灰色の魔道士
愛と欲望の狭間
ペルソナ陵辱表現有
優しい手陵辱表現有
迷い道陵辱表現有
消せない罪
迷い道・番外編/マーガレット


<キャラフェイス>
シェリリ タル♀ F8緑髪
フェルディナンド エル♂ 3A黒髪

夜の砂丘は生者への憎しみと恨みを抱く亡者が彷徨う世界、
駆け出しの冒険者が彼らに出会うことは死を意味する。
昼間は冒険者でごった返すゲート付近も夜が更けるごとに静かになり
セルビナ警備隊と称してゲートの警護を自主的に引き受けているベテラン冒険者たちも宿屋でしばしの休息を取る。

月の無い夜だった。
フラガラックは沖まで漁に出ていていない。こんな時に限ってトラブルは舞い込んでくるものだ。
BogyとGhoulを引き連れて冒険者の一団が逃げ込んできたとの知らせがルナの元に届く。
ゲートには結界が張ってあるからアンデッドが街に入り込むことは無いのだが
傷ついた冒険者の血の匂いが彼らを狂わせたのか見境無しに出入りする人間を襲っているという。
床に就こうとしていたルナだったが乳白色の宝玉が飾られた杖を掴むとゲート目指して走った。
駆けつけた警備隊に亡者の方は任せて、ゲート際に折り重なるように倒れている人々に蘇生魔法や治癒魔法を掛けていく。

「きゃあぁぁ?!」騒ぎが収まったのを見届けて帰ろうとしたルナは縋り付いてきた小さな影に悲鳴をあげてよろめいた。
「ルナお姉さぁーん!」何かを守るように抱えたままルナを押し倒すタルタルの魔導士。
弾みで脱げたフードからツインテールに結った緑の髪が零れ落ちる。
「なっ…!シェリリ?」
「ですですです!お姉さん助けてぇ!!!!」
泣き叫ぶ彼女の両腕から長い首と青い尻尾がだらりと垂れ下がってるのが見えた。子竜だ。
ルナと同じ孤児院で育ち召喚士になったシェリリが子竜を連れているはずはない。
しかし周りには竜騎士らしい人影は無かった。

「癒せるのはマスターだけよ。その子の主人はどこ?」
子竜を庇うように抱えたまま自分の上で馬乗になっている後輩に少し呆れながら問い質す。
「違う違う、助けて欲しいのはこの子のマスターなの!まだ外にいるの!早く探さなきゃ本当に死んじゃうよぉ!」
アストラル体である召喚獣と違って子竜は独立した一個の種族だが、マスターとの関係は召喚獣と似ている。
魂が深い絆で結ばれているが故にマスターに何かあればこの世界に存在することが出来なくなるのだ。
召喚士であるシェリリは腕の中で衰弱していく子竜からマスターの危機を感知することができるのだろう。
取り合えず腹の上の後輩に降りるように言うと、シェリリは慌てて跳び退いた。
「その人がどのへんにいるか分かる?」
「わ、わ、分からないけどこの子なら探せるはずですぅ。」
答えるように弱々しく鳴き声を上げる子竜の頭をシェリリはそっと撫でた。

自力で飛翔するだけの体力も残っていない子竜にどうやって道案内をさせたらいいのか。
シェリリに抱えさせたままでもいいのだが、出来るだけ早く探す為には足手纏いだ。
「その子を渡して…」抱き取ろうと伸ばした手に噛みつれそうになってルナは慌てて引っ込めた。
「ああああ!お姉さんごめんなさい!子竜はマスター以外には懐かないのぉ。」
その割にシェリリにしっかり抱かれているのはどういうことなんだとルナは思ったが今は移動の方法を考えるのが先だ。
チョコボが居れば簡単なのだがセルビナにはいない、チョコボの代わりに2人を運んでくれるもの…

思案するルナを不安そうに眺めていたシェリリは、突然巨大な壁が現れたのかと思った。
ルナの背後に立った大きな影が彼女をひょいと左肩に乗せるのを目を丸くして見詰める。
「戻ってたの?」
友であり今やたった一人の庇護者となったガルカの首に腕を回しながらルナが聞いた。
「うむ、話は聞いた。行こうか。」
ぽかーんとしたままのシェリリを右腕で抱え上げるとフラガラックはゲートから夜の砂丘へと走り出した。

セルビナを出て西方向へ、砂が舞い上がり足元から崩れて走りにくい事この上ないが、
タルタルの娘2人を抱えたガルカは単身のように軽々と駆け、
時折首を持ち上げ主人のいる方向を示す子竜を頼りに鍛えられた猟師の目は広大な砂の海の中から倒れ臥す人影を探し出した。
かすかにある生気に惹かれたのか、竜騎士の上を1体のBogyがふよふよと漂っている。
「ルナ。」頼むと言外に伝えて左肩の娘を砂の上に降ろす。
「わ、私も降ろして…」言いかけた右腕の娘は「邪魔になるだけだ。大人しく見ていろ。」フラガラックにきっぱり言い切られ口を噤んだ。
冒険者となってからも行き来はしているが、ルナと狩りに出たことは無い。
シェリリは大きな目をますます見開いてBogyへと向うルナを凝視する。

女神の印を結んでルナが詠唱し始めたのは高位ケアルだった。
光の精霊力が辺りを満たす気配にBogyは金切り声を上げて詠唱を止めさせようとルナに殴りかかる。
Bogyは呪いを吐き爪でルナを引っかき続けるがルナには掠り傷ひとつ付かず詠唱も止まらない。
やがて長い詠唱が終わとうとする時、ルナはBogyを胸に抱きかかえるように腕を広げて祈りの言葉を囁いた。
「あなたの苦しみはもう終わるわ。安らかに眠りなさい。」
黒い悪霊は大量に降り注ぐ癒しの光に導かれるように空へと消えて行った。

「これが…お姉さんの戦い方…?」
ルナの力なら精霊魔法で簡単に焼き払ってしまえる。
シェリリはウィンダス出身だからマウラでごうつくばあさんと揶揄されるベラに導かれてサポートジョブを習得した。
その時、Bogyが稀に持っている血染めの衣を手に入れる為に一方ならぬ苦労を強いられた記憶のせいか
わざわざ悪霊に癒しを与えるという面倒な方法を取る理由がわからない。
「亡者たちはモンスターじゃない、恨みで魂を縛られたかつての同胞だ。」
昨日まで一緒に笑ってた仲間たちの変わり果てた姿かもしれないのだ。
頭上から降りてくる静かな声にシェリリは己の思慮の無さにしょぼんとする。
「闇に染まった魂を憎しみで消し去るなんてあまりにも哀しいから。救えない魂なんて無いのよ。」
ルナの穏やかな言葉と微笑みがシェリリの心に深く染みた。

虫の息で倒れている人物はエルヴァーンの青年だった。
主人を案じて鳴く子竜を青年の胸に乗せてやるとシェリリは高位レイズを詠唱するルナの邪魔にならないように下がった。

レイズは一般に蘇生魔法と呼ばれているが、本当に死者を蘇らせることが出来るわけではない。
肉体を離れようとする魂を引き止め治癒力を極限まで活性化させ、仮死状態の身体を行動可能な状態まで回復する魔法で
術者も膨大な魔力を消費するが、施された者にもリスクが伴う。
爆発的に高められた治癒力を維持するために魂に刻まれた情報の一部をエネルギーとして消費してしまうのだが、
本物の死を迎えることに比べれば大したリスクではない。それ故に高位の蘇生魔法を持つ白魔導士は優遇されるのだ。

呻き声を上げて青年が意識を取り戻した。
きゅーきゅー鳴きながら胸を引っ掻く子竜を撫でてやろうとして右腕が上がらないことに気が付く。
「無理に動かしてはだめ。」声の主を探そうと少し首を巡らすが見えない。
小さな手が自分の身体を探っているような気配に身じろぎしたが、
その手が過ぎた箇所から痛みが消えていくことで治療を受けているのだと理解した。
「もう大丈夫ね。起き上がれるかしら?」先程と同じ女性の優しい声がした。
もう一度右腕を持ち上げてみるとすっと動いた。そのまま子竜を抱えて上半身を起こす。
青い髪のタルタルがこちらの顔を覗き込んでいる。
この女性は何度か見かけたことがある。セルビナに逗留中の“灰色の魔女”と呼ばれる魔道士だ。
その後ろで守るように立っている白髪のガルカには駆け出しの頃ゲート前で何度も世話を掛けたことがある。
「セルビナから助けに来てくださったのですね、感謝します…?!」
深々と礼をする青年の瞳にガルカの足元で心配そうに見ている、緑の髪に縁取られた顔が映った。
「やっぱり君だったんだ。」
シェリリを見て嬉しそうに話し掛ける主人に合わせて子竜も同意するように高く鳴いた。

