Love & Death
第1章 [God Hates Us All!]

ロアド     ヒューム♂…F2-A
エルグラード  エル♂…F1-A
ネアス     ヒュム♀…F1-B


ヒュパン!

ゴトリ

刃が空を切る音がして、男の首が落ちた。

偽貨幣作りの罪で逮捕された、鍛冶職人リード・ロアンの処刑だった。

「いやああああああぁぁあああ!!!」
少女が前に駆け寄る。
少女を押さえる兵隊達。
「お父さん、お父さん!!お父さん!!!」
手を伸ばしても届かない。近くて遠い間。
父が働いていた鍛冶工房の師匠が少女を引き離す。
「アネシア…ダメだ…。堪えなきゃ…ダメだ…!!」
目に涙を溜めた鍛冶の親方はアネシアにそう言った。
「ほら、祈るんだ…アネシア…。お前が泣いてたら…あいつは…天国にいけなくなっちまう…!」
アネシアは膝を折り、アルタナへ祈りを捧げた。
涙は、枯れ無かった。


ノーブルベッドの中でアネシアは目を覚ます。
「う〜〜…。」
起きれば日が昇り掛けている様な時間だった。
下着で寝ていた為、少しだけ冷えた。
「……はぁ…。」
強烈な体験のフィードバック。
処刑の瞬間が今もって鮮明に思い出させる。
それもこれも、全てはベドーの一件が原因だった。
子供が敵ごと寸断されるのを見た頭が、似た様なシーンを強烈に浮上させたのだ。
お陰で最近の夢は全て、その悪夢だった。
汗でべったりとする肌。
「…お風呂にでも入るか」
そう言うと、彼女は簡単にシルクのローブを着るとモグハウスの外に出た。
朝日は昇ったばかりでまだまだ暗かった。


ホンの少し、居住区の説明をしよう。

居住区は、かなり広い。
冒険者を受け入れるモグハウスに、他国の冒険者の活動の中心となるレンタルハウスが犇いているのだから。
未だに増える冒険者の為、あちこちで改築工事が起こっている程だ。
しかし、基本的に冒険者が使えるのは1部屋のみの狭い部屋だ。
キッチンも無いし、トイレもお風呂も無い。
そう言う物は全て共同施設として部屋とは別個に作られているのだ。
(当然、区画は広いから幾つか点在はしているが。)
風呂等は無料にし、衛生面での悪化を防いでいる。

他にある物としては、歓楽街としての機能もあった。
冒険者奨励とは言った物の、結局の所は有象無象なのだ。
街になだれ込み、犯罪を起こし治安を悪化しかねない。
よって、都市の歓楽街の機能をも兼ね、また、安く利用させる事により犯罪を起こさない様にしている。
中には冒険しないにも関わらず、冒険者として登録し娼館を利用している者もいる。
更に娼婦だけではなく、男娼もいる。
ただし、街でその手の犯罪を起こした場合は他国の冒険者と言えど厳しく罰せられる。
これにより、街での冒険者による性犯罪はほぼ0だった。
ここまで涙ぐましい努力をしているのも全てはコンクェストでの結果で得られる代理戦争での利益だった。
これだけ至れり尽くせりの設備を整えて尚、コンクェストでの利益は大きい物なのである。

アネシアはまだ暗い道を歩き、共同の風呂に到着する。
服を脱ぎ、扉を抜けるとそこは、だだっ広い空間。
広い湯船がアネシアを出迎えた。
湯は一定の間隔で緩やかに流れている。
何でもバストゥークの技術らしい。
湯を循環させ清潔な環境を保つ仕組みだった。


ゆっくりと湯船に浸かり、朝の悪夢を洗い流す。
忘れてはならない過去。
だが、思い出して俯いていても仕方が無い。
アネシアはそう思っていた。
前へ進むには、気持ちを上へと上げる…。
それが、アネシアの歩き方だった。

キィ…

ゆっくりと、扉が開く。
珍しく利用者がいる者だと思い、目を配る。
「おはよう。お先に利用させて貰ってるわ。」
ニッコリと笑って後ろを見る。
「あ。」
「あら。」
利用者はディエリーザだった。

「お久しぶりですね。」
「ええ、あれから1週間…ね。」
この広い世界を股にかけ走り回る冒険者が再び出会うと言うのは珍しい事だった。
「……。あいつ…見ました?」
あいつ…とはエザンの事だ。
アネシアの宿敵(?)であり、無礼極まりない隻眼ミスラ。
「いいえ…見て無いわ…。」
あの後、依頼者は報酬を渡し、子供たちを引き取った。
孤児院の運営費から捻出した金は重かった。
依頼を直接受けた訳でもない二人はお金を返し、ジュノで別れたのだ。
「でも…何であんな仕事を…。」
「さて…ねぇ…何か思う所でもあったのかしら…?」
報酬は700ギル。
一般の報酬よりかは多いが、明らかに報酬と仕事の危険が見合っていない。
通常の冒険者で、この報酬で働くのは稀だ。
正義感がよっぽど強くなければ受けるまい。
「ホント…何だったのかしら…。」


