彼女は、男女関係なく、モテるらしい。多分、誤解を恐れず、分かりやすく一言で言ってしまえば、『姫』ってやつなんだと思う。
例えば、彼女の周辺の男どもを見ていると、どう好意的に捉えてもフレというより従者志望だ。容姿から言動から持ち物から、何から何まで彼女をベタ褒めし、それだけならまだしも、どうにかして彼女の気を引こうとあれこれ画策している。しかし彼女はそんな周囲の様子にもどこ吹く風で、俗に言う貢物ってやつも、高価なものから安価なものまで、それとなくやんわり断っているようだ。少なくとも俺が彼女と知り合いになってから、彼女が誰かと付き合っているのは見た事がない。実際にアタックして玉砕したやつは、軽く両手の指の数を超えるだろう。
ヒュームの中ではかなり小柄で、全体のパーツの一つ一つがちっちゃいくせに、目だけがでかい。それで少し見上げられるとぐっとくるもんがある。普段はどっか抜けたとこがある癖に、いざという時は妙にしっかりしているし、そういう外見とかギャップがモテる要因なんだろうか。
モテるのに、どうして誰とも付き合わないのか彼女に直接聞いたことがある。曰く、「好きじゃないのに付き合えないし、私は友達だと思ってたのに……」らしい。もうちょっと自分の魅力を自覚した方がいいんじゃねーか?wって台詞が喉元まで出かけたが、それじゃまるで俺からも魅力的に見えていると言っている事になる気がしてやめた。
はたから見たら、比較的彼女と行動を共にすることが多い俺も、彼女に惚れている男の一人として見られているんだろうか。悔しいけれど実はその通りで、俺は昔から彼女に好意を寄せている。けど、あまりにも友達でいる期間が長くて、もうお互いを異性として意識するような言動が全くなくなってしまった。そもそも出会った当初から男として見られていない節があったよーな気もするし、きっと俺はこのまま彼女にとって恋愛対象にはなれないんだろう、それなら、仲の良い異性の友達ってポジションのままでいい。そう、開き直っていた。
◇◇◇
その日俺は暇つぶしにソロでアクエリを狙ってた。そのうち狩人上げるかもしんないし、取っておくのもいいかなって。まー殆ど暇つぶしだ。
一応サーチコメントに狙ってる獲物の名前を書いておいて、マイペースでだらだらとアクアンを狩ってたら、「暇だから遊びにきちゃった」といって、件の彼女――アイリィが手伝いにきた。こいつはいつもこうだ。
俺が「手伝おうか」って言うと「一人で出来るから平気!」って突っぱねるくせに。
まあ、好きなやつがこうやって来てくれるってのは、正直嬉しい。彼女は誰にだって公平に接する人間だから、誰の手伝いにだって行くんだろうけど。
「エドくん忍者かー。ソロで倒せるの?」
「らしいよ」
シャポーを被っている彼女はどう見ても赤魔道士だ。もしかして脳筋の俺一人じゃ倒せないと思って赤で来たのか?よっぽど普段から情けない男だと思われているんだろうか……。
「そうなんだ、でもソロだと人数いるライバルきたら取られる確率高くない?」
「まあ、取られたら取られたで、そこまで欲しいわけでもねーし」
「そっかー」
あ、これはわざわざ手伝いに来てくれた人間に言うべきことじゃなかったか?と思ってアイリィの表情を横目で伺ってみたけど、特に気にしてる様子はないみたいだ。
それにしても――こういうのを幸運の女神が来た、って言うんだろうか。彼女が来たら途端にNMがポップして、すんなりと俺はフランシスカを手に入れた。
「おめでと〜!よかったね」
「おー、サンキュ、助かった。楽に倒せたし。お礼に飯でも奢らせろよ」
「えー、いいよ、別に、そんなの目的で来たわけじゃないもん」
