ベルーシxジール
ベルーシxジール2
ベルーシxジール3
ベルーシxジール4
ベルーシxジール5
ベルーシxジール6

エル♂:F1銀
ミスラ:F6赤


頭の中でパイプオルガンの音が響く。
朝の祈りの時に教会で奏でられ、サンドリア国民ならば
必ず耳にする、神を称える荘厳な曲。
だが、それはもう記憶の片隅に眠ってしまっている。
まるで残り香のような、思い出したくても思い出せないような。

今・・・再びあの曲を聞いたとしたら。
俺は、悶え苦しむのかも知れない。

そしていつしか意識は途絶え、全てが見えなくなった時・・・

俺は、光を失った存在となるのだろう。

乾いた轟音が木霊し、暗闇へと飲まれてゆく。
一度、二度とまた轟音が響き、そして静まる。
所々に壁にかけられた燭台の炎が、チリチリと揺られる。
ひやりとした空気と、石壁の組み合わせがより一層冷気を感じさせる。
エルディーム古墳。
かつて、女神の恩恵を授かりたい酔狂な輩共がそれを求め、
ここに眠ったと言われる。
その内部は非常に複雑な迷路となっており、地図が無ければ
一度迷い込むと二度と出られない、とまで謳われた。
酔狂な輩共の棺の中には財宝があるに違いない、と睨んで古墳に入ったまま二度と帰ってくる事なく、屍と化した哀れな盗賊達も数多く眠っているとか。

死に何かを求めた、かつての修道士のエルヴァーン達。
女神に死の恐怖を拭って貰うべく、北の地まで来たものの、
そこにあったのは絶対的な暗闇と冷気でしかなかったと言う。
そしていつしか酔狂な輩共は、女神への信仰を憎悪へと移し、
暗闇と冷気と受け入れ、生物に定められた死に抗った。
そう・・・闇に生きる事を見出したのだ。

銃口から硝煙が立つ。
俺の足元には、抜け殻の身体に幾つもの風穴を開けられた
シャドウが倒れていた。
どす黒いコールタールのような血に、腐泥の匂い。
風穴からゴボゴボと音をたてて溢れ出てくる。
倒れたシャドウの頭を狙い、一発、更に一発と銃弾を撃ち込む。

バシャッ! バシャッ!!

黒く臭い血が更に舞い、飛び散り、俺の顔や体を汚した。
常人で言うなら、腐水を浴びた事に等しいが俺は動じない。
しばらくすると豆を砕いたかのように形を崩してゆき、そして最終的には粉となり、服だけを残して、消えた
「化け物共が・・・。」
銃の中に、銀の弾丸を充填しながら呟く。
それを終えると、壁にかけられた燭台に手を伸ばした。
その場に残った、シャドウの服に火を放ち、焼却する。
乾いたシャドウの服は勢い良く燃え、一瞬にして灰と化した。

「もう二度と生まれてくるな。」
俺は掃き捨てるようにそう言い、その場を後にした。

一匹、もう一匹と血の海に沈め、焼却してゆく。
他人から見ると益も理由もない、シャドウ狩りにしか見えない。
狩人と言う職業は、無駄弾を極力抑えるのが定石。
弾丸、矢、それぞれの一発にかかる金が勿体ないからだ。
パーティ戦以外では、なるべく矢弾を使わない事が狩人たる者と言えるだろう。
別にこれと言って良いアイテムを落とす訳でもなく、既に
練習相手にもならない敵を倒し続けて、何になると言うのか?

俺にはコイツ等を狩るために狩人になったからだ。

だから、弾丸など惜しくはない。
銀の弾丸を撃ち込むのは、この腐った血を流すシャドウ共を
少しでも浄化してやろうと言う、俺なりの慈悲だ。
生ある者を貪ることでしか生きながらえない、不死者共に対して慈悲を一欠片でも持ち合わせている事に、感謝して欲しいくらいだ。
タガのはずれた猟期的な感覚は、持っていない。
憤怒に始まり、哀れみ、憎悪、そして恐怖。
それらの全ての感情を持ち、複合させ・・・俺は狩り続けているのだ。