子供達を運ぶ時に気付いたが、僅かに甘い臭いがしたのだ。
ペルコシスの臭いに僅かに口に残る白い汁。
恐らく、ペルコシス・オレを飲ませたのだろう。
だが、気を失っている子供に流し込んでも恐らくは飲むまい。
二人があのクゥダフと対峙している間に、口移しにして飲ませたのだろう。
そんな事をする人物が、いきなり子供を両断したり、子供の物を壊したり…。
全く先が読め無い人物として二人の中にリストアップされていた。
「ま、この先関わらない事を祈りたいわ。ホント。」
徹底してウマが合わないアネシア。
「うーん、素直になりきれてないだけの気も…」
何となく“良い人”説を唱えるディエリーザ。
ふと、アネシアの視線がディエリーザの胸元へ行く。
アネシアの胸は小さい訳じゃない。
確かに小さめだが、標準の範囲内だろう。
だが、ディエリーザのその胸は大きかった。
自分のよりも大きく、ヒュームの女性に当てはめても大きい方だ。。
エルヴァーンの胸は基本的には控え目だ。
大抵はヒュームよりも小さいのが常…。
なのに、ディエリーザの胸は大きかった。
少し小さい事を気にするアネシアは自分の胸と見比べてショックを受ける。
(………いいな…)
心の中で指を咥えながら、マジマジと見てしまう。
「あ、あの…アネシアさん?」
マジマジと見ている先が胸だと気付き頬を赤くするディエリーザ。
大きい胸を自分に当てはめ妄想するアネシア。
町を行けば並み居る人々の目は釘付け。
いざと言う時にもセクシーに服装はバッチリ。
そして、カッコいい男を引っ掛けて…その後はディナー…。
……その後は…

「あ、あの…えーと…?」
あまりの恥ずかしさに胸を少し隠しながらぶつぶつ言うアネシアを眺める。
(ど、どうしちゃったの…?)
そして、ハッと我に返るアネシア。
「あ、え、い…ご、ごめんなさい。つい…」
少しだけ寂しそうな目をしながら。
目を正面に戻す。
「?」
何故悲しそうな目をするのだろうか。
ディエリーザは解らなかった。


アネシア・ロアンはサンドリアで生まれた。
父は鍛冶職人でサンドリアに修行の為来ていた。
母はアネシアが生まれた時に死亡。
男手一つで育てられた彼女は、鉄を打つ父の後姿を見ながら育つ。
玄翁を握り、一心不乱に剣を打つ父の姿は忘れない。
自分も将来は、玄翁を持ち鍛冶職人になると彼女は疑わなかった。
父は真面目一徹で、常に熱心だった。
そんな父だからこそ、周りに認められていた。
親方も彼に目をかけ、熱心に指導した。
アネシアが十三の時だ。
修行を十分に積み、サンドリアを出て、バストゥークへ帰り錦を飾って帰ろうと言う話が出て暫くの事。
サンドリアで打つ最後の一本を熱心に打っていた父。
親方もそれに見入っていた。
完成すればこいつは名剣になる…。
そう確信せざるを得ない出来。
製作途中でそう思える剣なのだ。
最後まで打ち続けられるのなら、死んでも厭わない気持ちで父・リードは剣を打っていた。
その時だった、ドアを開け、神殿騎士団が入ってきた。
親方が出ると、そこで剣を打つリードに偽貨幣鋳造の容疑が浮かんでいた。
親方は当然否定した。真面目一徹で1ギルたりともネコババをしない。
この男がそんな事をする筈は無かった。
しかし、問答無用とばかりにリードは引き立てられた。
名剣が露と消えた瞬間だった。
最初は誰もがすぐに帰ってくると思っていた。
しかし、1週間経っても帰ってこない。
親方は何度も城へ上訴を続けたが面会すら許されなかった。
卓越した鍛冶の技術が彼を犯人だと証明するに十分とされ、彼は刑場に引き立てられた。
家族と言葉を交わす事も無く彼の首は地に落ちた。
娘の誕生日まで後1ヶ月だった。


アネシアは祈りながらも神を恨んだ。
清廉潔白な父が何故…。
不幸は続く。
父が死んで2週間後の夜。

ドンドン!ドンドン!!

家のドアが叩かれた。
沈んでいるアネシアは俯いた表情で扉を開けた。
「アネシア・ロアン!お前を貨幣鋳造補助の罪で逮捕する!」
その言葉にアネシアの眠気が一気に覚めた。
「嘘よ!!そんな事…私はしてない!!」
叫ぶアネシア。
「訴えは城で聞く!来い!!」
無理矢理引っ張る神殿騎士団。
「違う!やってない!!私も…父も…そんな事やってない!!」
叫び声がして、隣の家から親方が出てきた。
「アネシア、どうした!?」
「助けて…!」
泣きながら口を開くアネシアを神殿騎士団が制す。
「道中、口を開く事は罷りならん。慎め。」
「おい、待て!」
親方は手を伸ばすが、それと同時に槍を突きつけられる。
「む…う…!」
親方はその場に膝をつき、神に祈るしか出来なかった。
「アルタナよ…あの子にせめて……慈悲を…!!」

