←灰色の魔道士
←愛と欲望の狭間
←ペルソナ陵辱表現有
←優しい手陵辱表現有
<キャラフェイス>
リー・ウェイ ミスラF7金髪
ケイト ヒュム♀F3茶髪
ルナ タル♀F5青髪
リッツ ヒュム♂F1茶髪
フラガラック ガルカF2白髪
アリューシャ エル♀F6黒髪
タップ=ロップ タル♂F8金髪
<各キャラLV設定>
アリューシャ・タップ…75カンスト
リー…72ぐらい
リッツ・ルナ…61ぐらい
ルナがアリューシャやリーより低いのは白黒両方のLV上げを必要とするためです。
立ち止まることも戻ることもできない
いつかを夢見て前に進む
万が一、奇跡が起こったとしても
決して適うことのない夢だと知っていても
『暁の疾風』号が出港してから2週間が過ぎていたが、
今日もルナはフラガラックの隣で釣り糸を垂れていた。
ルナは青いチェニカを着て、魔力を増幅する宝玉が嵌め込まれた杖を背負っている。
フラガラックは街の自警団長としての顔を持っていた。
敵の強さを見誤った駆け出し冒険者たちが逃げ込み、
モンスターや獣人がゲートまで追いかけてくることは日常茶飯事で、それに関するトラブルが絶えなかった。
ルナが釣りを始めた初日にも大量のモンスターがゲート前に溢れ、
セルビナから出ることもバルクルム砂丘から入ることも出来なくなったとの知らせが入った。
駆けつけてみると大量のモンスターにゲートを閉めて押し戻すのが精一杯な状況だった。
フラガラックは彼女を門柱に乗せて「頼む。」と言うと、太い梁棒に両手を当て今にも破られそうなゲートを支えた。
「任せておいて。」目を閉じ精神を集中する。天候は熱波、炎の精霊力が満ちていた。
ルナが詠唱を始めたのは白魔導士がどうやっても詠唱することのできない古代魔法「フレア」の呪文。
周りの精霊力を巻き込んで放たれた魔法は群れるモンスターを一瞬で焼き払った。
唖然とする人々を尻目に負傷者に治癒をも施したルナはすっかり有名になってしまい、事あるごとに呼ばれる。
日に何度も重なればさすがに魔力の消耗も激しく、釣りの最中も杖だけは持つようにしたのである。
フラガラックは何も聞かない。ルナも何も言わない。ただ時間だけが静かに過ぎていた。
季節を終えたリーにようやく開放されたリッツは何の連絡も寄越さないルナに腹を立てていた。
こちらから連絡を取ろうにもリンクパールはもちろん個人チャンネルも沈黙したままだった。
「子供じゃないのですから大丈夫ですわ。」ルナを良く知るが故のリーの余裕を少し羨ましく思う。
リッツもルナの持つ能力が半端なく凄いことや、度胸の座り方も知っているが
それでも何か胸の中でモヤモヤと引っかかるのだ。
「ミッションに入ったのなら音信不通になることなど珍しくもないでしょう?」
リーはイライラと部屋を行ったり来たりするリッツをなだめようとしたが逆効果だった。
ルナは人に気を使わせないよう常に配慮しているが、それを悟られることを嫌う。
人の心にさらりと入り込むくせに、決して他人には踏み込ませない。
リッツはそんなルナの性格が好ましくもあり心配でもあった。
「そう、それだよ。急にミッションの依頼が入ったとしてもだ、ルナなら一言ぐらいあるだろ?」
リッツがルナの本質を見抜いていることにリーは内心舌を巻いていた。
なるほどルナが見込んだだけのことはあると改めて目の前の男を見る。
「それに、そうだ。あいつ、すごく思い詰めた顔してたんだよ。」
「セルビナに立つ前に会ったんですか?」
「ここに来る前に偶然な。」
ルナがそんな顔を人に見せる訳がない。セルビナへ飛んだ理由が他にありそうだとリーも思う。
