土曜日



日曜日

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ようやく日が差し始めた早朝、結衣は目を覚まし、起き上がって台所で水を一杯飲む。
喉を潤し、運動と睡眠で失った水分を補給すると、意識が覚醒して神経が隅々まで行き届く。
本当に久しぶりな、爽やかな朝を全身で感じ取っていた。
満足と言うには足りないものがあるが、それでも澱んだものがさっぱりと無くなるようなこの気分。
布団に戻ると、まだアキトはすやすやと熟睡している。
寝顔の可愛らしさに、思わず頬にキスの一つでもしようかと思ったが、
起こしてしまっては忍びないと思いとどまる。
彼には充分な睡眠をとって、体力を回復してもらなければならない。

結衣はお手洗いへと向かった。

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「昨晩、結局アキトは帰ってこなかったけど、先生と一緒になにをしてたんですか」

着衣の乱れは無くとも、単に寝起きだけとは思えない髪の乱れ、
首筋にうっすら残るキスマーク、それに汗の混じって感じる独特のすえた匂い。
一晩たっても消えないとは、いったいどれだけ励んだのだろうか。
あくまで普通にいられるのが不思議なくらいだった。

突然の対面にも、結衣は悪びれた表情も見せずハルキを窺った。

「ふふ、ご想像にお任せするわ」

結衣は妖艶に微笑む。
およそ教師という職に似つかわしくない表情だが、
異常なほど違和感無く、淫らで自信に満ち溢れている。

ハルキは早朝にもかかわらず、宿直室近くの廊下で結衣を待っていた。

「昨日は帰ったと思ったけど?」
「はい、家に帰ってそのまま寝たんですが、朝早く起きてもアキトが帰っていなかったんで、
心配になって見に来たんですよ。それより先生、これからどこへ行くんですか」
「ちょっとお手洗いにね」
「オレもついて行きますよ」
「女子トイレに?」
「どうせこんな時間、誰もいないでしょうからね」
「そうね」

結衣は再び目的地へと向かう。
呆気にとられながらハルキは後ろを付いていった。

「それにしてもよく入ってこれたわね。鍵は閉めてあるし、警備システムも反応しなかったみたいだけど」
「……職員玄関、鍵かかってなかったですよ。警備システムも解除のままだと思います」
「あら? 私も最初は帰るつもりだったし、忘れていたのね」

照れているのか、髪を手櫛で整える。
ハルキはすたすたと女子トイレに入る結衣を見ながら、見えない壁がある空間へと足を踏み入れた。

「私が用をたしてるところを見たいの?」
「……そんな趣味はないですね。でも鍵は開けておいてくださいよ」
「わかったわ」

ハルキは区画された壁に背を預けながら中の様子に耳をそばだてる。
衣擦れの音の後、水が跳ねる音が続く。
存外興奮する自分に、己は変態なのかもしれないと苦笑した。
音が止み流す音が続いた後、衣擦れの音が再開した。

「先生、入ってもいいですか」
「いいわよ」

扉を開け、中に入る。
狭い空間に二人きりだった。

「今度はハルキ君が用をたす番かしら? 私で……ね」
「先生はスカトロ趣味でもあるんですか?」
「ないわよ。好みは人それぞれだと思うけどね」
「俺はいちいち先生の目の前でしませんよ」
「うん? ふふ」」

ちぐはぐな会話を打ち切るよう、ハルキは呼吸を整える。
緊張もあったが、これからすることに心構えが必要だった。

「まさかあの堅物が朝帰りになるとは思わなかったよ。
先生に惚れこんでたのは知ってたけど、ここまでとはね。
昨日あれからどれくらいしたんですか?」
「あら、それは二人だけの秘密ってことよ」
「したことは否定しないんだ」

ハルキは結衣ににじり寄り、肩に手を掛ける。
間合いを詰められ、身体に触れられても、特段不快そうな表情は見せなかった。

「先生、それはまずいんじゃないかな」

次の台詞が大事だと言わんばかりに一呼吸置く。

「だって先生は生徒と関係を持ったわけだから」
「んん、これって……私もしかして脅迫されてるのかしら?」

鈍いのか、からかってるのか今ひとつ図りかねる表情だ。
考えが読めないのは、ハルキが人の気持ちを読む能力が足りない訳ではなく、
相手の、瑣末時事とでも言わんばかりの、意に介さない普段通り自然のままだからであった。
いらだつ自分を抑えながら、慎重に話を続けた。

「そうですよ。それは、いくら何でもまずいですよね」
「あら、そうかしら?」

返答よりも先に、肩に置いた手を滑らかな肌を徐々に下へ這わせ、
成熟した女性を主張する豊かな双球へ触り始めた。

「んん……」
「先生の身体、これで誘惑したんですか」
「あっ……だめ、だよ」

ようやく初めて見せる拒絶にも、一度膨れ上がった欲望に歯止めがかかるわけではない。
むしろここに入ってからよく最初に襲いかからなかったものだと、
年頃の青年にしては感心して良いくらいだった。
どの道、こうなる事は同伴してから確定していたようなものなのだから。

今の反応もすでに織り込み済みだった。
一応とはいえ、形だけでも拒否めいた言動だが、実際はOKしているようなものだ。
行動も大胆に、結衣の肉体をまさぐりはじめる。

「すっげえ……、他のやつらと比べ物にならない」、
「あっ、ん、ふふ、色々な女の子の胸を揉んできたのね」
「それはご想像におまかせしますよ」
「遊び人なのね、あなたは」

頂点にある蕾が硬く突き出してくる。
なかなか達者な手つきに、吐息も甘く切なく昂ぶる。

「これならパイズリできそうだね。先生やってよ」

ズボンを下げ、すでにそそり立つ肉棒をさらけ出す。
便座に座って位置的に丁度良い、結衣の胸の谷間に宛がった。

「そんなの、押し付けないで……」
「ダメだよ。ばらされたら先生困るだろ。ほら、覚悟をきめてさ」

やがてゆっくりと結衣は上着を脱いで、こぼれんばかりの美乳を見せた。
大きいだけではなく、つんと上向きの形の良い乳房は芸術的でありながら、
吸い付きむしゃぶりたいと男なら誰しも思う妖しさを秘める。

「うん、そうね。私、アキト君とエッチしたのをばらされたら困るもの」

そう言って、おずおずと肉棒を胸に挟む。
豊満で張りのある乳房を手でさらに寄せ上げ、包みこうむよう上下にしごき始める。
竿から亀頭にくるまれる刺激に、自然とハルキは腰を浮かす。

「あぁ、こういうの初めてだけどいいね。アキトにもしてやったの」
「そんな事……言わせないで」

ハルキは乳首の先を軽く摘まんで、親指の腹で擦る。
敏感な刺激に動きを止めた結衣に対し、
乳房にうずめられた男根を口元近くまで突き上げた。
まるで性器を犯すように何度も前後すると、
先走りの汁が溢れ、喉元から谷間へと糸を引いてぬらぬらと輝く。

「自分の立場わかってるます? 今の先生に黙秘権なんて認められないんだから」

さらには愛撫をしていた乳首に力を込める。

「あん……うんん、昨日はしなかった……最初は口だったよ」
「へえ、それも羨ましい。それならそのまま舐めてよ、昨日みたいにさ」
「ん……」

先っぽに舌を伸ばして唾液を絡めるように舐める。
美乳から卑猥な音を立てながら肉棒に奉仕して、
口に咥えながら、時折裏筋から鈴口へと舌先でつつく。

「あっ、あぁ、それすげーいい」
「んっ、んんっ、れろ、気持ちいい?」
「すごく」
「嬉しい」

これ以上ないほど明快に喜ぶ結衣に対して、
ハルキは主導権の単語を思い浮かべ妙な気分になったが、すぐさま快楽の波に押し流される。

美人教師が丹念に生徒の怒張を慰める図は、およそ健全とは言いがたい屈折した淫猥さだ。
技巧においても充分すぎるほどのものを持ち、なぜこんなにも手馴れているのか考える余裕もない。
すでに達するまでに、そう時間は必要ではないほどの昂ぶりがきていた

「あっ、はあはあ、そろそろいく。このまま……そのきれいな顔に出してやるよ」
「出すの、出しちゃうの? 精液、私の顔に出すんだ」
「くぅっっっっ!!」

意味もなく歯を食いしばって我慢をしてみるも、すでに無駄な抵抗であった。
翻弄される肉棒から盛大に白濁とした液が飛び出していく。、
結衣は避けようともせず、精液は前髪から目元、鼻、口と端麗な容姿を汚していく。

「ああぁ、すごい量……。この匂いも、こびり付きそうだわ」

どくどくと駄々っ子のように長々と欲望を吐き出す。
ハルキは当初の目的を果たしたものの、いいように弄ばれいかされた敗北感に駆られた。

「っあぁ、はあはあ。そのまま中に残ってるものも口で後始末して」
「わかったわ」

ようやく勢いも止まった頃に、先端を咥えて再び愛撫する。
敏感になった亀頭からの刺激に、ハルキは呻くように声を上げて震えた。

「うあぁぁ……」
「んっ、ちゅ、ちゅう、んぐ」

せり上がるものに加え、尿道に残る残滓も吸い取っていき、
最後には唇まで滴り落ちるものを、赤い舌が舐め取って逡巡もせず嚥下する。
まるで地に足が着かない浮遊感の中、喉を鳴らす生々しい音に現へと引き戻された。
普段は排泄処理するくらいにしか意味のない自分の精液を、彼女は胃に納めたのだ。

「喉にからまって飲みにくいわ。若いってすばらしいね」
「はあはあ、はあぁ……」
「んん、アキト君のと味、ちょっと違うね」
「そんなの、比べるなよ」

妙な恥ずかしさに、口調もぶっきらぼうになる。

「顔、赤いよ。アキト君もね、私に飲んで欲しいって言った時、
すごく赤面して恥ずかしそうだった。
やっぱり似てないようですごく似てるよ、二人とも」

結衣は特に揶揄するつもりで言ったのではなく、
率直な感想を述べたのだが、ハルキの表情に一瞬影をさしたのが見て取れた。
だが束の間、落ち着きを取り戻したように振る舞う。