体に付着した黒い血を拭い、持参していた水で顔をよく洗う。
黒い血が肌に染み着くと、街中でしかめっツラで睨まれる。
異臭を発するよりも、血で汚れた者の方が嫌われるのだ。
鞄の中を見て、アイテムの確認をし、よしと呟く。
「もう夜も近い・・・一旦ジュノへ帰るか。」
顔を拭った布を捨てたその時、

「たすけて・・・」

弱々しくも、確かな叫び声・・・いや、つぶやきに近い。
助けを求める声が、俺の耳に届いた。
狭く薄暗い通路を走り、声のした方へと向かう。
浅い角を曲がり、トーチのある十字路が見えてきた。
狩人独自の百里眼のおかげで、そこで何が起きているかが
よく見える。

鎌を持った骨が一体、盾と鈍器を手にした骨がニ体。
そしてそれに囲まれる一人のミスラ。
服装からして、恐らくモンク。
俺は足を更に早める。

骨相手は苦手だが、と胸で己を嘲笑う。
特殊な型式で、専用の超威力の弾丸が十二発までしか入らない特別の銃を取り出す。
すぐさま鎌を持った骨相手に目掛け、発射した。
ボン!! と言う轟音と共に腕にかかる発射の衝撃。
同時に頭部が粉々に吹き飛ぶ、鎌持ちの骨。
『カチカチカチ・・・』
歯を鳴らし、こちらに気付いた残りの二体の骨。
注意を引き付ける事に成功したようだ。
「俺が相手だ。」
空洞の眼に宿る、赤い光。
俺のよく知っている、不死者特有の純粋な殺意だ。
骨共は手にした鈍器を振り上げ、俺目掛け向かってきた。
だが直線上に向かってくる知能無き不死者など、俺にとっては的以外のなにものでもない。
「ゴミが・・・。」
俺は充分に狙いを定め、骨共の頭部目掛けて銃を発射した。
弾丸は撃ち抜け、骨共の頭部は見事なまでに砕け散った。

頭部が砕けてもなおピクピクと動く骨の胴体を、思いきり踏みつけバラバラに砕く。
倒れているミスラに駆け寄り、上体を抱え、起こす。
美しい赤毛を真ん中分けにしたミスラ。
随分窮屈そうな道着だなと思いきや、豊満な乳房だった。
男なら普通乳房に目を釘付けにしただろうが、だが俺は美しい赤毛に眼を奪われた。
頭を振るって気を取り直し、怪我の具合を確認する。
・・・これは酷い。
もう一歩遅ければ、命を落としていたかも知れない。
緊急用に持っていたハイポーションを取り出し、口を開けさせ、
無理矢理飲み込ませる。
なかなか飲み込まなくて苦労したが、どうにか喉に通っていった。
「・・・・。」
安堵し、一息つく。
よくよく見ると、藍色の道着に身を包んでいる事に気付いた。
忍び装束、と呼ばれる道着だったのだ。
俺は頭を抱え、
「身の程知らず、か・・・。」
と、小さく呟いた。

俺はそのミスラを抱え、古墳を後にした。
無論、弱った生命の匂いを嗅ぎつけた不死者共を、全て召しながら。
陽は傾き、空は既に星がまばゆき始めていた。
肌に突き刺さる冷たい風が、頬を引き締める。
「今から帰ったら完全に夜、か。」
俺は鞄から沢山の聖水を取り出し、傍らに置く。
・・・街中で『アレ』が起こったらたまらないからな。
そう思い巡らせ、野宿の支度を始めた。
古墳で助けたミスラは、まだ目が覚めない。
が、胸元が静かに動いている所を見ると、どうやら大分
回復したらしく、心配する必要はなさそうだ。
「・・・んっ」
身をよじり、呻きながら瞼を震わせている。
どうやら意識が戻ったらしい。
ゆっくりと眼を開いてゆく。

「ここは・・・」

「気が付いたか。」
俺が声をかけると、ミスラは上体を起こし顔をこちらに向ける。
「・・・誰?」
「誰でもいいだろう。」
感情を込めずにそう言い、鞄に入っていたハイポーションをミスラに放る。
驚く様子もなしに受け取り、投げられたソレを見つめる。
「飲め、そして己の足で帰れ。」
俺の言葉に従い、ハイポーションを飲み干すミスラ。
ぷはぁっ、と大きく息を吐いた。
「あんたがアタシを助けてくれたんだ?」
生意気そうな声に、喋り方。
だが気にせず、俺は答える。
「そうだ。」
「ありがと、アタシはルウ。 あんたは?」
「イークス。礼はいらん、さっさと帰れ。邪魔だ。」
「冷たい男だねえ、もう少し詮索したりとかしないのかい? なんであんな所にいたんだ? とかさあ。」
「帰れと言ってるだろう。」
ミスラ・・・ルウは俺の言葉に腹を立て始めたのか、眉をしかめる。

