アレヴァト:NPC
青年:お好きな種族、フェイスで。
オーディン風と呼ばれる強風が山岳地帯を駆け抜け、荒涼とした大地を生む。
バストア海から吹き付ける塩の含んだ風がオーディン風と伴い、脆弱な植物達を襲い、環境に適応したもののみが繁栄を手に入れられる。
グスタベルグとパシュハウの中間地点、グロウベルグ山岳地帯。
各獣人との戦の開戦の最中である今、この荒涼とした地、グロウベルグは北の地の者達による脅威に備えての
バストゥーク共和国 重要拠点の一つであった。
だがこの地を防衛していた共和国軍の部隊は先の会戦により壊滅的な被害を被り、撤退を余儀なくされた。
獣人達は荒涼としたこの山岳地帯をものともせずに、縦横無尽に探索した。
その影響によってか、厳しい環境を生き抜いてきた植物達は汚され、地には死の香りが染みつき、
丈の低い草々には寄生虫が住み着いた。
地に流れる神気はみるみる弱まり、それと共に大地も痩せ細っていくばかり。
――かつて、此の地は余を敬う者が訪れる聖域じゃった ――
誰に語る事も無き声が、幽寂たる洞穴に響く。
それは嘆きと悲しみに満ちた、とある者の声。
人が愛し、そして人を愛した、雅なる神……いや、守(カミ)。
今日もまた、人知れず溜息を零すのであろうか。
グロウベルグのとある洞穴に、一人の女性。
浅黒い肌に細い体躯、整った顔立ち、そして左右に伸びた長い耳からして、その種族はエルヴァーン。
美しい装飾が施された紺色の装束に身を包み、その腰には同じように装飾の施された曲刀を差している。
整った顔立ちに、白金の滑らかな髪の毛。
長めの左髪を流すようにして片目を隠し、右側のこめかみには金の髪飾り。
うなじのはっきりと見える、短めの後ろ髪。
柔らかそうな青の座布団の上に正座し、瞳を閉じ、そしてただ静止している。
人里離れた彼女の元を訪ねる者は様々であり、歴史学者や軍人などが度々訪れていた。
だがそれももう過去の話であり、世が戦乱の渦に飲まれている今、荒涼としたこの地にわざわざ彼女の元を訪ねる者などいない。
かつての時代、女神信仰とは別の信仰が各地にあった。
それは土地に住まう神の信仰であり、渡世から隔離されているような地方では一般的な信仰。
人間と共に住まい、敬われ愛されてきた神々。
彼女はそんな神々のうちの一人……
通称『龍神様』
そして仮初の名を、アレヴァトと言った。
座して禅を組むアレヴァト。
瞳を閉じ、「守」の眼でグロウベルグ全体を見渡し、そしてまた一人、溜息。
幽境の沢で、獣人の手に掛かる妖精達の悲鳴。
草の根に潜む寄生虫に刺されて、病と苦痛の末に絶命する人間。
獰猛な翼竜に襲われ、命を落とす者たち。
いと悲し。
我が膝元が、穢れておる。
胸の内でそう嘆き、血に濡れる己の地を憂い、眉を顰めた。
女神の信仰が普及した今の時代、土地神信仰は衰退の道。
よもや己を神として敬い、怖れ、そして愛した人々はもう居ない。
我に求むは、長き時を生きる古き時代の知識、歴史、知恵、そしてこの身の力であり、決して『龍神』を求める者は居ない。
だが、悲しみに明け暮れる日々が続く訳ではなかった。
このグロウベルグを浄化すべく奮闘する、一人の青年の存在に気が付いたからだった。
獣人に囚われた妖精を助け、解放し、大地を汚す虫を駆逐し、人々を襲う翼竜を狩る、屈強な青年。
そして一番感心な事、この地に足繁く通うだけでなく、アレヴァトに対しての献上も欠かさずに行う事であった。
かく言う、今敷いている座布団も、この青年からの献上品の一つ。
その青年の出で立ちたるや、異様の一言であり、紺のターバンや暗紫の法衣に身を包んでいたり、
くどいまでに装飾の施された重鎧に身を包んだりもしていた。
―― あれが下界の流行なのかのう ――
声なき声でまた、一人呟く。
しばらくし ――
人間の気配を肌で感じた。