「いっつも手伝ってもらってばっかじゃん、断ると逆に失礼になることもあるんだぞ」
「えー、でも……あ、じゃあ、お店じゃなくって、何か作ってもらおっかなー、エドくんの料理美味しいし!」
「お前がその方がいいなら、俺は構わないけど」
俺が彼女のモグハウスに行くことはさすがに無いが、いつ頃からだったか、彼女は躊躇いもなく俺のモグハウスにしょっちゅう遊びにくる。初めは、いくら長く続いてる友達関係とは言え、その警戒心の無さはどうなんだと思ったけど、もしかしたら、信用されてるのかも、と好意的に考えておくことにした。男として見られてないってことなのかもしれないが……。
◇◇◇
そのまま俺のモグハウスに来るのかと思ったら、彼女は一度自分のモグハウスに戻った。俺はその間に軽装に着替えて、料理の準備をする。そういやあいつの好きな食べ物ってなんなんだろ。何でも美味しい美味しいっつって食うから、嫌いなもんはないんだろうけど。
軽いノックの音と「エドくんー!」って声が聞こえて、料理から手が離せなかった俺は「空いてるから入って」とキッチンから声をはりあげた。
「おじゃましまーす。おお、良い匂い!」
「適当に座ってて」
「え、手伝うよー」
「それじゃ礼にならないだろ」
「手伝いたいの!」
そう言いながらキッチンに入ってきたアイリィは、もう赤魔道士の格好じゃなくなってるどころか、風呂に入ってきたのだろう、髪の毛は半乾きの状態で、その上ノーメイク。格好も、寝巻きではなかったけど、女らしさの欠片もない簡素なシャツにズボン。
男だと思われてないんじゃなくて、気を許してくれているんだ……そう思おう。そう思おう。そう思おう……あー、それにしてもノーメイクでも余裕で可愛いなあ畜生。
結局料理の半分近くをアイリィが手伝ってくれて、二人で同時にテーブルについた。
「ぷはー!やっぱ体動かした後のお酒って最高だよねっ!」
乾杯した後、アイリィは童顔なくせに、妙にオヤジくさい事を言った。
「お前さあ、色気とかそういうのほんっとないよなw」
個人的な主観だけど、事実だろう。はっきり言って大人の女としての色気はない。童顔だし。ただ、なんつーか、素直で、健気に見えるのだ。そういうのに男心をくすぐられる。
「エドくんはよくそういうこと言うけど、こないだ告白されたんだから!」
「またフレが一人減ったなwどうせ断ったんだろ」
「うるさいなあ」
テーブルの上のものをフォークでつつきながら、アイリィが唇を尖らせる。
「いい加減、高望みしてねーで男つくっちまえよ。こう、男の一人でも出来れば、多少はフェロモンが出てだな、女らしさが上がるというか……」
「やだよ、男なんて皆、エッチな事しか考えてないもん」
「ひでえ。んなことないだろ、お前のこと本気で好きな奴もいただろうに」
「だってさ、たまにカスタムパンツとか履くと、ちらっと脚見てくる人とかいるんだよ。気付かれてないと思ってんだろうけどバレバレ!あーやらしい!ふけつ!」
アイリィが大袈裟にそう言って、ぱくりとステーキの欠片を口に運ぶ。
「いや、あれはいいもんだよな〜。目がいくのもわかる。そういえばお前が脚見せてるのあんま見たことないな」
「前は履いてたけど、つまんない思いするからやめた」
「お前みたいな胸もオマケ程度の女でもそういう目で見れるやつがいるんだなw」
「ひどい!胸ないのはそうだけどぅー…セクハラ!」
「いや、まあ、それは俺の個人的な好みが入ってるから……やっぱさあこう、デカイ方がいいわけよ、男のロマンっつーか」
こうやって苛めて反応を見るのが楽しい。ネタはちょっと下品だけど。しかし平然とこんな会話をしている俺たちはやっぱりどう考えてもただの友達だ。割り切ってる筈なのに、どこか複雑な気持ちで俺は皿にのったサラダを意味も無くかき混ぜた。
