赤ちゃん工場

 20XX年の4月1日。ついにこの日がやってきた。子供の頃から夢見ていた仕事を今日から始めることになる。僕の前にいるのは上司となる中年の男性だ。
「合格おめでとう。今日から君はこの工場で種付け係として、たくさんの女性を妊娠させてもらうことになる」
 上司はそう言いながら僕を連れて歩き出した。
 大学で最優秀の成績を修めていた僕は、迷わず赤ちゃん工場の種付け係一本に絞って就職活動をしていた。この仕事は日本中から優れた頭脳と鍛え上げられた肉体を持つ若者が殺到する、もっとも就職倍率が高い超人気の職業だった。僕が選んだ民間のこの工場の場合、倍率は20万倍を超えていたらしい。掛け持ちで受験するとはいえ、我ながら凄い倍率を突破したものだと思う。公営の場合だとせいぜい3000倍程度なのだが、民間の方が人気があるのはいろいろな理由がある。
 たとえば給与。公営だと公務員扱いになるから他の担当と基本給は大差なく、手当がちょこっと付くくらいだが、民間だと最初から違う。年俸制で公営の種付け担当の10倍の報酬が支給され、一人孕ませるごとに臨時のボーナスも出る。10年勤めれば死ぬまで遊んで暮らせる。10年持つ人はほとんどいないらしいけど。
 また、福利厚生も充実している。僕が勤め始めたこの工場は、小笠原諸島の小さな島一つ全体を利用した施設になっていて、高級ホテル並の宿舎にはレストランやプール、フィットネスクラブまで併設されている。その他、各種スポーツ施設やビーチ、映画館などあらゆる娯楽施設も備えた島になっていて、都会から遠く離れた孤島だというデメリットを感じさせない。一方、公営の工場の場合はたいてい都心近郊の山の中にあって、周囲には何もないし施設も工場のみ。最寄り駅からバスで1時間かけて通勤するよりほかない。社会見学に訪れる子供たちや、視察に来る議員や役人の団体が毎日のように訪れて、仕事に集中できないらしい。
「ここでの仕事について説明したいと思う。言うまでもないことだが、君の仕事はひたすら孕み係の女性を孕ませること。妊娠が判明した場合に年俸の12分の1の半額、無事出産が済んだらそれと同額の報酬が支払われる。それから普段の生活では貞操帯を着用してもらう。恥ずかしいかも知れないが、孕み係の膣内以外での射精を完全にコントロールされることになる。まあその代償としての高給だと思って諦めてほしい。私からの説明はこれくらいだが、何か聞きたいことあるかな?」
「いえ、別に何も……あれ? あの機械何ですか? 女の人の体をすっぽり覆っているようなやつのことですが」
 話を聞いているうちに種付け棟に入ったのだが、そこで僕は奇妙な機械を見た。全裸になった女性が銀色の大きな機械の中に足から入って胸まで体を沈めている。すでに動作しているのか小さなモーター音が聞こえるが、それよりも女性のあえぎ声が凄い。
「ああ、あれか。君は公営の工場しか見たこと無いんだっけ」
「ええ」
「あれは孕み係の女性を愛撫する機械だ。公営だとベルトコンベアに流されてライン上で人間に愛撫されて発情させられるが、作業効率は悪いんだな、ああいうのは。人それぞれ発情に至るまでの経過や時間は様々だから。この機械ではその女性の好みの愛撫を自動的に察して全身に効率的な責め方をする。10回エクスタシーに達すればあの機械のロックが外れ、向こうにあるベッドにおいて種付け担当にまわって、そこで犯られる仕組みになっている。いわば、公営がライン方式なら我が社はセル方式だな」
「種付けにかける時間も人それぞれなんですか?」
「そう。ベッドにマイクロセンサーが内蔵されていて、男が膣奥で10回射精したら終了の合図が出る。だから時間もバラバラだな。名器と言われる女性の場合は30分も経たずに終わるが、普通は2,3時間だな」
「そうですか……」