「ふぅ、先生いい格好だねぇ」
「ありがとう、満足した?」
「いいや、これからが本番だよ。先生のここもさ……」

ハルキは腰を下ろして、座ったまま動かない結衣の股に入り覗きこむ。
可愛らしい白いレースの下着にうっすらと滲みが見えた。
指でひっかけ脇にずらして、すでに濡れているのを舌先で確かめると、
結衣は熱い吐息を漏らしながらハルキの後頭部を押さえる。
割れ目にそって舐め上げると、ほころぶように開きながら唾液とは違う液が滲み出る。
眼前では女性器がすでに待ちきれないようにひくつく。

「あぁん、そんなところ……舐めないで」
「こんなに濡らしておいて、説得力ないよ」

秘裂を親指で広げ、肉芽を舌先でくすぐる。
ひときわ高い声を上げ、押さえつける手が強い力になった。

「先生、気持ちいい?」
「……うん」
「もっと大きい声で言って」

敏感なクリトリスをねぶり、垂れてくる愛液に口をつけ啜る。
堪能した後、舌をすぼめて、孔に突き入れた。
たちまち異物の侵入に反応して、膣壁が締め付ける。
それでもねじ込むの止めず、肉襞を割って縦横に愛撫する。

「ああぁ! それ、そこ、気持ちいいよ!」
「いいんだね」

結衣は潤んだ瞳でこくんと頷く。

性的に堕とされたその表情は、欲情して襲いかかるっても
情状酌量を与えられるのではないかと思えるほどそそる。
事実ハルキも復活した一物が、一層硬直するのを感じた。
頃合を見計り、忍ばせていたコンドームを取り出して装着しようとする。

「……ハルキ君、普段から持ってるんだ。アキト君とは違って遊び人ね」
「そうですよ、遊びで女性に負担を掛けるのも嫌ですからね」

皮肉めいた台詞に対して、意識して柳に風がふくように受け流す。
ここで感情に波風が立つようでは、人として男として負けるような気分でいた。

「ふふ、でもね私……」

結衣は顔に付いた精液を拭い、その指をぺろりと舐める。
ハルキはどきりと硬直して、相手の次の言葉を待つはめになった。

「遊びではなくて、ハルキ君の本気が欲しいの」
「それって……」

奇しくもアキトと同じ反応をする。
どういう意味と続けようとした矢先、結衣は下着に手を掛け、
するすると下ろし、片足を抜いてぷらぷらと引っ掛ける。

「アキト君はすごかったよ。『本気』で私を愛してくれたの」

座ったまま片膝を立てる。
高身長に見合う、長くすらりとした脚線美が優雅に折り畳まれた。
露わになった太腿の付け根に目が行くのは必然だ。
下着など外している、視線を遮る物は無い。
造形美を極めた肢体に、そこの一点に人の証である秘めやかな肉の花。
醜悪なようで神々しくもあった。

情景を思い浮かべるように、うっとりとした眼差しで宙をみつめながら自ら胸を揉み、秘所へと手を伸ばす。
中指を孔へ沈めていくと同時に息を吐く。
静かに喘ぎながら、指を動かして刺激を感じる。

「あんなに真面目で大人しいアキト君がね、別人みたいに激しく求めてきたわ。
だから余計に伝わったの、アキト君の本気」
「あいつ初めてだったからだろ。それに先生とできるならケダモノになるよ」

このままだと相手の術中に陥るようで、強引に目を逸らし、はき捨てるように言った。

「ハルキ君も?」
「俺は……童貞じゃないよ」
「ふふ、私とするとケダモノになるの?」
「………っん」

横目で見て、そのあられもない光景に生唾を飲みこむ。
幾人か女性と肉体関係を持ったハルキは、思わず今までの女と比べてしまう。
その格差は単に年齢の違いだけでは説明できない、
彼女らが仮にこれから成長したとしても、この差はうまるとは思えない。

「男の子はみんなオオカミ、女の子は食べられちゃう赤頭きん。
それともハルキ君は、アキト君と違って、女の子の前で紳士でいるのかな?」
「くっ、ああそうさ。俺は紳士でいるよ」

自分でも随分と支離滅裂な言い草だと感じる。
そもそも事の始めは、どう考えても紳士的ではない。
何をいまさらと結衣はくすりと微笑むが、
ハルキはそれを自分が強がりを見せてるのが可笑しいのだと思いむきになっていた。

「ねえ、それじゃあさ……」
「?」
「もう一度最初から……優しくキスから始めて欲しいの」
「……はあ?」

もじもじと恥ずかしげに何を言うかと思えば、まるで場違いな発言に毒気が抜かれる。
結衣はそのまま上向きに顔を上げ、目を閉じて口付けを待つ体勢になった。
暫しの逡巡の後、自分で言った手前、腹を決めて優しく口付けしようとする。
一旦ズボンを上げ、顔を近づけたが、
優しい雰囲気にそぐわない、先ほど自分が出した精液が気になった。

「先にちょっと」
「ん……」

ハンカチを取り出し、結衣の顔を拭う。
目を閉じたままじっとする彼女の顔を丹念に綺麗にしていく。
曲がりなりにも美しさを磨く施しに、ちょっとした陶酔感があった。

「これでいい」
「ありがとうね」
「……もう一度、目を閉じて」
「ん……」

今度は何事も無いように、キスをする。
唇が触れるだけの、親愛をこめた優しい接吻。
至近距離で見る、普段と違う可愛らしさにどぎまぎしながら続けた。
僅かな時のようで、だいぶ長い間のようでもあった。

「こういうのもいいよね」
「あ、ああ」
「ね、次は……」

また目を閉じ顔を上向きにして待つ。
次は何か、特に言われなくともわかる気がした。
不思議と心が通じ合う。

「ん……」

しっとりとした感触を味わいながら、少しずつ唇を開き、舌をのばす。
お互いの舌先が触れ、くっついては離れ、次第に絡み合っていく。
舌から伝るのは唾液だけではなく、優しい心遣いからくる暖かさがあった。
ハルキは肩に手を置き、抱き寄せる。

「ん…ちゅ……ん、ちゅぅ、ぅん」
「んん……はあはあ、ふうぅ」

口が離れると、つうっと唾液が滴り落ちた。

「キス……とってもよかったよ」
「それは光栄。次は何がお望み?」

紳士な台詞とは裏腹に、下半身は欲望に猛る。
だがそんな素振りを表に出さず、心の棚に投げいれる。
茶番にすぎないが、だからこそむきになる傾向がハルキにはあった。

結衣がそっと立ち上がると、自然と狭くなり密着してしまう。
今度はハルキが少し上を向く番だった。
腰と背中に腕をまわし、抱擁するのだが少しさまにならないのを自覚する。
三度目のキス、舌をはべらせ、乳房を揉んで、手が全身を這い回る。

「ああん……ん、そこ」

口を外して喉をそらして喘ぐ、その無防備な首筋にキスする。
舌でくすぐりながら徐々に下がり、乳房まで到達する。
硬くしこる乳首に吸い付き、愛撫した後、口いっぱいに広げその豊かさを頬張る。

「んん……はあぁぁ」

手をそっと、スカートの内側へ持ってくる。

「そこ……敏感なところだから……優しく」

こそばゆい囁きで耳もとをくすぐられる。
性急になりがちな動作を押し止め、情感を込めて楽曲を奏でるように熱く熟れた秘唇をなぞる。
静かに中指を潤いに探り当て、その蜜を乗せて肉芽へも撫で付ける。
多彩な音の高鳴りに比例するようにして、指による愛撫も熱を帯びる。

「ん……っあぁ、はあはぁ」
「先生のここ、もうすごいことになってる」

手を抜いて、そのねばりを確かめるように指を開く。
水かきのように広がるかと思ったが、思いのほかさらりと垂れていく。
勿体ないと思って舐めると、視線を感じてふと目が合わさった。

「やあ、そんなの舐めないでよ……」
「さっきのお返し」

視線を逸らして、顔を赤らめる結衣の表情は、
清純と同一の属性を持ち、恥じらいと憂い、喜びが混じり初々しさに満ちていた。
同じくしてハルキの心には、満たされるような初々しいときめきを感じていた。
薄々彼女の術中にはまる、まずいやりとりだと分かっていながら、心地良い瞬間から逃れられない。
首筋にうっすら残るキスマークに接吻しながら、さっさと終止符を打たなければと思いとどまる。
どうせ毒を食わなければならないなら、早めの方が影響も少ないはずだ。

「もう、先生としたい」
「私と?」
「そう」

この人はなぜ当然の事を聞くのだろうと思った。
もしかしたら、ダメなのだろうか?
胸が高鳴り、不安に足が崩れ落ちそうになる。

「……うん、ハルキ君が望むなら、いいよ」
「あ、あぁ」

痛みなら我慢できるだろう、涙ならこらえる事もできるだろう、
だけど胸のうちから湧き上がる暖かいもの、喜びは抑えることが出来ない。
この感情はどこからくるのだろう、
当初の目的は何か、ハルキは思い出さずにはいられなかったが、今や遠い過去の出来事。
多幸感に包まれながら、これからする行為に幾ばくかの罪悪感が湧く。

「あっ、でも、もう優しくなんて出来ないかもしれない」
「ん……私、ハルキ君になら……傷付けられてもいいの。だから……」

美しさは罪ではなく、力だ。圧倒的な圧力によって毒が瞬く間に回る。
だがとても素晴らしく甘美で柔らかいに違いない。

「……いいよ。きて」

ハルキは体を入れ替え、結衣の背中を扉に押し付ける。
鍵はかけてあるが、二人分の体重が掛かりギシリと軋む。
唇を重ねながら右手の手首を握り、動けないよう壁へ押さえつけた。

「んん……ちゅる、ぅん、はあぁ」

片手で太腿を抱え、スカートがめくれて見える秘裂へと、猛る男根を押し付ける。
挿入しようとしたが、割れ目の上をすべり肉芽へと当たった。
結衣はびくんと反応する。

「ねえ、そんなに焦らなくても大丈夫」
「ご、ごめん」

ハルキは自分は童貞か、と自己嫌悪にかられた。
今度はしっかりとあてがい、腰を進め、濡れそぼる蜜壷へとわけ入る。
挿入した後、最初に付けようとした避妊具を忘れていた事に気付く。
だが今更といった感じがした上、初めて直に触れ合う良さもあった。
このまま挿抜を繰り返し、己の一物でもって結衣を標本のように扉へ縫いとめる。
突き上げるたびに軋む扉の音も、セックスを彩る協和音だ。

