夕闇迫る南サンドリア居住区。
ひしめくレンタルハウスの一軒の窓からエルヴァーンが身を乗り出し叫んだ。
「オボロ〜〜〜!ごはんだよ〜〜!!」
銀色の長い髪を持つ彼女は竜騎士。叫ぶのは昼過ぎから遊びにでかけたままのワイバーンの名前だ。
スレンダーな上肢に、エルヴァーンにしては豊かな胸のふくらみが乗っかっている。端正な顔を心配そうに曇らせ、あたりを見回すがそこには何の気配も訪れなかった。
少し時間をおき、再び叫んだ。
「オボロ〜〜〜!!帰ってらっしゃい〜〜!」
ついでに首から下げていたバードホイッスルを紅い唇に咥え、吹いた。
ピーーーッと鋭い音が夕暮れ時の冷えた空気を裂く。
「もう、また遠くまで遊びにいって…」
だが、彼女の待つ幼いワイバーンは戻らない。
蜜柑色の太陽が山の向こうに殆ど沈み、水曜日の三日月が青白い光を放ち始めた。
紫色の空に、小さな蝙蝠が3匹連なって舞い始める。
竜騎士の待つ、小さな竜の影は、依然現れない。
探しに行こう。
メープルテーブルの上に用意した自分とワイバーンの食事に木綿のクロスを掛け、竜騎士は部屋を出ようとした。
その時。

>>> お前が探してるワイバーン、預かってるんだけど。
竜騎士の耳朶を、笑いを含んだ男の声が打った。
冒険者に支給される通信用クリスタル・ピアスからで、俗に「tell」と呼ばれる遠隔直接会話属性の声だ。
<<< え??
>>> オボロって赤い首輪つけた奴だろ?俺様の狩りの邪魔したからよ、これからドラゴンスレイヤーん

とこに連れてってやろうと思ってな。まぁ、一応モラルのない飼い主様にもご連絡しとこうと思ったわけ。
−狩りの邪魔?ドラゴンスレイヤー?
サンドリアの王立騎士団のラーアル将軍は竜を忌み嫌うドラゴンスレイヤーだ。
一般の冒険者の狩りの邪魔をしたワイバーンなど、これ幸いと殺してしまうだろう。
竜騎士は膝がガクガクしてきた。心臓が早鐘のように打ち始める。
−でも、ロンフォールで狩りをするレベルの冒険者に、オボロを捕まえられるはずがない…。
>>> まったく、こちとら3日もPOP待ちしてたんだぜ、ギザ耳ジャックを。
>>>それを横から飛んできて食っちまいやがって。エサぐらいちゃんとやっとけよ!
男の怒声で彼女は状況を理解した。
−うわ、NM狙いか…
Jaggedy-Eared Jack〜通称ギザ耳ジャック〜は、ロンフォールに稀に出没するウサギのノートリアス・モンスターだ。
NMのご多分に漏れず高価で取引されるものを落とすことがあるので、お金に汚い冒険者が血眼になって探している。
だが、ワイバーンにしたらただのウサギだ。まして彼女がオボロと名づけた雄のワイバーンはまだ悪戯盛りの小竜。
空腹と好奇心でちょっかいを出してしまったのだろう。
そして、高レベルの「お金に汚い下卑た冒険者」に捕まえられてしまったのだ。恐らく。
<<<ご、ごめんなさい。お金なら支払います。どうかその子を許してください、まだ子供なんです。


幸い竜騎士は冒険者として熟練と言える腕前の持ち主で、竜騎士の誉れであるアーティファクトも揃えていた。尤もアーティファクトは換金できないが、それを装備する者に相応しい富も名誉も持ち合わせている。
−ジャックが落とすことのあるモノの価格程度なら、無理すれば払えるわ…
だが、男は納得しない。
>>>金の問題じゃねえんだよ!モラルの問題なんだよ!誠意を見せろってんだ、このクソ女が!
男の声の後ろで、聞きなれたワイバーンの悲しそうな鳴き声と別の男の笑い声が聞こえる。
苛められているのだろうか。竜騎士はいてもたってもいられなくなった。一刻も早くオボロに会いたい。
<<<じゃ、じゃあどうすれば…どうすればオボロを許していただけますか…!?
>>>そうだな…
必死な様子を見透かしたように、男が鼻で笑った。
>>>お前宛に子竜がつけていた首輪を送ってある。届いてるか?
<<<ちょ、ちょっと待ってください!?
竜騎士は心配そうに覗き込んでいるモーグリに目配せして、ポストの中身を取りにいかせた。
「ご主人様、とどいてたクポ!」
モーグリが赤い首輪を手に飛んできた。犬の首輪をベースにスカーレットリボンを貼り付けてあり、打ち付けた銀のネームプレートには「Oboro」と名前が記されてある。友人の皮職人、彫金職人に頼み込んで作ってもらった逸品だ。
−間違いない、オボロのだ…
<<<確かに…届いています…うちの子のです…
>>>よし、じゃあアーティファクトの頭以外装備して、西ロンフォール北西の塔まで来い…それから…
男はそこで意味ありげに言葉を切った。
>>>アーティファクトだけじゃお前だってわからないからな、自分の首にその首輪を巻いてこい。あと…
<<<…はい?
>>>せっかくエロいアーティファクトなんだから、裸に鎧だけ装備してこい。
後ろで別の男が爆笑するのが聞こえた。

