←実験1 コンドームを作ろう!
←実験2 ミスランバターを舐めよう!
世の中には数多くの貴重な発明品が有り、
あるものは街での暮らしを便利にする道具として、
あるものは獣人の侵攻から人の領域を守る兵器として、人々に知られている。
それらを世に送り出した発明者として、名を知らしめる人達もいる。
その最も有名な例は、バストゥーク共和国大工房のシドだろう。
勿論、発明品に比べて発明者の知名度が低い例も少なくはない。
その一つ
――つまり貴重な発明であるにも関わらず発明者が全く無名のままである発明品――
として、ここ最近、冒険者達の間で爆発的に普及している、
ある消耗品を挙げることができる。
避妊具である。
複数の種族の男女が入り混じって明日をも知れぬ日々を送る冒険者達は、
街で暮らす人々より性に対して奔放な傾向にある。
従来は、他種族と交わることが、最も一般的で確実な避妊法だった。
その本来の目的からすると、厳密には擬似的な行為であると言えるだろう。
薄い膜でできた袋で男性器を包み込み、精液と女性器とを遮断することで、
同種族間で妊娠の恐れ無く交わることを可能にした避妊具は、
市場に現れその用途が知れた途端、飛ぶ様に売れた。
やはり同種族間で慰め合うことを好む者は多かったということだろう。
現在、発明者自身によってその製法は公開され、
冒険者達はクリスタル合成によって
簡単にそれを手に入れることができるようになっており、
また、街に住む人々の間にも広がりつつある。
画期的な発明であるとして、
発明品そのものと製法とは瞬く間にヴァナ・ディールに知れ渡ったが、
早々に利権を手放してしまった気紛れな発明者の名を知る者は少ない。
その青年は今も、バストゥークの首都の一角に小さな工房(アトリエ)を構えていた。
そして彼――錬金術士ジョニーは、家の主であるにも関わらず、
この時、居候(いそうろう)の一人に足蹴にされていた。
「ぢゃま」
「邪魔って……ここは……」
「あなたの家の、あなたの工房。
でも、邪魔だからどいて」
部屋の正統な主を見下すように顎を反らすと、金色のポニーテール
――空想上の動物の尻尾の様に後頭部の高い所で束ねられた髪が揺れた。
この家を街に滞在する間の住まいとしている四人組の女冒険者の一人である。
「あのさ、アルシオ……」
「どうせまた何か作ろうとして失敗するんでしょ。
この空間は家で一番広い部屋なんだから、もっと有効利用されるべき。
つまり私の詠唱の型の練習場所として、今は使われるべきなの。
その方が世の中のためでしょ。そう思わない?」
「いや、だから、アルシオさん……」
「うるさいなー。明快な論理を示してあげたのに、まだ理解できないの?
