ここ姫八木(ひめやぎ)神社の榊も花をつけ、庭一杯に鼻腔をくすぐる香りがし
ます。6月にしては今日は少し暑くて、腰まで伸ばした黒髪が少し鬱陶しいです
が、それすらも忘れてしまうようないい香りです。その上雲ひとつ無い快晴とも
なれば、私――宮前琴音(みやまえ ことね)は思わず歌の一つも口ずさみたくな
ってしまいます。しかし今は朝のお掃除の
最中です。そんな不真面目なことはできません。
「あっっちーーーなクソ! 琴音アイスー、カキ氷ー!」
 ああ、風情を感じる心など一寸たりとも持ち合わせてはいない人が来てしまい
ました。しかしながら、小袖に袴(巫女服と言ったほうがわかりやすいでしょう
か?)を着た私のほうが暑い自身はあります。彼はTシャツにハーフパンツなの
ですから。
「琴音、おつかいヨロシク」
 朝の挨拶もそっちのけで、杜塚真悟(もりつか しんご)さんは私に小銭を渡し
てきました。
「あの……私朝の「俺スーパーカップのバニラ。お願いね」
「はい……」
 金色に染めた髪を靡かせて殿(でん)へ去っていく真悟さんの後ろ姿を、私は疲
れを感じながら見送って受け取ってしまった小銭を握り締めました。


 おつかいから帰った私を、真悟さんはしかめっ面で迎えました。
 何かあったんでしょうか。
「琴音、出発の準備して。“祓い”に行くよ」
「はい、すぐに!」
 “祓い”とは妖魔に憑かれた人、あるいは妖魔そのものを鎮めることです。真
悟さんは御歳21にして、すでにその道では日本最高とまで言われているお方で
す。
 彼の霊力を見るたびに、たかだか15年しか生きていない自分なんかがお供し
ていいものか不安になってしまいます。
「準備できた?」
 でも、真悟さんが私を選んでくださるのなら、私は期待を裏切らないように精
一杯頑張ります。
「はい!」
「ほんじゃ、祓魔(はらま)せにいきますか」
「変な言葉作らないで下さい……」

 今回の被害者は高杉京香(たかすぎ きょうか)さん。22歳の会社員で、一人
暮らし。才色兼備で期待の新人らしいです。
 ……なんとなく胸が悪いです。
 私たちが彼女の部屋を訪れると、中に入るまでも無く邪気が感じ取れました。
 真悟さんは何の迷いも無くドアを蹴破って中に入っていきます。
 その後に続くと、ベッドの上に下着姿で膝を抱える影が見えました。
「ナによ、あんたタち」
 高杉さんは私たちに血走った目を向けて、どこかおかしい発音で言いました。
「私の部屋に入って来ルな、出て行けデていけ出てイケ!」
 叫び声のような、もしくは獣の咆哮のような声を上げた高杉さんの足元から瘴
気が噴き出し、綺麗なセミロングの茶髪の間から狐そっくりの耳が現れました。
「こりゃー典型的な狐憑きだね」
 やれやれ、と呟いて真悟さんは一歩踏み出し体勢を低く構えました。
 その瞬間高杉さんが低く、速い、まさに獣の跳躍で襲い掛かります。彼女の武
器は握り拳や蹴りではなく、すでに人外のものと化した鋭い爪と牙。
 地面すれすれから伸び上がってくる爪の一閃を真悟さんは身を反らしてかわし
ました。そこに闇に光る牙が迫ります。
 真悟さんは体勢を立て直そうとせず、逆に思い切り仰け反ってその牙をやりす
ごし、そのまま両足で相手の身体を挟み込みバック転の要領で地面に叩きつけま
した。
「グギャッ!」
 高杉さんは短く叫んで、悶絶します。
「琴音、押さえといてね」
 真悟さんは入り口でボーッとしている私にそう言いました。
「は、はいっ」
 私は慌てて高杉さんに意識を集中させ始めました。道具などを使用しない簡易
結界で妖魔の力を押さえ込む。私の唯一の得意技です。
 真悟さんは高杉さんが抵抗できないのを確認すると、優しく抱き上げてベッド
に運んでいきました。
 これから何が起こるのかはよくわかっています。正直に言うと見ていたくあり
ません。でも、私が意識を集中していないと暴れだした高杉さんに真悟さんがや
られてしまいます。
「ぅぅ……」
 私の葛藤など露知らず、真悟さんは服を脱ぎ出しました。躊躇無くパンツまで
脱ぎ去ると、あのその、そそり立ったアレが露になります。
「いやいや、いい体してるわ」
 今にも舌なめずりしそうな声で言いながら、真悟さんは高杉さんを見下ろしま
す。
「な、何しようって言うのよ?」
 私が押さえ込んでいるせいで、高杉さんの口調が戻っています。
「まあまあ、怖がりなさんな。俺って特異体質でね、体液に浄化作用があるんだ。
その先は……言わなくてもわかるだろ?」
 真悟さんの言葉は本当です。だからこれは必要なことでただの仕事で義務で愛
だの情だのは欠片も無くて、故に私が恥じる必要も胸を悪くする必要もありませ
ん。


