マヤコフ : ヒュームF2男性 黒髪
ジュディ : ヒュームF1女性 金髪

 「ハイ、ハイ、ハイ。今日のレッスンはここまで!」
パンパンと手を鳴らす音が聞こえ、壇上に一人の男が上がってきた。
「明日に備えて各自ゆっくり休んで頂戴。もちろん、”華”の手入れは怠っては駄目よ。
 どんなお客でも一流の踊りと夢を!…それが、あたくし達、プロのダンサーなのですから」
華といわれ握り締めるは、およそ持ち主に不釣合いな鈍く光る武器。
彼女らはマヤコフ舞踏団の踊り子。そして対血盟軍レジスタンスグループの一員である。

今日のレッスンが終わりと告げられ、踊り子達がその足を休める。
「ジュディ」
マヤコフが名を呼んだ。
「はい」
金色の髪の毛を結った女性が振り向いた。
「あなた、あたくしが注意した癖、まだ直ってないじゃないの。」
「えぇー…、直ってない、ですかぁ?」
「直っていたら言うわけがないでしょうがっ。
 …ったく、直々に指導してあげるから、あとで部屋へいらっしゃい。」
「はぁい。」
と、叱られた事をわかってないのか、笑顔で返事をするジュディを見て、ため息と同時にマヤコフは軽く頭を振った。

「……さあ皆、明日は公演よ!とっとと部屋へ戻りなさいな!」
スタスタと壇上を後にした鬼の姿が見えなくなったのを確認すると、踊り子たちはワァと本来の少女へと戻った。
「これで何回目〜?ジュディがお師匠に呼ばれるの。ちょっと厳しすぎない?」
赤毛の少女がジュディに顔を寄せる。
「あはは…。仕方ないよぉ、わたしリリちゃんやポーシャのように、武踊が上手くないから…。」
「そんな事ないわ。団長はあなたに期待をしているから言うのよ。 
 じゃなきゃ個人レッスンだなんて…。わたしなんて、受けたこと無いんだから。ね?」
「甘いわ、ポーシャ!きっとあれはお師匠のヒガミよっ。きっとまた、男に逃げられたに違いないわっ。」
得意げな顔でリリゼットが言う。こういう話が大好きだと言わん顔で。
それをジュディが首を振り、そして笑顔で言う。
「ちがうよぉリリちゃん。団長はね、男も女も好きなんだよぉ。」
にこにこと語る彼女に、彼女達は苦笑いをした。
「……ジュディ。それ、フォローになってないわよ?」

―団長は、男の人が好きなんですか?
「まぁた…、ストレートに聞いてくるわね。いーい?あたくしが一番好きなのは、あたくし自身。
 あたくしが男だから、男。女性なら女性よ。さあ、そんな事聞く暇があったら、レッスンに戻りなさい。」
―じゃあ、女の人も好きなんですかぁ?
「…ジュディ、さっきから何なの?」
―女の人も好きなら、わたしのこと、好きになってくれるかなぁと思って。
「………それは、新しい遊びかなにか、かしら?」
―わたし、団長の事好きです。だから、団長もわたしのこと好きになってほしいなぁって。
「そう。…そうね。あなたが、あたくし以上に綺麗になったら、考えてあげてもいいわ。
 だから今は馬鹿な事は考えずに、さっさとレッスンへ戻りなさい。」
そう言って、コツンと団長に額をこづかれてしまった少女の頃。
慌てている団長の横顔が、何だか面白かった。

 わたしは知ってる。団長がどうして女の言葉を使うのか。
わたしたちが、男に酷い事をされているからだ。
男から守るのは、「男」でないと出来ない。
でも、心に傷を負ったわたしたちに接するのは、「男」であってはいけない。
…ギンダフが教えてくれた。団長のことや、団長の家族のこと。
団長が考えて考えて出した答えがあの形であるなら、それはなんて、とても優しいのだろう。
そう思った途端、わたしは団長のことがとても好きになってしまった。

