Love & Death
← 第2章 [Spiritual Awakening]
地面にへばりつく様に生きてきた。
殴られ、蹴られた事も数知れない。
半死半生で冬の外に放り出された事もある。
親の顔は知らない。
神様は石ころだ。
あいつらは、見ているだけで…何もしない。
ガゴッ!
オークの頭が顎から脳天へ断ち割られる。
ドッ!
魔道士オークの両腕が吹き飛んだ。
抑え切れない衝動が身の内にある。
その疼きを沈める為に殺す。
食う為でも、救う為でもない。
毎日沸き起こる衝動を沈める為に、朝から夕まで何かを殺している。
エザンはゆっくりとデスサイズを収めた。
血が滴り、地面に黒い染みが出来る。
快晴のラテーヌの昼過ぎ。
陽気な日には似合わない様な屍の山。
まだ殺し足りなかったが辺り一帯は血の海。
周囲にはもう殺す対象がおらず、少し休む為の場所へと移動する。
「…ふう。」
そして、オルデール鍾乳洞の入り口に座り込む。
ひんやりとした空気が少し気持ちが良く、火照った体には良い塩梅に沁み込む。
洞窟の壁に背を預け、ゆっくりと…目を閉じた。
エザン・リューディはバストゥークで育った。
生まれも親の顔も知らない。
だから、当然名前も無かった。
そんな名前の無い状態でエザンはおよそ10年以上を過ごした。
泥棒、あのガキ、猫娘…他にも色々と呼ばれたが名前では無かった。
最も、名前など必要無かったし、いらなかったのだが。
路地裏で捨てられた布に包まり夜を過ごし、ゴミを漁り、時には盗む。
見つかれば大人達に酷く殴られるから必死だった。
何度か酷く捕まり、一度は殺されそうになった事もある。
その時は鉱山区のガルカが助けてくれて九死に一生を得たが。
それでも、食うには困るから盗む。
見知らぬ魚を食べ、腹をくだす事もあった。
10歳の時だ。
体を買うと言う男の前で服を脱いだ事がある。
だが、その時の男の目は忘れない。
彼はエザンの体を見るなり、約束の金の3分の1程を放り投げ、舌打ちして帰っていった。
他の女の体は違うのか?
ならば、自分は何なのだ?
人と違う。
神は自分に呪いの全てを詰め込んだのだ。
自分自身すら呪いながらも、生きていたかった。
良く、覚えている。
盗んだ剣で、女を襲い、その服を無理矢理剥いだ。
裸の女を射抜く様な目で見た。
そして…自分にはあるのに、その女には無い。
これが、普通の女なら私は何だ?
何の為に生まれ、辛い思いをして生きている?
考えるエザンをよそに女はそっと持っている物をエザンに向け差し出す。
「…お願…い…です…こ…これは差し上げますから…どうか…!」
切り裂かれた服を頼りに体を隠しながら、エザンに渡したのは紙に包まれた物だった。
何か食べ物でも入っているのかと思い、開けた。
マンドラゴラとチョコボのぬいぐるみ。
子供へのプレゼントか。
ふと、一瞬優しそうな目をするも、ハッと我に返り、包みごと女に投げつける。
踵を返し、駆け抜ける。
家族何ていない。
名前も無い。
暖かい寝床も無い。
お金も無い。
寒さをしのげる暖かい服も無い。
玩具も、暖かいスープすら口に出来ない。
持つ者と持たざる者の格差を垣間見てしまった。
あの女は幸せなのだろう。
ぬいぐるみを貰った子供はどんな顔をするだろう。
「う…ぐっ…うっう…ぅ…」
寝床に使う倉庫に入ると、声を殺して泣き始める。
顔を抑え、涙が頬を伝う。
夜が来て眠くなるまで泣き続けた。
その日は寒かった。
倉庫の隅に丸まって寝ていた。
寒さが突き刺さり、更に丸まって寝た。
その時だった。
「おい、寒いのにこんなとこでやんのかよ!」
「しゃーねーべ。ここしかあいてねーんだからよ!」
そう言うと、2人の男は縄で縛られ抱え込んだ女を倉庫に投げる。
「はは、馬鹿だよなコイツ!」