「あん、あっ、あぁっ、激しいよぉ」
「はあはあ、あっ、ごめん」

いつの間にか我を忘れて、相手を痛めつけていたことに気付く。
動作を止め、荒い吐息が両者を行き来する。
結衣ははにかむような微笑を浮かべ、ハルキをじっと見つめた。

「ふふ、でも男の子なんだから、しかたないよね」
「ごめん……本当は優しくしたいんだ」

優しくしようとする心、快楽を貪ろうとする体、微妙に相反するが、
ハルキは上手く折り合いがつけられる自信が多少あったのかもしれない。
最初は隘路を再び馴染ませるように挿入して律動する。
上下に波打つ乳房を掌で覆いながら、屹立とした乳首をこねる。
ああっ、と結衣が呻き声を上げ、漆黒の長い髪が光彩を放ち感情を表現する。
愛撫と波状するように陰茎をぎりぎりまで抜き、一気に突き入れる。
歯を食いしばり、長いストロークで何度も膣奥まで責める。

「くぅん、んぁああ、はあ」
「はあはあっ、先生の中……気持ちよすぎる」

奥と亀頭が出会うたびに、走り抜けるような快楽が襲う。
このまま味わいたくて、最奥まで差し込んだまま捻り、抉りこんだ。
子宮口が吸い付くように膣全体が蠢き、中にあるものに追従して悦ぶ。
ハルキは少しでも長く持たせようと口付けをする。
せめて結衣を先にいかせるのが、普段器用な彼の不器用な優しさだった。

「ん、ちゅっ、んん! はあはあ、ふあ、どう、先生も気持ちいい?」
「いいよぉ。ハルキ君のが、奥まで届いたままぐりぐりくるの最高だよ!」

散々に愛撫を受け、少しの中断によって焦らされた肉体は、
営みによって火照りを取り戻し、更に高みへ昇りつめる。

「そこぉ、くる、ハルキ君のが欲しいって」
「先生いきそう?」
「うん、いいよ、いくのぉ!」
「はあはあ、嬉しい。俺でいってくれるんだ。
ああぁ、こんな時に……言うのもなんだけど……俺、きっと先生のことが好きだ。
だから、だからっ、すごく嬉しい!」
「私のこと、好きだなんて……結衣も嬉しいよぉ」

身体を小刻みに震えさせる結衣に対し、壁が軋むほどの勢いで腰を叩きつける。
肉打つ音が鳴るたびに、熱く潤む膣壁が歓喜にわななき、存分に牡の蹂躙を抱きとめる。

「ああっ、先生、俺、オレ!」

臀部に手をまわして、ぐっと下半身を密着させる。
結衣は身体全体をハルキに預け、首に腕を絡ませ頬ずりするほどくっついた。
匂いというものは五感の中でもっとも野生的なものなのかもしれない。
接近して濃密になる、汗に混じって香る髪の良い匂い、微かな香水、
発情した女がかもすフェロモンは欲情の火を加速させる。
真に濃厚な時間の始まりだった。

手と腰に挟まれ、逃れられない胎内に何度も牡の生殖器が押し込まれる。
一突き毎に潤みきったトバ口から淫らな液を浴びせ、床に滴り落ちた。
結衣は大胆に脚を開き、自ら抱え上げてより深い結合を求める。
すでに拒むものは無く、子宮の入り口まで男根は存在を主張し、
次に段階への布石として、先走りの汁を分泌して己の道行きを馴染ませる。
女芯はどろどろに蕩け、牡に絶対の忠誠を誓い、隷属し、支配され、そして搾取する。
怒張は子種を搾取する柔襞の濃密な愛撫になぶられていた。

「やあぁっ、はんっ! あああぁ、いい、もう!」

結衣は一線を越え、全身を張り詰めさせた後、びくびくと震えだす。
アキトは最後のところで男根を抜き、すぐさま白濁とした精液を噴出させる。
ビュクビュクと音が聞こえそうなほど勢いよく出ては、
結衣の胸から腹へと降りかかっていった。

「ふあぁ、熱いよ」

結衣はとろんとした目で、自分の体に付く粘液の熱さを感じていた。
付着したそれは女体にしがみ付くように凝固してゼリー状になる。
段々と勢いを失うものの、先から固形状に盛り上がる様子はある種壮観だった。
若い生命の原動力を感じさせる。

「本当に、とっても良かったよ。……ん」

結衣が被さるように唇を重ねると、
ハルキはもたれ掛かられ、押されるように後退する。
全力を出し切ったためか、足に便座が当たった時、そのままへたりと座った。

「……ねえ、今度は私がハルキ君を気持ち良くしてあげる番」
「えっ、せ、先生」

最初と立ち位置が逆転したことに、ハルキは今更ながら気付いた。
結衣は屈んで、自分のために尽くした陰茎を慈しむよう手を添える。
まだ柔らかいそれを、舌先でそっと舐め上げる。

「うっ、ふあぁ」

感度の良さにハルキは思わず声を上げた。
愛液と精液でべとべとの男根が、舌での愛撫によって綺麗にされる。
次第に本来の姿を取り戻し、硬度が多少復活したことで、手で握り竿を擦って強める。

「回復するのが早いね。やっぱりこういうのって若いからなのかな?」

片手で髪をかき上げ、男の一物に奉仕する姿は絶品の色っぽさだ。

「ここもね……」

陰茎の付け根に下がる袋を、指で優しくくすぐる。
前立腺を走る刺激に、更にも増して屹立と起き上がる。

「うん、ゆっくり上下に動いてる。ハルキ君が今、たくさん精子つくってるのがわかるよ」

結衣はある程度には復活した肉棒をうっとりと眺めた。

「うふふ、今度はぁ、私が我慢できない」
「えっ、ちょっと、待って」
「ダメ、待てない」

にっこり妖艶に微笑み、爽やかに宣告を下す。
肉棒を握ったままハルキの上へ跨り、自分の淫唇にそっとあてがう。
スカートで隠れて見えないが、今にも腰を落とされそうなのがわかった。

「うぁ、ちょ、ちょっと待って」
「ふふ、あん」

結衣はゆっくりと腰を落として、肉棒を飲み込んでいく。

「あっ、あっ、ああぁ、はあ、はああぁ!」

まだ敏感な亀頭が肉襞を分け入り、性器が奥まで結合する間中、声を上げ続けた。
しっかり咥えこんだ後、結衣は腰をひねり、抜いては降ろし、まだ回復途中の男根を責める。
有無を言わせぬまま、徐々に内側で大きさ、硬度が増していく。

「うんん……私、ハルキ君を無理矢理犯してる」
「せ、先生! やぁっ」
「ほらぁ見てよ。私がハルキ君をレイプしてるところをさ。
最初に脅迫なんかして、しようとしてたこと、やられてみてどう?」

結衣は自らスカートの両端を手に取り、結合部をさらけだす。
薄い陰毛の下、がっしりと膣が陰茎を挟み込み、ずるずる引き抜かれ姿を見せていく。
照り輝く肉棒は怒り狂ったように青筋を浮き立たせ、びくんびくんと脈動していた。
はしたなく淫猥この上ない情景だからこそ、目が離せない。
類い稀な美貌と肢体の持ち主が、自らの一番大切なところで男性器に奉仕する。
髪を振り乱し、一心に踊り、男は動くことも必要なしにただただ身を委ねるだけで快感を貪る。
王侯貴族でしか味わえないような退廃的な贅沢。
結衣は下半身を密着させてグラインドする。
根元まで埋め込まれた肉棒も、内側でピッタリと吸いつけられたまま様々な角度から粘膜の摩擦を受ける。
白い尻、肌と肌がしっとりと体温を分かち合うように、
性器も互いに快感を譲り受け、螺旋階段のように駆け上がる。
結衣の膣は恐ろしいほど肉の悦びに満ちて、貪欲に精を吸い上げようとしていた。
いまだに受け取れないのは、ただ相手に弾の準備が出来てないにすぎなかった。

「んん〜。ハルキ君、苦しそう」
「くぁああ、はあはあ、かぁ!」
「でもこれは罰なんだからぁ、苦しくて当然だよ。
ほらぁ、こんなにプルプルの濃いザーメン、外に出しちゃって、ダメだよ。
だから、先生、お仕置きするの」
「ご、ごめん。服と体、汚して、あぁ、ご、ごめんなさい。
別のところに出せばよかったんだけど、気持ち良すぎて、ぎりぎりまでやめられなかったんだ」
「どこに出せばよかったかわかるよね?」
「手でも、トイレットペパーとかにでも……」
「ふふ、ハルキ君、それってさあ……」

結衣は笑顔を浮かべる、
喜びに怒り、楽しさ、全てが混じったように複雑で凄惨な。

「もっときついお仕置きが欲しいって、言ってるんだよね?」
「ええ!? せ、せんせい?」
「私、本当はわかってるよ、ハルキ君の気持ち。本当はハルキ君、根はとっても優しいよね。
だけど奥底は、こんなにイジワルだなんて予想外だったわぁ」
「いやっ! ちょっと、まっ、って!!」

結衣はハルキの両肩を押さえながら、腰を上下させて締めつける。
陰茎が根元から引き抜かれそうなほどの食いつき、
生々しい音がたっぷりと蜜に潤う肉襞によって絡まり、官能に奏でられる。
イニシアチブを完全に握られているため、小休止など許されない。
神経が過負荷を訴え終局を迎えるよう指令を出すが、身体のほうが用意できていないため、
終わりを許されないまま強制的にセックスさせられていた。
すでに本能だけは何回も子宮へ向け射精しているようなさま。
脳髄に直接流し込まれる出口のない快楽は、まさに正常な意識を破壊する拷問だった。

「わかるよ、ハルキ君の気持ち。
好きな女の子にイジワルしたいって、よく言うもんね」

ハルキは天を仰ぎ、荒い息を吐きかける。
天国と地獄の境目を行ったり来たりしている状態だった。

「でも今はダメ。ねえ百戦錬磨なハルキ君なら、私の気持ちがわかるでしょ。
そんなに焦らすとぉ、もっともっとイジメちゃうよ」

ハルキは結衣が何を言って欲しいかわかっていた。
だがしかし、理解できない、わからない。
けれど今は彼女の望むように言う以外、この責め苦から逃れるすべは無かった。

「ゆ、結衣先生の……中に出したい……」
「んん〜、私の中、それってお口で飲んで欲しいってこと?
それとも、このままオマンコに中出ししたいのかな、
それともそれとも、アブノーマルに後ろの穴?」