ところがシェリリはこの青年にさっぱり心当たりがないらしい。
「ひ、人違い…?」申し訳なさそうに眉が八の字になる。
「これに見覚えないですか?」
青年がカバンから取り出したのは絹布にサルタ綿を詰めた小さな布団の両端を絞って布ベルトをつけた奇妙なものだった。
それは抱っこ紐と呼ばれるもので、布団に赤ちゃんを寝かせて包み布ベルトを斜め掛けにして肩の上で止めて使う。
2人のタルタル娘は顔を見合わせて首を傾げた。
小さく腕の短いタルタルの母親が赤ちゃんを抱っこするための補助具でウィンダスではありふれた品だったから。
「ここに小さく名前が縫い取ってあるでしょう。」青年が示した布ベルトの裏に緑の糸で“シェリリ”と確かに銘が入っている。
「あっあっああ〜あの時のナイトさん?!」
ぱぁっと顔を輝かせてシェリリは口元で両手をぱんっと打ち合わせた。
「思い出していただけましたか。」
「あの時は兜でお顔がよく見えなかったんですぅ。だから覚えてないのは仕方が無いですよぉ。」
「そうでしたか?それは失礼しました。」
あはははと笑う2人を腕組みして眺めていたルナだったが、東の空から朝日が昇ってきたところで口を開いた。
「亡者たちの時間は終わったわ。セルビナに戻りましょう。」

帰る道すがら歩くのがやっとの青年を気遣ってシェリリがいきさつを語った。
シェリリは裁縫職人の血筋で、冒険者としてはまだまだだが職人としては既に師範クラスの腕を持っている。

2年ほど前、絹糸を集める為に地下迷宮に篭ってクロウラーを狩っていた時に巨大な化石の側で躓いて思いっきりこけた。
自分がどん臭いことは自覚しているが、毎日駆け回って地形を把握している場所で転んだことが少々腹立たしく
何に足を取られたのかと確認しみると昨日まで平坦だった場所がこんもり盛リ上がっている。
シェリリが躓いた弾みで少し土が無くなり乳白色の楕円形をした物の先端が見えていた。
好奇心に駆られて掘り起こしてみると、それはシェリリの顔ほどもある卵だった。
竜の産卵場所を探し回っている冒険者に何度も出会ったことがあったので、これがその卵だと直感した。

しかし召喚獣と聖なる契約を交わしている身で更に竜のマスターになることは出来ないからすっかり困ってしまった。
もう一度埋めておこうかとも思ったが、一度人間の匂いが付いてしまった卵はモンスターに容易く発見されてしまうだろう。
そこで竜の卵を探している冒険者がいたら渡せばいいのだと思い至る。
卵が死んでしまわないように持っていた材料で抱っこ紐を縫い上げると包んで温めながら持ち歩くことにした。

実にシェリリらしいとルナは微笑ましくなった。
「そこに私がのこのこ現れたという訳です。申し遅れました、私はフェルディナンド、フェルと呼んでください。この子はマックス。」
フラガラックに支えられながら歩く青年が話を継いだ。

フェルディナンドは親切で風変わりなタルタル娘の名を聞きそびれてしまったが、
ある日マックスが卵と一緒に託された抱っこ紐の縫い取りに鼻先を擦り付けていたことで名前を知った。
竜騎士としてひたすら修行に励み自信と実力も付いたのでサンドリアの両親の墓前に報告がてら帰郷した後、
あの娘にマックスを会わせて改めて礼をしようとセルビナに来たのはいいが定期点検中で1週間後にしか船は出ないという。
仕方なく釣りをしたり警備隊の真似事をして時間を潰していた。
昨夜は新月だったので大物を狙ってみようかと海岸で釣り糸を垂れていたら亡者の大暴走が起こったのだ。
一人と一匹ではどうにもならないことは分かっていたがそれでも駆けつけると
イフリートを従えた召喚士が必死になって亡者の群れを引き止めていた。
だが膨大な魔力を誇るタルタルの召喚士も多勢に無勢、あまりに無謀だった。
意を決した召喚士は残る魔力全てと引き換えに神獣に究極履行を命じる。
「お願い!お願い!みんなを助けてぇーーー!」その声に聞き覚えがあった。
最後の切り札も亡者の暴走を完全に食い止めることは出来なかったが、冒険者たちが逃げ延びる確率は跳ね上がった。
イフリートが消滅してしまうと狂気を剥き出しにして襲い掛かってくる亡者から身を守る術を彼女は持たない。
それでも両手棍を握り締め決して逃げようとはしなかった。

死なせる訳には行かない。
亡者の群れに割って入り彼女に殴りかかっているGhoulに挑発、前に出てかばうとマックスに彼女を守って逃げるように言う。
マックスは前足で彼女のフードを掴むと後ろ向きに飛びながらぐいぐいセルビナ方面へと引っ張る。
「え?あ、あ、あの?!な、何?だめですよお!?」
彼女はおたおたと抵抗するが、子竜の力は見かけよりずっと強くタルタルぐらいなら引き摺って飛べる。
「子竜を頼みます。」少女が子竜を見捨ててこの場に残ると言うような性格ではないとフェルディナンドは読んだ。
後を追おうとする亡者を槍で突き、足元を凪ぎ払い、持っていたアストラガルスを投げつけ出来るだけ多くの亡者をこちらに向けた。
「か…っ、か、か、必ず戻りますからぁ!助けをつれて!」泣いていたのだろうか。
彼女は顔をぐいっと拭うとマックスを連れてセルビナ目指して走り出した。

魔力を使い果たしたシェリリは傷を癒すこともできなかった。
元々少ない体力はどんどん消耗して後一撃でも受けたら動けなくなってしまう。
振り返るとフェルディナンドが獅子奮迅の勢いで亡者たちと戦っていたがそれでも止め切れなかった数体がシェリリたちを追ってきていた。
「マックス君が庇ってくれたんですぅ。」
小さい身体を張ってシェリリに向けられる殺意を悉く受け止めブレスで牽制してくれなかったら
生きてセルビナに辿り着くことは出来なかった。
シェリリは腕の中で疲れて眠っているマックスを撫でた。
マスターが生命の危機から脱したことで子竜の状態も良くなっている。

「あの時ほどナイトだったらと思ったことはないですね。」
竜騎士が使う両手槍には範囲攻撃技が無いから複数の敵を足止めすることが難しいのだ。
「釣竿と槍しか持ってなくて。今度からは剣と装備も持っていく事にします。」
苦笑いするフェルディナンドだったが、彼が卓越した技量の持ち主であったからこそシェリリは助かったのだ。
「ですですです、備えあれば憂い無しって言いますからぁ。」シェリリが真面目な顔で言う。
知ってか知らずか、助けられた本人は呑気なものだとルナは溜息をついた。
「多分あなたには言われたくないと思うわよ。」
「えぇぇ?!どうしてですかぁ!私、ちゃんと薬も持って歩いてますよぉ。」
「それいつ使かうの?」
「こ、こ、困った時とかピンチの時ですぅ…あれぇ?」そう、シェリリの大きなカバンの中の薬品はどれも手付かずのままだった。
「全く!また人様にご迷惑をかけて。お詫びにフェルさんの看病をすること、いいわねっ!」
腰に左手を当て後輩の鼻を右手の人差し指でぐりぐり押し潰す。
「ふぁぁあぃ。」情けない声でシェリリは返事した。

