ミカさんの受難
こんなMaatじいさんは(・∀・)イイ!
あつまれ!だんぐるふ温泉
へなちょこミカと爆炎のギース

「あっ…いや…だめぇ…!」
「おらおらぁ!こないだの生意気な態度はどこいきやがったんだ!ああ!?」
グスタベルグの荒野にパンパンと肉と肉のぶつかりあう淫猥な音が鳴り響く。
侍レリック装備、いわゆるアーティファクト2に身を包んだヒューム男が、既にボロキレと化した衣服を見につけたエルヴァーンの女を犯していた。
「はぁはぁ…さんざん貢がせといて…金が尽きたらハイさようならってか!ふざけんじゃねぇぞ!」
金縁の華やかな早乙女装備をまとった男が憎憎しげにそう吐き捨てると、より一層腰の動きを早めていく。
「な…なにを言うんですかっ…あなたが、かってにいろんなものを送りつけて…んああっ」
「…そ、そうやってお前はまた俺の気持ちを傷つけるのかっ!」
「あああ!た、たすけて…!許してぇえええ!」
「許すかぁ!うらあ!これでも…くらいやがれぇ!」
憎しみを込めた肉棒をエル女の最奥に突き入れると、びゅるびゅると大量の精液を注ぎ込んでいく。
「あ…あああ…いや…ぁ…」
彼女は本来、レベル75の白魔道士である。
彼女ほどの経験を積んだ冒険者ならば暴漢に襲われる前にテレポなどのワープを用いていち早く逃げ出すこともできたはずなのだが…
今の彼女にはそんな手段を実行することができなかった。そして、侍AF2をまとった男にいいように犯されてしまった。
彼女の力は押さえ込まれ、レベル1にまで下がっていたからである。

「『練武祭』か。まったく、モーグリ様様だぜ…この俺にとって格好の復讐の舞台を用意してくれるなんてなぁ」
地にぐったりと倒れ付すエル女に未だ肉棒から滴る精液をなすりつけながら。
兜の下で男は狂気を帯びた笑みを浮かべるのだった。

その男は、ある意味有名人であった。
目をつけた女にいきなり求婚したり、高価な装備品を送りつけたり、シャウトで自分とその女とのあらぬ行為を暴露してみたり。
要するに、あらゆるストーカー行為を度々行ってきた最悪の人格の持ち主であった。
度重なる傍若無人の行為の数々にGMに拘束されることも珍しくなかった。
しかし当人には全く反省の色は見られず、通報したと思しき相手に執拗な嫌がらせを繰り返していた。
彼と関わった冒険者たちの中には友人との間で不和が生まれたり、酷いときには引退に追い込まれる者も多く、男に対する不満や怒りは募るばかりであった。
そんな毎日を送る彼だったが、ついに手痛い制裁を受けることになる。一人の冒険者の手によって。
連日混雑の様相を見せるジュノ下層競売所前にて、彼は一人のミスラの冒険者に目をつけた。
頭の上でピコピコと動く猫耳、輝く銀髪、ゆらゆらと左右に揺れる尻尾、そしてやたら露出度の高い装備からはみださんばかりの巨乳!
身長は小柄なため、その胸のサイズはより強調されて見える。
(うおっ…すげぇなこりゃ。さわってくださいと言わんばかりじゃねぇか)
ごくりと生唾を飲み込むと、競売を物色する彼女の方へとじわじわと距離を詰めていく。
(絶対男を誘ってやがる。間違いねぇ。そんなら…)
男はミスラの背後から両手を伸ばし、抱きすくめるようにしてその巨乳をわし掴んだ。
「ん…?」
怪訝そうな声を上げて振り返るミスラ。そこにはニヤニヤと下卑た笑いを張り付かせるヒューム男の顔があった。
指先でふにふにと柔らかな感触を楽しみながら、だらしない表情で男が口を開く。
「なあ、お嬢さん…よかったら俺と、あっちの路地裏にでも」
そこまで口にしたときだった。
「きったない手で触んなぁボケぇえええええっっっ!!!」
ごっしゃああああああ!!!!
「はがぁぁぁあああああああ!!!!?????」
そのミスラの強烈な鉄拳が男のアゴにクリーンヒットし、彼の体は後方に数メートル吹っ飛んだ。

「…ん。なかなか使い勝手いいわ、コレ」
彼女の拳にはたった今落札したばかりのカイザーナックルが装着されていた。
「ひ、ひぁ!?」
男は外れかけたアゴを抑えながら、とんでもない女に手を出してしまったことを瞬時に悟った。
必死で彼女から離れようとするが、アゴに受けたダメージは激しく脳を揺さぶり、下半身の動きもままならない。
「さあて、こういう不埒な変態にはお仕置きしないといけないわねぇ。新しい装備品を手に馴染ませる為にもちょうどいいかも」
拳のカイザーナックルは鈍い輝きを放ち、新たな血を吸いたいと主張しているようにも見えた。
「た、たひゅけて…」
男は変な汗をダラダラと流しながら周囲の人ごみに向かって助けを求めるが、しかし。
「うわ〜、あいつだよ。あのストーカー野郎だ」
「やだー、きもーい。なにあいつ…」
「…あの男のせいで、あたしのフレ引退したのよね…」
「げ、よりによってあのミカに手を出したのか!?死んだなwww」
「いい気味だよ。これくらい酷い目にあわないと反省しねぇよコイツ」
周りの連中は蔑むような視線を送るだけで、全く取り合おうとしない。
それどころか彼女の制裁を激しく期待するような声まで飛んで来る始末だ。
「ち、ちくしょう…お前ら…」
今まで自分のしてきたことを棚にあげ、精一杯の罵声を浴びせようとしたその時。
「なんの騒ぎだ!」
ジュノの治安を守る騎士たちが騒ぎを聞きつけ、事態を収拾するべく駆けつけたのだ。
(い、いまだ…!)
ざわざわと集まってきた野次馬連中の間をほうほうの体で潜り抜けながら、ちらりと後ろを振り返る男。
そこには、ぶーたれた顔で職務質問を受けるあのミスラの姿があった。
(あの女…覚えてろよ…)