「ああ、言い忘れていたが、我が社で孕み係として雇う女性は全て経産婦なんだ。これも効率化の一環でね。事前のメディカルチェックでもある程度は孕みやすいかどうかは判断できるんだが、未産婦は民間企業としてはリスクが大きいから。うちの女性は皆1,2度公営の工場で出産しているか、家庭で出産しているか。それなりに年齢や経験を積んでいる女性の方が精神的にも安定しているからね」
「家庭で出産ということは、人妻もいるんですか?」
「ああ、いるよ。約半数はそうだな。君もそうだけど、公営の工場に比べると支払われる報酬がかなり高いからね。生活に困っている人妻の応募は結構多いよ」
 平然と会話を交わしているが、すでに僕の肉棒はギンギンに勃起していた。
「それじゃあ早速だけど仕事始めてもらおうか。最初だから、特別に種付け相手は選ばせてあげよう。普段はもちろん選べないよ。さて、あの機械に入っている女性か、待機中の女性か、誰が良い?」
 僕は鼻息を荒くしながら、今目の前にいる孕み係の女性を見比べていった。やっぱり公営に比べると女性の容姿のレベルも高い。誰でも良いから早く犯りたい、と思いながら女性の顔を眺めていると、一人の女性に釘付けになった。
(千里さんだ……。間違いない)
 僕が子供の頃、隣家に増田千里さんという7歳年上のお姉さんがいた。綺麗な人で、いつも僕に優しくしてくれた。僕は小さな頃からずっと好きで、本気で結婚したいと思っていた。だが告白する前に彼女は僕が全然知らない人と結婚してしまい、遠くに引っ越していった。あれから5年経ったが、美しさは全く衰えていない。むしろ人妻の色気とでも言うのか、妖艶さが加わったように思えた。銀色の機械に責められて悶える表情を見るだけで、思わず射精しそうになった。
「あ、あの女性にしますっ!」
 僕が指差して指名すると、上司は、ほおっ、と息を漏らした。
「結城さんか。なかなか目の付け所が良いな。採用したばかりの人妻だ。もちろん経産婦だよ」
 結城っていう名字になってるのか……。ショートヘアーを振り乱しながら機械の愛撫にあえぎっぱなしで、僕がここにいることには気付いていないようだ。ひょっとしたら僕のこと自体、もう忘れてしまっているのかも知れない。僕は未だ見たことがない、千里さんの夫に激しく嫉妬を覚えた。
(僕の憧れの人だった千里さんを奪った男から、今日ここで千里さんを奪い返してやる!)
 もちろん理不尽な横恋慕なことは分かっている。だが、僕の本能が僕に彼女を寝取れと命令していた。
「それじゃあ高橋君、あそこにあるシャワールームで体を綺麗にしてきてくれるかな。それが済む頃には、結城さんも準備が出来ている頃だと思うから」
 上司に言われて僕は慌ててシャワールームに駆け込み、生涯で最も速いスピードでシャワーを浴びて急いで出てきた。千里さんは機械から伸びた首を曲げ、グッタリした様子で静かにしていた。
「おお、もう出てきたのか。速いなあ。彼女もちょうど良い感じに仕上がってるよ」
 上司はそう言いながら千里さんが囚われている機械のロックを外した。
「このままベッドまで運んで。彼女一人じゃ歩けない状態だからね。ベッドは左手前のものが君の持ち場だ」
 言われるがまま、千里さんを両手で抱えてベッドまで運んだ。生まれて初めて見る千里さんの素っ裸だった。華奢な体つきはあの頃のままだが、成熟した女性特有の丸みを帯びた肉体の柔らかさに、我慢汁は出っぱなしだった。荒い息をするだけで自らは動けなさそうな彼女の体を慎重に横たえ、このまま行為に至っても良いのかと思って上司を見た。
「ああ、もう取りかかってくれたまえ。私はしばらく見回りをしてくるから。10回射精し終えた頃にまた戻ってくるよ」