セルビナに戻ったルナたちはフェルディナンドを宿屋へ連れて行き、
宣言通りシェリリを付き添わせて一旦フラガラックと家に戻った。
軽く朝食を済ませると急いで作った料理をカバンに詰め込み、
滋養のある特性スープを鍋ごと持って見舞いに来たルナは呆れ返った。
「介護人が寝扱けてるってどういうことかしら。」
ベッドでシェリリとマックスが丸くなって気持ちよさそうに眠っているのだ。
「疲れたんですよ。私ならもう平気ですから。」
エルヴァーンにしては柔和な顔立ちの青年は隣のベッドに上半身を起こして座っていた。
「ツインで良かった。でなきゃシェリリを引き摺って帰るしかないもんね。」肩をすくめて笑って見せる。
「ここしか空いてなかっただけなんですけどね。」ベッドの青年も小さく笑い返した。

荷物を降ろしてフェルディナンドの傷の具合いを確かめる。
「ん、大丈夫そうね。でもしばらく船旅は控えてもらうわよ。シェリリに会ったんだし乗る必要もないとは思うけど。」
ひょいっとベッドから飛び降りると、持ってきた鍋を暖炉にかけて温め始めた。
「そうですね、故郷でしばらくのんびりするのもいいかもしれません。」
かちゃかちゃとスープを混ぜる音とともに食欲をそそる匂いが部屋を満たしていく。
『ぐぅぅぅ〜〜〜〜』
空腹を訴える音が響き渡り、ルナとフェルディナンドはもう一方のベッドに目を向けた。
匂いに誘われてもぞもぞとがシーツから這い出して大きく伸びをしている。
「ん〜〜!あれあれ?お姉さん?あ、お腹減ったぁ〜!」「きゅ〜!」
「はいはい。」ルナは返事をするとてきぱきと料理を取り出してテーブルに並べた。
「こっちはシェリリ。こっちがマックス君。ちゃんと座って食べなさいね。フェルさんにはこのスープを。」
「いただきま〜す!」「きゅきゅ〜」テーブルを挟んで料理を頬張る1人と1匹。

渡された湯気が立ち昇る皿をフェルディナンドがじっと見詰めている。
「ヘクトアイズの目玉とかイモリの黒焼きなんて入ってないわよ。」手をつけない青年を見咎めてルナが口を尖らす。
「いえ。手料理なんて久しぶりだなと。それにこんなことまでして貰っていいのかどうかと思って。」
困ったような顔で手にしたスプーンを口へと運ぶ。「ん、うまい。」
「細かいことは気にしないで沢山食べる!」
重苦しい異名とは違いまるで母親のようだと思いながら、フェルディナンドはルナの好意に甘えることにした。

それから2日後、体力の回復したフェルディナンドはルナたちに別れの挨拶をしてセルビナを後にした。
彼の側にはマックスとシェリリがいる。
シェリリはより高度な作品を作るのに必要な腕を磨くためバストゥークでの修行を終えサンドリアへ向かう途中だったと言う。
それならばサンドリア滞在中は是非自分の家に来て欲しいとフェルディナンドは申し出た。
元々お礼をするために探しに行こうとしていたのだから遠慮しないでと目の前で跪き手を握り締めて懇願されては断れない。

シェリリはあまりパーティを組んで冒険することが無かった。
のんびりした性格の割りに召喚士としての自負は人一倍あり召喚獣を生かせない方法を好まず、
パーティで白魔導士の代わりとしての働きを望まれても十分に出来ないことを自覚しているからだ。
少々舌ったらずなしゃべり方の上に感情が高ぶるとどもる癖もあって、そのことをからかわれたり嫌味を言われることも辛かった。
普段はカーバンクルを伴って独りでフィールドを駆け回っているから、旅の仲間がいることが嬉しい。
他種族を見下したような態度のエルヴァーンしか知らないシェリリは穏やかで親切なフェルディナンドに好意を抱き始めていた。

バルクルム砂丘を抜けラテーヌ高原に入ってフェルディナンドがふと思い出したように訪ねた。
「ホラ岩のレンタルチョコボを借りますか?そうすれば真夜中ぐらいにはサンドリアに入れますから。」
「あ、い、い、え。いえ、あの行きたいところがあるんですけど、いいですかぁ?」
緑と青のコントラストを楽しんでいたシェリリは急に話し掛けられて焦る。
「私は全然構いませんよ。どこです?」
「カ、カー君と初めて会った場所…ですぅ。」
蒼く輝く霊獣と魂の契約を結び、召喚士として生きることを選んだ特別な場所だ。
「ふむ、ストーンサークルですね。丁度いいので私の寄り道にも付き合っていただけますか?」
「もちろんですぅ!」シェリリはぴょんぴょん飛び上がって身体いっぱいで同意を示して見せた。

ホラ岩から北西に進み大小2つの湖を通り過ぎた山の麓に忘れ去られた石造りの遺跡がひっそり建っている。
いつの時代に作られたものか定かではないが、ここが神聖な場所であることを感じさせる雰囲気はあった。
シェリリはカーバンクルを召喚して遺跡の中央へと進んでいく。
邪魔をしてはいけないとフェルディナンドは遺跡から少し離れたところで待っていた。
神獣は人語を話すこともできるが、マスターとは声を使わずに精神感応で会話する。
石のサークル内にカーバンクルを抱きかかえて座っているだけのように見えるがしぐさから何か会話をしていることは伺えた。
やがて一声鳴いてカーバンクルはアストラル界へと帰還し、りっくりっくとシェリリが走って来る。

落ち着き無く飛び回っていたマックスが戻ってきたシェリリの頭にぽすんっと落ちた。
「ふぁあわ?」バランスが悪いのも構わず頭にしがみ付くマックスを支えようと腕を精一杯伸ばすが微妙に届かない。
フェルディナンドが手を伸ばしてもがくマックスを持ち上げようとしたが、逃げるようにふわりと飛翔する。
やれやれ、と溜息を付くフェルディナンド。
「マックスはカーバンクルに焼もちを焼いてるんです。」
「えぇ?」これにはのんびり屋のシェリリも驚いた。
卵から孵った竜は最初に見たものを親と思い、竜騎士もまた子供のように慈しむ。
子竜は話すことができない以外は人間と変わらない知能と感情を有しているから性別が異なる場合はマスターを恋い慕うこともある。
結びつきがあまりにも強いためマスター以外の人間にそういう感情を持つとは聞いたことが無い。
「あなたは特別なんですよ。」
シェリリの胸で温められていたのはわずかな期間だがマックスは卵の中で彼女の声を聞き覚えていたらしい。
「どうやら母親だと思っているみたいですね。」
少し困ったような顔で笑うフェルディナンドにそういうことかとシェリリは納得した。
「マックスおいでぇ〜」拗ねてフェルディナンドの頭上をぐるぐる飛び回るマックスに向かって両手を広げる。
彼女が自分を呼んでくれたことが嬉しいのだろう。「きゅ〜!」甘えた声を上げてマックスはシェリリの胸に飛び込んだ。

再び湖の横を通って大地を引き裂く谷底に下りた時には日が暮れていた。
オルデール卿が発見した洞窟とは反対の方へとフェルディナンドは進んで行く。
シェリリは闇の中でもぼんやりと見える白い花の群生に興味を惹かれながらも遅れないようにフェルディナンドの後を追いかける。
洞窟を抜けきる手前でフェルディナンドが足を止めた。「今夜はここで休みましょう。」
ここならば急に雨が降ってきても大丈夫だ。ルナが持たせてくれた料理で夕食を済ませ、明日に備えて早めに眠ることにする。
マックスがシェリリに身体をくっ付けて丸くなる。
シェリリもマントを手繰り寄せマックスを抱えるようにして眠ろうとしたら
「少し寒いですか。」フェルディナンドが声を掛けながらシェリリを膝の上に抱き寄せた。
「マックス。」子竜は目を開けて主人を見る。「こっちにおいで。」言われるまま、膝の上のシェリリに寄り添う。
「こうすれば暖かいでしょう。」穏やかに微笑む青年にシェリリはどきどきしながらも頷いた。
人懐っこいタルタル族としてはここでジタバタするのは返って不信感を持たれると天然娘シェリリもそれぐらいの知恵は回る。
2人と1匹はお互いの温もりを感じながら眠りについた。

翌朝、フェルディナンドに急かせされて起きたシェリリは風に乗って舞い上がる白い綿毛の中で立ちすくんでしまった。
谷底を埋め尽くす白い花は湖の側にも咲いていたが、こんな光景は見たことが無い。
花のひとつに手を伸ばすとぽむっと音を立てて綿毛が舞い飛ぶ。
嬉しそうにマックスと綿毛を追いかけるシェリリにフェルディナンドが言う。
「ここの花だけなんです。きれいでしょう?これをあなたに見せたいと思って。」
「す、すごいですぅ〜!でもどうしてここだけ?」