「ああ、はいはい、どーせ私はちっちゃいですよ……はあ。揉むと大きくなるってほんとかなぁ……」
ため息をついて、アイリィが、ぐびぐびとグラスの中のものを飲み干す。今日は大分ピッチが早い。
「小さいのが好みのやつもいるし気にすんな。それにしても…揉めるほどあるか?」
俺はちらりと彼女の胸に目をやった。いつもゆったりとしたチュニックとかローブを着ているからはっきりはわからないけれど、実際本当に小さい方だと思う。
「冷静に返さないで何か突っ込んでよ!あと胸見るなバカっ!」
「ん?ああ、揉んで欲しい?10万ギルで揉んでやってもいいよw」
「うわあ、さいてー……」
「それよりさ〜可愛い子いない?お前女の子の友達多いじゃん。紹介してよ。俺もそろそろ彼女が欲しいなとか思うわけよ…」
これは、正直なとこ。だってもう、いい加減片思いには疲れた。他に好きな子を見つけて、幸せを手に入れたい。
「出た。モテない男の台詞。エドくんに紹介する女の子はいないよ。友達はみんな大事だから!」
だんっ、と音を立てて、妙に迫力のある勢いでアイリィは空になったグラスをテーブルに置いた。
「俺がすぐ手出すとか勘違いしてないか?べつにヤりたいとかじゃないって!俺はこう、健全な異性交遊をですね、純粋に楽しみたいなという」
「あ〜はいはい……」
アイリィが自分のグラスにどぼどぼとボトルの中のものを注ぐ。
今日はやけに飲むなあ、と思いながらも、俺も彼女のペースに付き合って、結構な量を飲んでいた。
◇◇◇
「エドくん……のど、かわいた……おみず……」
なんだかぐらぐらする。
「ねー、エドくん、てば……起きてよう」
「あー…?…やべ、寝てた…」
いつの間にか、でろんでろんに酔っ払っていたらしい。重く感じる上半身をテーブルから持ち上げると、アイリィもぐったりとテーブルに片肘をついて、自分の頭を支えていた。片手は俺の方に伸びている。ああ、アイリィに揺さぶられて、ぐらぐらしたのか。
俺は平衡感覚に欠けた体をなんとかキッチンまで運んで、水を入れたカップを持って戻ると、椅子に座っていた筈のアイリィは勝手にベッドに横になっていた。
「ほら、起きろ」
アイリィは無言でむくりと起き上がり、気だるそうな動作でそれを受け取ると、口に運ぶ途中でグラスを落とした。
「うわ、ばっか……」
「つめたい〜〜服濡れた〜〜」
「しょうがないな…俺の服貸すから」
「体重いーエドくん着替えさしてー…」
着替えさせて、冷静でいられる自信なんてないんだが。
「アホか」
その一言で片付けようとしたが、酔っているアイリィはしつこかった。
「アホって、ひどーい……エドくんあたしのこと嫌いなんだああ…」
そう言って、立っている俺の腰周りに腕を回して抱きつかれて、俺の股間近くに、アイリィが頬を擦りつけるようにしてくる。
いくら男だと認識されてないとは言え、これは酷い。もう一度言う。これは酷い。
今ここで手を出したら、今後のこいつとの良好な関係が、きっと終わってしまう。それは嫌だ。他の野郎どもと同じ道だけは辿りたくない。想いが叶わないなら、良い友達としてのポジションをキープしておきたい。もうずっと昔に決めて、今までそうしてきた。
でも、腰に絡まった手を無理矢理解く気にもなれない。アイリィの熱が、衣服越しに、じわじわと伝わってくる。
「ひどいーひどいよー」
「うぜええ。絡んでくるな酔っ払い」
「エドくん……」
「ん?」
ぼそ、と名前を呼ばれて、それから見上げられる。濡れた目で上目使いするのはやめろwww
「あた、あたしじゃだめ?」
「何が……?」
