しい処刑台に四つんばいで繋がれていた。細い腰はオークの生殖器のあたりまで高くかかげられ、顎から首は木を組んだ台座に固定され、俯く事は許されていない。
自分がマヤコフ舞踏団のトップダンサーであったことを示す名残はもはや、乳首に留められた星のイヤリングとぼろぼろに擦り切れたトゥシューズだけ。
「……おとうさん」
父を永らえさせる未来をつくるために、自分はここに来たのに。幾度となくかみ締める無念と裏腹に
「……っ……あっ……いやぁあっ!」
捕虜としての生活に馴れはじめた身体は、オークの滾りを犬の姿勢で、あっさりと呑み込んでしまうのだった。
「ごめんなさぁい……おとうさん……おとうさぁん」
乾く暇もない淫汁が、赤黒い獣人の肉とこすれ合い、卑猥な音を立てる。
「あたしっ……イヤなのにぃ……っ……おとうさぁ……っぐ!」
別のオークが台座に固定されたリリゼットの口に、無造作に滾りを押し込んだ。反射的に顔を背けようとする少女の赤い髪を掴み、力任せに突き当りまで捻じ込んでゆく。涙と涎を垂れ流す娘の都合などお構いなしだ。捕虜に家畜に、遠慮する必要はないのだろう。
「んっ んんっ んーーっ!」
一方で先に犯されていた肉襞はしとどに濡れそぼり、オークを歓迎するように絡みついてはひく、ひくと蠢いている。
「んんっ むーーっ んんーっ!」
小ぶりのペルシコスのような尻と獣人の腹肉がぶつかりあう音が、死んだ村に響く。勃ちっぱなしの両乳首に留められたイヤリングが揺れ、汗と汁の混ざった液が激しく飛び散り、地面にぼたぼたと撒き散らされた。
「んあぁぁっ!!」
踊り子の唇に、獣人の汚らしい精液がぶちまけられる。だがオークは赤い髪を離さない。
リリゼットが細い喉を苦しげに上下させ、口の中身を飲み下し、萎えた器官を舐めて綺麗にするまでは。
「ううっ……うっ……やめ……やめてぇ……」
髪に頬に胸元にまで、オークの残滓をこびりつかせたリリゼットは、それでもすがるように背後に目をやった。果てなく撃ち込まれる熱と衝動と快楽に、ややもすれば屈しそうになりながら。
「赤ちゃんできちゃうぅっ……やめてぇっ…!」
オークは煩そうに尻たぶを一度叩くと、勢いをつけて抽送を開始した。子宮口に忌まわしい異物が当たる感触に、少女は目を見開き、悲鳴を上げる。
「やっ だめえっ いやぁっ 赤ちゃんっ ゆるし あっ ああっ」
ごつごつと最奥をノックされ、子を為す本能は快を紡いだ。リリゼットの内壁はゆるゆると蠢き、侵略者の性器をきゅうきゅうと締め上げ
「やっ いやぁっ いっちゃうっ いっちゃ 赤ちゃ だめぇっ あああっ いやあああっ!」
オークの子種をたっぷりと注ぎ込まれたハーフの踊り子は、絶望の涙を流した…。



「な、なんなの、今のは…」
「では、またいずれ」
「まったね〜」

ビジョンの衝撃に意識を失ったリリゼットを残し、リリスの部下たちはラヴォーヌ村から忽然と姿を消した。



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おしまい