谷底に閉じ込められた花は繁殖範囲が狭くなってしまった。
より多くの種子を残すために綿毛になって谷から外へ出ようと進化したというのが学者の見解だと彼は説明した。
「私よりずっと賢いですねぇ〜」あはははと笑い声を上げながら無邪気にはしゃぐ彼女をフェルディナンドは目を細めて眺めていた。
ひとしきり走り回って疲れたのか、シェリリとマックスが戻ってくる。
「やはりあなたしかいないようです。」突然真面目な顔で語りかけられておどおどするシェリリの前で
すっと膝を折って跪き「よかったら私とお付き合いいただけないでしょうか。」フェルディナンドはシェリリに愛を告げた。
彼女の大きな瞳が驚いたように見開かれ顔が見る見る真っ赤に染まる。
「わ、わ、わ、わ、わ、わ、私なんかでよければぁーーーっ」
マックスが不満げに飛び回っているのもお構い無しにフェルディナンドは彼女を抱き寄せると額に優しくキスをした。

サンドリアに着いてシェリリが何より驚いたのはフェルディナンドが貴族だったことだ。
大した家柄じゃないと彼は言うが執事や召使いがいる家などウィンダスにはない。
両親が相次いで病没したのを期に全てを処分してレンタルハウスに移ろうとした彼を親戚や執事が泣いて止めるので
仕方なくそのままになっているのだと事も無げに話すのに、シェリリは育ちとか種族の差を改めて思い知らされた。

翌日からシェリリは皮細工ギルドに通って修行に励んだ。
フェルディナンドはミッションなどの打ち合わせでドラキーユ城に出かけたり友人を訪ねたりしている。
夜になると執事が入れてくれたサンドリアティーを飲みながら、シェリリは修行の成果や職人としての夢を語り、
フェルディナンドは生い立ちやマックスとの冒険を話した。側にはいつもマックスが居て2人の話を興味深そうに聞いている。
寝室が別々だったことにシェリリは内心ほっとしていた。
客人として滞在しているから当然といえば当然なのだが、キスでさえ照れるシェリリは全く経験がなかった。
種族の違うフェルディナンドに求められてもことは簡単にはいかないことは朧げながら理解している。
それを察してか彼はまずはお互いを知ることから始めようと常に紳士だった。

始めはぎこちなかった口調も馴染んで、なんとなく恋人らしくなってきた頃。
朝からマックスの様子がおかしい。そわそわと飛び回ったかと思えばいつも以上にシェリリに甘えてきたりする。
シェリリは髪の中に顔を突っ込んで引っ掻き回すマックスに、降参とでも言うようにテーブルに両腕を投げ出して突っ伏していた。
「フェル助けてぇ〜マックスがヘンなのぉ。」
錬兵場での朝の鍛錬から帰ってきたフェルディナンドに窮状を訴える。
「おやおや、これは。シェリリ災難だったね、マックスは発情期に入ったみたいだ。」
「発情期?そうだったのかぁ。」それならおかしくなっても仕方が無いとシェリリは思った。
ウィンダス出身でミスラの友人が多く“季節”の度に引き篭もったまま出るに出られないと愚痴られたことが何度もあったからだ。
「これじゃあマックスは連れていけないな。」
ミッションの手伝いで明日出発することになったというフェルディナンドは心底困った顔をしていた。

現在のヴァナディールで竜騎士たちが連れているみな竜は若く小さいため子竜と呼ばれているが、
幼体ではなく立派に生殖能力を有している。
発情期の子竜は集中力に欠ける上、他の竜騎士が連れている子竜が異性だった場合とんでもない事に成りかねない。
「ミッション中にマックスがメスの子竜に迫ったら大事だろう?」
そんな場面想像もしたくない。竜同士だけの問題ではでなく、マスター同士の大乱闘に発展する可能性すらある。
「仕方が無い、今回はナイトで行くことにするよ。1週間ほど留守にするけど大丈夫?」
シェリリは寂しいかったが一緒に行けるだけの実力がないことは事実だし、皮細工の修行中でもある。
「うん、マックスと待ってるね。」
青紫に金の縁取りが美しい鎧を纏い剣を携えて出発するフェルディナンドをマックスと一緒に見送った。

夜になってますます落ち着きが無くなって、マックスは苦しげに鳴き出し、
見兼ねたシェリリは寝室に連れて行くと抱き締めて背中をさすり続けた。やがて安心したのかシェリリの腕の中で眠ってしまった。
ベッドに降ろしても目を覚ます気配が無いことにほっとする。
明かりを消してふかふかのベッドに潜り込むとおやすみと呟いて眠りに落ちた。

身体に掛かる重さとむず痒いようなくすぐったい感覚とピチャピチャと何かを舐めるような音で目が覚めたシェリリは
自分に起こっていることが一瞬理解でなかった。
パジャマがきれいに肌蹴られ、タルタル特有のぽっこりした腹の上にマックスが圧し掛かかり、
剥き出しになったふくらみの薄い乳房を小さな前足で掴んで片方の乳首に吸い付いているのだ。
「マ、マ、マ、マ、マックス?!」シェリリは完全にパニック状態だった。
子竜を振り落として逃げようと身体を捻じるが、それを察したマックスが乳首に軽く歯を立て噛みついた。
「いたぁあぁぁああっんっ!」
痛みを訴える声が淫らな響きを帯びていたことに、シェリリ自身が一番驚いていた。

いつから嬲られていたのだろうか、桜色の乳首はぴんと立ち上がりマックスが前足で乳房を擦る毎に
身体の奥からジンジンと熱いものが込み上げてくる。
彼女の身体が小さく震え息が荒くなってきたことに気をよくしたのかマックスは乳首をしゃぶり尻尾で下半身をゆるく撫で回す。
「んあぁっ...や、や、やめてぇ...」徐々に湧き上がってくる快感を押しのけようと身体をくねらせ、
手足をバタつかせるがその抵抗が子竜の行為をますますエスカレートさせていく。
どうして、なんで?混乱した思考と与えられる刺激に反応する身体のアンバランスさに戸惑っていたシェリリは
マックスが剥き出しになった下半身へと移動していることに気付くのが遅れた。
足が閉じられないように身体を潜り込ませて他人が触れた事のない場所に鼻を近付け臭いを嗅いでいる。
「い、い、いやぁぁ...」
ぷっくり腫れあがったつるつるの恥丘に大きく刻まれた溝の奥から蜜が滲み出した。その強烈なメスの臭いがマックスを誘う。
子竜は細い舌で赤く濡れ光る襞を穿るようにして溢れる蜜を舐め取った。
「ひっあぁっ!!!!」初めて味わう強烈な刺激にシェリリの意識は真っ白になって弾け飛んでしまった。

差し込む朝日で目が覚めたシェリリはしばらくぼーっとしていたが昨夜のことを思い出して慌ててシーツを跳ね除る。
弾みでベッドから転がり落ちそうになったマックスが「きゅー!」と抗議の声を上げたがお構い無しに自分の身体を見下ろす。
「あ、あ、あれ?」ちゃんとパジャマを着ている。
マックスに背を向け、パジャマの裾から手を入れて身体を触ってみるがどこもベタベタしたり気持ち悪いところは無い。
「ゆ、夢、だったのかなぁ?」何を朝からジタバタしているんだ、と言うような目でマックスがシェリリを見ている。
「あぁ〜何でもない、ごめんねぇマックス。」頭を撫でてやりながら、マックスの発情期に当てられて変な夢を見てしまったと鬱になった。
すっきりしない気分のままギルドに出かけたシェリリは集中力が続かず素材をいくつも無駄にしてしまうが、ひたすら作業を続けた。