「あたし……胸ちっちゃいからだめ?」
「だから何が……」
「……エドくんの…好みの女の子じゃない?……んだよね?」
「お前酔いすぎ。あんまからかうと、俺だって怒るぞ」
ああ、本当にヤバイ。
「酔ってないよ、ちょっと酔ってるけど」
「酔ってんじゃん。ほら…服もってくるから、離れろって」
アイリィは小さく首を横に振った。それから、ぽそぽそと呟いた。
「さ、さっき、揉んでくれるってゆったよね?」
「は?」
「おっぱい……揉んでくれるって」
「いや、言ったけどあれは」
「あたし、胸ないけど、エドくんに触って欲しいよ」
「ああ、分かった分かった。酔いが醒めても同じこと言ってたらいくらでも揉んでやるから」
「やだ!今がいい!」
ぎゅう、としがみ付くように強く腰を抱かれた。
「あー、もう……そんなコンプレックスになってるのに、からかって悪かったって」
腰元にあるアイリィの頭をぽんぽんと軽くなでてやる。
「謝らないで、エドくんがおっきくして……っ」
潤んだ目で再び上目使い。たまったもんじゃない。おれが生唾を呑んで、何と言って宥めようか考えていると、アイリィが酔っているとは思えないような的確な動作で服を脱ぎはじめた。ふわりと、甘いにおいがする。
「おい……アイリィ」
服がはだけて、白くて小振りな胸が露わになる。
アイリィは酔っ払ってる。
でも。
「ね……お願い」
手を掴まれて、胸に触れさせられた。ちっちゃいけど、やわらかい。何度も脳裏に描いたことのあるアイリィの素肌。
こんなことされて拒否するなんて男じゃないだろ?そりゃ俺にだって理性ってもんはあるが――あるが……こんなオイシイ状況を……。
「しょうがないな……ちょっとだけだぞ」
しょうがないのは俺の方だ。
アイリィを、優しくベッドに押し倒す。両手で、優しく胸を包み込む。アイリィに頼まれた通り、決してふくよかとは言えないそれを、脇の方から小さな乳首に向かって掬い上げるようにして何度も揉んで、最初で最後になるかもしれないその感触を楽しんだ。
「ん、ぁ……」
「おい、変な声出すなよ」
「だって、え……」
「乳首、かたくなってきてるけど?」
揉んでいた手を止めて、指先でいつの間にかたちあがった乳首をきゅっと摘んだ。
「やぁっ……あぅ…」
「勝手に感じて……やらしいな」
「あぁ、もっ、とお…」
「もっと?」
「さき、いじってっ……」
「揉むだけじゃないの?」
「おねが……っ」
俺はそれに対する返答の代わりにアイリィの背中に手を回して、首筋を舐め上げた。腕の中の小さな身体がびくりと震える。そこから少しずつ下にずれて、リクエスト通り、小さな乳首ごと、左の胸に吸い付いた。
「んぁっ……」
舌で突起を転がし、時折軽く歯を立てる。その度にアイリィの口からは甘い吐息がこぼれた。その間も右の胸を脇から擦るように撫で上げ、先端を摘んで弄んだ。そうやって左右の胸に、交互にしゃぶり付いて、どのくらい経っただろうか、アイリィの脚の間に割り込ませていた俺の脚の付け根に、アイリィが腰を揺らして、水で濡れた衣服越しに下半身を押し付けてくる。俺は名残り惜しく思いながらも、次の展開を期待して、胸から顔を離した。
「どうした?尻、擦り付けて」
「うぅ、エドくんっ……」
「何?」
「もっとしてよう」
「ちゃんと揉んでるだろ」
「そ、じゃ、なくてっ……」
「ん〜?」
「もっと下ぁ……触って……」
「下?ここ?」
言って、胸同様にさらされていた白くてきゅっと締まった腰を、臍の窪みに向かって撫で上げる。
「あ……もっ……もっと、下……」
「こっち?」
あえてアイリィの望んでいるであろう場所を通り過ぎて、俺はまだ簡素なズボンを纏ったままの脚の内側に触れて、下から上へ手を滑らせた。