「そうそう。俺たちの縄張りでこそこそ商売しやがって!」
「むぐぅー!うぅー!」
口に布を詰め込まれ、女はうめく事しか出来ない。
女の歳は恐らく16歳程か。
女として成長の狭間にある未成熟な体だ。
エザンはあまりのやかましさに目を覚まし、その光景を荷物の隙間からそっと見ていた。
「とっととやろうぜ!」
そう言うと男たちは服を脱ぎだす。
「そうだな。まずコイツをひん剥いてから…!」
そう言うとナイフでローブを切り裂いていく。
「んむぅー!うーぅーーーぅ!!」
飛び散る布キレ。
響くうめき声。
「じゃ、俺1番な!」
「ちっきしょ、じゃ手前が楽しんでる間…こっちだな!」
そう言うと、同時に膣と肛門にいきり立ったペニスを突き刺す。
「もがぅーーー!!ぐもぉおおおおおぉおおおおお!!」
涙を流し、肛門と膣から血が流れ出す。
首を振り暴れる女。
だが、それも空しい抵抗にしか過ぎない。
「おおっ、こいつ中々良いぞ!」
「ケツも締め付けやがる…!」
痛がる女性。
快楽に顔を歪める男。
あまりに醜い光景。
何度も酷い光景を見て来たがこの手の光景は初めてだった。
目を背けたくなる光景だが、何故だか目が離せなかった。
女の口から、布が外れる。
「あぐぅうかはぁ…。た、助けあうぅん!」
「喘いでるくせに何が助けてだ!」
「そうそう、ま、朝まで相手してやっからよ〜!」
ぐちゅぐちゅと液体の音がする。
男たちが女を激しく犯す。
女も体が動き、腰を動かす。
「かっ…はぁ…ううぅん…!」
グリグリと回転させる様に男根を動かすと快楽に悶える女。
その時だった。
ガタン
エザンが、かすかに動き箱を動かした。
「だ…誰かいるのか!?」
「何!?」
そう言い、男達が音のする方へ注視した瞬間。
女は力の緩めた男達から逃れ、走っていく。
血と愛液を垂らしながら。
呆然とする男達。
その男根は天をつくようにいきり立っている。
「ざけやがって!虫か!?それともネズミか!?」
がたがたと箱をどけて行く男二人。
エザンは、音を立てた少しの後悔を抱き、嵐が去る様に祈った。
見てもいない子供達は幸せなのだ。
母親がいて、玩具も貰えて、暖かいご飯も、家もある。
それだけ恵まれた子供がいるのだ。
自分がいるこの状況を神様はきっと見過ごしてくれる。
あの女の人だって逃げられた。
だから、自分は見つからない。
だが、その期待は裏切られた。
神様は性欲に狂った男達から哀れな少女を助ける事はしなかった。
バガン!
髪を引っ張られ、木箱に叩きつけられる。
「くそっ!こいつ、邪魔しやがって!!」
「ああ、ったく…良い所でよ!こいつに突っ込んじまおうぜ!」
そして、無理矢理服を引き剥がされた時の男達の嫌な笑い顔。
「やめろ!離れろ!!」
じたばたもがくが、少女の腕力では男の力には適わない。
あっと言う間に上の服をはがされる。
ほんの僅かな膨らみが女になろうと言う少女の体を形作っていた。
「じゃ、こっちもご開帳…!」
パンツも剥ごうとする男達。
「やめろってば!!こいつ!こいつっ!!!」
足で蹴りながら抵抗するも男達にとってはさしたる痛みではない。
徐々に剥がされ、そして全ては剥がされた。
「こいつ…男か!?」
「いや、見ろ…女のもあるぜ。…くっくっくおもしれえ!」
エザンの股間には男根と女陰が両方存在していた。
彼女が悩む理由。ショック。呪いの全てがそれだった。
そう言うと、濡れてない堅く閉じた貝を舐め始めた。
「気持ち悪い!?やめろお!!」
「おいおい、湿らせとかねえといてえぜ?少しは気持ち良くなれるかもしれないぜ?」
「やだぁ!!離れろよ!!!」
暴れても無駄ではあった。
だが、一縷の望みにかけて自分もあの扉に駆け込もう。そう思った。
そして…
ぎじゅっ…!