夕方フェルディナンド家に戻ると真っ先にマックスがシェリリの顔目掛けて飛びついて来た。
「ただぁもがぁぁあああっ?!」
必死になって縋り付き顔を嘗め回されたことで昨夜の夢がフラッシュバックして思いっきりマックスを引き剥がしてしまう。
びっくりしたマックスは哀しげに鳴きながらパタパタと奥へ飛んで行ってしまった。
出迎えた執事が苦笑しながら、マックスが今日一日シェリリの帰りを玄関先で待っていたことを教えてくれた。
夕食の時間になってもフェルの部屋に閉じこもったままマックスは出てこない。
マックスに責任は無いのに、本能の欲求で苦しんでいる子竜に理不尽な仕打ちをしてしまったとシェリリは反省した。
お詫びの意味も込めて一緒にお風呂に入ろうとドア越しに声を掛けてみる。
「きゅ?」本当に?とでも聞いているような感じの声が返ってきた。
「うん、本当だよぉ。」シェリリが答えるや否やドアが開き子竜が飛びついてきた。

お風呂に入ってもマックスはイタズラをしてくるような事はなく、気持ち良さそうにシェリリに泡だらけにされていた。
やっぱり昨夜のは夢だったのだとシェリリはほっとして、風呂から上がるとマックスと一緒に眠った。
少しでも苦痛を和らげてあげたくて。
・・・お風呂がいけなかったのだろうか・・・
昨夜と同じシチェーションで目を覚ましたシェリリは己の妄想が情けなくて涙が零れた。
だが心とは裏腹に身体はマックスが与える愛撫を受け入れつつあった。
乳房に飽きたのかマックスが昨夜と同じように下半身へと降りていく。
が、腹の上でクルリと向きを変えると尻尾を振って硬く立ち上がった乳首を嬲りながら
長い首を伸ばして誘うように蜜が溢れるスリットの先に舌を這わせた。
「いやぁあああぁ!」泣きながら身を捩って逃れようとするが、充血して敏感になった恥丘に爪を立てられ、
痛みと疼くような快楽がごちゃ混ぜになって簡単に押さえつけられてしまう。
びちゃびちゃという隠微な水音が鼓膜いっぱいに響き渡って、シェリリはもう何も考えられなくなった。

爽やかな朝に相応しくない暗い気分でシェリリは目を覚ました。
ベッドにもパジャマにも特に乱れた様子はなく、マックスも穏やかに寝息を立てている。
着替えを持ってのろのろとバスルームに向かい裸になって身体を確認するがどこにも痴態の跡は無い。
シャワーの栓をひねったもののシェリリは床にへなへなと座り込んで泣き出してしまった。
「フェ、フェルぅ・・・」フェルディナンドがいない不安があんな夢を見せているのだと思った。
早く帰ってきて欲しい。彼が優しく抱きしめてキスしてくれたら、こんな思いをしなくても済むのだ。
えっぐえっぐと泣きじゃくりながら妄想も涙もみんな洗い流してしまおうと頭から熱い湯を浴び続けた。
フェルディナンド家のバスルームを占拠し続けたシェリリは当然のように湯あたりしてしまい、ベッドで唸っている。
執事がサイドテーブルに用意してくれたスノールジェラートを食べるために起き上がる気にもなれない。
「じぇ、じぇらーと…」うわ言のように呟くシェリリを見かねたのかマックスは器用に前足でスプーンを掴み、
ひとさじ掬うとシェリリの口元へ運んだ。「冷たくて、おいしぃ。ありがとぅ、マックス。」
シェリリが微笑むとマックスも嬉しいのだろう。彼女が起き上がれるようになるまで甲斐甲斐しく世話を焼いたのだった。

誠実でいじらしい子竜を疑いたくはない。これが夢だという証が欲しかった。
3日目ともなれば身体は刺激に敏感であっという間に快楽に蕩ける。
シェリリの股間に顔を埋めたマックスは細く長い舌で赤く剥けた小さな突起を啄ばみ舌で突付き執拗に嬲り続けていた。
「あ、あぁっ!いやっ、いやっ…いやぁあ…」もう拒絶なのか甘い誘いの喘ぎなのかシェリリにも区別が付かなくなっている。
翳りの無い剥き出しの大事な場所からたらたらと愛液が溢れ出す感覚が分かるようになった。
背骨を痺れる様な疼きが駆け上がり身体がカーッと熱くなる。次にくる刺激で意識は簡単に飛んでしまうだろう。
だから最後の抵抗を。シーツを握り締めていた右手を泳がせて胸の上に置き爪を立てた。
マックスは蜜壷の溢れる入り口を舌でこじ開け穿り奥へと差し入れた。
「だ、だめぇ!そこ、だめぇ!あああぁぁあ………っ!」もう戻れない。胸を掻きむしる痛みも快感になる。
シェリリは甘い欲望の闇に身を投げた。

翌朝、飛び起きたシェリリはパジャマを肌蹴て殆ど膨らみのない胸を見下ろす。
ない。ない。ない。ない!血が滲むほど強く引っ掻いた傷がない!
「あ、は、は、あは・・・」あれは確かに夢だったのだ。
マックスならば身体を拭きパジャマを着せることぐらいできるかもしれないと頭の片隅で考えてもいたが、
傷をきれいに消してしまうことは無理だ。
「はぁ・・・欲求不満なのかなぁ・・・ごめんねぇマックス、疑って。」
起き出して来た子竜を抱き上げ、今日は一緒に付き合おうと決めた。
他の子竜がいないかどうかきょろきょろしながら街を抜け、あまり人のいない西ロンフォールに出る。
発情期に入ってから一歩も外に出ていないことがストレスだったのだろう、
広い森を自由に飛び回りウサギや羊を追いかけている姿はとても生き生きとして美しいとシェリリは思った。

夕食後、早々に部屋に引き上げるとさっさとベッドに潜り込み期待と不安で疼く身体を抱きしめて眠りにつく。
夢ならば、妄想ならば、ずっと胸の奥でもやもやとしていた相手が子竜だという背徳感も甘美な毒になる。
いつものようにマックスの愛撫を感じて目が覚める。
・・・ぬちゃ・・・くちゃ・・・じゅぶ・・・びちゃ…
「んはぁ…んんっ・・・」自らがあげる喘ぎ声と卑猥な水音が覚醒しきらない意識をそのまま悦楽へと誘っていく。
昨日までとは違い積極的に快楽を貪ろうとするシェリリの身体をマックスは嬉々として責めた。
シェリリの秘所に舌を突き入れ肉襞を擦り嘗め回し溢れる蜜を啜り上げる。
「ああっ…マックスゥ…きもちイィよぅ…んぅ!」
始めて彼女が拒絶ではなく、肉欲の喜びに子竜の名を叫んだ。


その甘い声に応えるようにマックスは彼女の最も敏感な部分を舌で探り出し舌先を丸めて強く突付いてくる。
「んあぁ…だめぇぇんっ…」高く鳴きながら彼女は無意識に腰を振ってもっともっととせがんでいた。
じゅる…唾液と愛液の糸を引いて舌が引き抜かれる。
途切れた行為に不満を訴えるように身体をくねらせるシェリリの下腹を前足がぐっと押える。
丸々した太腿の間にマックスが割って入っているので閉じることも出来ず、
たらたらと物欲しげに涎を垂らすアソコが大きく開かれ丸見えになる。
こういう格好は夢だろうと相手が子竜だろうと恥ずかしい。
「ぃやぁ…」
上半身を起こしかけたシェリリはぬちゃぬちゃと音を立ててクリトリスとヴァギナを嬲っているモノが何か見てしまった。
子竜の下腹部生えたピンク色の肉棒が入り口を求めていたのだ。
柔肉を掻き分けるようにゆっくりと熱いものが身体の中へ入って来る。
「あ、あ、い、やっ…んぅ、だ、だめぇっ、やぁだっ…む、無理ぃ…あ、あ、あ、あぁぁ………っ!」
時間をかけて慣らされた膣はさしたる抵抗もなくマックスの雄を根元まで受け入れてしまった。
内臓を貫かれたような違和感と今まで感じたことの無い強烈な快感にシェリリは息も出来ない。
口をパクパクさせていたシェリリが「んぁはぁ…」と息を吐き出したのを合図にマックスは腰を打ちつけ始めた。
力任せに突き上げられ、
舌では届かなかった場所を擦られ、
留まることなく溢れる蜜が掻き回され厭らしい音を立てている。
マックスはもう本能の欲求を押えようとはしなかった、がむしゃらにシェリリの膣を犯す。
「まぁ…まぁっくすぅ…うぅっん!!お、おかし…くぅ…なっ…るぅ…ゃぁ…だ、だめぇっ…!」
シェリリもただの雌へと堕ちていこうとしていたまさにその時。
寝室のドアがノックされ「シェリリ、起きてる?」聞き間違えようの無い声が彼女の名を呼んだ。