「少し待っていただけますか。」彼女は個人チャンネルで誰かと話し始めた。
ボソボソと小声で交わされる会話を聞くつもりは無かったが
「お養母さんそれホントですか?」という言葉が耳に入り、相手が育ての親だと分かる。
「ええ、ありがとう。」ため息をつきながら通信を切るリーに、あまりいい話ではないと予想が出来た。
「ルナはおそらく昔の恋人に会いに行ったのだと思います。」
「なっ?!」リッツは次の言葉が出なかった、意外だったのだ。
外見はともあれ、大人の女性なのだからそういう相手がいたとしてもおかしくはないのだが、
ルナの恋人というフレーズがリッツの心に小さく刺を刺した。
リーはどうしたものかと逡巡した後「本当ならルナから聞くべきなのでしょうが。」と
前置きをしてリーが知る限りルナとテオドールの事を語った。
「ルナが…身体を売っていたって?!」
もう何が何だか、リッツの思考はぐちゃぐちゃだった。
髪をわしわし掻き毟り、ぐるぐる部屋の中を歩き回る。
「売っていたのではありません。止むに止まれず売らされていたのです。」
そこを誤解されては困るとリーは言い直した。
「ああ、そうだった、そうだよな。」
混乱する頭でもルナが他人に弱みを見せまいとする理由がぼんやり理解できたが、
今はルナの行方を知る方が先だ。
「それでルナはそのおっさんと一緒なのか?」
「ノーグに戻った船にはルナらしきタルタルの姿は無かったようです。」
「じゃあ、どこに居るんだよ!」
「おそらくセルビナのフラガラックさんの所ではないかと。」
「今すぐ・・・」言いかけたリッツに
「行って何をするおつもりですか?」哀しくリーが問いかける。
そうだ、俺は何をするつもりなんだ?リーの言葉にリッツは立ち尽くしてしまった。
次の日、リッツはベッドに寝転がってレンタルハウスの天井を眺めて過ごしていた。
今はそっとしておく方がいい、落ち着けば必ず連絡があるとリーに言われ、
返す言葉もなく自分の部屋に戻ってきた。
よくよく考えればリーもテオドールの世話になっており、
恩人が余命幾ばくもないことを知ってショックを受けているはずなのだ。
「はぁ・・・」ため息と一緒にタバコの煙を吐き出す。
いい知恵どころか、出るのはため息ばかり。
「不健康クポ!」モーグリが頭の上でハタキを持って怒っている。
「お前の言うとおりだよ、ああ、何やってんだろ、俺。」ため息と白い煙。
「いい加減、狩りにでも行くクポ。身体が鈍ってしまうクポよ!」
パタパタと忙しくハタキを掛けながらモーグリが怒鳴る。その声には主を案じる響きがあった。
モグにまで心配かけてるのかと苦笑する。
「そうだな、どこかに出かけるか。」
のろのろと起き上がりベッドに腰掛けてもう1本タバコに火を点けた時、リンクパールから元気な声が聞こえてきた。
"リッツ!リー!いる〜?"アットワにいるタップだった。
"いますよ。そちらはどうですか?"直ぐにリーが返事をする。
"うん、予定より随分早く終わったんだ。それでね〜"
"リー、もう動けるか?"季節は終わったのかとアリューシャが聞いているのだとリッツにも分かった。
"はい、そろそろ身体を動かしたいと思っていたところです。何かあるんですか?"
"2人ともアットワの山に登ったことある?"
"アットワには数回行きましたが、山に登る余裕はありませんでしたね。"
"俺はアットワに行ったことすらないぞ。"リッツも答えてみる。
"なら丁度いい。殆どの者は帰ったのだが、登ってみたいという連中がいてな、案内を頼まれた。"
"それでね、2人がまだなら一緒に行こうと思ったんだけど、どうする?"
