アトピック ◆0Wrn9WsOw.氏による
元ネタ
イブと男のなれそめ編
ケルベロス続編

我輩は別名地獄の番犬と呼ばれる使い魔である、名前はケルベロス。
故あって、今は人間界に滞在している……子守として。
……その物問いたげな視線は何か?
『ごつい名前の癖に子守かよワロスwww』だと?
無礼な!
子守は子守でも私が守りし御子は、我が主にして魔界でも屈指の力を持つ女悪魔イブ・シュタンブル様の娘である!
……それはまあ、最近のイブ様は、昔の面影など欠片もないほど性格が丸くなっていらっしゃるが…きっと仮の姿だ。うん…そうだ。

ごほんっ!とにかく私は我が主と我が主の夫である一郎様の間に生まれた長女、カレン様の子守として、人間界に滞在している。
普段は何の変哲もない黒犬の姿をしているが、もしもカレン様に害をなそうとする不貞の輩が現れようなものなら、この爪牙で切り裂き物言わぬ肉片にしてみせよう。
我輩は別名地獄の番犬と呼ばれる使い魔である、名前はケルベロスなり。
今日も我輩は、畏怖すべき主の命を忠実に守っている。


「まあ、カレンちゃんところのケルちゃんじゃないの?今日もお使い?」
「……わん」

 一頻りアイデンティティを確認してから、我輩は咥えていたメモを八百屋のご婦人に差し出した。

野菜の詰まったビニール袋と、おつりの入った財布を首から下げつつ、我輩は自宅への帰路へとついた。

どこで選択肢を誤ったのだろう?
人間界に召還されてからいくどとなく繰り返した自問を今日もまた繰り返す。
18年前に人間界から召還され、カレン様の子守を任された。そして現在は、大学に通い始め一人暮らしをはじめたカレン様の護衛兼お目付け役として、ペットOKのマンションでカレン様と暮らしている。
不満は、ない。人間界に来てからというもの、イブ様はお仕えして以来もっとも機嫌がよい状態だ。そのお子様方も健やかに成長されている。そしてお子様方もイブ様も、そして夫の一郎様も、我輩を大事にしてくださっている。
肉の焼き加減だって、猫舌の我輩に配慮してくださる。
不満はない。幸せだ。
「だが…何か、使い魔として間違っている気がする」
少なくとも、お使いをするお利口ワンちゃんは、何か間違っている。
このままで良いのだろうか、と自問しているうち我輩の耳に、小さな鳴き声が聞こえた。
「コレは…」
我輩はその鳴き声がする方向を向く。そこにはダンボール箱が置かれていた。
まさかとは思いつつ我輩はその中を覗き込んだ。
「ヒャンヒャン!」
何たることか…。
我輩は自分のうかつさを呪った。
箱の中に、一匹の子犬がいた。生後間もないらしいその子犬は。潤んだ目でこちらを見ている。
おそらくどこぞの節操のない雌犬が孕み、飼い主が処理に困って捨てたのだろう。
「フン、力ないものは滅びるが定めなり」
我輩はそう言い残して去ろうとして…
「くぅ〜ん」
「……己の命は己で養うがいい」
我輩は今度こそ立ち去ろうとして…
「きゅぅん…」
「…………世の中そう甘いものでは…」
「………」
「………」




「ケ、ケルの隠し子!?」
「そうおっしゃられると思いました。カレン様」

 オルトロス――我輩が名づけた仔犬の名である。カレン様に「女の子らしくない」ははなはだ不評だったが――が来たのは、そのような経緯だった。
 そう、オルトロスは雌の仔犬だった。
 そこ!『こいつ炉利だったのか!』などといいつつ親しげな笑顔を向けるな!
 別にそのような趣味で連れてきたのではない。ただ…あー、そう!私兵だ!カレン様を守るための手ごまが欲しかっただけである。
 いずれ鍛え上げ、我輩と共にイブ様に仕える忠実にして強壮なる使い魔にしようと思っただけだ。
 だがその目論見はすぐに破綻した。オルトは……言葉をしゃべれなかったのだ。
 仕方なかろう!知らなかったのだから!そもそも下賎な人間界の犬如きなどと顔を合わせる機会などなかったのだ。
 なぜ一郎様が我輩に『人前では喋らないように』と念を押していたのか、そのとき初めて理解できた。
 さて、まあだからといって見捨てるわけにもいかず、カレン様と我輩、そしてオルトとの生活が一年ほど続き…その事件は起こった。