 踊りを見てくれるお客様には、100の笑顔を。
だけど団長にはその100倍の笑顔を。少しでも、好きになってもらいたいと願いをこめて。
少しずつ、少しずつ、積み重ねていった願いは、最近になってようやく叶った。

(…なぁんて。結局好きなのは私だけなのかも…。)
ドアをノックする。
「団長、ジュディです。参りまし……、あ。」
ノックの力で、キィと扉が少し開いている。…きちんと閉まっていなかったらしい。
ジュディは少し戸惑ったが、ドアノブを握り、覗いた部屋の暗闇に目をこらす。

中はロウソクの灯りが一つ。書斎の上に、読みかけであろう開かれた書物が置いてある。
…しかし、人影がない。
どうしたんだろう、とソロリソロリと中へ入るジュディ。
カチッと、ドアが閉じる音がした。
それと同時に、目の前を、まるで銀の鳥が駆け抜けたかのような、一瞬の眩い光が走る。
「なに?」という思考すら遅く、気がつけば後方から顎と体を押さえられ、自身の喉元に短剣があてがわれていた。
ゾクリと冷や汗が背中に滲む。
「いま、あなた死んだわよ。ジュディ」
後ろで声がした。と同時に、喉元にあてがわれた短剣が、円を描き納刀される。
「だ、団長〜…。」
後ろを向くと、明らかに不機嫌なマヤコフの顔があった。
「気配を読みなさいと、散々言ってあるのに、なぜ好奇心で動くのかしら、このバカ娘は!
 レッスンの時も、隣との間合いを何度も何度も失敗ばかり。何度注意すれば…!」
「わたし、死んだかと思いましたぁ…。」
「死んだか、じゃねえ!死んでたんだよ!」
腕の中で、心底安堵の声を漏らすジュディを見て、大きな声で怒鳴る。
戦場で、ジュディののん気さは、本当に命を落としかねない。
レジスタンスという身である以上、戦は避けられない。
だからこそ、危ない癖は直して貰いたいと切に願うが、
その願いさえも彼女の前では無意味ではないかと、マヤコフは不安に思う。
何度も何度も呼び出しては訓練を施してきているつもりなのだが、まったくもって身についていない。

はあ、とため息をつく。
「…あの、団長ぉ。」
後ろから抱きしめている男に、ジュディは声をかける。
「なによ。」
「セクハラは、だめですよぉ」
彼女のベストの胸元の紐を緩めようとしているマヤコフの手が止まる。
「…どこでそんな単語、覚えてきたのよ。」
苦々しく言う。
「どこで、って。…どこだったかなぁ。」
「もういいから、少しお黙りなさい。」
緩めた胸元から手をすべりこませる。
幾度か抱かれてはいるが、ジュディは最初のこの感覚にはまだ慣れず、体を少し震わせてしまう。
手の中に納まった片方の乳房を、彼は、ゆっくり回すようにこねていく。
しっとりとした肌の感触を楽しみ、ふくりと膨らんだ桜色の突起を指の腹でくすぐりはじめた。
「…んっ、ちょっと、団長…っ」
与える刺激からジュディは逃れようと前へ屈もうとするが
それを許さない、と、もう片方の手を、彼は彼女の服へと滑り込ませる。
「団長、くすぐったぁい」
「気持ちいい、の間違いじゃなくて?」
耳元で囁く。その言葉を聞いたジュディの耳が赤く染まった。
それを見て彼は意地悪く笑みを浮かべる。

「こっちのほうは。…ほら、正直。」
ショーツの中に指をすべらせる。熱く柔らかい感触と、クチと、水の音が聞こえた。
十分濡れていることを確認すると、そのまま熱さの中心へと指を進める。
「あっ、やっ。ん…っ!」
指で敏感なところをほぐすように動かす。
ゆっくりと、彼女の中の敏感な柔らかな感触を楽しみながら。
十分な愛液は他の指を濡らし、そしてその指で彼女のクリストスを刺激する。
そのたびに可愛い声を漏らす彼女を見て、自分の中の男の部分を彼は再確認する。
「んっ、ん…あっ、は…ぁ」
ほとんど自分の腕に持たれている状態のジュディの姿を見て、少し心配になった。
「そんなに、我慢させていたつもりは無いんだけど?」
「…だ、だってぇ。団長にしてもらうの、気持ち、いいからぁ…」
かあっと顔が熱くなった。
不覚にも、彼女の言葉に照れてしまった。
「…団長?」
「……可愛いことを言うな、バカ」