"もちろん行きます。"
渡りに舟とはこのことだ。出かけるとは言ったもののアテなど無かったリッツも便乗させてもらうことにした。
赤く焼けた大地のいたるところに走る地割れからは時折有毒ガスが噴出し、
壁のように切り立った岩が天然の迷路を形成していた。
指示された登山道の入り口は土地勘の無い者が一人で辿り着けるような場所ではなく、
リッツはリーがいてくれて本当によかったと礼を述べた。
「いえいえ。でもここはミスラには少し辛いですね。」イライラと尻尾を振りながら言う。
ヒュームですら息苦しく感じるのだ、嗅覚に優れるミスラはかなりキツイのだろうと気の毒になる。
「特にあのモンス。見ているだけで痒くなります!」
ビシッとリーが指差したのはAntlionと呼ばれる大型のノミかアリジゴクみたいなモンスターだ。
「そっちかよ!」思わず突っ込みを入れたもののサソリと大差ないのにとリッツは思うのだが、
生理的嫌悪からかリーの尻尾の毛はぶわっと広がっている。
「そりゃあそうでしょうね。自慢の毛並みにダニなんていたら笑えないもん。」
人を見下したようなしゃべり方にリーの目つきが険しくなる。
リンクパールから"謀りましたね!?"と搾り出すようなリーの声が聞こえる。
"いやぁ〜ごめんごめん。"ぺこぺこと頭を下げながら手を合わせて拝むタップと
素知らぬ顔してそっぽを向くアリューシャの姿が目の端に映る。
「お元気そうで何よりですわ。」何事もなかったようにリーがにっこり微笑みながら振り返えると、
「おかげさまで。」薄く笑いを浮かべるヒュームの女と視線が合った。
リーは前回の調査隊に参加した際、我が侭でお姫様体質な女とひと悶着あり、
以来この白魔導士と関わることを避けてきたのだった。
リーとの間で火花散る視線のやり取りしていた女は劣勢だと悟ったのか
うるさそうに長い前髪を掻きあげて目を逸らすとリッツの方を向いた。
「リッツでしょ?いやぁ〜ん、懐かしいわ、こんなところで会えるなんて!」
鼻に掛かった甘ったるい声にリッツは思いっきり嫌な顔をした。
「ケイト・・・やっぱりお前か。俺は二度と会いくなかったぞ。」
ギロッと複数の殺気を含んだ視線がリッツに突き刺さる。
取り巻きと思しき数人の男がケイトの後ろからそれぞれの武器に手を掛けてこちらを睨んでいる。
「冷たいわね。私はまだマーガレットちゃんのお姉さんになる夢を捨ててないのに。」
「いい加減にしろよ。マーガレットは結婚して幸せに暮らしてるんだ。」
"この女と知り合いなんですか?!"剣を含んだリーの声が耳元で響く。
"親父の商売敵の娘。全然性格変わってない。"
"マーガレットちゃんって誰?"タップが興味津々で尋ねてくる。
"妹だよ。ケイトは昔からマーガレットがお気に入りだったんだが、まだ諦めてないとは思わなかった。"
頭を振りながらため息を付くリッツに
「うちのバカ弟にはもう期待してないわ。方法は他にもあるしね。」
流し目をくれながらケイトは意味深な事を言った。
これ以上不毛な時間を過ごしたくないとアリューシャが行動を起こす。
「行くぞ。落ちたやつは自力で戻って来い。私は知らん。」
「狭いし、途切れてるとことか、時間が立たないと通れないとことかあるから、ちゃんと着いてきてね。」
タップがすかさずフォローを入れてみんなを追い立てるとしんがりについた。
登ったと思えば降り、時には山肌を滑り落ちたりととても頂上に近づいているようには思えず、
ケイトは何度も文句を言い座り込もうとしたがアリューシャが睨むと渋々ながらも従った。
この我が侭な女にも苦手な相手がいたのだとリッツとリーは少しうきうきして山道を登った。
山頂からの眺めは苦労に見合うだけの美しさだった。
夕日が空を茜色に染め上げ、空も大地も燃えているように見えた。