<<<……なっ……
あんまりな命令に竜騎士は声も出ない。たたみかけるように男は続けた。
>>>わかったか?下に着る黒い帷子みたいなのは禁止だ。裸に紫の装備だけでレンタルハウスを出ろ。南サンドリアの競売前を通って、クソ子竜の為にたっぷり恥ずかしい思いしてから、塔までくるんだぞ?
<<<そんな……
>>>オレがちゃんとサンドリアまで監視しにいくからね。言うこと聞かないとオボロちゃん死んじゃうよ?
後ろで爆笑していた男がTellに割り込んできた。
ワイバーンに何かしたのか、きゅうきゅうと苦しそうな声が一緒に聞こえてくる。
その声に竜騎士は頭に血が昇ってしまった。
<<<やめて!言うこと聞きます!何でもしますから…
<<<何でもします、だからオボロを助けて助けて!
>>>ものわかりのいい飼い主さんでコイツも幸せだな、じゃあ待ってるぜ、お嬢さん。

気がつくと男からのTellは途切れていて、普通なら到底できない約束をしてしまった後だったのだ。

竜騎士のアーティファクトは、全身を覆う黒い軽鎧の上に、身体の重要な箇所を保護する紫の装甲を重ねて着用するように出来ている。軽鎧は死したワイバーンの鱗から、装甲は骨を削って特殊な加工を施したとも言われるが、真偽の程は定かではない。

−オボロ…待ってて…

エルヴァーンの竜騎士は、悲痛な決意を込めて鏡の前で部屋着を脱ぎ、全裸になった。
前線で槍を揮う毎日が鍛え上げたのだろう。無駄のない締った、それでいて女性らしいまるみの失われていない身体が露になる。エルヴァーン族にしては豊かな胸のふたつのふくらみはツンと上を向いた釣鐘型で、先端に未熟なロランベリーを思わせるピンクの小粒が、やはり上を向いてすましているのが初々しい。
砂時計のようにくびれた腰のラインの下には、骨盤の発達したエルヴァーン族特有の大きな尻肉が実っている。ぷりぷりと張りのあるふたつの大きな丘は、食べごろのデルフラントペアのようだ。
肌の色はデルフラントペアほど白くはなく、薄い釉をかけて焼いた上等の陶器のような淡い褐色。
エルヴァーン族は透き通るような白肌か褐色の肌に二分されるが、彼女の輝くような銀色の髪には、淡い褐色の肌のほうがよく映え、その美しさを際立たせていた。


−すぐ…助けてあげるからね…
竜騎士は、指定されたとおり、その美しい裸体に、紫の装甲を直接纏いはじめた。
まず膝まである紫のブレー。続いてベルトを締め、腰部を覆う2枚の装甲を腰の横に固定する。普段は太腿と臀部は軽鎧で覆うが、今日は何もない。
続いてベスト型のメイルに腕を通す。両胸への貫通をかろうじて防ぐ程度の装甲だ。その上に肩甲を装着する。
最後に肘まで覆う紫のフィンガー装備をつけ、指定されたオボロの首輪を首に留めた。
「できたわ…」
命じられた姿が鏡の中に表れた。
ごく短いベスト型のメイルが、胸の柔肉にむちむちと食い込んでいる。かろうじて先端は守られているのが救いだ。
胸から下は褐色の肌が隠されることなくなめらかに続いている。
しまったお腹に形のよい臍。
その下に腰部の装甲を固定するベルト。
腰部の装甲は側面のみを覆うので、ベルトの下はやはり丸出し。
髪の色より少し濃い目の、やはり銀色の陰毛が、容赦なくむき出しで晒されている。
もちろんかぶりつきたくなるような尻肉も丸出しだ。

それでいて、膝から下と、肩から腕にかけては隙がなく固められているのが余計に倒錯的でいやらしい。
「ご、ご主人さま、本当にその格好で外にでるクポ…?」
装備を手伝ってくれたモグが心配そうに顔を見上げながらつぶやいた。
「し…仕方ないの…オボロを助けるためですもの…」
竜騎士は鏡の中の屈辱的な姿に目をやったまま答えた。モーグリの顔は正視できなかったのだ。
「すぐ戻るわ…心配しないで」
そういって、重い足取りで、レンタルハウスの木の扉をあけた。