「あっ、そ。でも生憎、まだ傷が完治してないからね。まだここに居させて貰うよ。」
へん、とでも付け足しても良いような皮肉じみた言葉。
俺のハイポーションも、もう切らしている。
仕方がない・・・。
俺が言葉を返さない事を見て、勝ち誇ったかのように笑顔を浮かべる。
「いや〜、まいったもんだよ。ちょっくら古墳の骨が落とすパピルスが欲しかっただけなんだけどねえ」
俺が詮索しないせいか、一人で語り始めた、ルウ。
目だけで答え、話を聞いてやる。
「ちょっとした油断で大リンクしちゃってサ。ほんと助かったよ」
ケラケラと愉快そうに笑うルウ。
俺はルウを睨み、つぶやいた。
「例え一対一でも、お前は負けていた。」
ルウの笑いが止まる。
「そんなことは解らないだろっ」
実際良い勝負してたんだしさぁ、と付け加える。
「得手の相手でも無理なものは無理だ。」
あからさまに顔をしかめるルウ。
「なんだい、そんな言い方するこたぁないだろうにさ。」

血気盛んで、そして絶対的な自信を持ち、無謀な勇気を備える。
冒険者が一度は通る、もっとも危険な時期。
このルウと言うミスラは、今がその時なのだ。
「先程味わった、死の恐怖を忘れたのか?」
「だからあれは油断してたからだよ。いつもならあんなホネホネごとき、乱撃で粉々にしてやってたよ」
必死に弁明するルウ。
幾ら弁明しようとも意味は成さないのは解っているだろう。
『たすけて』と、つぶやいてしまった事を、本人が知らぬはずがない。
そんなはずはない、自分はもっと強いはずだ、と言い聞かせたいのだ。
俺はゆっくりと立ち上がり、傍らに座ったルウを見下ろす。
「なにさ」
同じく立ち上がり、強い眼で睨み返すルウ。
頭一つ以上違う身長差にも関わらず。
「ならば、お前の力で俺を拒んでみろ。」
「え?」
俺の言葉の意味を理解する前に、俺はルウの両手首をつかみ、そのまま押し倒した。
「いてっ、何すんのさ!!」
俺に覆いかぶさられ、身動き取れない状態であるにもかかわらず、強気に返す。

「言っただろう、お前の力で俺を拒んでみろ。」

道着の前を強引に開く。
「いや!? ちょ、やめてよ!!」
ぼん、としまい込まれていた豊かな乳房が露になる。
サンダーメロンと比較して、劣らないくらい豊かな実だった。
片手でルウの両手首を掴み、上へと回す。
「押し返してみろ。出来なければお前を犯す。」
悔しさと恥ずかしさに頬を赤くし、懸命に抵抗する。
「ふぎっ・・・ぐぅ〜! ににに・・・・!!」
幾ら力を込めようが、俺の手の錠からは逃れられそうにない。
「どうした、押し返さないのか? それとも俺に抱かれたくて、わざと力を抜いているのか?」
「ふ、ふざけたことを!!」
「時間切れだ。」
「えっ!? ちょ、まって!やめて!あっ、あぁ・・・」
抵抗の言葉を無視し、すでにその豊かな乳房の頂点にある乳首に口を付け、舌で優しく転がす。
空いているもう片方の手で、乳房を弄び、思うままの形に変えていく。
ちゅ、と少し吸うだけで、ルウの身体はビクンと跳ね、みるみる乳首は固くなり、張り詰めてきた。
「随分と感度が良い。様々な男達に開発されてきたか。」
「そ、そんなことな・・・あ、あん!」
指の腹でいじくり回し、ぐりぐりと旋回させる。