前から思ってたけど、やっぱりあなたアタマ悪いんじゃないの?」
「アールーシーオーさーまー」(棒読み)
「何よ、もう、しょうがないなぁ。
普通ならあなたの言い分なんて聞いてあげないんだけど、
少し気分が良くなったから特別に喋っていいわ」
淀み無く矢継ぎ早に、まるで彼女が得意とする精霊魔法の
呪文の詠唱の様に言葉を紡ぎ出していた唇、
彼女を知る男達が「美しい。閉じている限りは」と評するそれは、
三度目の呼び掛けに応じてようやく小休止をした。
「シーリアさんが君を連れて来てから何年も経つわけだから、
今更、君のワガママに対して無駄な抵抗を試みるつもりはないけれど……」
「ちょっと引っ掛かるけど、方向性は殊勝だわ」
「そして、家の中をローブ一枚羽織っただけで歩き回ることについても、
とりあえず構わないんだけど……」
足下に文字通り転がっている錬金術士の言わんとすることを計りかねて、
アルシオの長い睫毛が数回ゆっくりと上下する。
「その格好で、こんなふうに僕の足を払って転ばせて踏み付けていると、
ローブの中が全部見えるんだけど、いいのかい?」
もう一度、今度は手加減無しで、若き錬金術士は足蹴にされたのだった。
自分の家の中に自分の居場所を無くしてしまったジョニーは、
やはり居候の一人であるシーリアの部屋へと逃れていた。
「いつもごめんなさいね……」
エルヴァーンらしい、長く形の良い指が、ゆっくりと彼の髪を撫でている。
一応、頭部を強打したということで、念のためにケアルをかけてもらったジョニー。
時に姉の様に、また時には一人の異性として慕っているシーリアに膝枕をしてもらい、、
心身共に痛みが引いていくような気持ちになっていた。
この家に始めにやって来たのはシーリアだった。
ジョニーが全ての家族を亡くした出来事に関わっていたシーリアは、
以後この家に住まうようになり、姉代わりとして彼の面倒を見て来た。
3人の仲間は彼女が順次、長く付き合っている冒険者仲間として、
ジョニーに相談の上で家に呼び込んで来たのだった。
居候である自分が連れて来た友人が、家主には常にキツく当たっているというわけで、
彼女としても辛いところがあるようだ。
「アルシオも、ジョニーのことが嫌いなわけではないのだけど……」
「わかってますよ。本当に僕が嫌われてるなら、
アルシオは家、出て行ってるでしょうから」
冒険者である彼女達は、モグハウスやレンタルハウスを利用することもできる。
あくまでも自分の意思で、
錬金術士の家の居候などというものになっているはずなのだ。
「僕だって、アルシオを嫌いだとは思ってないですから。
安心してください」
ジョニーに対しては素晴らしく態度の悪いヒュームの黒魔道士アルシオだが、
なんだかんだ言いいながら、本当に許せないようなことを言われた事は無かった。
シーリアがアルシオの性格についてとやかく言わないのも、
考えがあってのことだと彼は知っている。
周りに何と言われようとも、あくまで自分の信じるように魔法を使えることが、
本当に優秀で、そして一緒に冒険していて楽しい黒魔道士なのだという。
確かにアルシオくらい傍若無人な性格でないと、
そうした姿勢を貫くことは容易ではないかもしれない。
「……ありがとう」
嬉しそうに微笑んだシーリアの顔の美しさに、
ジョニーは思わず見惚れ、顔が赤くなるのを感じた。
シーリアの細い銀色の髪がジョニーの肌をくすぐる。
エルヴァーンの美貌が近付き、唇が重なった。
「部屋、返してもらえるまで……ね」
一旦唇を離してそう言うと、今度はシーリアは激しいキスを求めて来た。
ジョニーもそれに応じて舌を絡めながら、彼女の髪や細長い耳を撫で始めた。
居候達と体の関係を持つようになったのは最近のことだ。
彼女達が、冒険に出た先で共同で仕事にあたる男達と円滑にやっていくため、
体を重ねていることを、ジョニーは知った。
そしてそうした機会に使うために、
彼女達の一人に頼まれて避妊具を発明したのである。
その際、実際に避妊具を使ってみることになったのが皮切りだった。
以来、4人の内3人までと関係を持ち、
彼女達が街に滞在している間は、こうして頻繁に求め合っている。
「出会った頃の小さかったジョニーを知っているから、
こうしていると、ちょっと変な気持ちになるわね」
ジョニーに組み敷かれたシーリアは、
快楽の吐息を交えながらそう言って、クスリと笑った。
「そんなに小さくありませんでしたよ。
背とか、確かもう結構伸びてたし……」
不服そうに、わざとシーリアの中の弱い所を、
自分のもので突付くジョニー。