そして、幾日かが過ぎ、男があのミスラモンクに対する復讐案を練っているときに、今回のイベント『練武祭』の話を聞いたのだった。
東方の鎧を身に着けた盗賊団を成敗するにはレベル制限を受け、レベル1にならなければならない。
幸い、メインジョブが侍である自分にはその東方の鎧そっくりの侍レリック装備がある。
こいつを装備して盗賊団になりすまし、俺を馬鹿にした連中をブチのめしてやる!
レベル1になったやつらなど、赤子の手をひねるようなものだ!
そうして彼はイベント参加者の中に自分をバカにした連中や、かつて自分を振った女たちを見かけると盗賊団になりすまし、
自分に向かってくる参加者たちに対して暴行や強姦を繰り返したのだった。

だが、さすがに事を繰り返しているうちに、イベント主催側のモーグリたちも気づき始めたらしい。
危険な異分子が紛れ込んでいることを冒険者たちに呼びかけているようである。
それでも男は復讐をやめる気はなかった。
男にとってもっとも憎むべき相手、衆人環視の中で自分に恥をかかせた、あの女を打ちのめし、犯し、屈服させるまでは…。

「確か…ミカとか呼ばれていたな。もしやつがイベントに参加しているなら…ククク」
あの時につけられたアゴの傷がジンジンと疼くのを彼は感じた。
自分に犯され泣き叫ぶミカを想像しながら、彼はグスタベルグの荒野を駆ける。
しかし、彼はまだ知らない。
ミカと関わった男は、殆どが猛烈に不幸な目にあっているという事実を…。

「あー、ミカ?確かにここの温泉宿の女将ですけど」
だんぐるふ温泉(まだあった)と書かれた看板の先にある温泉宿に立ち寄った『彼』はミカの所在について
そこの従業員に質問していた。
『彼』は各地でイベント参加者を襲うかたわら、ミカの居場所を執拗に探っていたのである。
そして得た情報を統合してみると、どうやら最近ではバストゥーク近辺で活動しているらしい。
食堂のテーブルで軽食を食べながら『彼』は従業員に疑問をぶつける。
「…なぜに冒険者のミスラが温泉宿の女将になっているんだ…?」
「いや、まあいろいろありましてね…」
接客係兼料理係の彼(タクと名乗るヒューム)はフッとため息を吐くとこう続けた。
「お客さん、ナニがあったか知りませんけど…あの女に関わると禄なことにはなりませんよ?」
悟りきったような表情でそれとなく『彼』を推し止めるような台詞をいうタク。
その台詞に微かに恐怖の入り混じったようなニュアンスを感じ、小さな寒気を感じる『彼』であったが、
「あ、いや、大した用件ではないんだ。しかしできれば彼女に直接会って話がしたくてな」
ミカに対する悪意を隠しながら、『彼』はなんとか食い下がる。
「ミカ姐さんなら、ほら、あれでやんすよ。東方の鎧がなんとかいう…」
仕事を一区切り終えたタルタルの従業員が会話に割り込んできた。
「ああ、こないだ商業区でモーグリが言ってたあれか。練武祭」
「そうそう。それでミカねえさんは鎧を取り返しに行くって最近は毎朝ずっと…」
「―盗賊団を追っているのか!?」
いきなり大声を上げる『彼』にびっくりしながらタルタルは話を続ける。
「は、はぁ…まあミカ姐さんはお祭り騒ぎが好きでやんすからねぇ。
こういうイベントには率先して参加したがるんでやんすよ。この前の牛祭りなんかでも…」
もう『彼』はその先の話は耳に入っていなかった。
アゴの傷を撫でさすりながら、必死で笑いを噛み殺す。
ミカがイベントに参加していないことも想定して、なんとか参加させる為の策もいくつか考えてはいたのだが。
既に参加しているというのなら話は早い。

「ありがとよ。ほれ、食事代だ」
ジャリン、と皮袋からギルを取り出すとテーブルの上に放り出す。
「え、ちょっと。多いよお客さん…」
呼び止めるタクの声を背に、『彼』は食堂を飛び出していく。
「なんだってんだ、あいつ?」
「…はッ!?」
窓の外、慌てて走っていく『彼』の横顔を見たタルタル(ポンタ)が思わず息を呑んだ。
「ど、どうした、ポンタ!?」
「…なんか…あの人の横顔に死相が見えたような気がしたでやんす…」
青ざめた表情でタクを見上げるポンタ。
「あの人…ミカ姐さんにあってナニをするつもりなんでやんしょ?」
「さあ…」
なんだか、『彼』の行く末に大きな不安を感じる二人。そして。
『あの人が無事でありますように』
声をはもらせ、アルタナの女神様に祈りをささげるタクとポンタであった。
でも、その願いは聞き届けられないだろーな、という予感もちょっぴりあったりして。

「ひゃっほーーい!」
『彼』が温泉宿を飛び出してからほどなくして、元気なミスラ少女の声が聞こえてきた。
「こらーっ!鎧かえせ〜!!」
その楽しそうな叫び声を聞いたとたん、『彼』の脳裏にあの忌まわしき記憶が蘇る。
(この声だ!間違いない!)
『彼』は近くの小高い岩山によじ登り周囲を見渡した。
すると程なくして、彼は見覚えのある銀髪ミスラの顔を発見した。
「いた…おおおっ!!」
思わず声を上げる『彼』。眼下に広がる荒野には、恐るべき光景が展開されていたのである。