唾液で濡れた幼い女陰に男根は無理矢理突き入れられた。
エザンの頭から音が消えた。
叫び声を上げても聞こえない。
男達が下卑た笑い声を上げながら、無理矢理ストロークを繰り返す。
痛いだけだ。快楽が微塵も無い。
もう一方の男も無理矢理覆いかぶさり、肛門を貫いた。
激痛。
涙を流し、狂いそうな痛みの中悶える事しか出来ない。
ドクン!!ビュ!ビュルビュッ!!
熱い物が体内を焼いた。
気持ちが悪く胃の中の物を吐きかけたが堪える。
股間を伝って小さい血溜まりが出来た。
「くっく、流石に大人しくなったか?ほら、手前の血で汚れちまった綺麗にしろよ。」
そう言うと、虚ろな瞳のエザンの口に男は無理矢理男根を突き入れる。
「ごもぉ!?」
その時だった。
「ぐあぁっ!?」
男が男根を引き抜いた。
血で染まる男の逸物には僅かな歯型。
ミスラの歯は他の種族のそれより鋭い。
急に入れられた事で歯に当たり、突き刺さったのだ。
完全なる自業自得、
だが、男は逆上する。
「ざけやがってえええええ!!」
エザンは扉へ向かって逃げ様とした。
だが、尻尾を掴まれ、引き戻された。
ナイフを持った男に体中を切られた。
もう片方の男は笑いながら見てる。
痛みでのたうち回るうちに、左目に白刃映り…暗くなった。
「あぎぃううあああ!あー!あー!!!!」
片目を押さえ、のた打ち回るエザンを見て、男は溜飲を下げたのか倉庫を出て行った。
汚れた床と傷だらけの少女を残したまま。
3日ほど経った。
千切れかけた服と、汚れた布で体を覆い、夜のバストゥークの町を彷徨う。
手には刃のかけたブロンズソードを持ちながら。
力無く歩く。
気がつけば商業区のある家の前。
そっと、窓から覗いてみた。
暖かいご飯。
暖かい家。
暖かい家庭。
綺麗な服。
何もかもが自分には遠い。
同じ歳位の子供達が幸せを享受出来ているのに。
ああ、そうか。
私に、親はいないから…。
そっと、その場を離れて足を引きずり、外へ出た。
バストゥークの外へ。
そうだ、どうせなら、もう死んでしまおう。
その方が幾分かマシかも解らない。
だが、その考えは何かによって払拭される。
世の中のあまりの不条理。
それに同情したのか。
それとも嘲笑っているのか。
門から5分も歩かぬ内に、エザンは岩の陰に隠れて泣いた。
手に持ってる剣で自殺しようか。
そう悩んだ時だった。
ゴッ!ザブュ!!
何かを斬る音がした。
「きゃぁっ!!」
そっと見ると、クゥダフにヒュームの女が切られていた。
女が事切れた事を確認したのか、クゥダフ達は徐々に遠ざかる。
エザンはそっと、その女に近づく。
もしかしたら、お金を持っているかもしれない。
その時。
不思議な光が女を包み。
一瞬空中に上がったと思うとその場に立ち尽くしていた。
その女は後ろのエザンには気付いていない。
「いたたた…はぁ…。また負けちゃった…」
女は肩を落とすと、その場に座りこんだ。
今なら殺れる。
相手は瀕死だ。
殺せ。
お前が欲しい物を手に入れる為に。
暖かいご飯も、家も、綺麗な服も。
「はぁー全くこれじゃ、冒険者形無しね…。さて、そろそろ帰って…あれ、書かないと…」
エザンは容赦なく剣を振った。
ドガッ!