教職の身でありながら、聞くに堪えない猥褻な台詞。
あまりにもストレートで、だからこそ誤魔化しが許されないことを悟らされる。

「はあっはあ、このまま……先生のオマンコの中で、出したい」
「あっはぁ、すっごくいいよ、その顔、その表情……」

結衣はハルキに身を寄せ、うっとりと耳元で呟く。

「ホントに? 本当に、中出ししたいの?」

ハルキは虫の息のままうなずく。

「あぁ、ハルキ君のおっきいの咥えてるだけでも気持ちいいのに、
このまま熱い精液注がれるなんて……若いんだしきっと量もすごいのよ。
それにとってもねばねばして、膣から子宮までピトッてくっついて離れないわ。
そこからじわじわって来るあの感触、這い上がってくるの。
ハルキ君がまだ射精しながら、硬いので突いてくるから、押し込まれて上がっていくんだわ。
私がいっても止めなくて……ううん違う、そんなのハルキ君には関係ないもの。
そうよ、私がいくいかないなんて、もうどうだっていいんだから、
その時は子宮の奥まで……一面に精液を注いで、遺伝子をばら撒くのが目的なんだもの。
陰嚢に溜まった精子、一つ一つが卵子を追い求めるし、
みんなとっても元気がいいのに、数もたくさんあるから、隠れててもすぐに捕まえるのよ。
お互い何も問題ない健康的な男と女だし、簡単に受精するはずよ。
ああぁ、そうなのよ、私、ハルキ君に孕まされるのね。
はあぁぁ……、こんな立派なもので、何度も奥まで犯られてるもの、
私の体が、もう、もうハルキ君に膝間付いてるし、
きっと子宮の入り口も、通るの邪魔しないように広くなってるのよ。
止めるものなんて何も無いの。わかるでしょ、何も無いのよ。
今更私が妊娠するからやめて、って言っても止めてくれないの。
ハルキ君を止めるものなんて何も無いから。
……うふふ、あはは、優しくて、女の子のことを良くわかってるハルキ君。
さっきは私を先にいかせてから、外に出すなんて、胸の中は罪悪感で一杯になったわ。
我慢させたんだって。
そんな行為の後のお願い、言葉として重みがあるのよ。
だから今はもう逆らえないの、ハルキ君のそのお願い。
もう一度言うけど、ハルキ君を止めるものなんて何も無いから。
何も無いから、止める必要なんて無いのよ。
……ああ、すごいわ。本当に私はもう逃れられないの。
我慢してきたんだから、きっと一回だけで満足なんてしないはずよ。
このまま何回も中出しされるの。
出した後も無理矢理口で奉仕させられて、硬くなったらまた下の口に入れられるんだわ。
もう私が耐えられなくなってやめて、と言ってもハルキ君はやめないのよ。
だって私は逆らえないし、逃れられないから。
そうやって子宮に入りきらなくなるまで何度も注がれて、
器から溢れてくるのを見届けたら、やっと満足するんだわ。
ああぁ、その頃にはきっと私はもう…………」

耳朶をくすぐる妖しい吐息、そして悪魔の囁きは頭蓋に渦巻き連鎖する。
結衣は話しながらも腰をゆっくりとくねらしていた。
大腿の付け根、陰毛から性器まで擦れる刺激はゆるやかながらも、
快楽の水位が上昇するには充分だった。

「……ハルキ君のものになっちゃうのかな」

結衣の一言に、ハルキは冷水を浴びたように思考回路がクリアになり、
ずたずたにされた神経が手を取り合って意識を呼び覚ます。

「先生のこと好きだけど、……別に先生を俺のものにしたいわけじゃない……」
「言うと思ったわ。最初に似合わない脅迫までして身体を要求したのは、
アキト君を奪われたと思った意趣返しかしら?」

ハルキはどきりと胸を突かれる。
内心をこうも見透かされるのは、心臓に悪いどころか返って不気味ですらあった。

「そんなに驚かなくてもね。アキト君とあなた、二人は双子なのに性格は随分違う。
けれど、それはもっと深い底で強いつながりがあるからなのかしら。
でも……難しいことは言いっこなし、こんなの無粋だわぁ。私が言いたいことはひとつよ。
ふふ、昨日アキト君で満足できなかった分を、お兄さんのハルキ君が責任とってほしいのよ。
んふ、ちゅ……ずる、ちゅるる……ん」
「んん〜、ちゅ、ん、じゅ、ふぁ、ちゅる」

激しい接吻に舌が互いに口腔を這い回り、音を立てるたびに二人の間では味覚を快楽に染める。
ハルキは頬を両手で挟まれ、唾液を流し込まれる。
舌先を伝う暖かいものを飲み込み、そのまま絡め捕らえ、今度はハルキが唾液を返す。

「ぁん、ちゅる、じゅるる、んんぅ、はああぁ……。
いいわぁ、すごくいいのよ。もっともっと剥き出しのハルキ君を見たいの、味わいたいのよ!
けどもうそろそろアキト君も起きるから時間よね、残念だわ」
「そうっすね。さすがにこの場でアキトと合うのは本意ではないです。だから……」

結衣の太腿を抱え、そのまま二の腕で持ち上げるように乗せる。
突然地に足が付かなくなるったため、バランスを崩すようにしなだれかかる。
掌を密着した尻に割り込むと、軽々とはいかないまでも持ち上げて肉壷をかき回すように腰をくねらせる。
浮遊感に意識が結合部に向かれ、いつもより感じがよく思えた。
これは結衣も同様だったらしく、甘い声をあげて肉棒への締りのよさが増す。
さらには引き上げて降ろす際には中の物を突き上げる。

「きゃっ、ああぁ!」

などと可愛い声を上げられれば、俄然張り切らずにはおられない。
じりじりとくすぶり続けたものが、いっせいに発火して燃え広がる。

「やられっぱなしは、それはそれで美味しいけど、やっぱりお返ししないと」
「やあぁ、深いの!」

結衣は自重に加えて貫かれ、されるがままに責められる。
こつこつと突き当たる怒張は、申し分ない硬度を具えて柔襞を抉り、深部まで蹂躙をくらわせる。
お楽しみを続けていた結衣は、子宮まで押し上げられる激しい行為にたちまち昇り詰める。

「せ、先生エロいよ。堪んない!」
「はあはあ、ハルキ君のこれでぇ、結衣はエッチにされてるの。ああぁ!」

汗と体液の匂い、髪を振り乱し揺れる乳房は男を惑わす極上の媚薬だ。
肉打つ音に粘液が弾ける音、嬌声に重なって如実に現れる肉体の昂ぶりは狭い空間に響く。
本能からくる快楽の指令を忠実に遂行し、剛直でもって締め上げる肉の隘路を何度も切り開き、突き上げる。
粘膜どうしが生む、愛液にまみれた摩擦は脳髄を蕩かす気持ちよさだった。

「いく! ぐっ、出る! 先生の中に……出すよ!!」

果て無き欲望の井戸を満たすように、牡の愛と情欲が迸る。
睾丸から子宮奥まで怒涛のように走り抜けるエクスタシーに身体を震わせた。

「ああぁあああ、出てる! 奥に当たってるよぉ! どくんどくんってハルキ君の精液!!」
「先生! せんせいが……吸い取ってくる!」
「ああん、腰が、エッチが止まらないの!」

結衣は膣内射精を受けながら、快感のあまり止まったハルキの動きを受け継ぐべく、
肉襞の内、跳ねまわる男根を慰撫するように腰をひねり、縦横に動かした。
すでに何度も達している結衣は、さらに貪欲に絡めとリ、牡の憤りを味わう。

「あぁ! き、気持いい……」
「はあ、はあぁ……もう、終わりですよ」

結衣は勢いの無くしたハルキを感じ、ゆっくりと腰を上げる。
一仕事終えた肉棒が抜け、つつっと糸を引いた先は、出したばかりの精液が内股を伝っていた。
ハルキは本当に自分が出したんだと実感した。
きっと奥まで入りきらなかったものが、こぼれ落ちたのだ。
彼女の身体、奥底まで自分の存在がある。

「ふふ、ん……、良かったよ、ハルキ君。悪いけど先に行くわ」
「あ、ああ、はい。俺は少し休んでから行きます。アキトには……何も言わないでくださいね」
「わかってるわ。これでお互い秘密が出来て、紳士淑女協定成立かな。
そうそう、ちゃんとアキト君は家に帰すから、心配しないでね」

ハルキは今になって、結衣に秘密をばらされたくなければ、っと脅したことを思い出した。
これこそ茶番の始まりだったのだ。
――そもそもハルキには、アキトを巻き込み、不幸になるようなまねを出来る訳が無かった。

*************************

アキトはいつもより寝坊気味に起きた後、
気恥ずかしさの中、結衣に家前まで送ってもらった。
その後というもの、帰ってきてから始終何も手が付かなかった。
ぼうっとしているといつの間にか良い匂いが漂っている。
すでに時計は夕飯の時刻を指していた。
よくよく考えると、朝からほとんど何も口にしてないことに気付く。
早めに食事にありつきたい思いもあり、手伝いに食卓へと降りていった。
少しふらつく足取りで階段を踏みしめる。

「父さん、手伝うよ」
「おお、ありがとう。皿を並べててもらえるか。おわんに小皿と魚皿がひとつずつ」


一家は父子家庭で、家族は父と双子三人だけだった。
ハルキとアキトが低学年だった頃に、両親は離婚してそれきり。
家事もそれぞれが分担し、食事の用意は曜日によって持ち回りをしている。
ハルキが月水金、アキトが火木土、
父は普段仕事もあるため、日曜のみ、もしくは外食といった割りふりだった。