―制限を受けてレベル1になってしまうと当然、レベル2以上の装備は強制的に外されてしまうわけだが、
大抵の冒険者は代わりの装備を用意しないまま、つまり肌着姿でイベントに参加する場合が多い。
どうやらミカも代わりの装備を用意せず、装備なしのままイベントに参加しているようだが…
ミスラ族独特の肌着、ようするにあのビキニタイプの茶色の下着だけで走り回っているのである!
これが普通のミスラなら街中でもよく見かける姿だけに、大抵の冒険者は見慣れているのであろうが、
ご存知の通り、ミカの巨乳ぶりはミスラとしては規格外のサイズ。

木刀を振り回すたびにあの胸がたっぷんたっぷん揺れまくるのである!
走りまわるたびにぷりんぷりん弾みまくるのである!
盗賊から反撃を受けるたびにぶるんぶるんなのである!

ビキニブラからこぼれおちそうなハミ乳に目を奪われた男性イベント参加者は
ガルカ族をのぞいて全員前屈み状態で盗賊を追いかけるどころではない。
女性参加者もまた、ミカの胸と自分の胸を見比べてため息をついたり、泣き崩れたり、
あまりの悔しさにハンカチを銜えて「きーっ」とか叫んだりして戦意喪失状態である。
当事者のミカ本人はと言えば、侍姿の盗賊を追いかけるのが楽しくてしょうがないといった様子で、
周りの状況には全く気づいていなかったりする。
なんとも壮絶な状況に、復讐心に捕らわれていた『彼』もあっけにとられていたが、
「きゃほーーーー!」
ハイテンションなミカの嬌声を聞いてハッと我に返るのだった。
「お、落ち着け、俺…!う、うまくいけばあの乳はもうすぐ俺の好き放題にできるんだからな…」
そうやって自分に言い聞かせると、カバンから自分の侍レリック装備を取り出し、身に着けていく。
兜、胴、篭手、佩楯、と身につけるが、足装備だけはパウダーブーツである。
イベント参加者は通常時より脚力が早くなっているためその対策のために用意したのだ。
連続使用を想定しているため複数個用意してある。
「よし…準備は整った!」
盗賊たちの進行方向へ先回りし、ミカを迎え撃つのだ。
『彼』はさっそくパウダーブーツのとんずら効果を発揮し、駆け出した。

木刀をぶんぶん振り回しながらミカは盗賊を追いかけている。
「大人しくお縄を頂戴しなさーい!」
そんなミカの背後からはさほど性的関心のないガルカ族が走ってくる。
「あれっ?」
ふと、ミカが目の前の状況に違和感を抱く。
いつのまにか同じような侍AF姿の盗賊が二人、並走しているのである。
「よくわかんないけど!ふたりともとっちめるのみっ!」
既にお祭り脳と化したミカの思考パターンは、ふってわいた謎現象を『よくわかんないけど』の一言で片付け
イベントの進行を最優先するのだった。
その時、ミカの前方を走る盗賊の片割れが急にスピードを落とした。
「!チャーンスッ!!」
理由はわからないが今ここでスピードを落とすなんて殴ってくださいと言わんばかりの行動!
木刀を構え、スピードの鈍ったそいつに向かって木刀を振りかざした!
ぶんっ…
空を斬るミカの木刀。ミカの狙った盗賊の片割れはいきなりスピードが上昇し、斬撃を軽々とかわして見せた。
「へっ…?」
必殺の一撃をあっさりかわされ、間抜けな声を上げるミカ。
「つっかまーえた」
そういうと盗賊の片割れはミカの体をひょいと抱え上げ、脱兎のごとく走り出した。
「え?ええっ!?」
ミカには何が起こっているのか未だに理解できていないようだ。
あっけにとられるもう一人の盗賊と、追ってきたガルカ達を尻目に、
『パウダーブーツ』を履いた盗賊は荒野の向こうへと走り去っていった。
―ミカを抱えたまま。

「な、なに?これもイベントの一環なわけ?」
ミカを抱えた盗賊は走りに走ってとうとう南グスタベルグ東端の灯台にまでたどり着いた。
灯台の中に足を踏み入れると、石床にミカの体を放り投げる。
「あいたっ!」
文句を言おうとして顔を上げるミカだが、周囲の様子を見回して怪訝な顔をする。
「な、何よここ…東の灯台?」
「ああ、素晴らしいイベントの舞台だよ。この俺様の復讐ってやつのな!」
「復讐ですって!?」
「ああ、そうだ!俺の顔を見忘れたとは言わさねぇぜ!」
そう言って兜を脱ぐと、そこにはアゴに傷をもつヒュームの男!