「ふむ?我輩にご主人から?」
 カレン様が大学のご学友達と泊りがけで温泉に行かれた日。ポストにご実家からの封筒が届けられた。
 中には手紙と小瓶が入っていた。
「これ、オルト。小瓶で遊ぶな」
 前足で引っかきながら臭いをかぐオルトを嗜めつつ、我輩は同封された手紙を読む。

『拝啓、ケルベロス様。っていっても電話でしょっちゅう話してるからなんか照れくさいけどね。
 さてオルトは元気?実は面白い薬が手に入ったんだ。なんとその薬を飲んだ動物は、人語を解するようになるっていう薬だ。
 オルトが話せないことを愚痴っていたろう?これを飲ませればその問題も解決するだろう。
 イブに調べてもらったところ、物としても確からしいし、試してよ。
 では、結果を教えてくれ。一郎より。敬具』

「ほう、コレは面白い」
 オルトが人語を解するようになれば、かつて夢と消えた親衛隊計画も実行できるやも知れぬ。
 期待に胸を膨らませ、我輩はさっそく小瓶の中身をオルトに飲ませてやろうとして…

 ぼん

 その直前、部屋が煙に包まれた。

 何事か!?カレン様を狙う賊の襲撃か!?
「オルト!大事はないか!?」
 我輩はとっさに身を低くして呼びかける。応えはすぐに返ってきた。
「うっ、うん。私は大丈夫だよ、パパ」
「そうか…(´・ω・`)……(゚Д゚)!?」
 頷きかけて、我輩は驚き、声がした方向を見る。
 煙が晴れ、そこには見慣れたオルトの姿はなかった。
 そこにいたのは、一糸纏わぬ少女だった。
 オルトと同じ琥珀色の瞳に、茶色の短い髪。癖毛なのか、その髪型はまるで犬の耳のようにも見える。
 否。それは犬の耳のような髪型ではなく、犬耳そのものだ。
 そして、その足元には例の小瓶が中身をぶちまけた状態で転がっていた。
 少女は涙目で言う。
「うぅ〜っ…。このお水、おいしくなかったよぉ、パパ」
「な、な、な、な、な、な、な…っ!」
 己でも混乱しているのがわかる。
 かつて武装した天使の一個大隊に包囲されたときですらこれほど混乱したことはなかった。
 つまり、なんだ、この状況から考えるに…目の前の娘は…
「オルトロス…か?」
「??そーだよ、どうしたのパパ、変なの?」
 不思議そうに、人の姿となったオルトロスは、我輩の顔を見て首をかしげた。




『まあ、確かに人語を解する、っていうのには嘘がなかったようだね』
「しかしこのような副作用があるなど聞いておりませんぞ!」

 とりあえず我輩は、ご主人に向けてクレーム電話をかけたのだった。

「オルトね、ずっと前からパパとこーいう風にお話したかったんだぁ」
「そ、そうか」
 数時間後、オルトは我輩の毛並みに顔をうずめていた。
 電話で苦情を訴えた我輩に送られた返答は、現状維持せよという命令だった。
 少なくとも解毒薬ができるまでは、人間――というか犬耳少女となったオルトの面倒を見ろというのだ。
 幸いカレン様に連絡をしたら、予定を切り上げ翌朝には帰ってきてくれる、とおっしゃってくれた。
 ついでに、手を出したら去勢だ、とも言われた。その信頼のなさが少し悲しかった。
「ぱ〜ぱ」
「う、うむ」
 柔肌をこすり付けられ、我輩は妙に落ち着かなくなる。
 っと、いかんいかん!これではカレン様が心配なさったとおりの展開ではないか!
 雑念を振り払った我輩は、オルトに問う。
「お、オルト。なぜ裸なのだ?」
「うん?何でって?いつもと同じでしょ?パパだって裸だよ」
「そ、そうだが…」
 我輩は言葉に詰まる。
 今のオルトの姿は、義務教育をちょうど終えた程度の発育をみせた少女のものである。
 その姿で無防備に抱きつかれるのは、精神衛生上良くない。
 ここで断っておくが、人間様の外見の相手に性的な欲求を持つのは、魔界の生物としてはなんら不自然ではない。
 魔界の生物は基本的に、異種間でも交配可能であり、オスもメスも原則的には、より強い魔力や生命力を持つ種族に惹かれる。
 そして魔界の生物のメスは、(これもまた原則に過ぎないが)強い個体ほど人間の女に近い容姿を持つようになる。ゆえに当然、魔界生物のオスの多くは、人間の女の容姿の存在に惹かれるのだ。
 つまり我輩がオルトに惹かれるのは当然の帰結であり…
 っていかん!このままでは本当にカレン様のご懸念が現実のものとなってしまうではないか!?
 気を、気を静めねばならない。
 我輩は雑念を払うがために、かつて体験した血風吹き荒む戦場の記憶を回顧しようとする。
 だがそれを邪魔するがようにオルトが言ってきた。
「パパ、おチンチン。すごく硬くなってるよ?」