女は何一つ解らなかっただろう。
首筋を切られ、あっと言う間に死んだのだから。
死体を物陰に運び、物色する。
女は見た目の装備以上に金を持っていた。
装備品も剥ぎ取った。
地図を始め、持てる物は持てるだけ持つ。
冒険者認定証を手に取る。
字はあんまり読めないエザンだったが、簡単な単語と文字位なら読めた。
「ラニス…リューディー…。」
ポツリと名前を読み上げる。
女が少し羨ましかった。
名前がある限り、誰かには覚えていて貰える。
今、自分が死んでも時と共に痕跡も無く消えて終わる。
その時、ひらりと絵が一枚地面に落ちた。
それは一人の子供と今横たわる女のニコリと笑った絵。
良く描けている。
幸せな女のこの先を奪い。
子供の幸せすら奪う。
「……仕方ないよね…。だって…くれないんだもん…。」
そう言うと、エザンは穴を掘って、死体を埋めた。
トントン
ドアを叩く音がする。
スラムに建つ一軒の家。
そこには少年が一人、座っていた。
「あ、お母さんだ!」
トタトタと歩く、ドアを開けるとそこに建っているのは母じゃなく、ミスラの少女。
「だーれ?」
少年がそう言うと、黙ってエザンは剣を振りかぶった。
血溜まりの家の中。
エザンは佇む。
こうする事がこの子の為なのだと。
無理矢理心の罪悪感を胸の底へとしまう。。
その時、机に何かが置いてあるのを見た。
それは家の権利証。
色々と考えた、恐らくコレに名前を書けば家が手に入るのだろう。
そして、名前の部分は空白であった。
この権利証には名前が無い。
名前…名前がいる。
何かを思いつき、本棚の中から、色々と本を出す。
難しい字で書かれた物、絵がついている物、色々あったが、
その中の童話を手に取る。
勇者、お姫様、悪い魔法使い、ドラゴン…
様々な登場人物がエザンの手の中ですり抜けていく。
そして、一つの登場人物を見つけた。
それは悪魔。
悪魔エザン。
悪魔は勇者によって首を刎ねられて終わる。
しかし、悪魔が死ぬと呪いによって姫は殺されてしまい、勇者も最後に悲しみにくれ自害する…。
正確には解らないがそんな内容だろう。
何となく、惹かれたその名前。
見よう見まねで字をその権利書に書いた。
その時、名も無き少女は死んだ。
悪魔の名前を受け継いだエザンがそこにいた。
後日、鉱山区の一角の家に小さなミスラが住み着いた。
傷だらけの少女は、奪った金で医者にかかり傷も治療した。
食べ物だって事欠かない。
一見満足したかに見える。
しかし、日に日に大きくなる衝動。
奪っただけでは満たされない。
どす黒い衝動。
人を殺めた時、ほんの少し…それが収まった事を思い出す。
また、人を殺すのか?
リスクを犯してまで?
じわじわと考え付いた答えは一つ。
外にいるモンスターを殺せば良い。
冒険者になって、世界を駆け回り、殺してやる。
殺す殺す殺す。
どいつもこいつも殺す。
……あいつが…神が愛した物、全て壊してやる。
あの日から4年後。少女は家を売り、冒険者になった。
南グスタベルグの海岸に佇み、冒険者証明書を見る。
「エザン…リューディ…」
そう呟くと、粗末な錆びた大剣を背負い、歩き出した。
「あの〜?」
唐突に聞こえた声。
それは間近だった。
反射的に剣を抜き放つ!
ガキィン!