「このアゴの傷と、大恥かかせてくれた礼はたっぷりとさせてもらうぜ!」
「あ、あんた…見たことある…えーと…だれだっけ?」
「ま、前にジュノ下層でお前に殴られたんだよっ!大勢の人間が見てる前でな!
そのお返しをしてやろうってんだよ!」
「あ、あー…思い出したっ!あの時の痴漢!!」
ハッとしてミカが眉毛を吊り上げる。
「あんたねぇ!あの後騒ぎに紛れてこっそり逃げたでしょ!
おかげであたしだけ職質受けていい迷惑よ!なんであたしばっかり悪いってことになっちゃってんのよ!
周りにいた人たちが証言してくれて助かったけど!」
「うるさいっ!」
ぱちんっ!
『彼』がミカの頬を引っ叩く。
「ひゃっ!」
「お前がエロい格好で男を誘ってやがるから!この俺様が触ってやったんだろうが!」
「さ…さわってやった…ってぇっ!?」
『彼』の無茶苦茶自分勝手な意見にふつふつと怒りがわいてくる。
(そういえば…あの後だれかが言ってたっけ。あいつは悪質ストーカー野郎だって…)
「どいつもこいつも!よってたかって俺の心を傷つけやがる!」
ミカの怒りをよそに、続けて『彼』がまくし立てる。
「せっかく心をこめて贈ったプレゼントが迷惑だとかほざく糞エル女!パーティで俺がほんのちょっと触っただけでキックするブスヒュム!
俺が先に目をつけたNMを平気な顔してかっさらっていく馬鹿タルだの!人の気持ちを考えねぇヤツが多すぎる!
他人の心を傷つけて平気な顔をしているような連中には制裁が必要なんだよっ!そうだろ!ああん!」
尋常でない剣幕でがなりたてる『彼』の姿を目の当たりにし、ミカの心中に嫌悪感と戦慄が沸き起こる。
(うわぁぁぁあぁ…ホンモノだコイツ…)
何を言っても聞き入れるタイプでは無い。ミカは心の中でひっそりため息をついた。
「俺は今まで俺をバカにしてきたやつには等しく制裁を与えてきた。そして今回はお前の番ってわけさ」
「このあたしが、そんなわけわかんない制裁なんてもの…大人しくうけると思ってんの?」
会話の最中、ミカの視線はじっと『彼』の一挙一動を伺い、隙ができる瞬間を探していた。
「ほう、お前、逃げられると思ってんのか?」
『彼』がにやにやと笑みを浮かべている。
「ムリムリ。なんせ今は…」
と言ったところで、くるりと背をむける。
(今だっ!)
「だーっ!!」
ドスンっ!
ミカが油断した『彼』の背後から体当たりを敢行する。
そしてよろめいた彼の横から灯台の入り口へと一気にかけぬけた!
「ムリだっていったろ」
ズンっ!
「ふぐっ…!」
パウダーブーツの効果で俊足の効果を得た『彼』は素早くミカの正面に廻り込み、鳩尾に拳を見舞った。
「ぐううぅっ…げほっ」
「今の君はレベル1なんだからね」
勝ち誇った顔で、床で苦しげに呻くミカを見下ろす『彼』。

「さぁて、じっくりと遊ばせてもらおうか」
今や圧倒的弱者に成り下がったミカの体の上を、『彼』の指先が這うように動き回る。
「モンクなんてやってるくせに乳にもケツにも肉がみっちりつまってやがるな」
「さ、触るなぁ…」
「キツイ目だな。今まで復讐してやったメス豚どももそんな目をしてたよ。もっとも…」
べろっ、とミカの頬を舌で舐める。
「最後には許してって泣き叫ぶんだがな。さて…」
次に『彼』が目をやったのはビキニブラで包まれた大きな胸。
「さっき盗賊を追い回していたお前の姿な…凄かったぞ。恥ずかしげもなくタプンタプンこいつを震わせてな」
ブラの上から、乳首があると思しき部分に吸い付く。
「や、やめっ…す、吸うなぁ…」
それでも『彼』は吸引をやめない。次第にブラは『彼』の唾液でべとべとになっていく。
「ん…?」
舌先の微妙な変化に気づいた『彼』は一旦口を乳房から離し、吸い付いていた部分をまじまじと見つめた。
「ははは!なんだこれは。勃ってるじゃないか。ああん?」
生地に覆われているにも係わらず、乳首がプックリと膨らんでいるのがブラの外からでもはっきりと確認できる。
「ううっ…」
『彼』に嘲笑され、怒りと羞恥に顔を染めるミカ。
「ご自慢のおっぱいはとっても感じやすいというわけか。こいつはいい…ならば」
そう言うと『彼』はナイフを取り出し、ブラの紐を切り裂いていく。
ぷつん、と紐が切れると、ブルンと盛大な肉の津波が起きたかの如く、その豊満な乳房が飛び出してきた。
見事な光景にさらに気分を高ぶらせながら、『彼』は乳房の頂点にあるピンク色の突起をつまみ上げ、ゆっくりと擦り始めた。
「生地越しで勃起するほど感じるなら…直接しごかれたらどれだけ気持ちいいんだろうな?うん?」
「あ、ああ…!」
しこしこと指先で乳首を擦り上げられながら、切なげな声をあげ始めるミカ。
「おお、すごいな。ますます充血してきているぞ?
やはりお前はおっぱいを触ってほしくてあんな格好をしてたんだ。そうだろ?」
「ち、ちがう…」
「さっきおっぱいをプルンプルン振るわせながら盗賊を追い回していたのも、男どもに見せつけるためだったんだろう?
欲情した男どもに視姦されながら内心悦んでいたんだろう?」
「そんな…つもりじゃ…!」
「まったく男心を狂わせるとんでもないおっぱいだ…やはり制裁が必要だな」