汗をほのかに含んだ彼女のうなじに唇を落とし、そのまま肩へと舌を這わす。
後ろから、彼女の敏感な部分を刺激し、湿り気を帯びている息を、さらに乱れさせている。
時折ぴくんと体を震わせながら、泣き声にも似た声を押し殺している様を見るだけで
彼自身のモノも十分に刺激されるのを感じた。
「だ、団長…っ、ごめっ、なさ…!わ、たし、〜ッ!」
少し大きく後ろへ仰け反り、彼女の中を楽しんでいた彼の指がキュウと締め付けられた。
痙攣の余韻の中、はぁはぁと肩で息をする彼女をこちらへ向かせ、抱きかかえる。
「団長ぉ…」
潤んだ大きな瞳を覗くように顔を近づける。
「気持ち良かった?…じゃあ次は、あたくしを気持ち良くして頂戴。」

ぽてりとした彼女の唇を食むように、自分の唇を重ね、感触を楽しむ。
そのままベッドの方へ彼女を柔らかく倒し、なおも感触を楽しむかのように舌をからませた。
彼女から、少し苦しいのか口が離れたわずかな隙に空気を吸い込む声が聞こえる。
蝋燭の灯りで浮かび上がる彼女の肌は、滑らかな大理石を思い起こさせた。
滑らかな首筋に口付けをし、彼女の中心に自身をあてがう。
先に触れた彼女の熱さに軽く痺れを覚えつつも、グッ、グッと腰を埋める。
回数を重ねていないためか、ジュディの顔が少し歪む。

「痛い?」
その言葉に、彼女は首を横に振る。
「団長の…っ、ものが、わかるから。…嬉しい。」
「……。苛めたくなるじゃない。」
「えぇえ??」
ゆっくりと彼女のなかへ侵入する。
彼女の中は熱く、しめ付けはまるで、彼女に抱きしめてくれているような感じだ。
もっとその感触をたのしみたいと思ったが、やはり身体の方が快楽を求め動いてしまう。
十分濡れているおかげで、スルスルと奥まで届く。
「やっ、あああッ。だめっ、団長…ッ!」
さきほど達したばかりの充血した敏感な場所に、容赦なく刺激が与えられる。
突き上げる度に、白い光がはじける感覚。そして身体の奥から這い上がるような快感。
その快楽が気持ちよすぎて、思いきり、本能のまま揺さぶってしまう。
絡みつくように、ジュブジュブと音を立てるほど深く。
中の摩擦と熱さが、頭の芯まで溶かしそうだと、溶かしてくれと自分を突き動かしている。
突くたびに子犬のように泣く彼女を、可愛い可愛いと思う自分は心底変態だと、
頭の隅にそんな事を思いながら、彼女の中に精を放った。

 「…団長」
横で寝ているジュディが、マヤコフに声をかけた。
「あら、なぁに。…寝てたんじゃないの?」
「明日、ラヴォール村へ行くって、本当…?」
じっと、彼を見つめる。
何も言えず、彼は無言のままでいると、
「ポーシャから聞いたの。私に何かあったら、リリゼットを頼むって。
 何かあるような、そんな場所へ行くんですか?それなら私も」
「バカねぇ」
ぎゅっと頭を抱きかかえられる。
「何もないから、黙っていたのよ。
ラジュリース様率いる鉄鷹騎士隊とあたくしやポーシャがいれば、半日で終わるわ。
 あなた達は、明日の公演の事だけ考えてなさい。」
そう、村へ侵攻した、名だけのオーク軍を排除するだけ。
それだけのはず。
ざわついた胸騒ぎに気付かないフリをし、彼はそのまま眠りについた。