盾に受け止められ、残響音がした。
「ま、待ってください!敵じゃありませんよ!」
目を開けてよく見れば、それはディエリーザだった。
「……何の用だ。」
ホンの少し眠い目を擦る。
「あ、いえ…風邪…ひきますよ?」
辺りは夕日に染まり、暗くなっていた。
「……そうか…。」
嫌な夢ではない。
それは自分の原点だ。
誇る事も無いが、事実は事実。
受け入れるしかない。
結局、今は何を欲する事も無くただ、殺戮を繰り返す。
自分は一体何者なのか。考える事も忘れていた。
「……戻る。」
そう言うと、立ち上がり坂を上る。
「あ、じゃあ、私もご一緒に。」
トントンとついてくるディエリーザ。
何故、こいつは自分に話しかけてくるのだ。
こんな得たいのしれない奴に話しかける奴もそうはいない。
「あの…。」
「……何だ。」
答えない理由も無い。
少し億劫だが口を開く。
「ジュノで…子供の石像…壊しましたよね?」
「……正確には転んだ時点で壊れてたが、それがどうした。」
罪悪感の無い口ぶりだ。
「でも…サンドリアのこの前の子には……種まであげて…。」
同じ様な状況なのに全く持って違う対応。
少年の時もギルを渡したと言えど、放っておけばそのままチョコボに乗っていた筈だ。
「………男が嫌い何だ。それだけだ。」
ポツリとそう呟く。
「何故…?」
「答える義理は無い。」
素早く切り返される。
痛みだけの快楽の無い性行為は男を見るだけで憎悪する心になった。
それが、あどけない少年であっても。
そして、日々溜まり行く衝動がベドーの少年を両断した。
助けようと思えば助けられた。
だが、それはエザンの中の衝動が拒否した。
助からない等と言うのは後付の言い訳に過ぎなかった。
黙ったまま、二人はロンフォールの森を歩く。
「何で…。貴女は、そこまで戦いをするのですか…?」
「………。」
答えが得られないまま。サンドリアに着く。
黙って冒険者居住区まで歩く二人。
そして、各々の部屋へ戻ろうと言う時、エザンが口を開く。
「………来い。」
何故、そう言ったのかはエザンにも解らない。
気付けば口から出ていた言葉。
自分の居室を開けると、レンタルハウスの最低限の家具一式。
扉を閉めるディエリーザ。
「良く見ろ。」
そう言うと、鎧を外し始めるエザン。
鎧を外し服も脱ぎ、下半身の鎧以外の全てを取り払った。
眼帯を取ると下からは痛々しい切り傷が現れる。
ディエリーザとためをはるほど、いい張りをした乳房。
少し焼けた肌がその魅力を更に引き立てている。
だが、エザンの体は傷だらけだった。
切り傷、刺し傷を始めとする傷が体の至る所に見られた。
こんな体では恐らく売り物にならないと、娼館の主は言うだろう。
それは一種猛々しくも映る。
しかし、これが戦闘の傷で無い事はディエリーザには解った。
魔法を使えるなら傷は跡形も無く治る。
例え塞がった傷でも、その傷が2日以内ならば治る事はある。
だが、それでも尚傷跡が残っていると言う事は、魔法で治療を受けられなかった傷だと言う事だ。
「私の中に…衝動が沸き起こる。止める事が出来ない衝動が、人を殺した事もある…。
後悔しながら殺して、気がつけば気分が良くなって、今じゃ…ただの作業だ。
これは…その時からの傷。衝動の源は…多分、これだ。」
傷だらけの体を見たディエリーザはその痛々しさに心を痛める。
「…もうこれしか出来ない体何だ。何かを殺し…最後には私も誰かに殺される。それで良い…。」
だが、それと同時にディエリーザはもう一つの感情が生まれているのに気がついた。