それはいつもの馴染みのある空気であったため、アレヴァトは守の眼を止め、ゆっくりと瞼を上げる。
瞳で認識する景色、眼前の岩肌。
程なくして、その耳に届く足音。
一呼吸し居直ると、アレヴァトは、
「よう参ったの」
と、凛とした声で語りかけた。
よく通る声は、まだ姿の見えぬ青年の耳にも届いたのか、足音が急速に早まる。
はぁはぁと息を切らしながら、よく瞳と記憶に馴染んだその顔を覗かせると、アレヴァトは微笑みかける。
「お、恐れ入ります」
青年は深々と一礼し、荷物を抱えながらこちらへと歩み寄る。
アレヴァトの前より五歩ほど手前で止まると、青年は正座し、地に手を着いて頭を下げる。
「ご、ご機嫌麗しゅうございます、龍神様」
青年は、毎度使い慣れない敬語での挨拶を行う。
「良い、堅苦しいぞ。余とそちの仲であろう? そう畏まるでない」
は、はぁ……と、龍神の前に慣れぬ青年の態度に、思わず微笑ましく感じるアレヴァト。
どぎまぎとした様のまま冒険者用の麻袋に手を差し込んで弄り、青色の液体が入った瓶を掲げる。
「いつもの供物です、粗品でございますが」
「うむ。褒めてつかわすぞ」
青年の差し出した瓶を手に取り、木製の栓を抜く。
瓶の底に片手を添え、瞳を閉じてゆっくりと口元へと運ぶ。
物音を立てる事無く緩やかにその液体を飲むアレヴァトの様子を、青年はただじっと見つめる。
いや、見惚れていると表す方が正しかった。
瓶の中身が空になると、また緩やかな動作で腕を下げる。
大きく息を吸い、そして吐くと、
「ああ、少しは良うなった」
と、安堵したかのように呟いた。
「しかし そちは殊勝な人間じゃの。かつてはそちのように、余の元へ日々数多の人間が訪ねに来たものであったが……」
ふぅ、と溜息を一つ。
「この聖なる地に獣人共が足を踏み入れ始めし事と、龍神信仰の衰退も相俟り、足繁に余の元を訪ねてくるのはそちだけじゃ」
悲しげな声音が少し混ざった物言いで、青年に語る。
しばらく間を置くと、青年の方を見て、うっすらと笑みを浮かべた。
「まこと、大義であるぞ」
「い、いやいや。恐れ多い」
アレヴァトの賛辞と礼の言葉に頬を染める青年。
「俺……あ、いや。自分達人間を守護してくださる龍神様の方こそ、恐縮の極みです」
正座したままでもう一度、深々と頭を下げる。
いつになっても御前の場に慣れぬ青年に、思わずくすりと笑うアレヴァト。
「あ、あの、龍神様。これを、よろしければ」
青年が麻袋の中を再度まさぐると、なにやら紺色の折り畳まれた布地の様なものが見えた。
貴人に献上するかの如く、両手でそれ持ち、頭を垂れながらのそれを差し出す。
「ふむ。これは……?」
差し出されたそれを受け取り、両手に持ち直して広げると、それは柔らかい敷物のようだった。
「龍神様も、神気を養い終えて休息なさる時に、たまには横になられたいであろうと思いまして……僭越ながら」
頭を垂れながら語る青年に、アレヴァトは「なるほど」と、ひとりごちて頷く。
「面を上げよ。そちの心、余は嬉しく思うぞ」
「あ、ありがたき幸せでございます」
言われるままに顔を上げ、アレヴァトの言葉にさぞかし嬉しそうに答える。
喜びを隠しきれない、といった表情であった。
「ふふっ、早速使わせてもらうとするかの」
優美な仕草のためか、衣擦れ音も無く立ち、敷いていた座布団を傍らに置くと、アレヴァトは敷物の片側を両手に掴み、放る。
「ああ、そんな。おっしゃってくだされば、自分が……」
青年も立ち上がり、困ったかのように手を空に泳がせた。
「良い良い、このくらいは己でやるわ」
柔らかく着地した敷物を、皺無く張るように引いて形を整えると、長方形状の絨毯のようにも見えた。
傍らに置いた座布団を敷物に乗せると、アレヴァトは早速それを枕にして、仰向けに寝そべる。
「うむ、良い塩梅じゃ。座ったままと眠るというのも、実を言うと結構疲れるからの」