「そんじゃ、いきますよ〜」
 真悟さんが高杉さんの下着の中に手を突っ込み、ゆっくりと愛撫を始めました。
「あっ、ちょ、やめてよ」
「やめたりしたら憑き物が落ちないって」
 真悟さんが手の動きを早めるとくちゅ、くちゅ、と私のところまで水っぽい音
が聞こえてきました。
「へえ、随分と感度がいいや……んじゃ、本番だね」
 真悟さんは大きく上下する胸を覆っていたブラジャーを剥ぎ取り、豊かに膨れ
た乳房をじっくりと眺めた後、ショーツに手をかけ濡れそぼった秘所を露にしま
した。
 そしてぎちぎちに勃起したペニスを突きたて――
「あっ、あぁあああ!」
 一息に根元まで挿しいれました。
「うわ、締まる。久々だし、あんま持たないかなこりゃ」
 うそぶきながら、真悟さんは腰を高杉さんに打ち付けます。
「あっ、あぁん、くあぁ……」
 高杉さんは身をくねらせて、快感と自分を貫く男を受け入れ嬌声をあげます。
 時折、体が跳ねるような反応をしていることから本気で感じているのが見て取
れます。
「くっ、出る……このままイくよ」
 真悟さんがそう言って腰の回転を早めると、高杉さんはいやいやをする子供の
ように頭を振りました。
「だ、駄目っ! 今日はあ、危ない日なの」
「駄目駄目、妖魔はちゃんと退治しなきゃ」
 薄く笑って、高杉さんのくびれた腰を引き寄せる真悟さん。
「あ、赤ちゃんできちゃうよぉぉぉっ!」
 真悟さんは一度軽く腰を引いて、もう一度打ち付けた後、射精の終わったペニ
スを引き抜きました。
 高杉さんの秘所からどろり、と二人の体液が混じった白濁液が漏れ出てきます。


「いやー、今日もいい仕事した。さすが僕ちゃん」
「そうですか」
 帰り道、意気揚々と言う真悟さんに冷たい視線を贈りますが、全然気付く様子
がありません。
「なんで不機嫌なの?」
 などと平気な顔で言ってきます。私は答えずに、歩くペースを速めました。彼
の顔を見たくないし、声も聞きたくありません。
 それに、早く帰って……えと、あの、濡れた下着を替えたかったので……
「琴音〜、どうしたの〜?」
「なんでもありませんっ!」
 そう、なんでもないんです。さっきのはただの仕事なんですから。
「おーい、琴音ー」
「なんでもないって言ってるでしょうっっ!!」
 ああもう、何であの人は…

祓魔せ師2