ぎぃ………ぱたん
モーグリはぷりぷり揺れる生尻を茫然と見送った。
「……スクリーンショットとればよかったクポ…」


サンドリア王国。
かつては日の沈む国、眠れる獅子の国などと揶揄されたが、
ここ数年は冒険者の活躍で活気を取り戻しつつある。
特に賑わうのが南サンドリア地域だ。
ジュノには遠く及ばない規模だが競売所も設置されており、ここにしかないギルドもある。
ロンフォール・グスタベルグは美味で栄養価の高い食肉や野菜、果物が収穫できることもあり、
食材や美食を求める各国の調理人や冒険者、観光客でいつも賑わっていた。
そう、街が夕闇に包まれる頃にも、サンドリアの露店や酒場は眠らない。
ランプで照らされた街には、多くの人が行き来している。

その雑踏の中、竜騎士は裸に装甲をつけただけの姿で、競売所に向かっていた。
「お、おい!あれみろよ!!」
「うわ、竜騎士のAFか!めっちゃエロいなー!!」
紫色のドラケン装備は、普通に装着していても目立つ代物だ。
それを素肌に纏っていて、見咎められないわけがない。
「エルヴァーンの女ってのは露出狂かよ、チ○毛まで丸見えだぜ」
「ねーちゃん、金ならいくらでもやるからいまここでやらせてくれや!」
通行人の露骨な冷やかしの声や下卑た野次が容赦なく突き刺さる。
しかし言い返すことも出来ない。事情を知らない彼らからしたら至極まっとうな反応なのだから。
アーティファクト装備をしているゆえ、直接触られたりしないだけまだマシというものだ。
−……我慢よ……オボロの……為ですもの…
唇を噛み、足先の少し前の地面だけを見据えたまま、竜騎士は早足で歩き続けた。

>>>いい子だね、ちゃんと約束守ってるじゃん♪
競売所が見えてきたあたりで、男からのtellが聞こえてきた。やはりどこかで見られていたらしい。
<<<オボロは!?オボロは、無事なんですか!?
>>>もちろん。さっき食事も食べさせてあげたよ…って、ちょっと買い物してきてくれない、競売で?
竜騎士は競売所を見た。カウンターはどれも長蛇の列だ。
この姿で人ごみに紛れるのは厭だったが、断る権利がないことぐらいは承知していた。
<<<わかり…ました…
返事して、競売所の列に並ぶ。客は酒が入った男性冒険者が多く、彼女が近づくと周囲がどよめいた。
「うはww!」
「ねね、これ何かのイベント!?」
混雑に乗じ、並んでいる男性客たちが露骨に密着してくる。
「あぁっ!」
後ろに並んでいた男の膝が脚の隙間に入り、腿を割った。
すかさず複数の男の手が股間に忍び込んできた。
ある手は太腿をざわりと撫であげ、別のごつごつした手が秘裂に乱暴に指を這わせる。
また別の手は恥丘にまわりこみ、前から肉芽を探し始めていた。
「……いっ…いやぁ……!」
突然の陵辱に竜騎士は声を殺しきれず悲鳴をあげた。思わず前の客の背中に縋りつく。
雑踏の中、彼女の周辺にだけ、くちくちという淫靡な音が聞こえ始めた。
「何だ、ちょっと触っただけでからもうぐちょぐちょいわせてるのか」
太腿を撫でていた男が鼻で笑い、ゆっくりと手を尻肉に廻した。
鷲掴みにしてぐいぐいと揉み、ふたつの丘の谷間を指で執拗になぞりはじめる。
「はぁん………くはぁうん………」
「いや、触る前から大洪水だったって。今なんか下まで垂れてるんじゃね?」
ぐちゅ…ぐちゃぐちゃ…びちゅ…
秘裂にいちばんに侵入した指は、わざと水音を立てて襞を擦ってくる。
「……あぁん………はぁぅ……」
「お、ここもいい感じになってるじゃん」
恥丘を犯していた男が肉芽を探りあてた。二本の指で乱暴に押し開き、無理やり剥いて親指で押しつぶす。
「ひぃぃ!いやぁぁぁぁん!」
竜騎士の身体がびくんびくんと跳ねた。
意に反して嬌声が喉の奥から溢れて止められない。

<<<い…いや…こんなの…許して……
>>>ふふふ、キミの順番が来るまで周りの人にたっぷりサービスしてあげな♪気持ちよさそうじゃん
>>>カウンターにたどり着いたら何買うか教えてあげるからね。
<<<い……いやぁ……あぁぁん……っ

