亡国の・・・
亡国の・・・レア将軍編

狂乱の宴から7ヶ月が過ぎた。バルツ王は宴から三ヶ月たった頃にバームをカイツに任せ軍の一部を率いて本国へと戻っていった。無論ジルを含め彼らの妻となり、すっかりと孕ませられた女達も連れて行かれる事になった為、バーム領内は少し人も少なくなりさびしくなったかに見えた。しかし、女達の中にはバームの内政に携わっていた者や軍に携わっていた者がいた為、彼女達の抜けた穴を補う為本国から人を送っていた為、多少のゴタゴタはあれどそれも2ヶ月ほどで収まり、今では元の活気を取り戻すまでに至っていた。
内政や軍部に携わっている女達を孕ませ本国へと連れ帰り、その抜けた穴を本国の人間が埋める事で占領国の色をバルツ色に染める…それがバルツのやり方だった。それはそうと残された者達は、というと。

「きゃっきゃ」
「もう、お眠の時間でしょー。うふふふふふ」
レアの妹、ホルンはバーム・バルツ軍副団長シリウスの子を産んだ。父親に似た元気のいい男の子だ。
今ではすっかりと母親の顔となったホルンが我が子へと微笑みかける。
「ホルン、ちょっと。」
「はい、わかりました。お姉さま」
ホルンはお腹の大きくなった姉に我が子を差し出す。
「あばぁー、ふふ、あら?・・・私の子が今この子に挨拶したわ。」
ホルンの子に反応したかのようにレアの腹の子は母の腹を蹴った。それがわかっているのかホルンの子はきゃっきゃとはしゃぐように笑う。
「そろそろ、兄貴の子供もうまれそうなんじゃないのかい?」
義理の兄となったミミックにシリウスを問いかける。
「まだ、1,2ヶ月ってとこだな。もし、俺んとこのが女だったらよ。てめぇんとこと許婚にしてみっか?
 さそがし、強いガキが産まれると思うぜ。」

「いい考えだが、そうなるとお前とは兄貴でもあり、息子の舅でもありってか。ちょっと勘弁かもな」
「あはははは、それにしても……お前もう仕込む気なのか?」
「馬鹿いうな、あん時ゃ命令も下ってたからよぉ。ま、命令下ってなくてもホルンの体は最高だったから
 今と状況変わんねぇと思うけどな。」
「へぇ、その割には毎晩お盛んなんじゃねぇのか?シーツ取り替えるペースがちと早いぜ。」
「バッカ、さっさと孕ましちまった分よ。まだまだあいつの体を味わってねぇんだ。凄いぜ、なんたって
 ヤレばヤル分、どんどん綺麗になって旨くなっていくんだからよ。」
「け、こっちのだってそうだよ。今は口とたまに尻でやってるがこなせばこなす分腕を上げやがる。」
「かぁ〜、それもたまんねぇなぁ〜」
と昼間っから卑猥な話で盛り上がるこの義兄弟二人に彼らの妻達が投げた壷が頭に当たり気絶したところでホルン
の子供はようやくあくびをあげ、眠りに落ちかけて行った。

「あ、動きましたわ」
「あ、私も」
こちらはクリスとその親友のアリシア。二人も例にもれずすっかりと腹が膨らんでいる。まだ幼さの残る顔に似あわずマタニティドレスを着て優しく腹を撫でる姿はどこか和むようでいて背徳感が漂う。
「あと何ヶ月かしたら私達は母親になるのですね。」
「ええ」
母親というフレーズを口にすると二人はお互いの母親の顔を思い浮かべる。思えば、ジルもそうだしアリシアの母もまたバルツの兵の子を孕み、今ではバルツ本国に送られている。
「妹か弟かはわかりませんけど、会ってみたいですよね。」
「ええ、もちろん。その時は私達も自分達の子供を見せに行きましょう。」
「はい、子育てに関しても色々と聞いてみたいことですし。」
微笑みながらまだ少女の面影を残す年若い妊婦達は自分達と母親達の子供の会合を思い浮かべていた。

「腹の子は順調に育っているようだな」
「はい……」
頬を染め、かつての仇敵が自身の腹を撫でると自分もその手に自らの手を重ね合わせる。あの宴の日以降もしつこくバルツの精を受けつづけた子宮はジルの奮闘もむなしくあっけなく子種の通過を許し、拒むべきバルツの精子をジルの卵子は受け入れた。孕む兆候が見られるとバルツの子作りと言う名の陵辱に耐えてきたジルの精神は限界に達し、徐々に育っていく子に対し、憎い男だと言うのに愛しさが沸いてきた。そんな気持ちを必死にジルは塞ぎこむように押さえようとしたのだが、周囲の環境がそれを許さなかった、周りを見ると犯され、強制的に種付けされたというのに夫のそばに寄り添い腹の子を慈しむ女達。内政官、軍人、侍女、家臣らの娘達、そして……我が娘クリス。ある日の夜、ついに耐え切れなくなり一人ほっそりと静かに泣きに泣いている時。背後から温かく、体全体を覆うように優しく抱きしめられた。腕の太さ、そして筋肉質の固いこの腕は間違いなくはバルツのものだった。彼は何も言わず、ただ泣きじゃくる自分を抱きしめていた。ジルは気付いた時には体の向きを変え、彼の胸と腕の中でひたすら泣きに泣いた。そして、その日彼女は自らバルツを受け入れ自ら腰を振った。今ではすっかり子を生した母親の顔にもどり、平穏な生活を送っていた。
「あ…」
「どうした?ジル?」
「今、腹の子が……」