ジャラララッ

目の前に出されたのは偽貨幣だ。
「この貨幣に…見覚えはあるか?」
そう言うと、アネシアは首を横に振る。
「本当だな?アルタナに誓って…言えるか?」
「……はい。」
首をかすかに縦に振る。
「しかしな、お前は短剣位作れたと言うじゃないか?不当な利益を得る為に…この貨幣を…鋳造したのだろう?」
暗く、ジメジメした中。
尋問官は丁寧な口調だが、アネシアは怖かった。
貨幣の偽造は漏れなく死罪だ。
故に、誰もが口を揃えて言う。「やってない。」と。
アネシアは正直に身の潔白を訴えた。
しかしながら、神殿騎士団は頷かない。
何故ならアネシアが“やってない”と言う証拠が無いからだ。



世の中“あった”と証明する事より、“無かった”と証明する方が難しい。
例えば、「ラテーヌにゴブリンがいる」と言う事を証明するには、
ゴブリンを一人連れてくれば良い。
簡単な事だ。
だが、いないと証明する場合、ラテーヌを隈なく調べ上げる必要がある。
また、犯罪も“やってない”と言うのに証拠は出せない。
特に、証拠と呼ばれる物が人の証言主体であるこの時代であっては尚更だ。
この様な事を“悪魔の証明”と言う。
故に、本来ならば、「あった」と言う証拠を出すのが筋と言う物なのだ。
それも決定的な証拠を幾つも積み上げる必要がある。
だが、神殿騎士団はその証拠を“噂”だけで判断し、“鍛冶技術”が証拠と言うのだ。

「何で…私がそんな事をするんですか…?やって無いんです……本当に…やって無いんです…。」
俯いてポロポロと涙を流すアネシア。
「そうか、しかしだ。アネシア。君の父親は貨幣を偽造し、世に流した。これは“事実”何だよ?」
何が事実な物か。
父はずっと剣に向かっていたのだ。
貨幣鋳造等する時間も無かった。
だが、それを説明したとて、不毛な答えが返ってくるだけだ。
「それを、誰が証明する?もしかしたら寝てると思ってた間にやっているかもしれないじゃないか。」
最早完全に有罪を固める為の尋問だった。

1週間…。
アネシアは牢獄の中で過ごし、昼に尋問室で尋問される生活を送った。

精神と体力が削られていく時間。
暗く、陰鬱な空間で彼女は神に祈った。
せめて、救いの手を…と。

その夜、アネシアに面会があった。
見知らぬ若いエルヴァーン。
二人は尋問室で対面した。
「あの…貴方は…?」
見た事も無い男性に首を傾げるアネシア。
美形の男性に少しだけ頬を赤くする。
「貴女の父に世話になった者です…。あの人の剣は逸品だった…。」
父の剣を褒められ一瞬喜ぶ顔をするアネシア。
だが、頭に斬首のシーンがフラッシュバックし再び項垂れる。


「君、暫く…二人きりにしてくれ無いかな。色々と話がしたい。」
横のエルヴァーンに言う。
「し…しかし…。」
「私が誰か知らぬ訳でもあるまい。大丈夫だ。」
「き…規則は規則です!」
一瞬たじろぐが、若者はそっと、小袋を手渡す。
「少し休憩すると良い。何、ばれても私が何とかする。」
そう言うと、ペコリと見張りは頭を下げ、外に出た。
周りに誰もいない、静かな空間。
尋問室は分厚い壁で区切られ、ドアも分厚い。
中で何があろうとも外に知られぬ様にする為だ。
例えば、殴った際に泣き叫ぶ人の声を聴けば囚人は怯え竦む。
それが噂となってはいけないので音は殆ど漏れなかった。
「…さて、邪魔者は…いなくなりましたな…。」
そう言うと立ち上がり、若者はアネシアの横に立つ。
「……あの…?」
不思議な雰囲気のアネシアの胸元に若者の手が滑り込んだ。
「きゃあっ!!」
「ふっふふふ…素晴らしい手触り…きめ細かな肌だ…。」
舌で唇を舐め、膨らみかけの乳房を揉みしだく。
「や、やめて!何の冗談よ!」
「冗談とは失敬ですな…。あの日…刑場で貴女を見たのです…美しかった…貴女の泣き顔は…!」
人の良い顔はどこへやら、それは雌を犯す獣の目だ。
「貴女の様な美しい泣き顔を見ると…堪らないのですよ…!」
「助けて!!誰かー!!助けてぇ!!」
あらん限りの声で叫ぶ。
「無駄ですよ。ここで叫んでも…声は外に出ません…ですが…ふむ。私とて紳士の端くれ…
無理矢理戴くのも不躾でしたな…。」
そう言うとそっとアネシアの耳に囁く。
「その体…今、ここで好きにさせて戴けるのならば…貴女を釈放して差し上げよう。」
瞬間、ピタリと体を止める。
「ふふふ、私にはその力がある…。このまま行けば貴女は死罪…または利き腕の切断です。
そんな目にはあいたくないでしょう…?たった一晩…しかも、この時だけで良いのですよ?」
清廉潔白な彼女は、このまま行けば刑場の露と消える。
父と同じ様に。
自分は無実だ…。だがそれを証明する事が出来ない。
「いかが致しますか…?勿論…無理にとは言いません…。」
先ほどまで無理矢理犯そうとしていたのに何を言うのか。
しかし、アネシアに選択の余地は無かった。
アネシアはこくりと頷いた。
それを見て自称・紳士はアネシアの体を触り始める。