ルウの身体から力が抜け、じっとりとした汗が生じてきた。
先程感じた死の恐怖の影響か、女の本能が快感の手助けをしているのかも知れない。
種を残そうとする、生物としての本能が。
俺はルウのショートパンツにも似た袴を一気に脱がせた。
「ぃやっ・・・や、やめて」
少し盛り上がった土手の部分は、既にうっすらと濡れて湿っている。
その濡れた箇所を、焦らすかのようにゆっくりゆっくりと指を這わす。
「あっ、あぁぁ! だめえ・・・!」
ヌルッとした感触に俺は満足し、脚を割って入り込み、本格的に女を抱く姿勢に入った。
俺は『両手』でルウの乳房を弄ぶ。
「巨大な乳だな。」
手の平を使って、包み込むかのように撫で回し、時折感触を楽しむように、指を立てる。
ルウは甘い吐息を漏らし、既に俺からの快感を待ち望んでいた。
両方の乳首を摘むと、
「んあぁっ!」
と、大きく体をのけぞらせた。
「乳を寄せて、二つの乳首を同時に味わえる女は初めてだ。」
「あ、あああぁ・・・・そ、そんなことしないでぇ・・・!」
ほどよい固さの乳首を二ついっぺんに口を付けて、舌で転がし、吸い、甘噛みする。

「あっ、んん、だめぇ・・・やめて・・・」
下着の中に手を這わせ、ルウの秘部を直接愛撫する。
暖かい粘液が指に絡みつき、俺の情火が強く刺激される。
秘部を指で愛撫しつつ乳も弄び、ルウの反応を観察すると・・・もう既に女と化していた。
耳をピクピクと震わせ、頬は紅潮し吐息は甘く切ない様子だ。
「あ、はぁん!」
身体を大きくのけぞらせ、弾かれたように跳ねる。
俺が内部へと指を侵入させたから。
指を思いきり締め付け、熱く煮えたぎっており、吸い付くかのように蠢いている。
より一層の快感を、ルウの体は求めているようだ。
「もっとしてほしいか?」
情火に燃えたねちっこい声音ではなく、淡々と語るかのように言う。
「・・・・・」
ルウは唇を噛むように、口を真一文字に閉じる。
俺の指が内部をかき混ぜ、抜き差ししているのを耐えるかのように。
「答えろ。」
「あぁっ!!」
更に陰核を擦り、快感の炎をあおる。
「もっとしてほしいのか、それとも止めてほしいのか、どっちだ。」
ルウは悔しそうに歯を食いしばり、顔を背けながら、
「・・・続けてほしい」
と呟いた。

「先程から、もう枷は外していたんだがな。」
そう言うとルウは「あっ」と気付き、己の両手が自由になっている事にようやく気付いた。
ズボンをおろし、下着もおろすと、俺の怒張した性器が天に向かってそびえる。
ルウを抱きおこすと、秘部の入り口にあてがい、一気に腰を落とさせた。
「あ、あああ・・・!」
寒気にも似た快感が腰から這い上がり、全身に広がる。
グイグイと途中で突っかかるように、内部の肉壁は詰め込まれていた。
「さすがはモンクか・・・かなり狭いな。」
「あ、あんたのがでかいんだよバカ・・・!」
「俺より大きい奴なんて沢山いる。」
ギチギチとした狭い内部を開拓し、腰を激しく動かす。
「は、あ! あっ、は、はげしすぎるって・・・!」
対面しながらの座位で行っていたが、思った以上に具合が良い。
「ああ・・・すごっ・・・、深くまできてるよ・・・!」
上体を反らせ、うわごとのように喘ぐルウ。
俺の目の前では、その豊満な乳房が俺の動きにあわせて上下に舞う。
「あ、あ、あ・・・・い、いいよ! 気持ちいいよ!」
ルウの痴態を見て、俺は久しぶりに本気で興奮していた。
抱きかかえていたルウをそのまま押し倒し、動きやすい体勢にした。