『彼』はミカの乳房を口に含むと、乳首に噛り付いた。
「い、いたぁっ!やめ、やめてよぉ!」
ジンジンとした痛みを乳首に感じながらミカが悲鳴を上げる。
「ふむ、今の悲鳴はただ痛いだけの悲鳴じゃなかったな。明らかに感じているときの悲鳴だ」
一方的な台詞を吐くと、さらに『彼』は乳房をカプカプと甘噛みし始めた。
歯の先から伝わってくる、ボリューム感溢れる乳房の感触は歯茎を通り抜け、『彼』の脳に絶大なる官能の波となって押し寄せてくる。
(おお…たまらん…もっと…もっと味わいたい!)
「あ…あう…っ」
恥辱と痛みに耐えながら、しかしその痛みと共に生まれてくる僅かな快感に戸惑いながら、ミカが小さく呻いた。
息が苦しくなったのか、『彼』は乳房から口を離し、「プハッ」と息をつく。
ミカの豊かな乳房には微かにつけられた歯型と、唇の吸引の痕跡が残り、褐色の肌をピンク色に染め上げていた。
「悪くない刺激だったようだな?噛まれて感じたか」
「ち、ちがう…感じてない…噛まれてかんじるわけない…」
「ほう…そうか?パンツが湿っているぞ?」
「…っ!」
『彼』の指先がパンティの湿り気を帯びた部分にぐいぐいと押し付けられる。
愛液が生地に染みて変色した部分が、少しづつ広がっていく。
「痛いのが良かったのか?ミカは変態だな」
「良くないっ…はなせぇ…っ!」
必死で『彼』の腕の中から逃れようとするミカだが、レベル1の力でレベル70台の力を押しのけるのはやはり不可能に近い。
「ははは、可愛いじゃないか。ほれほれ、そんなモゾモゾやってても逃げられないぞ?」
今のミカと比較して圧倒的な腕力でミカを翻弄する『彼』。
ミカの抵抗などものともせず、その見事なカラダをじっくりといじくりまわす。
全身を弄られる刺激にミカの肉体もいよいよ反応が強まってきた。
指先で攻められている股間からもじくじくと愛液が溢れ出し、パンティを濡らしていく。
指先で生地が擦られるたびに、ぬちゃぬちゃと淫猥な水音が響き渡る。
「たまらんなぁ…俺をブンなぐったミカちゃんを俺の腕の中で好き放題できるなんてなぁ」
「くっ…よ、弱くなった女しか好き放題できないなんて…あんたはやっぱり最低のクズってことね…」
「言ったなっ!」
ミカの挑発の言葉に怒りを感じた『彼』はパンティの生地を掴み、ミカのおヘソの方へ強く引っ張った。
上方へと引っ張られたパンティの生地はミカの股間にぎっちりと食い込み、
とめどなく涎をたらすピンク色の割れ目が生地を飲み込んでいるように見えた。
「う、あううっ…い、いたいっ…あああっ!」
「なんだなんだ、汁の量が増えてきたぞ?ここも痛くしてほしいのか?」
「あんたっ…ホント…あとで覚えてなさいよっ…」
「口の減らない女だな。下のお口をふさいでやったらちっとは大人しくなるのかな?」
そう言って『彼』が手にしたのはミカが先ほど振り回していた木刀であった。

「くくっ…さあて、こいつを一体どうすると思う?」
木刀の切っ先がぐいぐいと乳房に押し付けられ、その痛みにミカは顔をしかめる。
「パンツを脱げ」
「い、いやよっ」
バシィ!
「くあっ…」
いきなり『彼』がミカの裸身を木刀で打ちつけた。
「脱げって言ってんだよ!」
「ぐっ…」
下手に逆らってもダメージが増える一方だ。
今は仕方ない、とミカは愛液でびちゃびちゃになったパンティを脱ぎ捨てた。
「よおし、今度は…股を広げて、マ○コを見せろ」
「うう…」
ミカはぺたん、とお尻を石床につけると、おずおずと両足を広げていった。
愛液でてらてらと光る、ピンク色の割れ目が露になる。
「指でマ○コを広げてみせな。奥までばっちり見えるようにな…」
「贅沢な注文ばっかりね…」
悔しげに表情を歪めながら命令を聞き入れるミカ。
指でパックリと広げられたミカの女の部分は『彼』が想像していたよりも綺麗なピンク色を保っていた。
「ほう…さんざんヤリまくって真っ黒だと思っていたんだが、綺麗なもんだ。体質かな?」
「し、知らないわよ…で、いつまで見物してるわけ?」
「見てるだけじゃないさ。塞いでやるっていったろ?」
『彼』は木刀を持ち替えると、柄の部分をぱっくりと口を広げた花弁へと近づけていく。
「な…まさかっ」
「ほれ。こいつで塞いでやるよ」
ゆっくりと、柄の部分からどろどろに濡れた肉壁の内部へと押し込まれていく木刀。
「ふ、ふあああああ…」
硬質の物体が胎内の肉壁を擦りながら進んでくるのを感じ、ミカが切なげな声をあげる。
ずぶずぶと押し込まれ、やがて木刀は柄の部分がすっぽりと膣内に収まってしまった。
「どれ、動かしてみるか?」
切っ先の方を持って木刀をずぷずぷと出し入れしてみる。
「ふう…ああっ…はぁああっ…」
「まだ余裕がありそうだな…よし」
『彼』は自分の変装用の木刀を取り出し、先ほどと同様に柄の部分を花弁に向け、近づけていく。
「!?ちょっ…!?もう一本なんて…!」
「平気だろ…このグチョグチョエロマ○コならもう一本くらい」
ずぶぶぶっ…!
「あっ…ダメっ…苦しっ…2本は…だめぇっ…!」
「とか言いながら、バッチリ飲み込んでいくじゃねぇか」
2本分の柄を突き込まれた膣穴の隙間からはプチュプチュと愛液が噴出している。
その愛液による潤滑効果で2本の木刀の出入りはよりスムーズにおこなえるようになってきた。
ぐちゅぐちゅと木刀によるピストンが繰り返され、そのたびにゴツゴツと子宮口に柄先がぶつかる衝撃が、
ミカの性感をより高めていく。