戦いに戦い抜いたエザンの体はやや筋肉質だ。
そして、無数の傷…。
ディエリーザの目にはそれが、猛々しく映り、実に何年ぶりか解らない。
冒険にのめり込んでからは、そんな感情を抱いたのは実に数年ぶりだった。
ディエリーザはエザンに欲情していた。
「……?どうした?」
視線の種類が先ほどと違うのに気付いたエザンが口を開く。
ディエリーザの顔は赤く染まっていた。
開発されきった体は滝の様に愛液を垂れ流していた。
「あ、いえ…その…し……下も傷だらけなのかな…って…考えちゃって。」
顔色が少し変わるエザン。
「あ、いえ、思っただけだから…そのだ、大丈夫。うん。」
男達では自分の体を鎮められ無い。
だけど…もしも…と考えてしまう自分を抑える。
「………解った。」
自分の体を見れば、こいつも自分を得たいの知れない奴として、自分から離れるだろう。
これ以上、鬱陶しくなられても困る。
(ならば…自分の呪われた体を見せれば…)
カチャリ…カシャン
鎧を外していくエザン。
下着も取り払い、その裸身をディエリーザの前に晒す。
「え…!?」
驚くディエリーザ。
傷だらけの体に、ディエリーザが恋焦がれていた物が見えた。
そう、これで終わりだ。
鬱陶しく話しかけられる事ももう無い。
望み通りでありながらも、どこか悲しげだった。
だが、ディエリーザは隆々と生えるペニスを見て自分が抑えきれなくなっていた。
無理矢理抑えてきた性欲は一気に噴出し口を探していたのだ。
盾と剣を壁に立てかけ、自らも服を脱ぎだす。
「…!?」
目を見開くエザン。
流石にこの反応には驚いたらしい。
ディエリーザの体は傷一つ無く綺麗だった。
しなやかで女性らしい肉体。
エザンは気付かなかったが、ペニスが僅かにピクリと反応する。
「もう…ダメ…久しぶりに見ちゃうと…ダメ…」
下着も取り、裸身を晒すディエリーザ。
ふとディエリーザの太腿を見れば愛液が光っている。
「…え…あ……?」
流石にこのパターンは予測が出来ない上に、性に関しては全く無頓着、無関心だったエザンは面食らう。
「ああっ……素敵…!」
そう言うと、ディエリーザはゆっくりとエザンに近づき、ペニスをそっと掴む。
「な…、ま、待て!」
ディエリーザを引き離そうとするエザン。
だが、そっと優しくペニスを擦ると、不思議な感覚がエザンを貫いた。
「あぁぅ!?」
エザンらしからぬ声を出す。
「んふ…カワイイ…。」
そっと、指で優しく擦る。
指使いは的確で、エザンの感じる所を焦らす様に弄る。
「うああぅ!?」
後ろからそっとエザンの逸物を握り、ゆっくりと擦る。
徐々に血が集まり、堅く、熱くなっていく。
自分の体の一部が自らの意思から離れている。
「…くぁああっ…やめろ…!」
快楽に流され、語気も強くない。
抵抗らしい、抵抗もしていなかった。
「あ…、こんなに熱い…!」
ディエリーザはそう言うと、そっと首筋を舐めた。
「あっ!な、何を…!?」
ホンの少し汗でしょっぱい肌。
「はぁ…。久しぶり…。こんなの…!」
手の中でそそり立つ男根は、今まで見た中でもそうそういないサイズ。
「こ…こんな…!」
自らの体の変化に対する恐怖。
どうなるか解らない未知の体験がエザンを支配する。
それと共にどこかにある快楽への期待。
ディエリーザの愛撫で迫り来る射精感に耐える。
ドサッ
エザンは一瞬の隙を突かれベッドの上に押し倒された。
咄嗟に、子供の頃の様に丸まって、自らの男根を隠す。
僅かに胸にあたると、その熱さ、硬さがエザンにも認識できた。
「…っ!」
一瞬の快楽に顔を歪める。