魚を焼いている匂いがする。
パチパチとグリルから脂がはぜる音がしていた。

「了解。今日のメニューは……サンマ?」
「いいやアジだ、いいのが釣れたから美味いぞう。そうだ、皿は二人前でいいぞ」

アキトは皿を並べる手を止めた。
 
「父さん、出かけるの」
「いや、ハルキから電話があってな、今日は友達のところで一緒に食べるそうだ
遅くなったら泊まるかもしれない、だと」

胸にちくりとささる痛みがあった。
もしかしたら、避けられてるのではと思った。
結局は無断外泊になってしまった訳である。
今何も言ってこないが、昨晩は父に対してフォローに四苦八苦しただろう。

「先にほうれん草の胡麻和えを盛り付けてくれ。そろそろ魚も焼きあがる」

父は手際よく炊き上がったご飯と味噌汁を盛り付ける。
準備が整うと、エプロンを外して食卓に着いた。
アキトはいただきますと宣言した後、飯をかきこむ。
父は料理が得意とはいえないが、素朴で素材の良さがよく出ており、美味かった。
これとは反対に、凝った料理をするのがハルキだった。
時折聞いたこともない名前の料理を作っては、試食まがいの夕食になる時もあった。
だが失敗作はほとんど無く、どれも一流のシェフの腕並み拝見とばかり美味く、
和洋中、なんでもこなす腕前とレパートリーの広さは唖然とさせられる。

対してアキトはどうにも不器用で、手料理などとても出来ず、
前日のあまり物と出来合いの食材を用意するのがせいぜいだった。
最近ではハルキのほうが気を利かし、最低一品は二日分作り置きできるメニューを仕立てていた。
料理の腕を父を十とした場合、ハルキは二十も三十もあるだろうが、アキトは五、六が良いところだ。
かわりに家計簿担当がアキトだった。
日用品のために作った家族共用の財布に、レシートと合わせてパソコンに打ち込み、残金の確認をする。
ハルキのたまに買う高級食材は頭が痛くなりながらも、食卓を彩る美味い料理には承諾せざるをえない。


食べ終わった皿を洗い場へ運ぶ。
アキトは居間でソファーに座りながらニュースを聞き、将棋雑誌を読みふける。
背後からカチャカチャと食器を洗う音にも、一抹の寂しさを感じた。
足が二本の椅子はそもそも成り立たないが、それに似た不安定な気分。
我が家のコメンテーターはどこへ行ったのやら、アキトはそう思わずにはいられなかった。

「アキト、終わったら一局指そう」
「うん、いいよ」

テーブルに将棋盤と駒を用意して待つ。
アキトは地区強豪である父より、幼少のころから将棋の薫陶を受けていた。


すでに白髪が見える父はの老いを一番感じるのは、皮肉にも将棋からだった。
父の読みの深さ、広さを知ったとき、アキトはすでに勝てるようになっていた。
今や片手間の読みでも、充分互角に戦える。
向かいに座り指し始めるが、アキトは将棋とは別のことを考える。
それは昨晩の行為についてだった。
あれは本当の出来事だったのか、今でも疑問に思えてならない。
夢のような、と言えば確かにそうだが、それより現実味を薄くしているのは、
たとえて言うなら階段を上り始めたらいきなり最上階まで来ている突拍子のなさだ。
だが現実を受け止められないほど自分は子供ではないし、記憶力を疑うほど耄碌していない。
五感の全てが覚えてる。
とても気持ちよかった、あの瞬間は幸せだった。

局面は中盤を迎える。
駒組みは両者とも順調だが、上手い妨害にアキトが一歩もたついてる。
ここで落ち着いて指せれば優位は確立できるが、今の父にはそれができない。
遊びの対局と言ってしまえばそれまでだが、相手が見せた隙を、エサを我慢強く辛抱できない。
アキトは年配の人と指すことは何度もあるが、
不思議と年を取ると、性格とは反対に将棋は落ち着き、
そして我慢、辛抱といった忍耐強さが失われていく気がしていた。
粘り強さ、柔軟性が無くなっていくのだろうか。手短な勝利の誘惑に、耐えられなくなるからだろうか。
父の飛車が相手陣地へ成りこむ。
自陣にわずかな隙を残したままであることが、けしてわからない腕前ではないはずなのに。

この相手陣地に切り込む瞬間は瞬間は幸せだろう。
だがアキトにとって多少の駒の損失はどうでも良く、竜の攻めを封じ、
退路を断って働きを失わせれば、先ほどまで飛車よって防がれていた攻め筋が見える。
ここからが反撃の狼煙をあげる時だった。
アキトは落ち着いて着実に自駒を、父の王将へと寄せていく。

あの瞬間は幸せだった。
だが、最上階に上ってしまい、自分の立ち位置が見えない。
好きだと言えた、キスもしてセックスもした。
その先が見えない。あの時我慢していれば良かった気がする。
引き返す道も無い。もっとも仮に過去へ返っても、また同じ結末だろう。
次の一手が見えなかった。

「うむぅ……負けた。防げなかったかぁ」

この対局はアキトの勝ちになった。


********************

ハルキは夕食の食材を買出しに、スーパーへ繰り出していた。
片手にはぶら下がるように、女性が腕を巻きつけている。
主に主婦が行き交う中、妙に馴れ馴れしい二人の空間があった。

「あの、ちょっと離れませんか」
「またハルキ君の手料理が食べられるなんて思わなかったわ」
「まあそれくらい、泊めてくれるお礼に……もう、いいですよ」

明らかに離れる気の無い彼女の態度にハルキは諦める。
残った片手で、目的の品の鮮度、質を見定める。
充分合格点の物を、彼女の持つかごへ入れた。

「ふ〜ん、私にはどれも同じに見えるけどな」
「葵さん。せめて消費期限くらい見てください。生ものは最低限、腐ってないかくらいは……」

適当にトマトを取って眺めてる葵に、
ハルキは聞き入れてもらえないことをわかりながらも優しく忠告する。

********************

葵はハルキが昔付き合っていた同級生、名前は茜と言う、の姉である。
キャリアウーマンで一人暮らしをしているのだが、
たまたま茜の母が風邪で寝込んだときに、見舞いで実家へ戻っていたのがハルキとの出会いだった。
ハルキが父子家庭で料理もできると知っており、茜は夕食を手伝ってもらおうと呼んだのだ。
家庭科の授業でしか包丁を握ったことのない茜が、
ちょっと彼氏にいいとこを見せようと一夜漬けで復習したのがそもそも間違いだった。
料理の腕に関しては家庭の内情からくることもあり、得意げに自慢することでもないとハルキは常々思っている。
普段なら陽気に進んで話のたねにするような性格だから、茜が相手の実力を見誤るのは無理もない話しだった。

最初は手伝う気だけだったハルキだが、段取りのまずさ、危なっかしい包丁さばき、調味料の匙加減は適当と、
見るに見かねたが、一から指導するには時間もなかったため、ほとんど全て作るはめになった。

豚肉とキャベツをさっと炒め、塩味しかしない野菜炒めを一緒くたにして、
甘味噌と豆板醤をいつもより少し多めに入れて味を調えた後、片栗粉でとろみをつけてホイコーローに再利用する。
水加減を失敗して、芯の残るご飯を病人に食べさせるなど、虐待もいいところだ。
勝手に拝借したホタテの缶詰をほぐし、適度な大きさに切った白菜と冷蔵庫にあったエビとともに、
鶏がらスープに塩味をきかせてご飯を煮立て中華風お粥を作る。
味が濃すぎた味噌汁は調整が難しく、汁物としてお粥とすこしかぶる所があったため素直に諦める、
残った豆腐で、今日の味付けはいくらか濃い目だと思い、さっぱりと卸したショウガを乗せて冷奴にする。
付け合せの醤油に少々の柚子、といきたいところだが無いのでレモンで代用する。
ハルキはあともう一品が欲しかったが、食材も時間も無かったことを悔むが致し方なかった。

一部始終を心配そうに見ていた茜の家族は、出来上がってくるものに戦々恐々していたが、
思いのほか食欲をそそる香りに、いつもとは違う料理ながら予想以上にまともな見た目に驚く。

「どうですか。お口に合うかどうか」

全員がおそるおそる蓮華を口に運ぶが、コクのある味わいに舌鼓を打つ。

「うん、美味しいよ。いやはや茜の様子があれだっただけに驚きだよ」
「お父さん、一言余計よ」
「これなら最初からハルキ君に任せたほうが良かったわよね」
「だいたい茜姉ちゃんに任せるなんて、最初から無謀だって言っただろ。本当にハルキさんには感謝します!」

葵は茜をからかい半分、ハルキへの賞賛半分で追い討ちをかけ、気難しい弟の碧はあっさり懐く。

もう一人、食事の準備が出来たことで母親が寝室からおりる。
体調は良いそうで、娘のお客という手前、挨拶がてらに食卓にきたそうだった。
ハルキは本心、いらぬ気をつかわせたようでばつが悪かった。
せめてもの罪滅ぼしと思い、てごろな果物を用意する。

「りんごもむきますね。風邪ならお粥と果物がいいですよね」

と言って、するするとボウルの上でりんごの皮をむく。
食べながら全員が思うことは、異常に上手にむくハルキに対する驚きだった。
たかがりんごの皮むきにすぎないが、
するするとボウルに途切れることなく流れる薄い皮には時の重みがあった。
最後にはきれいに切り分けて皿に盛って、母の前に出す。

「すごいわ、ほんと茜にも見習わせたいわ」

にこにこしながら母親は感想を述べる。

「りんごはすり卸しましょうか?」
「いえいえ、だいぶ良くなりましたし、そこまでお客さんにお手間とらせてはいけませんわ」
「お粥、熱いですから」

そう言ってハルキは新たに器に盛ったお粥を手に取る。
蓮華で一口掬い取り、自らフーっと息を吹きつけ冷まして母の口元へ差し出す。
妙に甲斐甲斐しい世話の焼き方に、両親は顔を見合わせる。
普通に考えれば、少し行過ぎて奇矯な感じがするが、
せっかくの好意を無下にするわけにいかず、受け取ることにする。
茜からハルキの家庭環境を聞いていたため、もしかしたら母性への憧れだろうかと思い、
この行為にも、もの悲しさと一緒に同情の念を禁じえなかった。

「ん……、とってもおいしいわ」
「良かったです。たくさん食べて早く元気になってください」
「あらまあ、ありがとうね。もう大丈夫よ」

屈託なく、打算のないハルキの言葉は心に響くものがあった。
全てを知るものがいれば、感動的だったかもしれないが、
そんなことはどうでもいい人間がこの場には二人いた。