「ちがっぁ………」
「じゃ、どこ?」
「う………」
アイリィは唇を噛み締めて、言葉を詰まらせた。
「もうちょっと、うえ……」
真っ赤になりながらもあからさまな言葉を避けて、それでも俺にねだって来たアイリィの要望に応えて、俺はそこを、ほんの軽く、一度だけ撫で上げた。
「ここ?」
アイリィが目を閉じてこくこくと首を縦に振る。
「やらしいな」
「っそん、な……ぁ、ん……!」
服の上から、軽く数回撫でて、手を離す。
「これでいい?」
「う……」
アイリィは困惑した顔で、濡れた眼差しを俺に向ける。
「まだ足りない?直に触って欲しいんだ?」
今度は、アイリィの返答を待たず、俺は下着ごとズボンを下ろして脱がせた。
「すげ…糸引いてる、ぐっちょぐちょ」
「やぁあ……」
枕に顔を押し付けるようにして、アイリィが目尻に涙を浮かべた。
もうアイリィは、上着を軽く羽織っているだけの、限りなく裸に近い状態。
「おっぱい触っただけでこんなんなっちゃった?こうやって周りの男どもも誘惑してんの?だから回りに男が絶えないんだ?」
「ちがっあ……違うっ」
「信じられないな」
「エドくんだけっ……エドくんだからいい、の」
「こんな淫乱なのに普段男無しとかウソだろ、誰とも付き合わずにとっかえひっかえしてる?」
「そんな、ぁ……いつも…一人で……エドくんのこと、考えて……」
こんなこと言われて勃起しない男がいたらそいつはインポに違いない。
でも――もしかしたら本当に、他の男どもにもこんなことを言ってたりしたんだろうか。
でも今は、それより。
「俺のこと?どういうこと?」
「エドくんに……こういうことされ…て…」
「こういうことって、これだけ?」
「ううん…もっと……」
「もっと?」
「いじわるっ…」
軽く睨まれる。涙目でそんなことされてもな……。
「お願い……さわっ、て……」
何の異論も、あるはずがない。
「いいよ」
俺はそっと人差し指を襞の間を軽く滑らせて、愛液を掬い上げると、それを、その上で既に充血して膨張している小さな突起全体に塗し付けた。アイリィの体がびくっと揺れる。そこももうコリコリに硬くなってる。何度かそれを繰り返して、ぬるぬるになった突起の、剥けた部分を指の腹で何度も軽く擦り上げる。
「はぁっ……あ、あ!それ、ぁ、やぁっ、ん…!」
アイリィが、身を捩じらせる。気持ちよさそーな顔。でも、俺は、
「嫌なの?」
言われた通り、そこから指を離した。サドっ気があるのは自覚してる。
「あ……」
アイリィが、再び俺を、軽く睨みつけてくる。その顔が滅茶苦茶可愛くって、俺は思わずアイリィに口付けた。そこは想像通り、程よく湿ってて、ぷっくりしてて。下唇を軽く挟んで、舌で感触を楽しむ。それから顔を傾けて、深く貪ろうとすると、それを待っていたかのようにアイリィの口が開かれた。けれど、アイリィの舌は奥の方で戸惑ったようにしているだけで、応えてこない。どうすればいいのかわかんないのか、それともここまで誘っといてキスすんのは嫌なのか――後者だとしたら――ああ、もう、でも、そんなこと、どうでもいい。
「んぁ――」
唇を離すと、アイリィが呼吸を荒くして、やっぱり、誘うように俺を見上げてくる。
「何?」
「う……うー……い、じわる……」
「アイリィが言ってきたんじゃん、おっぱい触ってー、下も触ってー、って。で?どうすんの?」
「……っあ……エドくんの……好きにして……」
その答えは、ほんのちょっと、予想外だった。期待はずれってわけじゃないけど……。止めたらそれで構わねーってこと?こんな濡らしといて?それとももう俺が止められるわけないの、わかってる?