「ほらぁ…もっと…見せて…!」
無理矢理体をこじ開けようとするが、エザンはぎゅっと体を閉じたままだ。
「じゃ…ここのところを…!」
そっと、僅かに濡れだした女陰を指で撫で、擦る。
「ひゃあん!?」
またも未知の感覚に襲われ、つい、体を開いてしまった。
仰向けに転がされるエザン。
「じゃ…入れる…わっ!」
エザンの上に乗り、滝の様に愛液が滴る女陰へとあてがう。
ヌルリとした感覚がエザンを襲う。
「ふぁあ…!」
「んっ……太い…!」
自らの肉を分け入る感覚にディエリーザは震えていた。
恐怖では無い。歓喜の震え。
「あっ…あう…うう…!」
ディエリーザの愛液で滴る膣がエザンの物を包み込む。
「んふ…じゃ、これで…よし…と!」
一気にエザンの物を自らの奥まで突き入れる。
体の中を貫かれる感覚に体が震えた。
そして、エザンに覆いかぶさる様にして、腰を動かす。
「あふっ…ああん!!」
抉られる感覚に喘ぐディエリーザ。
「あ…ううっ…くっ…!」
顔を歪め射精感を堪えるエザン。
だが、開発されたディエリーザの動きは凄まじかった。
腰をうねる様に動かし、膣を締めたり緩めたりの連続。
先ほどまで童貞で、それも性の快楽を全く知らなかったエザンが耐えるには辛すぎた。
「う…あっ…ダメ……もう…んあ…何か…!!」
いつもの態度からは予想も出来ぬ弱々しい声。
「うふ…良いわよ…?奥に…出して…!」
「やだ……お願い…止まって…!」
いつかの情景が思い出された。
強姦された女に、強姦する男。
あの時女は苦痛に顔を歪め、泣きながら喘いでいた。
男は笑いながら、女を犯していた。
だが、今、目の前のディエリーザは舌を出し、快楽を貪っている。
今、自分は快楽を堪え、抗い辛い思いをしている。
流されてしまえば…目の前のディエリーザの様に楽しめるのだろうか?
そして…、エザンは快楽を受け入れた。
ビュ!
「んぐっ!」
一度堰を切った射精は恐ろしい勢いでディエリーザを満たし始める。
ビュル…ビューッ!ビュッ!!ビュルルルルルルルルルル!
あまりの快楽に声の出ないエザン。
ゼリーの様な濃い精液が精管を通して出る快楽に震えていた。
「ああっ!凄い…こんなぁっ!?」
ディエリーザも自らに打ち込まれる精液に酔いしれていた。
ディエリーザの乳房からも白い液が撒き散らされる。
かつて、父と交わった時に飲んだ薬の副作用。
快楽を求め、快楽に狂った自分が行き着いた先がそれだった。
それによって体は変わってしまった。
子供を産まずとも乳が出る体になっていた。
汗と精液と母乳がベッドを濡らす。
長い射精が終わった。
だが、エザンの物は未だに隆々とそそり立つ。
息を切らす二人。
まだ、行為は終わらない。
「はぁ…。凄い…。」
そっと引き抜くと膣から大量の精液が滴り落ちる。
「うあ…あ…あ…。」
あまりの快楽に目が虚ろのエザン。
ディエリーザは、そのペニスを口に含む。
「あ…ひう!」
体を少し震わせると、ペニスに走る快楽に身を任せる。
だが、それだけでは無い。
ディエリーザはエザンの女陰に指を二本、突き入れた。
「あ…ぐ…ひぃ…」
ペニスを丹念に舐め、しゃぶり、時に吸い中の精液を吸い出す。
ディエリーザの口に甘い味が少しだけ広がった。
チュプ…クチュ…ニュチャ…
しゃぶる音、舐める音、弄る音。
淫靡な音が部屋に広がった。
「あうああ!」
嬌声をあげ、イク。
精液を噴出し、愛液はしとどに流れ、ベッドを濡らした。
そして…
「ねえ…今度は…貴女が攻めて…。」
発情した目、紅潮した顔。
そのどれもが淫らであった。