「フェ、フェルぅ?ああっ、いやぁああっ、だ、だめぇ、死んじゃぅぅうう!」一度口にしてしまった快楽を認める言葉は
身体の奥から湧き上がり駆け抜ける甘く蕩けるような痺れとともにもう止める事などできなかった。

だがそれは助けを求める悲鳴にも聞こえた。

「シェリリ!?どうした?何かあったのか?入るよ!」ドアが勢いよく開けられ、フェルディナンドが駆け込んでくる。
「!!う、うそぉ・・・!?い、い、いやぁあ!!!!!うそよぉ!!!来ないでぇぇ!!!」
登りつめた身体が跳ねフラッシュを掛けられたかのように視界が真っ白に染まり、
快楽と絶望の入り混じった絶叫を上げてシェリリの意識は官能の渦に飲まれ消えた。

フェルが帰って来た?違う、これは夢だから。目が覚めたらいつものように朝になっているはず。
しかし意識を取り戻した彼女の身体は甘美で背徳的な行為の余韻に気だるく痺れていた。
恐る恐る目を開けると石像のように無表情な顔でフェルディナンドが自分を見下ろしている。
何か言おうとするが声がでない。
「・・・・。」彼が言っている言葉が聞こえない。
シェリリの腹の上にぐったりと横たわっていたマックスが飛び上がり彼の肩に止まる。
くるりと踵を返すとフェルディナンドはそのまま部屋を出て行こうとする。
腕を伸ばして彼を捕まえようとするが、身体はぴくりとも動かない。
空気の振動でドアが閉まるのが伝わってくるが、それっきり何の気配もしなくなった。
天蓋付きの豪奢なベッドの中で身動きひとつできず、声も出せず、音も聞こえず、
ただ目を見開き、涙と涎を流しながら、静かにシェリリは破滅と狂気に立ち向かっていた。

シェリリは次に起こることが怖かった。夢と現の狭間を永遠に漂っていたかった。
だが非情にも目覚めの時は訪れる。
彼女が最初に見たものは、ベッドの天蓋だった。
暗くてよく見えなかったが今まで自分が寝ていた客室のベッドのようにレースのカーテンで覆われたものではなく、
骨組みだけのような感じで何本か梁が渡されており、鈍く光る金属の輪のようなものが付いていた。
身体に掛けられていたシーツをどけて上半身を起こし、闇に慣れてきた目で周りを見渡してみる。
正方形の部屋で自分のいるベッドが中心にあるらしい。まだ夜なのかと思ったが暗いのは窓がひとつもないせいだ。
なんだがとても奇妙な場所だった。
ふと自分の身体に視線を移して彼女は慌てて立ち上がった。
ぺたぺたと小さな手であちらこちら触わり首を廻らして自分が身に着けているものが何なのかを確かめる。
上半身はハーネスの輪郭を細い革紐で模ったようなもので、わずかに膨らむ乳房を縊り出している。
輪郭だけのトラウザは尻たぶにそって股を割り、腰に食い込み、臍の上から伸びた紐がハーネスと繋がっている。
首と手足には金属の輪が付いた革のベルトが巻かれていた。ルナの中の人氏画:拘束具
試しに足首のベルトを外してみようとしたが、留め金部分に小さな鍵穴があり鍵がないと外せない。
さらにこの扇情的な装備にも鍵が掛かっていてひとりで脱ぐことはできなさそうだった。
裸より恥ずかしい格好に唯一ここで身体を隠せるシーツを巻きつけてベッドから降りた。
ベッド以外何も無いように見えたが小さなテーブルセットがぽつんと置いてあり
琥珀色の液体が満たされたグラスが載っていた。
酷く喉が渇いている事に気付いてシェリリは何の疑いもなくそれを飲み干した。

狭い部屋の中を一周してまたベッドに戻る頃には、ぽたぽたと厭らしい汁が垂れ落ちて床に水溜りを作っていた。
誰もいないことは分かっているのに、それでもきょろきょろと周りを確かめ右手を合わせた太股の間へと伸ばす。
指先が濡れた柔らかい襞に触れた瞬間、痺れるような快感が背筋を駆け上る。
「あぁっ・・・っ」思わず漏れた自分の喘ぎ声にゾクゾクする。
襞を割って溢れ出る汁を指に塗し割れ目を擦り上げ硬くしこった突起に触れると頭まで電流が流れたように痺れる。
「んぁぁあっ…き、きもちっ・・・いぃっ…!」快感を訴える一言で理性のタガは簡単に外れた。
右手で突起を押し潰しぐりぐり擦る。左手も伸ばして襞を押し広げぐちゃぐちゃかき混ぜる。
今まで自慰などしたことがないシェリリは気持ちいいところを探して擦り弄り回す。
「はぁ…ああっん、うぅっ…はぁ・・・」
もっともっと刺激を得ようとベッドに横になり足を大きく開いてクリトリスを嬲りながら膣口へ指を滑り込ませた。
「ううっ…ああああっ!いい、いい、いいの、気持ちいぃのぉっ・・・!」
壁を擦り締め付ける襞を押し上げくちゅくちゅと淫靡な音を立てて激しく指を動かし快楽を穿り出す。
シェリリは自分を慰めることに夢中でいつの間にかベッドの側に人が立っていることにも気がつかなかった。
指は既に3本も埋まっていたがタルタルの短い指では奥にある気持ちいいところまで届かない。
もどかしさに腰をくねらせ少しでも深く指を飲み込もうとする。
「んぅ…あぁんっ、ああっ…もっとぉ…っ」
「もっと、何?」耳元でフェルディナンドの声がした。
ぴくっと身体を震わせたものの、理性などとっくに溶けてしまっているシェリリは
目を開けてベッドに手をついて覆いかぶさるように自分を眺めているフェルディナンドを見た。
そこには優しい笑顔も欲情を浮かべた厭らしい笑いも彼女が期待したような表情はなかった。
無表情で冷たい顔だった。それがまた自虐的な刺激を煽りシェリリを激しく悶えさせた。

「シェリリ、答えて。もっと何なんだい?」表情と同じ冷たい声。
答えたらくれるの?くれるの?欲しい、欲しい、欲しい!
「こ、こ、ここにぃ…いっぱいいっぱい、い、れて、入れてぇ…」
ぐちゃぐちゃに蕩けたソコから指を抜くと両手を使って大きく開いて見せた。
「マックス。」彼は子竜の名を呼ぶとその場を離れベッドの方を向いて椅子に座る。
子竜はだらしなく投げ出されたシェリリの足の間に降り立ち躊躇なく欲望の楔をシェリリに打ち込んだ。
「あああああっ!!!いやぁっ!いやぁぁあ・・・っ!くぅっ・・・はぁ・・・ああっ、いいっ!いいのぉ!!!」
それは確かに欲していた刺激だったけれど、シェリリはフェルディナンドがしてくれるものだと思っていたから拒絶を口にする。
しかし寄せては返す快楽の波に翻弄され、あっという間に彼の存在も忘れてよがり狂った。

あれから幾日過ぎたのだろう。
日の光が届かないここでは時間の経過を正しく知ることは出来なかった。
ただひとつだけ、自分がマックスの本能を鎮めるための雌として飼われているみたいだということは分かった。
フェルディナンドは居ない時もあったがマックスはずっとこの部屋にいて、欲望の赴くままにシェリリを嬲り、
シェリリの腕に抱かれて眠った。
食事はフェルディナンドが運んでいるようだったが、シェリリが正常な意識を保っている僅かな時間には
決してやっては来ないから確かめる術も無かった。
ぼんやりしているシェリリをマックスが鼻で軽く突付いた。準備してという合図だ。
竜にとってのセックスは子を成すための行為だからその気になれば遠慮なくシェリリを犯せばいいはずなのに、
強引に挿入してシェリリが傷付かないようとのマックスの優しさだった。