「ああ〜ん、ハ・ル・キ・君! 私には? 私にもあ〜んして欲しいな」
「お姉ちゃんなに寝言言ってるのよ! お母さんも素直に受け取らない!
なに顔赤くしてるのよもう〜!!」
「おいおい茜。熱があるから、顔が赤いのも当然だろ」

ハルキにしてみれば、そもそも母が風邪のため呼ばれた経緯があったため、
当然の行動だと思っていたが、これが茜にはいたく不評だった。
そもそもハルキは何かにつけ固執しないところがあるため、
彼女にあれこれ言わないし、無理に付き添わせたり、連れまわしたりしなければ、
彼女の要求を少々無理してでもかなえるといった気概もそれほどなかった。
それが母に対して一種執着を見せるような振る舞いは、女のプライドを傷付けるには充分だった。
家族として、恋人としての両方の面目が形無しと相成った訳で、
結局茜と別れる原因になったのも、この日があったのだろう。
別れ際に、マザコンの一言が添えられていた。
『母がいないのにマザコンとは、これいかに』
言われた本人は、まずショックよりこう思った。

*****************************

「本当、ハルキ君に番号教えておいて良かった」
「すみません。頼れるのは葵さんだけだったもので」
「いいわよ。こうして買い物に出かけて、ご馳走してくれるわけだし」

なぜあそこまで支離滅裂な行動をとったのか、
とにかく冷静になるためにも今日は家に戻りたくなかった。
アキトの顔を見るのも非常に気まずい。
だが頼めそうな者は友人知人の内、学園関係者を除くと葵以外いなかった。
ハルキは女性の一人暮らしに泊めてくれと頼むのは気が引けたが、
電話で頼んでみれば、あっさりOKをもらえたばかりか、
こうまで歓迎され懐かれるとは予想外だった。誤算と呼んでもいいかもしれない。
なぜなら葵には付き合ってる彼氏がいるはずだからだ。

電話する際にも、その件が問題だったが、逆にお願いしやすい要因でもあった。
ただ泊めてほしいだけで、勘違いされたくはなかったからだ。
今の喜びようを見ると、一言釘を刺したくもあったが、
同時に水も注すことが目に見えたため、やめておくことにするしかない。
今更あるじの機嫌を損ねて追い出されるのは困る。

「葵さんは、苦手な食べ物とかありましたか?」
「うんん、特にないよ。強いて言えば、カリフラワーかな。
あのぼろぼろした食感と、よくわからない味が苦手だよ〜」

ハルキは葵の子供っぽい口調に苦笑する。
そもそも葵はヒールの付いたブーツを履いても、まだ頭がハルキの肩に届くかどうかくらいである。
これでオフィスレディとしてスーツ姿に身を固め働いてるとは、なかなか想像できないでいる。
だが買い物を終えマンションに戻ると、やはり給料をもらう身であることを実感し感心してしまう。
椅子やテーブルは言うに及ばず、カーテンや小物、調度品それぞれが部屋に気品を添える。
見事なまでにシックなアンティーク調の家具で統一され、
趣味の良さは居心地良く、住む者を落ち着かせ癒しをもたらす。

「はー、これは……」
「どうしたのハルキ君」

葵の一言に、ハルキは自分が女性の部屋を不仕付けに見ていたことを反省する。

「こういうところで食べるなら、もう少しメニューを考えれば良かったかなと思って。
前みたいに、家庭的な雰囲気を考えてましたから、今日は大衆的な料理……」
「くっ、ぷぷ……あはははぁ〜、くく」

葵は突然笑い出す。

「いやごめんね。別にハルキ君を馬鹿にした訳ではないのよ。なんだか目の付け所が違うと言うかさ。
たぶんね、女性の部屋に入って一番にそんなこと言うのは、ハルキ君以外にいないよ。
色々見渡して言う感想がそれなに? あは、あはははぁ。
実にハルキ君らしいんだろうけどさ。一人暮らしの女性の部屋に招かれてそれってさ。
前に実家に来たときもそうだけど、本当にもう大物だよ」

褒めてるのか貶されてるのかわかりかねるが、特に不快に感じることもなかった。
ハルキにしてみれば、どれも率直に思った行動であり言動だったからだ。
自分自身に対して偽ることなく暮らせることは、充分に誇れる美徳だった。

「それじゃお願いね。台所にあるもの、自由に使っていいから。
私はお風呂の準備して、くつろいでるわ」
「はい、できるまでゆっくりしてください」

一軒家である家のキッチンより狭いかと思ったが、さほど変わりはなかった。
ハルキは特別なものを作ろうなどそんな気はさらさら無く、
ご飯にアジとサケのフライ、付け合せにキャベツの千切り、
コーンスープにトマトと、前言した通りシンプルで普通の料理だ。
手早く仕立てては皿に盛り付け、テーブルに並べていく。
それでもいくらか、ハルキなりのこだわりと手間が随所にかかってる。
全て並べ終わり、ソファーでくつろぎながらテレビを見る葵を呼ぶ。
葵は椅子に座り、目を輝かせていただきますをした後、真贋を見極めるように凝視して口に運ぶ。

「うんうん、美味しい美味しい!
それにしても、ちゃんとお魚を三枚に下ろせるなんてすごいわね」
「はあ、そんなもんですかね」
「そんなものよ。きちんと小骨も取り除いてあるし。
このタルタルソースも美味しいわ。一から作ったのよね?」
「いえ、別に。卵をゆでて、スライサーで縦横に細かく切った後、
マヨネーズを主にみじん切りした玉ねぎ、パセリと混ぜて出来上がりです。
あと……たまにレモン汁とかピクルスも入れますけど」
「一から作ってるじゃない」
「マヨネーズは市販ですよ」
「……もしかして普段はマヨネーズも作ってるの?」
「えっ……作らないんですか?」

葵は呆れた風に肩をすくめる。

「あ〜あ、茜も馬鹿なことしたものね。ハルキ君をふるなんて信じられないわ」
「そうですかね」
「そうよ! この際言わせてもらうけど、あなた自分の価値を全然わかってないわよ。
イケメンで背はそこそこ高い、そのくせ妙に偉ぶったり気取ったりしない。
おまけに自然体で優しいのよね、だけど嫌味なんてないし、押し付けがましくもない。
今日みたいにおいしい手料理で恩返しする義理堅さなんか、なかなかお目にかかれないわよ」
「うんと……そうではなくて、やっぱり相性が大事だと思うんですよ。
葵さんは俺のこと褒めてくれますけど、相性が悪ければそんなこと、どうでもよくなりますよ」
「あらら、意外にドライな意見ね」
「えっと、生意気なこと言ってすみません」

この場でようやく見せたハルキの焦りと言うべきか、
少し言い過ぎたことに対する、こんなつもりではなかったと思う表情に、
葵は僅かながら意地の悪い喜びを見出す。

「ふっふっふ、まあいいわよ」

にこやかに笑って流し、食事に専念する。
泊めてあげるという立場である自分の優位を確認して、
それをどう活かすか考えながらの中、とても美味しくいただけた。

「……ん、ご馳走さま、たいへん美味しゅうございました」
「お粗末さまでした。俺、食器を片付けますから」
「よろしく〜。私お風呂に入るから」
「ええ、わかりました」
「ハルキく〜ん」

葵は振り返って小悪魔的な表情を浮かべた。

「はい?」
「覗いてもいいのよん」
「遠慮しておきます」

心の底からハルキはお断りをしたが、
皿洗いをしながらシャワーの音が聞こえると鼻歌でも歌いたい気分になる。
それは性的な意味合いではなく、
好ましい人物のためになる嬉しさ、
人としての触れあいの暖かさからだった。
とはいえ、これでアキトが居ればと少し感じたのも、また事実だった。

「ちゃんとメシ食ってるかな。まあ親父の当番なら最低限大丈夫だろうけど……」

洗い終わった皿を拭いて、乾かすため食器入れに置く。
することも無くなったので、ソファーに腰を沈めながらコンポに入っていたCDを聞く。
ゆったり流れるどこか聴いたことのあるクラシックのメロディ。
どこか気を張っていたのは否めないらしく、ハルキはうとうとしながらどこからか意識を放棄した。
そういえば、昨日から寝不足気味だ。


音楽がかかってるためか、浅い眠りの中、情景が浮かぶ。
まだ両親がそろって、そしてハルキも、アキトも小さいころの――
――ああ、これは夢だ――



両親が離婚した原因は、はっきりしたことは伝えられてない。
推測ならいくつもできるが、性格の違いがあるのは確かだった。
父は朴訥とした堅実で実直な人、対照的に母は子供心にも美麗な容姿に奔放で社交的だった。
ことあるごとにめかしこみ、外出する母を父はあまりよく思ってなかった。
だが夫婦仲は悪くなかった、と言うよりも良かったように見えた。

離婚する一つ前の季節、ハルキは夜に起きて喉の渇きに台所へ向かう。
まだ明かりが点いてることに訝ると、話し声が聞こえた。
土曜日の夜、晩酌をしたまま寝室に来ない父を母が呼びにきたらしい。
今ならわかるが、これはきっと夫婦の営みがある日だったのだろう。
聞き耳を立てるつもりは無かったが、喉を潤したい気持ちと、
邪魔をしてはいけない気持ちから迷っていると結果的に盗み聴きすることになった。

「ねえ、そろそろ……一緒に寝ませんか」
「いや、まだ……」
「はぁ……」

母も軽くグラスを呷り、溜め息をついた。

「本当にその気が無いんですね」
「ん……その……別にお前に不満が有る訳ではないんだ」
「それなら、双子なんて、産まなければよかったわ」

ハルキは母の言葉を聞いて、頭を殴られるような衝撃を受けた。
言葉の意味はわかったが、なぜそういう結論が出たのか理解ができず混乱する。

「天から授かったのだから、そんな風に思ってはいけないよ」
「でも私、まだ子供は欲しいですし……それに……」

そこから先はとても聞けず、寝室へ引き返す。
扉を開き、アキトの姿を見るまで震えは止まらなかった。
何事も無いように寝息を立てていることに安心する。
あの会話を聞いて、アキトは死んでいるとか、
存在という火が消えてしまってるのではないかという不安に塗りつぶされていた。
アキトの手を取り、胸にしまうようにして眠りについた。
子供心に、兄としてアキトを守ると固い決意を胸にしながら。