「あっ……やだ、そんな所、覚えて……はぁっ……気持ちいいわ。
もう……上手になっちゃって……。
背だけじゃなくて、成長した、ってこと。
セックスの世話までしてもらうようになるなんて、
一緒に暮らし始めた時は、思わなかったもの」
大なり小なりの危険に囲まれた旅先で、
充分に信頼しているとは言えない男達に体を任せる。
そんな冒険中のセックスは、
気持ち良くないとは言わないが心から楽しめるものではない。
セックスの味を覚えて日の浅いジョニーは
勿論彼女達の体を求めずにはいられないが、
シーリア達の側でも、リラックスして純粋に性の快楽を楽しめる相手として、
街に居る間は好んでジョニーを誘うことが少なくないのだ。
「しかも、私だけじゃなくて仲間達まで食べちゃうなんて、
困った弟分」
指先で額を突付かれた。
「そうだわ……ね、アルシオとも、してるのかしら?」
「え……」
思わず動きを止めてしまうジョニー。
ほら、と体位を変えられ、今度はシーリアに組み敷かれる。
「後の2人とのことは知ってるけど、
そう言えばアルシオとしたという話は聞いてないから……。
ねえ、どうなの?」
エルヴァーンらしい張りのある尻を動かしながら、
シーリアはジョニーを問い詰め始めたのだった。
「いや、アルシオとは、そういうことには……。
とても僕の方から求められるような間柄じゃないですし……」
「あら……まあ確かに、
冒険の間も、アルシオに最初に手を出す男性は、あまりいないわね」
苦笑するシーリア。
ジョニーだけではなく男性全般に対して、あんな調子らしい。
「でも、彼女だってセックスは嫌いじゃないはずだけど。
街に居る間はオナニーで済ませているのかしら。
ジョニーは、どう? アルシオと、したい?」
先程見たアルシオのローブの中身、
太股や下着がジョニーの脳裏に浮かんだ。
「あら……?」
シーリアが、体液にまみれた二人の結合部に視線を落とす。
「正直な場所なのね。大きくなったわ。
アルシオの体、想像したの?」
「う……」
「ペースは変えてないんだから、気持ち良さで大きくなった、
なんて言い訳はきかないわよ。
……アルシオとセックス、と考えて興奮しちゃったのね?」
形の良いシーリアの眉が、ジョニーを責める様に顰められる。
「……今は私と愛し合ってるのに、アルシオのことを考えて、
一層オチンチンを大きくするのね、ジョニーは」
「いや、その……」
「自分がオチンチンを入れてる私のここを見るより、
アルシオの同じ所を想像する方が、興奮するのね」
そう言って結合部に両手の指を添えて、襞の陰まで開いて見せる。
そこにあるエルヴァーン特有の大きく勃起したクリトリスが、
ヒクつきながらまた一回り大きくなったような気がした。
「……やっぱり。大きさ変わらないわね。
している最中に広げるなんて、恥ずかしいのに……」
彼は今の光景には興奮したのだが、問い詰められていることで
焦って萎えてしまう分と相殺されてしまったのだった。
「あの、その……そんなつもりじゃ……」
「いいわ……ねえ、アルシオとするなら、どんな格好でしたいの?」
一旦結合を解き、シーリアは問い掛ける。
意図を図りかねジョニーは戸惑った。
「冒険中に相手をする男の人は、アルシオにこうさせることが多いわね。
ジョニーも、これで、したいかしら?」
シーリアはベッドの上で、
尻をジョニーに向けて四つん這いになった。
獣が相手に服従したり、交尾を受け入れる姿勢。
無防備で、羞恥を伴う格好だ。
あのアルシオが、
男の前でこんな屈辱的な体勢を取りながら挿入の時を待つとは……
ジョニーは俄かに硬度を増したものを、改めて挿入した。
「また硬くしたのね……いいわ、アルシオの体だと思って、してみて」
尻を掴み、目を閉じる。
四つん這いになって男を受け入れているアルシオを思い描く。
高まる興奮で感度を増した性器からの快感に、
我慢できずに動きが速くなる。
「あっ、はぁっ、激しいっ、凄いわ……」
シーリアも激しく快楽を与えられ、喘ぎ声を上げる。
その声を、ジョニーはアルシオの声色に置き換えてみる。
「どう? いつも男性にキツくあたるアルシオが、
その男に犯してもらわないと我慢できなくなってると思って」
その状況を思う興奮。
そして、意識と肉体とを別々の女性に対して欲情させるという、
まるで女性の膣を使った自慰行為の様なこの状況に対する興奮。
二重の興奮がジョニーを導いて行く。
その先にある瞬間を今まで何度も共有しているシーリアは、
もう間も無くそれが訪れることを悟り、言った。
「いやっ、射精するの!?