「ふふ…やはり素晴らしい…。今までの中でも極上の肌触り…!」
体中を撫でられる感覚に唇を噛んで耐える。
そっと、パンツの中に手が滑り込む。
「…っ!!」
ビクリと体を震わせ、硬直させる。
「ふふ…やはり…まだ、誰も通ってはいない様ですね?」
そう言うと、尚も体を全体をねぶっていく。
頬を舐め、首筋も舐める。
「やはり果実は青いうちに食すのが…一番だ…。」
徐々に体がじっとりと汗を流していく。
少女は神に祈った。

“助けて”

ただ、それだけを。

「ふ…用意は良いようだ…。」
そう言うと、椅子を壁際に置き、アネシアを座らせる。
「そう、良い子だ…そして…足を開いてください…。」
下着はとうに剥がれていた。
スカートを捲くり上げると、そこには露に濡れる堅く閉じた蕾があった。
それを見ると男は股間の物をズボンから出す。
「ああ、貴女の美しい物を見て、私の物はとても堪らない様だ…!」
それはやや細めだが、長めの男性器。
あれが自分のここに入るのか…。
初めての物をこんな獣に散らされるのか…。
「うっ…ずっ……ううあぅ…っ…うううっ…」
アネシアは泣き出す。
「美しい泣き声に…泣き顔だ…それこそが…私にとって最高の食前酒です…!」
そう言うと、アネシアの足を掴み、まだ誰も通った事の無い女陰に先をつけた。

ググッ…

堅く閉じた蕾は開かない。
当然だ。彼女はまだ子供だ。
花開く時には至っていない。

だが、尚も無理矢理に押し付ける。

クチュ…

僅かに先が入った。
それと同時にアネシアを襲う引き裂かれそうな痛み。


「あぐうぅっ!!」
堪えなければ。
自分は生きてここを出るのだ。
堪えなければ…!
尚も奥に進むペニス。

「あぎぃいぃいいぃ…!」
歯を食いしばり、涙を流すアネシア。
「おお…この締め付け…。予想外です…。ここまでの極上の花だったとは…!」
そして…。

プチン

軽い音がして、アネシアの処女は奪われた。
「うぎいいいいいいぃぃぃぃっ!!」
痛みがアネシアの体を駆け抜け、女陰からは血が滴り落ちた。

ストロークをする度に血の音がする。

ヌチュ…クチュリ……

「ぐっ…うううあぅ…!!」

歯を食いしばり堪えるアネシア。
いつまで堪えれば良いのだろう?
「堪える顔もまた美しい…。しかし…果実は食べたら…それまでなのです…ですから出来る限り味わい尽くさねば!」
処女を犯す事が彼の目的だった。
その為この監獄に来るのだ。
兵士はそれを解っていたからこそ、一度は断った。
そう、ささやかな同情だったろう。
だが、そのささやかな同情は金に流れた。
そう、この一晩だけで…彼女は解放されるのだから、と。


ぐちゅ…ずちゅ…

淫猥な音が尋問室の中に響く。
僅かな愛液と血が潤滑油となり、アネシアは腰の動きにあわせ、揺られるだけ。

痛みに堪え、うめくだけのアネシア。
快楽は僅かにある物の痛みが強くて涙しか流れなかった。

「ううぅむ…これはっ…!」
そう言うと、若者はアネシアの胎内へと精液を放った。

「うぅ…うああああっ!!うううううー!」
汚された事の後悔がアネシアを襲う。

「ふむ…美しき花が…咲きましたな…。」
アネシアの膣から自らの物を抜き取ると精液が女陰から滴り落ち、血と混ざり綺麗なピンク色に染まる。

「良い顔だ…。それでこそ…貴女です。」
そう言うと、ホンの少し顎を手に取り、アネシアを見た。
涙が蝋の火で照らされ光っていた。

アネシア14歳の誕生日だった。


次の日の朝、アネシアは釈放された。
汚された体は洗ってもいなかった。
家に帰り、風呂に浸かり…。

また泣いた。

その後のアネシアは悲惨だった。
見知らぬ男性に対し恐怖を抱く様になった。
優しく対応してきても、獣の様に変わるあの顔が思い浮かぶ。
少し気を惹かれても、いつ顔が変わるのか…怖かった。
父もいなくなり、彼女は心の拠り所を失い泣き続けた。