「まるでルナみたいだな。」ぽつんと呟くリッツに寄り添って座っていたリーが首を傾げる。
「いや、ルナってさ、触れても熱くない炎みたいなイメージないか?」
「不思議な表現ですね。」
「あ〜でも、何か分かる気がする。」
ぽんっと手を叩くタップを膝に抱き上げて座っているアリューシャは何も言わずタップの頭を撫でている。
「俺もどう説明したらいいか困るんだが、そうだな聖なる炎っていうのかな。」
ズヴァール城の門で燃える闇の炎とは正反対の感じだとリッツは付け加えた。
「それはルナの本質を捉えているな。神聖と炎に高い適性を持っているそうだ。」アリューシャが言う。
「そうか?あはは、何か照れるな。」ぽりぽりと鼻を掻くリッツに
「少しは元気でた?」にこにことタップが聞く。
その一言でアリューシャたちもルナのことを知っているのだと気が付いた。
「ごめん、鈍くって。気使わせてたんだな。」
誰も何も言わず静かに微笑んでいる。本当にいい仲間と引き合わせてくれたとリッツはルナに感謝した。
太陽が最後の輝きを投げかけ、大きく伸びた4人の影を踏んでケイトが近づいて来る。
「和んでるとこ悪いんだけど、私そろそろ帰りたいのよね。」
「もういいのか?」アリューシャの眉が心なしか釣り上がったような気がする。
「噂ですっごくキレイだって言うから来てみたけど、何にもないじゃない。」
口を開きかけたリーだったが、ここで言い争って気分を害することもないと思い止まる。
「ではメア岩へ行ってくれないだろうか。護衛隊長として報告義務があるのだ。」
「分かったわ、無駄に魔力使いたくないんだけど・・・」ぶつぶつ言いながら移動魔法を唱えるケイトに
それ以上聞きたくないとばかりにリーはリフレシュをかけた。
チョコボを駆ってウィンダスに戻ったのは真夜中を過ぎた頃だった。
報告は朝にすると言い残し、アリューシャとタップは並んでレンタルハウスへと戻って行った。
「来ますか?」と聞いてみたが「大丈夫。おやすみ。」と言うリッツと別れ、
はらりはらりと桜が舞い散る道を尻尾ふりふりリーはゆっくり歩いている。
季節はすっかり移ろい、満開の桜並木を下限の月が照らし始めていた。
りーは返事の来ないルナの個人チャンネルへ語りかける。
‘また桜の季節になりました。’
‘お花見しようと約束しても結局いつもできませんでしたね’
‘今年こそ一緒に見ましょう。’
‘ルナがいない家は寂しすぎます。’
‘早く帰ってきて・・・’
‘私を・・・置いて行かないで・・・’
‘独りにしないで・・・ルナ・・・’
感傷的になっていたせいか、周囲に敵意ある魔力が満ちているのに気がつくのが遅かった。
急速に暗くなっていく視界にケイトと取り巻きの男たちの姿が見えてもどうすることも出来なかった。
目が覚めたリーが最初に見たものは、サデスティックな笑いを浮かべるケイトだった。
ぎりぎりと締め上げられる痛みと肌を撫でる夜風に意識が冴えてくる。
装備は脱がされ全裸だった。
両手は頭の後ろで高く組んだ状態で木の幹を背中で抱えるように縛り付けられ、
両足は大きく割り開かれ爪先で立てるぎりぎりの位置で固定されている。
この状況ではサイレスか沈黙薬は当然使用されているはず、
目的は大方検討がついているが、そのうち勝手にしゃべり出すだろうと
挑発の意味も込めてリーはにっこりとケイトに微笑んでやった。
「この期に及んでまだ余裕がある振り?ほんっとに嫌な女ね!」思ったとおりケイトは激昂した。
つかつかと近寄ると、リーの頬に平手打ちを食らわす。
ヒュームの女、しかも白魔導士の腕力では大して痛くも無い。
平然と怒りに燃えるケイトの瞳を見返えしてやる。
「っ!この、馬鹿にして!」力任せに両頬を何度も往復して打つ。
リーの頬が真っ赤に腫れ上がり、自分の手が痛みに痺れてようやくケイトは止めた。