地に広がる赤い髪が、美しかった。

「あぁ・・・! すご、なんでこんなに・・・イイのぉ・・」
先程味わった死の恐怖が本能に呼びかけ、快感をより強く、根深いものへとさせているのだ。
そんな事ルウは知らないのだろう。
「あ、ああ! もっと・・・もっとしてぇっ!!」
俺はただ、獣のようにひたすらにルウを突き、求めていた。
ルウも腰を使い、内部の俺へと快感を与えてくる。
「こわれちゃう・・・! あ、いや・・・ああぁ!」
ルウの秘部から粘液がこぼれ、俺が動くたびにグチュグチュと卑猥な音がする。
内部は更に熱くなり、強く吸い付き、より深くへと俺を誘う。
二人の粘膜同士が絡み合い、互いを求めあう。
ルウはもう少しで絶頂を迎えそうだ。
男の子種を求め、内部が俺を頂に向かわせようと蠢いている。
「あ、ダメ・・・イク、イク・・・!!」
身体が強ばり、一突きする度に声を漏らすルウ。
俺は追い打ちと言わんばかりに、目の前で揺れる乳房を両手で掴み、乳首を捻りあげた。
「あっ、はあぁぁぁっ!!」

電撃を浴びたかのように体を跳ね、ルウは絶頂を迎えた。

眼を閉じ、眉間にしわを寄せ、心地よさそうな表情。
体中から男の鼻を甘く刺激する汗を分泌し、痙攣を起こしているかのように震えている。
狭かった内部は力を抜いたせいか、かなり緩やかになった。
「あ・・・・はん・・・」
身をよじるルウ。
俺は内部から性器を引き抜くと、ルウの体の上にまたがった。
そしてルウの乳房に手を沿え、己の性器を挟んだ。
「胸を借りるぞ。」
ルウの粘液に塗れた性器は柔らかい乳に、吸い付くように密着し、心地よく感じた。
胸の大きい女とはこういう事も出来るとは聞いていたが、経験するのは初めてだった。
柔らかく包まれる感触が心地良い。
ルウが顔を起こし、俺の先端を口にくわえて吸いつき、舌で攻めてきた。
高ぶっていた快感が一気に燃え上がり、俺は
「ぐっ」
と低く呻くと、ルウの口内へと大量に精を放った。
「んっ・・・」
同時に、ゴクッと喉の鳴る音が聞こえた。

「いやー、こんなに感じたの初めてだったよ。」
俺の精を飲み干すと、けらけらと笑いながら言ってきた。
強引に俺が抱いた事など露知らず、とでも言うかのように。
「強姦されたのに、お前は俺に罵声を浴びせないのか?」
「いいよ、別に慣れてるし。殴られたりしてないし、中にも出されてないしサ。」
「慣れてる、と来たか。」
「この胸のせいでね、無理矢理なんてしょっちゅうだよ。」
はは、と乾いた声で笑う。

『慣れてる』

俺の頭の中で、この単語と共に、なつかしい声が響いた。
一瞬その声に思いを寄せ、耽ったがすぐに意識を戻す。
「・・・すまんな。」
「良いって、あんたは命の恩人なんだし。」
最初は、身の程知らずを懲らしめてやろうかと思って、無理矢理抱いたのだが・・・。

「意外に義理堅いのか。」
「体でお礼したと思えばね。まぁ思いっきりイカされたからお礼とは言いにくいけど。」
フフ、と鼻で笑って返し、
「たいした女だ、お前と言うやつ・・・あ、あぐあぁぁ!!」
言葉の途中で、襲いかかった激痛。
身体中が焼けるように痛み、苦しい・・・。

しまった、18時過ぎてしまっていたのか。

「ど、どうしたのさ!?」
うろたえるルウ。
俺は体を丸め、己の身体を抱き締める。
ブスブスと硝煙のような黒い煙が立ち、体が痛みで震える。
「は、早く、そこに置いてある、聖水を、俺に・・・・!!」
「わ、わかった!」
ルウは俺の鞄の傍らに置いてあった聖水を取る。
「浴びせればいいんだね!?」
「はやく、しろ・・・!」
ルウは聖水は5本持ち、空に放ると、
「とりゃりゃりゃーーー!!!」
即座に拳で叩き割り、俺へと聖水を浴びせた。
「が、あああぁぁぁ・・・・!」
激痛が少しずつ和らいでいき、黒い煙も消えていく。
熱した鉄板の上に水を放ったかのように、体がシューシューと音を立てている。
身を包む悪寒も消え、治まった。
「だいじょぶ!?」
ルウが駆け寄り、俺の体を揺さぶる。
「も、もう平気だ・・・すまん。」
「何だってんだい、あんたは?」
俺は一瞬考え、答えあぐねた・・・が、ルウには喋ってやる気になった。
己をくつろぐ姿勢に正し、ふうと一息つく。
「俺は・・・嘘はつかないからよく聞け。」
「?」
俺のつぶやきに眼を丸くするルウ。