親方だけが、彼女の告白を聞き慰めた。
その胸には大いなる怒りの炎を灯しながら。


その後、事件は急展開を迎える事になる。
貨幣鋳造の真犯人が見つかったのだ。
捕まえたのは、鍛冶工房の親方だった。
必死に真犯人を探した親方は1年ばかり修行した一番新参者の部屋を調べた。
そこには貨幣の形を取った物がゴロゴロと出て来た。
新参者は貨幣偽造がばれかけた時、一部をリードの責任とし、
逆に神殿騎士団に訴え出たのだ。
そして、真犯人として自らが捕まってはたまらないと、一番恨みを抱きそうなアネシアが逮捕された。
男の唯一の誤算はアネシアが釈放された事だ。
アネシアが釈放されて、喜ぶ鍛冶場の中にあって、少し引きつった顔をした新参に違和感を覚えたのが切欠だった。
順当に行けば、アネシアが処刑される予定日の2日後の事であった。

真犯人は改めて処刑され、杜撰な誤認逮捕と冤罪で神殿騎士団は王立騎士団に糾弾される事となり、
アネシアへ多大な慰謝料と、父の罪は間違いであったとする免罪証が発行された。
アネシアの目には神の思し召しに映っただろう。
失った物は大きい。
だが、僅かでも返ってきた。しかも父の無罪まで証明された。
アネシアは受け取った金で父の墓を建て直し、残りを孤児院と教会に寄付。
家も売り、僅かに残ったお金で冒険者になった。
僅かでも良い。
不条理に泣かされる人間を助けたい。
こうして、アネシアはサンドリアの冒険者となった。

後日…。
アネシアを犯した青年の死体が発見された。
神殿騎士団に繋がりがある彼の胸元には、ナイフが刺さっていた。
アネシアが作った物と言う意見もあったが、
アネシアはその時、葬式の段取りを教会関係者と話しているのが目撃されている。
また、神殿騎士団は批判と糾弾で容易に動けず
王立騎士団によって『暴徒によっての殺害』とされ、神殿騎士団もそれ以上は追及しなかった。

真偽は定かではないが、鍛冶工房の親方がアネシアが旅立つ時、言った言葉があるという。
「仇は取った」と。


「…?」
悲しい瞳を見てディエリーザ、顔を近付ける。
「あ、ごめんなさい…ちょっと…嫌な事思い出しちゃって。」
手を顔の前で軽く振るアネシア。
「でも…良いなー…胸おっきくて…。」
再び、マジマジと見るアネシア。
その視線に再び、ディエリーザは赤くなる。
「ちょ…ちょっと恥ずかしい…。」
胸を隠すディエリーザ。
「なによ〜女同士…良いじゃない!それ!」
ディエリーザに飛び掛り、胸を掴むアネシア。
「キャッ!」
まるで、綿の様に柔らかい感覚。
「ちょ、ちょっとぉ…!」
明るく笑うアネシアにディエリーザは顔を赤らめ身を捻る。
「へへ、つーかーまーえたー!」
ガシッとディエリーザの肩を抱き、胸に顔を押し付ける。
「キャッ!」
力で振りほどくのは簡単だった。
だが、悲しい瞳を見た後、何故かそうする気にはなれなかった。
「…お母さんって…こんな感じなのかなぁ…。」
ポツリとアネシアが言った。
「え…?」
「私ね…お母さんの顔…見たこと無いんだ…。」
心の傷を吐露するアネシア。
体を止め、アネシアの声に耳を傾ける。
「父さんが…育ててくれて…。毎日が楽しかったけど…。お母さんのいる子が羨ましかった…。
でも、それをお父さんに言うと…悲しいと思ったから…。」

ポチャン

涙が湯船に落ちる。
「そして…父さんも…いなくなって……。私は一人…!どうして…辛い事ってあるんだろうね?
この前もそう…。助からないとしたって…助けたかった!何であんな死に方…!!」
助けに来た筈の人間に切り殺される。
あまりにショッキングだった。
「そう…。辛い事はある…誰にでも…。」
ディエリーザが頭の中で辛い記憶を反芻し、口を開く。
「それでも…。楽しい事はあって…。辛い事は…忘れたらいけないけど…。歩かないと…私はその事実を認められないの。
お父様が死んだ時がそうだった…。心の中にぽっかり穴が開いて…自暴自棄になって…。でも、前に進んだら…
楽しかった。それでも辛い事はあったけど…。目を背ける事もあるけれど、世界は楽しい…。」
胸に顔を押し当てたまま、アネシアは言う。
「あいつは…どうなのかな…。」
“あいつ”とはエザンの事だろう。
「気にするのね…結構。」
「あいつ…憎んでた…。色々な物…。神様が嫌いって言ったけど、きっと違う。
あいつは世界が憎いんだ…。楽しい事とかあったけど…多分…辛い事の方が多くて…。」
そっと、ディエリーザはアネシアの頭を抱え込む。
「それでも、彼女は生きている…。本当は…優しいのよ…。彼女も…。」
「…まだ…許せそうに無いよ…私…」

涙はディエリーザの胸を流れ、湯船に溶けた。
そんなアネシアをディエリーザは黙って、抱きしめる事しか出来なかった。


「ご、ごめんね…」
ふらふらと共同風呂から出るアネシア。
着ているのはシルクローブだ
「だ、大丈夫…。」
同じく、ふらふらとしながらウールガンビスンを着たディエリーザが出てくる。
二人とも顔が赤い。
長々と風呂に入り、のぼせてしまった二人はフラフラとモグハウスに入る。
「そうだ、どうせなら…お昼一緒に食べない?一人じゃ味気ないし…。」
ディエリーザからの昼食のお誘い。
「そうね…。そうしましょ…じゃ、着替えてからすぐに…。」