二人の会話は経済的事情から子作りを拒んだということなんだろと、
そう理解できたのは高校生に入学した頃、
離婚する数年前から、不況のあおりで経済的に苦しかったことを父はぽつりと漏らした。
兄弟の成長を見ながら感慨深く言うのに反比例して、ハルキの内で心が冷えていくのを感じた。
自分を、アキトの存在を否定された理由が、そんなものだったのかと。



「……――ハルキ君、はいはい起きてね」
「……えっ……、ああぁ、夢か……だよな」
「お取り込み中悪いけど、お風呂すいたわ。なんだかあまり良い夢じゃなかったみたいだけど?」

ハルキは目を覚ました後、今しがた見ていた夢を思い出す。
確かに良い夢ではなかった。
座った姿勢で眠っていた所為か、体が凝り固まっている。

「そうですね。起こしてくれてありがとうございます」
「はい、それよりも着代え渡すわ」

手渡された物を見て、ハルキは途方に暮る。
ゆったりして着られるのは間違いないが、どう見ても女物の寝巻きである。
チャイナドレス風の可愛らしさ抜群の代物。

「あの、このまま寝ます」
「ちなみにどこで寝るつもり?」
「ソファーですけど……」
「はい、ぶっぶー」

葵は腕をクロスしてバツ印を作り、クイズ番組よろしくハズレのブザーをまねた。
人差し指を奥にあるもう一部屋にさす

「正解はあそこの部屋のベッドよ」
「……」
「そういう訳で、一日中着たままの服で寝ることは許されないのよ。わかった」
「…………」
「感激して声も出ないってことよね」
「そうですね。お風呂お借りします」
「あ、それと下着は洗濯しておくから籠に入れておいて」
「はい」

ハルキはまな板の上にのった鯉、努めて冷静というより、返って意識することがなくなった。
こだわりの無さができる境地だった。人はこれを自棄、やけと言う。
脱衣場で裸になり、下着をかごに入れるが、これこそ代えがないことに気付く。
ここまできて引き返すわけに行かず、バスルームに入りシャワーを浴びる。
体を洗って湯船につかると、脱衣場に葵が入って来た。
曇りガラス戸の向こう側だからお互い見えることはない。

「湯加減はどう?」
「丁度良いですよ。それよりも俺、代えの下着が無いので、洗わなくていいですよ」
「乾燥機あるから、明日までには乾くわよ」
「いや……それでも今日は……」
「別にいらないでしょ。わぉ、これがハルキ君のトランクス〜、んん、匂いかいじゃおうかしら」

ハルキは頭痛が起こりそうな気分だった。
肌着も付けず寝巻きを着用してもかまわないということだろうか。
下手に突き詰めると、女物の下着まではかせられかねないので黙っておくのが懸命策だった。
いっそのこと自分が変態なら、今の状況は極楽そのものだろう。
ああ、まともな自分がにくい。

風呂から上がり、バスタオルで体を拭いて、少しの逡巡の後に用意された服を着る。
テーブルでワイン片手に待っていた葵は、ハルキの姿を見て目を輝かせる。
この時になって前から疑問に思っていた、女性がわざわざきわどい姿をしていながら、
エロオヤジの視線が嫌だという気持ちを身をもって知った。これはきっと理屈ではないのだと。

「よく似合ってるわよ。まあ一杯付き合いなさいって」
「未成年に……いえ、頂きます」

それなりの値段なのか、丁寧にワイングラスに全体の三分程注がれる。
ハルキは台座近くを摘むように持ち、軽く揺らして香りと共に一口味わう。
堂に入った楽しみ方に、葵は興味津々の目で眺める。

「その、親父が飲ませるんです。
もし料理人になるなら、ワインと日本酒くらい知っとけって、晩酌にちょくちょく」
「へ〜、ハルキ君、料理人になるの?」
「そこまで決めてませんよ。今のところ趣味みたいなものです」
「いける口?」

ハルキはあくびを噛殺す。

「ぅ……全然。アルコールの匂い嗅いだだけでフラッと来るくらい弱いです。
本当に一杯が限度なんですよ。
……ん、それより、今日はもう寝たいですけど、いいですか」
「えっ、もう! まだ心の準備がちょっと……で、でもハルキ君がそんなに積極的だなんて……。
本当のこと言っちゃうと、少し酔わしたほうがいいかなって思ってたぐらいだし。
弱いなら飲みすぎるとダメよね。後々楽しめなくなるもの」

寝酒も入って、夢うつつのまま聞き流す。
今度は先ほど我慢したあくびがでる。

「ふはああ……わがまま言ってすみません。今日起きるの早くて、それに明日朝食の準備しますから……」
「う、うん、そうね、ありがとう。
さあ、こっちよ。わあぁ、何だかどきどきする……」

葵はあまりにも落ち着いた彼の様子に、自分がお姉さんであることも忘れそうだった。
せめて年上の格を見せようと、ハルキの手を握って部屋まで先導する。
明かりを点けてみれば、普段の寝室まで違った物に思えた。

「ここよ……電気はどうする」
「ええっと、できれば消してもらえれば」
「うん、いいよ」

優しく気が利いて、若くかなりの男前の持ち主。
茜が言うには女性経験が豊富らしく、別れた後を察するに後腐れのなさも特筆に価する。
およそ遊びをするに、これほど適した男はいない。
葵は広がる妄想と言う名のパラダイスに浸る。

(ああ、でも私の魅力に取り付かれたらどうしよう。
『葵さんは理想的で最高の女性です』、とか言われたら、
ちゃんと私にはお付き合いしてる彼がいるって言わなくちゃ。
あの時一夜だけがあなたの恋人だったのよって。
うんうん大丈夫、ハルキ君ならいい相手が見つかるよ。
でも逆に私が彼の魅力に……って、そうなったら……。
茜があっちも優しくて上手って言ってたもの。
ううん、ダメよ葵。今日、今日だけなんだから溺れちゃダメ。)

葵は電気を消して、ベッドにもぐり込む。
ぬくい体温を分かち合う暖かみ、すぐ隣には呼吸音が聞こえるほど接近している。
だが待てど暮らせど、ハルキは葵の身体に手を伸ばすどころかキスの一つもしない。
訝りながら様子を窺うと、そこにはすやすやと心安らかに眠る彼の姿だった。

朝から根こそぎ吸い取られた所為もあるかもしれないが、
そもそもハルキには最初からそんな気はなかった。
こうして方法は違えど、姉妹とも同じ男によって女のプライドを砕かれたのであった。


********************

夜遅く、ハルキは一人布団に入って昨夜の行為を思い出す。
鮮明に残る記憶は、触感や匂いを逐一刺激して呼び覚ます。
昨日あれだけしておきながら、己の分身がいきり立つのを抑えられない。
勃起した男根を握り前後にしごいて、場面を思い出しながら自慰をする。

********************

結衣は布団を出して敷き始める。
ほとんど全裸に近い格好で、目のやり場に困る中アキトは手伝う。
たいしてすることが無いとは言え、気持ちだけでも汲んで欲しかった。

「アキト君、私だけなんてずるいよ」
「えっ?」
「ほらほらぁ、私が脱がしてあげる」
「い、いいですよ」

などと言っても、止めるような人ではない。
結局は全て脱がされ、お互い産まれたままの姿になる。
抱き合うようにして柔らかな布団の上へと転げ落ちる。
キスをしながら下の秘唇へと愛撫するように指でなぞる。
結衣もお返しとばかりアキトの男根を握り、ゆっくりと擦り始める。
静かに屹立とそそりたつ存在感を確かめながら、体の芯が火照り熱を帯びる。

「んはぁ、ちゅる、ああっ」

敏感な肉芽を擦られて、結衣はかるく仰け反る。
指に滴る蜜を、さらに探索するように二本の指で秘所を開いては差し込む。
膣の内側をくすぐり、縦横にかきまわす。
結衣も男根を両手で包み、丁寧に捕らえたまま撫で回す。

「やあぁ……そんなところ」
「はあはあ、ん、先生!」

弛緩して力の抜けた結衣を仰向けにして、その上に覆いかぶさる。
それでも結衣は肉棒から手を放さないまま、刀を納める鞘のようにきゅっと握り締める。

「こんなに逞しいの……」

結衣は脚をM字に開きながら、秘所を隠そうともせず向かい合う。
握り締める男根の先10センチ程には、待ちわびるように肉壺が濡れていた。
アキトは挿入したくて堪らないとばかりにそこを凝視していた。
しかし急所を握られ、押すことも引くこともままならなかった。

「じっと見つめて……目だけで、犯されてるみたい」
「くぅ、先生……手を放して。入れさせて欲しい」
「入れるだけ?」
「入れたら……動いて先生を気持ちよくさせたいんだ!
「アキト君の逞しいので、私が気持ちよくなるのね。でも、それだけで終わりじゃないよね」
「そうです。今度は先生に……出して、思いを伝えます」

抱き合いながらも下半身は別個の生き物のように動き回る。
深々と貫き、女芯を抉り、掘削して蜜の源泉を探る。
怒張によって押し広げられた膣は、充分に潤う果肉で優しく淫らに迎え入れた。
子宮まで叩かれるような激しい律動、貪るような牡の性行為に結衣は忘我のまま受け入れる。

「あっ、ああ! すごいよぉ。私の体も、アキト君とセックスしてるって、悦んでるの、
わかる、わかるよね。もう奥までいっぱい……届いてるから、感じる、隅々まで感じるよ」

アキトは豊満な美乳に顔をうずめてほおばる。
硬くしこる頂点に吸い付きながら、絶えず腰は律動する。

「ああ、そう、そのまま……おっぱいイジメたまま犯して!」

結衣はアキトの顔を抱きしめる。
幸福な窒息のまま、しっかりと彼女の望みをかなえてあげた。

「ああん! ぴったり、アキト君のでぴったりにされるよ。
アキトくんの、逞しいペニスでぇ、結衣のオマンコがぴったりにされちゃう。
何度もアキト君ので犯されて、離れられなくなっちゃうよ」