シェリリは自分自身で前戯を施す。
今ではどこをどうすれば感じるのか十分に把握しているから直ぐに濡れてくちゅくちゅと卑猥な水音を響かせた。
涎を垂れ流す淫口から指を離すとマックスを抱き寄せてソコに導こうとしたが、
子竜はその手をひょいとかわしてハーネスの紐に爪をかけて器用にシェリリをうつ伏せにし、
むっちりした丸い尻に食い込むトラウザの紐を引っ張って高く持ち上げた。
奇妙で不可思議な装備はマックスが簡単に彼女を扱えるように爪を引っ掛けるための補助具だったのだ。
シェリリの辛うじて残っている理性は獣のような格好で受け容れることを拒んだが、
それもマックスの肉棒が膣壁を割り開き擦り上げて入ってくるまでだった。
知能を有するとはいえ、子竜に性器を蹂躙されて喜びに震え、涎を垂らして嬌声を上げながら
自分で乳首に爪を立て捏ねくり回し尻を振る姿を浅ましいと思う羞恥心すら無くなっていた。

身体から熱がすっかり引いてしまった頃ようやくシェリリの意識ははっきりしてきた。
相変わらずシェリリに身体を預けて眠るマックスを撫でる。
マックスはただ本能の命じるまま行動しているだけだ。
この賢く健気な子竜を愛しいと思う気持ちに変わりは無かった。
そしてこの子のマスターが自分を子竜の性処理の道具としか見ていないとしても、彼への気持ちは揺らがない。
ただ知ってしまった喜び故に彼に愛されることのない身体が寂しかった。

食事を運んできたフェルディナンドに向かってマックスが飛んできた。
パートナーがいる発情期中は身に危険が及ばない限り相手の側から離れることは無い。
呼びもしないのに自らやって来たということは、マックスの発情期は終わったのだ。
憔悴した顔で安らぎのないまどろみに揺蕩うシェリリの頬にキスを落とす。
フェルディナンドが少し深くなった鎖骨のくぼみに舌を這わせると、微かな刺激にも敏感になった身体は身じろぎした。
「おっと、危ない。」準備が整うまで彼女に目覚められては困るのだ。
彼女を抱き起こして口に昏睡薬を注ぎ込む。
こくりと喉が動いて嚥下するのを確認するとベッドに横たえ、マックスを連れて一旦部屋を後にした。
再び部屋に戻ってきた時、マックスは連れてこなかった。
マックスにとってシェリリもまた守るべき対象であり、発情期が終わって性的興味を失っている今、
フェルディナンドが行うこと黙って見ているはずは無く、
彼女が助けを求めればマスターとの二者択一を迫るようなことになりかねないからだ。

薬が効いてぴくりとも動かない彼女の身体から拘束具をひとつずつ外して、擦り剥けた肌を擦りながらケアルで癒した後、
彼女をシーツで包んでバスルームに運び、少し痩せたとはいえまだまだむっちりとした柔らかい身体を隅々まで丹念に洗い上げる。
真っ暗だった部屋に明かりを灯し、ベッドに彼女を寝かせて濡れた髪を梳りながらシーツの上に緑の織物のように広げていった。
その出来栄えに満足すると、用意しておいた淡い紫に色づく花を飾り、
真っ白なドレスをロンググローブをはめ、素足に同じく真っ白なブーツを履かせる。
それはドレスとホースを除いたウェディング用の衣装だった。どれもみなハイクオリティ品だと分かる見事な刺繍が施されている。
全てこの日のためにフェルディナンドがギルドに依頼して作らせたもので、セレモニアルブーツ以外はシェリリの手によるものだ。

フェルディナンドは誘われれば女性と寝ることもあったが、愛情を抱くような相手もなく自分はそういう人間なのだと思っていた。
ところがシェリリに出会った瞬間ときめいてしまったのだ。それと同時に彼の心に潜んでいた暗い欲望が一気に燃え上がったが、
人道に外れたものであると判断するだけの理性が働いてその場は逃げるように立ち去った。
しかし、マックスが初めての発情期を迎えた時、その出自の複雑さが子竜の精神を不安定にしていることを知り、
子竜と自分自身を満たしてくれるのはシェリリしかいないと確信した。
縫い取りの名前を頼りに裁縫士シェリリのことを調べ上げてから随分経ってしまったがようやく思いを遂げることが出来る。

美しく淫らに飾り立てたシェリリは磁器製の人形のようだ。
艶やかな緑の髪、ふっくらした頬、膨らみの無い胸から緩やかに丸みを帯びる腹、
むっちりした太腿は膝から急に細くなり小さな足がちょこんと付いている。
たっぷり時間をかけてこの素晴らしい眺めを堪能する。
「ん・・・ぅ」薬の効果が切れたのだろう、シェリリが小さく呻き身じろぎする。
もう少し眺めていたい気もしたが、彼女が完全に起きる前に次の準備をしなければならない。
彼女のグローブに包まれた手首を革のベルトで締め上げ天蓋の梁から垂らしておいた鎖を通して吊るし上げ
つま先が着く位置でベッドの支柱に固定する。
「い、いたっあぁぁっーー!」骨の軋む痛みに彼女が上げる悲鳴が甘美な音楽のようにフェルディナンドの耳朶をくすぐる。
顔の前で両腕を高く上げた不自然な姿勢でふらつく身体を支えようとシェリリは踏ん張った。
顎を高く上げた彼女は周りが見えないが、それでも視界に入らないように注意しながら彼女の正面に回り床に座わると、
恥毛の無いつるつるの可愛らしい丘と爛れたように赤い秘溝が目の前にあった。
バストゥークのある店から取り寄せたローションを指にたっぷり塗りつけて誘うように蠢く秘口に1本咥えさせる。
胎内に侵入した異物に彼女は驚きの声を漏らしたが明らかに快楽を伝える響きを帯びていた。

指を包み込む襞にたっぷりとローションを擦りつけ、続けてて2本目も差し入れる。
「あぁ・・・っ!」びくびくと身体を震わせながらも彼女の膣は飲み込みもぐもぐと旨そうに租借する。
しかし3本目は途中で彼女の痛みを訴える悲鳴に遮られ、奥までは入らなかった。
やはり仕上げが必要だとフェルディナンドは判断した。
マックスの発情期を利用して子竜の本能を満たしながら彼女の快楽を引き出して行ったのだが、
もう少しの拡張しないとエルヴァーンのモノを受け入れることは出来そうに無い。
フェルディナンドは他の竜騎士と同じように子竜を深く愛している。
愛する子竜が愛する女性を組み敷く様は倒錯的で狂おしいほどに彼の暗い情念を刺激し興奮させた。
フェルディナンドの冷たい態度に彼女が悶え苦しみながら快感に酔い痴れる姿の愛らしいさに
何度マックスを押しのけて彼女を犯してしいたいという衝動に襲われたことか!
心ゆくまで彼女を蹂躙し愛し尽くすために耐えた2週間を思えば今しばらく彼女の痴態を眺めて待つことも楽しいだろう。
愛液で濡れた指を引き抜き、状況が飲み込めないままローションに含まれる成分によって悶え始める彼女の顔を覗き込む。
「フェ・・・フェル・・・?」自分を嬲っていたのが彼だとようやく気が付いた彼女が名前を呼ぶ。
欲情に惚けた瞳に涙が浮かぶ。それが意味するのは恥辱だろうか。
何かを告げようとする彼女の口を深く蕩けるようなキスで塞ぐ。
唾液の糸を引いて顔を離した時には彼女は媚薬によって完全に理性を失い、甘い声で鳴くことしか出来なくなっていた。
ぼたぼたと涎を垂らす下の口を何とか慰めようと摺り合わせている短い脚を開いて、
これもバストゥークの店で手に入れたうねうねとのたうつ緑の蔓が股の部分から生えた怪しげな装備を履かせた。
緑の蔓はぶちゅぶちゅと厭らしい音を立てながら彼女の中に沈み込んで行く。
彼女の中で暴れ回る醜悪な異物が与える強烈な刺激に
「あっあっああ!!!はぁっん、あぁーーーーーーーっ!」シェリリは感極まった絶叫を上げてよがり狂う。
フェルディナンドは椅子に腰掛けて、吊るされた腕を中心にくるくる踊る彼女をねっとりした目で視姦する。
彼女が奏でる甘やかな嬌声と卑猥な水音のハーモニーだけが部屋に満ちていった。