「いやぁあああ、あたってるうう!木刀がぁ、奥にいいい!」
ズンズンと木刀に犯されるたびにミカの上半身も揺さぶられ、たっぷんたっぷんと美巨乳が波打つ。
「ははは、すごいぞミカぁ!おっぱいが凄い勢いで暴れてやがる!おらぁ、もっと揺らせよぉ!」
『彼』の興奮もこれまでになく高まり、さらに木刀でミカの最奥を突きまくる。
「ふああああ!木刀で、木刀なんかで犯されて、感じちゃってるぅ!いちばんおくをつつかれて、かんじちゃうううう!!」
「おらぁ、イきやがれ!エロ乳ブルンブルンゆらしてイッちまえええ!!」
「ふああああぁあっ!いっちゃうう…おっぱいゆらしながらいっちゃう…ああああーーーーーーーっ!!!」
絶頂の悲鳴とともに木刀をつっこまれた膣穴の隙間が激しく潮が吹き上がる。
「あああ…っ!すごおぃ…ぼくとおお…すごいよぉおお…!」
木刀の柄を突っ込まれたまま、絶頂後の脱力感に身を委ねるミカの痴態に、
『彼』の股間ははちきれんばかりの反応を示している。
「はぁはぁ…み、ミカ…俺ももうたまんねぇよ…」
荒い息をつきながらがちゃがちゃと下半身の装備を脱ぎ捨てていく『彼』。
「お、お前ばっかりイきやがって…ここからは俺のチンポもばっちり面倒見てもらうぜ?」
にゅぽん、と粘着質な音を立てて木刀の柄が引き抜かれると、今度は自分の猛々しくそそり立ったペニスをミカの花弁に宛がう。
「はぁはぁ…さあ、たっぷりと楽しませてもらうからなぁ…うらぁ!」
ぬちゅううっ…きゅううっ!
イッたばかりのミカの膣内に挿入した途端、急激な肉壁の収縮がペニスを襲う。
「ひあっはああああっ!」
ビクン、とカラダを振るわせ、硬直するミカ。
「おほおおおおっ!!」
いきなりの亀頭への締め付けに、間抜けな声を上げてしまう『彼』。
「…な、なんだ…チンポ半分突っ込まれただけでイッちまったのかよ?」
「ううっ…だ、だって…いったばかりで、敏感に、なってるのにぃ…そんな熱いの入れられたらぁっ…」
(…つくづくイヤらしい体をしてやがる…)
『彼』は当初自分が想像していた展開とはまるで違う方向に進みつつあることに内心戸惑っていた。
『彼』が望んでいたのは強さを奪われ、恐怖に泣き叫び、必死に許しを請うミカを容赦なくいたぶり、陵辱し、犯しまくることだった。
だが、今の彼女はどうだ。自ら陵辱を受け入れ、快楽を欲し、潤んだ瞳はまるで犯されることを激しく期待しているようではないか。
しかも、『彼』自身は完全に彼女のかもし出す淫猥な雰囲気に呑まれていることを自覚していた。
彼女を犯したい。チンポで突きまくりたい。突きまくりながらおっぱいを揉みまくりたい。おっぱいを吸いまくりたい。
彼女がおっぱいを振るわせながらイきまくるところを見たい。
次から次へと湧き出してくる、ミカのカラダに対する強烈な欲望が抑えきれない。
いつのまにか復讐心は消えうせ、あるのはただミカとのセックスを続行したいという本能的渇望のみである。
そして彼は何も考えないまま、無意識のうちにペニスの先端をミカの最奥にまで押し込んだ。

「…ああああーーーーっ!!」
ミカが歓喜の声をあげる。
その声を聞いたとたん、彼の中の何かが弾けた。
むき出しになった本能は『彼』自身の肉体を支配し、激しく沸き起こる性欲を発散させる為に最適な行動を取らせようと機能し始める。
「ふぉおおおおおーーーーーー!!」
獣のような咆哮を発しながら両手でミカの巨乳をわし掴みにすると、乱暴に揉みしだく。
手のひらに収まりきらない、ボリュームたっぷりの柔らかな乳肉が指の間からはみ出し、
美しい乳房の形をいびつに変形させ、ピンと張り詰めた乳首には強烈に『彼』の唇が吸い付いた。
ミカが痛みを感じて顔を歪めたような気がしたが、彼にはその痛みがすぐ快楽に変わることを知っていたので
かまわず巨乳の感触を楽しみ、乳房の味をたっぷりと味わい続けた。
案の定、じきにミカは巨乳をいたぶられながら切なげに喘ぎ始めたので、次に彼は乳房への刺激はそのまま続行しながら
ペニスのピストンを開始する。ミカの胎内は心地よく、『彼』の分身を時には優しく包み込み、時には強烈に収縮して締め上げる。
そんなミカの胎内を激しく蹂躙しようと、ペニスの動きは激しさを増し、接合部からはグッチュグッチュと粘着質な音がリズミカルに響いてくる。
ミカは自身の体のもっとも敏感な部分である乳房を責められるたびに甲高い声をあげ、快楽の度合いを高めていく。
『彼』もまた、再び彼女の絶頂が近いことを悟り、腰の動きを早めていく…
「ああああっ…!!ま、またいくうううっ!!もうすぐいっちゃううううっ!!」
「う、うおおおお、お、俺もだっ!はぁはぁ、い、いくぞおお!お前のなかでだすぞミカぁああああ!!」
「あああっ…はああんっ…いくうっ…あっ…アアアアーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「ぐううウおおおおおおおおーーーーーーーっ!!!!」
どびゅどびゅどびゅうううううううーーーーーーーーーっっっ!!!!!
ミカの最奥で激しい射精がおこり、胎内を熱く煮えたぎる獣液が満たしていく。
「はぁ…はぁ…はああっ…あ、あついっ…おなかのなか…あついよおお…」
未だどぴゅどぴゅと射精をつづけるペニスの躍動を胎内に感じながらミカがうっとりと呟いた。
「へ、へへへ、み、ミカぁあああ…」
「え…」
じゅぽん、と引き抜かれたぺニスは盛大な射精を行ったにも関わらず、ガチガチに屹立していた。
「今度はお前のやらしいオッパイを犯したいって…こいつも言ってるぜ…へへっ」
仰向けに横たわるミカの上半身に馬乗りになると、豊かなおっぱいの谷間にずぶずぶと肉棒を沈めていく。
「おおお…あったけぇ…こりゃマ○コより気持ちいいかもなぁ」
『彼』の肉茎はミカの乳肉の谷間に完全に埋没してしまった。
二つの巨大な肉饅頭を両手で左右から挟みこむと、それだけでペニスには絶大なる快感がこみあげてくる。
「ふああ…お…おっぱい…犯すの…?」

