「ね…ちゃんとコレ着けて」ハルミは両手で正方形のパッケージをつまみ、俺の顔の前にずいとおしつけてくる。赤と黒のハートマークで彩られた派手な包装の中身は…そう、アレだ。言わずもがな。
「今日、排卵日だから…」ずいぶんストレートな表現だな、と思いつつ俺は無言で受け取り、包装を裂く。ゼリーまみれでぷるぷるとした半透明な薄膜リング状…いや袋状だな…のソレを引きだし、ばっちりスタンバイ済みの怒張にあてがうと、ハルミがベッドに起き上がってきた。
「着けてあげるね」細くて白い指が赤黒い竿になまめかしくまとわりつき、こわれものを愛おしく扱うかのような感触は実にこそばゆい。
「ん。できたよ」ハルミはぽすん、とベッドに倒れ、両腕を差し出して俺を誘う。上気して汗ばんだ顔は、物欲しそうに半開きになった紅い唇のせいでいつにもまして色っぽい。さっき念入りにほぐしておいた秘所は泡立った粘液をとめどなく分泌し、ふだんは控えめに隠れている入り口も少し開きかかっている。上も下も正直だ。俺はハルミにおおいかぶさると一息に腰をすすめた。
「ぅん…は…ぁぁ……す、ごい…、んく…奥ま、で…ぁん」切れ切れに喘ぐハルミの嬌声で否応なく興奮が高まってゆく。結合部からにちゅにちゅとねばついた音が漏れ、たえまなく耳朶をくすぐる。小振りながら真っ白で
形の良い双丘は俺の動きにあわせてふるふると震え、桃色の先端が狂おしく踊っている。甘ったるい汗の香りと、やや刺激のある粘液のいやらしい匂いが絡み付き、頭がぼうっとしてくる。

数分の抽送ではやくも俺は限界が近づいてきた。
「イイよ、きて。いっぱい出して」そんなことを言われて我慢できる奴はいない。
俺はひときわ深く突き入れ、絞りに絞ったバルブを一気に解放した。
じーんと痺れるような感覚が下腹部から背中を走り抜け、同時に脈動を繰り返しながら熱い物が通り抜けてゆく快感を味わいつつ、ふーーーっと深い息をついた。
「ぴくぴく、してるね…」乱れ髪を指でかきあげながらハルミは浮かれたような眼差しで俺を見つめる。軽く口づけをかわし、まだせわしなく上下している胸をついばむように愛おしむと「は、ん」とかわいらしい声で応えてくれた。
「まだ、ぬいちゃだめ…もうすこし」ハルミはそっとお腹に手をあてて目を閉じると「できると、いいね…」と嬉しそうに呟いた。

ハルミから引き抜いた俺の分身は役目を終えてすっかりしぼんでいたが、アレの液溜部はちゃんとハルミの中に残ったようで、先端がなくなっていた。
「できるよね、赤ちゃん」ハルミはあおむけのまま繰り返す。「そのために使ったんだもんね、アレ」
そんなハルミのけなげな様子を愛おしく思いながら、俺は薬局で購入した「アレ」の説明書きを読み直した。

『厚生労働省・少子化庁認可 管理医療機器 男性用促妊具(12個入り)
使用方法/性能:1.表裏を確認し、男性器が完全に勃起した状態で装着してください。2.精子賦活剤、受精栄養剤および着床促進剤を混合したゼリーを塗布してありますので、決して拭き取らないでください。3.必ず膣奥で射精するようにしてください。また射精後は最低5分以上そのままの状態を保ってください。精液に含まれる成分で液溜部の周囲だけが溶解し女性の子宮頚管に接着されます。4.その後、子宮頚管粘液に含まれる成分によって子宮口側が穿孔され、精液を無駄なく子宮に送り込むことができます。女性はできるだけ安静を保ってください。5.膣内に残った促妊具はやがて分解・吸収されますので健康上のご心配はありません。6.効率的な妊娠のため、再使用は避けてそのつど新しい促妊具をご使用ください。』

→case 2 ナツコの場合