 上司が話を終えるやいなや、僕は千里さんに飛びかかった。
 小さな顔を両手で掴み、唇を奪った。髪型は僕が知る頃はずっと黒髪のストレートだったのに、今は薄く茶色がかったショートになっている。こんなこと一つにも強いジェラシーを覚え、記憶にある優しい綺麗なお姉さんだった千里さんを取り戻すかのように、何度も彼女の柔らかい口唇を吸い続けた。
「ん……ああ、んむぅ」
 千里さんが目を覚ましたようだ。本当に僕のことを覚えていないのか知りたかったが、僕と分かって拒絶されるのが怖いのでとりあえず先に彼女の秘部に自分の固くなったチンポを挿入した。
「ああっ! えっ、ああ、中が、お腹が、すごいのぉ」
 膣内に侵入すると、あまりの熱さに驚いた。それから蠕動する膣肉の刺激が信じられないほどの快感を下半身にもたらしてきた。
「うわっ!」
 思わず崩れ落ち、正上位のまま千里さんの上に覆い被さった。そのままディープキスを続けながら、腰を夢中で振りまくった。
「あっ、んん……あん、んむ、んぷっ、あん、あっ、あっ、あん」
 千里さんは激しいキスから時に逃れ時に応じ、呆然とした表情で僕のストロークを受け止めていた。
 絶頂は思っていたよりも早く来た。長年憧れていた女性を孕ませるのだと思うと、射精はとうてい我慢できるものではなかった。膣への出し入れをより一層激しくして、一気に放出に至った。
 ドプウッ! ドプッ! ドプッ、ドプッ、ドピュッ……ドクッ
 今まで生きてきて最高の快感を覚えながら、僕は千里さんの子宮めがけて子種を叩きつけていた。
「ああ……出てる……中に……私……いっぱい……出されてる……」
 千里さんは途中で何度もイッていたようだったが、正直僕にはよく分からなかった。自分のドス黒い欲望を千里さんにぶつけることしか考えていなかったからだ。
 一度膣内に射精したことで、気分的に大分落ち着いてきた。やはり、一度は千里さんに確認を取らないといけないと思った。
「あの……、千里さんですよね。覚えてますか? 昔、隣に住んでた高島弘樹です」
 初めは理解できなかったようだが、僕が言った言葉を頭の中で咀嚼したのか、目を見開き口に手を当てて驚いた様子だった。
「そんな……弘樹君? ウソ……、あの弘樹君なの? 私、こんな……何てことを……」
「ああ、やっぱり千里さんだったんだ。良かった」
「良かっただなんて……なんでこんなところに……」
「種付け係になったんですよ。この工場の。ところで千里さんこそ、なんで孕み係になったんですか? 突然結婚するといって、あの町から引っ越していきましたよね」
 彼女に水を向けると、少し暗い表情になった。しまった、と僕は思った。順風満帆の幸せな結婚生活を送っているのなら、こんなところで夫以外の他人に妊娠させられることなどあり得ないのだから。
「主人が、あのとき結婚した人がね、会社をクビになったの。子供もいるし生活が大変だから私も働こうとしたんだけど就職先が私も主人も見つからなくて。それで仕方なく応募してここに……ああっ!」
 千里さんが「主人」と言うたび、そして「子供がいる」といったことで、僕の嫉妬の炎は再び大きく燃えさかった。その炎は下半身に伝わり、肉棒に対して膨張命令を出していった。膣内で再び大きくなったペニスを感じて、千里さんは声を上げたのだった。