瞳をとろんと潤ませながら、ミカは自分に圧し掛かっている『彼』の顔を見上げる。
「あ…ああ、そうさ!このエロオッパイを…目一杯犯してやる!」
そう宣言すると、『彼』は先ほどミカの膣を犯していたときよりもさらに強烈なピストンを開始し始める。
ペニスに大量に纏わりついた精液と愛液が潤滑油の役割をはたし、深い胸の谷間への抽挿をスムーズに行わせる。
『彼』が自分の腰を打ちつけるたびに下腹部にぱちんぱちんと乳肉がぶつかってくる。
乳肉とペニスが擦れるたび、『彼』だけでなく、ミカの全身にも激しい快感の波が押し寄せた。
「うああっ、すごいすごぉおおい…!お、おっぱい、いいのおお…!」
ミカは自分の股間に両手をのばし、指先で自分の膣をかき回すと、
先ほど射精された精液と愛液の交じり合うグチャグチャという淫猥な音が響いた。
「ああああっ…お、おっぱい犯されながら、射精されたおまんこかきまわしたらぁ…すっごく気持ちいいよおおっ!」
「へへ、ま、まだだ…おっぱいもおまんこも、まだまだ犯してやる…!おおおおっ…!」
どっぴゅうっ!!どぴゅっ!!
胸の谷間で発射された大量の精液が、ミカの顔に、胸にふりかかり、白く染め上げていく。
「ふああっ…お、おっぱいおかされちゃったぁ…いっぱい…だされちゃってるぅ…」
ああ、もっと、もっとだ。まだまだ犯し足りない。まだチンポがおさまらない…
『彼』はその後もさらにミカを犯した。何回も何回もミカをイかせまくった。
極上の乳を嬲りながらさらに犯しまくった。精魂尽き果て、意識が途絶えるその時まで…

「うっ…うーん…」
意識を失ってからどれくらいの時間が経過したのか―
硬い石床の上で『彼』が目覚める。
「ふふん。どうやらお目覚めみたいね」
まだ完全に覚醒していない『彼』の耳に聞こえてきたのは、どこかで聞いたような生意気な少女の声。
「え…あ、ミカ…あっ!?」
ようやく『彼』は先ほどまでの自身をとりまく状況の変化に気が付いた。
周囲には自分をとりまくように浮遊しているノーマッド・モーグリたち。
目の前には既にレベル制限を解除され、普段の装備を身につけたミカの姿。
そして『彼』自身は丈夫な捕縛用ロープでがっちりと拘束されていた。
「なんだこれは!?なんでここにモーグリどもが来ているんだ!」
狼狽して叫ぶ『彼』に向かって一人のモーグリが前に進み出た。
「今回のイベントに犯罪的行為を行う輩が紛れ込んでいるという情報を得てから、
我らモグハウス管理組合は緊急対策会議を招集したクポ!
そこで出た提案がイベント参加者全員に緊急連絡用のリンクパールを配布するという作戦だったクポ!」
朗々と語るモーグリの言葉に、ざぁっと顔を青ざめさせる『彼』。

「れ、連絡用…リンクパールだと!?ま、まさかこの女そいつを使って…」
「そういうこと。最初ここに来たとき、あたし言ったよね。『東の灯台』って」
ミカは得意げに胸をはって語る。
「あの瞬間、既にここの場所は割れてたってわけ」
その事実に愕然とした表情を浮かべる『彼』。
「ただ…よくわからないけどその部分の音声が聞きづらくて場所の特定にちょっと時間がかかったクポ。
おかげで助けにくるのがちょっと遅れてしまったクポ…」
声が聞き取れなかった原因は、その時リンクパールがミカの深い胸の谷間に収められていたため声が入りにくかった、
というのが真相であるのだが。
「ちなみに、その後そのリンクパールはあんたのカバンに忍ばせておいたわ。
あんたに体当たりして、逃げ出そうとしたあの時にね」
言いながらミカは『彼』のカバンの中に手をつっこみ、そのリンクパールを取り出した。
「あ、あの時…ただ逃げ出そうとしただけじゃなかったのか…」
「まあ…逃げられるもんなら逃げてやろうと思ったけど、さすがにあのときは力の差がありすぎたからムリだったわね。
でもそれだけじゃ悔しいから…ね」
「婦女暴行の証拠はリンクパールを解析してログを確認すれば丸判りクポ。観念するクポよ」
がっくりとうなだれる『彼』。しかし。
(牢獄送りか…ミカ…畜生…また俺を酷い目に合わせやがって…)
胸中ではまったく反省の意思は持っておらず、ミカへの逆恨みと復讐心が再び燃えたぎり始めていた。
「さあ、そろそろ行くクポ。きりきり歩くクポー!」
ロープを引っ張り、何やらブツブツと呟いている『彼』を引っ立てていこうとするモーグリ。
「あ。ちょっと待って」
連行しようとするモーグリをミカが呼び止める。
「なにクポ? ああ、謝礼なら犯人逮捕に協力してくれた礼としてそのうち協会から連絡が…」
「そういうわけじゃなくって。ちょっと、この男を貸してほしいの」
「へっ? 貸す?」
ミカの妙な要望に細い目をパチパチさせながら(本当に細いのでよく見なければパチパチしているのかどうかもわからないが)
訝しげに問い返すモーグリ。
ミカが低い声で続ける。
「こ の あ た し に 対 し て 。
あれだけ好き放題やってくれたんだもの。『お礼』してやんなきゃ気がすまないわ…」
「こ、困るクポ…こっちにもいろいろと手続きというものが…」
彼女の口調に空恐ろしいものを感じながらモーグリがもごもごと言い返す。