取り巻きに声をかけ、ロープの束を受け取ると今度はそれでリーの全身をめちゃくちゃに叩き始めた。
豊満な胸、細く引き締まった腰、美しいラインを描いて伸びる太股、いたるところ褐色の肌が裂けて血が滲み出す。
だがリーは呻き声ひとつ上げなかった。
それがケイトから理性を奪っていく。
「なんて女なの!私はあんたが泣いて慈悲を乞う姿が見たいのよ!」
ケイトはロープの束を投げ捨てると自分の腰からベルトを外し、それをリーに振り降ろした。
細かく裂いた皮を編んで作られたベルトは肌に食い込こんで焼けるような痛みが走り、
喉の奥から漏れそうな悲鳴をリーは奥歯を噛み締めて堪えた。
ひと打ちする度に、リーの肌は割れて血が流れ落ち、赤く妖しい紋様を描き出していく。
肩で息をつくほど強かにリーを打ち据えて、少し怒りが収まったのだろう。
「まぁいいわ、お楽しみはこれからだし。」
そういうと先ほどのロープの束を掴み、片方でゆるく輪を作ってそれをリーの首に通す。
残ったロープを枝に渡して背中へと通しお尻と股を潜らせて腰をぐるりと周り
乳房が歪むほど締め上げると最後にだらりと垂れた尻尾を持ち上げて結びつけた。
ロープを引っ張って締まり具合を確認しながら、下腹部に掛かるロープを乱暴に揺すると、
麻のざらざらした繊維が秘裂を割って敏感な箇所に食い込み擦り立てる。
潤っていないソコに与えられる刺激は耐えがたいほどの痛みとなってリーを襲った。
顔を苦痛で歪ませ歯を食いしばり、ギリギリとかみ締める音が口から漏れる。
乳房についた傷に爪を食い込ませて抉り、溢れた血を指で掬ってリーの腫れあがった頬に擦りつける。
一連の行為に耽るケイトの目は劣情と狂気で濡れ光り、真性のサディストだとリーに教えていた。
満足そうな笑みを浮かべるとケイトはリーの正面から少し離れたところにある大きめの石に腰掛けた。
「これから何をするか興味あるでしょ?」ふふふっと楽しそうに笑う。
その耳元に取り巻きの一人が何かを告げた。
「そう。じゃあ後は主役の登場を盛り上げるだけね。」そう言うと取り巻きに向かって軽く手を振った。
何時の間にかサブリガを残して装備を脱いだ男たちがリーを取り囲む。
「好きにしなさい。」ケイトの言葉を合図に男たちはリーに襲いかかった。
唇を割って歯を丹念になぞり口腔に侵入する隙を伺う者、
左から脇を舐め上げ乳房を揉みしだく者、乳首に吸いつき脇腹を撫でさする者、
外側から太股の傷を綺麗に舐める者、足の間に座り込み舌でチロチロと縄の隙間から秘所をつつく者、
どうやら5人の男が自分を貪ろうとしている事が分かった。
リーは全ての意識を痛みにだけ集中させた。
男たちは欲望のままリーを蹂躙したが、リーの身体は褪めたままで何の反応も示さない。
ケイトの望みが涙と涎を流し快感によがり悶える女のあられもない姿なのに、
期待した反応を引き出せずに男たちは焦っていた。当然、ケイトは再び苛立ち始めていた。
「あんたまさか不感症なの?」聞いてから沈黙薬を飲ませていたことを思い出し、リーにサイレナを掛ける。
心得た男が口を責めるのを止める。
「連続魔使おうなんて考えないでね。」足の間に座った男が股間のロープを引っ張り上げ、痛みにリーは声を殺す。
「そんなのでよくリッツが…」言いかけたケイトに
「こんな男たちが何人かかっても適わないぐらいリッツは素敵ですわ。」
リーは精一杯の侮蔑を込めて呟いた。
サーッとケイトの顔に血が上るのが見え、リーは満足気に唇の端を吊り上げた。
その唇をまた男が塞いで差し入れてきた舌に鋭い犬歯で噛み付く。
ぎゃーっと悲鳴を上げながら男が口を押さえて転げまわる。
一瞬虚を付かれたケイトだったが、慌ててサイレスとパライズをリーに掛ける。
だがリーはその魔法をレジストする。「スキルが足りないですわね。」
微かに笑いながら囁くリーの口を別の男が手で塞いだ。