新しいオモチャの前で喜ぶ子供のように、楽しそうな様子のアレヴァト。
「りゅ、龍神様でも、そういった意味での疲れを感じるのでございますか」
青年が純粋な疑問の眼差しで、見つめる。
「人間の身体というものは、どうにも疲れがたまりやすく出来ておるようじゃの。肩や腰などが張って仕方がない」
上機嫌のアレヴァトは聞かれるがままに答える。
不意に閃いた。
「そうじゃ、そちに一つ頼みごとがある」
青年の方に顔を向けると、アレヴァトより目線が高い事に気が付き、急いで地に居直る。
「は、はい。龍神様のためならば、例え火の中水の中!」
するとアレヴァトは寝そべったまま青年に背を向け、
「済まんが、按摩療法とやらを余に施してくれんかのぅ」
聞き慣れぬ言葉に首を傾げる青年。
アレヴァトは青年にちらと視線を向け、そのままで待つ。
場の空気に間が空く。
「世の中の万物には気が流れておる。人間はその仕組みを巧みに利用した療法を編み出しておるのじゃろう?」
アレヴァトのその言葉でようやく青年は意味を理解した。
「マッサージの事ですか、ようやく解りました」
「ぬっ、そんな呼び方をしておったか。余の言い回しでは伝わり難い表現であったな」
いえいえそんな、と慌てながらアレヴァトの言葉を否定する青年。
「自分の学が浅いだけです、失礼いたしました」
「そう己を卑下するでない。さっ、始めてくれんかのう」
アレヴァトに言われるままに、その腰に手を伸ばす……が、肌に触れる前に青年の手は止まる。
「どうしたのじゃ?」
疑問の投げ掛けに、青年はどぎまぎとした様子であった。
「い、いえ……龍神様に触れるだなんて、怖れ多い真似をしても良いのだろうかと……」
その言葉に、思わず失笑するアレヴァト。
「余からそちに頼んだ事じゃ、触れられる事に腹を立てるような撞着はせぬわ」
「も、申し訳ありません」
身につけた鎧や小手を外し、軽装になる青年。
「さっ、よろしく頼むぞ」
「はい」
按摩療法の知識が深い訳ではなかったが、青年は言われるがままにその腰を揉み解す。
横向きになっているアレヴァトに対して少々施しにくいと感じる事もあったが、敬愛する龍神様のためと思い、黙々と続ける。
「おぉ……っ、これはなかなか、良いもの、じゃな」
言葉の合間に思わず小さな喘ぎを挟みながら、青年に語りかける。
「痛くはありませんか?」
「案ずるな。良き、心地じゃ……もそっと下を、やってくれん、かの」
脇腹のよりやや下の位置を解す手を、腰骨よりやや上の辺りまで下らせる。
「おおっ、そこじゃっ。うむぅ、効くのぅ……」
心地よいのか、緩い表情のアレヴァト。
「そち、なかなか、手練れておるのう……」
「あ、ありがとうございます、光栄です」
褒められて気を良くしたのか、その手に一層熱が込められる。
「済まぬが、背中の方も、やってくれんかの」
「はい、喜んで!」
そのまま横にずらし、背骨を挟む筋を解す。
血行を促すように、押して、回して、様々な方法で一心にアレヴァトをマッサージする青年。
首元や肩甲骨の周りもじっくりと揉み解し、青年は奉仕に夢中であった。
「これ、もう、良いぞ……」
時間を忘れ、夢中になっていた青年の意識をアレヴァトの声が呼び戻す。
すかさず青年は数歩退くと、その場で正座した。
アレヴァトは仰向けに直ると、寝転んだままで伸びを一つ。
「うむっ、身体が軽い。それに高揚しておるかのように心地よいぞ」
満足気な様子のアレヴァトに対し、青年は恐縮な思いで頭を下げる。
「そちや……一寸、近うよれ」
アレヴァトが小さく手招きをすると、青年は地に手を着いて四つん這いの様にして近付く。
龍神様が寛ぎ寝転んでおられるために、立ち上がって寄るのは無礼と考えての事だ。
「はい、何でしょうか」
アレヴァトの絨毯に乗らぬ位置で、正座する。
「もそっとじゃ」