私のアソコでは出さないで!
ヒューム同士なんだから、射精だけはだめぇ……!」
ジョニーはヒュームであり、シーリアはエルヴァーン。
二人の間に子供ができる可能性は限りなくゼロに近く、
いつもは避妊具も使用せず挿入し、
そのまま膣を使って射精させてもらっている
――故意に他の所での射精を楽しみたいのでない限りは。
つまり彼女は、自分を、
ヒュームであるアルシオに見立てて演技しているのだ。
それを理解し、ジョニーも言った。
「何言ってるんだよ。
今までさんざん、僕のペニスで気持ち良くなっておいて、
いざ僕の方が一番気持ちいい瞬間を迎えようとしたらそれはダメだって?
そんなこと、通ると思うのかい?」
一般的には、通る。
と言うか通さないと非常にマズい。
「お願い! そこ以外なら好きな所に出していいから!
口をオマ○コみたいに使っていいわ!
舐めてあげる! 舐めてイカせてあげるから!
全部吸ってあげる! 精液飲ませてぇ!
だからお願い……オマ○コにヒュームの精液だけはいやぁ……!」
シーリアも興奮しているらしく、
絶頂に近いことを伝えるように断続的に締め付けながら、
羞恥も何もかも捨てて淫らな言葉を紡ぐ。
「そんなふうに嫌がる程、僕が出す子種の量は多くなる一方だよ。
さあ、出すよ! アルシオのマ○コに精液出すよ!
アルシオでイクよ!」
「ああ、いや……! 私のオマ○コ、射精される……!」
射精が始まった。
ヒュームの膣と構造的には全く同じエルヴァーンの膣。
ジョニーのペニスと本能は、そこが射精すれば生殖ができる場所と錯覚し、
尿道が擦られる様な感覚がする位に濃厚な精液を大量に射出する。
彼の意識には快楽の火花が立て続けに散る。
「うあぁ……マ○コへの射精……気持ち、いいよ……!」
「私もイクっ! 射精されて、気持ちいいの!
オマ○コ、イクわ! ああ、イクっ……!!」
シーリアも、演技でなく本当に激しく達した。
「精液も、いつもよりたくさん出たわね。
気持ち良かったでしょう。
少なくともジョニーの方は、
アルシオとセックスしたら相当楽しめるんじゃない?」
「いや、その……すみません……」
いつもの様に二人は体液で汚れたシーツの上で
軽く抱き合い、愛撫と言葉を交わす。
「え? ……ああ、もしかして、私が本気で怒ったと思ってるの?