「いいの?」
「うん……」
「滅茶苦茶にするよ」
俺は、それまでの表情を完全に消して、宣告した。
「あ……」
アイリィがひくりと肩を震わせて、こくりと喉を上下させる。それは、期待だったのか、怯えだったのか。
俺は何の躊躇もなく、アイリィの脚を大きく割り開かせて、腰を抱えるようにして、その間に顔を埋めた。ささやかな草叢の下、さっきまで弄ってやっていた突起を再び、今度は舌で強く押し付けるように舐め上げる。
「ぅあっ、んっ!あっ!」
甲高い声をひっきりなしに上げながら、アイリィが腰をくねらせる。
未だに分泌され続けている液体を、啜るように唇で吸ってから、その中に舌を滑り込ませて、内壁を舐め上げた。
「あぁ……あ……!」
アイリィが俺の頭に手を置いて、俺の髪を撫で回す。それを合図に、俺はそこから顔を離して、抱えていたアイリィの腰をベッドに下ろした。案の定アイリィは物足りなさそうな表情で俺を見上げている。
それから、俺は舌じゃ届かなかった場所を求めて、中指を差し入れた。蜜を溢れさせているそこは、乾いていた指を何の抵抗もなく飲み込んだ。
「んんぅ…」
数回出し入れを繰り返しただけで、すぐに指は馴染んでスムーズに動かせるようになった。それにしても滅茶苦茶狭い。指一本でぎゅうぎゅう。それでもなんとか指を二本に増やすと、アイリィは顔を歪めて、息を詰まらせた。でも、それも最初だけで、その後、中に咥え込まれた二本の指を圧迫してくる壁を押し退けるようにばらばらに動かしてやると、ぐちゅぐちゅと卑猥な音がこぼれた。そうしてから、今度は指を少し曲げて、出し入れした。
「んっ、ん…!はぁ、あ……あぅ、」
少しずつ早くして、指を根元まで入れてやるついでに手のひらでその上にある膨れた部分を圧迫してやる。
「はぅっ…、あ、あ、やぁ、あ……っ!」
アイリィが、身体を硬直させて、びく、と小さく身体を痙攣させたのを見て、俺は指を引き抜いた。多分まだイッてない筈。
「やぁ……なんでぇ……」
アイリィは呼吸を荒くしながらも、俺を非難した。
アイリィの言葉には応えず、俺はもう大分前から痛いほど硬くなっていた自分のものを取り出して、もう一度大きくアイリィの両脚を割り開かせ、散々解してやって、何かを待ち侘びているであろうアイリィのそこにあてがう。
アイリィを好きになってから他に女と縁の無かった俺の部屋には、生憎避妊具なんて気の利いたものは無い。でも、こんなとこでやめられるわけない。
アイリィは緊張した面持ちで、その様子をじっと眺めていた。
すぐには入れず、入り口の襞と襞の間に、擦り付ける。とろとろと分泌される液体が先端にまんべんなく塗されたのを確認してから、俺はゆっくり腰を進めた。
「っ……」
アイリィが顔を歪めた。指二本と俺のモノとじゃ圧迫感は段違いだろう。それでも、俺は止めることなく無理矢理侵入を続けようとした。一番太い部分を押し込もうとした、その時
「痛っ……あ、痛い!」
それまで快感しか表に出さなかったアイリィが、初めて悲痛な声で痛みを訴えた。いくら俺にサドっ気があるってったって、好意を寄せてる女相手に、強引に引き裂いてまでやろうとは思わない。俺はそこでやむなく動きを止めた。それから、さっきのアイリィのたどたどしいキスを思い出して。
「アイリィ……お前……もしかして」
俺の発した声も、結構切羽詰まったものだった。早く入れたい、早く動かしたい。
「処女?」
「……っ!ば、ばかっ……」
アイリィの、既に赤くなっていた顔が、更に紅潮した。
えーと、否定しないってことは――え、マジで?
「いや、回りにあんだけ男がいたし、誘惑してきたし、てっきり」
「こんなの、はじめて、だよう……っ」
「もしかして……キスも初めてだった?」
「……」
アイリィは俺から顔を逸らして、泣きそうな顔で黙り込む。それから、小さく、でも確かに、首を縦に振った。
あー……。
なんだよこれ――可愛すぎ。つか美味しすぎ。処女で俺の事考えて一人でしてたって?
いいの?いいの?マジで俺が喰っちゃっていいの?