「邪魔よ!どいて!この野良猫が!!」完全に理性を失ったケイトは容赦なくリーの頬をベルトで殴りつけた。
咄嗟に歯を食いしばったものの口の中が切れ、唇の端から血が流れる。
「私は欲しいものは必ず手に入れてきたわ!」
殴られる度にリーの身体は左右に大きく揺れ血が飛び散る。
「けど、あの兄妹は違ったのよ!2人の両親が死んだ時だって!家で面倒見るって言うのを断って!」
ゼイゼイと息を荒げながらもベルトを振るう手は休めずにケイトは叫ぶ。
「邪魔して困らせてやっても!新しい商売を見つけて!私のものになろうとしない!」
激痛が絶え間なく訪れ、リーの意識は朦朧としていた。
「信じられない!!」もはや殺意すら感じる殴打の嵐だった。
薄れゆく意識の中、リーの心にルナの優しい笑顔が浮かぶ。
…頑張ったかな、私。
私たちを守り育てる為にルナが受けた仕打ちに比べたら
こんな痛み大したことないわ…
「ルナが見込んだ男が…あなたの手に落ちる…訳はないで…しょう…」
「!!またその名前を言うの!?」
まだ意思の輝きを失わないリーの瞳を目掛けてベルトを振り下ろそうとした手を背後から止められる。
「誰?!邪魔しないで!!」髪を振り乱して振り返る。
血走ったその目に映ったのはリッツだった。
「な?!お前たち何して…?」
リッツに背後を取られた失態を責めようと取り巻きの男たちを見ると
黒い鎌の刃を喉に当てられ身動き出来ずにいた。
動けば容赦なく死の刃が肉を切り裂く。
小さな暗黒騎士の身体からは殺気が黒いオーラとなって立ち昇っていた。
ケイトは歯軋りした。タップがいるということは必ずあの女騎士もいるはず。
キンッと乾いた音がしてロープがバラバラと落ち、拘束が解けたリーの身体は支えを失って地面に倒れ込む。
その身体を白い影が優しく抱きとめ、素早くマントで包むとケアルを唱える。
傷が塞がり出血が止まったことを確認してアリューシャは安堵の息を吐く。
「さて。」リーを木の幹に寄りかかるように座らせ、アリューシャが立ちあがった。
「アリューシャに殺されるのがいい?それとも僕かな?イヤなら逃げてもいいけど。」
殺気を纏ったままタップは男たちに尋ねた。
ケイトも取り巻きたちもアリューシャとタップの実力はよく知っていた。下手なことをすれば一瞬で殺られる。
「すいません、逃げます。」そう言うと男たちは置いてあった自分の装備を抱えて走り去っていった。
「私を見捨てるの?!」ケイトの叫びが虚しく響く。
スラリと剣を抜いてアリューシャはケイトの喉に付きつけた。
「二度と私たちに関わるな。リッツの妹にもだ。いいな。」
ワザと切っ先を喉に当てる。ぷつっと皮膚が裂け、血が玉になって浮かび上がる。
それだけでアリューシャが本気だと伝わる。ケイトは小さく何度も頷いた。
「最後にひとつ聞きたい。」ずっと黙っていたリッツが口を開いた。
「な、なに?」ごくんとケイトが唾を飲み込む。
「親父たちを殺したのは誰だ?」
喉が上下して当たった切っ先が冷たく肌を撫で、血が流れ出す感覚にひーっと細く悲鳴が漏れる。
「誰だ?」リッツが掴んだ手首を捻り上げる。
「お、おそらくリッツが思ってるとおりよ!でも、私は知らないわ!」
リッツはぶるぶると震えるケイトを離すと、リーを抱き上げ無言で歩き出した。
武器を収めたアリューシャはリーの装備を抱えたタップと共に、
惨めにうち捨てられた女を振りかえることなくその後を追った。
手当てをしなければいけないからと、リーをアリューシャのレンタルハウスに運び込む。
アリューシャはモーグリにお湯とタオルを持ってこさせると、血で汚れたリーの身体をキレイに拭いた。
傷は塞がっているものの、赤く腫れあがった肌に痛々しい跡が残っている。
摩りながら何度もケアルを唱えひとつずつ消していくが、アリューシャでは魔力が足りない。