怒ってるのに、あんなふうにセックス続けるわけないじゃない。
結構、楽しかったわよ」
赤くなったり青くなったりするジョニーを見て
クスクスと笑うシーリア。
「でも、さすがに思い返すと恥ずかしいわ。
今日のセックスだけは、外に聞こえてないか心配ね……」
シーリアがこの時ばかりは赤面しながら、部屋のドアへ視線を向ける。
声が廊下や他の部屋へ漏れ聞こえることもあるらしい。
他の仲間達も、互いとジョニーとの関係は知っており、
行為の最中に入って来て加わる者もいるくらいだ。
「……アルシオに聞かれてたら、終わりです」
「そうかしら。結構、アルシオの方も興奮するかもしれないわよ。
私達がジョニーとしていることは彼女も知ってるんだし、
冒険では男性が求めて来れば結局は断らないし……
早い内に、上手く求めてみなさい。
ジョニーとアルシオがもっと仲良くなってくれれば、
私達も嬉しいわ」
本当にあのアルシオと、
『したい』『いいわよ』
というようにいくのだろうか。
ジョニーには到底そうは思えない。
だが、一旦意識し始めてしまうと、
我慢し続けることもできそうにはなかったのだった。
ジョニーがアルシオの部屋を訪ねる決心をしたのは、
彼女達がまた新たな冒険のために旅立って行く、
その直前の夜のことだった。
「どうぞ」
ノックに対してドア越しにアルシオの声が返って来る。
彼女の手で開かれるまで待つべきかしばらく迷ったが、
中からドアに近付いて来る気配も無いので、ジョニーはドアを開いた。
髪を下ろしゆったりとした部屋着を纏ったアルシオは、
主に裁縫職人が細かい作業をする際に用いる道具を身に着けていた。
その真ん丸い二つの硝子板の向こうで、
意外そうな瞬きが生じる。
3人の冒険者仲間のいずれかが訪ねて来たと思っていたのだろう。
「……何か話?」
「うん……ちょっといいかな」
「そう。じゃ、座って」
手にしていた本を閉じて机上に置き、
彼女は自分の座っていた椅子を出入口側へ移してジョニーに勧めた。
自身はベッドに腰を下ろす。
「眼鏡……っていったっけ、それ?
裁縫できるのかい?」
「合成はやってない。
でも目が悪いから、本読んだりお芝居観たりするために、
特別なのを作ってもらったわけ」
「目、悪かったんだ」
「灯りもケチッて本買って読んだ頃があって、
一気に悪くしちゃって」
そう言えば彼女の表情が普段より柔らかく感じるのは、
丸いレンズの印象によるものだけではないようだった。
目の悪い人は、目を細めると多少物が良く見えるようになるため、
目付きが悪く見られることがあるという。
「で、何?
部屋での私の姿を見に来ただけじゃないでしょう?」
「んー……まあ……」
――性的な事は嫌いではないから、街に居る間はオナニーを――
薄衣一枚を纏っただけでベッドに座っているアルシオの姿を見て、
シーリアから聞いた言葉がジョニーの頭をよぎる。
性を感じさせる何らかの物を探して彼の視線がさまようが、
掃除の行き届いた部屋にはそのような物は見出せない。
「何? さっさとハッキリ言いなさいよ」
ここに至って逡巡しては、気の短いアルシオの機嫌を悪くするばかり。
ジョニーは覚悟を決め、切り出した。
「他のみんなから、旅先で男達と、その……『している』って聞いたんだけど」
「してるけど?」
即答であった。
あまりにも抵抗無く返されたので、ジョニーは更に確認してしまう。
「あの、してるって……セックス……を、だよ?」
「……まあ、あなたが想像しているような『セックス』は、させてあげてるけど?」
今度は若干の間が有ったが、それは恥じらいによるものではなく、
言葉を吟味してから返したためのようだった。
だが緊張し、そして既にこのような会話に興奮が高まり始めていたジョニーは、
彼女に何か思う所が有るというサインをこの時、見落としてしまったのだ。
「あの、さ……」
だから、更にジョニーは踏み出してしまった。
踏み入ってはならない、罠が張り巡らされたその危険地帯に。
「またしばらく旅に出るんだろう?