「もぅっ……いいからっ、はやく、」
そんな俺の疑問を、アイリィがあっさりぶったぎる。早くってったって……痛がってるのは見たくない。けど、本当に初めてなんだったら、どうやったって痛いだろうし、アイリィもそれを覚悟してるのだろう。そう思って、俺は再び、さっきよりも更にゆっくり、先端を埋めていった。アイリィの顔が再び歪む。けど、今度は口を固く結んで、痛いと言わなかった。我慢してるんだろう。可哀想になって、でもそんなことにも確実に煽られて、俺はアイリィの頭を何度も撫でて、それから二度目のキスをした。今度はアイリィも舌を差し出してくる。ただ差し出されただけで、緊張したように動かなかったけど。
アイリィが俺の背中に腕を回して、キスに意識を集中しはじめて、少し身体から力が抜けているのを感じて、俺は申し訳ないと思いながらも、少し強引に、性器をめり込ませた。
「んっ――ぅ、ん!」
キスをしている所為で、くぐもった声。背中に爪が立てられる。でも、先端が収まってしまえば、あとは軽く腰を揺らして、きゅうきゅうと収縮しようとする肉壁をかき分けていくだけで、簡単に根元まで収まった。
「やっべ……超締まる……」
「ぅあ、あ……」
痛みの余韻故なのか、快感を拾った故の喘ぎなのか、アイリィの声からは判断できない。
「痛い?」
「へい……き……」
本当のことを言っているのか、ちょっと疑わしい。でも無意識になのか蠢動して俺のモノを締め付けてくるアイリィのそこは、早くしろと俺を急かしているような気がして。つーかもーやべえ、熱くてきつくて。久しぶりの女の感触。しかも、ずっと、ずっと好きだった女。
「エドくん……」
背中に回していた手で、ぎゅう、と俺を抱き締めようとしてくる。額に軽く唇を滑らせて、それから、赤くなった目尻に滲んでいた涙を舌でぺろりと舐めてやった。ゆっくり、腰を引く。それを引き止めようとするように、アイリィの肉が絡んでくる。
「あ……」
ギリギリまで引き抜いてから、再び中に収めていく。ゆっくりと、何度も繰り返した。始めはただ眉を顰めていただけだったアイリィの口から、断続的に意味の無い声が上がる。痛がってるんじゃない、感じてる。そう捉えて、俺は少しずつ律動を早めた。
「っあ、ふ、ぁ、あっ、ん!」
勢いをつけて奥を突く度に漏れるアイリィの声と、ぐちゅぐちゅとした水音と。聴覚から煽られる。
俺が舌で拭ってやった筈なのに、アイリィの目尻には再び水分が溜まっていた。今度は痛みからくる涙じゃない筈。お互いの汗で湿った肌が、ぶつかり合う音が次第に大きくなって。もう気遣いも何も無く、ただひたすら快楽を追った。
それまで俺に揺さぶられるままになっていたアイリィの背中が弓形に反って、俺の背中に再び爪を立てて、それから、身体をびくびくと痙攣させて、
「あ、あ、や、いく、いっちゃ――っぁ、――!!」
全身を緊張させたまま、か細い悲鳴を上げて、アイリィは達した。
俺ももう、耐え切れなかった。絶頂直後の収縮を繰り返すアイリィの性器に、容赦なく大きく腰を打ち付ける。
ここまで生でやっといて、何の気休めにもならないが、一応出す時は外に出すつもりだった。が。
「あ、なか、なかに……して……っ」
アイリィの足が俺の体に絡んで。
俺は、そのままアイリィの中で、達してしまった。
◇◇◇
急激に冷えた頭で、何と言おうか考えた。お互いに興奮してヤッてる最中はともかく、こうなってしまうと、なんだか居た堪れない雰囲気がある。だって俺達は、付き合ってないどころか、ほんのさっきまでただの友達だったわけで……。もし付き合ってる彼女だったら、抱き締めてキスしてやって、なんて、事後の甘い雰囲気を作れるけど。
アイリィは瞼を閉じて、まだ呼吸を荒くしている。
挿入したままだったモノを、ゆっくりと引き抜く。ぐぷ、と音がして、中から精液が出てきた。
ああ……。
「お前、普通な……中にとか言わないだろ……」
とりあえず、普段の口調で、突っ込んでみた。
アイリィはゆっくり瞼を開けると、相変わらず顔を真っ赤にしながらも、案外しっかりした口調で、
「だって、欲しかったんだもん……」
と言って俺から視線を逸らした。
本当に処女だったのか?いやしかし誰にでもこんなこと言ってるとしたらちょっとヤバイ。俺が何から聞こうかと言葉を探していると、逆にアイリィに質問された。
「エドくんは……?エドくんは、やっぱり、酔っ払ってるから、してくれたの……?お酒飲んでなかったら私とはしてくれなかった…?私色気ないことばっかりいってるし……私のこと、好き、じゃない……?」
え、何それ、それって、それってさ、つまり、アイリィはマジで俺のこと――。
いやでもにわかには信じがたい。
「いや、えーと、」
そりゃ好きだけど。
「あのさ、ホントに初めてだった……?」
俺はそれには答えず、逆に質問で返した。
「こ、こんなこと……結婚する人としかしないもん……」
――――……。
―――……?