ぽん、と己の傍らを叩く。
ここまで来い、と言う意味であった。
緊張から、少し身を固くしながらも、言われるままに、傍らへと座る。
「ふふっ……そちは、ほんに愛いのう」
「えっ」
アレヴァトの、熱のこもった声に青年はたじろぐ。
座する膝に置かれた青年の手に、その手を添えてきた。
「りゅ、りゅりゅ……龍神様っ……?」
狼狽の極みの青年を熱い視線で見つめるアレヴァト。
「余は龍の眷属であって、この姿は仮初……とは言え、余も女じゃ。そちの様な一途な男児に、心躍らせることもあろうや」
青年の閉じられた手に、アレヴァトの指が滑り込み、優しく握る。
混乱に溺れ、その視線は宙空を彷徨い、言葉を発することもままならぬようであった。
「一時の慰みと思い、余の暗澹たる心をそちの想いで照らし、晴れやかにしてはくれぬか……?」
ふぅ、と熱い吐息を零し、青年をじっと見つめる。
「りゅ、龍神様ッ」
アレヴァトの言葉に青年の心臓が早鐘を打ち、身体を熱くさせる。
期待、不安、歓喜、全てが入り混じりつつ、それは欲となりて男性の象徴も熱くさせた。
「おおっ………なんと猛々しい」
青年の隆起した股間に思わず視線を移したアレヴァトは、思わず頬を染める。
「あ、いや、これは、その、あの」
「ほほっ、そう照れるでない。健やかな男児たる証であろう?」
アレヴァトは青年から手を離すと、己の上着に手をかけ、
「さぁ……そちや、早う来ておくれ」
羽織った藍色の上着をはだけて、熱い『女』の眼差しを青年に送る。
「りゅ、龍神様ぁぁ!」
青年はまるで襲いかかるかのような勢いでアレヴァトに覆いかぶさった。
「ああっ、ああっ」
互いに抱きしめ合いながらの口づけに、鼻から抜ける甘い声で喘ぐアレヴァト。
青年の貪るように蠢く舌を、その唇で逃さぬように挟み、吸いつく。
鼻息が両者の頬を擽り、より一層熱く求めあう。
敬愛する龍神の唇と舌を蹂躙するだけでは飽き足らず、青年はその耳朶へと唇を滑らせる。
「りゅ、龍神様っ……!」
その長い耳に熱い吐息と言葉がかかり、そして熱い舌が耳から下って首筋をも這う。
「あっ、ああっ……久しい……久しきこの温もり……ああっ」
熱い吐息と共に、歓喜の声を漏らす。
青年の手が服の上から乳房を愛撫すると、アレヴァトの身体が一瞬大きく震え、反れる。
「す、すまんのう……もう少し大きければ、もっとそちを悦ばせてやれたかもしれんのに」
仮初の姿の乳房が控え目な事を、少々気にしている様子であったが、青年は、
「そ、そんなっ! これが良いんですよ、これが!!」
と、思わず語気を強くした。
胸元を隠す部分をたくしあげ、その突起にむしゃぶりつき、空いた片方は手で弄ぶ。
「くはぁ……んっ……」
アレヴァトは全身の力を抜いて、青年の愛撫に身を任せた。
二人の熱い吐息が洞窟の中に広がり、気温を上げる。
乳房を愛撫していた青年の手は、そのままくだってサラウィルに手をかける。
舌で桃色の突起を弄びながら、ゆっくりと下ろすと、黒いショーツが露わにされた。
興奮で息の荒い青年をあやすかのように、アレヴァトは頭を撫でてやる。
「ふふっ、鼻息がこそばゆいぞ」
「も、申し訳ありません」
性の興奮から我に返る青年。
だが、アレヴァトは青年を窘めるべく言葉を放った訳ではなかった。
「構わぬぞ。今だけは……今だけは、睦む夫婦のようでありたいのじゃ。もっと、甘えておくれ」
脚を曲げ、膝まで下げられたサラウィルを自分から脱ぐと、青年の手がショーツの上から秘裂をなぞる。
「はぁっ……な、なんと甘美な心地じゃ……」
アレヴァトの歓喜の声を聞き、青年はショーツの中へと手を潜らせる。
うっすらと茂った感触をそのまま進むと、火照った感触が指に吸い付くようだった。
「りゅ、龍神様っ」
今、己の指が敬愛する龍神の、大切な所を触れている……その思いが、青年を更なる興奮へと誘う。