「や、止めるのだ、オルト…!」
 我輩はオルトから逃れようとする。だがオルトに急所をつかまれていてはそれも叶わない。かといって、オルトに暴力を振るうわけにもいかない。
 困り果てる我輩に、オルトはさらに難題を与えてきた。
「ねぇ?パパ…私、パパのお嫁さんになりたい」
「お、よよよ嫁?いや、その前に、その手を放し…」
「私は本気だよ、パパ」
 オルトは潤んだまなざしをこちらに向けてきた。その熱い視線に炙られ、我輩の中の獣としての本能が焦げ付く。
 目の前のメスを孕ませろと本能が叫ぶ。
 番犬たる我輩は、矜持と理性でその訴えを押さえ込む。
「だ、駄目だ。オルトよ…」
 風前の灯である我輩の理性がようやくその言葉をつむぐ。
 そう、我は番犬。野の野獣のように獣性に駆られて動くことはない。
 だが、本能よりも理性よりも、はるかに強い感情が、その防壁にたたきつけられた。
「愛してます」
 それは、オルトの気持ちだった。
「パパを、愛してるの。
 あの時拾ってくれなかったら、きっと一人で死んじゃってたよ。
 カレン様にも会えないで、おなかすかせて死んじゃってた。
 私は、パパのおかげで今ここにいる。私は…パパのものだよ」
「オ、ルト…」
「パパ。抱いて。犯して。孕ませて。
 私、パパが好き。パパの子供を生みたいの。
 パパ……私を、パパのものにして」
 その必死にして懸命な言葉に、我輩の理性は屈した。

 普段はカレン様が使われている寝台の上で、オルトが快楽にもだえていた。
「ひぅっ、パパ!パパァッ!舌、すごい!
 いっちゃうっ!また、舐められていっちゃうぅっ!」
 我輩はその声を心地よく重いながら、我輩はオルトの花弁から滴る極上の蜜を舐めとる。
 まるで泉のように湧き出る淫水は、我輩の舌を逃れて、オルトの形の良い尻を伝わりシーツに落ちる。
 後で洗濯しなくてはならない。
 そんなことを考えながら、我輩はオルトの淫核を、力をこめて舐め挙げた。
「はあっ!いくぅぅぅぅぅっ!」
 身を硬くして、オルトは幾度目かの絶頂を迎えた。
 オルトの花弁を中心として、メスの臭いが立ち上り、我輩をさらに興奮させる。
「ぱ、ぱぱぁ…ま、まだ…入れてくれないのぉ?」
 息を切らしながらオルトは言う。
「もう…これ以上舐められちゃうと…私…入れられる前に狂っちゃうよぉ」
「そうであるな。そろそろ良かろう」
 前戯は十分だ。すでにオルトの膣は我輩の物を受け入れる程にほぐれているだろう。
 犬であるオルトに処女膜はないだろうが、それでも今まで慎ましやかに細まっていた肉孔を、押し広げることには変わらない。
「オルトよ、四つんばいになれ」
「ハイ…」
 素直に応えると、オルトはうつぶせになり、ついで汁を滴らせながら尻を突き出した。
 その姿に言いようもない征服感を覚える。
「ぱ、パパぁ…ちょっと怖い」
「案ずるな」
 肩越しに振り向くオルトの目には、未知への恐怖があった。だがそれ以上に、その未知への期待もある。
 我輩はおもむろにオルトに覆いかぶさり、怒張の先端を濡れそぼった花弁に触れさせる。
「あっ…く、来るの?」
「ああ。オルトよ、お前の望みどおり、お前に子供を授けてやる」
「うれしいよ…パパ。愛してるよ…パパ」
 言葉通り、本当にうれしそうな表情で言うオルト。
 その顔を見ながら、我輩は愛というものを考えた。
 魔界には存在しない、神々が声高に唱え、人間が持ちうるもの。大部分の悪魔はそれを嫌ってはいなかったが、好いてもなかった。どうでもいい、興味の持てないもの。それが愛だった。
 その姿勢は我輩にとっても同じだった。だが、イブ様と一郎様を見ていて。その幸せな様子を見ていて少しだけ愛というものに興味を持っていた。
 それがどういったものか知りたく思って…そして今、理解した。きっと、今感じているこの感情のことを、愛というのだろう。
「オルトよ。我輩も愛しておるぞ」
 我輩は言ってから、オルトの中に突き進んだ。