そうしたら会えなくなるし……
折角同じ家に住んでるんだし、
旅先で出会う男達よりは、付き合いも長いんだし、
その、さ……」
「ふぅん……?」
言いたいことはもう察しているけど、一応、最後まで言ってみなさい――
そんな感じでアルシオが頷く様にして先を促す。
「いや、その……
君ももう知ってるだろうけど、
他の皆とは、そういうこと、してるわけで……
できれば、アルシオとも、もう少し近付きたいと言うか……」
「やりたい、と。
セックスしたいわけ? 私と」
表情を変えずに、アルシオは口を挟んだ。
ジョニーは頷いてしまった。
「私の体にペニスを突っ込んで気持ち良くなりたい、と。
自分の手とかより、
そのために発達した、女にしか付いていないあの器官の方が気持ちいいから」
また頷いた。
「そして射精できるくらいに興奮させてほしい、と。
精液を出す時がたまらなく気持ちいいから」
そして、すっかり勃っていた。
「他の女ともしたから、私ともしたい、と。
他の男にさせたんだから、自分にもさせろ、と……ね」
呟く様に言いながら、アルシオは立ち上がる。
ここでやっと、ジョニーは自分が過ちを犯したという
予感くらいは感じたかもしれない。
だが、遅かった。
アルシオの手が、唇が、ジョニーの知らない動きを取る。
魔法だ、と気付いた時には、
既にジョニーの体のほとんどの部位は、
彼の意思によっては動かなくなっていた。
「やっぱり素人ねぇ……
目の前で詠唱を見ても反応できないなんて」
含み笑いと共に、アルシオはジョニーの座っていた椅子を思い切り引く。
彼は受身も取れず床に転がった。
呻き声が出たことで、声は出せるのだということが分かった。
「な、何を……」
「あんなものさぁ……『セックス』でも何でもないわけよ。
イリティアなんかは
『男の人と束の間、愛し合う行為なんです』
なんて言っちゃってるけどさぁ……」
イリティアの口調を真似るところだけ、眼鏡を外す。
芸が細かいな――と、自身の危機的状況をしばし忘れてジョニーは思った。
「私に言わせれば、男達の排泄行為。
オシッコしたくなったらあれを取り出して力むのと同じように、
射精したくなったらあれを取り出してしごくんでしょ」
手の指が一本、無理矢理彼の口に押し込まれる。
「舐めなさい。
もたもたしたら喉まで動かなくして唾液を無理やり口に溜めるから。
死ぬ程苦しくなるけど死なないようにはするから安心して」
魔法でそんなことまでできるのか彼は知らないが、
冗談を言っている様子が微塵も無いので、
慌てて彼女の細くて形の良い指に舌を絡める。
「できれば野外でなくトイレでオシッコしたい、
できればオナニーでなくオマ○コで射精したい、ってとこ?
私達はトイレか? っての……んっ……」
神経の集まっている指先を舐められ、
アルシオの体が断続的に小さく震え始める。
「なんで敏感な粘膜使って男のチンポこすらなきゃいけないの。
なんで男の汚い排泄液、一旦体の中に受けて、
私達が処分してあげないといけないの。
終わった後に一人みじめに、自分の体で造ったわけじゃない汚い液、
オマ○コから再排泄しなきゃいけない気持ちが分かって出してんの?
出してる間が気持ちいいからって、わざわざ沢山出るように興奮高めて、
奥まで突っ込んでピュッピュ、ピュッピュと何度も何度も、
遠慮無く、飽きもせず、自分達だけやたらと気持ち良さそうに……」
しかし、自分の指をしゃぶる男を見下ろす表情は、
気持ち悪そうな侮蔑に満ちていた。
「舌の動きは止めずに、見るのよ。
口がお留守になったらもう見せないから」
もう片方の手でワンピース状の部屋着の裾をめくり上げる。
ジョニーの目は、現れた脚に、そして下着に、釘付けになった。
アルシオは服の裾を口に咥えると、空いた手を自分の下着に潜り込ませ、
指を動かし始める。
ジョニーに舐めさせている指先と、自慰による性器からの快感に、
大した時間もかからず濡れた音が聞こえ始めた。
たちまちジョニーのズボンの股間が、はちきれんばかりに盛り上がる。
オークの肌を見る様な目でそれを見つめながら、
しかしアルシオの下着にも染みが広がり始める。
しばらくその状態を続けてから両手を引いたアルシオは、
ジョニーのズボンを下ろし、
興奮の余り震えているペニスを取り出した。
「……何これ。排泄汁でベッタベタ。
手、濡らす必要も無かった?」
ジョニーの唾液、アルシオの愛液、それぞれで濡れた手を擦り合わせ、
白く泡立ち音がするまで粘液を混ぜ合わせる。
そしてその手で彼のペニスをしごき始めた。
「はいはい、気持ちいい方のオシッコの時間ですよー……と」
やる気の無さそうな棒読み口調だった。
「ほら、さっさと出しなさい。
出したいんでしょ? 私に射精手伝ってほしかったんでしょ?