しっとりと濡れた秘所に指を這わせ、その感触を楽しむ。
「あ、あうぅっ」
身を捩じらせ喜びの喘ぎを漏らすアレヴァト。
その痴態に青年の雄の象徴は、爆発寸前であった。
肌にはりつくタイツ状の下着の上からでも解るくらい、興奮で躍動している。
「りゅ、龍神様」
息を切らすかのように短い間隔で呼吸する青年。
もう我慢の限界、と言うのが一目で解る。
「あぁ……わ、解っておる」
アレヴァトは寝ころんだままの体勢で自らの手でショーツを下げると、そのすらりとした美脚を左右に開いた。
熱く濡れたその部分を恥ずかしそうに手で隠し、頬を染める。
青年が脚の間に割って入り、狂暴なまでに猛ったソレを露わにさせた。
天に向かって一直線のその象徴を一瞥すると、「ああっ」と恥じらいと喜びの混じった声で反応する。
己の胸に溢れる期待と羞恥の心に、思わず言葉を漏らしてしまったのだ。
空いた片方の手を青年のソレに添え、入口へと導く。
秘所を覆った指を広げ、青年がより挿入しやすいようにしてやる。
「い、いきますよ」
言葉を終えたと同時に一気に腰を前に押し進めてくると、熱い肉棒が柔肉を掻き分けながら奥へと侵入してきた。
「あっ、あっ……ああっ」
全身に広がってゆく甘い快感と充足感に、アレヴァトは喘ぎ声を漏らした。
「うっ……龍神様の中、すごく熱いです……!」
ぶるりと震え、うわ言のように青年は呻く。
感触を確かめるかのように、遠慮がちに前後左右ゆっくりと、動かしてくる。
「そんなに、弄ばんでおくれ……もっと、もっと激しく……」
青年の腰に脚を絡め、両腋に差し込まれた腕に、己の腕を巻きつけた。
アレヴァトは腰を自ら前後に動かし、青年からの快感を求める。
「りゅ、龍神様! ちょ、ちょっと待ってくだ……!」
「あっ、あっ、そちや……良き心地じゃ……!」
青年はそのまま身を強張らせ、歯を食いしばるが、アレヴァトは構う様子なくその身を揺さぶる。
「ちょっと、龍神さ、ま……うああっ!!」
「んあっ!?」
青年の苦痛の叫びにも似た声と同時にしなやかに身を反らせ、アレヴァトは快楽に塗れながら間の抜けた声を放つ。
強い躍動と共にその象徴が、体内で爆ぜた。
「……っ! うっ……!! ああっ!!」
叫びと共に強力な一突き……それに伴う、熱い奔流が勢いよく放たれる。
「!! あ、ああっ……そちや、果てる寸前じゃったのか……」
「も、申し訳ございません……! りゅ、龍神様の……な、中に……」
青年は急いで引き抜こうと腰を引くが、
「ほほっ、よいよい……そちの熱い想い、余にも伝わってくるぞ」
アレヴァトは青年の頭を抱え、自分の胸元へと押しやる。
「ふふふっ、そちは本当に愛いのう。年甲斐も無く少女のような心でときめいてしもうたわ」
愛しい子供を撫でるかのように、優しく優しく青年の頭を撫でている。
「そんなに余の胎内は良かったかえ? ふふっ、凄まじい奔流じゃった……」
歓喜に満ちたアレヴァトの頬笑み。
青年はしばし、その美しい笑みに見惚れ、そして再び熱く滾らせる。
「あっ、これこれ……もう良い、のじゃぞ?」
射精したにも関わらず、たちまち復活する青年の男根の感触に、アレヴァトは狼狽する。
「性の作法とは、殿方を果てさせ……あ、んんっ」
脚の戒めを解かれた青年が、意気揚揚と動き出す。
「龍神様……!!」
青年はアレヴァトの背に手を回し、がっちりと掴んだ。
「こ、これ……あんっ! も、もう良いと、言うて……ああんっ!」
アレヴァトが制しようとも、青年は耳を貸さずに動きを止めない。
先程よりも硬く張りつめた男根が、アレヴァトの膣内を掻き乱し、甘く鳴かせる。
通常の男女の情事と変わらぬさまで青年は、己の敬愛する龍神様を絶頂に導きたいという一心。
アレヴァトは過去の王朝のしきたり、殿方を果てさせるのが姫君の勤めという性の認識。