ベッドルームから追い出されたリッツとテーブルを挟んで座って待っているタップに声をかける。
「すまない、手伝ってくれないか。私だけでは無理だ。」
「分かった。」タップはモーグリを呼んで白魔導士にジョブチェンジする。
「タップは白も出来るのか?」
「そんなに高いレベルじゃないけどね。」答えながらベッドルームに消えるタップを見送って
「俺だけが役立たず…か。」リッツは拳でテーブルを叩いた。
ひとつずつだと時間がかかりすぎて傷が残ってしまうと判断したタップは印を結んで女神に祝福を求める。
かざした手で癒しの光りを導いてリーを照らすと傷がキレイに消え腫れが引いていく。
その小さな手をリーが掴んだ。
「ルナ…帰ってきたの…?」
困惑してアリューシャを見るタップに、彼女は唇に人差し指を当てて黙っていろと合図する。
「そうだ。だから安心して寝なさい。」優しく言い聞かせるように髪を梳いて頬にキスをする。
「うん、アリューシャ。ルナ。おやすみなさい。」
子供のように安心した顔をしてタップの手を握り締めたままリーは眠ってしまった。
「俺のせいでリーをこんな目に会わせてしまった。」
項垂れるリッツの肩をテーブルの上にちょこんと座ったタップがぽんぽんと叩く。
「リーを快く思っていないあの女がいるのに呼んだ私が悪いのだ。すまない。」
アリューシャがリッツに頭を下げる。
「元々は俺を元気付けてくれようとしたことだろ。アリューシャが謝ることじゃないさ。」
ルナのことで取り乱したりしなければ。リッツは自分を責めるしかなかった。
「あの女はルナを嫌っているんだ。」
思わぬ話にリッツが顔を上げる。
「嫉妬ってやつだよね。」
ルナは白魔導士としての実力だけでなく、容姿の愛らしさと気さくな性格で
アリューシャやタップのようなトップクラスの冒険者たちからも好かれていた。
その評判が気位が高く容姿にも自信のあるケイトには面白くなかったらしい。
護衛隊として参加すると必ずルナに食ってかかっていたのだが、軽く往なされ揉めることはなかった。
ところが前回はルナがおらず、ここぞとばかりに自分をアピールしたのだが、
ケイトの能力は平均より劣り度重なる戦闘に回復がもたついて何度か護衛隊を危機に晒した。
そうなるとケイトの我が侭ぶりが鼻についていた数人からルナが居ればと文句が出始め、
かっとなったケイトはルナの悪口を言い出した。
根も葉もない話にイライラしながらも聞き流していたリーだったが、
「すっごく高価な装備してるけど、身体でも差し出して貢いでもらったんでしょ。タルのくせによくやるわね。」
という言葉に切れて大喧嘩をしてしまったのだという。
いつも礼儀正しいリーが切れるという状況がリッツにはよく飲み込めなかった。
「リーはルナを愛しているんだ。」
長い睫を伏せてアリューシャは言った。
リーは子供の頃の夢を見ていた。
燃え盛る炎の中からルナが飛び込んできて、泣きじゃくるリーを抱きしめる。
涙を拭き、頬に優しくキスをすると魔法を詠唱する。
目の前が真っ暗になり、次の瞬間、家のベッドルームにいた。
「もう大丈夫よ。」優しい微笑みを浮かべるルナにリーは恋したのだ。
窮地から自分を救ってくれたルナはリーにとって英雄になった。
母のように姉のように、慈しみ守ってくれた小さな手が何よりも頼もしく見えた。
リーは自分よりも小さな身体にしがみついて泣いた。
この恋が適うことがない予感に怯え、
もう2度と無邪気にルナの胸に飛び込めない己の愚かな恋心を呪って泣いた。
ルナは「大丈夫、大丈夫。」と子守唄のように囁きながらリーが眠るまで髪を梳き続けた。
「ルナ…」
ベッドルームから聞こえるリーの寝言にリッツの胸は痛んだ。
【迷い道:了】
→消せない罪陵辱表現有
→迷い道・番外編/マーガレット
→番外編/ここにしか咲かない花