!?!?!?wwwwwwwww
結婚?誰が?誰と?wwww
俺が無言でいるのを勘違いしたのか、アイリィは俺のことを睨んだ。
「ひどい……エドくん……こんなことしといて……あ、あそび、だったんだ…っ!」
「いや、え?w」
「う、ううっ」
両手を顔にあてて、体を横に倒して、背中を丸めて泣き出す。
いや待てちょっと待てwwww
まだ酔ってる?いやもういい加減素面だよな?wwww
「け、けっこん?」
「あ、当たり前じゃん、バカ……っ」
泣いてるくせに、案外しっかりした声。
え、何これ俺今プロポーズされてんの?wwwいやでもプロポーズっつーかこれ、半分は男心を逆手に取った計画的な脅しだよな?怖いwww女怖いwwwでも、なんだこれ?俺今超幸せだ。夢見てるんじゃ?つーかやっぱお互いまだ酔っ払ってんじゃ……。
「お前、酔って……ないよな……?」
「はじめからっ…酔ってなんて…ない……っ」
マジで……。
「お、俺でいいの?」
一応確認。ああ、情けない台詞。
「よくなかったら、こんな、こと、してないしっ……」
「じ、じゃあ」
「うっ、ひっく、」
「結婚」
「……っえぐ」
「しよっか……?」
「やったーっ!!」
泣いてた筈のアイリィは、顔を覆っていた両手をぱっと離すと、笑顔で両手を握り締めて、それから、俺に抱きつこうとしたのか、ベッドから起き上がろうとして――「うぅ」と呻いて、再びベッドに沈んだ。
「腰……痛ぃ……」
泣き真似かよwwwwwwwやっぱ女怖いwwwwwww
「つうか……何で俺なんだ。よりどりみどりだっただろ、お前」
「エドくんのこと……初めて会ったときから好きだったよ」
「え」
何それ。全然わかんなかった。俺って鈍感?いや、でも……。
「私ずっと彼氏作らなかったじゃん」
「うん」
「告白してくれる人はいっぱいいたけど、でも、エドくんはずっと何も言わずに近くにいてくれたじゃん」
「で?」
「だからきっと、エドくんは、私に告白してくる人とは違って、私の事、友達だって思ってるんだろうなって……。だから、言えなかったの。今まで断った男の子の友達みんな離れていっちゃったから、もし私が告白したら……今度は逆に、エドくんに離れられちゃうんじゃないかって……だから……」
だから誘って煽って逃げられないように中出しさせたってこと?wwwwwオソロシスwwww
「お前俺にヤリ逃げされたらどーするつもりだったんだよw」
「え?だって、エドくんはそんなことしないもん」
きょとんとした顔で何の躊躇いもなくそう言うアイリィ。
なんだそれどういう根拠?w振られるんじゃないかって怯えてたくせにw
つーかこいつ全然純心じゃねー、腹黒すぎるwww
でも、大好きだ。
まだ信じられないけど――この女はもう、俺のもの。
「エドくんて、えっちのとき、いじわるになるんだね……」
顔を真っ赤にして、俺からそっぽを向いて、アイリィが囁く。
「あー…ごめん、つい……」
「……ううん、いいの、エドくんにしてもらえて、幸せだった」
彼女は小さくぽつりとそう呟いて、顔を俺に向けると、手を伸ばしてきた。
俺は今度こそ、愛し合ってる人間がするように、彼女を抱き締めて、彼女の顔のいたるところにキスしてやった。