お互いの時代の性の認識差に気付かず、アレヴァトの頭の中はただ疑問で一杯だった。
片足を持ち、身体を横に寝かせた姿勢で更に激しく突く、青年。
「ああっ! ああっ! せ、切ない……!」
徐々に徐々に、快感の強さが増してゆく己の身に、ただ溺れる。
己の内部に放たれた青年の精が、内部の潤滑さを保ち、より一層の密着感を味合わせた。
「そ、そんなっ……あっ! ゆ、許しておくれ! こ、これ以上深くされると、余、余は……!!」
絶頂の兆しの言葉。
青年はアレヴァトを持ち、体勢を変えると己を下にする。
「んああっ!!」
上になった事により、男根が先ほどよりも一層奥深く侵入し、最奥を貫くかのようだった。
「あ、あああっ!! 余の、余の子袋が……突かれて、おる……!!」
下からの強烈な一突きに歓喜に震え、アレヴァトは性の喜びに満ちていた。
「龍神様……! イってください、遠慮なく!」
丹田に力を入れ、青年は下から思い切り突き上げて揺さぶる。
腰が小刻みに震え、アレヴァトは極楽の境地に辿り着こうとしていた。
「はああ……んあっ……あああああ……も、もうっ……!!」
全身が痺れ、息も絶え絶えになり、爪先から頭頂まで突き抜ける快感の波。
青年もアレヴァトを絶頂に至らせるべく、より強力な突き上げを繰り返し、子宮を揺さぶった。
「はぁっ……!! あ、あああっ……は、果てる、果てるぅぅ……!!」
その瞳の端は涙でうっすらと濡れ、舌を伸ばして痴態を晒す。
「ううっ……お、俺も、一緒に……!!」
二度目の射精を行うべく、青年も歯を食いしばって更に小刻みに腰を突き上げた。
お互いの快感の波長が合い、乱れ狂い合う。
「で、出る……!」
青年は言葉を終えると同時に、最奥まで突き上げて、一気に精を放出した。
「あっ、あああああーー!!」
己の体内で跳ね暴れる男根が、より強い絶頂感をアレヴァトに与え、そして………
「くっ……すごい、まだ出ま、あ、あああっ!!!」
青年の甘い睦言は唐突に叫び声に変った。
絶頂の快感に身を震わせるアレヴァトの肉体が白い閃光に包まれ、見る見る内に巨大化していったのである。
「りゅ、龍神さ……ぎゃーーーーー!!」
哀れ、騎乗の体位。
青年は成す術も無いまま、アレヴァトが龍化していき、洞窟内が崩落する様子を見る事となった……。
― グロウベルグに住まう龍神、突然の出現 ―
バストゥーク軍の伝令書に書かれたソレは、当初こそ災厄の兆しかと憶測が飛び交った……が、その後、特に大きな事も無かったため、この事は数日で忘れ去られる事となった。
……今日もまた、アレヴァトは禅を組みながらグロウベルグの様子を守の眼で見渡していた。
汚されし我が膝元に、溜息を零す。
そして、唐突に咳払いを一つ。
照れくさそうに、うっすらと頬を染め、
「そちも、懲りん男じゃの」
と、困っかのような声で、語りかける。
「いやいや、龍神様のためとあらば例え火の中水の中」
身体中に包帯を巻いた青年が姿を現し、いつも通り頭を深々と下げ、それから跪く。
これもまたいつも通り、神気を養うための薬品。
「良い、これはそちが飲みや。余はそちの怪我の方が心配じゃ」
こんなに酷い怪我ならば無理に来なくても構わんという旨を伝えても。青年は相変わらず毎日アレヴァトの元へ訪ねてくる。
「りゅ、龍神様……」
「前にも言ったであろう。まずは養生し、その怪我を治す事こそ余への何よりの献上であると」
少し語気を強めて言い放ったのは、青年に対する思いやりが故だろう。
「勿体ないお言葉……ありがとうございます。では、代わりと言っては何ですが……」
鞄をまさぐり、銀紙に包まれた物を取り出して、前に出す。
アレヴァトは首を傾げながらそれを手に取り、銀紙の包みを開く。
「……むふ……♪」
少女の様な満面の笑みを浮かべたアレヴァトの手には、薄いパン生地に包まれた、キャベツ型のケーキがあった。