尻をエザンに向ける。
その光景にますますエザンのペニスは硬さを増し、熱くなっていく。
ふらふらと、本能に導かれるまま、エザンはペニスでディエリーザを一気に貫いた。
「きゃあっ!」
そのまま、激しくストロークを繰り返す。
「あ…ああうん…こ…こんあぁ…!」
鍛えられた体は疲れを知らなかった。
ベッドの上で、前から、後ろからディエリーザを激しく犯す。
汗が飛び散り、ディエリーザの体が妖しく光る。
重ねあう乳房、乳首は既に堅く励起していた。
それを見ると更に興奮するエザン。
「…何で…ぐぅ…こんな…!ああっ!!」
認めたく無い感情。
知らなかった感覚。
ただ、快楽に身を任せ、犯し、犯され、体を重ねると言う行為。
相手の全てを貪りつくし、相手に全てをさらけ出し、食われる。
エザンはその行為に気がつけば耽溺し、ディエリーザも父が死んでから初めての絶頂に身を狂わせる。
その夜、何度も何度も精液を吐き出し、ディエリーザの体を汚した。
果てぬ快楽の中、2人が疲れて火照った体を冷ましたのはそれから大分後だった。
ベッドで2人抱き合って横になる。
暖かく、とても優しい心地。
体を重ね合わせる事と心を重ね合わせる事は初めてだった。
暫しの静寂の後…。
ディエリーザが口を開く。
「ごめんなさい……」
起きていたのか、とエザンは僅かに耳を動かす。
普段の自分からは考えられない行動をしたとあって、エザンはちょっと恥ずかしかった。
「……ん。」
軽く返事をする。
「…私……。また快楽に流されて…あんな事…。」
そっと、エザンの頭を抱え自らを責める。
「……私は…16の時、お父様に犯された…。」
その告白は普通の人間なら驚嘆に値したろうが、エザンにとっては何ら変わり無い事だった。
「拒んでいたのに…体は父に対して欲情をして……気がつけば…心まで…!」
涙が流れるのをエザンは見た。
「本当の自分じゃない…!そう思う為に…冒険者になって!暫くは平気だったのに…!!
貴女の裸を見た時、あの時の気持ちがまた湧いて出て…。抑え切れなくて…!ごめんなさい…。」
エザンはその告白に対して口を開く。
「…構わない。私は…初めてだった。こんな感覚…。
苦痛、憎悪の中にあって…こんな気持ちは生まれて初めてだった。」
僅かに、エザンは笑ったかの様に見えた。
許された気がして、ディエリーザは再び涙を流す。
その夜、二人はぐっすりと眠った。
あの夢は今日は見なかった。
ただ、幼い頃まだ見ぬ母と戯れる自分の姿が映って消えた。
「な…何なのよ…あの二人ぃ…。」
ドアの外、物陰に隠れてアネシアがいた。
淫らな声は外にまで聞こえなかった物の、ドアに耳をつければ筒抜けだった。
アネシアは自らの股間が熱く濡れている事に、まだ気がつく事も無かった。
To Be Continued
次回Love & Death予告!
心に揺らめく炎
それは暖を取る灯火か。
全てを焼き尽くす業火なのか。
体を重ね合わせ、快楽を受け入れるエザンとディエリーザ。
だが、背後から忍び寄るは嫉妬に燃えるアネシア!?
言い出せない気まずい空気。
そして、アネシアの取った行動とは…!?
次回、Love & Death
第4章『Heartwork』
アネシア「わ・た・しが主・役〜!やったー!!」
エザン「……キノコの毒でも頭に回ったか?」
ディエリーザ「えーと…私はこのまま、突っ走るんでしょうか…?」
アネシア「いーじゃないの!!私がやっと出るんだし!ね!
じゃ、次回もおったのしみにぃ〜!!」
エザン(……そんなに良い役…だったか?)