少し、湯だった体を冷まし、いつもの服へと着替える。
ガンビスンを脱ぎ、裸身を晒すディエリーザ。
ブリーチズを履き、ベッドに腰かけレギンスをはめる。
ガントレットを装着し、サーコートを着込む。
最後にコロネットを装備し、軽く鏡の前で服を正す。
「うん!」
ニコリと笑うと扉をゆっくりと開けた。


南サンドリア
商店が立ち並び、サンドリアの経済の中心と言っても過言ではない。
競売前は今日もにぎわっている。
「今回はサンドリアがトップ取ったから賑やかだね。」
特産品が所狭しと並んでいる。
調理を嗜む冒険者が売る料理を買い、芝生に座って食べる。
歓談の時。
(この楽しい時が続けば、皆笑えるのに…。)
アネシアはそんな事を思いながら、空を仰ぎ見た。
その時だった。

「だっからよー!!あの時、あの女がさ!」
気持ちの良い気分は酔っ払いの声で吹き飛ばされた。
「馬鹿ね。そんな女に引っかかるから悪いのよぉ!」
「ハッハッハ。ロアド、お前が悪いぜそりゃ!」
ヒュームの男女に、エルヴァーンの男が道を悠々と歩く。
道行く物を押しのけて。


ムッとするアネシア。
「はぁ…。有象無象がいると…大変だ。」
ディエリーザも頭を抱える。
冒険者優遇政策のマイナス面がコレである。
治安の悪化…。
取り締まるには取り締まるが、修羅場をくぐった冒険者では国が抱える兵士では取り押さえられない事も多い。
強い冒険者相手では、見てみぬふりをする事もあった。
あの3人組は確かに強いだろう。
だが、それでもアネシアやディエリーザよりかは数段下であるとも言える。
それは装備を見れば大抵推し量れる。
問題は彼らが3人だと言う事。
強さは上でも、3対2では分が悪い。
つまらない事で怪我を負うのも得策では無いだろう。
だが、ここで止めねば冒険者の沽券に関わる、と思い、立ち上がったその時だった。
テコテコと歩くタルタルの女の子が袋を抱えている。
ヒュームの女性がそれを見るやいなや、スッと足を出し引っ掛けた。
「あうぅっ!」
ベチャっと地面を転び、袋を前に落とすタルタル。
「あ、種…。」
袋の中には種が入っているのだろう。
道には黒い種がパラパラと散らばる。
「飯の種にもなりゃしないじゃない。こんなもん。」
袋を蹴り上げ、道端に種が散らばった。
「はーっはは、ひでえなぁおい!」
「アーッハハッハ!」
「フフッフフハハハハハ!」
3人は声をあげ笑う。
案の定、兵士は見て見ぬ不利。
触らぬ神に祟りなしと言う所か。

アネシアの頭にあの日の事が浮かび上がる。
蹴り壊されたアルタナ像…。

泣き叫ぶ少年をよそに更に打ち砕かれる少年の“宝物”。

あいつは笑いこそしなかった…だが、目の前にいる奴らは…!!


アネシアが飛び出そうとした時。

ロアドと呼ばれたヒュームの男が前につんのめった。
「のあっ!」
道路に突っ伏す男。

ゴスッ!

黒いソルレットが男の頭を踏みつけた。
隻眼、黒鎧、銀髪。

エザンだった。

「な、何しやがる!!」
足をのけようともがくロアドと呼ばれた男。
エルヴァーンの男は腰からダークアクスと連邦軍師制式帯剣を取り出し構える。
「ちょっと、いきなり失礼じゃない!?」
女も短剣を抜き、身構える。
剣先から雫が滴り落ちている。恐らくはベノムナイフ。
それを見ても動ずる事無く言葉を紡ぐ。
「歩くのに邪魔だ。消えろ。」
その言葉を発するや否や、ソルレットを頭から離しロアドを蹴り飛ばした。
「ぐおおっ!!」
少しのたうち回った後、ロアドは背中に背負ったダーククレイモアを抜き放つ。
「何のつもりだ手前!!」
目は怒りに染まっている。
「邪魔だ。そう言った。それとも、言葉が理解出来ない奴か?」
ぶっきらぼうに言うエザン。
「ちょっと腕が立つからって…でかい態度しやがって!」
酒でデカイ態度を取っているのはどちらだろうか。
傍目には明らかだった。
だが人々は災厄を恐れ、手を出さない。
「おい、こいつ…ぶっばらすぞ!“アレ”行くぞ!ネアスは右、エルグラードは左だ!」
そう言うと、ロアドが正面に。
エルグラードと呼ばれたエルヴァーンの男は左後方。
ネアスと言うヒュームの女は右後方の位置がつく。
「後悔しても、もうおせえ!!行くぞぉ!!ダークフェニックスフォーメーショーン!!」

ダサい。

余りにもダサいネーミングセンスにある人は笑い出しそうになる。
それでも、災厄を恐れて笑いを堪え口元を抑える。
ネアスがナイフを構え突っ込む。
ガントレットでいなすと同時に、エルグラードが両手の武器で連撃を繰り出す。
何とか避け、時には手で払う…その時…。
「もらったぁ!!」
ロアドが真上に飛び上がり、大上段に構えた剣を振り下ろす!