「千里さん。僕は子供の頃からあなたのことが大好きだったんです。今でも好きです。愛してます。こんなところでこんな格好で、こんな事言うのは変かも知れませんが、今の旦那さんと別れて、僕と結婚してください」
 千里さんは再び目を丸くして、息をのんだ。
「そんな、弘樹君。私のことを……。ありがとう、でもダメ。今の主人のことは愛しているし、子供もいるもの。あなたのモノにはなれないわ」
 寝取りプロポーズを断られた僕は、一気に落ち込んだ。さすがに気の毒に思ってくれたのか、千里さんは優しく声をかけてくれた。
「ごめんなさいね、弘樹君。でも、今ここでなら。ここだけなら、あなたのお嫁さんになってあげる」
 そう言って僕の唇に軽くキスをしてくれた。
「えっ? ここだけなら……? 僕と?」
「そう。だってここは種付け工場でしょう。弘樹君は私を孕ませるんでしょう。このベッドの上ですることは……夫婦の営みと同じ事よね。だから今だけは私は弘樹君の奥さんよ。遠慮無く中出しして、私にあなたの子供を産ませてもいいのよ。ううん、産ませなければならないのよ」
 いったん萎えかけたチンポが、三度固く勃起してきた。そうだ、今の僕がすべきことは千里さんに種付けをすること。それが僕の仕事でもあり、長年持ち続けた願望でもある。千里さんを見つめると、少し恥ずかしそうにしながら、色っぽい目つきで僕を誘うような顔をした。これが人妻の色気か、と思った。
「分かりました。千里さん。必ずあなたを孕ませます」
「千里さん、は止めて欲しいな。奥さんなんだから、千里って呼んで、敬語も止めて」
「分かった。千里。あと9回射精するまで、よがり狂わせてやるからな」
「うん、お願いね。ア・ナ・タ?」
 僕は再び千里さんの子宮に精子を送り込む作業に没頭した。正上位だけでなく、後背位、騎上位、対面座位、背面座位、屈臥位だのなんだの、ありとあらゆる体位で人妻を犯し続けた。千里さんも全く抵抗無く僕の全てを受け入れてくれた。
 そして10回目の射精が終わったとき、突然ベッドの隅にあったランプが赤く光った。
「おっ、ようやく終わったようだな。お疲れ様。でも君はまだ一仕事残ってるからな」
 いつの間に来たのか、上司の男がそばに立っていた。
「ほら、惚けてないで、やることやらないと。まずは彼女から離れて、ベッドの下にあるショーツを履かせてやりなさい。これは特殊加工が施されていて、女性器から流れる精液を体内に押し戻す効果がある下着だ。それからこのベッドは車輪で動かせるから、あっちにある熟成棟に向かう廊下の入り口まで押して行きなさい。そこで受付の者に結城さんごとベッドを渡せば、君の仕事は終わりだ」
 僕はあまりの快感に気を失った千里さんから離れ、上司に言われたとおりにした。名残惜しかったが仕方がない。少年時代からの性衝動を全てこの一時の間に千里さんにぶつけたのだから、ある意味清々しい気持ちがしていた。

 そして月日は流れていった。僕は種付け係としての仕事に徐々に慣れていった。初めのうちは快楽の天国と疲労の地獄を行ったり来たりしてヘトヘトになっていたが、時間とともに要所が分かりはじめて、自分の体力と性欲をコントロールできるようになった。だが、あの最初の仕事になった千里さんへの種付けだけはいつまで経っても鮮明に思い出せた。思い出すとすぐに勃起した。
 千里さんはあの後そのまま熟成棟に入り、十ヶ月後に出産棟にて無事、出産したそうだ。あの後は一度も会っていない。だが、千里さんが週1回の定期船でこの島を離れると他の職員から聞いたので、桟橋まで見送りに行った。
「弘樹君、ありがとね。孕ませてくれて」
「そんな、お礼なんか……。俺だって……ありがとうございました」
 久しぶりにあった千里さんは、少し丸みを帯びたように思えたが、それでも美しかった。理想の女性そのままの姿だった。
「これでお別れですね」
「うん、そうね。今回の仕事で当分の生活には困らなくなったし。でもひょっとしたら……またここに来るかもよ?」
「えっ!」
「その時は、また私を孕ませてくれる?」
「もちろん! 絶対に!」
「そう、ありがと。でも、今度は私を選べないんでしょ? だったら……」
 そう言いながら千里さんは僕の耳に唇を寄せてきた。
「他の女の人に種付けしてるあなたのすぐ横で、他の男に孕まされるかもね、私」
 チュッ
 最後のキスは、頬にされた。それでもその感触と、千里さんが他の男に犯されているシーンを想像して、猛烈に勃起した。
「うおっ!」
 そして猛烈に勃起しようとした僕のペニスは貞操帯に膨張を阻まれて強烈なダメージを僕自身に与えた。
 僕がうずくまってもがき苦しんでいる間に、千里さんを乗せた定期船は、この島を離れていったのだった。

            ☆終わり☆


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