びくびくと時折のたうつ女体を押さえつけ、
肉槍によって秘唇を穿ち、奥底まで己の存在を誇示する。
重なる肌の密着感にも増して、媚粘膜の愉悦は脳髄を蕩けさせる気持ちよさだった。
すでに全身から、限界が近いことを悟る。

「ああぁ! 最後に、アキト君の精液でぇ、子宮までぴったりにされちゃう。
さっきのだけでいっぱいなのに、またアキト君が出す、射精するから、
入りきらないのにぴったり塞がれて、押しこまれるの」
「イク、いくから、中に出すから、受け止めて!!」

腰を引き付けるように押えながら、欲望の塊を解き放つ。
中心をひた走る膣内射精の快楽、子宮奥へ注入する生殖本能の歓喜。
結合部を通して押し寄せる牡の咆哮を、性器から子宮へ浴びながら結衣はたちまち達する。
どこかへ飛ぶ意識の中でも、より深い快楽と精を貪る。
膣壁が咥えこんだものに対して搾り取るように蠢き、腰を浮かして恥骨を擦りつける。
積極的な牝の受胎請いに、若者は射精しながらも小刻みに動いて、刺激により持続的な種付けを繰り返す。

「ふぁあ……アキト君の……止まらないよぉ」

量も濃さも、先ほどと比肩しうるほどのものを余すところなく受け止める。
思う存分に出し切ったことに満足したアキトは抜こうとするが、
結衣は脚を胴体に巻きつけて離れることを許さなかった。

「ダメ、抜かないでこのまま……」
「んっ……、はあはあ、せ、先生……わかりました」

白桃のような美乳に顔をうずめて乳首へ吸い付く。
早く回復するように、腰を緩やかに動かした。
絡みつく太腿の密着感に、中のものは否応なしに屹立し始める。
自分でも驚くほどの早さだった。

「はあはあ、もういけそうです」
「んん……、私はいつでもいいよ。アキト君の、好きにしていいんだし、ね」
「先生! 俺、嬉しい」

アキトは緩やかながら律動を開始し、戯れのように接吻する。
身長の関係で、結合したままだと、腰を持ち上げるような形になる。
口を吸いながら二人の睦みあいの箇所が見えるとあって、興奮の度合いが増していく

「はあぁ、アキト君とセックスしてるところが見えるよ」

目をきらきらして見る結衣に、アキトは俄然張り切る。
力を込め垂直に、重力を友にしてリズミカルに突き降ろす。
美味しそうに蜜を垂らす孔は、とびきりのご馳走への期待にあふれていた。
亀頭は絡みつく柔襞に蕩け、竿からは追随するように締め付けられて一層屹立する。

「もっと見せますよ。先生のエッチなところ!」

そう宣言した後、結衣の両足首を掴んで引き離し、頭まで布団に押し付ける。
窮屈な姿勢のまま、肉と肉が打ち合い音が鳴る。
結衣は抱きつきながら、足りない物を埋め込まれる充足感に満足しながら、よりよい高みを目指す。

「あっ……すごい。んぁあ、私、止まらなくなっちゃう」
「先生のここ、俺も気持ち良すぎて、止まらない」
「ねえアキト君、結衣、んぁ、結衣って名前で言って」
「ゆ……結衣、結衣!」

身体全体で結衣を覆うような格好でセックスする。
大柄で見事な肉体が快楽に打ち震えるさまは征服感を煽り、
悦びの涙に濡れた顔は多幸感に包まれ、男冥利につきた。

「はん! ああん! 結衣のオマンコにずんずんくるの!
アキト君の精子たくさん子宮にあるのにまだ欲しいよぉ!」
「んっ! はあ! いい、もっともっと言ってください!」

結衣は自ら脚を抱えて、恍惚の表情で生殖器の交合を眺める。
そそり立つ一物が尻に吸い込まれるたび、子宮奥を通じて衝撃が走り抜ける
激しい腰の動き、怒張が武器なら止めを刺すために加速する。
男に捧げられた淫らな祭器を満たすのは、あと時間の問題だけだった。

「あう! やあぁ! 激しい!」
「ふん、ほら、もっといきます。エッチな結衣のために!」
「ああぁ! アキト君のおっきいオチンチンがぁ、結衣のために、オマンコ何度も出たり入ったりして、
気持ちよくさせてくれるの! 先生が生徒の咥えこんで、いやらしくいっちゃうの!!
「はっぐぁ!! ぁああおお……うぅ!!」

睾丸から込み上がる波、濃密な種は切そうに震える胎内へと噴出する。
最奥まで肉の鉄槌を打ち突け、子宮口は亀頭によって純情に開けられたまま、
鈴口から迸る精液を縦横に飛び散らせていく。
結衣は胎内へと漲る活力を受け、
膣全体がびくびくと貪るように吸い取り、余すところなく射精の悦楽を味わう。

「出てるぅぅ、熱いのがたくさん出てるよぉ……。
奥まで……届いてるの、濃いの中出しされてるぅ」

アキトは苦行の形相でのけ反りながら、結合部から感じる快楽に酔いしれていた。
美乳が甘い吐息と共に上下しながら倒れこむ男の顔を受けとめた。
瑞々しい女体に抱きつきながら、ずぷずぷと音をたてながら腰を動かした。
結衣は子宮深くまでうねるような噴流と、さらに奥に進もうとする怒張の進入に身体を震わせる。
成熟した牝の肉体が、若く荒々しい牡の行為によって屈服し、種付けされていた。
熱く新鮮な生命の源は、結衣の卵子との邂逅を目指し、膣奥から何度も投下される。
三度目となる膣内射精は妊娠から逃れられないと思われるほど、圧倒的な物量を誇っていた。

「あっはあぁぁ……アキト君、抜いて抜いて」
「は、はい」

アキトは余韻も覚めやらぬまま、密着させていた腰を上げた。
すでに戦を終えた肉槍は、ぬらつく姿を見せる。

「すぐに、元気にさせてあげる」
「えっ、せ……うぁああ」
「んんん、ちゅ、まだ、んはぁ……まだ欲しいの」
「も、もう……くぅっ」

もう立つわけがないと思っていたアキトは、貪るように吸い付く口技におののく。
結衣は裏筋から舌先で突っつき、玉袋まで転がして催促した。
自分でもままならない精神とは裏腹に、身体はきっちりと反応を示す。
少しずつ鎌首をもたげる様子に結衣は悦びを隠さない。
いきなりディープスロートで喉奥まで咥えて濃厚な奉仕を始めた。

「はあ、はあ、はあ、だめ……です」
「ちゅるる、ん、ん、じゅずず、ちゅ……んんはぁ! もっとぉ」

微にいり細にいり、奉仕は続けられる。
出る物など無いと思われるが、それでも隆々と勃起していく。

「あうっ、ふぅぁっ……くぅ」
「うふふ、すごい立派だわ。もうこんなになってる」
「やぁぁ……」

女性のように喘ぐアキトに可愛らしさすら漂う。
攻守は逆転して、今度犯されるのは男の方だった。

「ん、ちゅる、んん。はあぁ……今度はまた上のお口に飲ませて」
「はあっ、はあっ、もう……」

根元まで強く吸い、戻しては敏感な溝を舐めてまた咥える。
間断のない奉仕に男根は弄ばれ、舌の上でびくびくと跳ねた。
もう終わりが近いと見え、今度は竿を握って前後に擦り、付け根にある陰嚢を舌先でくすぐる。

「せ、先生! もうダメ!!」

アキトは手でしごかれながら射精した。
亀頭の先で口を開けて待ち受ける結衣へと、白く濁った粘液を飛ばす。
何度目かわからない射精だったが量も勢いもあった。

「あぁん……ぅん、ふふ、さすがに色が薄いよ。だけど……」

ぺろりと容易く飲み込んだ。
挑発的な笑みが、美貌を淫靡なものに変える。

「美味しいよ。もっと……今度はまた」
「もっ、もう本当に……ダメだから、せ、先生!!」
「え、きゃっ!!」

上に乗りかかろうとする結衣を、強引に引き剥がして上下を入れ替える。
組み敷いて向かい合うが、アキトにはもうこれ以上何かをする気はなく、ただ止めさせたかっただけだ。

「あ……ごめんなさい。ちょっと……我を忘れてたみたいね」

驚いたのは一瞬、その後更にほんの一瞬見せた表情をアキトは忘れることができなかった。
普段なら絶対見せない、拒絶され傷ついた表情だった。
だがすぐにかき消され、逆にいたわる台詞をかけられる。
己がとった行動を省みて、いたたまれない気持ちと自己嫌悪の晒される。
止めさせるにしても、もう少し、もう少しやりようがあったのではないか。

「このまま寝よっか」

結衣はアキトを優しく抱きしめ、耳元でこそばゆく囁いた。

「先生……」
「ん?」
「俺のほうこそ……ごめんなさ……ん」

軽く接吻してアキトの口を塞ぐ。
こんな形で謝られたくない結衣だったが、
それはアキトも同様だった。

********************

「くうっ」

手の中で肉棒が跳ねて白い濁液を吐き出す。
思わずやってしまったという後悔の念と、自己嫌悪に苛まれる。
その感情は、丁度思い浮かべていた場面とほぼ一致していた。

「何やってるんだよ……俺は」

手と身体に付着した液体をふき取る。
ここまで最悪な気分になる自慰は初めてだった。
むなしい、寂しい。
それに一役買っているのは隣室の空虚さ、ハルキは帰宅せず外泊だろう。
記憶の限りでは、ありそうでない。離れて寝泊りすることはおそらく初めてだった。
アキトはベッドから抜け、スリッパを履き部屋を出る。
向かう先はすぐ隣り、ハルキの部屋だった。
ノックもせずに入る。

明かりを点けなくてもある程度配置がわかる。
ベッドに近づき、手を当てる。
当然もぬけの殻だが、それでも落胆にも似た気持ちを感じた。
もしかしたら、ハルキもこの気分を土曜日の夜に味わっていたのかもしれない。
遊びほうけた結果がこれかと思うと、恥ずかしくも悲しい。

半ば投げやりの気分でアキトはハルキのベッドにもぐりこむ。
もうここで寝ることに決めてしまう。
意外にも安らかなまま床につけたのは、ハルキの匂いがしたからだろう。
アキトは深い眠りに落ちていく。
夢を見ることもなかった。

********************


月曜日