シェリリは休むことなく与えら続けられる刺激に抗えず何度も意識を失いかけては、己の重みに軋む骨の痛みに泣き叫び続けた。
やがて涙も声も枯れ果てた頃、彼女の内に溢れる蜜を吸って太く膨らみ過ぎた蔓は動きが鈍くなり、
媚薬が切れた彼女もうぞうぞとゆるく煽動するそれだけではもう達することが出来ずもどかしそうに身体をくねらせ始めた。
もう充分だろう。
衣服を脱いで全裸になったフェルディナンドはシェリリを戒めていた鎖を支柱から外す。
どさりと音を立ててベッドに崩れた彼女は、まだ鎖が絡んだままじゃらじゃら音を立てる手を股間に差し入れようとする。
役に立たなくなった蔓の代わりに自ら慰めようとしているのだ。
フェルディナンドがその手を掴んで止めると、いやいやするように頭を振ったがその目に正気の光はなかった。
左手で彼女の両腕をまとめて掴み、右手で蔓の生えた装備を引き下げる。
ずぶぅ…べちゃ…にちゃぁ…
耳を覆いたくなるような汚らしく厭らしい音と粘液の糸を引いてそれは彼女の足元に落ち、
塞がれていた淫口からだらだらと愛液が流れ落ちてシーツに大きな染みを作っていく。

「あぁ…んぅぅう・・・」抗議するように唸り声とも喘ぎ声ともつかない声でシェリリが鳴くがそれには応えず、
フェルディナンドは膝に抱き上げた彼女の髪をぐっと引っ張り突き出された唇を塞ぐ。
舌を滑り込ませて小さな歯列から歯茎をゆっくり舐り、少し短い舌を絡めとって吸い、思う存分彼女の口腔を味わうと、
極上の微笑を浮かべて彼女の瞳を覗き込んだ。
「私に抱いて欲しいかい?」
虚ろだった彼女の瞳がきょろきょろと動き焦点を結び始める。
もう一度ゆっくり彼女の耳元で同じ言葉を囁くと、残る理性を掻き集めて彼女は一瞬だけ正気を取り戻し頷いた。

嬉しそうに微笑み返すシェリリは純真なままだった。
め・ち・ゃ・く・ち・ゃ・に・し・て・し・ま・い・た・い。
押えがたい欲求がフェルディナンドの心を覆い尽くし、優しさの仮面が外れて残忍で皮肉な笑いに口を歪めた。
だがシェリリにはそれに気付くこともなく、彼の胸に顔を埋めて与えられた僅かな幸せに酔っている。
短い腕に力を込めてぎゅうっと抱きついてくる彼女の身体を引き剥がすように持ち上げベッドにうつ伏せに放り出す。
彼女がマックスと過ごす間、後ろから犯されることを嫌がっていたのは分かっていた。
「な"ぁ…?」擦れた声で彼女が疑問を紡ぐ前に突き出されたぷりぷりの尻たぶに手をかけて力任せに一気に彼女を貫く。
「ん"ん"ん"ん"ぅ"ーーーーーーーーーー!!!!!」
声にならない悲鳴が彼女の喉を潰した。
根元まで埋まる前に壁に当たるが、構わずに突き上げる。
彼女の狭く小さい膣は彼女の意思や苦痛とは無関係に彼自身を締め上げどこまでも快楽を貪ろうとざわめき、
飲まれまいと彼も大きく腰を引いては深く強く、子宮を突き破る勢いで打ち付ける。
痴態に肌を染めてもがく彼女を組み敷き犯す喜びにフェルディナンドは溺れた。
獣のように喉を反らし頭を振って鳴き狂う彼女の頭をぐっと身体の下へ押し込む。
「見えるかい?シェリリと私が繋がってるのが。」
赤黒く怒張した肉棒が彼女の襞を押し分けて抜き差しされる光景は惚けたシェリリにもショックだったのだろう。
「………………っ!!!」何か喚いて逃げようとする頭を無理やり押さえつける。
「だめだよ。シェリリが欲しがったんだから。」
彼女を嬲る言葉が彼自身を高ぶらせ理性のタガを弾き飛ばしてしまった。

何度も何度も達する寸前に引き抜きいては彼女の身体に撒き散らし、彼女の身体を白く汚した。
これがフェルディナンドが妄想し続けた彼女のウェディングドレス姿だった。

喜んで貰おうとシェリリを揺すってみるが、彼女はぐったりとベッドに横たわったままぴくりとも動かない。
「シェリリ…?」やっと彼女の異変に気付いたフェルディナンドは彼女の口に手をかざしてみる。
息をしていない。
彼女の小さな身体はフェルディナンドの獣性を剥き出しにした責めに耐え切れなかったのだろう。
我を忘れ己の快楽に耽って、彼女の身体がいつから反応を示さなくなっのかさえ覚えていない。
冷たくなっていく彼女を抱き締めたままフェルディナンドはしばらく呆然としていたが、
ケアルを使えるようにナイトのままだったことを思い出した。
蘇生魔法を詠唱し、これで大丈夫だと安心したのも束の間だった。
シェリリが息を吹き返さない。詠唱に失敗したのかと繰り返してみるが、
彼女の琥珀色の瞳は虚ろに見開かれたまま生気の輝きを取り戻さない。
ここに至って彼は事態の深刻さに愕然とした。
彼女の魂はフェルディナンドの呼びかけを拒否しているのだ。

「シェリリ…」愛するが故に汚したかった、壊したかった、その穢れ無き魂を。
堕ちた混沌の中で絶望に狂った彼女に手を差し伸べ自分と同じ永遠の闇の牢獄へ閉じ込めたかった。
ただそれだけだったのに。
手に入れた宝物は、その瞬間に彼の手を擦り抜けて二度と戻らぬところへ逝ってしまったのだ。

シェリリは闇の中を漂っていた。
早く起きなきゃ、そう思うのに闇はどんどん濃くなって彼女の意識を暗く閉ざそうとしている。
『嫌よ、だってフェルが呼んでる、帰らなきゃ。』
闇が囁く。彼はただお前を慰み者にしただけだと、他のエルヴァーンと変わりは無いのだと。
このまま落ちてしまえ、そうすれば楽になれる。
闇から無数の手が伸びて彼女を絡めとろうとした。
『違うわ、だって泣いてるもの。』
フェルディナンドが子供のように声を上げて泣いているのが闇を通して伝わってくる。
闇の手を遮って青い影がふわりと現れる。
『カー君…?』
『ほら、こっち。』
青い影が示す先が進むべき道だとシェリリには分かった。
最後に彼女が見たのはシェリリを飲み込もうと渦巻く闇に立ちはだかる青い髪の小さな後姿だった。
『ありがとう、お姉さん…』


シェリリを抱き締めたままフェルディナンドは泣きじゃくり続けていた。
「フェ…ルゥ…泣かないでぇ…私は、ここに、いるよぉ。」
小さな手が彼の胸をとんとんと叩く。
「シェリリ!ああ・・・っ」永遠に失ってしまったかと思った命が再び彼の手の中にあった。

あの花を彼女に見せたかった本当の理由がやっと分かった。
一緒に連れて行って欲しかったのだ、青い空の向こうに広がる世界へ。
白い丸い花は彼女とそっくりだった。
ただ1つ違ったことは。
捕えようとしても腕をすり抜けて飛んで行ってしまう綿毛のように彼を置き去りにしないことだ。

小さな白い手が頬を挟み、琥珀色の瞳が覗き込んでくる。
「愛・し・て・る・わ。」舌っ足らずにならないようゆっくり一言ずつ区切ってシェリリは大切な言葉を告げる。
「ルナお姉さんが教えてくれたのぉ、救えない魂はないんだってぇ。」
フェルディナンドの黒い瞳から流れ落ちる涙を丸くて器用そうな指が拭い取り、
血の気を取り戻した唇がフェルディナンドの乾いた唇に重ねられる。
『シェリリをよろしく。この子なら大丈夫よ。』別れ際、彼にそっと手向けられた言葉の意味を理解した。
なんて事だ、“灰色の魔女”は最初から全てお見通しだったのか。

フェルディナンドはシェリリを心からの愛情を込めて優しく抱き締めて囁いた。
「明日セルビナへ行こう。君の偉大なお姉さんにちゃんと挨拶しなくてはいけないから。」
彼の腕の中で白い花が大輪の笑顔を見せた。


【ここにしか咲かない花:了】