「いい加減にしてくれませんかね」
縋りつかれていた前の客がくるりと後ろを向いた。エルヴァーンの老男だ。
真っ白な髪をきちんと結い上げ、一見紳士風だが、その目は既に欲情でギラギラしていた。
「全く、最近の若い娘さんは」
嘆息する素振りを見せつつ、胸を覆うメイルの隙間に両の手を捻じ込んでくる。
掌におさまった柔肉を揉みしだきながら、親指と人差し指で先端を摘み、ころころと転がしはじめた。
「公衆の面前ではしたない格好をしたあげく、欲情までするとは…世も末ですな」
何を言われても、竜騎士には言い返す術も抗う術もなかった。
「……あぁっ……だめぇ……!はぁぁぁぁ…ん!!」
胸を陵辱する男に縋りつき、背後から複数の手に秘部を犯されながら、ただただこの時間が過ぎるのを待つことしか、彼女には許されなかったのだ。
ぶちゅ…ぬちゅちゅ…
襞の奥に指が侵入してきた。お尻のすぼまりもさっきから責め立てられている。
「ふはぁぅ……はぁう…あぁぁぁぅ…」
指が突き動かされるたびに断続的に意識が飛びはじめた。
−いや……こんなとこで……こんなことされて……イき……イきたくない……!

「おっ、締ってきた。イッちまえよおら?」
膣を指で犯している男が耳元で嘲笑し、奥まで深く突き始めた。
ぐちゅっ! ぐちゅちゅ! じゅちゅっっ!!
「あぁ…あぁぁぁぅん……!!」
「こっちの穴もグチョグチョになってるよ、こっちでイッちゃおっか?」
にゅちゅちゅちゅ……ずちょ…
「いやあぁぁぁぁっっ…!」
尻のすぼまりに指が捻じ込まれる。体験したことのない違和感に竜騎士は絶叫した。
中で僅かでも動かされる度に、自分のものとは思えない獣じみた声が喉から絞り出される。
「はぁぁぁっぅぅぅぅ……はうぉぅ!うぉぉぉぉぉぅぅん!!」
対抗するように膣の中の指も激しく動かされた。その度に腰ががくがく揺れ、太腿を熱い汁が絶え間なく流れ落ちる。乳房も乳首も、剥けて勃ちあがってしまった肉芽も、それぞれの男のリズムで弄ばれている。
「いやぁ……!はぁぅぅん……!!うぉぅ…あんっっ…!あぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
南サンドリア中に響くような絶叫と同時に竜騎士は絶頂に追い上げられた。

銀色の髪が舞い散り、竜騎士は競売所前の路上にくたりと仰向けに倒れた。
メイルはずりあげられ、桜色の先端は無残に露出し、
勃ちあがってその存在をアピールしているようだ。
銀色の陰毛は濡れそぼって肌にぴたりと張り付き、
ぱっくりと口をあけた裂け目がランプの光に照らされてぬらぬら光っている。
さっきまで身体を弄び続けた男たちも流石に路上でことを起こす勇気はないらしい。
倒れた彼女を避けて何事もなかったように競売のカウンターに並ぶ列に戻っていった。

打ち捨てられた竜騎士の耳のピアスに、悪魔のようなTellが着信した。
>>ほら、いい加減におきないとGMきちゃうよ?
<<あ………あぅぅ…
>>まったく、買い物はできなさそうだから僕がすませといたよ
>>…サービスしろとはいったけどさ、ヨガりすぎ。
<<おねがい……もう……これで許して…ください…
>>何いってんの、ジャックとられて僕の連れはカンカンなんだから。しっかり謝りにいかないと。
「さ、いくよ」
不意に遠隔直接会話の声が、肉声になった。
「……え…」
羊を思わせる装備を身に纏った男が、頭の傍に佇んで、くつくつ笑いながら覗き込んでいる。
「オボロの躾、なってなかったね。主人ともども僕がしっかり仕込んであげるよ♪」
そういってにっこり笑うと、慣れた手つきで竜騎士の赤い首輪の金具にロープを結びつけた。
「ペットコマンドも便利だけど、基本は服従訓練だからね、さ、起きて!」
ぐい、とロープを上に引っ張る。
「ああぅ…!」
首を括られる痛みに耐えかねて、竜騎士はよろよろと立ち上がらざるを得なかった。

「皆さん僕のペットがご迷惑おかけしました〜、きつくお仕置きしときますので♪」
獣使いは遠巻きに様子を眺めるギャラリーに一礼し、早足でロンフォールに抜ける城門にむけて歩き始めた。
「あぁ……くぅぅ…」
裸同然の美しいエルヴァーンを引き連れて悠然と立ち去るその姿をみて、獣使い志願者が急増したのはいうまでもない。

ドラゴンスレイヴ改