「あ、あぅ、あああっ…」
 我輩の腹の下でオルトが、秘肉を掻き分けられる感覚に身悶える。
 我輩は今、肉茎だけは元の大きさに戻している。そしてそのサイズは、人間の基準でいけば、巨根というべきサイズだ。
 そのサイズがオルトに苦痛を与えないか心配だったが、よくほぐしたのが幸いしたのか、苦痛を感じてはいないようだ。
 我輩はそれに安心しながら、一気に肉棒を奥まで突き入れた。
 じゅぶんっ!
「ひゃぁぁぁあああああっ!」
 我輩の一物が完全に沈んだのと同時に、オルトが全身をビクつかせた。
 軽い絶頂を迎えたのかもしれない。
「大事無いか、オルト?」
「ふぅ……ひふぅ…、う、うん…大丈夫。気持ちよくて、びっくりしただけ…」
 太ももを震わせながら、オルトが頷く。
 我輩はその応えに安堵して、それから少しだけおかしくなる。
 我輩は今まで何千人と女を犯してきた。その大半の場合は捉えた敵への拷問。それ以外の殆どは単に互いの快楽を求めた交わり。そしてごく少数の例として、仕える主の夜伽の相手だ。
 前者二つでは相手に気遣うことなどせず、後者では気遣いはするものの、相手の反応に安堵するなどということはない。
 これも愛というもののせいか。
「ねぇ…ぱぱぁ…どう、したの?私の中…何か、変?」
 動かない我輩に不安を覚えたのか、オルトが聴いてくる。
「いや…もう、動いても良いのか?」
「うん。パパの好きに動いて。パパに沢山気持ちよくなってもらって…沢山、種付けしてもらいたいから」
「わかった」
 オルトの気持ちをうれしく思いながら、我輩は腰をふり始めた。
「ふぅ、ひっ!ひぅっ!ひゃう!きゃうん!きゅぅっ!」
 歯を食いしばって押し寄せる快楽に堪えるオルト。その健気な様子に感じ入りながら我輩はまず、初激を送り込んだ。
 ごびゅるっ!
「うおおおぉっ!」
「ひいんっ!」
 数十年、ひょとしたら百年以上ぶりの射精に、我輩はオルトとともに声を上げてしまった。我輩の精液はその禁欲の時間を代弁するかのように、濃く、大量に噴出される。
 その圧力を感じたのか、オルトの体は射精に連動して痙攣する。
「こ、これで…子供、できたの?」
「かもしれん。だが、終わりではないぞ」
 そう、犬族の交尾はこれが始まりに過ぎない。
 オルトが問う前に、我輩の一物に変化が始まる。