「あたしがこいつに好き放題されたのは、あんたたちが助けに来るのが遅かったせい…でもあると思うんだけど。
そのことについてもちょっと話し合ってみる?」
にっこり笑ってみせるミカであったが、モーグリたちは彼女の瞳の奥に燃え滾る憤怒の炎を見たような気がした。
『…し、しばらくお貸ししますクポ…』
モーグリたちの満場一致の意見で、ミカへの犯人一時引渡しが決定された。
「うむ。よろしい」
そして、ずるずるとミカに引きづられていく『彼』。
いつの間にか、『彼』の道具カバンもミカの背に背負われている。
「おっ…おい!?何をするつもりだ!?『お礼』というのはなんのことだ!?」
得体の知れない恐怖にかられながら『彼』が喚きたてる。
「そうねぇ…とりあえず最初に…」
ミカがまたあの笑みを浮かべて、言った。
「木刀2本、プレゼントかな(はぁと)」

モーグリたちが岩山の向こうへ二人の姿が消えるのを見届けたあと―
「いやああああああーーーーーーーーーー!!裂ける裂けるーーーー!!」
その岩山の向こうから聞こえてきた慄然たる恐ろしい悲鳴に、モーグリたちは心底震え上がるのだった。


「うわー、あんたのカバン、何これ?蝋燭に、ムチに、バイブに、スライムジュース入りの浣腸器?
コレ全部あたしに使うつもりだったわけ?もったいないから全部使っちゃおーか?」

「いやダメそんなトコに入れないでそこは本来出すところ…うおおおおあああああああああああ」

「うおおあああっ蝋が尿道に尿道にぃ…だめぇえええええええええ」

「ああああ流れ込んでくるおしりにスライムジュースがひああああああ」


地獄をさまようかのような『彼』の悲鳴は一晩中続き、それが途絶えた頃には
既にグスタベルグの荒野は美しい朝の光に照らされ始めていた。


―数日後。
だんぐるふ温泉の従業員二人、タクとポンタはバストゥークへと食材の買出しに出かけていた。
バストゥーク港の特産品売り場で目的の食材を買いそろえ、
帰路につこうとした彼らは倉庫裏のボタ山の方に見覚えのある顔を見かけた。
「あ、兄貴!あれ、こないだ温泉にきた…」
ポンタが指差した方向には、数日前にミカについての質問をして去っていった『彼』の姿があった。
倉庫の荷物運びをしているらしく、同僚と思しき人たちと共に爽やかに労働の汗を流していた。
「ああ、ミカに用があるとか言ってたやつだ。…どうやら無事だったみたいだな」
心のどこかで彼の行く末を心配していたタクであったが、何事もなかったような彼の姿を見てほっと息をついた。
「あれ、あんたたち。あの新入りのことを知ってるのかい?」
『彼』の様子をみつめるタクたちに話しかけてきたのは、おそらくは倉庫で働いているのであろう一人のガルカであった。
「まあ、知ってるというか。ほんの少し話をしたってだけだがな」
「そうか…いや、実はあの男はな」
そのガルカが神妙な顔つきで語り始める。
「何日か前に、モーグリたちの組合から仕事を与えてやってくれって頼まれて雇っているんだが。
なんでも、とてつもなく恐ろしい目に合わされて昔の記憶を一切合財失っちまったんだとさ。
何があったのかはモーグリたちに尋ねてもよくわからんかったが…
…ん、あんたらどうした?顔色が悪いぜ?」
ガルカの話を聞いてガタガタと体を振るわせる二人。
(や、やっぱりタダじゃすまなかったか…)
(命があっただけでも幸せ…なんでやんすかねぇ、この場合…)
「なあ、あんたら。昔のあいつのことを知ってるんなら会ってやってくれないか?
ひょっとしたら記憶を取り戻すかも知れん」
「い、いやいやいや!あの人と俺たちは何の関係も無いから!」
「そ、そうでやんす!それに思い出さないほうが幸せってこともあるでやんすよ!」
そう言って慌てて駆け出す二人。
その背後にはあっけにとられて立ち尽くすガルカと、
憑き物が落ちたかのような爽やかな微笑を浮かべて労働に勤しむ『彼』の姿があった―。

「いいか、ポンタ!俺たちは誰にも会わなかった!そうだな!」
「は、はいでやんす兄貴!何も見てないし何も聞いていないでやんすよー!」

『彼』に何が起こったか。それを知るものはだれもいない。
ただ一人のミスラモンクを除いて…

めでたし、めでたし。たぶん。

『彼』になにが起こったか おしまい


『ムバルポロスの虜』