バギィン!!

「のぐぁ!!」
情け無い声を出し、ロアドが吹き飛ばされた。
ケーニヒシールドがエザンの後ろにあった。
白いサーコートを着込んだディエリーザがそこにいた。
それと同時に、エザンの回し蹴りを食らったエルグラードが近くの街路樹に頭をぶつけていた。
「だ、誰よあんた!」

ヒュッ!

蒼い剣線がネアスを襲う。

キィン!

鋭い響きが場に響き渡った。
「貴女の相手はこっちよ!」
真っ赤な装備に身を包むアネシアがそこにいた。
「…やってくれるじゃない!」
「あら、褒められちゃった?じゃ、一撃はオマケしてね!」
そう言うと、ネアスの肩口から血が僅かに吹き出た。
「な!?」
「油断したらダメよー。歩き方も解らない赤ちゃんは特・に・!」
「何ですってぇ!?」
激昂し、突っ込むネアス。
ゴールドバックラーで相手の右腕を払い、そのまま左手をネアスの腹に当てる。

バジィン!!

一瞬、激しい音がして、ネアスが吹っ飛ぶ。
「必殺!電撃当身…なーんてね。」
雷の正体は放つ直前のサンダー。
エンサンダーの応用だ。
「エザン!今日は助けてあげるから、少しは感謝しなさいよ!」
快勝したアネシアはエザンに剣を向ける。
「……………。」
黙ってアネシアを見るエザン。
「…な、なによ。」
「……誰だ?」

ベシャ!

その場につんのめるアネシア。


「……私は覚えてる…?」
背中合わせのエザンのディエリーザが不安そうに問う。
「んー…どっかで見た気はするが…?」
本気で覚えて無いらしい。
「あんたねぇ…どこまで人を舐めてんの!?一週間前、ジュノとベドーで会ったでしょうが!!」
そう言われて、少し首を捻る。
「ああ、そんな事もあったな。確か…アムネジアだったか?」
ガクッと膝をつくアネシア。
「そ・れ・は!今のあんたの状態の事でしょうが!!アネシアよ!アネシア!」
アムネジアとは健忘症及び記憶喪失の事である事をここに記す。
「で、あんたの名前は…聴いてないはずだが?」
背中にいるディエリーザに問う。
「ああ、そうだったね。私は…ディエリーザ。宜しくね。エザン。」
「ふん。だったら、とっとと蹴散らすぞ。」
そう言うと、エザンは背中の大剣を抜いた。
「ぐぐぅ…。てんめぇ…!」
ヒュームの男が立ち上がる。
「あっちのは私がやる。あんたはそこの男をお願い。」
そう言うと、エルグラードの方を向くディエリーザ。
そして、街中の乱闘は始まった。
「ふざけんじゃないわよ…!」
バザーに突っ込んだネアスが立ち上がる。
「しぶと!!」
まあ、アネシアも殺さぬよう手加減したから当然ではあるのだが。
「へへーん、じゃあ次は…爆炎当身でも…!」
その瞬間、女が何かを投げた。
黒い何かが先についているそれは、くるくると回る。

バズン!!

女が投げたそれは、空中で爆ぜ、爆音を響かせる。

「きゃああっ!!」
「うわああ!!」
「うあーーん!」


悲鳴と泣き声が聞こえる。
「あんた…!」
炎を見て睨むアネシア。
「こいつで…バラバラにしてやるっ!」
ネアスは手に持った震天雷を再び投げつける。

「シャレになって無いわよ!!」
飛び上がるアネシア。
空中で震天雷の柄を掴み、女の方へ投げつける。
「ちょっと…そんな!?」
信じられない事をする。下手すれば爆発に巻き込まれるというのに。

バズン!!

ネアスの間近で震天雷が爆ぜ耳が爆音で塞がれた。

「くっ…信じられない…!」
そして…。
「少し…反省しろ!!」
ジュワユースによる、エンファイアを纏った連撃。
「きゃあっ!!」
複数箇所を火傷を伴う刺突がネアスを襲う。
ファストブレードの応用。
刺突に向く武器故に、彼女なりに考え出した方法だ。
何とか後ろに逃れるネアス。
「天誅!!」

ズバォオン!!

サンダーVがネアスを直撃した。

「どうだ!」
焦げたネアスの口から煙がポワッと飛び出して気を失った。


「そらそらそら!!」
エルグラードがディエリーザに襲い掛かる。
斧と剣の連撃。それは全てを巻き込む竜巻の様だった。
「はっ!!」

バキィン!!