 肉棒の先端が肥大化し、まるで傘のように開いてゆく。
「…!?な、なか!形、変わってっ!太く…ぅっ!」
「ああそうだ。こうしても抜けないように、形が変わるのだ」
 我輩はそういうと、体勢を変える。体を翻し、オルトと尻を向け合う形になった。その独特の体位こそ、犬の交尾の特徴だった。
 その過程で、オルトの膣内でペニスが動き回り、オルトの粘膜を擦りあげた
「はんっ!はひうぅっ!な、何、何なおぉ?」
「コレからが本番ということだ」
 我輩はそういうと、腰を軽く一往復させた。
 可能な限り引き抜いて、突きこむ。
 最初より更に膨れ上がった肉棒は、膣の粘膜をことそぎ落とすように擦り上げ、先端は最奥まで届く。
「あああああんっ!」
 一往復で、オルトは絶頂に達した。ただでさえ狭く複雑な膣道が、我輩の分身を締め上げなで上げる。
 その淫らな感触に、我輩は動かずにはいられなかった。
 ずちゅ!ぬちゅぁっ!ぐぶっ!ぐぶっ!じゅぶっ!
「あん!あふっ、はうぁっ!あ、あ、はああんっ!いやぁん!はあん!」
 オルトの嬌声が聞こえる。すでに一撃ごとに絶頂を迎えているようだった。完全に出来上がったメスを感じさせる声に、我輩の欲情も限界に向けて加速する。
 淫肉に、抱きしめられ、なで上げられ、我輩はとうとう内に暴れる欲求を抑えきれず、放出した。
 ごびゅっ!どびゅっ!びゅるっ!
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 先ほどを更に上回る量の精液の放出を受けて、ただでさえ逝き続けていたオルトはさらなる高みに突き上げられた。
 絶頂に震えるオルトの体を感じながら、我輩は可能な限りの量を注ぎ込む。
 大量に出されている精液は、しかしオルトの膣からは一滴も漏れない。肥大した我輩の先端が、逆流を防いでいるのだ。
 おそらく、我輩の出した精液は愛液と混ざり合い、一滴残らず膣内にたまり、収まりきらない分はそのまま穢れのないオルトの子宮へ注ぎ込まれているのだろう。
 そのことを想像するだけで、出したばかりの我輩の一物は、更なる硬度を得る。
「ぱ、ぱぁ…」
 快楽の波間に漂いながら、オルトが我輩を呼ぶ。
「どうした?」
「す、すごいの…。おなかの、中…パパので、イッパイ……びゅくびゅくって…。
 暖かくて…気持ちいいよぉ。死にそうなくらい…嬉しいよぉ」
「そうか?では、続けるぞ?」
「うん…うん!受精させて…私を…パパの精子で身篭らせて…」
 夢現に言うオルト。
 我輩はオルトを愛おしく思いながら、再び動きを再会した。

「去勢決定」
 帰ってきたカレン様が最初におっしゃった言葉がそれだった。
 まあ、無理もなかったであろう。
 部屋に入って最初に目にしたのが、秘所から射精のような勢いで精液を零す、下半身を痙攣させたまま空ろな微笑みを浮かべて気絶する少女だったのだから。
 ……わかっている。やりすぎだったと。だが仕方なかろう。百年以上、メスを抱いていなかったのだ。
 ともかく、我輩の決死の抵抗と、目を覚ましたオルトの説得により我輩の男性は守られたのだった。
 そしてそれから数ヶ月。




「パパ、触って。動いたよ」
「む、うむ」
 オルトは我輩の手をとって、自分の膨らんだ腹に触らせた。
 手――という言葉からわかるように、今の我輩は人間の男性に姿を変えている。
 今日は定期健診の日であり、オルトと一緒に病院にいる。

 結局、人化を戻す薬は見つからず、その上イブ様の
「まあ、ケルベロスがさんざん精液を流し込んだのだからすでに魔族化しているはず。放っておけば再び犬に変化することもできるでしょう」
 という見立てにより、そのままで放置ということになったのだ。
 それに伴い私も親としての責任ということで人間となり、阿田無家の執事という立場をいただき、給与をもらう立場となった。
 まあ、その辺りは良い。今までと基本的には何も変わらないのだから。
 我輩の周りには以前と同じ、魔界のことが夢であったかのような穏やかな時間が流れている。
 だが…一つだけ問題があった。

「きっと元気な男の子が生まれるよね。パパ」
「うむ…それはそうと……パパというのは止めぬか?」
「どうして、パパはパパだよ」
「いや、だからな…」

 なんと言っていいかわからず、我輩は周囲を見る。
 我輩が周囲を見ると、待合室の人間達がさっと目をそらした。
 ……なぜか、少し考えればわかる。
 常識的には高校に通っていそうな年齢の妊婦が、連れ添いの男に向かって『パパ』
 ……orz。

「どうしたのパパ」
「いや、なんでもない。気にするな」
 諦観に身任せながら、我輩は力ない笑みを浮かべた。



 我輩は別名地獄の番犬と呼ばれる使い魔である、名前はケルベロス。
 それと同時に、
「パパ、大好き」
 オルトロスと、その中に宿る新たな命のパパなり。