……まったく、ほんと使えない出来損ないの器官。
こうして充分過ぎるくらいに、
出していい時だってことを合図してやらないと
溜まったものを排出することができないなんて、ねぇ?」
束縛の魔法で、快感に対し腰を引くこともできないジョニーは、
その分ペニスをアルシオの手の中で暴れさせる。
そして視線は、
中途半端にめくれた裾の奥に見え隠れする彼女の下着に注がれていた。
「……ああ、何? まだパンツ見たいわけ?
めんどくさいなぁ……」
一旦ペニスから手を離し、下着を下ろす。
ジョニーは瞬きもせずにいたが、秘所を見ることはできなかった。
「はい、好きなだけ見たら?」
裾を正してしまったアルシオは、
しかし脱いだばかりの下着を彼の口に咥えさせた。
そうしてまた手を膣と錯覚させる為の行為を再開する。
雌の匂いが口と鼻を満たし、ジョニーの興奮は一気に高まる。
布から愛液を吸い出すように、下着を啜った。
「鈍いこのチンポも、
やっと『出しなさい』といわれてることが分かってきたみたい。
って、あ、ちょっと待ちなさい! 私の部屋汚さないでよ!
しょうがないから、イリティアお得意のこれで……」
下着が取り上げられ、ペニスを包み込む。
「代わりにこっち見て、一気に射精しちゃいなさいっ」
服の裾を一気に捲り上げたアルシオがジョニーの顔を跨ぐ。
愛液で汚れた股の間が丸見えになり、
先程までそこを包んでいた下着によってペニスがしごかれる。
「出るよっ……アルシオのマ○コと下着で、
精液、処理するよ……!」
膣代わりの、ヌルヌルになった布地に向けて射精を始める。
「うわ、やだ、気持ち悪っ……
チンポ、本気で射精してるんじゃない?
結局、パンツとオマ○コの区別も付かないってこと……
やっぱり最っ低……」
そう言いながら、
下着越しに小刻みに先端を撫で回して充分に射精をさせる。
そんなアルシオが、射精を見せ付けられて思わず
白濁したものを膣口から溢したのを、ジョニーは見ていた。
ジョニーは床に横たわったまま、
余韻と思考の中に在った。
萎えたペニスにはまだ、粘液まみれのアルシオの下着が絡み付いている。
もうしばらく、魔法の効果は続くらしい。
机の上には眼鏡。
手を洗うために風呂場に行く、と言って部屋を出て行った彼女が今、
自慰に没頭していることを、彼は確信していた。
確かに彼は誤った。
だがアルシオが今のままでいいとは思えないのだ。
彼女が、他の仲間達が話したような状況の中で生きて行く冒険者であるのなら。
行為やそれがもたらす快楽が、本心では嫌いではないのなら。
アルシオの為に、仲間の為に、そして自分と彼女達の関係の為に、
錬金術師である自分は、一体、何ができるのか。
彼は考えていた。
翌日、4人の居候達はバストゥークの錬金術師の家にしばしの別れを告げ、
冒険の途へと旅立って行った。
→番外編