盾で剣を持つ手を強打する。
「ぐおっ!」
痺れて、剣を落とすエルグラード。
「降参なさい。貴方に勝ち目はありません。」
剣を落としたエルグラードを見て、ディエリーザが降伏を呼びかける。
「ふふふん…何のこれしき!必殺!」
斧を構えるエルグラード。
「バーサクウォークラィデリシャス山串ランペー…」

ヒュン。

男が自ら自慢の技の名前を言い終わる前に、ディエリーザがエルグラードの横を駆け抜けた。
「過信は貴方の足を掬うだけですよ。今しばし…修行しなさい。」

パシュッ!

複数箇所から血を噴出しエルグラードは地に倒れ伏した。



「おらおらおらおろぁああ!!」
ダーククレイモアを振り回すロアド。
素早く力強い…だが、どれも剣筋が粗い。

ガッ!

ギィン!!

チュィン!

そのどれもが、エザンのバルムンクに弾かれた。
「その程度の腕前で…良くそこまで自信を持てたな。」
はっきり言って大した事は無い。
「…のやらぁ!!」
突っ込むロアドを足を引っ掛け地面に倒す。
「ふんぐぉお!?」
盛大に転ぶロアド。
確実に厄日だった。
「……無様だな…。」
その言葉にカチンと来る。
「て、手加減してりゃ頭にのりやがって!」
完全な負けフラグである。
「こいつで…どおよぉ!!」
剣にサイレントオイルを振り掛ける。
「力だけが強さじゃねえ!技だけが強さじゃねぇ!!オレは…頭で戦うんだよっ!!」
すると、ロアドは火打ち石を取り出し、サイレントオイルに火をつける。

ゴオッ!!!

赤々と燃える炎の剣がそこに出現した。
「どぉよ…この輝き!!さあ、土下座すんなら…!!」
赤々と燃える炎を前にエザンはポツリと呟いた。
「………ただの馬鹿か。」
「んだとぉ!?だから、オレは知恵で……!?」
その時だった。
「ずわっちゃああああああ!?」
刀身の熱が柄に伝わり、それが男の手を焼いたのだ。
堪らず、剣を地面に突き刺し、手を冷ますロアド。
「そんな腕では剣が哀れだな。」
そう言うと、バルムンクを高々と振り上げる。
容赦の無い目。
明らかに自分の首が飛ぶ恐怖を脳裏で垣間見たロアドは怯えていた。
「ま、待ってくれ!お、俺たちが悪かったぁああああああああ!」


ヒュオン!!

その叫びを切り裂く様にバルムンクは振り下ろされた。

パキィン

重厚な黒鉄で出来た剣はガラスの様な音を立て、砕け散った。

パシュ!

それと同時にロアドの顔に斜めの傷が開いた。
「う…うぉおあああああ!!」
「殺すのも面倒だから…それで勘弁してやる。」
そう言うと、踵を返し種を泣きながら種を拾い集めるタルタルの元へ行く。
「…ほら。これやるから…とっとと家へ帰れ。」
そう言うと、色々な種が入った袋を3袋タルタルの前へ置く。
「………何なのアイツ…。」
以前は堂々と石像を破壊したのにも関わらず、いきなり優しくなる。
その行動の読めなさがアネシアとディエリーザを呆然とさせる。
泣きはらした目をエザンに向けるタルタル。
「えと…あの……。」
「………。」
黙ったまま門の方へ歩くエザン。
「おねえちゃん!!ありがとぉ!!」
手を大きくぶんぶん振るタルタルの声が聞こえたのか、耳を一瞬が動いて、門の向こうに消えた。

その後、騒ぎを起こした3人組は神殿騎士団に捕縛され、アネシアとディエリーザは一夜の英雄となり
町の人々から酒を振舞われた。



アネシアは上機嫌で騒ぎ。
頬を赤くしたディエリーザには男が群がるが、やんわりと返す。
ふられた男達が横で涙を流し項垂れていた。

アネシアは思う。

泣きたい時もあるけど。

嫌な事もあるけれど。

楽しい時が沢山ある!

お父さん、お母さん、産んでくれて…ありがとう!感謝します!

お父さん、私を見てますか?

お父さん、天国でまた、私を抱っこしてくれますか?

お父さん、まだ見ぬお母さんに伝言を頼みます。

お母さん、天国で会ったら色々話す事があります!

お母さん、色々と聞かせてくださいね!

お母さん、少しだけ…甘えさせてください。

二人とも…私は…アネシアは…楽しく騒いでます!

夜は更けていく。

祭はまだまだ…終わらない。


To Be Continued





次回Love & Death予告!

凍りつく様な寒さの中、震える。
凍てついたのは体か、それとも心か。

幸せと不幸を垣間見て、彼女は…死んだ。

黒い衝動だけが、彼女の内にある。

世界を憎む彼女を抱き止める一対の腕。
その目に映るのは、憎か哀か。

次回、Love & Death
第3章『Die Young』
エザン「見なくても良いぞ。くだらん。」
アネシア「あ、あんたちょっと何を言ってんの!見てくれる人に失礼…
     てか私の出番わあああああ!?」
ディエリーザ「えと…その…こ、こうご期待…!?

       コレで良いんですよね?」