「俺はシャドウなんだ。」

首を傾げるルウ。
「正確に言うと、シャドウになりかけている男と言うべきか。」
更に頭を悩ませる、ルウ。
「サンドリアには人さらい事件が多発する。」
俺は服を脱ぎながら言葉を続ける。
「人さらいは二種類。オーク達にさらわれ、男は奴隷、女は性奴。」
俺が上半身を覆っていた服を脱ぎ終えると、ルウは眼を見開き、驚いた。
「もう一種類はシャドウ。さらった人間に闇の血を注入し、同族にされてしまう。」
俺の地肌は既にどす黒く変色して、一部分は漆黒と化している。
ルウは驚き、何一つ言う事なく俺の体を凝視していた。
「陽の下に出ずに、獣人の血さえ飲み続ければ、この病気は進行しない。」
「じゃ、じゃああんたもそうすれば・・・」
「俺はそれを拒んだ、シャドウ族に復讐したかった。そのために太陽の下で歩き、奴等を狩っている。」
銃を取り出し、じっと見つめる。
「夜になると闇の血が活発になり、ああいった発作みたいな事が起きる。聖水を大量に浴びれば、発作だけは治まる。」
俺の様子を見つめる、ルウ。

「だが、この病気は止まらない。長年この体を保てているのが奇跡だと、サンドリアの者達は言う。」
「そっか、だからさっさと帰れって言ってたんだ。」
「そうだ。」
俺は脱いだ服を再び着る。
それを見て、ルウもはだけていた衣服を整えた。
「もしかしたら、お前を撃っていたかもしれないからな。」
ルウの額に銃を突き付けた。
無論、引き金からは指を離しているが。
だがルウは臆する様子もなく、こちらを見つめている。
「大変なんだねえ、あんたも。」
「まあな。パーティなどの団体行動では夜になっても一人で監視役と称して、離れていたりしていた。」
「寝れないじゃない。」
「お前も眠れない夜があるだろう。」
「まーね、あたし以外全員男のパーティとかは寝れないモンだと思ってるよ。」
ルウは眉を八の字にして、自分の胸をつつく。
会話を終え、俺とルウは互いに見つめあい、苦笑する。

「いいか、ルウ。」
ん? とでも言いたげな瞳で応える。
「嫌な男に抱かれる事に慣れるな。お前には未来がある。」
俺は鞄から一つのモノを取り出し、それを渡す。
「ちょっ!? こ、これって・・・!!?」
渡したモノは、黒いナックルの先端に、四つの牙を持つ武器。
 『クロスカウンター』
「かつて俺が狩ったシャドウから手に入れたものだ。これをお前にやる。」
武器と俺の顔を交互に見る、ルウ。
「無理矢理お前を抱いた俺の言えた義理では無いが、嫌な男はこの武器で殴り飛ばしてやれ。いつかお前を愛してくれる男のためにも、体を安売りするな。」
そう言い終えると俺は立ち上がり、その場を去る支度をした。
「ちょっ、待ってよイークス! なんだって、こんな高価なモノくれるのさ?」
俺はちらと一瞥し、答えた。
「嫌な男を殴り飛ばせ、と言っただろう。」
「だ、だからってこんなレア物・・・!!」

ルウは俺の背中を見つめたままだろう、視線を強く感じる。
俺は一瞬間を置き、呟いた。
「かつて俺の愛した女も、男に抱かれるのに慣れてしまった、赤い髪のミスラだった。」
「えっ!?」
そう言うと、俺は駆け出した。
「ちょっと、イークス!!」
ルウのかける声を無視し、俺は闇夜を走った。

今の俺は、俺らしくないセンチな男。
軟弱で女々しい男。
一瞬でも、ルウに対して光を見出してしまった。
同情に甘えてしまいそうになってしまった。

だが俺はシャドウ。
闇にしかならぬ滅びの存在、未来無き亡霊。

意識が途絶え、全てが見えなくなった時・・・
俺はシャドウとなる。

全身を黒く染め、瞳を赤く燃やして。


イークスxフィー
ベルーシxジール7
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